民事信託の登記の諸問題(16)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(16)」からです。

信託法を審議した2006年の第165回国会では、次のような、民事信託支援業務に取り組む資格者代理人の人々が注意しておくべき参議院法務委員会の附帯決議が付されている。1つは、福祉型信託に関する附帯決議の抜粋である。

 高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託については、特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意し・・・

「特にきめ細やかな支援の必要性」という表現に着目したい。信託条項の雛型や定型書式の盲目的な利用には注意しなければならない。

リンクを貼っておきます。

参議院

第165回国会 (平成18年9月26日~平成18年12月19日)

法務委員会

信託法案及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議 (平成18年12月7日)

https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/165/futai_ind.html

 特にきめ細やかな支援の必要性が指摘されていることにも留意、が信託条項の雛型や定型書式の盲目的な利用を指しているのか、分かりませんでした。

また、登記によって、実体法、手続法共に法的効果等を全く生じない無意味な情報などが過剰に並ぶ信託原簿が存在していた。

 受益者取消権(旧信託法31条)による、直接、受託者の権限外処分による取消権の対抗要件となる信託原簿から、一歩後退している信託目録になっていますが、現在の信託目録の方が記録として分かりやすくなっているのではないかと感じます。それは、信託目録の記録内容について、様々な情報があり議論がなされているからだと思います。私は信託原簿の時代に司法書士ではありませんでしたが、信託原簿が空洞化したのは、実務情報が公開されることが少なく、取り扱う専門家が一部であったことが原因なのかなと想像します。

むしろ、民事信託の登記の分野に限っていえば、従来の廃止論の経緯を忘却し、信託の専門家を称する資格者代理人の一部が「信託目録の作成は資格者代理人の腕の見せ所」や「創意工夫」などとして、法務局に対して、第三者のための公示ではなく、依頼者の利益代表としての過剰情報を提供する反面、必要情報が提供されないないなど、信託原簿時代以上に問題は深刻化しつつあるようだ(資格者代理人の法令実務精通義務違反を構成しよう)。過去の営業信託のために登記から生じた不幸が再現されないよう祈るほかない。

 法令実務精通義務違反は、司法書士法上、懲戒処分の対象となるので、もう少し明確な基準が必要じゃないかなと思います。例えば、過剰情報を提供する場合(親族など内部の個人情報に関わる。)と、必要情報が提供されない場合(第三者への公示としての登記が、意味をなさなくなる。)では、基準が異なってくるのではないかなと感じます。


[1] 898号、令和4年12月、テイハン、P134~

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