民事信託の登記の諸問題(8)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(8)」からです。

4.信託条項

4.その他の信託の条項

本信託は、受益権証書の発行を禁止する

「受益権証書」と「受益証券」は異なるものであるので、その差異を認識しておきたい。受益権証書は、当事者間において任意に作成される証拠証券にすぎない。受託者が便宜的に発行する受託者と受益者の間の当事者間における証拠証券であり、営業信託における長年の慣行である。受益権の質権設定の質物としての必要性を言う人がいるが、そもそも、受益者が自ら受益者であることを証する書面がある。民事信託においても受益者連続型信託などでは、後続の受益者が、証書をよくする場面を生じるかもしれない。

信託法(平成十八年法律第百八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受益証券の発行に関する信託行為の定め)

第百八十五条 信託行為においては、この章の定めるところにより、一又は二以上の受益権を表示する証券(以下「受益証券」という。)を発行する旨を定めることができる。

2 前項の規定は、当該信託行為において特定の内容の受益権については受益証券を発行しない旨を定めることを妨げない。

3 第一項の定めのある信託(以下「受益証券発行信託」という。)においては、信託の変更によって前二項の定めを変更することはできない。

4 第一項の定めのない信託においては、信託の変更によって同項又は第二項の定めを設けることはできない。

不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(信託の登記の登記事項)

第九十七条

五 信託法(平成十八年法律第百八号)第百八十五条第三項に規定する受益証券発行信託であるときは、その旨

受益権証書を、受益権情報とすれば受益証券と紛らわしくならずに済むのではないかなと思います。

国内外の信託、特に信託会社によってせっていされていない、あるいは管理されていない信託の透明性に関しては、課題がある。

FATF第4次対日相互審査報告書(2021年8月30日)より抜粋

この勧告に対しては、日本政府のマネロン・テロ資金供与拡散対策のための行動計画もある。不動産の民事信託は、一般に金銭信託とセット行われる場合も多いが、今、信託登記の悪用防止のため、その真実性及び透明性の確保の方法が注視されている。

 現在、株式会社が利用することが出来る、実質的支配者リスト制度を民事信託制度で利用することが考えられます。この制度を利用が想定される場面としては、法人・個人問わず受託者が金融機関で信託口口座を開設する場合に、受益者の情報を提出するようなときです。

不動産登記制度においては、現在よりも受益者・受益者代理人・信託監督人・後見人等のの関与を強めることが考えられます。

実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)


[1] 890号、令和4年4月(株)テイハンP63~

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