行政手続における書面主義の見直し及びオンライン利用率を大胆に引き上げる取組について(戸籍謄抄本の請求等のオンライン化の促進等)

加工

内閣府第1回デジタルワーキング・グループ 令和3年9月8日(水)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20210908/agenda.html

議題.行政手続における書面主義の見直し及びオンライン利用率を大胆に引き上げる取組について(戸籍謄抄本の請求等のオンライン化の促進等)

・戸籍謄抄本の請求等のオンライン化の取組・課題について(株式会社グラファーからのヒアリング)

・戸籍謄抄本の請求等のオンライン化に係る国の取組等について(法務省からのヒアリング論点に対する回答

【論点1-③】

 戸籍の記載事項は、ベースレジストリにも指定されており、関連する手続のデジタル化が強く求められると考えられる。「法務省情報化推進会議」等において、戸籍謄抄本の請求・交付、届出分野のデジタル化を進める観点から、どのような検討が行われたか(事務次官がどのようにリーダーシップを発揮したかを含む)、具体的にご説明願いたい。

【論点1-③】

 本年7月に開催した「法務省情報化推進会議」においては,戸籍謄抄本の請求・交付,届出分野のデジタル化を含めた国民目線でのオンライン化やキャッシュレス化の推進などの課題に対する取組を強力に推進するために,省全体のデジタル化推進体制を強化する必要があるとの認識を出席者一同で確認した。

 そして,戸籍謄抄本の請求・交付,届出分野のデジタル化については,事務次官のリーダーシップの下,PMOにおいて,CIO補佐官からの知見も得つつ,担当PJMOと協議を重ね,オンライン利用率向上等に向けた検討を行うなどしている。

 また,戸籍情報の連携のための関係省庁との協議,例えば,旅券発給手続に関する外務省や内閣官房番号制度推進室との協議や年金手続などの社会保障手続に関する厚生労働省との協議などに当たって相談を受けるなどしている。

 さらに,戸籍事務におけるマイナンバー制度の利活用を推進するべく,①マイナンバーの提供等による戸籍謄抄本の添付省略並びに②戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略及び本籍地以外の市区町村での戸籍謄本の発行を実現するために必要な経費を令和4年度予算概算要求に盛り込んでいる。

【論点2-①】

 現在、検討・策定を進めている基本計画等について、可能な範囲で、具体的内容をご説明願いたい。なお、目標については、狭い意味でのオンライン利用率に留まらず、コンビニ交付や情報連携により戸籍謄抄本等の添付が不要となる件数も考慮したものとすべきである。

【回答2-①】

 令和5年度中に戸籍情報連携システムを構築・稼動させることを予定している。これにより,戸籍の届出における戸籍証明書の提出や他の行政手続に添付する戸籍証明書の添付省略が図られることにより,そもそも戸籍証明書を取得する場面が減少することとなる。その結果,全ての市区町村の住民がその恩恵を受けることができることとなる。オンライン利用率の目標設定については,御指摘を踏まえつつ,検討してまいりたい。

【論点3-①】

 コロナ禍を踏まえて書面・押印・対面の見直しが進められる中におけるオンライン請求及びコンビニ請求に関する国民のニーズについて、可能な限り定量的にお示し願いたい。

【回答3-①】

 平成29(2017)年に実施した調査研究における結果,将来における戸籍証明書の取得方法に関するニーズとして,「インターネットでマイナンバーカードの電子証明書を利用して取得」するニーズが12.9%,「最寄りのコンビニエンスストアでマイナンバーカードを使ってマルチコピー機から取得」するニーズが11.1%あったところであるが,当局が構築する戸籍情報連携システムが稼動することにより,戸籍の届出における戸籍証明書の提出や他の行政手続に添付する戸籍証明書の添付省略が図られることにより,そもそも戸籍証明書を取得する場面が減少することとなり,全ての市区町村の住民がその恩恵を受けることができることとなる。

【論点3-②】

 戸籍謄抄本をオンライン請求もしくはコンビニ請求できる自治体数は人口カバー率でどの程度か、定量的にお示し願いたい。

【回答3-②】

 オンラインによる戸籍証明書の交付請求が可能な自治体は,本年7月1日現在,1896市区町村のうち,17市区町村(約 0.8%)であり,本籍人口は約 250 万人で,全体の約2%となっている。

 また,コンビニ交付の仕組みを使った戸籍証明書の交付請求が可能な自治体は,本年7月1日現在,1896市区町村のうち,693市区町村(約36.5%)である。なお,コンビニ交付は,住民票の住所を置く市区町村と本籍を置く市区町村が同一である場合にのみ交付請求ができる場合と,これらが同一でなくても交付請求ができる場合とがあるが,戸籍には住所情報がないため,コンビニ交付を受けることができる正確な人口割合は不明であるものの,人口比で約55%前後であると推計される。

【論点3-③】

 平成 29 年時点においてもオンライン請求及びコンビニ請求に対する一定のニーズが示されているが、オンライン請求やコンビニ請求を導入する自治体数が現況に止まる要因をどのように考えているか、具体的にご説明願いたい。

【論点3-④】

 論点3-③を把握するため、どのような取組を行ったのか、具体的にご説明願いたい。

【論点3-⑤】

 論点3-③について、具体的な把握ができていないとすれば、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答3-③から⑤まで】

 市区町村において戸籍事務に従事する職員にヒアリングしたところ,オンライン請求については,コンビニ交付に比べ交付までに時間がかかることから,住民からのニーズが高くないこと,戸籍事務のためだけにオンライン請求を受け付ける環境を構築することに意義が見出せないこと,などが挙げられる。

 また,コンビニ交付については,オンライン請求に比べ比較的普及が進んでいるところ,特に地方の小規模自治体については,本籍人が必ずしも住民とは限らず,導入することが当該自治体の住民の利便性の向上に資するものとはいえないことから,予算措置の優先順位が低いことが挙げられる。

 さらに,いずれの仕組みについても,地方公共団体の事務が多数ある中で,その仕組みの導入は戸籍証明書の交付請求の場面に限ったものではない。

 もっとも,当局が構築する戸籍情報連携システムが稼動することにより,戸籍の届出における戸籍証明書の提出や他の行政手続に添付する戸籍証明書の添付省略が図られることにより,コンビニ交付やオンライン申請により戸籍証明書を取得する場面が大幅に減少することになる見込みである。

【論点3-⑥】

 オンライン請求やコンビニ請求を実現した自治体においても、必ずしも、オンライン請求やコンビニ請求の利用状況はそれほど多くないが、その要因をどのように考えているか、具体的にご説明願いたい。

【回答3-⑥】

 オンライン請求やコンビニ交付による請求を実施する前提として,マイナンバーカードを使って行う必要があるところ,マイナンバーカードが完全に普及していないことも一因であると考えられる。

 また,オンライン請求を導入している自治体において,現在,紙の証明書を郵送で返信する方式又は自治体の窓口で交付していることから,コンビニ交付と比較して交付までの時間がかかることが要因として挙げられる。

【論点3-⑨】

 オンライン請求システムを提供しているグラファー社からは、デジタル手続法により、戸籍のオンライン請求が制度上可能となっている旨を把握していない自治体職員もいるとの課題が示されている。オンライン請求が可能であること等について、自治体への周知徹底が不十分であると考えるが、法務省としての見解及び今後の対応についてお示し願いたい。

【回答3-⑨】

 オンライン請求は,デジタル手続法の施行前から法制上可能であり,平成16年の戸籍法令の改正により,導入することが可能である。平成16年には標準仕様書を通達として発出し,これに関する解説記事も掲載しているほか,平成22年(東京都中野区の取扱いの認容事例),令和2年(埼玉県志木市の取扱いの認容事例)にオンライン請求の認容事例を紹介する周知を実施も行った。さらに,デジタル手続法が成立したことを踏まえ,オンラインシステムを導入している市区町村の一覧を掲載し,制度の周知を図っているところである。

【論点3-⑪】

 オンライン請求システムを提供しているグラファー社からは、法務省が整備している「戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書」について、最新のデジタル技術を踏まえた改訂が必要との課題が示されている。法務省が整備している「戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書」については、最新のデジタル技術や、自治体における実際の運用状況等も踏まえ、不断の見直しが必要であり、ベンダーや自治体関係者等と定期的に意見交換をして課題や対応策を検討することが不可欠と考えるが、法務省の取組について、具体的にご説明願いたい。

【回答3-⑪】

 戸籍情報システムの仕様書については,例年,調査研究委託として実施される標準仕様研究会において改訂が実施されている。この研究会は,法務省職員や地方自治体職員,戸籍情報システム事業者から構成され,制度改正や技術の進歩等に合わせた仕様書の改訂について研究しており,定期的な意見交換が実施されているところである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

司法書士を入れていただけないかな、と思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【論点3-⑫】

 一部の自治体からは、申請部分が電子化されても、戸籍情報を管理する内部システムと連動していないことから人による筆頭者等の審査・補正が必要、また、戸籍情報以外にも他のデータからDV等被害者に該当するか否か人による審査が必要等の理由から、オンライン請求を導入しても、自治体内部の効率化が図れないとの課題が示されている。デジタル化の推進に当たっては、申請者のインターフェイスだけでなく、自治体内部の業務も含め一連の業務をデジタル完結することが必要であるが、法務省としてどのような対応を行っているのか、具体的にご説明願いたい。

【論点3-⑬】

 論点3-⑫について、自治体任せにするのでは、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答3-⑫及び⑬】

 戸籍証明書の交付申請に当たっては,戸籍を特定する必要があり,戸籍の特定は,本籍及び筆頭者氏名を明らかにすることにより行うこととなるが,本籍及び筆頭者氏名が正しく特定されない場合には,交付すべき戸籍証明書が明らかにならないことから,申請内容を修正する必要がある。本籍及び筆頭者氏名以外の情報により個人情報を特定する方法としては,例えば,個人のマイナンバーにより特定する方法が考えられるが,マイナンバーと戸籍情報との紐付けについては,関係府省担当者も委員として参加した法制審議会戸籍法部会においても審議され,個人情報保護の観点から,直接紐付けをすべきではないとされたところである。そのため,現在,マイナンバーと戸籍情報は紐付いておらず(又は「マイナンバーカードには戸籍情報は登録されておらず」),マイナンバーによっては戸籍が特定されないことから,申請する側で戸籍を特定する必要がある。

 また,DV加害者やその代理人から,DV被害者等が記載された戸籍に係る戸籍証明書の交付請求がされた場合には,当該請求が不当な目的によるものであるか否かを審査する必要があるところであり,いずれも交付請求の適否の審査において必要な行為であると考えている。もっとも,DV被害者等が記載された戸籍に係る戸籍証明書の取扱いについては,DV被害者等からの申出を受けて証明書が交付されないような仕組みを検討中である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

戸籍証明書の交付申請に当たって、請求者の生年月日が不要ということを初めて知りました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【論点3-⑭】

 法務省では、DV加害者からの請求への対応は、当該請求が戸籍法第 10条2項の「不当な目的」に該当するか否かを自治体が個別判断すべきとしていると承知している。当然にして慎重かつ正確な判断が求められる性質の審査であると考えるが、一方でその審査には相応の事務負担が自治体に発生しているものと考えられる。他方で、埼玉県戸田市では、グラファー社と連携した上で、自治体内部における審査業務のデジタル化の実証実験を行っていると承知している。総務省と連携の上で戸田市の取組に関する課題・効果を検証し、デジタル技術を用いて画一的に判断可能な審査項目・業務について、事務負担軽減のための取組みの横展開を図るべきと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答3-⑭】

 埼玉県戸田市における「審査業務のデジタル化の実証実験」の内容については,有益な情報があれば,是非お聞かせいただきたいと考えており,管轄法務局とも連携し,審査業務の効率化に資する事務負担の軽減に向けた取組を進めてまいりたい。

【論点3-⑮】

 「規制改革実施計画(令和3年6月 18 日閣議決定)」において、「キャッシュレス化の推進」が決定されているところ、郵送による請求の際には、手数料を定額小為替で納付するよう求める自治体も多数ある実態を踏まえると、自治体任せにするのでは、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省の見解及び今後の対応についてお示し願いたい。

【回答3-⑮】

 手数料の徴収に関する事項は,地方自治法に基づき条例によることとされているところであり,地方公共団体の事務は多数ある中で,決済方法の問題については,戸籍証明書の交付請求の場面に限ったものではないが,キャッシュレス決済の取組を進めている自治体の実例を紹介するなど,関係府省と連携して,利用者の利便性の向上に資する取組を進めてまいりたい。

【論点3-⑯】

 一部の自治体からは、請求総数のうち、士業による職務上請求が占める割合が高く、正当な理由であるか等の審査が必要で、本人請求を前提としたオンライン請求やコンビニ請求では対応できないとの課題が示されているが、士業団体等との協議状況も含め、法務省としての取組を具体的にご説明願いたい。

【回答3-⑯】

 士業者が戸籍証明書を請求する場合には,個人情報保護の観点から,その職務上必要とされるかについて,正当な事由の有無について審査が必要となる。

 当該請求については,利便性の向上を求める意見もある一方,本年8月にも,行政書士による不正請求が発覚するなど,不正請求事件も多く見られるところであり,市区町村からも,人権上の見地から,請求の事由を正確に記載するよう指導すべきとする意見もあるところであり,様々な意見を踏まえる必要があると考えている。

 なお,オンラインによる士業者からの職務上請求を可能とする戸籍法施行規則の改正については検討し,その旨を内閣府に回答したところである。

【論点3-⑰】

 平成 29 年8月の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」において、平成7年度から平成 15 年度までの間、戸籍の電算化に必要な経費について、特別交付税による財政支援がされ、各市区町村がベンダー(8社)から個別に戸籍情報システムを調達して順次電算化を進めた結果、電算化した自治体の数は、平成7年時点の 24 庁から平成 15 年には 1,497 庁へと拡大したことが示されている。

 一部の自治体からは、戸籍に限らずコンビニ請求を実施する際のサーバー設置費や、コンビニ等に支払う手数料が財政的に課題であるとの意見が示されているところ、総務省では一定の地財措置を講ずる等の取組を行っている。戸籍のオンライン請求及びコンビニ請求の拡大に向け、財政支援や複数の自治体による共同の取組の支援など法務省としての対応を検討すべきと考えるが、法務省の見解及び今後の対応についてお示し願いたい。

【回答3-⑰】

 財政措置の可否については,関係府省と相談の上で対応してまいりたい。

【論点4-①】

 「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」、「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」、「本籍地以外での戸籍謄抄本の発行」のそれぞれにつき、検討状況及び課題並びに実現に向けた今後のスケジュールについて、具体的にご説明願いたい。

【回答4-①】

 行政手続における戸籍謄本等の添付省略等については,法務省において新たに整備する戸籍情報連携システムによって戸籍情報の提供を可能とすることとなるところ,その検討状況等は以下のとおりである。

○「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」

以下の2通りの実現方式について,現在,設計・開発を行っている。

① マイナンバー制度に基づき情報提供ネットワークシステムを通じて戸籍情報を提供する方式

 改正戸籍法(令和元年法律第17号)附則第1条第5号による施行日(令和6年3月予定)の導入を目指して開発中である。

 ・開発・テスト:令和4年度まで ・情報提供用個人識別符号取得:令和4年度 ・連携テスト:令和5年度 ・運用開始:令和6年3月

② 電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)をオンラインで提供する方式

令和6年度中の導入を目指して設計中である。

 ・対象行政機関と調整の上,現在設計中 ・運用開始:令和6年度以降

○「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」

改正戸籍法(令和元年法律第17号)附則第1条第5号による施行日(令和6年3月予定)の導入を目指して開発中である。

・開発・テスト:令和4年度まで・連携テスト:令和5年度・運用開始:令和6年3月

○「本籍地以外での戸籍謄本の発行」

 改正戸籍法附則第1条第5号による施行日(令和6年3月予定)の導入を目指して開発中である。

・開発・テスト:令和4年度まで・連携テスト:令和5年度・運用開始:令和6年3月

【論点4-②】

 「デジタル・ガバメント実行計画(令和2年 12 月 25 日閣議決定)」において、「戸籍謄本・抄本は、身分関係等を証明することを目的として、年間約 4,200 万件(令和元年)が発行されており、法令に基づく約 500 種類以上の国の行政手続において提出を求めることとなっている。」とあるが、速やかに添付省略が実現され、国民・行政双方のデジタル化・事務負担の軽減が図られる必要がある。上記取組みによって、500 種類以上の手続について、いつまでに、どの程度の手続(種類数・件数ベース・内容)で添付省略が実現されるのか、ご説明願いたい。

【回答4-②】

 IT室による「ワンスオンリー実現に必要な情報連携拡大等検討のための基礎調査」結果等を踏まえ,合計で 600 種類以上,少なくとも 1,000 万件以上の手続について,戸籍謄抄本の添付省略が実現される見込みであり,その詳細は以下のとおりである。

○「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」

①マイナンバー制度に基づき情報提供ネットワークシステムを通じて戸籍情報を提供する方式

 ・約 580 手続,件数 約 580 万件 ・令和6年度から順次開始

② 電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)をオンラインで提供する方式

 ・約 30 手続,件数 約 345 万件 ・令和6年度中に開始

○「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」

・件数 約 121 万件・令和6年3月から開始

【論点4-③】

 平成 29 年8月の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」において、「戸籍謄本等の交付請求をした目的」として「パスポートの申請のため:61.6%」、「婚姻届など戸籍の届出で提出するため:50.2%」、「年金や児童扶養手当などの社会保障給付金受給に関する手続で提出するため:27.0%」等のニーズが示されている。これら国民のニーズが高い手続については、速やかに添付省略が実現される必要がある。法務省としての取組を具体的にご説明願いたい。

【回答4-③】

 戸籍情報連携システムを整備することで,国民のニーズが高いとされた以下の手続について,戸籍謄抄本の添付省略が実現される見込みである。

○「パスポートの申請のため:61.6%」【論点4-①】の回答で示した「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」の②電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)を提供する方式により,添付省略が実現される。

○「婚姻届など戸籍の届出で提出するため:50.2%」【論点4-①】の回答で示した「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」により,添付省略が実現される。

○「年金や児童扶養手当などの社会保障給付金受給に関する手続で提出するため:27.0%」

【論点4-①】の回答で示した「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」マイナンバーに基づき情報提供ネットワークシステムを通じて戸籍情報を提供する方式により,添付省略が実現される。

【論点4-⑤】

 平成 29 年8月の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」において、全国の市区町村における戸籍謄本等の利用目的別の比率は「相続関係手続」が 33.9%に上ることが示されており、相続時においては、民間の手続きについても戸籍謄抄本の添付を求める手続が多数ある。国民負担の軽減の観点から、民間手続における戸籍謄抄本の利用についても可能な限り定量的・具体的に手続の種類・内容を把握したうえで、情報連携による添付省略の取組について、検討を開始すべきと考える。法務省としての見解をお示し願いたい。なお、十分にデジタル化が進まない中で、本籍地以外での戸籍謄抄本の請求が可能にすれば、都市部の自治体等において他の自治体分の戸籍請求も増えることも想定されるところであり、こうした問題について、法務省としてどのようにどのように考えているか、併せてお示し願いたい。

【回答4-⑤】

(民間手続における戸籍謄抄本の利用について)

 戸籍謄抄本については,利用目的別の比率の高い行政手続だけでなく,民間でも相続時においては添付を求める手続が多数あるものと承知している。

 この点に関し,デジタル・ガバメント実行計画の「死亡・相続ワンストップサービス」においては,「内閣官房は、戸籍情報連携システムの戸籍電子証明書(電子的な戸籍記録事項の証明情報)を活用した法定相続人の特定に係る遺族等の負担軽減策について、法務省と検討を行う」とされており,引き続き内閣官房の検討に協力してまいりたい。

 なお,【論点4-①】の回答で示した「本籍地以外での戸籍謄本の発行」により,本籍地以外の市区町村の窓口でも,自らや父母等の戸籍謄本の取得を可能とする広域交付の仕組みが導入されるため,国民の利便性向上に大きく資することとなると考える。

(「都市部の自治体等において他の自治体分の戸籍請求も増える」について)

 御指摘のとおり,人口が集中する都市部の自治体等においては,他の自治体の戸籍謄本の請求が増えることも想定されるところではあるが,国民の利便性向上のため,都市部の自治体等の理解を得つつ,所要の検討を進めてまいりたい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

戸籍謄本の交付は、自治体の収入にはならないのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【論点5-①】

平成 16 年から制度上可能となっているにもかかわらず、現在、導入している自治体は無いことについて、具体的な要因をどのように考えているか、ご説明願いたい。

【論点5-②】

論点5-①について、具体的な把握ができていないとすれば、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答5-①及び②】

 届出のオンラインシステムを導入しない理由について,証明書のオンラインシステムを導入する市区町村に聞いたところ,以下の課題があるとのことであった。

①オンライン届出と紙の届出が混在することとなり、処理が複雑となる。

  • オンライン届出情報の他市区町村への送付や添付資料の確認など検討課題が多い。
  • 戸籍のオンライン届出については,届出人や証人についても電子署名が必要であるなど,届出を行うまでのハードルが高く,現実的でない。

【論点5-③】

 死亡時における国民の手続負担軽減の観点からは、死亡・相続ワンストップサービスの利便性向上等が必要である。「第 14 回デジタル・ガバメント分科会(令和3年 3月 26 日)」において、死亡届及び死亡診断書(死体検案書)の提出をオンラインで完結する仕組みの構築に向けて、厚生労働省と共に検討を開始することが示されているが、具体的に何がいつまでにどの様な工程を経て実現されるのか、課題は何か、ご説明願いたい。

【回答5-③】

 死亡届及び死亡診断書(死体検案書)の提出をオンラインで完結する仕組みの構築に向けては,現在,デジタル庁及び厚生労働省とともに取り組んでいるところである。当省としては,市区町村長が死亡診断書の内容を確認することが可能な場合には,死亡の届書に死亡診断書の添付を省略することができる旨の戸籍法施行規則の改正を本年4月に実施したところである。

 電子死亡診断書を市区町村に送付する運用の実施に当たっての主な課題としては,HPKI(保健医療福祉分野の公開鍵基盤)カード電子署名や医療関係データの送付の仕組みの普及などがあると承知している。現在,関係府省の間で,添付省略の取扱いの実証的運用について,本年度中に実施する方向で調整中である。

【論点5-④】

 死亡届以外も、例えば出生届及び出生証明書のデジタル化や、離婚届と調停調書のデジタル化など、関係府省等と連携して、国主導でオンライン化・デジタル化の検討を進めることが、国民の利便性向上につながると考える。

 法務省としてデジタル化に向けた取組みに率先して取り組むことが必要と考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答5-④】

 戸籍届書の添付書類の電子化は,手続をデジタルで完結させるために必要な課題であり,重要な取組であると認識している。今後とも引き続き,添付書類の電子化について関係府省等と取り組んでまいりたい。

民事信託について

Aは私見です。

Q 信託目的と信託の目的(信託法2条1項)はどちらがよいか。

A 法律文書なので、可能な限り条文の通りに利用するのがよいと思います。。

Q 信託の目的は、箇条書きが良いのか。

A 限らない。読みやすさと意味が明確に分かることが重要。信託財産に属する財産として不動産がある場合、信託目録への記録をどのように記録するかを予め考えることも必要。

Q 信託の目的は、可能な限り具体的な記載が良いのか。

A 限らない。幅を取る事案もある。

Q 信託の目的に優劣を付けることもあり得るか。

A 原則として付けない。劣後する事柄を信託の目的から外す。

Q 信託契約の効力発生に停止条件を付ける場合、考慮することは何か。

A 必ず来ること(例:受託者が●歳になったとき)なら、停止条件を付けてもよいのではないかと思います。

Q 信託財産に属する財産について、不動産がある場合、所有権の移転時期について記載する必要があるか。

A 信託行為の効力発生日と同じ日である場合、記載する必要はない。異なるときは記載が必要。

Q 信託行為に瑕疵という用語は利用した方が良いのか。契約不適合責任(民法 562 条)という用語の方がよいのか。

A 分かりませんでした。条項を置く必要についても分かりませんでした。土地工作物責任については、条項を入れています。

民法(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

Q 信託行為について、「付保」という用語を利用する必要があるか。

A 受託者が理解出来るなら利用してよいと思います。

Q 追加信託の方法は、委託者と受託者の合意か。

A 委託者の地位の移転と併せて、受益者と受託者の合意による、としています。ただし、不動産登記申請については申請構造上異なります。

Q 道垣内弘人先生の書籍に記載されている事柄については、影響が大きいので、訴訟等になっても書籍記載の通りに記載しておけば大丈夫なのか。

A 分かりませんでした。

Q 信託財産責任負担債務について、民法上の債務引受契約についても信託行為に記録する必要があるか。

A 必要性が分かりませんでした。

参考 民法第四百七十条から第四百七十二条の四 

(信託財産責任負担債務の範囲)第二十一条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

―中略―

二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利

三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

Q 委託者の権利は、承継しない方がよいのか。

A 受益者連続型の信託について、上の追加信託の条項では、預貯金などの追加信託が出来なくなってもよければ、承継しないこともあり得ると思います。

参考 信託法(委託者の地位の移転)第百四十六条 委託者の地位は、受託者及び受益者の同意を得て、又は信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。

2 委託者が二人以上ある信託における前項の規定の適用については、同項中「受託者及び受益者」とあるのは、「他の委託者、受託者及び受益者」とする。

(遺言信託における委託者の相続人)第百四十七条 第三条第二号に掲げる方法によって信託がされた場合には、委託者の相続人は、委託者の地位を相続により承継しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

民法(相続の一般的効力)第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

Q 受託者の任務終了事由について、補助開始審判の開始、任意後見監督人の選任審判の開始を定め、不動産登記申請(受託者の変更)について共同申請を行うことは、慎重になるべきか。

A 入れても良いと思います。

(受託者の変更による登記等)

第百条 受託者の任務が死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散又は裁判所若しくは主務官庁(その権限の委任を受けた国に所属する行政庁及びその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関を含む。第百二条第二項において同じ。)の解任命令により終了し、新たに受託者が選任されたときは、信託財産に属する不動産についてする受託者の変更による権利の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、新たに選任された当該受託者が単独で申請することができる。

2 受託者が二人以上ある場合において、そのうち少なくとも一人の受託者の任務が前項に規定する事由により終了したときは、信託財産に属する不動産についてする当該受託者の任務の終了による権利の変更の登記は、第六十条の規定にかかわらず、他の受託者が単独で申請することができる。

Q 受託者の事務は具体的に記載されない場合、登記官などから権限がない、と理解されてしまう恐れがあるか。

A 原則として、信託法29条1項により信託の本旨の範囲内で事務を行うことが出来る。ただし、登記(抵当権設定登記申請)関係に関しては、後続登記のために、信託目録に記録しておくようにする。

信託法(受託者の注意義務)

第二十九条 受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。

相続税法(贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利)

第九条の二 信託(退職年金の支給を目的とする信託その他の信託で政令で定めるものを除く。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいう。以下この節において同じ。となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

2 受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至つた場合(第四項の規定の適用がある場合を除く。)には、当該受益者等が存するに至つた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して受益者等が存するに至つた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

3 受益者等の存する信託について、当該信託の一部の受益者等が存しなくなつた場合において、適正な対価を負担せずに既に当該信託の受益者等である者が当該信託に関する権利について新たに利益を受けることとなるときは、当該信託の一部の受益者等が存しなくなつた時において、当該利益を受ける者は、当該利益を当該信託の一部の受益者等であつた者から贈与(当該受益者等であつた者の死亡に基因して当該利益を受けた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

4 受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、当該給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた時において、当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた者は、当該信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であつた場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除く。)を当該信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

5 第一項の「特定委託者」とは、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除く。)をいう。

6 第一項から第三項までの規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる信託に関する権利又は利益を取得した者は、当該信託の信託財産に属する資産及び負債を取得し、又は承継したものとみなして、この法律(第四十一条第二項を除く。)の規定を適用する。ただし、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託の信託財産に属する資産及び負債については、この限りでない。

所得税法(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)

第十三条 信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、集団投資信託、退職年金等信託又は法人課税信託の信託財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用については、この限りでない。

2 信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除く。)は、前項に規定する受益者とみなして、同項の規定を適用する。

Q 残余財産の帰属先を信託行為で定めない場合はあるか。信託法182条、同法183条。

A 分かりませんでした。

信託法(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)

第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

Q 信託の期間を10年、30年と定めることはあるか。

A 分かりませんでした。その他の信託の終了事由が定められ、信託の変更方法の定め方次第ではあり得るのかなと感じます。

財産評価通達

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/08.htm#a-202

(信託受益権の評価)

202 信託の利益を受ける権利の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(平11課評2-12外・平12課評2-4外改正)

(1) 元本と収益との受益者が同一人である場合においては、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額によって評価する。

(2) 元本と収益との受益者が元本及び収益の一部を受ける場合においては、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額にその受益割合を乗じて計算した価額によって評価する。

(3) 元本の受益者と収益の受益者とが異なる場合においては、次に掲げる価額によって評価する。

イ 元本を受益する場合は、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額から、ロにより評価した収益受益者に帰属する信託の利益を受ける権利の価額を控除した価額

ロ 収益を受益する場合は、課税時期の現況において推算した受益者が将来受けるべき利益の価額ごとに課税時期からそれぞれの受益の時期までの期間に応ずる基準年利率による複利現価率を乗じて計算した金額の合計額

Q 住宅ローンを信託財産責任負担債務にした場合、債務控除は可能か。

A 分かりませんでした。参考:相続税法9条の2第2項、第6項。住宅ローンのみなのでしょうか。

Q 金融機関で、司法書士、行政書士、税理士が作成した信託契約書(案)を公正証書化した信託行為に基づいて、信託口口座を開設することは可能か。

A 金融機関によると思います。

Q 信託口口座は必要ない、と現在言われているのか。

A 私は聴いたことがないので、分かりませんでした。

Q 信託の目的は、7割から8割決まっているのか。

A 分かりませんでした。

Q 信託行為中に、受託者の権限として借入れを記載する必要があるか。

A 金融機関との事前確認によると思います。

Q 信託行為中に、信託の効力発生日を記載する必要があるか。

A 分かりませんでした。参考:信託法4条

民法(消費貸借)第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(寄託)第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる

Q 信託行為中に、信託財産である有価証券について、受託者が運用できることを記載する必要があるか。

A 受益者に不利益をもたらす可能性がある以上、必要だと思います。

Q 1000万円の金銭を信託財産に属する財産とする信託行為において、10万円の信託口口座を開設することがあるか。

A 分かりませんでした。

Q 追加信託の条項は、委託者が信託口口座に振込みを行った場合、追加信託の成立とみなす、という記載でよいか。

A 分かりませんでした。この条項だと、追加信託のために合意書などを利用する必要がなくなるのかなと感じました。

信託法(信託財産責任負担債務の範囲)

第二十一条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

―中略―

三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

―中略―

五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利

Q 信託行為に、信託法56条1項各号を全て記載する必要があるか。

A それぞれの立場の方によるのかなと思いました。

Q 後継受託者の定めについて、「受託者の死亡により任務が終了したときは、」とのみ記載した場合、注意することはあるか。

A 信託法56条1項但し書きが適用される可能性があると思います(後見開始又は保佐開始の審判を受けた場合、受託者が破産手続開始の決定を受けた場合には任務が終了しない。)。

Q 株式会社が受託者となる場合、他の事業と兼業可能か。定款の目的に、信託業法の適用を受けない受託者に就任すること、などの記載が必要か。

A 分かりませんでした。それぞれの立場の方の考え方だと思います。

令和4年度税制改正要望と令和4年度予算概算要求

気になったものをまとめておきます。

令和4年度税制改正要望

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/request/index.htm

沖縄県産酒類に係る酒税の特例措置の段階的廃止等

税目 酒税 内閣府沖縄振興局

 50年続いた本措置について、軽減率を段階的に引き下げ、終期を明示して廃止する最後の要望とする。具体的には、本措置の軽減率を、県内移出量等に応じて段階的に引き下げ、本措置の適用期限を、泡盛は 10年間(令和14年5月 14 日まで)、その他(ビール等)は約4年5月の間(ビール類の税率統一が行われる前日(令和8年9月30 日まで))とする。

信託における特定口座利用の明確化

税目 所得税 金融庁総合政策局総合政策課

 特定口座で管理されている上場株式等については、金融機関に信託できる旨を明確化すること。

 高齢化が進む中、認知判断能力や身体機能の低下時における資産形成・管理について、健常時から備えておくことの重要性が高まっている。このため、認知症等の発症に備え、事前に特定口座を開設するとともに、金融機関と信託契約を締結することで、顧客の資産管理を行うサービスが検討されているところ。しかしながら、特定口座で管理されている上場株式等については、金融機関に信託できるのか、税法上、必ずしも明らかではないため、当該サービスの提供に至っていない現状。※ 特定口座においては、金融機関が取得価額の管理や売却損益の計算、納税手続を行うため、顧客自身による確定申告が不要。

生命保険料控除制度の拡充 減収見込額 ▲61,800 百万円

税 目 所得税 金融庁総合政策局総合政策課

 所得税法上の生命・介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額を5万円とすること、また、所得税法上の保険料控除の合計適用限度額を15万円とすること。

死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ 減収見込額 ▲14,724 百万円

税目 相続税 金融庁総合政策局総合政策課

 死亡保険金の相続税非課税限度額について、現行限度額※に「配偶者及び未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算すること。※ 法定相続人数×500 万円

相続登記の促進のための登録免許税の特例措置の拡充及び延長

税目 登録免許税 法務省

 所有者不明土地等問題への対策を更に推進するため,現行の租税特別措置法第84条の2の3の規定に基づく登録免許税の免税措置の適用期限を3年延長するとともに,その適用対象についても拡充するなどの措置を講ずる必要がある。

所有者不明土地・建物の解消に向けた不動産登記法の改正を踏まえた登録免許税の特例の新設 

税目 登録免許税 法務省

 所有者不明土地等問題の抜本的な解決に向けて,相続登記や住所等の変更登記の申請の義務化や新たな職権的登記の創設等を内容とする不動産登記法の改正を踏まえ,所有者不明土地・建物の解消及び発生予防のための対策として登録免許税に係る必要な措置を講ずる。

緊急小口資金等の特例貸付に係る非課税措置の創設

税目 所得税 厚生労働省

 新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少等により生活に困窮される方を対象に、緊急小口資金等の特例貸付として、都道府県社会福祉協議会が最大 200 万円までの貸付を実施している。この特例貸付については、新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み、生活に困窮された方の生活にきめ細かに配慮するため、償還時に住民税非課税世帯の場合は償還を免除することができる特例を設けているところ、その債務免除益について、非課税措置を講じる。

ひとり親家庭住宅支援資金貸付金に係る非課税措置の創設

税目 所得税、国税徴収法 厚生労働省

 自立に向けて意欲的に取り組むひとり親への支援として住居費の貸付を行う「ひとり親家庭住宅支援資金貸付金」において一定の条件を満たした場合に免除される返済の免除益や、ひとり親が教育訓練を受講する場合の受講費を助成する自立支援教育訓練給付金及び修学中の生活費等を補助する高等職業訓練給付金の拡充分等について、非課税措置等を講ずる。※母子及び父子並びに寡婦福祉法第 31 条の3及び第 31 条の4(第 31 条の 10 で準用する場合を含む)

基金拠出型医療法人における負担軽減措置の創設 減収見込額 ▲12,979百万円

税目 所得税、相続税、贈与税 厚生労働省

 持分なし医療法人への移行を促進するため、持分の払い戻しが経営に与えるリスクの高い医療法人について、持分あり医療法人から基金拠出型医療法人へ移行する際に、当初出資金を超える部分に課税される「みなし配当課税」を、基金が払い戻しされるまでの間、納税猶予する措置を講ずる。さらに、基金拠出型医療法人への移行後、相続・贈与発生時の基金にかかる相続税・贈与税を猶予する措置を講ずる。※医療法施行規則第 30 条の 37 及び第 30 条の 38

印紙税のあり方の検討

税目 印紙税  経済産業省 経済産業政策局 企業行動課

 印紙税は経済取引における契約書や領収書等に対して課せられる文書課税であるが、近年の電子取引の増大等を踏まえ、制度の根幹からあり方を検討し見直す。

コロナ禍等を踏まえた法人版・個人版事業承継税制に関する検討 制度自体の減収額 (▲58,000 百万円)

税目 相続税 贈与税 経済産業省中小企業庁事業環境部財務課

(租税特別措置法第70条の6の8から第70条の7の8まで、租税特別措置法施行令第40条の7の8から第40条の8の8まで、租税特別措置法施行規則第23条の8の8から第23条の12の5まで)

 法人版・個人版事業承継税制における円滑な事業承継の実施のための措置について検討する。具体的には、非上場株式等に係る納税猶予制度について、コロナ禍の影響も含め、事業承継の実施状況や本税制の活用状況等を踏まえ、必要な税制措置を検討する。また、個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度について、事業承継を促進する観点から、同族会社や事業用資産を有しない個人との課税の公平性や、制度の濫用を防止する観点等を踏まえつつ、青色申告書の貸借対照表に計上される事業用資産を対象とすることを検討する。

所有者不明土地法に基づく土地収用法の特例対象拡大に伴う特例措置の拡充

税目 所得税、法人税 国土交通省不動産・建設経済局土地政策課

 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「所有者不明土地法」という。)に定める土地収用法の特例により収用又は使用される土地の対象範囲の拡大に伴い、土地収用法に基づく収用等の場合と同様の税制上の特例につき、以下の内容を措置する。

令和4年度予算概算要求

https://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_002340.html

空き家対策、所有者不明土地等対策及び適正な土地利用等の促進 [76 億円(1.11)

https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/22syokan/

歯科保健医療提供体制の整備【推進枠】 6.9億円(2.1億円)

 「歯科保健医療ビジョン」や新型コロナウイルス感染症への対応等も踏まえた各地域での施策が実効的に進められるよう、好事例の収集・分析及び周知等、歯科保健医療提供体制の構築に向けて取り組む。また、歯科専門職間の連携を進め、より質の高い歯科医療を提供する観点から、歯科衛生士・歯科技工士を確保するため、離職防止・復職支援のために必要な経費を支援する。

人生の最終段階における医療・ケアの体制整備【一部推進枠】1.4億円(1.2億円)

 人生の最終段階における医療・ケアを受ける本人や家族等の相談に適切に対応できる医師、看護師等の育成に加え、人生会議(※)を普及・啓発するため、国民向けイベントを行うなど、人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境整備を更に推進する。※ 人生会議:人生の最終段階で希望する医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組。ACP(Advance Care Planning)の愛称。

成年後見制度の利用促進【一部新規】【一部推進枠】9.5億円(5.9億円)

保健医療情報を医療機関等で確認できる仕組みの推進【一部推進枠】23億円(4.5億円)

保健医療情報を本人や本人の同意を得た全国の医療機関等で確認できる仕組みに関し、データヘルス改革に関する工程を踏まえ、オンライン資格確認等システムの改修を行う。また、今後の情報項目のさらなる拡充に向け、必要な実証事業等を行う。

電子処方箋の安全かつ正確な運用に向けた環境整備【新規】【推進枠】9.6億円

新規学卒者等(専門学校生等)への就職支援【新規】【一部推進枠】 4.6億円

第2の就職氷河期世代をつくらないよう、新卒応援ハローワーク等に就職支援ナビゲーターを新たに配置し、特に新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けた分野の専門学校生・未就職卒業者への支援を強化する。

子どもらしい生活を送ることができないヤングケアラーや育児等に不安を抱える家庭に対する相談支援、家事・育児の支援【一部新規】【一部推進枠】

低所得の妊婦に対する妊娠判定料支援や訪問支援など妊産婦等への支援【新規】【推進枠】19億円

https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2022/index.html

事業承継・引継ぎ・再生支援事業【47.1 億円(16.2 億円)

デジタル庁と連携し、「G ビズ ID」や「J グランツ」等のデジタルサービスを通じ、行政手続効率化や行政データ活用を実現するデジタル・ガバメントを推進する。 経済産業省デジタルプラットフォーム構築事業【28.8 億円(20.7 億円)】 うち 27.4 億円はデジタル庁計上

https://www.moj.go.jp/kaikei/bunsho/kaikei02_00074.html

所有者不明土地等問題への対応及び地図整備の推進

令和4年度概算要求等額 6,989百万円(210百万円増)

 「経済財政運営と改革の基本方針」や「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」等の政府方針に基づき,所有者不明土地等問題の解消や相続登記の促進,登記所備付地図の整備等の取組を推進する。

法務行政における質の向上及び業務の効率化を図るためのデジタル化の推進

令和4年度概算要求等額 58,705百万円(9,019百万円増

Webブラウザのみで登記申請手続を可能に

スマートフォンで登記情報提供サービスの利用を可能に

戸籍事務におけるマイナンバー制度の利活用の推進

令和4年度概算要求等額 25,430百万円(18,217百万円増

マイナンバーの提供等による戸籍謄抄本の添付省略

戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略

本籍地以外の市区町村での戸籍謄抄本の発行

https://www.jinji.go.jp/kisya/2108/gaisanyokyu4.html

国家公務員志望者増に向けた人材発掘施策の新規展開 68(新規)

妊娠、出産、育児等と仕事の両立に係る啓発 9(1)

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kanbo04_02000169.html

デジタル時代における郵便局等の公的地域基盤連携の推進 1.0 億円

https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420668_00003.htm

GIGAスクール運営支援センター整備事業 令和4年度要求・要望額 64億円(新規)

学習者用デジタル教科書普及促進事業 令和4年度要求・要望額 57億円(前年度予算額 22億円)

CBTシステム(MEXCBT)等の機能改善と拡充令和4年度要求・要望額 10億円(前年度予算額 6億円)

高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)16,069百万円(15,890百万円)

デジタル署名検証ガイドライン第 1.0 版

デジタル署名検証ガイドライン第 1.0 版 2021年3月31日

NPO 法人日本ネットワークセキュリティ協会電子署名ワーキンググループ

https://www.jnsa.org/result/e-signature/2021/index.html

加工

目次

1はじめに …………….. – 1

-1.1 背景と目的 ……………………………………………………………………………… – 1

-1.2 スコープ …………………………………………………………….. – 1

-1.3 本書の位置付けと構成 ………………………………………… – 1

 -2 参照文献 ……………………………………………………………………………………. – 3 –

2.1 引用規格 …………………………………………………………………………………… – 3 -2.2参考文献………………………………………… …………… – 4

 -3 用語定義と略語 …………………………………………………………………………… – 5

-3.1 用語 …………………………………………………………………………………… – 5

 -3.2 略語 …………………………………………………… – 8

-4 デジタル署名 ………………………………………………………………………………… – 9

 -4.1 デジタル署名の概念モデル …………………………………………………….. – 9 –

4.1.1 デジタル署名の基本原理 ………………………………………………………… – 9 –

4.1.2 電子証明書と認証局、公開鍵基盤(PKI) ……………………………………….. – 9 –

4.1.3 デジタル署名のメカニズムと基本要件 ……………………………………… – 11 –

4.1.4 署名データの形式 ……………………………………………………………. – 13 –

4.2 時刻の保証と長期署名フォーマット …………………… – 15 –

4.2.1 時刻情報とタイムスタンプ局 …………………………………………… – 15 –

4.2.2 長期的な署名の担保と署名の延長 ………………………………………… – 15

4.2.3 AdESフォーマット ……………………….. – 18 –

5 デジタル署名の検証 ………………………………………… – 21 –

5.1 署名検証の概念モデル ………………………………… – 21 –

5.1.1 署名検証の基本要件 ……………………………. – 21 –

5.1.2 検証のアプリケーションモデル ………………………………….. – 22 –

5.1.3 署名判定結果の概念モデル ……………………………………………….. – 23 –

5.1.4 要求レベル(必須とオプション)の考え方 ………………………. – 24 –

5.2 検証プロセス …………………………………………. – 25 –

5.2.1 検証プロセスの考え方 ……………………………………………………… – 25 –

5.2.2 トラストアンカー ………………………………………………………. – 26 –

5.2.3 証明書 …………………………………………….. – 26 –

5.2.4 失効情報 ………………………………………………………….. – 26 –

5.2.5 暗号アルゴリズムの脆弱性に関する情報 …………………… – 27 –

5.2.6 タイムスタンプ …………………………………………. – 27 –

5.2.7 検証基準時刻(validation reference time)…………………….. – 27 –

5.2.8 署名要素に対する制約 …………………………………….. – 28 –

5.3 検証データの全体構造 ………………………………………. – 29 –

5.3.1 署名者による署名(AdES-BES) …………………………………………. – 29 –

5.3.2 署名タイムスタンプ付き署名(AdES-T) ……………… – 30 –

5.3.3 検証情報付き署名(AdES-X-Long) …………………………………….. – 31 –

5.3.4 アーカイブ付き署名(AdES-A) ……………………………. – 32 –

5.4 検証基準時刻と検証の観点 ………………………….. – 33 –

5.4.1 AdES-BES検証における検証基準時刻と検証の観点 ………… – 33 –

5.4.2 AdES-T検証における検証基準時刻と検証の観点…………… – 34 –

5.4.3 AdES-X-Long検証における検証基準時刻と検証の観点 ………………. – 37 –

5.4.4 AdES-A検証における検証基準時刻と検証の観点…………. – 40 –

5.5 署名の検証要件 …………………………………. – 46 –

5.5.1 アルゴリズムの有効性の確認 ……………………. – 46 –

5.5.2 CAdESの検証要件 ………………………………. – 46 –

5.5.3 XAdESの検証要件 …………………………. – 51 –

5.5.4 PAdESの検証要件 ………………………. – 58 –

5.6 タイムスタンプの検証要件 ……………………… – 66 –

5.6.1 タイムスタンプ ……………………. – 66 –

5.6.2 署名タイムスタンプ …………………… – 70 –

5.6.3 アーカイブタイムスタンプ …………………… – 71

5.6.4 ドキュメントタイムスタンプ ……………………….. – 75 –

5.7 証明書の検証要件 ……………………………………………. – 77 –

5.7.1 AdES-BESにおける証明書 …………………………………………. – 77

 -5.7.2 AdES-Tにおける証明書 …………………………………… – 81

 -5.7.3 AdES-Aにおける証明書 ……………………. – 84

 -付属書 A (規定):供給者適合宣言書及び供給者適合宣言書の別紙 . – 86 –

A.1 序文 ……

A.2 供給者適合宣言書の様式 ………………………. – 86 –

A.3 供給者適合宣言書の別紙の様式 ………………………. – 86 –

A.4 検証手順 ……………………………. – 87 –

A.4.1 共通 ………………………………………… – 87 –

A.4.2 CAdES 検証 …………………………………………………… – 88 –

A.4.3 XAdES 検証 ………………………. – 89 –

A.4.4 PAdES 検証 ……………………………………….. – 90 –

A.5 データ …………………………………………. – 91 –

A.5.1 タイムスタンプトークンデータ要素 ………………… – 91 –

A.5.2 CAdES データ要素 ……………………………………… – 93 –

A.5.3 XAdES 構文のXML要素 …………………….. – 94 –

A.5.4 PAdESのデータ要素 ………………………… – 95 –

A.6 X.509 証明書 …………………………………. – 97 –

A.6.1 X.509 証明書パス検証 ……………………………………………….. – 97 –

A.6.2 署名者証明書のX.509証明書パス検証 …………………. – 98 –

A.6.3 TSA証明書のX.509 証明書パス検証 …………………. – 98 –

付属書

B (参考): PAdES関連情報 …………………………… – 99 –

B.1 PAdES署名レベル判定 …………………………….. – 99 –

B.2 PAdES複数署名 …………………………………………. – 100 –

B.3 PAdES署名後の増分更新 ……………………………… – 101 –

B.4 PAdES署名とPDF暗号化仕様 ……………………………. – 102 –

B.5 PAdES署名のAcrobat Readerによる検証 ………………… – 103

-付属書 C (参考): 暗号アルゴリズム ……………… – 104 –

C.1 暗号アルゴリズムや鍵長の安全性確認の困難さについて …… – 104 –

C.2 AdES署名検証の暗号アルゴリズム及び鍵長の安全性判断基準の一例. – 108 –

– 1 -1 はじめに

1.1 背景と目的

 デジタル化とネットワーク化の進展に伴い、デジタルデータの保証と取り扱う人やサービスの信頼性が、これまで以上に必要とされるようになっている。中でもデータの作成責任とその真正性は、アナログ時代においては「署名」や「押印」によって担保されてきた。デジタル時代においては、それに相当する技術として「電子署名」がある。署名は文書等にそれが付与され、受領者が署名を確認することで文書等の真偽や価値の判断材料となる。しかし、可視データであるアナログの「署名」や「押印」と違い、「電子署名」は機械処理としての「署名検証」が必要であり、検証ツール(ソフトウェア)に依存することになる。さらに、電子署名は様々な要素から構成されており、その判定は注意を要する。その判定基準が検証ツールによって異なると、同じデータに対する判定が異なる結果となり、デジタル化の阻害要因となりかねない。それを防ぐため、次世代電子商取引推進協議会(ECOM)平成18 年度成果「電子文書長期保存ハンドブック」など、署名検証の判定基準について検討されてきた。本書は、電子署名のうち公開鍵暗号技術に基づくデジタル署名について検証のガイドラインを示すため、タイムビジネス協議会(TBF)2013 年作成の「電子署名検証ガイドライン」を引き継いで更新したものである。

1.2 スコープ

 電子署名とは、電磁的記録(電子文書)に関連付けられ、検証により確認可能な、電子的措置であり、その効力を持たせるために様々な方式がある。欧米では電子署名(electronicsignature)とデジタル署名(digital signature)を区別し、電子署名は広い意味で、本人と電子文書との関係を示すために本人が作成した電子データを指し、デジタル署名は、署名者の身元とデータが改ざんされていないことを、公開鍵暗号技術を使って検証できる技術を指す。本書では、デジタル署名の中でも特に規格が整備され、相互運用性、国際流通性に優れた先進電子署名(AdES)を取り上げ、以後、電子署名(又は単に署名)と記した場合はこれを指すものとする。特に規約部分では、国際標準として規定された CAdES、XAdES、PAdES のプロファイルを対象として検証の処理を示す。なお、本書では技術的な判定基準について述べるが、法的有効性に関してはスコープ外とする。

1.3 本書の位置付けと構成

 本書は、先進電子署名(AdES)の検証処理に関するガイドライン(規約部分を含む)を定めるものである。・ 規約には技術的有効性を確認するための要件を定義する。- 署名検証の共通要件と CAdES、XAdES、PAdES の固有要件とを定義する。

 規約には、技術的な安全性確保を優先して決定した値を規定する(規定値と呼ぶ)こととし、各国の法規制等に依存する要素や適用領域の事情に依存する要素は極力排除することとする。

・ アプリケーションの提供者が各実装における規定値との差分を明示するための供給者による適合宣言書の書式を提供する。

対象読者:・ 署名検証システムあるいはサービスの利用者。

・ 署名検証システムあるいはサービスの調達者。

・ 署名検証システムあるいはサービスの開発者(設計者及び実装者)。

構成:・ 1 章:本章。本書のスコープ、対象読者、構成、使い方を記す。

・ 2 章:本書が準拠すべき規格(引用規格)と参考となる文献(参考文献)を記す。

・ 3 章:用語定義と略語を記す。

・ 4 章:署名の基本概念とデータ形式を記す。

・ 5 章:署名検証の概念モデルと検証の詳細要件(規約部分)を記す。

・ 付属書:供給者適合宣言書の書式及び実装に関わる参考情報等を記す。

推奨する参照範囲:

・ 利用者は 3 章を参照し、4 章、5.1 節を読むことを推奨する。

・ 調達者は 3 章を参照し、4 章、5 章を読むことを推奨する。

・ 開発者は 2 章及び 3 章を参照し、4 章、5 章、付属書を読むことを推奨する。

2 参照文献

2.1 引用規格

[1] ISO 14533-1:2014:「商取引、産業におけるプロセス、データ要素、およびドキュメントおよび管理-長期署名プロファイル-パート1:長期署名CMS高度電子署名(CAdES)のプロファイル」

[2] ISO 14533-2:2012:「商取引、産業におけるプロセス、データ要素、およびドキュメントおよび管理-長期署名プロファイル-パート2:長期署名XML高度電子署名(XAdES)のプロファイル」

[3] ISO 14533-3:2017:「商取引、産業におけるプロセス、データ要素、およびドキュメントおよび管理-長期署名プロファイル-パート3:長期署名PDF高度電子署名(PAdES)のプロファイル」

[4] ISO 32000-2:2017:「ドキュメント管理-ポータブルドキュメントフォーマット-パート2:PDF 2.0 “

[5] EN 319 122-1:「CAdESデジタル署名。パート1:ビルディングブロックとCAdESベースライン署名」

[6] EN 319 122-2:「CAdESデジタル署名。パート2:拡張CAdES署名」

[7] EN 319 132-1:「XAdESデジタル署名。パート1:ビルディングブロックとXAdESベースライン署名」

[8] EN 319 132-2:「XAdESデジタル署名。パート2:拡張XAdES署名」

[9] EN 319 142-1:「PAdESデジタル署名。パート1:ビルディングブロックとPAdESベースライン署名」

[10] EN 319 142-2:「PAdESデジタル署名。パート2:追加のPAdES署名プロファイル」

[11] IETF RFC 5280:「インターネットX.509公開鍵インフラストラクチャ証明書と証明書失効リスト(CRL)プロファイル」。

[12] IETF RFC 6818:「インターネットX.509公開鍵インフラストラクチャの更新証明書および証明書失効リスト(CRL)プロファイル」

[13] IETF RFC 8398:「X.509証明書の国際化された電子メールアドレス」

[14] IETF RFC 8399:「RFC5280の国際化アップデート」

[15] ISO / IEC 9594-8:2017:「情報技術-オープンシステム相互接続-ディレクトリ–パート8:公開鍵および属性証明書フレームワーク」。

[16] W3C勧告:「XMLSignature構文および処理バージョン2.0」、2015年

[17] IETF RFC 3161:「インターネットX.509公開鍵インフラストラクチャ;タイムスタンププロトコル(TSP)」。

[18] IETF RFC 5816:「RFC3161のESSCertIDv2アップデート」

[19] IETF RFC 5652:「暗号化メッセージ構文(CMS)」。

[20] IETF RFC 8933:「アルゴリズムの暗号化メッセージ構文(CMS)の更新識別子の保護」

[21] IETF RFC 4998:「エビデンスレコード構文(ERS)」。

[22] IETF RFC 6283:「ExtensibleMarkup Language Evidence RecordSyntax(XMLERS)」

2.2参考文献

[i.1] IETF RFC 4158:「インターネットX.509公開鍵インフラストラクチャ:認証パス建物”。

[i.2] TS 119 172-1:「署名ポリシー;パート1:ビルディングブロックと目次人間が読める署名ポリシー文書の場合」

[i.3] TS 119 172-2:「署名ポリシー;パート2:署名ポリシーのXML形式」

[i.4] TS 119 172-3:「署名ポリシー;パート3:署名ポリシーのASN.1形式」

[i.5] TS 119 172-4:「署名ポリシー;パート4:の署名検証ポリシー信頼できるリストを使用したヨーロッパの資格のある電子署名/シール」

[i.6] IETF RFC 6960:「X.509インターネット公開鍵インフラストラクチャオンライン証明書ステータスプロトコル-OCSP」。

[i.7] EN 319 102-1&TS 119 102-1:「AdESの作成と検証の手順デジタル署名; パート1:作成と検証」

[i.8] TS 119 102-2:「AdESデジタルの作成と検証の手順署名; パート2:署名検証レポート」

[i.9] IETF RFC 5698:暗号化のセキュリティ適合性のためのデータ構造アルゴリズム(DSSC)

[i.10] 電子文書長期保存ハンドブック:次世代電子商取引推進協議会,2007.3https://www.jipdec.or.jp/archives/publications/J0004262[i.11] 電子署名検証ガイドライン V1.0.0:タイムビジネス協議会 調査研究 WG, 2013.6.5

3 用語定義と略語

3.1 用語用語は一般的なものを除き、ISO、IETF RFC、JIS、ETSI などの規格に基づく。引用規格(normative references):本書が参照する規格。

 ベース仕様(base specification):プロファイルのベースとなる仕様。例えば PAdES であれば、ベース仕様は PDF の ISO 32000-2 となり、プロファイルは ISO 14533-3 となる。

 プロファイル(profile):標準化においてプロファイルとは、ベースとなる仕様(引用規格)の部分集合(サブセット)となる。先進電子署名においては、ISO 14533 シリーズで定義された ISOプロファイルと、欧州のEN としての Baseline 署名(プロファイルと呼んでいないが事実上はプロファイル)がある。

先進電子署名(Advanced Electronic Signature (AdES)):次の要件を満たす電子署名。

1) 署名者とユニークに関係付けられている

2) 署名者を特定することができる

3) 署名者単独の制御下にある手段で生成される4) その後データが改ざんされたことを発見できるような方法でデータと関連付けられている注:以降、本書では先進電子署名を「署名」と略して用いる。

【コラム1】■AdES という呼称の経緯

 1999 年に発行された EU 電子署名指令(Directive 1999/93/EC)で”Advanced ElectronicSignature”が定義されている。”Advanced Electronic Signature”は日本では「先進電子署名」あるいは「高度電子署名」と訳される。ただし、略称となる”AdES”は用いられていない。初期 ETSI の電子署名に関する規格(例えば”ETSI TS 101 733 V1.2.2 (2000-12);Electronic signature formats”)でこの定義を参照しているが、”Advanced ElectronicSignature”の略称として”AdES”を当ててはいない。

 最初に”AdES”の略称を用いたのは”ETSI TS 101 903 V1.1.1 (2002-02); XML AdvancedElectronic Signatures (XAdES)”であり、その後、CMS の電子署名規格(ETSI TS 101 733V1.6.3 (2005-09); CMS Advanced Electronic Signatures (CAdES))でも”AdES”(実際には”CAdES”であるが)が用いられるようになった。2014 年に成立したEU のeIDAS 規則(eIDAS Regulation)でも電子署名指令の定義は引き継がれており、”Advanced Electronic Signature”に対して電子署名指令とほぼ同等の定義が与えられているが、略称”AdES”が用いられていないのは電子署名指令と同様である。またeIDAS 規則では自然人が生成する電子署名(Electronic Signature)に加え、法人が生成する e シール(Electronic Seal)の概念を導入し、”Advanced Electronic Seal”の要件を定義している。その後、ETSI では”ETSI TS 119 122-1 V1.0.1 (2015-07)”や”ETSI TS 119 102-1 V1.0.1(2015-07)”などの規格から、”AdES”を略称ではなく固有名詞として扱い、CMS、XML、PDF それぞれに対する署名として”CAdES Digital Signature”、”XAdES Digital Signature”、”PAdESDigital Signature”を、又その総称として”AdES Digital Signature”を用いるようになった。

“AdES”が”Advanced Electronic Signature”あるいは”Advanced Electronic Seal”のどちらの略称であるかが区別できないこと、両者の要件を満たす共通技術としてデジタル署名(Digital Signature)が想定されていること、ETSI が制定する規格がデジタル署名を対象としていることなどからそのような対応となったと考えられる。

 署名レベル(signature level):先進電子署名において、プロファイル定義されている 4 つの署名のレベル(生成段階)を示す。

 証明書の認証パス検証(certification path validation):証明書チェーンの有効性を確認する処理。

 (署名検証)制約(constraints)/検証制約(validation constraint):先進電子署名の有効性を検証するときに署名検証アプリケーション(SVA)が照合する、規則、値、範囲、計算結果の抽象的に定式化したもの。形式的な署名ポリシー、設定ファイル、あるいは SVA の処理に組み込まれたものとして定義できる。

 署名対象データ(data to be signed):署名されるデータ(例えば、文書や文書の部分)。注:署名対象データは、公開鍵暗号技術による署名処理の入力となる。署名対象データと署名属性を入力として与える方法の仕様は、署名フォーマットごとに標準規格で定義される。

 駆動アプリケーション(Driving Application (DA)):SVA と呼ばれる電子署名検証のためのアプリケーションに対して検証対象や制約情報を与えて検証を依頼するアプリケーション。SVA は DA に対して検証結果を返す。

 署名ポリシー(signature policy):署名の生成や検証のための規則の集合。これに基づいて、特定のトランザクションの文脈における署名の有効性が決定する。

 署名検証(signature verification):検証対象のデータに対して公開鍵暗号技術により、改ざんがないことを確認する処理。

 署名有効性検証(signature validation):署名の有効性を確認する処理。証明書の有効性検証や、署名検証を含め、署名がローカルなあるいは共通の署名ポリシーが要求することに従っているかどうかを総合的に確認することを含む処理。注:verification と validation の違い

・verification:正しいこと/事実であることを確かめる/実証する/検証すること

・validation:有効であること/妥当であることを認める/確認する/認証すること

 署名検証アプリケーション(Signature Validation Application (SVA)):本書に定義された署名有効性検証処理を実装したアプリケーション。注:署名有効性検証アプリケーションは、駆動アプリケーション(DA)との間で検証結果をやり取りする。

 検証情報(validation data):署名者や検証者によって収集された、署名の有効性検証に必要なデータ。注:証明書、失効情報(CRL や OCSP Response)、タイムスタンプなどを含む。

 検証者(verifier):署名の有効性検証や検証を行うエンティティ。

3.2 略語

BES 基本的な電子署名それ認証局

CRL 証明書失効リスト

DA 運転アプリケーション

EPES 明示的なポリシーベースの電子署名

LT 長期からアーカイブタイムスタンプ付きの長期

LTV 長期検証OCSPオンライン証明書ステータスプロトコル

OID オブジェクト識別子

PKIX Public Key Infrastructure using X. 509、IETF PKIX ワーキンググループ

RSA Rivest,Shamir,Adleman による公開鍵暗号方式全て署名検証アプリケーション

TSA タイムスタンプ機関

TSTタイムスタンプトークン

URI ユニフォームリソース識別子

4 デジタル署名

4.1 デジタル署名の概念モデル

4.1.1 デジタル署名の基本原理

 紙文書や物理的な媒体における署名(サイン)や押印は、署名対象の作成者を示すとともに、署名対象が真正であることを示すためのものである。電子文書など電子データにおいても、その作成者(文責)と非改ざん性を証明するために、様々な電子署名方式が考案されている。中でも公開鍵暗号を用いたデジタル署名は、技術の整備と標準化が進み、最も普及している署名方式と言える。デジタル署名では、公開鍵暗号の署名鍵で生成した署名は、対となる検証鍵でのみ有効性を検証できる。また署名鍵を署名者のみが保有する秘密鍵(Private key:私有鍵とも呼ばれる)とすることで、他人が同じ鍵を生成できず、検証鍵を公開して公開鍵(Public key)とすることで、誰でも検証可能となる。つまり、秘密鍵を保有する人が署名したことと、検証結果により元のデータの改ざん有無が分かる。

図 4.1.1-1 公開鍵暗号による署名・検証なお、公開鍵暗号の一種である RSA 暗号の場合、署名処理として暗号化、検証処理として復号が行われる。

4.1.2 電子証明書と認証局、公開鍵基盤(PKI)

署名の本人性を確保する上での前提事項は以下の2点である。

1 署名者本人以外が秘密鍵を使用できないこと

2公開鍵が、署名者の所有する秘密鍵とペアとなるものであることが担保できること

 本人以外が使用できないことについては、一般的にはIC カードなどに格納して本人が適切に管理することにより実現される。その上で署名の本人性を担保するには、公開鍵が誰のものであるかを保証することが重要となる。“信頼できる第三者機関”(Trusted Third Party、以下 TTP)が公開鍵の所有者(ペアとなる秘密鍵の所有者)を保証するモデルが認証局モデルである。認証局(CA)は利用者(秘密鍵の所有者)の本人確認を実施した上で公開鍵の所有名義人であることを証明する公開鍵証明書の発行を行い、利用者と公開鍵の紐付けを保証する。公開鍵証明書には発行元の認証局のデジタル署名が付与され、一般的には電子証明書とも呼ばれる(本書では以下、証明書と記す)。

 本人確認等を行い、利用者と鍵の紐付けを担う機能を取り出して登録局(RA)と呼ぶことがある。

図 4.1.2-1 認証局と公開鍵証明書

【コラム2】■電子署名の法的定義電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律(平成 12 年 5 月 31 日法律第百二号))2 条 1 項にて、「電子署名」は、以下のとおり規定されている。

―――「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。(一部省略)―――

つ まり、本人性が確認できること、及び、改ざん検知ができることが電子署名の要件となっている。従って、電子署名の有効性を検証する場合は、「本人性の確認」、「署名対象データの非改ざん性の確認」の2点を実施する必要がある。また、同法は、自然人を対象としており、電子署名に法的有効性を与えている(同 3 条)。

 なお、同法による認定を受けた特定認証業務(認定認証業務とも呼ばれる)では証明書の有効期間は5年を超えないもの(同法、施行規則第6条)とされており、認定以外の認証業務においても、署名に用いる証明書の有効期間の基準とされている。なお、認証局同士が連携して信用関係を構築することがある。階層型の信用関係の場合、上位の認証局が下位の認証局の証明書を発行し、最上位の認証局(ルートCA)は自分で自分を証明する自己署名証明書を発行する。上位の認証局に証明される認証局は中間CA(IntermediateCA)と呼ばれる。

 また、署名者は秘密鍵を安全に管理する必要があるが、秘密鍵の紛失や、秘密鍵の活性化に用いるパスワードの漏洩などにより、秘密鍵が危殆化(本人性の証明に使えなくなる状態)する可能性がある。その場合、署名者は認証局に失効申請を行い、これを受けた認証局は無効となった証明書のシリアル番号を記載した失効情報に認証局の電子署名を付与して開示する。この失効情報は証明書失効リスト(CRL:Certificate Revocation List)と呼ばれ、その更新頻度は失効した証明書の追加に合わせて実施される不定期な更新と、定期更新がある。

図 4.1.2-2 認証局の階層構造と公開鍵証明書

4.1.3 デジタル署名のメカニズムと基本要件

 デジタル署名の署名データは、署名対象文書に対して、署名鍵を用いて署名アルゴリズムによる所定の署名処理を施したものである。RSA 署名の場合、署名対象文書に対して、ハッシュ関数にて演算実施、得られたハッシュ値を公開鍵暗号方式により署名者の秘密鍵を用いて暗号化したものとなる。

 署名の有効性を検証する際は、署名データを署名者の公開鍵で検証処理を行う。RSA 署名の場合、公開鍵で復号して得られたハッシュ値と、署名対象文書からハッシュ演算をして得られるハッシュ値を比較し、双方のハッシュ値の一致を確認することにより、公開鍵と秘密鍵の紐付け、及び、署名対象文書が改ざんされていないことが確認できる。図 4.1.3-1 署名と署名検証(RSA 署名の場合)に RSA 署名のメカニズムを示す。

図 4.1.3-1 署名と署名検証(RSA 署名の場合)

 また、署名を実施する際には、その目的に応じ、以下の要件に留意する必要がある。

(1)署名文書の利用用途に応じた適切な証明書を用いること

 目的に応じて利用できる証明書の範囲(例、認定認証業務など)が示されている場合それに従うこと。認証局が開示する「証明書ポリシー」(Certificate Policy、以下 CP)に発行基準や用途が規定されているので、該当する認証局から署名者本人に対して発行された正当な証明書を利用する必要がある。

(2) 署名を実施する際に証明書の有効期間を越えていないこと

 証明書の有効期間は発行時点に設定されているが、電子署名を実施する時点においてこの有効期間を越えていないことが必要となる。

(3) 失効していない証明書を用いること

署名時点で失効していない証明書の秘密鍵を用いる必要がある。

(4) 署名文書の利用期間を通じて、署名の正当性が確認可能であること。

 法定保存期間等、署名文書の真正性の維持継続が必要な期間、署名の検証を可能とする必要がある(証明書の有効期間を越えて署名検証を行う場合は、後述の AdESフォーマットなどを採用する必要がある。)。

 なお、署名に用いられるハッシュ関数や暗号アルゴリズムは、計算機関連の技術進化とともに解読のリスクが高まるため、署名の正当性確認を可能とするためには、より長い鍵、より強度の高いアルゴリズムに移行していかなければならない。

【コラム3】■署名の基本要件(4)の規定例

 国税関係書類においては、電子帳簿保存法施行規則(第 3 条第 5 項第 2 号ロ(3))にて定められ、同法取扱通達 4-26 にてその方法について解説されている。また、医療関係書類では、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第 5.1 版」6.12 節にて定められ、法定保存期間等の一定の期間、電子署名の検証が継続できる必要があるとされている。

4.1.4 署名データの形式

 署名データは標準規格により、署名対象のデータとそのハッシュ値を暗号化した署名値及び各種パラメータ(属性)を含めて、下図の論理構成として規定されている。

図 4.1.4-1 署名データの論理構成

 署名対象データと署名データは 1 つのファイルに統合して作成することもできるが、独立した 2 つのファイルとして作成することもできる。署名対象データと署名データの形式には、図4.1.4-2 に示されるように、以下の 3 つに大別でき、利用形態に応じて選択することができる。

図 4.1.4-2 署名対象データと署名データの形式

それぞれ、以下のような特徴がある。

(1)分離形式(Detached 型)署名対象データとは独立して、署名データを作成する形式。署名対象データの種別は問わず、あらゆるファイル形式に対して署名データが作成できる。既存アプリケーションで署名対象データを取り扱っている場合など、アプリケーション側への影響が少なくて済む。一方、署名対象データと署名データを紐付けて管理する必要がある。

(2) 包含形式(Enveloped 型)署名データの中に署名対象データを格納(内包)して作成する形式。署名対象ファイルと署名データが 1 つのファイルとなるので扱いやすい。一方、アプリケーションなどで署名対象データを利用する場合、署名データから、署名対象データを取り出す必要がある。

(3)付属フォーム(エンベロープタイプ)

 署名データが署名対象データの中に含まれる(包含)形で作成する形式。(2)と同様に 1 つのファイルを管理すればよいので扱いが容易。一方で、署名対象データのファイル形式が、電子署名をサポートしていることが必要となり、作成できるファイル形式には制限がある(例:PDFやXML など。)。

4.2 時刻の保証と長期署名フォーマット

4.2.1 時刻情報とタイムスタンプ局

 署名の要件として、署名時点での証明書の有効性が問われることとなるが、そのためには署名時刻等を保証する客観的な時刻情報が必要となる。署名を生成するコンピュータの時刻情報を使用すると、故意か否かに関わらず、正確性が保証されない。この役割を担う信頼できる第三者機関(TTP)がタイムスタンプ局(Time Stamp Authority:TSA)である。電子文書に正確な時刻情報を含むタイムスタンプトークン(TST)を付与することにより、タイムスタンプ時刻以前からその電子文書が存在していたことと、それ以降、改ざんされていないことが証明可能となる。

図 4.2.1-1 タイムスタンプ局の概要(デジタル署名方式(RFC3161)の場合)

4.2.2 長期的な署名の担保と署名の延長

 鍵や証明書には有効期間があり、法定保存期間が定められた文書を保存する場合など、有効期間を越えて、署名検証が可能であることが必要となる。その際、特に「証明書検証の継続性」に対して留意する必要がある。また通常、認証局は証明書の有効期間を越えて失効情報を公開しないことが多い。すなわち、失効情報には失効した証明書のシリアル番号が記載されているが、多くの認証局では失効情報の肥大化をさけるため、失効した証明書の有効期間が過ぎるとそれらのシリアル番号は失効情報から消去される。従って、証明書の有効期間を越えて証明書の有効性の確認ができないことがある。従って、署名検証を継続する必要がある場合は、失効情報を確保しておく必要がある。このような問題を解決するために、電子署名の有効性を証明書の有効期間や失効、さらに、署名に用いた暗号アルゴリズムが脆弱化した後も維持できる署名規格として、AdES (先進電子署名)がある。このフォーマットに示されるように、証明書検証に必要な失効情報等のデータを合わせて保存し、タイムスタンプを付与することが有効である。その手順の概要は、以下となる。

(1) 署名対象データ全体に対して電子署名を付与

(2) 署名直後にタイムスタンプ(署名タイムスタンプ)を付与し、署名時刻を特定しておく

(3) 証明書検証に必要となる、以下の検証情報を収集格納する。なお、証明書チェーン上の認証局は、署名者の証明書を発行する認証局とタイムスタンプ局に証明書を発行する認証局の 2 つの認証ドメインにおける全ての認証局となることに留意されたい。

・タイムスタンプ局の証明書・署名者の証明書

証明書チェーン上の認証局の証明書

・上記全ての認証局の失効情報

(4) 上記の署名対象文書や署名値、検証情報全体に対してタイムスタンプ(アーカイブタイムスタンプ)を付与

図 4.2.2-1 長期署名フォーマットによる署名延長に上記手順のフローイメージを示す。ここで、各タイムスタンプの役割は、以下である。

・ 署名タイムスタンプ

署名が存在した時刻を特定可能にするために、署名値に付与されるタイムスタンプ

・ アーカイブタイムスタンプ

 暗号アルゴリズムの危殆化、認証局の変更、証明書の期限切れや失効があったとしても将来検証できるように、署名対象及び検証情報を包括的に保護するためのタイムスタンプ。署名の検証可能な期間を延長するために使用する。

・ コンテントタイムスタンプ(オプション)

 署名対象データそのものに対して、オプションで付与可能なタイムスタンプ。署名タイムスタンプは、署名時点以降の署名対象データの存在証明となるが、コンテントタイムスタンプは署名タイムスタンプより前に行い、署名対象データが「いつから」存在したのかを示すことができる。

・ ドキュメントタイムスタンプ

 PAdES に用いることができる DocTimeStamp で指定される汎用的なタイムスタンプのための PDF フィールドであり、PDF 文書に対してデジタル署名をせずに直接行うタイムスタンプ、署名タイムスタンプ、アーカイブタイムスタンプの 3 つの用途に用いることができる。どの用途であるかは、データのコンテキストで判断する必要がある。PAdES では、署名と署名タイムスタンプを CAdES-T 形式でも与えることができ、その場合は、署名タイムスタンプ用途のドキュメントタイムスタンプは使用しない。

図 4.2.2-1 長期署名フォーマットによる署名延長

 署名検証に必要となる情報には、署名対象データと署名値以外に、関連する証明書や失効情報、また、署名文書の利用目的に応じたトラストアンカーの制限や暗号アルゴリズムの有効性に関する情報などの様々な情報が必要となる。これら、署名検証に必要となる前提条件のことを、検証制約(Validation constraints)と呼び、以下のようなものが挙げられる(5.2 参照)。

・ 署名文書の利用目的に合致した証明書を発行する認証局のトラストアンカー

・ 証明書パスに含まれる全ての証明書、証明書の利用用途などの制約

・ 失効情報

・ タイムスタンプ

・ 検証基準時刻

・ 有効と認められる暗号アルゴリズムの制約

・ 署名データを構成する要素に対する制約

4.2.3 AdES フォーマット

 AdES では前述のとおり、署名の後、署名時刻を確定するため署名タイムスタンプを付し、その後、署名及びタイムスタンプが失効していないことを示す検証情報を付加し、期限切れ等で失効する前にアーカイブ用のタイムスタンプを付す。さらに期限切れ等が発生する前に、検証情報を付加してアーカイブタイムスタンプを重ねるライフサイクルとなる。

図 4.2.3-1 署名データのライフサイクル

各フェーズにおけるデータフォーマットの論理的な構成は以下のとおりである。

  • 署名者による署名を付した署名データ(AdES-BES)

図 4.2.3-2 署名者による署名(AdES-BES)

(2)署名タイムスタンプを付した署名データ(AdES-T)

図 4.2.3-3 署名タイムスタンプ付き署名(AdES-T)

(3)検証情報を付加した署名データ(AdES-X-Long)

図 4.2.3-4 検証情報付き署名(AdES-X-Long)

 AdES-X-Long はアーカイブタイムスタンプを付与する前段として、必要な検証情報が付与された状態である。ここでAdES-X-Long の検証情報は、タイムスタンプを付していないデータのため、改ざんの危険性がある。通常は、速やかにアーカイブタイムスタンプを付与するか、用途に従った処理を行うことになる。

【コラム4】■電子処方箋における AdES-X-Long の利用

2 018 年 7 月に厚労省から公開された「電子処方箋 CDA 記述仕様 第1版(平成 30 年7 月)」に基づき、JAHIS(一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会)では電子処方箋実装ガイドを定めている。その規約においては、処方を行った医師が電子処方箋に署名を付与した後、処方箋と医師の署名の両者を署名対象に含めた文書全体に対して調剤を行った薬剤師が署名を付与することとしている。この際、医師の署名を XAdES-X-Long の形式とした上で薬剤師が署名を付すことにより、医師の署名の検証情報を保存可能としている。

(4) アーカイブ用のタイムスタンプを付した署名データ(AdES-A)

(5) 2 回目のアーカイブ用タイムスタンプを付した署名データ(AdES-A)

また、AdES フォーマットは、署名対象ファイル種別に応じて以下の種類が規定されている。

■CadES

 汎用的な署名ファイル形式であるCMS(Cryptographic Message Syntax)をベースとしたAdES。署名対象データのファイルの形式は限定されないため、広く様々なファイルへ電子署名を付与できる。分離形式、内包形式の電子署名に用いられる。

■XAdESXML

 ファイルを対象とした電子署名形式であるXML署名をベースとするAdES。分離形式、内包形式、包含形式の全てに用いることができる。

■PAdESPDF

  ファイルの内部構造の中へ署名データを埋め込む包含形式のAdES。署名対象ファイルはPDF 形式に限定されるが、署名された PDF ファイルを単独で扱うことができ、Adobe®Reader®でも検証できる利点がある。

5 デジタル署名の検証

5.1 署名検証の概念モデル

5.1.1 署名検証の基本要件

 署名検証の基本要件は、署名の基本要件に対応して、署名の本人性と非改ざん性を確認することとなる。前者は「証明書検証」、後者は「署名値の検証」と定義され、前者は署名の基本要件である(1)~(4)を適切に確認し、後者は署名対象データの署名値を公開鍵で検証処理することで確認する。ここで署名検証はデジタル署名を付与し、一定期間経過した後に行われる行為であることに着目してみると、いつ時点における署名の有効性を確認するのかその時刻の設定によっては、証明書の失効や暗号アルゴリズムの脆弱化などの要因により、検証結果に影響を及ぼすことが考えられる。

 いつ時点における署名の有効性を検証するのか、本書ではその時刻を「検証基準時刻(validation reference time)」と定義している(5.2.7 参照)。例えば本来の署名検証の目的は署名時点における電子署名の有効性を確認することにあるので、検証基準時刻は“署名を付与した時点”とすることが理想であるが、通常、署名を付与した時刻を客観的に証明することができない。そこで、検証基準時刻はタイムスタンプを併用するなどによる客観的な署名の時刻となり、それが確認できない場合は、署名検証を実施する現在時刻となる。

証明書検証に際しては電子署名の基本要件で述べた以下の 4 点を確認することになる。

(1) 署名文書の利用用途に応じた適切な証明書を用いていたこと

(2) 署名当時に証明書の有効期間が切れていなかったこと

(3) 失効していない証明書を用いて署名していたこと

(4) 署名文書の利用期間を通じて、上記(1)~(3)が確認可能であること。図 5.1.1-1 では、(1)から(3)を図示しているが、(1)及び、(2)に関して、署名時刻がいつであったのか客観的に示すためにタイムスタンプが利用されること、また署名時点での証明書の有効性を確認するために失効情報が保管されることが必要である。

5.1.2 検証のアプリケーションモデル

 署名データの検証処理の実装には、PCやデバイス等で実行されるグラフィカルユーザインタフェースを備えたソフトウェアや、コマンドラインツール、他のアプリケーションに組み込まれるライブラリやミドルウェア、WebアプリケーションやWeb サービスなど様々な方法が考えられる。そのような様々な実装を概念的なモデルとして表現するために、この規格では駆動アプリケーション(DA:Driving Application)と署名検証アプリケーション(SVA:SignatureValidation Application)に分けて考える(図 5.1.2-1)。

 署名検証アプリケーションとは、入力された署名データの検証を行い、署名データの判定結果やレポート内容を出力するモジュールのことを言う。署名検証アプリケーションは、駆動アプリケーションから入力された署名データを検証し、検証レポートを駆動アプリケーションに返す。駆動アプリケーションは検証レポートに基づいて検証者に検証結果の表示を行う。ソフトウェアの構成によっては駆動アプリケーションと署名検証アプリケーションが一体となっている場合もある。本書では署名検証アプリケーションが実行すべき署名データの検証項目に関する要件を定めるものとする。

図 5.1.2-1 署名検証アプリケーションの概念モデル

 検証レポートには署名データの判定結果や詳細なレポート内容が含まれる。検証制約は署名検証アプリケーションが署名データの有効性を判断するときの条件を示すものである。検証制約には、例えば、検証者が信頼するトラストアンカー、証明書の検証情報(中間CA証明書や失効情報)、証明書ポリシーや暗号制約などがある。検証制約は駆動アプリケーションを介して検証者が設定できる場合や、署名ポリシー等の記述に従い駆動アプリケーションが署名検証アプリケーションに入力する場合や、署名検証アプリケーションや駆動アプリケーションのコードに組み込まれている場合もある。証明書の検証情報については検証処理の実行時にオンラインで取得する場合もある。

5.1.3 署名判定結果の概念モデル

署名データの判定結果には以下の種類がある。

● VALID (有効)

 署名者による署名やタイムスタンプの対象となったデータの改ざんがなく、かつ、署名者やタイムスタンプを発行したタイムスタンプ局の身元が信頼できると判断された状態。検証すべき項目の全てがVALID であるとき、署名データ全体をVALID と判定する。VALID である署名データは少なくとも以下の全ての内容を満たしている。

➢ 署名者による署名やタイムスタンプのハッシュ値や署名値が正しく検証できること。

➢ 署名者の証明書やタイムスタンプ局の証明書が信頼できること。例えば、信頼する認証局から発行されていることや、有効期間内にあること、失効されていないこと等。

● INVALID (無効)

 検証すべき項目のうち少なくとも1 つが INVALID と判断された場合、署名データ全体をINVALID と判定する。

● INDETERMINATE (未確定)

 入手された情報による設定では VALID もしくはINVALIDと判定するには不十分である。例えば、署名検証アプリケーションの実行時に検証に必要な失効情報を入手できず、証明書の失効状態を確認することができなかった場合には、INDETERMINATE として判定される。INDETERMINATE と判定された署名データは、他の証拠となる情報と照らし合わせた場合に、VALID もしくは INVALID として判定することもできる。

 なお、検証すべき項目に1つでも INVALID があれば、全体として INVALIDであり、処理を終了できる。しかし、他にも INVALIDの項目が存在する可能性があり、どこに問題があったかを知ることは検証として有用なことがあるため、検証処理を継続することは意味がある。逆にINVALID の結果からは、他にINVALID の項目がなかったのか、処理を打ち切ったかが分からないため、どちらの実装であるかを供給者の適合宣言書に記して、明確にすべきである。

5.1.4 要求レベル(必須とオプション)の考え方

 本書における検証要件のレベルを以下のように定める。検証要件には、電子署名としてセキュリティを担保するために制約条件の違いなどに依存せず最低限実行しなければならないもの、用途に依存するがセキュリティを担保するためには意味があるもの、用途に依存して実行要否を決定するものに分けられ、それぞれのフィールドを、必須、存在時必須、オプションと規定する。各々の処理方法は以下とする。

・ 必須[M(Mandatory)]

 この検証項目は必ず実行しなければならない。この検証項目に必要なフィールドが署名データに存在しない場合には INVALID と判定する。

・存在時必須[E(存在する場合は必須)]の場合に存在する必要があります該当するフィールドが署名データに存在する場合には、この検証項目は必ず実行しなければならない。該当するフィールドが存在しない場合には、この検証項目をスキップしてよい。

・オプション [O(Optional)]

 この検証項目を実行するか否かはアプリケーションの要件に依存する。なお、後述の署名データの構成要素におけるM(Mandatory)/O(Optional)は、署名生成時の選択基準である(PAdES の場合は、禁止[P(Prohibited)]もある)。

 また、本書の規定を基にして、さらに用途を限定したプロファイルを策定する場合、[Optional]の検証項目を[Mandatory if Exists] 又は[Mandatory]に、[Mandatory if Exists]の検証項目を[Mandatory]に再定義することは可能とする。しかし、[Mandatory]もしくは[Mandatory if Exists]の項目はセキュリティを担保するために必要な項目であり、これらを検証しない実装は供給者の適合宣言書に記して、その制約を明確にする必要がある。

5.2 検証プロセス

5.2.1 検証プロセスの考え方

 検証は、前述のとおり、署名の検証(非改ざん性の確認)、証明書の検証(本人性の確認)、及びそれらが署名生成されてからの使用期間中、有効であったことの確認をすることである。署名の延長を考慮すると、AdESの各フォーマットに対応する必要がある。フォーマットの詳細と準拠する規約を5.3 に示す。署名を延長した場合は、検証の基準となる時刻が重要であり、各フォーマットにおける検証基準時刻の考え方を5.4に示す。検証にあたっては、署名データの要素として、署名、タイムスタンプ、証明書を検証することになる。署名について5.5 に、タイムスタンプについて5.6に、証明書について5.7に示す。

図 5.2.1-1 署名検証プロセス

 なお、実際の利用用途に応じて、署名の使い方や扱いに制約を加えることがあり、検証もその制約に対応して行う必要がある。その場合、署名検証アプリケーションには、検証対象となる署名データ(署名対象のコンテンツを含む)だけでなく、外部からの情報を参照する必要がある場合がある。また、署名利用分野の必要に応じて検証結果を規約で定める規定値と異なる値としたい場合、差分を制約条件として与えることが考えられる。これらの情報を総称して検証制約と呼ぶ。検証制約の与え方としては次の方法が考えられる。

– 署名ポリシー([i.2][i.3][i.4]準拠)

– 設定ファイル(独自形式)

– 実装ロジックへの埋め込み

次項以降に検証制約とその関連情報を示す。

5.2.2 トラストアンカー署名

 データに検証情報としてルート証明書が含まれる場合がある。ところが、署名データに含まれていることを根拠にルート証明書を署名(タイムスタンプ、失効情報を含む)検証時に信頼できると、あるいは過去の署名生成時に信頼していたと判断することはできない。従って、信頼点については現在のもの/過去のものを問わず、検証処理に外部から与える必要がある。なお、欧州では認証局や各種サービスの情報を公的に一覧として整備し、確認できるようにした Trusted List がある。

5.2.3 証明書

 署名データにトラストアンカーにいたる認証パス上の証明書のセットが含まれる場合とそうでない場合がある。含まれない場合、署名検証アプリケーションに外部から与える必要がある。認証パスが複数存在する場合、通るべきパスに制限を加える必要がある場合がある。このような場合、検証処理に外部から制約条件を与える必要がある。また、証明書内の要素に対して既定値ではオプショナルなものを検証する必要がある場合や、その要素の値がある条件を満たす必要がある場合がある。このような場合も、それらの条件を検証処理に外部から制約として与える必要がある。

5.2.4 失効情報

 有効期限が切れていない証明書の失効状態を確認するために、失効情報を署名検証アプリケーションに外部から与える必要がある。署名データ(タイムスタンプ含む)に検証情報として失効情報が含まれる場合があり、それが対象となる署名データ(タイムスタンプ含む)の失効情報として適切なとき(検証基準時刻の観点から適切なタイミングに発行されているとき)にはそれを利用することができる。適切な(すなわち、検証に利用が許容される)タイミングとしては、署名やタイムスタンプ生成後、猶予期間を経ていること、次のタイムスタンプ付与又は検証の時点で、失効情報の発行周期以内で最も新しい(鮮度が高い)ものであることが求められる(詳細は 5.4 を参照)。なお、実際には、ルートCA や中間CAの失効情報、OCSPのタイミングなど、状況に応じて考慮が必要となる。

5.2.5 暗号アルゴリズムの脆弱性に関する情報

 署名データ(証明書、失効情報、タイムスタンプ等を含む)の生成には各種暗号アルゴリズムが用いられ、その種別はOID等で署名データに含まれる。ところが、各暗号アルゴリズムが利用された時点で脆弱でなかったことを示す根拠は署名データには含まれない。従って、各暗号アルゴリズムが利用された時点で脆弱でなかったことを確認するためには外部の情報を参照する必要がある。実際には、暗号アルゴリズムの利用箇所は多岐にわたるとともに、その安全性の基準等が明確でないため、何らかの制約を設けない限り確認は困難となる。その課題と解決策案は「付属書 C」に述べる。

5.2.6 タイムスタンプ

 適用領域や法制度の要請等により、信頼すべきタイムスタンプを選別する必要がある場合がある。信頼すべきタイムスタンプであるか否かを判断するために、タイムスタンプトークンに含まれるタイムスタンプポリシー、発行者、信頼点、精度等の要素に関する制約を外部から与える必要がある場合がある。

5.2.7 検証基準時刻(validation reference time)

 証明書の有効性や暗号アルゴリズムの非脆弱性を判断する際に基準とする時刻(検証基準時刻と呼ぶ)は検証対象により適切に選ぶ必要がある。対象となる証明書についての検証基準時刻は、その証明書をタイムスタンプ対象(MessageImprint)の計算対象に含む有効なタイムスタンプトークンのうち、最も古いものの示す時刻であり、該当するタイムスタンプがない場合、検証処理を実行する時刻となり、検証処理に外部から与える必要がある。また、暗号アルゴリズムについての検証基準時刻は、対象となる暗号アルゴリズムにより計算された結果を MessageImprint の計算対象に含む有効なタイムスタンプトークンのうち、最も古いものの示す時刻であり、該当するタイムスタンプがない場合、検証処理を実行する時刻となり、検証処理に外部から与える必要がある。検証基準時刻における検証の考え方を整理すると、以下となる。

• 署名、コンテントタイムスタンプ

・ 署名タイムスタンプがなければ現在時刻で検証

・ 署名タイムスタンプがあればその時刻で検証

• 署名タイムスタンプ

・ アーカイブタイムスタンプがなければ現在時刻で検証

・ アーカイブタイムスタンプがあれば最も古いアーカイブタイムスタンプの時刻で検証• アーカイブタイムスタンプ群・ 自分より新しいアーカイブタイムスタンプがなければ、現在時刻でそのアーカイブタイムスタンプを検証

・自分より新しいアーカイブタイムスタンプがあれば、その直後のアーカイブタイムスタンプの時刻で検証

5.2.8 署名要素に対する制約

 適用領域や法制度等の要請により、署名データを構成する各種要素について、規約において検証必須として規定されている要素の検証を不要としたり、逆に検証オプションとして規定されている要素の検証を必須としたりする場合がある。このようなときに外部より検証制約としてそれらの条件を指定することができる。ただし、本書で必須と規定している要素の検証を不要とすることは、安全性の観点から望ましくない。

5.3 検証データの全体構造

 この節では署名データの各形式における論理的な構成と各要素の検証方法が記述された節への参照関係について述べる。

5.3.1署名者による署名(AdES-BES)

 署名者による署名(AdES-BES)は署名者による署名のみが付与された基本的な形式である。AdES-BES の論理的な構造と、検証要件の各節との関係を図 5.3.1-1 に示す。AdES-BES の仕様が記述された各規格の一覧を表 5.3.1-1 に示す。

5.3.2 署名タイムスタンプ付き署名(AdES-T)

 署名タイムスタンプ付き署名(AdES-T)は署名者による署名(AdES-BES) とともに署名タイムスタンプを付与した形式である。AdES-T の論理的な構造と、検証要件の各節との関係を図5.3.2-1に示す。AdES-T の仕様が記述された各規格の一覧を表5.3.2-1に示す。

5.3.3 検証情報付き署名(AdES-X-Long)

 検証情報付き署名(AdES-X-Long)は、署名タイムスタンプ付き署名(AdES-T)に検証情報を格納した形式である。検証情報(証明書チェーン、OCSP レスポンス及びCRL 等)を格納することにより、認証局が存在しなくなったとしても検証情報付き署名単独で署名や署名タイムスタンプの検証を行うことができる。AdES-X-Long 論理的な構造と、検証要件の各節との関係を図5.3.3-1 に示す。AdES-X-Longの仕様が記述された各規格の一覧を表5.3.3-1に示す。

5.3.4 アーカイブ付き署名(AdES-A)

 アーカイブ付き署名(AdES-A)は検証情報付き署名(AdES-X-Long)にアーカイブ用のタイムスタンプ(アーカイブタイムスタンプ、LongTermValidation タイムスタンプ、ドキュメントタイムスタンプ)を格納した形式である。AdES-A の論理的な構造と、検証要件の各節との関係を図5.3.4-1 に示す。AdES-A の仕様が記述された各規格の一覧を表5.3.4-1 に示す。

5.4 検証基準時刻と検証の観点

 署名データの有効性を判断する場合、署名やタイムスタンプ、証明書などの有効性を確認するときの基準となる時刻(検証基準時刻)が重要である。特に、長期保存の場合には複数のタイムスタンプが用いられていることで時刻の関係が複雑となり、不適切な検証基準時刻での検証を行った場合には、不正に生成された署名データを受け入れてしまう危険性もある。この節では、検証対象と検証基準時刻の関係を示す。

5.4.1 AdES-BES 検証における検証基準時刻と検証の観点

 AdES-BES の生成プロセスと検証プロセスの関係を図5.4.1-1図5.4.1-1 に示す。図 5.4.1-1の時間軸に沿って生成プロセスと生成されるデータ、検証プロセスを示している。AdES-BESでは署名生成時刻が保証されないため、検証者が検証を行う時刻に基づき有効性を判断する。AdES-BES 検証における検証基準時刻の考え方と有効性を判断すべき項目を表5.4.1-1に示す。

5.4.2 AdES-T 検証における検証基準時刻と検証の観点

 AdES-T の生成プロセスと検証プロセスの関係を図 5.4.2-1 に示す。図 5.4.2-1 の時間軸に沿って生成プロセスと生成されるデータ、検証プロセスを示している。AdES-T 検証における検証基準時刻の考え方と有効性を判断すべき項目を表 5.4.2-1 に示す。

5.4.3 AdES-X-Long 検証における検証基準時刻と検証の観点

 AdES-X-Long の生成プロセスと検証プロセスの関係を図 5.4.2-1 に示す。図 5.4.2-1 の時間軸に沿って生成プロセスと生成されるデータ、検証プロセスを示している。AdES-X-Long 検証における検証基準時刻の考え方と有効性を判断すべき項目を表 5.4.2-1 に示す。AdES-X-Long は署名データ内に格納された証明書や失効情報を用いて検証を行うことができる。AdES-X-Long は署名タイムスタンプ付き署名(AdES-T)の検証基準時刻と同様に考える。なお、生成から時間が経過し、格納された検証情報の改ざんの危険性がある場合にはこれをアーカイブ付き署名等に利用することはできない。

5.4.4 AdES-A検証における検証基準時刻と検証の観点

5.5 署名の検証要件

 もしES がアーカイブ情報を有している場合には、検証基準時刻として最も古いタイムスタンプ時刻を利用する。それ以外の場合には、検証基準時刻として有効な検証時刻又は現在時刻を利用する。詳しくは 5.4 を参照。

5.5.1 アルゴリズムの有効性の確認

 検証制約により、検証基準時刻において利用している暗号アルゴリズムの脆弱性が見つかっておらず有効であることを確認する。

5.5.2 CAdES の検証要件

CAdES 署名は、検証基準時刻において次の検証要件に従い検証する。

5.5.3 XAdES の検証要件

XAdES 署名は、検証基準時刻において次の検証要件に従い検証する。

【コラム5】■XAdES バージョン定義と規格

 XAdESのバージョンは XML 名前空間(namespace)で指定され、その定義は ETSI TS 101903 となる。2002 年 2 月に ETSI TS 101 903 V1.1.1が公開された後で、V1.2.2、V1.3.2、V1.4.1 と合計 4 つのバージョンがある。このうちV1.1.1とV1.2.2は、V1.3.2 以降との互換性が無い為に利用してはいけない。V1.4.1は V1.3.2 がベースとなり、追加要素を加えたものである。その為に V1.4.1を利用する場合に正確にはV1.4.1+V1.3.2の要素が必要となる。ETSI TS101903 以外の規格ではどのXAdES バージョンを利用しているかをよく理解して利用する必要がある。特にW3C NoteはV1.1.1のままであり使ってはいけない。ETSI EN319 132-1 V1.1.0 (2016-04) がETSI 最新の仕様ではあるが、XAdES バージョンとしてはV1.4.1である。

【コラム6】■XAdESのSigningCertificate要素とSigningCertificateV2 要素

 XAdESのSigningCertificateV2 要素は ETSI EN 319 132-1 V1.1.0 (2016-04) から追加された新しい要素であるが名前空間は V1.3.2 となっている。これは SigningCertificateV2要素が、ETSI TS 101 903 V1.3.2 (2006-03) で定義されていた SigningCertificate 要素をそのまま置き換える目的の為に追加された要素であるからである。従来の IssuerSerial 要素下の X509IssuerName 要素では、署名証明書(X.509バイナリ)のIssuer 部からテキスト形式(RFC 2253 準拠)に変換した識別名を利用していた。しかしながら色々な事情がありこの識別名が一意にならない問題があった。この為にSigningCertificate/IssuerSerial/X509IssuerName を使った検証を行わない検証器がほとんどであった。SigningCertificateV2 要素では新たに IssuerSerialV2 要素として、Issuer と Serial を、署名証明書(X.509 バイナリ)からバイナリ(ASN.1/DER)のまま抜き出して結合する方式となった。これにより SigningCertificateV2 要素を使うことで Issuer(発行者)名が一意となるので間違いなく検証が出来るようになった。以上から過去互換性の為に SigningCertificate 要素を使い続けることに問題は無いが、新しく実装する場合には SigningCertificateV2 要素が推奨される。

【コラム7】■PDF バージョンと電子署名

 PDFのバージョンは現在1.0~2.0までが存在する。1.0~1.7までは Adobe 社が策定して仕様公開していたがその後 ISO に移管され、ISO 32000-1 で PDF1.7が正式仕様となり、ISO32000-2でPDF2.0が正式仕様となった。なお PDF 電子署名の仕様は PDF1.3 で追加された。PDF ファイルではファイルの先頭に PDF バージョンが埋め込まれているが、残念ながらファイル本体の仕様と一致しない場合が多い。PAdES 仕様は PDF2.0(ISO 32000-2)で追加されたが、ファイルの先頭で宣言されるバージョンは PDF1.7 以前の場合もあるが、これは検証エラーの対象とはならない。PAdES 仕様が ETSI で定義された時には、PDF1.7(ISO 32000-1)をベースとして PAdES 用の新しい仕様を追加したものとなっている。ETSI TS 102 778-1 V1.1.1 と ETSI EN 319142-1 V1.1.1 はいずれもPDF1.7プラス PAdES 仕様となっている。その後 PDF2.0(ISO 32000-2)が発行された時に PAdES 仕様も PDF2.0 として吸収された。

5.6 タイムスタンプの検証要件

5.6.1 タイムスタンプ

 タイムスタンプは、次の検証要件に従い検証する。ここに示す検証要件は、RFC 5280 X.509証明書インターネットプロファイル、RFC 5652 CMS、RFC 3161 タイムスタンププロトコルに準じた検証内容であり、本書に固有の検証要件はない。

5.6.2 署名タイムスタンプ

(1) 署名タイムスタンプの検証基準時刻

 もし電子署名がアーカイブ情報を有している場合には、検証基準時刻として最も古いタイムスタンプ時刻を利用する。それ以外の場合には、検証基準時刻として有効な検証時刻又は現在時刻を利用する。詳しくは 5.4 を参照。

  • 署名タイムスタンプの検証要件

署名タイムスタンプを、検証基準時刻において次の検証要件に従い検証する。

5.6.4 ドキュメントタイムスタンプ

 ドキュメントタイムスタンプは PDF のようなドキュメントに対してタイムスタンプのみを署名とは別に付与する方式のタイムスタンプである。執筆時点においてはPAdESの DocTimeStamp(PAdES-DT)仕様のみとなる。PAdES の DocTimeStamp は、PAdES-T や PAdES-A では署名タイムスタンプ的にもアーカイブタイムスタンプ的としても利用が可能である。ここでは署名抜きでドキュメントタイムスタンプを利用する PAdES-DT 仕様(ISO 14533-3 Annex B.2)について解説する。PAdES-DT 仕様も長期署名化(LTA 化)による有効期限の延長が可能となっている。CAdES 署名の代わりに DocTimeStamp のみを指定した後で、DSS/VRI 辞書とアーカイブタイムスタンプとしての DocTimeStamp を追加することで長期署名化が可能となる。DocTimeStamp 署名辞書とDSS/VRI 辞書に関しては「5.5.4 PAdES の検証要件」を参照。

5.7 証明書の検証要件

 署名やタイムスタンプの検証では署名値の検証で利用する証明書の検証を行う必要がある。証明書を検証するには、トラストアンカーとなるルート証明書までの証明書パスを辿り、有効期限、失効確認、証明書や CRL の拡張領域などを確認する必要がある。また、それらを確認するときに利用する検証基準時刻は署名フォーマット形式(AdES-BES、AdES-T、AdES-A)ごとに異なり、署名者証明書、TSA 証明書それぞれにおける検証要件も異なる。なお、署名者証明書及び TSA 証明書の検証で利用する情報は次のとおりである。

・ 署名者証明書もしくはTSA証明書

・トラストアンカーを含む証明書及び失効情報のセット

・制約条件

以下に、証明書検証の検証要件及び検証基準時刻について署名フォーマット形式ごとに解説する。本節で用いる記号の意味は以下のとおりである。

Tv:検証処理を実行した時刻

Ts:署名タイムスタンプの時刻

Ta(k):第 k 世代のアーカイブ(ドキュメント)タイムスタンプの時刻

5.7.1 AdES-BES における証明書

法制審議会家族法制部会 第4回会議議事録を読もうの会

詳細
法制審議会家族法制部会 第4回会議議事録が公開されました。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00073.html

http://www.moj.go.jp/content/001353853.pdf

■読み解きのパネラー:古賀礼子(弁護士)、松村直人(子育て改革のための共同親権プロジェクト 発起人)+ご希望される方、是非!

弁護士古賀礼子 明日 9月8日ウェビナー

https://note.com/kogareiko/n/nd9bf33acaa4c

■日時:2021年9月8日 (水)

引き続き、本議事録を読み込もうの会を実施したいと思います。
弁護士の古賀礼子さんと、子育て改革のための共同親権プロジェクト発起人の松村が読み込み、気になるところを確認する流れを考えていますが、プロジェクトにご賛同頂いた方で是非、読み解きの議論に参加したい方は、ご連絡ください。

■料金:無料
■参加可能な方:以下のいずれかの方で上限495名までご参加いただけます
・プロジェクト賛同者※プロジェクト賛同は↓からお願いします。
https://joint-custody.org/
・法制審議会家族法制部会の議論が気になる方

第1回  離婚及びこれに関連する制度の見直しについて
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00058.html

第2回 参考人ヒアリング
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00063.html

第3回 養育費及び面会交流に関する論点の検討
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00068.html

加工

第3 議 題

第4 議 事  (次のとおり)

議        事
○大村部会長 予定した時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第4回会議を開会いたします。
  本日は御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
  本日も前回と同様,ウェブ会議の方法を併用した開催となりますが,引き続きよろしくお願い申し上げます。
  前回からの変更点として,外務省の西森首席事務官が新たに関係官となられるということで,御出席されているので,お名前と所属の自己紹介をお願いしたいと思います。
  西森関係官,よろしくお願いいたします。
○西森関係官 外務省領事局ハーグ条約室で首席事務官をしております西森と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○大村部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
  続きまして,本日の会議の配布資料の確認を,事務当局からお願いします。
○藤田幹事 事務局です。本日もよろしくお願いいたします。
  まず,お手元の資料について御確認頂きたいと思います。
  三つの資料を御用意しています。まず,意見交換用の参考資料として,これまでのヒアリング実施状況を一覧にしたもの,次に,家族法制部会の進め方に関する事務局たたき台一案ということで,後ほど御議論いただく,部会の今後の進め方に関する意見交換のために用意したもの,それから,部会資料3を前回と同じく配布しております。
  このうち,初めの2つにつきましては,いずれも本日皆様に御議論いただくためのお手元の参考として用意したものになりますが,こちらは,ホームページ等での掲載はせず,非公表としたいと存じますので,取扱いには御留意下さい。
  また,原田委員から文献を資料として御提出頂いておりますので,こちらについても配布させていただいております。
  資料の説明は以上ですが,追加で,本日の議事に当たり,発言に際してのお願い事を一つ申し上げます。

  本日の会議でもウェブ参加の方がおられますから,御発言される際には,まずお名前をおっしゃってから御発言いただけるよう,改めてお願いいたします。
○大村部会長 それでは,本日の審議に入らせていただきたいと存じます。
  前回,これまでに実施した参考人ヒアリングを踏まえて,委員,幹事の間で意見交換をしたらいかがかという御意見を複数頂きましたので,本日はまず,参考人ヒアリングを踏まえた意見交換を行わせていただきたいと考えております。
  それに続きまして,やはり前回,今後の議論の進め方につきましても,御意見を頂いたところでございます。そこで,事務当局の方から,今後の進め方のたたき台の案を配布してもらっておりますので,ヒアリングを踏まえた意見交換をいたしました後に,このメモを参考にしつつ,今後の検討の進め方についても,併せて意見交換の機会を設けたいと考えております。
  最後に,残った時間で前回検討していただきました部会資料3,これは大部分が積み残しとなっておりますので,この積み残し部分についての意見交換を行わせていただきたいと考えております。途中で2回ぐらい休憩を入れる形で進めさせていただきたいと思っております。
  そこで,まず,前回,前々回の2回のヒアリングを踏まえた意見交換ということで,テーマや取り上げる順序などについて特に限定はいたしませんので,自由に御発言を頂ければと思っております。

○武田委員 前回,前々回のヒアリングを踏まえてということで,この2回にわたるヒアリングに関して,お子さんのお立場,同居親,別居親のお立場,あと支援の立場にある様々なお立場の方からヒアリングができたこと,非常によかったと思います。ご尽力いただきました事務当局の皆様,参考人の皆様にまずは御礼を申し上げたいと思います。
  まずは感想を述べさせていただいて,今後ヒアリングをどうするかというところを,簡単に意見を述べさせていただければと思います。
  お子さんの当事者からの話で,やはり私といたしましては,離婚前の親教育という必要性を改めて痛感したというのが,まず感じた点でございます。あと,DV被害者の同居親の方からお話を受けてということですけれども,やはり離婚後に限らず,婚姻中から困難に陥っている父母への支援の必要性ということを,改めてこちらも痛感いたしました。別居親のお母さんの感想といたしましては,同意なき連れ去りから始まって,監護の継続性というところから,現状の家裁の親権,監護権の決定基準,あとお子さんの意思の捉え方に関して実情をお話しいただき,家庭裁判所の現行実務の問題が明らかになったように感じました。
  支援者の皆さんからのヒアリングでは,ここ数年で,やはり我が国の中での価値観の進展が見られたなと感じております。委員,幹事の先生方には御存じない方もいらっしゃると思いますけれども,2016年,17年にかけて,国会で共同養育支援法という超党派の議員による議員立法を進める動きがございました。この法案は,簡単に申し上げると,家族法研究会でもテーマに挙がっておりました離婚前共同養育計画を議員立法で法制化しようという法案であって,私ども親子ネットも推進の立場として議論に参画させていただいておりました。当時,思い起こせば五,六年前ですかね,先だってお越しになっていただきました泉市長も取り組み始めてまだ間もない頃,政府が注目し始めた頃だったように記憶しております。しばはしさんや小泉さんの活動に至ってはまだ始まっていなかったと思います。ここ五,六年くらいで,法改正なくとも離婚後も双方の親が子の養育に関わるということを少しでも支援する志のある方が,多様な取組をしていただいていると,こんなふうに感じております。こういった取組を参考にしながら制度化していくために,委員・幹事の先生方と有用な議論が進められればよいなと思ったのが,まず感想でございます。
  今後に関してということについて,2点ほど述べさせていただきます。配布されている資料の中に,海外法制に関するヒアリングというものがございました。これはちょっと,どんな方をイメージされているのかというのは,まだ分かりませんけれども,比較法の学者の先生なんかが呼ばれるのかなとも思っております。ただ,私といたしましては,こういった法制面の海外の実態に加えて,諸外国がなぜ共同養育や非同居親との人的な関係,つまり面会交流ですね,こういったものを大事なものと考えているのかと,こういった考え方の背景を,一度きちんと聞いてみて理解を深めたいと思っております。今更私が話すまでもなく,1990年代,諸外国は子どもの権利条約を批准以降,共同養育,共同監護へとかじを切ってきたと認識しております。こういった諸外国の国民意識を語れる方から話を聞いてみたいと感じております。個人的には,2回目の資料で配布されました参考資料2-7ですね,昨年7月,EU議会で日本における子の連れ去りに関する決議が圧倒的多数で採択されましたが,そういったEUの関係者,具体的には,例えば,EU大使館でありますとかEU諸国の大使館関係者からヒアリングはできないかということを提案させていただきたいと思います。
  また,ヒアリングについていろいろな意見あろうかと思いますが,ヒアリングはヒアリングとして,継続的に必要に応じて取り入れるということでよいかと思っております。順次議論を進めつつ,必要に応じてヒアリングを組み込んでいくという方法がよいのではないかと,個人的には感じております。
  ちょっと長くなりましたが,以上でございます。

○大村部会長 ありがとうございます。感想と,それから今後の進め方についても御意見を頂いたと理解しております。
  ウェブの方で,大石委員,小粥委員から手が挙がっておりますので,大石委員,小粥委員の順番でお願いいたします。


○大石委員 千葉大学の大石です。
  これまでの当事者の方や専門家の方のヒアリングによって,多くを学ばせていただきました。ありがとうございます。
  その過程で,離婚のダメージを最小限に抑えて,子どもの健全な発達を確保することの重要性,特にどのようにして子どもの意見を聴取し,葛藤を抱える両親と調整しながら子どもに寄り添っていくかが非常に重要な問題であると,私自身,認識を新たにいたしました次第です。
  つきましては,発達心理学の第一人者でおられる菅原ますみ委員がこちらの部会にはいらっしゃいますので,父母の離婚やその後の養育が子どもに与える影響に関して,国内外の研究に基づく心理学の御知見を報告いただけましたら大変有り難いなと,私自身,専門は経済学ですので,分野外ということもあり,そういった知識を委員間で共有したいと考えてあります。御検討いただけましたら,大変有り難いと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。感想と,それから今後のヒアリングについて,具体的なお名前を挙げての御提案がありました。御提案につきましては,また後で進め方との関係でお諮りさせていただきたいと思います。
  続きまして小粥委員からお願いいたします。

○小粥委員 小粥でございます。
  私からは,まず,これまでのヒアリング,調査結果の開示等,事務局を中心に御尽力を賜りまして,また,ヒアリングに応じてくださった皆様に大変感謝しておりますし,大変勉強させていただいたということを,まず申し上げたいと思います。
  その上で,今後のことについて申し上げると,抽象的な形で申し上げざるを得ませんけれども,やはりこの法制審議会の部会のミッションというものを再確認する必要があるのではないかと考えます。つまり,これは,法務大臣が法制審議会に諮問して,法制審議会の総会がこの部会を立ち上げて,最終的には法務大臣に対する答申という形で,基本的には民事法制の改正という形でどのようなことをするのか,ということを考えなければならないと。そうしますと,即物的な言い方になってしまいますけれども,民法のどこをどう変えるのか,あるいは家事事件手続法のどこをどう変えるのか,あるいは民事執行法のどこをどう変えるのかというような形で,結論をしかるべき時期までに得るということが必要だろうと考えます。改めて申し上げるまでもないことかもしれませんが,このような形で部会を立ち上げているということは,離婚に伴う子の養育の問題について,一歩,二歩前進する千載一遇のチャンスなんだろうと思うのです。ですので,この機会を生かして,何とか前向きに一歩でも二歩でも前進するような成果を,この部会のミッションの範囲内で実現するという,そこに少しフォーカスしていくということが必要ではないかと考えます。
  現時点では,このような抽象的な言い方にとどめさせていただきますけれども,追って具体的なことを,また補足する機会があればと存じます。
○大村部会長 ありがとうございます。主として今後の進め方について,この部会の果たす役割との関係で御指摘を頂いたと受け止めました。
  そのほかに,御発言いかがでございましょうか。


○柿本委員 柿本でございます。これまでヒアリングに御参加していただきました当事者や専門家の方々に感謝いたします。現状や実態を知ることができ,大変多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
  私からはコメントが4点でございます。只今,小粥委員より部会のミッションについての御意見を頂いたところでございますが,民事法制以外の公的支援に関わるところも問題がたくさんあぶりだされてきたように,思いました。本論から外れてしまっているかもしれませんが,第2回会議のときのA参考人「お金がないと子どもは育ちません」という言葉は,養育費の重要性として強く,私の心に残っております。また第3回会議,野沢先生の資料4ページの離婚後の養育費や面会交流の実施状況というところで,養育費も面会交流も,離婚後三,四年たつとほとんどのケースで途絶えるという説明がありました。継続性を維持するための法整備が必要ではないかと,考えたところでございます。
  3点目は,浅井さんと光本さんからの,子どものための第三者機関のカウンセリングの充実を,というところは,非常に重要ではないかなと感じております。お子様が調査官による調査のときに「黙る,忘れちゃった」というようなことが起きたという話をお聞きしまして,調査官の養成機関の充実ですとかトレーニング方法の研究などが非常に重要になってくるのではないかと考えました。
  4点目ですが,面会交流支援事業をなさっている団体の方たちは,非常に一生懸命活動されているということを知りましたが,相談料などが高額な場合も多いようですので,金銭的に余裕のない方たちも受けられるような,そういう仕組みができたらいいのではないかというところなどが私が感じたコメントでございます。


○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングを聞いていただいて,民事法制以外の問題がかなりあるのではないかという感想を抱かれたと承りました。
  最後に本論から外れるかもしれないけれどもという留保の上での御指摘もありましたが,先ほど御指摘のあった,本部会でやるべきこと,できることとの関係で考える必要があろうかと思いますけれども,貴重な御指摘として伺いました。
  石綿幹事,大山委員からお手が挙がっているようですので,その順番でお願いいたします。


○石綿幹事 石綿でございます。
  まずは,ヒアリングでお話くださった皆様,また,それをアレンジしてくださった事務局の皆様,どうもありがとうございました。
  ヒアリングを通じて,感じたことを二つ述べさせていただければと思います。
 まず,子どもの視点を伺えたことは大変参考になったと考えております。人によってそれぞれではありますが,何らかの形で離婚後も別居親との交流,別居親の関与を求める視点というのが感じられましたので,事務局から既に提示された面会交流,養育費の課題に加えて,離婚後の父母の子どもの養育の在り方について検討してみるというのは,子どもの利益,子どもの意思の尊重という点からも意味があるのではないかと思いました。
  ヒアリングを通じてもう1点感じたのは,光本参考人だったと思いますが,離婚が増えるということは再婚が増えるということだという御指摘がありまして,それとの関係でも,連れ子養子の問題など未成年養子縁組等についての検討をすることも必要ではないかと思ったところです。
  今後の議論の進め方ですが,ヒアリングを通じて,民事法制以外のことについても対応する必要があることは様々あるのではないかということは私自身も感じておりまして,先ほど柿本委員がおっしゃったというところにも共感をいたしますが,それと同時に,小粥委員が御指摘なさったように,ここは法制審であって,主に民事法制の在り方について検討する場だと理解しております。ですから,これからは,民法をはじめとした民事法の具体的な議論に入っていければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からも感想と今後の進め方についての御意見を頂きました。これまで出ていない項目でいうと,再婚の場合も考える必要があるのではないかといった御指摘も頂きました。


○大山委員 経団連の大山でございます。
  私もこれまでのヒアリングで,いろいろな角度から,それぞれの御専門のお立場の方や,当事者の方からのお話をお伺いできて,大変勉強になりました。ありがとうございました。
  その上で,いろいろお話を伺って,まさに今,先生方から既に御指摘いただいているとおり,法制審の場でありますので,民事法制の在り方や法改正につながるような検討を進め,最終的には法改正に収束するよう目指していくべきと感じております。その一方で,前回の明石市長のお話にもございましたように,例えば自治体でも熱心に取り組めば,いろいろなことができるということも感じており,法制度以外にも,様々な課題に対する事前の防止策や対応策を含め,自治体でできること,民間でできること,それぞれいろいろな役割があると思います。ただ,最終的には,どの論点につきましても,法制度の見直しにうまくつながっていくよう検討を進めていただければ有り難いと思っております。
  その上で,ヒアリングも必要に応じて是非行っていただければと思っております。特に前回も御指摘いただいており,また今後の進め方のたたき台にも記載いただいております海外法制に関するヒアリングについては,海外の民間のお立場の方というよりは,学者の方で,また,あまり細かいことではなく大きな法制度に関するご説明と,そういった制度が実際にどれぐらいどのように使われているかといったことを,私個人としては是非お伺いしたいと感じております。
  それから,今後の大まかな進め方につきましては,今回の法制審における検討事項は,多岐にわたる論点があると思いますので,事務局のたたき台の案にあるとおり,まずは一巡,いろいろな論点について総ざらいした上で,その後,二巡目という進め方であれば,その過程で議論を収束できる論点は明確にあると思います。その一方で,例えば,DVの問題をはじめ,個別事情によって様々な形があり,なかなか一つのケースに論点を絞り込めないものもあると思いますので,二巡目については,よりテーマを絞り込んで法制度につながるような論点に関する議論を,進めていただければ良いと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。全体としての進め方と,それから具体的な議論の手順について御発言を頂きました。
  海外法制のヒアリングについては,基本的な枠組みと,それから実態について聞きたいという御要望を頂いたと承りました。
  落合委員,赤石委員の順番でお願いいたします。

○落合委員 落合です。
  法制審ということで法制度が中心になるわけですけれども,私はやはり,第三者機関の方たちの頑張りとか,そのサポートの重要性ということが非常に印象に残りました。法を作っても,それをどのように実施可能にしていくかというようなことまでの提言というのは,法制審でどうなんでしょうかね。答申の中に含むべきものなのでしょうか。これまでの慣例はよく知りませんが,含まないと現実的ではないとむしろ思いました。
  フランスで調査をしたときに,第三者機関に予算がたっぷり付いているというのが印象的でした。公的な予算が付いている。明石市長もおっしゃっていましたけれども,やはり予算をきちんと付けて人を雇用するということが,サポートを充実させるということに直結するわけですよね。そこまでの提言が付けられると,本当に意味のあることになるなと思いました。
  それから,海外法制についてなんですけれども,タイの法制についてヒアリングさせていただく機会を別に頂きました。協議離婚がタイでは多いので,日本と比較可能だからです。おかげさまでいろいろな示唆がありました。日本よりもずっと早く,1930年代から,協議離婚だけれども,養育費についてですとか,そのほか親権もですかね,かなりかっちりと法的な枠組みが作られていたそうです。すなわち,日本より早くから,欧米からの批判に耐えるような協議離婚制度というのを作っていたということが分かりました。欧米の国と直接に比べると違いが際立つことが多いですけれども,結婚も離婚も割と自由な日本のような伝統を持つ社会が,欧米的な法と出会ってどのように工夫してきたかという辺りから,学べる点があるんではないかと思います。海外法といっても,そういう東南アジアの法などを見る機会があるのも,重要ではないかと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。委員,幹事からは,サポートのシステムが重要だという御指摘が相次いでおりますけれども,それについて,この答申の中にどのような形で書き込めるだろうかという御趣旨の御指摘を頂きました。
  それから,海外調査については,東南アジアの国も興味深いという御指摘を頂いたかと思います。
  赤石委員,それから原田委員という順番でお願いいたします。


○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。よろしくお願いします。
  ヒアリングの,まずちょっと振り返りをさせていただきますが,お子さんたちのお話を聞かせていただきまして,やはり第三者の大人の重要性というのがあり,法制度でどうそこをカバーできるのかというのは,私も課題として感じました。また,取決めというのが,子どもの生活にとっては非常に圧迫感があり,かえってなじまないものであるという御発言がありましたので,こういったことをどう生かすのか,今やはりちょっと部会資料3を見ていますと,取決めありきのようになっておりますが,ここをどうできるのかということがあります。
  私が感じているのは,面会交流と養育費というのを議論するときに,そもそも非監護親と子どもが面会交流することが,あらゆる場合に子の福祉に合致するのかどうかというエビデンスが果たしてあるのかどうかということを,いつも疑問に思ってしまいます。ですので,そういったところからやはり議論が行われるべきかなと思っています。
  これと関連しまして,葛藤状態にあって,夫婦の子が,これまでの家裁の原則面会交流実施という流れの中で,面会交流を嫌だと言っていても強制されてしまったといったお子さんの事例がなかったので,是非ヒアリングの中でやっていけたらいいなと思っております。私も紹介もしたいと思っております。
  続いて,DV被害者の事例のヒアリングなのですけれども,Bさん,要約で議事録が出ているかと思いますが,協議離婚事例なんですね。しかも,DV被害としては重いという認識になっていなく,保護命令も出ていない。こういうケースが,DV被害については危険性があるという認識は皆さん持たれたと思うんですけれども,では,この人たちをどうケアするのかといったときに,どこまでの範囲をケアするべきかというときに,こういった事例が落ちてしまう可能性があるということを,如実に表していたと思います。協議離婚後も,相談しても,あなたは軽いよねと言われていたが,しかし,協議離婚後に親が学校に電話して退学を迫ったという事例でございます。もしここに本当に共同養育のような親の権利を与えていたら,間違いなく子どもに非常に大きなダメージがあった。彼女は,今回の議事録に関しても,お子さんにはそこまで伝えないために必死にカバーして要約だけにしてほしいということをおっしゃっている。終わった後も,お子さんへの影響を考えていかなければいけない親と,してしまう親,もちろんしてしまう親の方のケアも必要だということが,とても如実に出てきていたと思います。
  それから,非監護親のヒアリングなんですが,お父さんの非監護親のヒアリングがなかったのですが,実際には一番多く,法制審が開かれる背景もそこにあったかと思いますので,是非お父さんの側からもお話を聞けたらいいのかなと思いました。
  あと,家裁のこれまでの2011年からの対応についての,やはり振り返りといったものが必要かと思っております。家裁の調査,子どもの調査ですね,調査官調査についても,浅井氏からやはり問題点が指摘されました。非常に短時間で環境も整備されていないところで,子どもの本心が聞けていなかったのではないかというようなお話があり,私もそういうことをよく聞いております。
  私が聞いたケースでは,幼稚園のお子さんが,家族の絵を描いてごらんって調査官に言われて,お母さんとお兄ちゃんと自分を描く,そうすると,お父さんはどこって言って,お父さんを紙の隅っこの方に描く。そうすると,調査官がそこに線を引いて,仲間外れっていけないことだよね,何々ちゃん,お友達いるの,お父さんを仲間外れにしているのは誰かなって言って,何とかしてお父さんと会うということを子どもに言わせようとする,こういった調査官調査があったとお母さんから報告を受けました。また,お兄ちゃんは本当に支配をされていたんだけれども,お兄ちゃんには,お父さんに会いたくないって言ったら,お父さん自殺してしまうかもしれないよ,それでもいいのとまで誘導しようとした,こういった暴力的な調査官調査が行われていたとお聞きしておりますので,やはり2011年からの家裁で起こったことというのは何なのかということが,まず明らかになってからでないと,その次の法制度の検討というのができない。もし子どもの意見を聴取するのであれば,中立な環境であり,人手を増員し,予算拡充で,何度でもお子さんの話が聞ける,こういった体制が,子どもの代理人制度などと一緒に,池田先生が御専門ですけれども,在るべきではないのかなというのは改めて思い,ちょっと法制度に行く前の振り返りというものが,余りにもないのかなというふうに思いました。
  今後の進め方なんですけれども,私は前回も,まずは,整理されているところでは養育費からお願いしますと申し上げたところです。その意見は変わらないです。そして,その上で,海外法制のことは,本当に欧米は1980年代から共同養育の流れをしてきて,今,反省点に立っているんですね。今日,原田委員が出した英国の報告書は,正にそれでございます。今までのイギリスの対応がDA,ドメスティックアビューズについて対応し切れてこなかったという反省点に基づいた報告書についての論文です。こういうことを考えますと,あるいは,アメリカで本当に子どもたちが性虐待を訴えたら,お母さんが親権を取れなくなってしまった,なぜならフレンドリーペアレントルールに反するから。そして,父親,その加害者の下で子どもたちは過ごさなければいけなかった,こういう子どもたちの叫びが出ています。これは,エンパワメント・センターの森田ゆりさんが報告していらっしゃいます。こういった反省点が出てきている欧米の在り方を,今,まねする必要があるのかという,そういう論点を是非組み込んでいただきたいと思います。そういう点で,海外法制については,そういう点がきちんと出されるべきではないかなと思います。
  もちろん,離婚後も仲のよい,ある程度コミュニケーションができる,そういうカップルのお子さんにとっては,交流はいいことになります。しかし,全ての方にとって良くはないんですね。ここのところを見極めていきたい,そして,それの介入が果たしてでき得るのか,日本の今の脆弱な子どもの保護の体制でということを考えて,法制度をすべきだと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。これまでのヒアリングについての様々な御感想と併せて,更なるヒアリングについての御要望もお出しいただきました。
  それから,家裁実務の話もございましたけれども,海外法制についてのヒアリングとの関係では,現在どのように考えられているのかという視点も取り込んでお話いただくように依頼してほしいという御要望を頂きました。
  今後の議論の仕方については,課題を取り上げる順序などについても御意見を承りましたけれども,これは後で,今後の進め方について御意見をいただく際に,改めて取り上げさせていただきたいと思います。
  では,原田委員,池田委員の順番でお願いします。

○原田委員 弁護士の原田です。
  今,赤石委員がおっしゃったこととかなり重なるかもしれませんけれども,当事者のお話を聞いていて,子どもが蚊帳の外に置かれているということと,親の葛藤が高い間の面会というものの問題点というのは,これまた毎日の実務で感じていることと一致するなと思いました。
  離婚するか否かを決めるのは当事者,この場合は親ですから,少なくとも子どもに対しては,その年齢に応じた説明をする必要があるということ,それから,これに対して,面会交流は正しく子どもの利益のために行うものですから,当事者抜きには考えられないということだろうと思います。面会交流の場合,現状では,協議できる関係であれば,裁判所なんか使わなくても,ヒアリングのAさんのように,子どもの意思を反映した面会交流はできるのかなと思いますけれども,両親の対立が激しくて,したがって,最も子どもの意見を尊重すべき裁判手続において,子どもは初めて会う家裁調査官から意見を聞かれたり,しかも説得的な調査,赤石さんのおっしゃったような例までは直接聞いていませんが,やはりかなり説得的な調査が行われているということは,私もよく聞くところです。それから,子どもの手続代理人という制度がありますけれども,ほとんど利用されていないというのが実態だと思います。ですから,子どもの意思が反映される制度というものを考える必要があるのではないかと思います。
  しかも,養育費というのは,1回決めたら,それがそのまま続いても弊害は余り起こらないと思いますけれども,面会交流というのは,子どもの成長に合わせて形が変わってくるのではないかと思いますが,一度決めるとその後のフォローはないので,幼児期に決めた面会交流が中学や高校になってもそのまま行われて,変更しようと思っても,変更が決まるまではそのまましなくちゃいけないと,場合によっては,間接強制されてお金を払わなくちゃいけないというようなことになっている点が,やはり子どもにとってかなり負担になっているのではないかと思います。
  それから,親の葛藤の問題では,今回のヒアリングで,お子さんのヒアリングでも支援の方のヒアリングでも,親の葛藤が高い場合の面会が難しいというお話がありました。同時に,子どもには安定した養育環境を保障するということが必要で,養育者の安定,これは精神的にも経済的にも必要だと思います。したがって,制度を考える場合は,紛争が続くような制度は考えるべきではないと同時に,その両親の葛藤状態の緩和のためにどうするのかという検討も必要だと思います。この点,私は,支援の方にその点をどう考えられますかという質問をしたつもりだったんですけれども,明確なお答えが頂けなかったように思っております。
  家庭裁判所では,面会交流は子の利益を最も重視するとされていますけれども,子の利益に反する場合というのがとても狭く解されているように思っていて,高葛藤のまま調停ないし審判で決められて,支援機関に流れてくると。審判というのは,合意ができなくて調停から審判に移行するということですから,正しく高葛藤の状態が維持されている見本のような状態で,支援機関のところに流れてきているというのが現実だろうと思います。
  調停で合意される場合も,早く終わらせるためにやむなく合意したというケースもたくさんあります。考えていただきたいのは,北仲参考人が言われたような,DVの力関係の差ということで,本当に真の対等,平等な関係での合意が形成されているとはなかなか言えないのではないかということです。もめる理由というのは,やはり非監護親は面会したい,監護親の方はDVのために監護親自身が会うのが怖いとか,子どもが嫌がっているとか,子どもが気に入らないことがあるとどなられるのではないかと心配だとか,いろいろで,なかなか面会に積極的になれないというところがあるんですけれども,結局は,監護親が説得されて義務が課せられて,一旦合意すると義務化してしまうというところが問題で,途中で子どもが嫌だと言い出しても止められないです。
  それから,支援については,面会交流の実施がゴールということではなくて,そうすると,どうしても消極的な方は説得に陥りがちですので,子どもの利益ということをゴールにして,面会交流するかしないか,するとしたらどういう方法でするか,仮にしないとしても,一定期間後に見直しをするなどの,こういう制度の検討が必要なのではないかと思っています。
  それからもう一つ,この会は民事法の検討会でありますけれども,支援に関する制度や立法も両輪でやらないと,私としては,民事立法だけで支援制度ができないということでは,とても安心して提言ができないと考えています。ここで作るということではないにしても,各省庁の方もお見えですので,支援に関する制度又は立法にも,目に見える形で並行して話を進めていただきたいと。それに合わせて立法,あるいはその立法を実現するような支援というのが一緒に進んでいくということが,とても大事なのではないかと思っております。
  それから,ちょっとこれは余談ですけれども,前回養育費の法的性質について検討するのに,どんな意味があるのかという私の発言について,意味がないと取られたり,養育費も扶養料も同じだと言っていると取られたようですけれども,これは弁護士同士で議論したときに,違うからこそ,どちらか一方に固めてしまうと,いろいろな場面で問題が生じるというような議論があったということをお伝えしたかった,ちょっと先走った議論になってしまいましたが,そのような趣旨に御理解いただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。たくさんの御指摘を頂いたかと思いますけれども,民事法の外の問題との関係につきましては,既に出ているものと共通の方向の御指摘を頂いたと思います。
  そのほかに,高葛藤のケースにおける子どもの利益,子どもの意思をどう考えるかということ,一旦決めたことの変更ということが重要だという御指摘は,非常に興味深いものとして伺いました。
  具体的な問題についての御意見は,またそれぞれのところで頂戴したいと思います。


○池田委員 池田でございます。
  これまでたくさんの方々からヒアリングさせていただいて,大変勉強になりまして,どうもありがとうございました。
  その中で,私からは,主として父母の離婚を経験した子の立場からのお三方へのヒアリングに触発されて考えたことを,2点ばかり申し上げたいと思います。一つがそういった子どもへの直接の支援の必要性,二つ目が父母への支援の必要性,いずれも支援についてです。
  まず,子どもへの支援ですが,私の代理人としての活動を振り返りますと,裁判所の外で父母間で合意がスムーズに進んでいく,つまり,協議離婚へと流れていくようなケースですけれども,そういったところでは,どうしてもやはり合意を優先してしまうというような傾向があると思っています。例えば,お子さんをどちらが養育するかというところで争いがなければ,同居親がしっかりとした養育体制を取るだろうと信頼をしますし,心理的ケアも同居親が中心となってやってくださるだろうというふうな信頼をして,よほど気になるところがなければ,同居親の代理人であっても,直接子どもに会ったりということはあまりしないというところがあります。さすがに,養育費を定めないということはほとんどないですけれども,面会交流については,引き続き協議しましょうねというところでとどめておくということも,しばしばあります。弁護士が関わる場合でもそうですから,弁護士が付かないという場合には,やはりその傾向は一層強いのではないかなと思っています。
  しかし,ヒアリングで子どもの立場からのお話を伺いますと,やはり,いずれも協議離婚のケースだったと思いますけれども,お母さんと会いたいと思ったけれども言えなかったというお話とか,養育費が支払われていないことに対する不満を実は感じていたんだというお話ですとか,あとは,ヤングケアラーの役割を担わざるを得なかったというふうなお話もあったと思いますし,それから,何より父母の離婚に関する情報がほとんど与えられていないんだなということを,改めて認識したところでした。
  そういうことを考えますと,やはり一見スムーズに父母間で合意が進むような協議離婚でこそ,子どもへの直接の支援というのが必要なのではないかなと思っています。やはり子どもが一人で悩みを抱えて,お父さんとお母さんの離婚という事態に折り合いを付けられずにいるというような状態というのはできるだけ回避されるべきで,子どもの年齢とか発達状態とかに応じた,分かりやすい言葉で情報提供を受け,何か疑問や悩み事があれば相談できるという仕組みの必要があると思います。もちろん,親が一義的にはそういった役割を担うのでしょうけれども,あるいは親族が担うのでしょうけれども,親密な関係にあるからこそ相談しにくいというところもよく指摘されているところで,一定の相談支援の枠組みというのを用意しておいて,その枠組みに守られながら子どもが相談するという支援があればいいなと思っています。
  そういった支援をどのように制度化するか,先ほど来,民事法制との関わりという指摘がありましたが,そこについてもちょっと申し上げたいと思います。そういった支援というのは,基本的には福祉的な関わりだと思いますので,そういった機関が担うということになるんだろうと思います。この点,現状でもひとり親家庭の支援という枠組みで,親への支援というのはあると思うんですけれども,子どもへの直接の支援というのをきちんと組み込んだ形にしていくべきだろうと思います。そして,それを全国的なものとしていくためには,やはり支援の枠組みを定めた立法というのも必要になってくるかもしれないなと思います。おそらくそれは厚労省の所管になるのだろうと思います。ですので,せっかく厚労省にも御参加いただいていますので,そういった支援の現状ですとか今後の支援の在り方について,是非御検討いただければ有り難いと思います。
  他方,この部会で議論をすべき離婚法制においては,それらの支援との連携がスムーズにいくということを,おそらく注意しながら考えていくべきなんだろうと思います。例えばですけれども仮に,離婚のときに,親が子どもの意見や意向を年齢や成熟度において尊重しなければならないと,民事法制で定めるとすると,やはり親が第一義的に,とにかく真摯に子どもに向き合わないといけないということの動機付けになるだろうと思います。あるいは,協議離婚に関して,一定のガイダンスを受講するということにすれば,一定のそういった動機付けにもやはりなると思います。協議離婚時に定める事項について,子どもの意見や意向を適切に尊重した合意をしなければいけないと,仮に定めるとすれば,やはりそういったところの支援に流れて行き得るというところはあるので,そういったきっかけといいますか,連携の始まりになるような規定の仕方を,ここで議論するということではないかなと思っています。
  それから,あと,民間団体,支援団体がいろいろと役割を担うということになれば,その認証基準に子どもの意見や意向をきちんと尊重するような,そういう業務活動をしているということを含めることも,一つ方法になってくるかなと思います。
  以上が,子どもへの支援の話でしたけれども,手短に父母への支援というのを,最後に少しだけお話ししたいと思います。やはり子どもの養育に関する取決めというのは必要だと思います。極端な話,離婚時の取決めがなくて,養育費も払われず,養育支援もなされず,孤独の中,同居親が子どもをネグレクトして死に至らせてしまうというようなケースもやはり現実にありますので,こうしたことが起こらないように取決め支援をしっかりする必要があります。明石市はじめ自治体でやっているところもあると思います。ますます進めていくという必要があると思います。離婚法制においても,やはりそれを後押しするような連携の始まりとなるような仕組みというのを議論していく必要があるのかなと思っております。
  ちょっと長くなりましたが,以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。子どもへの支援と,それから親への支援ということを分けて御感想,御意見を頂きました。
  議論の仕方についても御指摘を頂きまして,民事の立法をするときに,福祉的な支援との関係について,どういう考え方をするのかということに関しまして,親への動機付けとか,あるいは支援のつなぎの契機になるといった観点から規律をするということでつないでいけるのではないかという御指摘を頂きました。
  久保野幹事,それから戒能委員の順にお願いいたしたいと思います。


○久保野幹事 久保野です。
  まず,ヒアリングにつきましては,取り分け当事者の方,また支援の方々の,文献などからは知ることのできないような事柄ですとか,あるいは思いの重さといいますか,ちょっと曖昧な言い方ですけれども,そのようなものに触れさせていただく機会を頂けたというのを,非常に有り難く思いました。
  意見は主に今後の方向性についてなんですけれども,冒頭の会のときに,民法を改正していく際に,子どもの利益といったことについて,正面から,児童虐待の対応といった狭い意味ではなく,子どものことを捉えた親権法の改正が実現していくことに期待を持つと言わせていただいたのですけれども,先ほど指摘が出ましたとおり,子どもの利益に限りませんけれども,千載一遇のチャンスという表現,もう一度何か胸に留めたいと思います。この機会は,そのような非常に大事な場だと思います。
  現行法につきましては,改めて言うまでもないかもしれませんけれども,親族の関係につきまして,当事者の協議ですとか合意に任されている点の多い,白地規定の多い特徴があると,かねて指摘されてきているところでありまして,親権法にしましても,766条にしましても,未成年養子につきましても,具体的基準が条文にはほとんど具体的には記されていないという現状ですので,正に今,議論になっていますような,両親が非常に高葛藤であるということをどう捉えるかですとか,DVの事案やDVという要素をどう考えていくのかですとか,子どもの意見や意向をどう考えるのかということについても,実は手掛かりがないという問題があります。この点については,家事事件手続法にはしっかり入りながら,民法の方では手当てがされていないといったようなこと等につきまして,具体的基準が示されていない民法を,変えるところがあれば少しでも変えていこうということが,積極的に進めていけたらという思いを強く持ちます。
  その上で,支援が大事ですとか,福祉との連携が大事ですとか,人材育成がまず必要ではないかといったことは,これはこれで本当にそうだと強く思うところでありますけれども,ヒアリングの中で泉市長さんが,第三者機関や行政の支援をあれほど独自に手厚くなさっていて,人材育成にも乗り出していらっしゃると伺って,不勉強で申し訳ないですけれども,感心して驚いたんですけれども,その泉市長さんが,裁判所にもっと頑張ってもらわないと困るのだというような趣旨のことをおっしゃったように思いまして,やはり法制度でやるべきことも残っているという,残っているという言い方は変ですけれども,印象を持ちました。
  ということが1点です。
  もう一つ,少し細かい点になるんですけれども,海外法制につきまして,難しい問題なので,海外法制が原則論のところだけではなく,細かいところにどう対処しているかということは知りたいとは思います。ただ,注目が高いテーマなので,これまで複数の国を取り上げての報告書やまとまったものが何回か出ていると思いますし,また,先ほど真似する必要があるのか疑問が存するという意味で,参考にするべき国々があるということにつきましても,今日提出されました資料も含めまして,詳しい形で比較的紹介されているようにも思いますので,文献で調査が付くところにつきましては,むしろそれらのものを,ほかの法制審議会などでも行われていますとおり,分かりやすく一覧性にするといったような形で共有することが大事なのではないかと思います。文書では分からない点について,もし聞くことができるといったものがあれば,それはそれで有益かとは思いますけれども,それも,もう少し日本の課題として,どの辺りが特にポイントかということが分かってからの方がふさわしいのではないかという気がしておりまして,海外法制のヒアリングを急ぐというのは,どちらかというと控えた方がいいのではないかという意見を持っております。
○大村部会長 ありがとうございます。大きく分けて2点だったかと思いますけれども,現行の民法の規定が,相対的に手薄になっていることに伴う問題があり,これについて対処すべきではないかということと,それから海外法制については,調査は必要であろうけれども,既に調査されているものがあるので,その先の調査についてはもう少し後でもいいのではないかという御指摘を頂いたかと思います。

○戒能委員 戒能と申します。
  3点,もう論点がいろいろ出ておりますので,簡単に申し上げます。
  一つは,ヒアリングで気付いた点というのは大変大きかったと思うんですが,その中で,養育費の位置付けということなんですね。養育費について,先ほど不満が出たというお話もありましたが,実は,その子どもさんの進学という問題に関わる,そして,その進学というのは就労と深く結び付いている,どういう人生を送るかということを,言わば10代の後半で決めていく,そこに,養育費の不払いとか取決めがないというようなことが,大変多くあるんではないか痛感させられました。
  そういう意味では,一つは,養育費という,これは先ほど来,この法制審のミッションの範囲に絞った議論をすべきだという意見と,やはり連携,関係している分野との総合的な検討が,どうしても必要となるという意見があったと思いますが,私は後者の方の,私的な責任だけではもう覆い切れないんではないかと,お二人ですね,男性の方と,それからAさんのお話を聞いていて,強く感じました。それが1点目です。
  ですから,確かに家族法制部会でありますけれども,そこで民法の改正に至るまでに,もう少し視野を広く見たいと思います。私が伺っていたところによりますと,この家族法制部会は,民法研究者だけではなく他領域の専門家も入って,総合的に議論するということに大きなメリットがあるんではないか,今までの家族法の考え方を打ち破っていくというようなことを,子どもをどうやって守るか,あるいは子どもの利益をどうやって実現していくかという,外国だと子ども法という範ちゅうになるかもしれませんが,そういうことを使命としていると,個人的には考えております。
  2番目ですが,支援機関のお話を聞いて,特にFPICと,それから明石市長のお話を聞いて,高葛藤の中でもDV事案が,数量的にどうかということは示されませんでしたが,対応が困難であると,支援が困難であると感じました。その背景には,余りにも公的な支援体制が貧弱であり,それを前提として議論しなければいけないと。その中でも,面会交流の問題になりますけれども,DV被害の継続であるという北仲さんの指摘とか,それから,何といっても母親に対する被害の影響と同時に子どもへの影響ですね,それをもっと,これは他領域の専門家の援助が必要かと思いますが,そこまで見ていかないと,本当に子どもの利益,子どもの安全ですよね,安全は守られないのではないかというのが2番目です。
  それから,3番目が海外法制,外国法制なんですが,これは,相当時間がたって,見直しの時期に入っている,今まで前提としてきた価値観とか考え方あるいは制度が見直しされているということに敏感でありたいと思っております。ですから,後からという考えもあるでしょうけれども,事務局の案のように,海外法制を見ておくことが,必要なのではないか。そのときにやはり,外国のことだけではないわけで,日本の課題とどうつながっているのか,関連しているのかという視点が大事だと思います。その意味では,日本の家裁の運用の観点からのヒアリングも必要ではないかなと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。ヒアリングについての個別の感想とともに,これからの議論の仕方についても御意見を頂きました。大きな議論の仕方につきましては,先ほどから御意見が出ているところでございますけれども,海外法制については,最近の状況を捉えるという意味で,少し早めにやった方がいいのではないかという御意見を頂きました。それから,日本の実務の状況についても,という御意見も頂きました。
  では,青竹幹事,棚村委員という順番でお願いいたします。


○青竹幹事 青竹と申します。
  ヒアリングは,非常に参考になり,勉強させていただきました。
  1点目は,子の立場で御報告された方のお話を伺って感じたことですけれども,やはり多様な家族がありますので,法制度を考えていくときに,一律に定めるというのではなくて,共同での父母の子との関わりということについても,必要な場合と不要な場合もあるでしょうし,逆に害になるケースもあるというのも認識されていることですので,硬直的な制度というのではなくて,やはり様々なケースに対応できる仕組みという方向を目指すべきではないかと感じました。
  2点目は,進め方に関わることですけれども,これもヒアリングで,お子様だったという立場でお話ししていただいた方は,面会交流と養育費について,両方重要な意味を持つように捉えられているということが分かったように思います。面会交流も,もちろんマイナスの意味も含めてなんですけれども,マイナスの意味も持ち得るということも含めて検討すべきですので,やはり養育費,面会交流,両方同じように重要なものだという捉え方で検討していってはどうかと考えております。
  それから,3点目に,先生方がおっしゃったことですが,海外の仕組みは参考になりますので検討すべきだと思うのですけれども,やはり一部の国でこういうふうになっているということで,すぐに結論に結び付けない方がいいのではないか,諸外国でとられている制度の仕組みの意味を慎重に検討すべきだと考えております。また,比較する対象の数も増やして,比較していった方がいいのではないかという印象を持ちました。
○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングを踏まえて,家族により様々な状況があるので,その多様な状況に対応できる立法が必要ではないかということと,養育費と面会交流それぞれに重要な課題があるという御認識,最後に海外法制については,それぞれの制度に慎重な評価が必要ではないかという御指摘を頂きました。
  次に,棚村委員,よろしくお願いします。


○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  参考人のヒアリングについては,時間が限られていましたけれども,いろいろな立場の方から御意見を伺い,また御経験をお話しいただき,大変参考になりました。お礼を申し上げたいと思います。
  それから,法制度と支援との関わりについてですが,実は,私の方から最初に,法制と支援というのはセットで考えてほしいということを申し上げました。ただ,私自身がお話しした趣旨としては,法制審議会では,主として民事法制を議論する場ですので,ただ,支援を全く度外視して法制度を作っても,実効性も担保できないし,いいものはできないのではないかという意味で,是非支援も議論の中に入れてやるべきだということを申し上げました。その辺りをもう一回,きちっと確認をしていきたいと思います。理解していただいたと思うのですけれども,ここは法制度の在り方を議論するというのが主であって,ただ,支援というものを全く考えに入れないで考慮せずに作るとすれば,決していい法制度はできないということでお話ししたものです。
  それで,子どもの養育のあり方を見直すということが焦点になっていて,子どもの利益や子どもの権利を守ろうということでは,共通認識が皆さんにあると思いますから,是非,今後の進め方でもそのようにお願いしたいと考えております。前回も,私が言いましたように,民法は,明治民法典として当時の状況下では優れたものができたのですけれども,ただ,時代とか社会の変化に適応するためには,きちっと改めるところは改めざるを得ないということでも,異論はないと思われます。しかし,どの範囲の問題を取り上げるかということでいうと,子どもの養育に関係するのは,親権と監護の法制だけではなくて,未成年養子という,連れ子養子とか,再婚されて養子縁組をされるということもあるので,是非未成年普通養子についても議論するせっかくの機会ですから,すべきだろうと思います。
  それから,財産分与についても,婚姻費用の分担とか,それから財産分与というお金の面のことですけれども,養育費といろいろとリンクする経済状態の問題ですから,これも是非取り上げていただきたいと思います。どこにどんな順番でウエイトをかけてやるかということは別として,せっかくの家族法制を見直す千載一遇のチャンスですから,特に民法を中心とした基本法の見直しである以上,それも取り上げてほしいと考えています。
  海外法制とヒアリングの御希望が結構あったと思うのですけれども,私もアメリカを含めて,イギリスとかコモンウェルスの国々を中心に見ているのですが,本当に比較しようとなると,時間も労力も掛かるだけではなくて,短期間では実態にどこまで迫れるかはかなり難しいところがあります。ですから,もちろんエッセンスということで,先ほども出ていましたけれども,法制審議会で私も協力をしたりしてきたのは,一覧表みたいなのを作って,この項目についてはこういうふうになっているとか,こういう制度があるとか,条文とか書いていただいて,日本法の審議の参考にする。ただ,実際の運用とかそういうところまではよく分からないところもあるので,必要があれば,そういうことについて専門家からコメントを頂くとか,参考文献を付していただくということでよいのではないでしょうか。海外法制については,日本と全く同じように比較するとか実態を知るということは案外難しいところがあるので,日本の法制を作る上で,海外の法制をどの程度参考にできるだろうかという観点でやってほしいと思います。ですから,特別に海外法制についての時間を作るとか,調査の機会を作っていくということよりは,調査報告書や研究論文等の文献を示していただき,本当に必要最小限に限っていいのではないか。ヒアリングも大分聞かせていただいていますから,ヒアリングそれ自体に時間をかけるというよりは,今後の進め方にも関わるのですけれども,養育費,面会交流を含めて,やはり具体的な問題ごとに話を進めていってはと思います。
  それで,私も養育費から検討を始めるということに賛成です。逆に言うと,面会交流については法的には別のものではあるのですけれども,一定程度関連したりしますし,海外法制を調べているとよく分かると思いますけれども,別のものとしてスタートさせたところでも,面会交流をさせてもらえないから養育費を払わないという話が出てきたりして,どうしてもある程度は,別のものとしながらも関連付けてやっていくというところがあります。例えば,面会交流の時間とか共同養育で使った時間,そういうものを養育費の算定なんかで考慮するというところもあります。結局,両方がむしろ一体となって協力をしてうまくいったときは,ある意味では,子どもを応援する経済側面と精神的な側面という場合もあり得るし,逆に,ブレーキになって,むしろ問題をこじらせるということもありますので。その辺りは慎重にすればいいと思います。取りあえず具体的な問題から入っていくということが重要でして,養育費とか面会交流とか,現状がどうなっているのか,現行法の規定がどうなっているか,それにどういう課題があるかという,事務局で整理していただいたような方向で議論をしていただければと思っています。
  いずれにしても,ここでは,民事法制,家事法制,この改正につなげられるかどうかということである点は確認しておく必要があると思います。支援を全く度外視するとか,実情を無視するとか,海外の法制を全く考慮しないという意味ではなくて,ここの場ではその主たる目的に沿って,必要な範囲で参照させていただいたり,資料を用意していただいたり,議論の対象にしていくということで進めていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。最初に民事法制と支援の諸方策の関係についての御意見を頂きました。具体的な方向性については,親権,監護,それから未成年養子,財産分与といった問題を,一つずつ順次検討に入るべきではないか,まず養育費と面会交流の問題から始めようという御提案を頂いたと承りました。
  また海外法制については,必要な限度でやるということでよいのではないか,なかなか取扱いに難しいところがあるのではないかといった御指摘も頂きました。
  まだ御発言があろうかと思いますけれども,ここで10分休憩させていただいて,さらにヒアリングに関する御意見,御感想を承った上で,次の話題である今後の進め方に入っていきたいと思います。

          (休     憩)

○大村部会長 それでは,再開させていただきます。
  先ほどから,ヒアリングを踏まえた皆様の御意見,御感想を頂いておりましたけれども,更に御発言があれば承りたいと思います。委員,幹事の御発言も頂きたいと思いますし,役所の方々,厚労省ですとか裁判所で何か御発言があれば,そちらもどうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

○佐野幹事 もう既に,次の議論をどういうふうにしていくかという話が入っているようですので,そちらについてちょっと希望を申し上げさせていただきます。
  まず,面会交流と養育費の話を途中までやっていたかと思うのですが,やはり私としては,議論をするのは別々の方が議論をしやすいなと感じております。やはり問題の性質が大分違うので,その方がすっきり議論ができるかなと思っております。
  それから,やはり海外法制の研究については,いろいろ議論があるところのように思いますけれども,私としては,是非,韓国の話も聞いてみたいと思っています。特にアジアで,非常に制度が進んでいるところですので,ベースの内容については文献等で頂いて,運用とかについてよく知っている方に聞かせていただくような形で,コンパクトでも結構ですので,具体的にどういった問題が生じているのか,そういった辺りを聞きたいとは思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。議論の進め方について,二つ御意見を頂いたかと思います。
  養育費と面会交流は一応分けて議論を,という御発言でしたけれども,これは,これを続けてやるという前提で,しかし分けてやりたいという御希望だと承りました。
  それから,海外法制については様々な御意見を頂いておりますけれども,韓国も含めてどうかということと,コンパクトに運用の実態などに焦点を当てて行うとよいという御指摘を頂きました。
  ほかに御意見いかがでしょうか。


○藤田幹事 事務局でございます。
  先ほどから御指摘がある民事法と公的支援の関係について,関係省庁との状況を少し申し上げておいた方がよいかと思いまして,一言だけ失礼します。
  御指摘があるとおり,この家族法制部会は,諮問事項との関係で民事法制の検討が中心になるのでしょうが,事務局としては,これまでの議論で皆様から様々な御意見を頂いておりまして,それをできるだけ適切な形で受け止めたいと考えてございます。その中でも,離婚前後のDV被害の問題,さらには公的支援の問題については,特に多くの御意見を頂いておりますが,例えば,DV対策の問題であれば,DV法を所管する内閣府に幹事に入っていただいており,部会の場以外にも,離婚に関連したDV問題の対応で連携を図ろうとしているところですし,公的支援の関係では,特に養育費確保の公的支援がこれまでクローズアップされてきたこともあり,それらを中心に厚労省と実務的な連携の枠組みを設けて,公的支援策の検討をしてきたところであります。ですので,これら御指摘の点は,この部会とは別の形でも,同時並行で関係省庁等としっかり検討を進めて,方向や成果を出せるときにはしっかりこちらに報告・還元して,部会での議論と双方向でやるということを考えておりますし,それが重要であると認識しているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。
  そのほかにはいかがでございましょうか。

○水野委員 水野でございます。
  特に今までの御意見と異なる意見を申し上げる自信はないのですけれども,発言をお許しください。ヒアリングでは本当に胸の痛むケースをたくさん伺いまして,改めて,つらい問題で,何とかしなければならない問題だと思いました。ただ,その胸の痛むようなケースは,監護親と非監護親どちら側の立場にもあるわけです。それは,今,事務局からのご発言にもありましたように,育児支援や暴力対策支援がものすごく貧弱だという問題,つまりいわば離婚後共同親権という窓のスタイルを議論しようにも,土台がものすごくぬかるんでいるので,そもそもまずきちんとした家が建っていないという,そういう問題を我々の社会が抱えているのだろうと思います。
  それで,進め方なのですけれども,外国法制のヒアリングという希望が出ましたが,私は外国法制の紹介は,非常に難しいことだと思っております。外国法制は,どこに光を当てるかによって随分イメージが変わってきます。その外国法制は,土台がどういう構造になっているのかということから,全体像を描ける紹介でないと危険で,一部分の紹介ですと,象の一部をなでて,極端な結論が出るということにもなりかねません。そして,日本法は西洋法制と比べますと協議離婚制度がある等,非常に特殊ですし,また,先ほど申し上げたような土台がぐずぐずであるという問題も抱えていますので,まず議論を進めるためには,ある程度論点を絞って進めた方がいいかと思います。
  先ほど小粥委員や久保野幹事から,まずは民事法制の改正という論点ではないかというご意見が出ました。確かに背景の問題を我々は自覚しながら進めなければいけませんけれども,ここでする議論は,やはり民事法制の改正という論点にある程度絞った方がいいように思います。
  ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。海外法制は,先ほども御指摘ありましたが,なかなか実情を知るというのは難しいところがあります。そういうことを考えつつ,やる必要があるということかと思います。
  それから,議論は論点を絞って,民事の法改正に結び付くような形で最終的にはやっていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。
  窪田委員,沖野委員の順番でお願いいたします。
○窪田委員 ヒアリングを踏まえての感想というよりは,専ら今後の進め方ということになってしまうのですが,それでもよろしいでしょうか。議論がそちらの方に移っているのかなと思ったので。
○大村部会長 そうですね。直近で頂いた意見の多くは,議論の進め方の方にシフトしていると思いますので,ここから先は,もちろん引き続きヒアリングの感想を述べていただいても結構ですが,議論の進め方についても御意見を頂くということで,議論の重心を移していきたいと思います。窪田委員,そういう前提で結構ですので,御発言をお願いします。

○窪田委員 もちろんヒアリングの感想についてもいろいろ申し上げるべきなんだろうと思いますが,議論の進め方ということで,今まで出ている論点について,重なることになるかと思いますが,発言させていただければと思います。
  3点ございます。
  一つは,もう先ほど事務局からもお話があったのですが,この法制審の役割と今回できることということは,やはり意識はしておくべきなのだろうと思います。最初に小粥委員から御発言がありましたが,小粥委員は,できないこと,管轄外のことについては議論するなという趣旨では全くなくて,飽くまでそれを踏まえた上で,でも,最後の目的は,民法なり民事法制の改正なのだということを,自覚的に捉えていくべきだったということなのだろうと思います。その周辺の問題が議論できないとその先に進めないというような枠を課してしまいますと,もうちょっと身動きが取れなくなるのではないかなと思いますので,その点が一つ。
  それから比較法,外国法の扱いなのですが,対照的な意見がすごく出ているのだろうと思いますが,これは,外国法を何のために扱うのかということにも関わるかと思います。もちろん,ここには,外国法制,外国の家族法制に詳しい方もおられれば,そうではない方もおられますし,また法律の専門ではないという方もおられる中で,ある程度一般的な外国法の知識を共有しておこうというものであれば,これを早めにやっておいたらよろしいと思いますし,棚村先生からお話があったような一覧性のものをまず作って,概略をお話しいただき,それを出発点にしてということでもよいのかと思います。
  ただ一方で,掘り下げた外国法の紹介というのは,実はものすごく難しいのだろうと思っています。今日,委員から資料で出していただいたもの,オーストラリアに関するものもそうなのですが,非常に立ち入った論文というのも従来から幾つもありますけれども,多くの場合には,やはり一定の,そこから解釈論を導くという性格がかなり強くなっておりますので,単純に外国法の状況,外国の状況を知ろうというのではないかと思います。もちろん議論していく上での参考となるものではあるのですが,それらを全部扱う,それをしないと先に進めないという前提を取らない方がいいだろうと思っております。必要に応じて論点ごとに外国法についてやや詳しく説明をしてもらうということでよいと思いますし,この場合も,私は基本的にはできるだけニュートラルなものをまず出発点とした上で,必要があれば更に立ち入った形でというのが良いと思っています。そういった形での外国法の位置付けの方がいいのではないかなと思っております。
  それから,3点目なのですが,養育費と面会交流の扱いということで,これは,意見の中でそれほど大きな対立があるわけでもないのかなとは思います。私自身も,養育費と面会交流の話,両方とも大事だろうとは思いますし,最終的にまとめる中で,両方ともについて判断を出すべきだと思いますが,セットであるということはあまり強調しない方がいいのかなと思っております。もちろん,養育費の議論をしていって,また面会交流の議論をしていって,最終的に両者の関係として一定の関わりがあるそうだということは出てくるかもしれないですが,それをその時点で,次のステップで扱うべき問題であるのではないかと思っております。
  さきほど棚村先生から,養育費を払わないのだったら面会交流させないというのがありましたけれども,それもよくありそうな話だなと思うのですが,一方で,養育費を払っているのだから会わせろというような形での一体性が出てくると,やはり面会交流の議論というのは出発点でゆがんでしまうのではないかなと思いますので,一応問題としては切り離した上で進めていったらどうでしょうか。切り離すというのは,全く無関係だということではなくて,まずは別の論点だということで柱を立てた上で議論をしていったらどうかなということです。
  今まで出てきた意見とかぶるところも多いのですが,以上3点についての意見でした。
○大村部会長 ありがとうございました。今日のこれまでの議論をまとめていただいたような形になっているかと思いますけれども,まず,法制審の役割に関する捉え方につき,民事法制以外の問題について,議論をしないということではないけれども,最後は立法のあり方,民事法の改正に結び付くような形で議論すべきではないかという御指摘がありました。
  それから,外国法制は,これは研究者の方々がみなさん共有されていることだと思いますが,理解をするというのは本当に難しいことです。そうであるということを踏まえた上で,しかし,一定程度知識を共有するということであれば,ニュートラルな形で紹介していただくというのはよいのではないかという御指摘を頂きました。
  さらに,養育費,面会交流については,一応分けた上で議論はするということでどうかという御意見だったかと思います。
  それぞれについて,異なる御意見も出ておりましたけれども,それを踏まえての御発言だったと理解をいたしました。

○沖野委員 今の窪田委員の御指摘をそのままなぞるような形になってしまって恐縮なんですけれども,同じ項目を3点,やはり申し上げたいと思います。
  一つは,この部会の役割ということで,もうこれは既に,本日問題提起をしていただいたことで共通理解となっているのではないかと思いますけれども,中核としては,法制審議会の部会として,民事法制についての一定の考え方を示すということだと理解しております。しかしながら,取り組むべき問題というものが,民事法制だけで解決するものではないということも共通理解となっており,この民事法制がどう動くか,あるいは,しかるべくように動いていくためには,どういうことが必要なのかという点から,様々な検討が必要だということになってくると思われます。公的支援もそうでしょうし,あるいは民間の団体との協働ですとか,いろいろな形があると思います。
  また,法制度としてどういうものがあるべきかという,その選択においても,他の制度ですとか他のものが関連してきて,こういうことができるのであれば,選択肢Aになるけれども,しかし,そこが難しければ,やはりBになるとか,そういう形で関連してくることが考えられるので法制度だけを独立して論じることもできないと思います。ただ,しかしながら,私たちは全てを同じ比重でやっていくわけではないということは,重々念頭に置いておく必要があるだろうと思います。
  2点目がヒアリングでございますけれども,これまでのヒアリングで,私,途中出られなかったときもあるんですけれども,参加させていただいたところでは,非常に多くを学んだと思います。いろいろな問題,いろいろな経験,そして問題の深刻さ,重さについても,改めて感じ入ったというところがあります。したがいまして,ヒアリングを続けていくということに対しては,更に多くを学ぶ機会だろうとは思っております。
  しかしながら,ヒアリングには一方,限界もあると感じておりまして,様々な御自身の経験を語ってくださるということですが,その経験には,恐らく別の見方もあるだろうと。相手方,あるいは別の立場に立てば,同じ事象が違うように見えてくるとか,違う経験があるということがありまして,そういったことを同じようにヒアリングで補完していくということになりますと,ある意味際限なくなってしまうということがありまして,やはり私たちが最終的に取り組む民事法制の在り方のために,どういうことを考えていくかといったときに,時間も限定されているということもございますけれども,むしろこういうヒアリングが再びやはり必要ですねという指摘がありましたら,正にそれを補充していくというような形で,また,これまでのヒアリングに対し,しかしこういう点も考えなければならないというのは,既にいろいろな専門家の方が知見を持っておられるところですから,そういった留保も十分していくことで,あるいは,今回もそうですけれども,今までのヒアリングになかった,しかし,こういった点が実は重要であるとか,こういった御経験もいろいろとあるんだということは,正に委員や幹事の皆様から伝えてくださって,それを共有しているということもありますので,そういった手法も組み合わせて考えていくべきではないかと思っております。
  同じことは海外法制についても言えまして,海外法制というのは,やはり私たちのこの制度をどういうふうに作っていくかというのに当たって,こういうようなやり方もあるとか,こういう経験もあるとか,そういったことを学びといいますか,それを参照していくものであり,そのための情報入手等としてヒアリングが唯一だとは思われませんので,やはり適宜の方法でということになるのではないか。それもまとめて集中的にということもあり得ますけれども,そうではなくて,例えば,韓国の例でこういうものがあって,こういうところの実態が分かれば,一層参考になるのではないかという御指摘があれば,それについての情報提供ということが,どういう方法があり得るかというようなことで見ていくということもあり得ると思います。もちろん,ヒアリングを否定するというわけではないのですけれども,全てヒアリングをやるべきだということにはならないという前提で,適宜の組合せを考えていくべきではないかと思っております。
  3点目が,具体的な項目につきまして,私も養育費と面会交流というところから始めていくということが適切ではないかと思っております。両者の関係につきましてなのですけれども,これも,ヒアリングですとかこれまでの皆様の御意見を聞いてということなんですが,私は,子どもの養育に親が共にそれを担っていかなければならないと,そういう義務を負っている中で,養育費というのは経済面での担い方ですし,面会交流,あるいはそれだけではないかと思いますけれども,というのは,交流ですとか先ほど精神的ということも言われたと思いますけれども,財産法的にいえば現物給付的ということもあるのかもしれませんけれども,そういう点からの様々な義務を果たす手法の一つと考えますと,両者というのは関係している,あるいは,子どもの養育という点からは,その一環という形で位置付けられるというものではないかと思っております。
  しかしながら,具体的な内容というのはそれぞれかなり違っておりますので,これを一緒に論じていくということの意味がどういうことなのかということで,結局やはり養育費というのはこういうふうに,面会交流というのはこういうふうにというような形で論じていかざるを得ないのではないかと思います。
  両者の関係につきましては,今申し上げたような大きな位置付けといいますか,視点の中で,両者というのをどういうふうに考えていくかという問題と,非常に個別的な点で両者を連動させて考えるのかという問題があり,出てまいりました面会交流がブロックされるならば養育費は払わないとか,あるいは,面会交流をしているなら養育費を減じるべきだとか,これというのは非常に具体的なレベル,それぞれの中身のレベルで両者を関連させ,あるいは連動させていくという考え方ですけれども,果たしてそうかと。そもそもが,子どもの養育というのを担う,あるいは,それが義務であるならば,面会交流をしていても,子どもの養育に費用が必要ならば,それは負担しなければいけないということになりますので,一方が負担できなければ他方が負担すると,中の分担ですとか,最終的な精算をどうするかというのは,また別途考えられると思いますけれども,それはちょっと具体的に立ち入りすぎかもしれませんけれども,そういう具体的なレベルでの関連性があるのかどうかというのは,それぞれの制度を考えた上で,さらに最後,両者の関係性というようなことで考えていくというのがよろしいのではないかと思っているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。先ほどの窪田委員の御発言とほぼ対応する形で御意見を頂いたと思います。
  特に最後の3点目ですね。養育費と面会交流について,大枠での捉え方と個別の制度のレベルでの捉え方とを区別して考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をしております。
  それでは,杉山幹事,落合委員の順番でお願いいたします。

○杉山幹事 幹事の杉山でございます。
  私も,これまでのヒアリングで様々な立場の方からの御意見をうかがう機会を頂き,大変勉強になりましたため,感謝申し上げたいと思います。
  私も,このヒアリングに対する感想というよりは,むしろこれからの進め方に関しての意見になりますが,また,既に窪田先生と沖野先生からいただいた御意見とほぼ同じようなものになりますけれども,私自身も,基本的に検討対象を民事法制に絞って,また,事務局が提案されたように,養育費,面会交流の問題からまず議論するという方向性に,基本的に賛成しております。
  先ほど事務局から御紹介がありましたように,例えば,養育費の問題に関しましては,公的な支援とか,あるいは公的な徴収や立替制度の在り方について,他の省庁との協働の上で検討が進められているようですが,少なくとも民事法制,民事執行とか家事手続などの見直しについては,こちらの法制審に委ねられていると理解しておりますので,民事法制については,こちらで議論をするということが必要であると思います。
  また,場合によっては,養育費とか面会交流の問題でも,手続的な面を先に議論するということもあり得るのではないかとは思っております。例えば,養育費の請求権が子の権利か親の権利なのかとか,両親が別居中の取扱いをどうしたらいいのかといったような問題もありますが,実体法の本質的な論点であって,大きく意見の対立する可能性もあります。これらが最終的にどのような方向性になったとしても,手続的な問題,つまり,養育費回収ができない人について手続的な手当てを施すべきだという方向性については,大きな異論はないと思われますし,手続自体は,実体法の議論からはニュートラルなものとして作ることが可能であると理解をしておりますので,場合によっては,手続的な問題から議論を始めて,実体面の方向性がまとまっていけば,その影響が及ぶ範囲で手続についても再度見直すのがよいと思います。一読,二読という機会もありますし,前提が変われば,別途個別に修正していくことはあり得ると思います。
  また,特に養育費に関しましては,これまでのヒアリングの中でも,実際に払われていない実情があることが伺われましたし,これまでにも養育費があまり払われていないことを示す調査があったり,その原因や具体的な問題点が明らかになっているので,議論がしやすいと思います。ヒアリングとか本日の御意見でもあったように,特に面会交流に関して,強制をするのはどうかというような御意見などもあるかと思いますが,他方で,履行を求めたくても,それが実現できないという現状があるのであれば,それを改善する必要性があることは確かでありますので,この問題を先に議論するというのがいいと思います。
  もちろん,これも前の御意見にあったように,面会交流が強制にどれほどなじむのかとか,あるいは後に事情の変更があったらどうするのかとかいったような問題や,養育費と面会交流について今後手続を構築するに当たって考慮要素が違うのかといった点については,今後具体的に詰めていけばいいと思いますけれども,少なくともこれらの問題については,方向性について,この部会全体で大きな意見の対立が出てこないのではないかと思われ,具体的に議論を進めていくのになじみやすいと思います。
  また,これも,ほかの先生方の考えと一緒でありますけれども,海外法制に関して,一覧表を頂くというのは非常に役に立つ,参考になると思っております。他方で,例えば,養育費の回収方法の問題一つをとっても,公的徴収の在り方などについて様々な法制度を並べて比較してみたことはあるのですけれども,その背景にある制度,手続法も実体法も含めて,さらには裁判制度も含めて,どこが違っているからこのように違っているのかというところから立ち返って考えないと結局分からない問題であり,そうすると,たとえ1か国であっても,かなり比較は難しいと思いました。それもありますので,一覧表は参考にさせていただいて,必要があれば少し深めていく,方法はヒアリングなのか文献調査なのか,どれがよいのはちょっと分かりませんけれども,詳細に見ていくのがいいのではないかと思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。最初に全体として,事務局で一案を作られたような進め方に賛同するというご趣旨の御発言があったと思いますが,具体的な問題については,養育費から始めるということで,手続を先にすることも考えられるという御発言がありましたけれども,狭い意味での手続ということではなくて,何をどうするのかという問題で,具体的な議論ができて合意が形成されやすいものからやっていったらいいのではないかという御趣旨の発言としてと伺いました。
  外国法については,もう既に御指摘があるところですが,なかなか扱いが難しいので,慎重な対応が必要ではないかという御意見であると理解しました。
  落合委員,それから菅原委員に,お願いしたいと思います。


○落合委員 落合です。
  ちょっと不協和音というような感じになるかもしれないんですけれども,お話を伺っていて,法学者の方たちのカルチャーってこういうのなのかっていうのを感じました。それは,世間の多くの人たちも思うかもしれませんので,何を思ったかを共有させてください。
  一つは,法制度を変えるのが目的なのだから,支援とかのことは二の次というか,ということになるというような話をされているわけですけれども,社会を変えるために法を変える話をしているんですよね。この社会で今何か問題が起きているから,法を変えることでそれが解決できると思っているから,これを議論しているんですよね。例えば,離婚して子どもを育てているお母さんが経済的に苦しいと,子どもを育てるのが大変だということで,養育費の徴収の仕方を法律にどう書き込むかという話をしているんですよね。そうであれば,夫から取り立てられないときは公的な支援でとか,幾つかの方法でその問題を解決することを考えて,そのうちの一つとして,この法改正の話をしているんだと思うんですね。
  法の社会的な機能というのは,法社会学の中でもそういうふうに論じられていると思いますけれども,社会の何をどう変えるために,今,法を変えるんだと話をしていないと,やはり何をしているのか,ちょっとはたから見て分からないと思うんです。ですから,支援の話とか運用の話とか,そこは必ずしも切り離さなくていいというような論調もありますけれども,基本的には切り離さないものだろうと。ただ,法の整合性を議論するときには,テクニカルに法だけの議論をすればいいと思うんですけれども,全体としては,一体として話さなかったら何の意味があるんだと,私は思います。
  不協和音だと思うんですけれども,社会科学一般をやっている者,あるいはこの社会を生きている者としては,そういうふうに思うということを,ちょっとお伝えしたいんです。
  それから,外国法の話ですけれども,すごい一国主義ですね,今日の御議論は。法学が一国主義なのは知っていますし,それは,法が国ごとにできているから,当然そうなんだというのも知っていますけれども,外国法とすり合わす必要もあります。今や人の移動も多いし,家族も国際化していますので,結構それで問題が起きているわけですよね,連れ去りのこととか。日本はそういうことで批判をされているわけですよね。ですから,国際的にハーモナイズするというのは,やはり一つ考えておくべきことだと思うんです。世界の中のガラパゴスにならないために。だから,日本の中の法を変えるために,参考になるから見る,でも十分に参考にするほど深くは見られないから,余り見なくていいとか,そういう議論をしているのではなくて,国際的な家族が生まれているときに,ある程度,これから世界のルールが向かっていく先というのを想像して,そこに一緒に進んでいくように作っていかないと,浮いてしまうと思います。
  こんなことは,本当は言わずもがなだと思うんですけれども,そういうことが海外の例を見るときの目的なんだということを,言葉にしておきたいと思いました。
  あと,ヒアリングについてですけれども,本当は皆さんも多分遠慮して言っていらっしゃるんでしょうが,今までの実務でもっと御存じなんですよね。みんなで共通して話せる事例をということで,ヒアリングをさせていただいたということだと思っていまして,実態が分かってよかったということではないと,ちょっと気を付けて話をしていった方がいいように思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。落合委員は最初に不協和音ですが,とおっしゃいましたけれども,あえて挑発的な御発言をされたと受け止めております。
  ほかの委員,幹事から反論もおありかもしれませんけれども,私が今伺ったところを受け止めて,整理をさせていただきたいと思います。
  まず,最後の点です。ヒアリング,それから外国法調査もそうですが,それで何か客観的な,私たちが議論のベースにできるような確かなものが分かるのかというと,それは必ずしも分からないという認識は皆さんもお持ちなのだろうと思います。特に外国法について皆さんがそういうことをおっしゃったんだろうと思いますけれども,法改正を考える上で,私たちが気付かなかったことに気付くきっかけになる,発想の幅を広げることができる,そうしたものとして,ヒアリングや外国法の調査というのを受け止めておられるのではないかと思います。ここまで委員,幹事からは,こういうことに気付いた,こう考えるきっかけになったという御発言があったものと理解しております。ですから,外国法の調査をこの後に行うという場合についても,どういう目的でこれを行うかということについて考える必要があるのだろうと思って伺いました。
  それから,前の点ですけれども,これも落合委員は,わざとおっしゃったんだと思いますが,皆さん,この部会で民法あるいは民事手続法について立法に向けての議論をするというときに,法改正以外のことについて全く考慮に入れないとおっしゃっている方は,おそらく一人もおられなかったと思います。ただ,有益だろうと思われる基礎作業を全てやった上でないと立法はできないと考えると,今回のミッションを果たすことは難しいのではないかという御意見であったと受け止めました。
  これは,先ほどもお話がありましたけれども,DV問題については内閣府でその検討が進んでいる,子どもの福祉に関しては厚労省で検討がされているということで,それぞれ異なる立法で子どもの問題について対応がなされつつあるので,それぞれと連携しながらやっていくことが必要だろうということで,先ほどの御発言があったと受け止めました。それはそれで必要なことで,それぞれがそれぞれの立場から考えるときに,どこまでのものを視野に入れて行くのかということではないかと理解しております。
  答申に向けて報告書を書くときに,純粋な立法上の提案以外のことを,どの程度どのような形で書けるのかという問題は,報告書の書き方の問題としてもありますので,後の方で御検討をいただきたいと思います。
  ここでさらに立ち入った論争をするのはなかなか難しいと思いますので,落合委員,今のように受け止めさせていただくということでよろしいでしょうか。
○落合委員 はい,どうもありがとうございました。
  おっしゃるように,論点がはっきりするようにわざと言いました。ありがとうございます。
○大村部会長 ありがとうございます。


○菅原委員 菅原です,よろしくお願いします。
  ヒアリングについては,ほかの委員と共通するところが非常に多いのですけれども,発達心理学の立場で参加させていただいているという点で,特に前半のところでお話を頂戴しました,離婚を経験したお子さんの立場からという3名の方のお話からは,これまで様々発達心理学の中でも言われてきた,子どもにとって養育費の問題,経済の問題が重要であるということ,それから希望や事情に沿って面会交流が自由にできることの大切さ,また発達段階によって子どもの希望や事情はいろいろ変わっていくということを踏まえることの重要さを確認することができました。また,子どもが相談できる場所があることが大事だということも出てきましたが,その辺りにつきましては,子どもにとって重要なことであるというエビデンスも既にあるところですので,今後の法制度の制定のところに生かしていただきたいと思います。
  明石市の泉市長のお話も大変感銘を受けました。非常に細やかな制度をもう作っていらっしゃって,地方行政の中で実行されているというところで感銘を受けたのですが,泉市長が出された資料の中に,法制審議会へのお願いというものがありまして,1番目に子どもの権利の明確化というところで3点挙げられていました。子どもの権利としての養育費の請求権と面会交流を求める権利というのを明記してほしいということ,また離婚に際しての子どもの意見表明権の保障をしてほしいという3点でした。この辺り,私は法制度の専門家ではないので,今回の改正の中でどう生かされるのか詳しくは分からないのですけれども,是非これらが実現される方向性で,子どもの権利として位置付けていただけるような法制度の議論を本部会でしていくことが必要だと思っております。
  今後の進め方ですが,親権,監護権,それから未成年養子の問題,財産分与権は全て離婚後の子どもにとって非常に重要なことですので,一通り議論を先に進めていただいて,適宜必要なものはまたヒアリングをしていくという方法に賛成です。
  それから,海外の制度については非常に奥が深いことだということも分かりましたが,やはり一覧表にしていただいたガイドがあると,私たち領域外の者もおりますので,有り難いと思います。その際に,公的な支援の制度を持っている国については,そのことも一緒に一覧表に入れていただけると大変有り難いと思いました。
  以上です,よろしくお願いいたします。
○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングについての感想のほか,進め方として,一通りまず全体を見渡すことが必要で,子どもの権利という観点から,そうすることが望ましいのではないかという御意見,それから,外国法については,一覧性の高い資料というのが欲しいという御要望を頂きました。
  そのほか,御発言いかがでございましょうか。はじめに,ヒアリングについての感想をと申し上げましたので,最初の方で発言された委員,幹事の中には,進め方ということであれば,また別途意見があるという方もいらっしゃると思いますので,そういう方々の御意見も含めて御意見を頂ければと思いますが,さらに御発言はございますでしょうか。

○武田委員 進め方ということで,ちゃぶ台をひっくり返すわけではないんですが,私は元々,やはり離婚後の子の養育の在り方,ここは議論が錯綜するとか空中戦になるとかという御指摘はそのとおりだと思うんですけれども,本来はそこから方法論として入り,面会交流,養育費ということには個別論として入っていく,そういうアプローチの方が元々はよいのではないかと思っておりました。ただ,今日の先生方のお話をいろいろ聞きまして,養育費と面会交流から分けて検討するという流れについては,それはそれでアプローチとしてよろしいかと思いますので,賛同いたします。
  これも委員の先生方皆さんおっしゃっていただきましたが,面会交流,養育費ともにどちらも重要ということの共通認識の上で,進め方をどう進めていくのかというお話になろうかと思いますので,大筋後半の先生方がおっしゃっていただいた進め方に賛同をいたしたいと思います。
  ただ,やはり私どもは当事者団体でございますので,この養育費と面会交流の関係ということに1点だけ,意見を述べさせていただきたいと思います。
  養育費の重要性,全く異論ございません。子のための養育を考えた場合,養育費という経済面,非常に重要です,ただ,それのみで本当によいのかというところが,非常に私どもが昔から懸念を持っているところでございます。面会交流ができなければ養育費を支払う必要はないと,こういう条件付けは,当然間違いだと思っています。しかしながら,一方,養育費について合意がある,合意どおりに遅滞なく養育費を払っている,しかしながら,一方,面会交流に関しては,裁判所の調停に話合いを委ねて,約1年は合意に至らない,合意に至るまで1年掛かる。合意した場合も,月1回2時間程度という,現状の相場かと思っています。昨今,1年以上,このコロナの影響で親子の交流が断絶してしまっているというケースも非常に多くなっています。法務省さんからの1年前に見解が出ましたけれども,あれで改善する兆しは正直ございません。そういう相談が今,止まらないような状況であること,当然DVはない前提でのお話でございます。こんな中,心がおかしくなったり,それによってリストラされたり職を失う,こういう例も散見されます。
  先生方にお伝えしたいのは,子どもとの交流が多ければ養育費が適切に支払われるという関係,これは,私がこれまで別居親を支援してきた中,実感としてございます。子どもと離れて暮らす親の気持ちとして,是非先生方に御理解いただきたい。すなわち,面会交流を適切に実施するということは,養育費の確保にもつながる。養育費を数年払って終わりとは思っておりません。やはり支払い続けること,これが非常に重要だと思っております。そういった継続的な支払を確保するという観点からも,面会交流の適切な実施を図ることは重要なのではなかろうかと,こんなふうに思っております。
  また,先に面会交流がなされるケース,安全・安心にきちんと面会交流ができたということになりますれば,養育費の請求をちゅうちょしていた監護親の皆さんに,安心して養育費を請求する動機付けにもなろうかと思っています。したがって,子どもたちのためにも,具体的な議論の順序は別ですけれども,関連付けて議論させて終着点に至るのがよいと,このようなことを皆さんにお伝えしたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費と面会交流とを一応分けて議論をするということでも構わないけれども,しかし,その間には関連性があるということについては,留意をして議論を続けたいという御発言として受け止めさせていただきました。
  ほかにも御発言があろうかと思いますけれども,今,具体的な議論の順番の話も出ております。部会の最初で説明がありましたが,事務当局の方で議論の進め方のたたき台として,ごく大まかな一案を作っていただいておりますので,具体的なイメージを持ってこの後のことを考えるために,これについて説明していただいて,更に御意見を頂いたらいかがかと思います。事務当局から御説明を頂けますか。

○藤田幹事 それでは,家族法制部会の進め方に関し,お手元の事務局たたき台一案について,簡単に御説明いたします。
  これは,この部会の全体の進行について大枠のイメージをお持ちいただくとともに,これから具体的にどういった形で検討を進めていただくかの御議論の参考に,これまでの部会で皆様からいただいた御指摘等を踏まえ,事務局で飽くまで一案としてたたき台をお示しするものです。これも参考にしつつ,自由に御議論を頂ければと思っております。
  この部会は本日が第4回会議となり,これまでに養育費の検討,面会交流の検討に着手して,事務局から部会資料3を出させていただいております。
  今後の進め方として,第5回以降ですが,積み残しの課題のほか,これまでの議論では,海外法制の情報,それから発達心理学といった関連の専門分野について,今回の検討に関連してヒアリングを実施してはどうかという御意見が出たことを踏まえ,まず,専門家ヒアリング等を位置付けております。ただ,本日に御議論があったとおり,どういう位置付け,目的の下で海外法制等のヒアリングを実施するのかについては,もう少し詰める必要があるかと拝聴したところです。
  第6回以降の議論ですが,法制審の全体的進行として,一通り議論してそのまま終わるというような扱いではありません。基本法制の在り方という重要な課題を御議論して頂くということになりますと,まずは一通り,一巡目の検討をして,さらにそれを反映してブラッシュアップした形で二巡目の検討に入っていくことになります。さらに,検討のプロセスとして,中間的な方向性を示す中間試案の作成とそれに関するパブリック・コメントの実施,さらには最終的な法案化を見据えた要綱案の取りまとめということで,段階を追って議論をしていただくことが通例となります。そういう意味では,一巡目の検討というのは,事務局から第1回会議に検討事項の例を示したように,既にこれまでに指摘のある論点や課題について一通り幅広く御議論をしていただくということが考えられます。その観点から,年内に予定されている第6回から第10回までの会に順に検討を進めるという形を,一つの進め方の案としてお示ししているところです。
  具体的には,第6回から順に,離婚後の子の養育に関する問題,子の意思・意見の考慮に関する問題,離婚制度以外の関連する問題の検討,未成年養子制度の検討,財産分与制度の検討と,五つの課題を掲げております。これは,今回の諮問の中核である離婚という事象に着目して,離婚時,離婚後,さらにそれを通じて関わる子どもの意思等に関する課題を初めに挙げた上で,周辺的な,例えば別居の問題といった御指摘もこれまであったかと思いますが,そういったものが,離婚制度以外の関連する問題ということになろうと思います。さらに,父母の再婚に伴う未成年養子の問題,さらには,広い意味で子の成長に資する夫婦間の財産分与を挙げています。こういった課題をどういった形でどのように議論するかということにつき,この場で御議論いただければと思っております。
  事務局からの説明は,以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。今,説明があったとおりですけれども,皆さんから御意見を頂く前提として,私の方で不正確なところがあるかもしれませんが,多少補足させていただきたいと思います。
  委員,幹事から既に御発言があったところですけれども,本部会では最終的には,法改正に向けての要綱案を取りまとめることになります。要綱案は,諮問に応じた民事法の改正の原案の形を取ったもので,条文に非常に近い形のものを答申することを目指すことになります。これには補足説明が,事務当局によって付けられるのが通例です。その中では,なぜこのような立法が提案されるのか,このような立法をする前提として,現行法にどのような問題があるのか,改正をすることになると,どういう問題が生じそれについてはどう考えるのかといったことについて解説がなされることになります。このように最終的には,民事法制に関する立法案を提案するということになりますが,それ以外のことにつきましては,補足説明の中で,立法案を提案する際に考慮された事情として書き込まれる,こうしたイメージで捉えていただけるとよろしいかと思います。
  最終的な要綱案の取りまとめに至るまでに,先ほどお示しいただいたように,何度か全体を見直すことになります。第一読会,第二読会,第三読会などと呼ぶこともございますけれども,まず中間試案の取りまとめに向けて議論を行う。その後は,この中間試案をパブリックコメントに付して,パブリックコメントで出てきた意見も考慮しつつ,順次問題を絞り込んでいって,最終的な案を取りまとめる。こういうプロセスで議論を進めるというのが通例かと思います。
  そこで,一巡目の議論にあたっては,何を問題にして,どのようなことについて提案をしていくのかということを,おおよそ定めていくということが,大きな課題になるかと思います。事務当局からは,現在議論を始めたところである養育費,面会交流の問題に関し,次回も部会資料3について更に検討した上で,夏休み明けからはその他の問題について一通り順番に見ていくという案が示されているということかと思います。
  これは,最初に藤田幹事から話がありましたように,たたき台としての一つの案ということですので,自由に御議論を頂ければと思います。
  大きな方向性については,先ほどから幾つかの案が出ていて,ある一定の方向のようなものは,大まかには示されているように思いますけれども,皆さんからは,それを踏まえたとして,様々な御意見が更にあろうかと思いますので,御意見を頂ければと思います。
  どなたからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。
  それでは,大石委員,原田委員の順でお願いいたします。

○大石委員 千葉大の大石です。
  最初に,菅原委員から御報告をいただきたいという話をしましたが,最終的な答申に向けて,法律,法体系を整えていくということと,ソフト面といいますか,それを可能にするような体制とか支援作りというのは,車の両輪のようなものであり,両方とも共に進めていかなければいけないと思います。
  その中で,子どもの意見ですとか子どもを中心に据えた新しい制度を実現するに当たっては,子ども自身の意見をどのように聴取する体制を整えるのかとか,どのように聞くことが可能なのかとか,そういったことについての知見をやはり必要としていると思いますし,そういった人材育成も必要ということは,明石市長からのお話でも伺ったところです。私が菅原委員にお話を伺いたいとお願いしましたのは,特にそれが念頭に,まずどのような専門性を持って,子どもの気持ちを聞いたりとか,意見が表明できるような環境を整えるのかとか,それが実現しない場合には,子どもの発達にどのような影響が及ぶのかといったことについて,早いうちに知見をお伺いしたいという希望がありましたものですので,最初にあのようにお話をしたという次第です。ちょっと付け加えさせていただきたいと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。御希望は承りました。
  今の御発言を頂いて,先ほどから挙がっている幾つかの項目のうち,海外法制のヒアリングと子どもの心理面についてのヒアリングについては次回にということになっていますので,この部分についてまずお諮りしたいと思います。原田委員の御発言がもしそこに関わるのであれば,御発言を頂いた上で考えたいと思いますが,それ以外のことに関わるのであれば,私がもう少し話してよろしいですか。
  分かりました,ありがとうございます。
  それでは,進行について,決められそうなところから御提案していきたいと思います。
  まず,大石委員から,菅原委員にお話を頂きたいというお話がありました。この部会のメンバーであられるので,お話をしていただけると言っていただければ,次回のセッティングはこの場で済みますので,もしお話しいただけるということであれば,次回にお話を頂いたらいかがかと思っております。菅原委員,もしお願いをしたら,お引き受けいただくことは可能でしょうか。
○菅原委員 微力ながら,皆さんの御希望があれば。
○大村部会長 ありがとうございます。お引受けを頂けるということですので,もし御異論がなければ,そのようにしてはいかがかと思います。


 赤石委員,どうぞ。
○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。
  菅原委員が家族法研究会で御発言くださっていたレジュメ等を拝見させていただきました。すごくいろいろな研究データに基づいての御発言だったかと思います。
  私がやはり知りたいのは,親が葛藤状態にあるときに,子どもが面会ですとかしたときに,果たしてそれが利益になる,利益にならないというところの状況の調査があるのかどうか,ないのであれば,ないで結構なんですけれども,そこが何かちょっとオブラートのようになっていたので,是非その点をきちんと知りたいなと思っておりまして。元々コミュニケーションできて仲がよければ,いい結果が得られるのは当たり前,ごめんなさい,そんな素人の言い方をしてあれなんですけれども,そうではない場合にどうしたらいいんだろうというところを,私たちが苦慮しているんだと思いますので,そこが,ある程度手探りでも分かるといいなと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。今のような御要望が出ておりますので,それも踏まえてお話を頂くということでお願いしてよろしいでしょうか。赤石委員,そのような形でお願いするということでよろしいですか。
 菅原委員で御準備を頂けるということであれば,それでお願いしたいのですが。
○菅原委員 はい,かしこまりました。
○大村部会長 では,そのようにさせていただきます。
○佐野幹事 もし菅原先生に,こういったところも聞きたいということが事前にあれば,事務局の方にお送りさせていただく,もちろん答えていただけるかどうか分かりませんけれども,そのような形でよろしいですか。
○大村部会長 菅原委員には,もしかすると皆さんから更に御希望が出るかもしれませんが,可能な範囲で御勘案を頂くという形でよろしいでしょうか。
○菅原委員 はい,可能な範囲で対応したいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。
  次に,外国法ですけれども,これについて本格的なヒアリングをするということになると,これは大変なことになるということで,少し慎重に考えた方がよいのではないかという意見が,かなりたくさん出たと認識しております。
  他方で,今までのヒアリングと同様,この先法改正を考えていく上で,外国法について一定のことを知っておきたいとお考えになられる委員,幹事の方も少なくないと思います。
  民法専門の方々は,それぞれ諸外国の制度について御存じのことが多いと思いますけれども,部会のメンバー全員がそれを共有しているわけではございませんので,一度,御了解が得れるようであれば,次回のうちの一定の時間を割いて,ニュートラルな形で制度がどうなっているのかについて御報告していただき,それとの関係で,皆さんの御関心に応じて質問をしていただいて可能な範囲でお答えをいただくことをする。あとは,特定の点について何か必要が生じた場合に,どなたかに来ていただいてその点に関する知識を補う。こうした形で外国法調査をしたらいかがかと思います。
  既にある調査について,一覧表を作っていただくということも,できれば事務当局にお願いしたいと思います。一覧表は便利ですけれども,しかし,読み取るのはそう簡単でもないところがありますので,それだけで外国法についての一定の理解が持てるかというと,それも難しいところです。
  そういう限界がいろいろあることを前提にして,外国法について少し聞いてみたらどうかと思いますが,窪田委員から手が挙がっていますので,御意見を伺いたいと思います。

○窪田委員 外国法の部分について,追加でお願いということになるのかもしれませんが,一覧表を作るのは大変だろうと思いますし,論点ごとに作るとしても,かなり整理が大変なのだろうと思いますが,それ以外に一つお願いしたいのは,先ほども少し出ておりましたが,面会交流についてなのか養育費の問題についてなのか,問題ごとによって違いはあるとは思うのですけれども,外国法についての資料というのは,既に文献資料としてある程度あるかと思います。
  先ほど出ていた話の中では,場合によっては,参考文献として挙げてということではあったのですが,そうした資料を参考文献として挙げられても,実際にアクセスするというのは,全員にとってそれほど簡単であるわけでもないと思いますので,法的な問題が生じない形で,うまくそれを委員に配布していただくようなことができないかなという,これはもう単純な希望ということでございます。
○戒能委員 今の外国法制なんですけれども,一覧表も必要だと,大事だと思うんですが,もう一つ私が希望しているのは,特に面会交流に関しての新しい動きです。見直しということになって,英国司法省から報告書が2020年6月に出ております。それは,日本でいう家裁の実務の検証をしているわけですね。今までは親子関係の継続性というのが子の福祉を促進するんだという推定規定が児童法にあったんですが,それが,実際の運用でどうなのかということを検証しています。そのきっかけとなったのが,2004年と2016年に出ているんですが,いろいろな事件が起きており,事件の報告書が,ウィメンズエイドという,日本でいう女性支援の団体の連合があるんですが,そこがまとめて,それに裁判官が反応をして,実際どうなっているんだろうか,どこが問題なんだろうかということをかなり,検証しているという報告書が出ています。そうすると,これは,今の日本にとても参考になるのではないかと考えます。
  ですから,報告書を全部自分で読みなさいというのは結構大変なものですから,専門家がもしいらっしゃるならば御紹介を頂く。それを基に議論をするということも,大変有益なんではないだろうかと考えるのですね。ですから,単にこういう法制度がありますということではない,そういう動きも紹介して,共有をするということも必要なのではないかと考えております。
○大村部会長 ありがとうございます。


○赤石委員 私,先ほど,日本の家裁実務について,やはり振り返りが必要ですということを申し上げて,多分,皆さんも結構御賛同いただけるのではないかと思います。だから,それを議論の中に持ち込むときに,さらに,今,戒能先生おっしゃってくださったように,英国あるいはオーストラリアですね,2006年に法改正をして,かなり両親が均等に子どもの時間を持つみたいな法改正をした後に,2011年,2019年と二度の法改正をしている。これはなぜ起こったのか,やはりいろいろな弊害が起きてきたからだということを聞いております。
  こういう動きを踏まえて,日本は一体今,どこに向かっていったらいいのかということが見えてくるだろうと思いますので,日本の振り返りと,それから海外でのこういった新しい動きについてのヒアリングというのが,多分両方があいまって,私どもが子どもを本当に大切に育てられる,そういう社会にするために,参考になるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。幾つかの御発言を頂いたかと思います。
  私が申し上げたのは,ともかく最小限の事柄であっても,まず次回に情報を共有しましょうということでした。その上で,戒能委員からは,イギリスの報告書を紹介してほしいという御要望があり,赤石委員からは,最近の動向に焦点を当てた形での外国法を知りたい,あるいは日本の状況も併せて知りたいという御発言があったかと思います。
  最近動きがあったようなところについては,ヒアリングの中に入れていただき,こういう動きがあったということをご紹介いただいて,それについて皆さんから質問をしていただき,その背景についての御発言を聞くことで,差し当たり対応できるかと思います。他方,外国の報告書の内容や,家裁の実務状況ということについては,次回直ちにということにはならないのかもしれませんが,それは,可能な時期に対応を検討していただくといった方向で,事務当局の方で考えてもらえますか。
○藤田幹事 いろいろと貴重な御示唆をいただいたかと思っていますので,今,部会長におまとめいただいたような形で,事務局としてできる範囲で,次回に向けての準備は可能かと思います。
○大村部会長 実務については,裁判所の方とも相談,調整が必要と思いますので,多少時間が掛かるかもしれませんし,報告書もそう簡単には対応できないということがあると思いますので,少し時間を頂ければと思います。
  そういう留保した上で,次回,一定の時間を使って外国法について話を聞くということについては,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
  どの国を対象に具体的にやるかということにつきましては,先ほどから具体的な国の名前も挙がっています。多少の時間がありますので,御希望があれば事務当局まで早急に寄せていただき,次回の使える時間との関係で絞り込みが必要ではありますが,それについてはお任せいただくということで調整させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  また,次回の会議に来ていただくという形ではなく,資料を出していただく方法も含めて,検討させていただければと思います。
 外国法については以上のような扱いにさせていただきます。
  そのほか,家裁実務やその他の資料についても,さらにこういうものが必要ではないのかという御要望も出てくるかと思います。それは,随時皆さんの御意見を伺って,可能な範囲で組み込んでいくことにしてはいかがかと思いますが,これは,全体の進行にも関わってまいります。
  全体の進行については,取りあえず,外国法のヒアリングと残っている養育費と面会交流の議論は次回に行うとして,夏休み以降にこの部会で扱う課題を順に見ていこうというのが,事務当局の今後の進行案になっています。その過程で,繰り返しになりますが,必要であればヒアリングや調査等を行っていくということで進めることについて御意見を伺いたいと思います。
 先ほどから原田委員に待っていただいたので,まず原田委員から御意見を頂きたいと思います。

○原田委員 手を挙げたのは,海外調査の件で,一覧表のことなんですけれども,すみません,事務局に御負担を掛けるとは思いますが,先ほど公的支援についても入れてほしいという御意見があったと思いますが,それを支えている,例えば,裁判所の物的な規模とか事件数とか,そういうものも入れていただけると有り難いなと。難しい注文かもしれませんが,一言付け加えさせていただいて。
 今後の進行の問題ですけれども,6回から10回の間に5項目入っていますが,DVをどう切り分けるかというところについて,検討会では安全・安心な面会交流ということが言われていましたけれども,では,どうやって安全・安心な面会交流を確保するのかというところの議論がちょっと少なかったのかなと思っています。
  この中で,例えば,子の意思・意見の考慮に関する問題というのは,全てのところに関わってくる問題だと思うんですけれども,DVをどう切り分けるかというところも,やはり全てのところに関わってくる問題だと思いますので,それを1項目入れていただきたいなと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。DVについて全体的にどうするかということは,先ほども話題になりましたが,内閣府の方で対応いただくことも必要になるかと思いますけれども,この部会で扱う民事法の問題についても,DVが問題になったときに,それをどのように考えるのかということについては,どこかでまとまった形で議論をしたいというのが,今の原田委員の御希望であると捉えてよろしいでしょうか。
  これは,今回のたたき台の中でいうと,どういう位置付けになりますか。
○藤田幹事 事務局です。
  原田委員から御指摘があったDVの問題というのは,我々としても当然念頭にございます。このお示しした進め方の一案では,独立の課題というより,各検討課題のいずれでもそれぞれ問題になると考えており,その前提で位置付けております。具体的には,これから御議論いただく養育費と面会交流の場面でも問題になってまいりますし,その後の離婚後の子の養育から財産分与まで,全ての検討課題のところで,それぞれDVの取扱いや対応が問題になってくるかと思っております。そこで,このたたき台では,各課題,論点のところでそれぞれDVの問題を関連付け必要に応じ取り上げようと,そういう認識で整理していたところです。
○大村部会長 今のような御説明ですけれども,いかがでしょうか。

○赤石委員 DVの問題は,全てに関わるというのはそのとおりでございます。かつ,内閣府がこの間の報告書の中でも,面会交流については慎重にすべきだという,新しい報告書をまとめていたと思います。では,あれが,一つ一つの案件にどう考慮されるのかということはかなり難しい,そして,本当に失礼ながら申し上げますけれども,私は,毎年2,000件ぐらいの御相談を受けています。しかし,そこまでそうした深刻なものに接していない方たちが委員になっていらっしゃるのは,事実だと思うんですね。この切迫感がある中では,きちんと事実を聞いていかないといけないので,やはりもう少し,面会交流をして危険にさらされた方たちの声とかは聞いていかないと,議論の参考にならないというのが私の思いですし,お子さんたちが嫌がっていたにもかかわらずお父さんと会うことを,会えば平和なコミュニケーションができるはずというのは大人の論理でして,嫌だと思っている子は,泣き叫んで嫌だと言っているにもかかわらず,決まったがために,母親さえ裏切らなければいけないということになってしまうときだってあるわけですよね。こういう事態を防ぐ手立てがあるのかどうかということを,やはり。
  私どもも,そういう方をここにお招きしたいと本当に思って探しましたけれども,そういうお子さんたちはメンタルヘルスも病んでいて,ここに来ることすらかなわない方たちがいるということなんですよ。それをどうやってこの議論に反映させるのかということは本当に,基本的に大事な視点ですけれども,見逃されてしまうと思っておりますので,是非適宜,私どもも慎重に,かつ,何とかここに来てもメンタルヘルスがやられないような方を選んで,やはりお聞きしていただきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員と赤石委員から同じ方向の御要望を頂きました。
  そして,スケジュールについてですが,まず,本日は,部会資料3の養育費,それから面会交流の検討を残りの時間でやろうと思っておりましたが,だんだんと時間がなくなっております。次回にはヒアリングを行うということですので,養育費と面会交流について議論をする時間は限られてくるだろうと思います。しかし,この課題は,皆さんが最重要課題の一つとして挙げられていることで,一読の段階で,時間を掛けて意見交換をすることが必要かと思います。
  たたき台では,今後の日程が一応組まれていますけれども,このスケジュールに収まるかどうかは,なかなか読めないところもあります。私自身はなかなかタイトなスケジュールではないかという感触を持っております。事務当局からこの案を示していただいているわけですが,これで収まらないこともあり得ると思っておりまして,令和3年中に1巡目の検討を終えるという点に関しては,多少,持ち越しになる部分が残っても仕方がないのではないかと思っております。それが一つと,DVはどの問題にも関わるということで,それぞれの問題において,事務当局の方では注意をして問題提起をしていくということをおっしゃっていただきましたけれども,そういう議論の後で,やはりまとめて議論する必要があるという御意見が出ることもあろうかと思います。その中で,赤石委員がおっしゃったように,どなたかに来ていただくということが必要かつ可能であるという条件が整えば,そういうことも併せて,更に追加的なセッションを加えるということもありうるかと思っています。そうすると,一巡目の検討が年内に終えるということが,必須のスケジュールなのかということについて,事務当局に御感触を伺っておく必要があろうかと思います。

○藤田幹事 事務局でございます。
  今日お示ししたものも一つのたたき台の案でございまして,スケジュールについて,部会長から御心配いただきましたが,特にいつまでに,どこまでを,ということはございません。ただ,改めて整理しますと,議論する項目,論点がかなり多いなということは確かでございますので,御議論を進めていただくことは必要かと思います。先ほど委員から御指摘あったようなDVの問題は,特に留意をして資料を作成することに努めたいと思っています。ですので,このとおりお進めいただければと思います。
○大村部会長 このとおりというのは,今,私が申し上げたような,一巡目の検討が多少長びくこともやむを得ないという趣旨だと理解してよいですか。
○藤田幹事 スケジュールも含めて,もちろん先のことを考えつつというところはありますけれども,その点はその趣旨で構いません。

○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  DVの問題が非常に重要で多岐にわたるということと,それからDV,ハラスメント,暴力,虐待,こういうことについて,海外と比べても日本の法制とか対策が非常に弱いというのも,私も全く同感です。
  ただ,問題は,やはり家族の法制度を変えるとか,改めていくというときに,DVとか暴力の問題だけではなくて,子どもの権利とか子どもの意思とかということも含めて,私は全体に関わってくる大切な問題だと思っています。そこで,これらの問題は,具体的にどのような場面で全体にどういうふうに関わって,どの程度,どんなふうに配慮しなければいけないかということについて,養育費,面会交流などの取り決め,実施等で議論になってこようと思います。そこで,やはり早く具体的な事項や問題の検討に移って,各箇所や場面でそれぞれのところで,この場面でこういう対策が必要だとか,支援が必要だというのも出てくると思いますので,私は,DVとか子どもの意思だとかということだけに特化して最初に何かを設けるというよりは,議論をして,制度の問題点,課題,運用,そういうことを議論する中で,子どもの意思が全然反映されていないとか,子どもにきちんと説明がなされないとか,それから,怖くて関わりたくないとか,DVが深刻に作用する,リスクがあるとか,そういう問題の取り上げ方もあるのではないかと思います。もちろんモラハラでも出てくると思います。
  それをまずは議論した上で,そこで出てきた問題をどういうふうに,制度一般の中でどう取り上げるか,それから,先ほど赤石さんからも出ていた問題というのは,正に個別ケースでどう対応するかということは,実務上もどんな法制度を作っても出てくるので,その辺りを法制度一般の中でどういうふうに配慮していくかという,制度設計をするときにどうするかという問題と,それから個別ケースというのは非常に多様なものがあって,それに対して柔軟に対応しないといけないというは,少し区別して考えてもよいのではないか。個別案件では緊急性は非常に高いという問題があるので,法制度一般の設計の見直し,リスクのある個別事案への対応については,その辺りを少し切り分けて,対応した方がいいだろうと思います。
  個別ケースではかなり深刻な問題が出てくるということなので,出てきたときにどう対応するか,法制度一般の制度設計でどうするか,個別の緊急性を要するもので対応がまずかったり,いろいろな問題があるということは,制度設計の中にも出てくると思うので,そういうことをやりながら,個別にその問題について特化して,審議を集中してやるべきだということになったら,ヒアリングも海外の法制も必要に応じてやる,いろいろな知見を調べるなり,是非,必要に応じて柔軟に臨機応変にやっていくということでいいのかなと思っています。
  議論の後ろがそれほど切られていないということも,ある程度,分かりましたので,一通り議論をしながら具体的な問題,どの場面でどういうリスクがあって,どういう制度になるとどういう問題点があるのかという中で,DVとか子どもの意向をどうやって酌んでいくかということで議論してみる。そして,これらは非常に重要だと思いますので,取りあえず具体的な議論を進めてみた上で,特化して取り上げる必要があれば,子どもの権利というものをどういうふうな制度設計の中で取り入れていくとか,DVの問題に対して民事法制の中でもどうやるべきかということを議論した方がいいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。各論の中で議論することでまず対応して,その上で,必要があれば追加のセッション等を設けるということでしょうか。
○棚村委員 いずれにせよ,必要な論点,重要論点だと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。

○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。
  私と棚村先生は何年来のお付合いで大変仲がよいということを言った上で,前回と今回はちょっと意見が違うということをお伝えしたいと思います。
  やはり海外の法制度は,いろいろな事件が起こって見直しが始まりました。オーストラリアでは,4歳のお子さんが面会交流中に橋の上から投げられ殺されてしまったという事件がございました。英国もいろいろな深刻な事件があったわけです。日本はそれを学んでいかなければいけないというときに,この議論の中で1回はきちんと,2011年から面会交流推進になったときに,どのようなことが起こり,お子さんがどういう思いをしたかということを聞いてくださいと申し上げていることが,やはり予防としてすごく大事であり,そこから照射される各方面のいろいろな取決めがどう見えてくるのかということを,想像力を持って聞いていただきたいということでございます。何か議論を止めたいというようなことではございませんので,是非御理解いただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員も,おっしゃるような議論はすべきではないという御趣旨ではないと思います。
 まず,各論の中で,それぞれの場面でしっかりと議論をした上で,それを通して検討をすべき問題がさらに出てくるかもしれないといった御指摘も,先ほど棚村委員からはございましたけれども,そうした点については,どこかでまとまった検討をすることはあるべしということで進めるというのを,本日の一応の案にしたいと思いますが,この点について更に御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。


○武田委員 質問です。
  今日の議論の中で,親同士,高葛藤のときどうしようと,いろいろ大変だよねと,それはそのとおりだと思います。その葛藤を下げる支援というアプローチもあれば,他方,法制度でどんなふうに担保していくんだという話もあろうかと思っていまして,その辺りの議論はどこに入りますか。
○藤田幹事 事務局でございます。
  武田委員から御指摘あった点は,これからの議論や部会資料の各所で出てくるものではないかと見ております。例えば,部会資料3の中でも,今おっしゃったような葛藤の高い場合に,親である父母に事前にどういった情報を提供するか,又は,取決めであれば,その段階でどういう問題があるか,そういうところをステージごとに課題であるとか,必要な制度の在り方と,それに関連する支援等の問題は取り上げていただければと思っております。
○武田委員 ありがとうございます。
○大村部会長 ほかに御発言いかがでしょうか。
  では,進め方につきましては,今のようなことで進めさせていただくということにさせていただくことにしたいと思います。二巡目の進め方などもございますが,この夏以降の議論の中で,進め方についても随時皆様の御意見を頂いて,更に考えていくことにして,まずは今ここでお諮りしたような形で議論をするということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  その上で,今日,残った時間で,部会資料3について,更に御議論を頂きたいと思っておりますが,ここで10分ほど休憩したいと思います。

          (休     憩)

○大村部会長 再開します。
  今後の進め方について大まかな合意を頂きましたので,具体的な問題に入らせていただきます。
  養育費と,それから面会交流とをあわせた形で資料はできておりますけれども,先ほどからの皆さんの御意見をまとめますと,養育費と面会交流とを一応別々に議論をして,その上で両者の関係について必要な議論をするという御趣旨の御意見が多かったかと思います。
  この二つを別々に議論しつつ大きくばらけてしまわないように,本来ならば1日のセッションの中で,前半で養育費,後半で面会交流といった分け方で議論すればいいと思うのですが,今日はもう1時間しかありませんので,養育費の一部を議論させていただければと思います。ただ,面会交流の議論がずっと後にならないように,次回は面会交流に一定の時間を割き,養育費の残る部分についても時間を割くということにして,それで終わらなければ,さらに持ち越すことあるべしという形で,それぞれ別々に議論をし,そして,二つの問題が大きく離れないという形で進めるということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  では,残りの時間で御意見を頂きたいと思います。部会資料3の中身は,前回御説明を頂きました。第1ははしがきなので,第2から御意見を頂いて,前回は,第2についてある程度御意見を頂いたところで時間切れになっていたかと思います。
  本日は,資料3の第2についての御意見も頂きますが,第3の養育費の取決めの促進・確保,第4の養育費に関する取決め内容に関する規律という点について御議論を頂くことにします。第5は裁判手続になりますが,そこまでは今日は無理かと思いますので,次回送りにさせていただくということでよろしいでしょうか。
  それでは,資料3の第3,第4の部分を中心に,第2についても御意見を伺うということで御発言を頂ければと思いますので,お願いいたします。

○池田委員 弁護士の池田でございます。
  第2からということで,まず,養育費の件について,5ページの①について,意見を申し上げたいと思います。
  ここでは,養育費について,子を権利者とする子の扶養請求権を中心に据えるということが書かれていまして,これに基本的に賛成です。ただ,一つ検討しなければならないことは,手続法の話で,子どもが権利者と明確にされたとしても,現状,行為能力がない,つまり財産処分権がないということで,子どもが自分で家事調停,審判の申立てをするということはできない仕組みになっていますけれども,かといって,特別の代理人を付けるという手続も特段用意されていませんので,そこの代理人を選任できるということも併せて検討しなければいけないかなと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど杉山幹事から御指摘があったような,手続法上の問題とも関わる問題について,御指摘を頂いたと受け止めました。
  ほかに,今の点と関連してでも結構ですし,そのほかの点でも構いませんので,御発言を頂ければと思います。

○石綿幹事 石綿でございます。
  広い意味では第4に関係する話かと思いますが,休憩前の議論で,養育費については一度決めたら変更もなく払い続ける,それで問題が生じないという御指摘があったかと思うのですが,養育費に関しても,様々な事情で変更を検討する必要性が生じる場面というのはあるのではないかと思います。一つ目は義務者,あるいは権利者の収入の変化が生じた場合,二つ目は子どもに進学等,新たな費用が掛かるような事情や希望が生じたような場合,さらには,8ページの(注1)のような事情,すなわち子どもを監護している親が再婚し,その配偶者と養子縁組をした,あるいは義務者の方が再婚したような場合などに,取決めの変更の必要性があるか,ないかということも,議論をした方がよいのかと思います。これを,第4に絡めて検討するのか,あるいは事情の変更というのは別途取り扱うのかはお任せしますが,その点も検討した方がよいのではないかということです。
○大村部会長 ありがとうございました。先ほど面会交流について,事情が変わったときの手続に関するお話がありましたけれども,養育費もついても事情が変わることがあるので,同様に問題として意識して検討する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
  ほかにはいかがでございましょうか。

○原田委員 検討の必要性という意味では,婚姻費用の請求というときに,その中身として,子どもの扶養請求と片方の配偶者の扶養請求の関係をどうするのかということも,検討の必要が出てくるんだろうと思いました。ちょっと回答は分かりませんが。
○大村部会長 ありがとうございます。婚姻費用との関係というのも,問題としてあるだろうという御指摘で,確かに問題はあるのではないかと思われます。
  水野委員,どうぞ。

○水野委員 7ページの父母間での取決めの促進・確保という表題についての質問です。御存じのように日本の場合は,養育費にしろ財産分与にしろ,全部,私人間の取決め,当事者の夫婦の取決めに任されてしまっている構造になっていますから,ともかく別れたいと望む側が経済的な権利をすべて放棄して離婚合意を得ようとすることも少なくありませんが,これはとても変わった法制で,離婚裁判で裁判官がチェックして妥当な金額が自動的に決まって命じられる国の方が圧倒的に多いわけです。
  そこで,日本法の場合も,あえて夫婦に相談させる取決めの促進・確保というのが大前提になる必要はないのではないかと,私は思っております。養育費については,ある程度機械的に命じられる,それは必ずしも多額でなくてもいいと思うのですが,最低でも自動的にこれだけの額が命じられる,あるいは収入などによって機械的に決められるのであれば,それは自動的に発生するということにし,その内容がいろいろな事情できついということならば,改めて修正の相談をするというような制度設計もあり得ると思うのです。大前提として,必ず取決めの促進という枠組みは,今度も崩されないということで考えるのか,それとも,そういう自動的にある程度一律のものが命じられるという制度設計まで考えてもよいのかという点をお伺いしたいのですが。
○藤田幹事 事務局でございます。
  部会資料3の7ページの第3の見出しで「取決め」という用語を使っておりますが,用語の使い方としては,父母間の協議・合意によるものも取決めですけれども,それ以外の審判等の合意に基づかないものも含め,具体的内容として定められるものを「取決め」と呼称する整理をしています。
  その上で,今,水野委員から御指摘があった点については,部会資料3の11ページを御覧いただいて,③です。ここに今御指摘があったとおり,養育について,これまでは,基本的な合意なり裁判所の判断によって初めて具体的請求権が発生すると整理していた規律を見直し,今回の一つの提案として,一定の場合には自動的,暫定的に具体化する,要するに合意なり裁判手続によらずに養育費請求権が発生するという規律を設けてはどうかということを挙げており,御指摘の点は十分にあり得るものと考えております。
○水野委員 ありがとうございました。


○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  まず,5ページのところで,基本的に未成熟子に対する扶養について,どういうような規定上の位置付けとするか,養育費請求権という言葉も出てきていますし,原田委員も先ほどおっしゃっていました,婚姻費用の分担ということで別居中に請求をするということも出てきます。それから,監護費用の分担ということで,養育費は766条にも出てきますし,扶養請求権ということになると877条と。この三つの請求権を立法の際に一本化して規定をするのか,それとも,各箇所にサテライトみたいな形で分散して置くという位置付けにするのかということも,議論しなければならないと思っています。
  それから,ここに書いてある,未成熟子という,誰が誰に対していつまでということについても,何らかのルールなり明確化をしないと,未成熟子なのか未成年者なのかということで,随分受け取る人によって混乱も起きますので,その辺りも整理をする必要があります。扶養請求権とか養育費請求権といっても,今言ったように,それぞれ一本化して整理をしていくということなのか,各段階に応じて,場面ごとにサテライトのように複数の場所にそれぞれの段階ごとにあって,それを最終的には統一するような概念とか基準とか,そういうものを構想していくのかでも,大分違うと思います。
  それから,決めるときの考慮要素とか基準とかについても,先ほど事情変更とかいろいろ出てきましたけれども,扶養の必要性とか扶養の可能性とかという資産,収入のことと,それから需要みたいなことでバランスを取って最終的には決めることになると思うのですけれども,その考慮要素や考慮事項みたいなことについても,きちっと明確な規定を置く,例えば,再婚した場合とか,収入が減ったとか,リストラされたとか,いろいろな事情をどんなふうに考慮するかというのも,実務の運用でされているのですが,海外の法制を見ても,裁判官の裁量の範囲を定めたり,当事者にとっての予測可能性も確保する意味でも,ある程度基準なりルールというのを議論して明確にする必要はあるのではないかと思います。
  そういうことを議論していると,水野委員がお話ししたように,取決めだとか話合いが可能なケースと,それから非常に困難なケースというのも出てきますから,やはりスタンダードな算定基準,ガイドライン,今も算定表が,裁判所の紛争の効率的な解決とか,目安として作られています。しかし,海外ですと,関係する中央省庁や,司法だけでなく,統計,福祉,教育に関わるようなところも含めて,最新の統計的な数値を持ち寄って,最低限度生活していく上でこれぐらいのお金が必要だという観点から,数年ごとに改定していたりします。今裁判所の用意した簡易算定表は,飽くまでも権利者と義務者の双方の収入を比較して,そして,できるだけ目安として早く問題の解決をしたいというところに主眼があるものなので,どうしても限界があります。その辺りも,今後の議論ですけれども,どういう基準でもって,どこがどんなふうに決めていくかということについても,裁判所だけでなく,国を挙げて考えなければいけないと思います。つまり,取決めをしたり話合いができないケースに対しても,自動的に算定表・計算ツールなどで決まるなど,どういうふうに対応していくかということも重要だと思います。
  それから,紛争や葛藤が非常に高いケースがあるというのは,よく分かるのですけれども,逆に言うと,早期に親ガイダンスとか,教育的な働きかけや情報提供,啓発プログラムに参加するなども大切だと思います。今,厚労省が音頭を取って,東京都なども力を入れてやろうとしています。また,自治体の離婚前後の親支援講座などについても力を入れ始めていますから,是非,離婚前後の親ガイダンス,親支援講座みたいな形で,一定の知識と情報を与えることが重要だと思います。
  いずれにしても,民法の中で養育費とか扶養請求権とか,いろいろな言い方,婚姻費用分担の中にも一部含まれているのですが,それをある程度整理をして考えていかないといけません。場面ごとにその中身が変わるのも困りますし,要するに,誰が誰に対してどんなものを請求するかというときに,民法の規定や条文が不明確で,あちこちに異なって規定されていますと,齟齬とか不統一が生じたりします。今回は,せっかくの機会ですから,そういう実務の現状を知った上で,子どもの権利を本当に実現するためには,一本化して基準も手続もやっていくのがいいのか,それとも,それぞれのところにある制度や規定の中で,できるだけ齟齬や不整合が生じないように統一をしていくというか,そういうような形で,各箇所にある程度置いておくということにするのか。私自身も今,結論は出ていないのですが,学会でこの問題を取り扱って検討してきたときに,海外でもいろいろな対応の仕方があったが,ただ,少なくとも,扶養請求権のところに,未成熟子の扶養の規定がきちっと置かれていないというのは日本だけなものですから,ある意味では,そういう子どもの権利とか子どもの利益が優先されずに,大人の紛争を解決するということで,どちらかというと子どもの利益が後退している部分は,是非この機会に改正をしてはどうかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。幾つか御指摘いただきましたけれども,5ページの①,②について,出来上がりがどうなるかについては幾つかの考え方があるけれども,この際,この点をきちんと整理することが必要ではないかという御指摘と,それから,高葛藤で協議ができないような場合についての対応が一方で必要である,それは水野委員がおっしゃったことだけれども,他方でそうでないカップルに対する支援も必要ではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。
  手が挙がっていますので,大石委員,窪田委員の順番でお願いします。


○大石委員 千葉大学の大石です。
  12ページの具体的な養育費について,幾つか御提案というか,させていただきたいんです。まず,養育費の算定方式ですけれども,日弁連からも問題点を指摘する意見書が出ておりますし,そういう水準について,もう少し包括的な,できれば細かい家計のデータなどを用いた検証というのが行われた方がよいと,かねがね思っておりました。ただ,こちらの部会でするのがよいのか,更にもう少し何かブレークダウンした別のパートですればよいのかは,また検討する必要があるかとは思います。諸外国の事情についても,海外法制との関連でどのような基準に基づいて養育費の水準が決定されているかといったことをお調べいただくとよいかと思いますし,日本の基準の設定の仕方,子ども1人の成長にどのぐらいの費用が掛かるのかといった視点から考えるということが必要と思っております。
  もう一つ。やや超越的なコメントかもしれませんが,養育費というのはフローですよね,月々とか,一定期間ごとの送金となっていると思いますが,私のような経済畑の考えから言うと,ストックでもらっても同じではないかという発想があります。財産分与と絡んでくるかもしれませんが,将来的に支払が不安定になるのであれば,まとめてもらって,それを年金化していっても同じではないかという発想があります。実務でどのようになさっているのか詳しくはないのですが,そういう考え方はあり得るのだろうかということを,問題提起させていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費の算定表に関連する御指摘を二つ頂きました。
  一つ目は,これを細かくする方向で,計算の仕方はこれでいいのだろうかといったことについて,この際見直してみる必要があるのではないか。それをどこで見直すかという問題はあるけれども,という御指摘だったかと思います。
  他方,先ほど棚村委員も触れられましたけれども,現在のこの表を支える考え方がどのようなものかということを見直すという方向もありますので,この表について,あるいは実務について,どこかで皆さんに御意見を頂くということが必要かと思って伺いました。
  二つ目は,一括払いというのはどうかということでしたが,この点については,それぞれ知見をお持ちの方に伺いたいところですけれども,これは,先ほどの石綿幹事の御発言とも関連するところがあろうかと思います。変動しないならば一括払いもあり得るわけですけれども,変動するということになると,それをどのように組み込むかといった問題も考えなければならないと思って伺ったところです。


○窪田委員 窪田です。
  ちょっと答えが分からない状態で,こういう論点もあるのかなということだけなのですが,養育費に関して,面会交流もそうかもしれませんが,父母間での取決めがやはり重要であって,それを促進する必要があるということは,一般論としては,私自身は十分に理解できますし,この方向で準備していただいているのも理解できます。
  ただ,ちょっとよく分からなくなってきてしまったのが,一方で,特に部会資料3の3ページには,養育費の位置付けが,父母間の問題なのか,扶養請求権の言わば代理行使の問題なのかという建付けというような問題があります。今,養育費と言っているときには,父母間の話だという前提でいるわけですけれども,仮に,基礎にあるのが子の扶養請求権にあって,監護親の方は,それについて掛かった費用を求償しているにすぎないのだと考えた場合に,父母間での養育費の合意って一体何なのだろうかというのが,実は法的には結構深刻な問題として出てくるのかなと思います。
  そんなうるさいこと言わなくてもという意見もあるのかもしれませんが,恐らく,例えば,養育費に関しては要らないという取決めをしたとしても,それは,子どもの扶養請求権を否定することにはならないと思いますし,今ちょっと答えがない状態なのですが,少し整理する必要があるのかなと思いました。
  私は,大石先生の先ほどの年金化というのは,すごく面白いなと思って伺ったのですが,これも恐らく財産分与を手掛かりにすると,夫婦間の問題としてはうまく説明できるのですが,子どもとの関係だとすると,実はその説明が難しくなるのかなという気もしますので,いろいろ派生する問題なのかなということで,思い付きで申し訳ないのですが,発言させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。父母間の養育費請求権と子どもの扶養請求権との関係については,親が子どもの扶養請求権を処分できるのかといった問題が出てくるという御指摘かと思います。それは検討しなければならない問題だろうと思います。
  沖野委員,原田委員,赤石委員の順番でお願いします。

○沖野委員 私も,少し思い付き的なことで,きちんと詰めていないままの発言で申し訳ないのですけれども,この養育費請求権の位置付けに関しましては,各親が子を養育する義務があるということで,ただ,その義務の内容というのは,単にお金でバックアップするということだけではなくて,非常に多様な形で子を養育していくという,そういう義務を負っている,その中で経済的にも対応するということは,その一つなんだろうと思います。
  そのように考えた場合は,やはり養育費請求権というのを持っているのは子であって,子に対してそれぞれの親が,合同でなのかもしれませんが,義務を負っていると。一方で,親同士の話というのは,そういう義務を負っている者の間の分担の請求であったり,取決めであったりと,そういう位置付けではないかと思います。したがいまして,両者の取決めにおいて,全体の内容が適正なのかというと,分担としてはこういうふうに,しかも経済的な部分の分担はこうするというだけのものですから,義務全体としてどれだけかとか,経済的に言ってもそれが足りるのか足りないのかということが,合理性が確保されていないというものとして,したがって,それでは足りないということになれば,子からの請求というのは妨げられないということになるんだろうと思います。
  もっとも,子の請求を誰が具体的にやっていくのかという問題は,最初に池田先生から御指摘のあったとおりかと思いますが,そのような位置付けで考えていくことができないかと思っております。
  そうしたときには,例えば,婚姻費用の分担というときには,共に養育の義務を負い,経済面においても分担していく義務者間において,子どもに対して負う義務をどのように分担していくかという話と,それ以外の夫婦間の婚姻の費用を更にどうするかということを,言わばまとめて請求していくという位置づけができるのではないかと思います。ちょっと直接関係ない別の事項ですけれども,財産分与でも様々な性格があるとか,あるいは不法行為の損害賠償もあり,それらを一緒に請求することもできるとかもありますので,そういう形で整理ができるのではないかと思います。
  それから,離婚後につきましては,元夫婦の間の離婚後扶養というような話も,財産分与の中で出てくる話がありますので,そういう性格を持った中で請求していくというようなことも,あるいはあるのかもしれません。別居中が婚姻費用の分担でないと考えれば,また似たような話も出てくるかと思いますので,少し概念整理として,そのような形で整理をしてはどうかと思います。
  ただ,養育義務は,一種の扶養かもしれませんが,非常に多様であり,こういう性格を持っているので,親子の間の養育義務として取り扱えばいいのではないかと思っておりますけれども,それ自体,やはり義務の具体的な内容自体が,子どもの状況に応じて,どういうものが必要かというのは中身も変わってきますので,そうすると,ある意味不断の見直しというのも表現として適切ではないのかもしれませんが,かなり長期にわたる義務であり,状況に応じて適切に養育する義務だということになりますので,その義務の性格上,見直しの機会というのはきっちり確保されるということと,当事者の取決めについて,飽くまで義務者間の取決めということになりますので,その合理性の確保措置というのが必要になってくるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。基本的な一つの考え方を示されて,そこからこういう帰結になるというお話を頂きましたけれども,最初の発想は,父母の養育費の取決めというのは,共同で義務を負う者の間での内部的な負担部分の取決めであるということで,子どもにそれは影響しないと考えることができるということかと思います。これが基本的な発想であり,そこから,どのように考えを進めることができるかということですね。

○沖野委員 はい,そのように考えております。
  もっとも,その取決めを子が援用するとか,そういう話が出てくるのかもしれませんけれども。
○大村部会長 ありがとうございます。
○原田委員 すみません,時宜に遅れてしてまって,先ほどの大石委員の一括負担という内容が,ちょっとどういうものなのかをお聞きしたかったのですが,信託の利用とか,そういうこともあり得るということで御紹介をします。
  今の実務では,一括というのは,これは裁判官の方が違うと言われるかもしれませんが,例えば,お子さんが亡くなるとか,そういうときに清算の問題が起きるとか,あるいは,お母さんがというか,養育者がそれを使って,例えば事業を始めたと,それで失敗して,それはなくなってしまったと,その後どうなるのかとかいう,いろいろな問題があって,よほど当事者同士で合意がある場合を除いては,使われていないんだろうと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。

○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。
  養育費の概念がこんなに幾つもあるんだというのは,私も読んで,支援団体としては,そこはちょっとお任せするしかないんですけれども,税制との絡みをどうするのかというのを,一応お伝えしておきます。
  今,親が養育していて,同居親が養育していて,子どもの扶養に関しての税制の控除を受けている場合が多いんですけれども,これは別にどちらでも選択できるということなのか,所得の高い方が先に,自分が税の申告のときに,この子ども2人は自分が扶養していますということを申告してしまえば,こちらの方が所得が高いので,そのまま認められてしまうというようなことが起こっているようなんですね。
  この税の控除の問題をどう整理していくのかというのは,結構後に残る問題で,では,扶養とは何なのか,扶養控除とは何なのか,結構議論が必要なのだなと思っておりますし,もしかしたら分割した方がいいのかもしれませんし,そこもよく分からないというところなので,一応お伝えしておき,先取り勝ちで,扶養控除を取れないため,所得が高くなってしまって,いろいろな手当てとかもらえなくなってしまっておられる方がいらっしゃるということをお伝えしておきます。
○大村部会長 ありがとうございます。請求権の法的性質をどう考えるかということについて,論点が出されていますが,その性質決定が税制に影響するかもしれないということで,そのことも考えて議論しなければいけないという御指摘を頂いたと承りました。

○小粥委員 小粥です。
  現在,養育費の件でどのように理解するかということが議論されていると思うんですけれども,債権者は誰なのかというような問題とは別に,実体法上,ただの金銭債権という扱いのままでよいのか,現状でも民事執行法で養育費請求権については特別扱いがされているわけですけれども,今般の改正論議の中で,民事執行法,つまり債権回収の手続でより強力な特別扱いをしようとする際に,実体法というか,民法で現在のようなただの金銭債権という扱いのままで,手続法上の特別扱いがどこまで正当化できるのかという問題は考えなくてよいのかと。つまり,養育費は債務名義をより簡単に取れるようにするといったことが示唆されていますけれども,ただの金銭債権ではなく,若干の特殊性がある金銭債権ということで,あるいは,例えば先取特権を付与するような形にした方が,取扱いが正当化できるというようなことがあるんだとすると,そこも考えた方がいいのではないかと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど棚村委員から資料5ページの①,②について御指摘がありましたけれども,小粥委員の今の御発言は③に関わるのだろうと思って伺いました。
  ここには,極めて重要な権利であると書かれているのですが,民事手続において,ここでいう養育費請求権に特別な保護を与えるというときに,何か理由付けが必要になるのではないか。小粥委員がおっしゃったように,優先権にかかわる問題が一つありますけれども,優先権に尽きない問題も多分あって,それらをどうやって正当化するかのということを議論する必要があるだろうという御指摘かと思いますが,資料としては③のところで扱っていることかと思います。
  そのほか,いかがでしょうか。

○井上委員 連合の井上です。
  養育費については,子の利益だと考えていますので,支払が親の責任であることを明確にした上で,取決めの作成支援のみならず,受取り側に代わって取立てや立替えなどを行う公的な仕組みを検討すべきではないかと考えています。これは,明石市長のヒアリングのときにも孤軍奮闘されている様子が話されましたけれども,やはり国として一定の水準,基準は持つべきだと思っています。
  特に,ひとり親家庭の貧困問題が深刻化している中で,養育費を確保するための方策は,優先的に検討すべきではないかと考えています。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費の履行確保についての方策が重要ではないかという御指摘を頂きました。公的なということですけれども,民事法の外でやるということもあるだろうと思いますし,民事執行法の中で,あるいは他の手続法の中でどこまでできるかという問題もあるかもしれません。問題提起として承りました。

○久保野幹事 幹事の久保野です。
  一つ前の話に戻るのですけれども,5ページの③のような方向で,未成熟子からの扶養請求権,子どもの方からの請求権の実体法的手続法的な特性を詰めていくことが大事だということだというのに私も賛成ですけれども,この件について,少し前だったか,沖野委員の方から,扶養請求権という名称を変えて,何かいい言葉に置き換えられるとよいだろうというような方向性についての御発言があったかと思います。繰り返すのも変ですけれども,扶養請求権という言葉を使うことによって,現在扶養について取られている考え方と結び付けてということになりやすいというようなこともありますし,いつ変えるかはともかくとしましても,扶養請求権という言葉を非常に気を付けて,どういう実態,例えば,成長発達権と結び付けるのかどうかとか,いろいろなことがこれから議論されるんだと思いますけれども,その実態に合わせてどのような言葉を使っていくかということについても,積極的に議論をしていけるとよいなと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。他の請求権と性質が違うものだと考えるならば,概念の方も区別するということが望ましいのではないか,そういう方向の議論も必要であろうという御指摘として承りました。


○佐野幹事 佐野です。
  11ページのところで,ちょっとまた支援の話になってしまうかもしれないのですけれども,最初,①ガイダンスを実施すること,これは非常に賛成なのですが,ただ,ガイダンスだけではなかなか心情的に受け入れられない当事者の方もいらっしゃるというところを踏まえると,やはりそういう方には,その後個別の相談につなげるという何らかの枠組みが必要なのではないかなと思います。それは,韓国でもやっているのではないかと思います。
  それから,先ほど窪田委員からあったような,やはり養育費の額を取り決めるとしても0で取り決めてしまうというインセンティブが働いてしまうということを防止するためには,やはり税制上など何らかの,養育費を払うことによる利益といったところも考えなければいけないのではないかなと思いました。
  12ページの算定方式,考慮要素を法定してはということは,今は裁判官だけで決められているところですので,これは非常に賛成です。ただ,その前提となる収入の部分について,その後の話なのかもしれないですけれども,ここでも指摘されているように,やはり自営の方などで経費をかなり多く計上している事案などもあり,それを適正化するためにはどうしたらいいのかというところは,また別途検討する必要があると思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。ガイダンスという話が出ていますが,ガイダンスには来ない人がいるということが,いろいろなところで問題になりますので,そうした問題についても対応が必要であるということ,また,算定表につき実際の算定の方法に関する問題などに関する御指摘を頂きました。
  ほかに御発言いかがでしょうか。
  青竹幹事,窪田委員,落合委員の順番でお願いします。

○青竹幹事 先ほど,国による立替払いについての御指摘がありましたので,それに関連して一言だけなんですけれども,義務者から何が何でも徴収するという発想だけではなくて,国による立替払いもそうなのですけれども,公的機関の仕組みというのも,民法の外ですけれども,払えなかった場合ということにはなるんですけれども,むしろ少し積極的に検討するという方向があってもいいのかと思いました。
  落合委員が,第1回のときだったかと思うんですけれども,子の養育というのが,親だけの義務ではなくて社会が負担すべきという視点を御提示されていたのを,印象的に伺ったのですけれども,少しそういったことからも検討してもいいのではないかと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。履行確保以外あるいは,それ以上の対策というのも必要だという御指摘として承りました。
○窪田委員 窪田です。
  5ページの①,②,③に関わる部分で,前回も確か私,未成熟という概念をそう簡単に使っていいのかという発言をしたと思いますので,それと重なってしまうのですが,特に今回もう一度資料を見直していたときに,②の親が未成熟子に対して重い扶養義務を負っていることを民法において明らかにしてはどうかというのは,重い扶養義務を負っていることが当然の前提になっているのですが,本当にそうなのだろうかという点について,少し違和感を持ちました。
  つまり,未成年であるというのは,行為能力も制限されていて,言わばまだ法的に完全には自立していない,そういった未成年者に対する関係と,大学に行っていて,成年には達しているけれども,経済的に自立していないという場合とでは,扶養をめぐる関係はやはり違うのかなという気もしますので,全部何かひっくるめてこういう形で重い扶養義務と言われてしまうと,成年の未成熟子に対して重い扶養義務を負っているのはどうしてなのというのを,やはり聞いてみたくなってしまいます。そういう点も含めて,少し慎重な書き方をしていただく,あるいは,もし書くのだとすると,成年の未成熟子,それから未成年の成熟子という概念があるのかどうか分からないですが,未成年であるけれども経済的に自立している子どもとか,幾つかきちんと整理した上で書き分ける必要があるのかなと思いました。前回の話と同じことになってしまいますが,感想です。
○大村部会長 ありがとうございました。5ページの②について,言葉遣いと,それから実質についても,この問題についてはより慎重に考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
○落合委員 子を権利者とする子の扶養請求権という話なんですけれども,子どもの権利だというのはものすごく賛成です。ただ,その場合,母親と考えが違うときに何が起きるのかというのを,現状でも起きているのではないかと思うんですけれども,どういうふうに処理するものなのかというのを,ちょっと伺いたいなと思いました。
  母親は,例えば,養育費をものすごく少なく合意してしまったとか,でも,子どもとしては,自分は大学に行きたいんで,やはり本当はもっと欲しいんだけれどもとか,あるいは,母親がほかのことに使ってしまっているというようなことも,先ほどありましたよね,例として。母親と子どもの間の関係は,どういうふうに扱われることになるんでしょうか。
○大村部会長 ありがとうございます。今,質問という形でおっしゃっていただいたのですけれども,先ほどから,それに関わる御指摘が出ていて,その問題について,今回一定の考え方を示す必要があるのではないかということで,複数の委員から御意見を頂いたところかと思います。落合委員がおっしゃっているような危惧に対応できるような形で,制度を組む必要があるのではないか。その基盤として,沖野委員のような発言があったということではないかと思います。
  具体的にどうするかということを,規定を詰めた形で,この先で議論する必要があると思いますけれども,問題の御指摘は落合委員がおっしゃるとおりなのではないかと思います。
○落合委員 ありがとうございます。
○大村部会長 杉山幹事,武田委員の順番でお願いします。
○杉山幹事 幹事の杉山です。
  先ほど養育費の支払が一括なのか,それとも,定期的に少額に払うのかという話が出ましたが,今の執行法などは,基本的に定期的に少額で毎月払うということを前提にしていると思います。ただ,一括での支払いが絶対排除されるのかというと,必ずしもそうではないような気がしています。
  先ほど一括払いですと,後の事情の変更に対応できないという問題がありますが,必ずできないかというと,事後的な調整は不可能ではないと思いますし,一括で払った後に,子どものために使われない可能性があるという問題についても,毎月払う場合でも同じような問題が出てくるかとは思います。
  ただ,子どもの養育のための費用であるということであれば,一括払いよりも定期的に払うことを基本的に念頭に置いて検討するのでいいと思いますが,11ページにあるような取決めができないときに,そもそも取決めをする必要性があるかどうかとの関係で,離婚時に一定額,恐らくはかなり低い額で,自動的に請求権が発生するという考え方も検討に値するとありますが,そのような制度自体はあり得るとは思いますが,他方で,自動的に債務名義となるとした場合に,先ほどから養育費の額が変動する可能性があるという話がありましたが,その場合に債務者側にも修正のための重い負担を課すということになると思います。また,仮に追加請求もできるとして,その追加部分も債務名義にしなければならないといった問題も出てきます。いずれにしても,債務名義としない限りは実効性のある制度にならない点は理解できますが,何も手続的な保障がないまま,債務名義として修正の負担を債務者側に課すというのがいいかという点は,少し慎重に検討した方がいいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。手続的な面からの非常に重要な御指摘を頂いたかと思います。その点について注意をするとともに,どこかで皆様の意見を伺いたいと思います。
  武田委員,大石委員の順番で伺って,その辺りで今日はまとめたいと思います。
○武田委員 私どもは,養育費を払うことが常識というふうな中でやっておりますので,まずは,ずっと払い続けられるという観点と,もう一つは,継続的な支払確保のために収入に合わせて流動的に変動させるという2点が必要なのかなと,そんなふうに思っています。
  基準に関して,また別途整理いただいて情報提供いただけるという話ですけれども,今,基礎収入をベースにした考え方,今それだけで「えいや」って決めているように,やはり見えておりまして,払うのは全然当たり前のことなんですけれども,そこに対する納得感というところが,今はまだ足りないのかなと,そんなふうに思います。特に昨今,年収が上下することは,同じ会社に勤めながらもということは,非常に当たり前の世の中になっております。これはちょっとどこの国か忘れましたけれども,毎年双方の収入証明を出すと,それに伴って自動的に再計算すると,そのような仕掛けを持っている国もあるやに聞いております。そういった事例も踏まえて,払い続けられるようにという観点で,今後どう整理していくのかということが必要になろうかというのが,私からのコメントの1点目です。
  あともう1点は,次回のテーマになりますが,裁判手続の中でということで,先だって民事執行法が改正になっております。一定,回収に当たっても使いやすくなったとは聞いております。これは,可能であれば,新民事執行法改正以後,具体的にデータとしてどこがどういうふうに変わった,そういうようなものを,次回の部会の前に資料として御提供いただきたいというのがお願いでございます。
○大村部会長 ありがとうございました。第2点は,次回に間に合うかどうか分かりませんけれども,事務当局で御検討いただきたいと思います。
  第1点については,収入が変動するということが,かつてに比べて多い時代になっていますので,それを見込んだ支払可能な制度を考えてほしいという御要望として承りました。
○大石委員 千葉大の大石です。ありがとうございます。
  先ほど発言に追加なのですが,一括というときに,例えば,離婚が比較的若い時期に行われるとすると,そのときの余り蓄積していない資産で一括払いするというのは,もしかしたら子どもにとっては不利な状況に,あるいは子と同居する側に不利になるかもしれないという問題はあるかと思います。
  それと関連して,もう一つ問題提起させていただきたいのは,定額にするのか,定率にするのかということもありまして,今ですと,離別時に決めた金額がずっと続くということが多いと理解いたしましたけれども,例えば,年功賃金体系のもとでは年齢が上がっていくにつれて収入は増えていくわけですけれども,若いうちに定額で決めてしまうというのは,後々多くなるかもしれない支払能力というものを反映できないというリスクがあるかもしれないというのが一つ。ただし,賃金の年功度も緩やかになってきていると言われておりますので,今申し上げた問題点がどの程度当てはまるかどうかはまた別かもしれません。
  それから,定率にするということは,それぞれの時期に変動する収入に応じて,その一定割合を支払うということですね。アメリカの州によってはそういうシステムを取り入れている州もあります。ただ,これは海外の研究ですけれども,そういうふうに定率になってしまうと,今度は,例えば,払わなければいけない側が一生懸命働かなくなるというような,つまり収入を増やす努力を怠っていくというような行動を惹起するということも指摘されています。定額・定率のどちらも長所短所があり,両者をミックスした方がいいのかもしれませんが,そういったディテールについても,何らかの機会に検討することができればよいと考えています。
○大村部会長 ありがとうございました。直前の武田委員の発言と同じ方向で,収入の状況が変動するので,それをどのように考慮するのかということを,様々な選択肢の得失を考えて検討すべきではないかという御指摘を頂きました。
  現在の雇用状況について,どのように認識をするのかといったことも関わると思いますけれども,その辺はまた,大石委員からも知見を披露していただくこともあろうかと思いますが,引き続き議論をしていきたいと思います。
  ほかに御発言ございますでしょうか。
○落合委員 この際,質問させてほしいと思うのですけれども,養育費というのは,両親以外の義務にはならないでしょうけれども,実態として払っていたりしますね。祖父母などが。息子が払えなくなったときに,おばあちゃんが払っているとか,例はいろいろ見たりしています。
  お父さんが払えなくなったら,誰かにその義務が移転していくようなことはあり得るんでしょうか。それがいいと言っているのではないのですけれども,質問です。
○大村部会長 お尋ねは,実態についての質問ということになりますか。
○落合委員 はい,実態ですね。日本と,それからほかの国で。
○武田委員 日本国内でも事例としてはございます。お父さん払えなくなって,今,おじいちゃん,おばあちゃんが一生懸命なんで,何とか孫と接点を持つために払うというケースは,実はあります。
  もう一つ,大学の学費ですね。大学の学費,お父さんだけではどうしても出せなくて,お母さんも出せない,その中,おじいちゃん,おばあちゃんが田んぼを売って学費を出してあげると,そんなケースも実態としては耳に入っております。
○落合委員 あるなと思ったんですけれども。
  それが,扶養控除など,税制上何か優遇されるとか,養育費一般についてあるんでしたら,祖父母のも入るのかなと,お尋ねさせてください。
○大村部会長 実態についてどうなのかというのは,なかなか難しい問題だろうと思いますが,親の義務を祖父母が代わりに履行しているという話なのか,あるいは,祖父母が子どもに対して直接金銭的な給付をしているという話なのか,そういうことも,考えていく上では整理が必要なのかと思います。
  この問題は,監護者として,祖父母をどう考えるのかという問題とも,緩やかにつながるところがあるかと思いますので,またその辺りで御議論を頂ければと思います。
  窪田委員,原田委員の順番でお願いします。
○窪田委員 窪田です。
  大村先生から御説明があったとおりなんですが,おじいちゃん,おばあちゃんが代わって払うことがあるというのは,別におじいちゃん,おばあちゃんが義務を引き受けているわけではありませんので,ちょっとそこの部分は丁寧に,次回にでも結構ですから説明していただいた方がよろしいのかなと思いました。
  基本的には,おじいちゃん,おばあちゃんが払う場合があったとしても,お父さん,お母さんの義務が移っているわけではありませんので,法的には,それを前提として,直系親族の,血族の関係だけだということだと思いますから,改めて説明していただいたらよろしいかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。
○原田委員 私も今,同じことを言おうとしていました。
  実態的には,おじいちゃん,おばあちゃんがお金を出すことは一杯あります。でも,それが義務として裁判所で例えば認められるかといったら,それは違う話だということだと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。
  ほかに御発言ございますか。よろしいでしょうか。
  それでは,取りあえず今日のところは資料3の第4まで,13ページの3行目まで御意見を頂いたということにいたしまして,次回,ヒアリングと併せて,残りの部分と,それから面会交流について取り扱うということで検討を続けたいと思います。
  次回に面会交流も併せて終わらないかもしれませんが,その場合には,残ったものはその次に持ち越して,継続して議論をするということにさせていただこうと思います。
  それでは,次回の予定等について,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。
○藤田幹事 本日も御議論をありがとうございました。
  次回は,7月27日の午後1時半からということで,場所は改めて御連絡いたします。
  部会長から御説明がありましたとおり,次回は,まず部会資料3の養育費に関する残りの部分を御議論いただいた後に,面会交流に関する御検討を引き続きお願いするということになります。その後に,海外に関する研究者からのヒアリングと,菅原委員からお話を伺うということになりましたので,そのような進行で次回はお願いしたいと思います。
○大村部会長 次回のヒアリングでは皆様からいろいろな質問が出ると思いますけれども,次回は,今日の養育費の残りの問題と面会交流の問題について意見交換をしたいと思いますので,そちらを先にさせていただきまして,ヒアリングをお願いした方がお越しいただく時間になりましたら,議論はそこで一旦打ち切って,ヒアリングに移らせていただくという形で,時間配分をしたいと思っております。この点,どうぞよろしくお願い申し上げます。
  今日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。
-了-