登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題」から考えてみます。
「生涯にわたる」という文言に注目してみたい。あるいは本誌の読者は、何となく修飾語として存在するにすぎない些細な表現であると感じるかもしれない。「生活」に係る形容詞句だろうか。「安定した」に係る副詞句だろうか。「支援」(する)に係る副詞句だろうか。「と」という等位接続詞によって「生活の支援」と福祉の確保」の双方の句に係るのだろうか。この点、信託の目的における細部の規定の仕方に応じて、具体的な、受託者の義務や責任が変化する効果を生じうるか否かという点が重要である。
生涯が名詞句、にわたる、が動詞句ではないでしょうか。私が文章を読む限り、「と」という等位接続詞によって「生活の支援」と「福祉の確保」の双方の句に係ると読みました。
―中略―「生涯にわたる」という文言の有無が、その判断の際を生じさせるのだろうか。信託の目的として「生涯にわたる」受益者の生活支援を求めている場合、受益者の生存する限り、信託の目的の達成が確定したり、あるいは、信託の目的の不達成が確定したりするような状態を想定することはできるのか、という論点がある。
信託の目的は、信託行為全体から判断することが必要だと考えます。信託法163条1項の「信託の目的達成」あるいは「信託の目的不達成」などの信託の終了事由の存否を判断する際の基準として、1つの判断基準になるとは思います。他に信託の終了事由が、法定終了事由と受益者の死亡のみであった場合は、それも判断基準になるかと思います。また信託行為発行前後の、信託財産に属する財産の状況も判断基準の1つと考えられ、1つ1つ判断を下していった結果どうなのか、と最後の判断をするのだと思います。P63の入れ子構造の表の中に、生涯にわたる、という文言が入っていない理由が分かりませんでした。
[1] 886号、令和3年12月号、テイハンP57~