信託フォーラム[1]の遠藤英嗣弁護士「信託は「分別管理」と「信認関係」で成り立つ―いま一度、大阪高裁平成20年の判決を考える―」からです。
平成20年9月24日大阪高等裁判所判決
平成19(ネ)2775号敷金返還請求権確認等請求事件
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=37345
竹中悟人稿『信託契約の成立要件についての覚書』/『信託研究奨励金論集35号』2014年11月p63
https://www.shintaku-kyokai.or.jp/profile/business/research/resultingpaper.html
平成11年11月8月不動産で営業
平成12年4月25日,Z電鉄と控訴人,控訴人と被控訴人は,それぞれ出店予約契約書及び関連する覚書を作成
平成12年6月26日Z電鉄と被控訴人が、不動産賃貸借契約締結
平成12年6月26日被控訴人と控訴人が、不動産転貸借契約締結
平成17年3月7日被控訴人、控訴人に対し委任契約を終了する旨の意思表示
平成17年4月30日Z電鉄と控訴人が、不動産賃貸借契約合意解約
平成17年5月5日控訴人が民事再生の申立
平成19年7月27日被控訴人、敷金返還請求権について債権処分禁止等仮処分命令決定
平成19年9月5日Z電鉄供託
裁判所の判断
・被控訴人とZ電鉄との間で,直接の賃貸借契約が成立したとは認めることができない。
・賃貸借契約とこれに基づく転貸借契約とは別個のものであり、転貸借契約に基づき転貸人に交付された敷金を、転借人の信託財産として転貸人が管理しているということは観念できない。
・敷金返還請求権を、転借人を委託者かつ受益者とし,原賃借人兼転貸人を受託者とする信託財産であると認定できるような特段の事情があるということはできない。
筆者は、人とのつながりが重要な家族信託において、「信認関係」こそが最も大事な要件だとして強調しているのである。
その他の契約(例えば委任契約)と比較して、信託行為における信認関係がどのように違うのか、分かりませんでした。
そこで、目的の全部取り換える変更や、既存の信託の目的に新たな目的を追加する場合でも全く異質のものになるような変更は、信託行為の変更とは言えまい。
前者の、目的の全部取り換える変更は受益者の生活状況が変わったり、受益者そのものが変わったりする場合にはあり得るのではないかなと思いました。後者の、既存の信託の目的に新たな目的を追加する場合でも全く異質のものになるような変更は、信託行為全体で判断して矛盾している場合は、記事記載の通り、難しいと感じました。
こうしてみると、信託の本質と信託の成立要件は、直結しているとみることができよう。要は、信託法2条1項にうたわれている要件では、信託の基本的構造を言い表すことはできないことがはっきりとしてきた。
そこに、付け加えるのは、1は信託設定意思であり、2は受託者に課せられた信認義務と分別管理義務であり、3は信認関係の確立だといえよう。
信託の本質、という言葉が、私には今でもわかりません。信託法2条1項に記載されているのは定義であり、基本的構造を全て表すことはできないのではないかと思いました。
信認義務、というのは、どのようなものなのか分かりませんでした。
[1] 17号、2022年4月(株)日本加除出版P123~