民事信託の登記の諸問題13

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(13)」からです。

資格者代理人による報告形式の登記原因証明情報の作成支援は、資格者代理人の善管注意義務上、何を確認しなければならないのか、という資格者代理人の確認義務の問題に関わり、クリティカルな問題である。

 報告形式の登記原因証明情報を作成するということは、信託契約書の作成案から関わる、民事信託支援業務とは切り離した、所有権移転及び信託登記申請の代理業務のみを受任した場合と想定します。

従って、上記のような信託行為の定めは、登記手続上、後続登記申請における登記原因証明情報の名義関与者の指定という機能をもつ。

 後続登記申請における添付情報の関与者(承諾情報・同意情報等)という意識はありましたが、登記権利者、登記義務者という名義関与者の指定という感覚は今まで持っていなかったことに気付きました。

4 その他の信託の条項

 信託の変更 信託目的に反しないことが明らかな場合、受託者が単独で変更できる。

この場合の「信託目的に反しない場合」という情報は、誰が変更権者となるのか、に関わる要件(条件)となろう(信託変更の要件そのものであると解する余地もあるが、読者の皆さんはどう思うであろうか)。

 誰が変更権者となるか、については、受託者が単独でという記載が当てはまり、「信託目的に反しない場合」という情報は、信託変更の要件(信託法149条2項1号)だと思います。

2 信託財産の管理方法 受託者による不動産の売却の条件

            最低売却価格金×億円を満たすこと

このような情報は、登記手続そのものに影響を与える情報であると言えるだろうか。前述の信託の変更に関する信託行為の定めも、同じ水準感の問題として、当該情報が、信託目録に記録すべき情報として抽出すべき情報なのか否か、という資格者代理人の関心事に関わる。

 信託目録に記録した場合、現行法上、信託目録の連続性がない登記申請が登記されるという通達・先例がない以上、後続登記申請の登記原因証明情報には、売買契約における代金を記載する必要が出てきます。

 信託目録に記録しない場合、登記申請前の売買契約・決済の場面において、信託契約書や売買契約書のチェック、関係者への確認を行うことになると思います。

 私なら後者で考えますが、所有権移転及び信託の登記申請時に、委託者と受託者に確認が必要なことだと考えます。


[1] 895号、令和4年9月、テイハン、P47~

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