一般社団法人を受託者とした受益者連続信託

  信託フォーラム[1]の記事、中山由宇弁護士・民事信託士「一般社団法人を受託者とした受益者連続信託」から考えてみたいと思います。

本件では、受託者として適当な親族等が見当たらなかったため、本信託の受託を目的に、委託者である両親と弁護士(筆者)及び司法書士の4名を社員兼理事として一般社団法人を設立した。関与する委託者らと法律専門職を2名ずつとすることで、相互チェックが働きやすくし、委託者らの思いを専門的見地から問題のない形で実現することを目指す体制とした。また、信託監督人と一般社団法人監事を兼ねる形で税理士にも関与してもらい、監督機能を強化した。同税理士には、受託者の義務である帳簿などの作成及び受託者(一般社団法人)の確定申告を併せて依頼した。

 委託者である両親と弁護士(筆者)及び司法書士の4名を社員兼理事として一般社団法人を設立した、について。

・・・信託業法2条1項に抵触しないのか、分かりませんでした。

信託業法(平成十六年法律第百五十四号)(定義)

第二条 この法律において「信託業」とは、信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。

 信託監督人と一般社団法人監事を兼ねる形で税理士にも関与してもらい、監督機能を強化した。同税理士には、受託者の義務である帳簿などの作成及び受託者(一般社団法人)の確定申告を併せて依頼した、について。

 受託者の義務である帳簿などの作成は、信託監督人という立場で可能か、について。

 受託者が作成する帳簿などを読んだりコピーを取ったりして、受託者に対して指摘することが仕事で、信託監督人という立場で可能なのか、分かりませんでした。

  受託者の義務である帳簿などの作成は、一般社団法人の監事という立場で可能か、について。 

 監事の仕事は、一般社団法人の財産状況の調査や監査報告の作成で、帳簿などの作成が可能なのか、分かりませんでした。

帳簿などの作成を行うのであれば、一般社団法人の理事に就任するか、税理士として第三者委託の受託者という立場で行うのかなと思いました。

信託法(平成十八年法律第百八号)(信託監督人の権限)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

第百三十二条 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第九十二条各号(第十七号、第十八号、第二十一号及び第二十三号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 二人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000048

(監事の権限)

第九十九条 監事は、理事の職務の執行を監査する。この場合において、監事は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

2 監事は、いつでも、理事及び使用人に対して事業の報告を求め、又は監事設置一般社団法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

3 監事は、その職務を行うため必要があるときは、監事設置一般社団法人の子法人に対して事業の報告を求め、又はその子法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

4 前項の子法人は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。

 受託者の(一般社団法人)の確定申告を、信託監督人という立場で可能か。

・・・可能なのか、分かりませんでした。

 受託者の(一般社団法人)の確定申告を、一般社団法人監事という立場で可能か。

・・・可能なのか、分かりませんでした。

 確定申告を行うのであれば、一般社団法人の理事に就任するか、税理士として第三者委託の受託者という立場で行うのかなと思いました。

信託が成立するまでの過程において弁護士が様々な仕事をしてきたことに対する報酬(1)ということであれば、既に生じている委託者に対する金銭債権ということになるので、信託財産責任負担債務として受託者が引き受けるという構成になるのではないか。本信託に関して今後受託者等が弁護士から法的な助言指導を受けることに対する報酬(2)ということであれば、信託契約書にその点を記載すべきでないかとの指摘であった。

 信託の清算に関する論点で、参考になりました。(1)の場合、信託の成立までの報酬を、信託の終了後にもらうという構成になるのかなと思ったのですが、何故なのか分かりませんでした。

(2)の場合、一般社団法人の理事としての報酬は、どのように決めているのか気になりました。

信託不動産の処分や大規模修繕は、残された受益者の生活に重大な影響が生じかねないものであり、慎重を期する必要があると考えた。そのため、信託不動産の処分については、受託者は、受益者またはその成年後見人等との協議に努めたうえで信託監督人の同意を得なければ出来ないものとした。

 記事では、成年後見人等とは協議、信託監督人には同意を得る、と差を付けています。居住用不動産の場合は、法律が優先し成年後見人が就任している場合は、協議ではなく家庭裁判所の許可が必要だと思います。居住用不動産ではない場合、どのようになるのか分かりません。成年後見人が就任している場合、家庭裁判所への事前報告を行うのが望ましいと考えます。ただし、私は信託行為時における成年後見制度との関係について、委託者の考えを出来るだけ記録するようにしているので、考え方としては似ているのかなと思いました。


[1] Vol.16、2021年10月日本加除出版

PAGE TOP