令和 3年不動産登記法改正

令和 4年5月16日きんざいオンラインスクール

司法書士 今川嘉典(石川県司法書士会)

参考

・法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」令和3年12月版

https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf

(以下「ポイント」という。)

・法制審議会民法・不動産登記法部会における資料及び議事録-ネット上で公開-(以下「部会資料」・「部会議事録」という。)

・「Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法―松村秀樹法務省民事局総務課長(前同局民事第二課長)・大谷太法務省大臣官房参事官編著」-一般社団法人金融財政事情研究会・(株)きんざい-(以下「Q&A」という。)

 令和3年改正法

1.「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」

・令和3年4月21日成立、同月28日公布

2.施行期日

「民法等の一部を改正する法律」

・原則 公布の日から 公布の日から 2年以内の政令で定める日 年以内の政令で定める日 年以内の政令で定める日 年以内の政令で定める日 (附則第 1条本文)

→令和 5年 4月 1日施行 (令和 3年 12月 14日政令)

・相続登記の義務化等3年以内(附則第 1条第 2号)

→令和 6年 4月 1日施行 (令和 3年 12月 14日政令)

・住所氏名等 の変更登記義務化

5年以内 (附則第 1条第 3号)

→今後政令により決定される。令和8年4月頃か

「相続土地国庫帰属法」  2年以内 (附則 1)

→令和 5年 4月 27日施行 日施行  (令和 3年 12月 14日政令)

 所有者不明土地

1.「所有者不明土地問題研究会 」(座長増田寛也氏)平成 29年 12月 13日の最終報告 (以下「最終報告」という。)

・「推計で九州本島の面積に相当する土地が所有者不明である」

2.最終報告の根拠

・国土交通省 国土交通省 国土交通省 平成 28年度地籍調査( 563 市区町村における計622,608筆の調査)の結果からの推計

→不動産登記簿で土地所有者等の所在が確認できない土地の割合が、全体の20.1%

上記のうち、相続登記の未了が原因(66.7%)、住所変更登記の未了が原因 、(32.4%)

住民票や戸籍等で調査をしてもなお所在不明あった土地は 住民票や戸籍等で調査をしてもなお所在不明あった土地は0.41%

最終報告における付言「ここでの対象は、「所有者台帳(不動産登記簿等)により、所有者が直ちに判明しない、又はいても所有者に連絡がつかない土地」であり別途調査をすれば判明するケースも多く、対象地全てが直ちに問題というわけではない。」

令和元年住民基本台帳法施行令の改正により、住民票の除票及び戸籍の附票の除票の保存期間が5年から150 年に延長

住民基本台帳法施行令

(保存)

第34条 市町村長は、除票又は戸籍の附票の除票を、これらに係る住民票又は戸籍の附票を消除し、又は改製した日から150年間保存するものとする。

2項、3項 省略

→「調査に要するコストの問題」

「多数共有者における合意形成の困難さの問題」

不動産登記情報の更新(登記情報を最新のものとすること)

3.法改正の目的

「不動産登記情報の更新(登記情報を最新のものとすること)」

「土地の適正な利用と管理の促進」

「自ら利用・管理できない土地を手放す制度の創設」

→相続登記の義務化等の不動産登記法の改正

遺産分割を一部制限するための民法の改正

共有制度、財産管理制度及び相隣関係等を見直すための民法の改正

相続土地国庫帰属法

4.土地所有者の基本的責務

土地基本法の改正(令和2年改正法)

(土地所有者等の責務)

第6条 土地所有者等は、第2条から前条までに定める土地についての基本理念(以下「土地についての基本理念」という。)にのっとり、土地の利用及び管理並びに取引を行う責務を有する。

2 土地の所有者は、前項の責務を遂行するに当たっては、その所有する土地に関する登記手続その他の権利関係の明確化のための措置及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を適切に講ずるように努めなければならない。

3 土地所有者等は、国又は地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力しなければならない。

  不動産登記法の改正 (相続登記の申請義務付けと「相続人申告登記」)

(相続等による所有権の移転登記申請)

第 76条の 2 所有権の登記名義人に ついて相続開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続開始があっことを知り、かつ、当該所有権を取得したこと知った日から3年以内に、所有権の移転登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)より所有権を取得した者も、同様とする。

2 前項前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたもの限る。次条第4項において同じ。)がされた後に遺  産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割日から3年以内に、所有権の移転登記を申請しなければならない。

3 前 2項の規定は、代位者その他の者の申請又嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

(過料)

第 164 条 第 36条、第 37条第 1項若しくは第2 項、第 42条、第 47条第 1項(第 49条第 2項において準用する場合を含む。)、第 49条第 1項、第 3項若しくは第 4項、第 51条第 1項から第 4項まで、第 57条、第 58条第 6項若しくは第 7項、 第 76条の 2第 1項若しくは第 2項又は第 76条の 3第 4項の規定による申請をすべき義務がある者正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円 以下の過料に処する。

2 省略

(相続人である旨の申出等)

第 76条の 3 前条第1項の規定により所有権移転登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより登記官に対し所有権の名義人について相続が開始した旨及び自ら当該所有権の登記名義人である旨を申し出ることができる。

2 前条第 1項に規定する期間内に申出をした者は、同前条第 1項に規定する

所有権の取得(当該申出の前にされた遺産分割を除く。)に係る所有権の移転登記を申請する義務を履行したものとみなす。

3 登記官は、第 1項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。

4 第 1項の規定による申出をした者は、その後遺産分割によって所有権を取得したとき(前条第1項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したとき除く。)は、当該遺産の分割の日から3年以内に、所有権の移転登記を申請しなければならない。

5 前項の規定は、代位者その他申請又嘱託により、同項の登記がされた場合には、適用しない。

6 第1項の規定による申出手続及び第3項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

我が国の登記制度の根本原理としては、登記は私的自治の原則により申請人が任意に行えばよいことされている。

(登記が物権変動の対抗要件とされている(民法177条)こともその理由である。相続登記においても、同様に義務とはなっていない。

→登記に義務を課すということは画期的な出来事である。

1.義務履行期間における主観的要件

・自己のために相続開始があっことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転登記を申請しなければならない。(76条 の 2第 1項)

数次相続の場合

以下のケースにおけるD・Eの義務履行期間は

・「甲が不動産を所有していたこと」

・「Cが甲の相続人一であること」

・「D・Eが Cの相続人であること」

・「甲及び Cが死亡したこと」の各事実を知った時から開始する。

【令和 3年 3月 28 日日本司法書士会連合会研修会「 相続登記の義務づけをめぐる不動産登記法の改正構想と司法書士実務の課題」山野目章夫早稲田大学教授

2. 「相続人である旨の申出」制度創設

・「相続人申告登記」と呼ばれる。

・相続人申告登記をした者は、登記申請義務を履行したものとみなす。(76条の 3第 2項)

法定相続分による登記をすることによっても、義務の履行になる。

3. 遺産分割があった場合

遺産分割があった場合は、遺産分割のから3年以内に登記をしなければならない。(76条の2第1項)

相続人申告登記をした場合、遺産分割による登記義務は残る。 (76条の 3第 2項括弧書き)

相続人申告登記をしたに遺産分割があった場合は、遺産分割の日から3年以内 に登記をする義務が発生。(76条の3第4項)

法定相続分による登記をした場合も、同じ。(76条の2第2項)

→【部会資料 (60)2頁】・【第24回部会議事録 27頁~32頁】・【ポイント5頁、7頁】・【Q&A 278 頁~285頁他】

4. 相続人申告登記 の内容

・所有権の移転の登記ではなく、報告的な登記であり、付記登記となる。二次相続の場合は、付記登記の付記となる。【登記記載例:別添「 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し-法務省」2頁】

・持分は登記しない。

・申出人が法定相続の一人であることが分かる限度での戸籍謄抄本を提供すれば足りる。 登記名義人の同一性確認は、他のシステムと連携を利用して、登記官が職権で調査する。

・登記官は、申出をした相続人のみを登記し、申出をしていない他の相続人の登記はしない。

・申出をした相続人のみが義務履行となり、申出をしていない他の相続人義務不履行状態は続く。

・代理による申出は認める。

・申出人の住所・氏名変更の申出があった場合には、登記官が職権で登記をする予定。(住所・氏名変更の義務化対象ではない。)

→相続人申告登記の内容につき【ポイント4頁】・【 部会資料 (19)14頁】・【 Q&A 270 頁 ~277 頁】

★相続人申告登記の申出をしても、法定単純承認にはならない。【第10回部会 議事録 2頁】(相続人申告登記と同様に、法定相続分よる登記をしても単純承認にはならい。【Q&A 272頁】)

5. 相続人申告登記制度創設の意味

・単純義務化した場合の実効性

・相続登記の義務化と法定相続分による登記

・簡易な手続きの創設

6.過料の制裁

「主観的要素」と「正当理由」

・当事者への配慮、不意打ち・不公平回避策

・登記官の形式的審査権と「主観要素」、「正当理由」の判断

過料措置の内容

・手順

ア)登記官が、登記申請義務違反の事実(主観的要件の充足や正当な理由の不存在を含む。)を職務上把握

イ)あらかじめ相続人に対して登記申請をするよう催告

ウ)それでもなお登記申請をすべき義務負う者が理由もなく登記を留保

エ)裁判所に対する過料事件の通知(過料通知)

催告に応じて登記申請がされた場合は過料通知をしない

 登記申請義務の履行期間経過後に登記申請がされたことにより、登記官が登記申請義務違反の事実を把握したような場合でも、直ちに過料通知の対象とならない(登記申請義務の履行期間の経過とともに過料の制裁を恐れて登記申請がされなくなるといった事態を回避する。

→【ポイント9頁】・【 第16回部会議事録38頁】・【第23回部会議事録19頁】・ 【部会資料(19)14頁】・【第10回部会議事録 2頁】・【部会資料(60)3頁】・ 【Q&A300頁】

・過料手順等の詳細は、法務省令で定められる。

 本改正による過料の規律は、厳罰化を目的とするものではない。

正当理由

「正当な理由」の具体的類型は、通達等において明確化されるが、現時点では以下の例が考えられている。【ポイント9頁】・【Q&A298 頁】

・数次相続が発生して人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人把握に多く時間を要する。

・遺言の有効性や産範囲等が争われている。

・申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある。

・申請義務を負う相続人 が DV 被害者等であり、避難を余儀なくされている。

・経済的困窮のため手続費用を負担できない。

「登記官が申請義務違反の事実を職務上把握する」とは、どのような場合か。

・登記申請義務履行期間経過後に登記申請がされた場合

・遺言に 基づく登記申請の際、当該が他不動産ついても当該遺言が他の不動産についても当該申請人に取得させる内容ものであった場合

→【 Q&A300 頁】

過料制度導入の意味

・「理念的・訓示的な義務」 と過料の制裁を伴う具体的な義務」

・相続人に対する強い意識付け

・各種負担軽減策をパッケージで導入

→【 Q&A296 &A296頁】

 相続登記の義務化へ対応

・遺産分割協議を経た登記、法定相続人による登記、相続人申告登記の選択

・優先すべき手続は?

→法定相続分による登記は、遺産の未分割状態をそのまま公示する暫定的な登記手続きである。

→相続人申告登記は、何らかの事情により直ちに登記ができない場合の救済的な手続きである。

遺産分割協議の促進

 相続登記の義務規定に係る経過措置

施行期日において、現に相続登記未了となっている不動産も、相続登記の義務化の対象とする。(附則5条6項)

・第 76条の2第1項の義務

→「知った日又は施行日のいずれか遅い日」 から3年

・第 76条の2第2項の義務

→「分割の日又は施行日のいずれか遅い日」から3年

不動産登記法の改正( その他新しい規律1)

(1) 遺産分割に関する見直し(民法の改正)

(期間経過後の遺産分割における相続)

第 904 条の3 前3条の規定は、相続開始時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

二 相続開始の時から始まる10年の期間満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得事由が相続人にあった場合おいて、その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の 分割の請求をしたとき。

・相続開始の時から10年経過した後にする遺産の分割については、民法第903条(特別受益)、904条の2(寄与分)を含めた具体的相続分の主張ができない。

遺産分割協議自体に期間制限を設ける規律は置かないこととされた。

10年の期間経過後に、相続人間で具体的相続分による分割をするとの合意がされた場合には、協議によるケースや調停・審判によるケースでも、その合意によることができる。【部会資料(51)20頁】・【Q&A250頁】

・「やむを得ない事由」(第2号)【Q&A249頁】

→10年を経過する直前に遺産分割の申立て取下げがされた場合

【部会資料 (42)8頁】

→相続人に遺産分割協議をする判断能力がなく、成年後見人等が選任されていない場合

→遺産分割禁止特約や遺産分割禁止の審判がある場合

→相続開始後10年を経過してから相続の放棄がされて相続人となった場合

相続の開始を知らなかったという主観的事情のみでは認められない。

・関連する法改正(遺産分割調停、審判の申立て取下げに関する改正)

家事件手続法

(申立ての取下げ制限)

第 199 条 省略

2 第82条第2項の規定にかわらず、遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければその効力を生じない。

(家事調停の申立て取下げ)

第 273 条 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又一を取り下げることができる。

2 前項の規定にかわらず、遺産の分割の調停の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければその効力を生じない。

3 省略

施行日 令和5年4月1日

経過措置

施行期日において、現に相続が開始しているものについて、「相続開始の時から10年を経過する時又は法の施行の時から5年の経過する時のいずれか遅い時」までに遺産分割をしない場合は、具体的相続分を主張できない。

(2) 住所・氏名等の変更登記申請義務付け

(所有権の登記名義人氏等変更申請)

第76条の 5 所有権の登記名義人の氏若しくは名称又住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又住所についての変更登記を申請しなければならない。

(過料)

第 1264条 1項省略

2 第 76条の 5の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する。

・自然認及び法人とも規律の対象なる。

・過料措置については、相続登記の義務と同様である。

・転々と住所変更をする場合もあり、負担が大きくないか。

(3) 登記官による職権(死亡情報の登記・住所変更等)

 自然人の場合【部会資料 (53)15 頁】・【部会資料 (57)13 頁】

登記官による、住基ネット等から死亡情報、住所・氏名の変更情報等の取得

登記官による、住所・氏名の変更職権登記

→登記官による、死亡した旨の符号の職権登記

・新たに所有権の登記名義人となる者は、登記申請の際に、生年月日等の情報(検索用情報)を必ず提供

・生年月日の他、氏名の振り仮名、外国人の場合のローマ字表記等も継続検討

・法施行時において既に所有権の登記名義人となっている者は、検索用情報を任意に提供

・登記官は、住基ネッットから【年に1回程度 】定期的に情報を入手し、死亡の事実や住所・氏名の変更事等を把握する。

・検索用情報は、公示しない。

登記名義人が自然であるときは、あらかじめ「通知」をし、申出があるときに限り職権登記を行う。

「検索用情報の提供」・「通知」・「申出」については、インターネット利用も検討されている。【ポイント14頁】

 法人の場合

登記官による、商業・法人システムから、本店・商号の変更情報の取得

→登記官による、本店・商号の変更の職権登記

・所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号を登記事項とする。

・法施行時において既に所有権の登記名義人となっている法人については、登記官が職権で、会社法人等番号を追加する変更登記をする。(附則5条5項)

→法人からの任意の簡便な方法による申出を受けて、登記官が職権登記をすることが予定されている【ポイント15頁】

規律

(情報の提供求め)

第151条 登記官は、職権による登記をし、又は第14条第1項の地図を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)に関する情報の提供求めることができえる。

固定資産課税台帳情報も対象とする予定。【 Q&A288頁】

(職権による氏名等の変更登記)

第76条の6 登記官は、所有権の名義人の氏名若しく名称又住所について変更があったと認めるべき場合には、法務省令で定めるところにより、職権で氏名若しくは称又住所ついての変更登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出あるときに限る。

(所有権の登記名義人について符号表示)

第 76条の 4 登記官は、所有権の名義人(法務省令で定めるものに限る。)が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、当該所有権の登記名義人についてその旨を示す符号を表示することができる。

「所有権の登記名義人(法務省令で定めるものに限る。)」との規律について

・法人の場合は、現時点では適用を見送る。【部会資料 (38)10頁】【Q&A289頁】

(所有権の登記事項)

第73条の2 所有権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次とおりとする。

1 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(商業登記法(昭和昭和38年法律第125号)第7条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの

2号 省略

2項 省略

(4) 所有不動産記録証明制度の創設

(所有不動産記録証明書の交付等)

第119条の2 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めものを含む。)として記録されている不動産(これに準ずる者として法務省令で定めものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明証書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前2項の交付請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

4 前条第3項及び第4項の規定は、所有不動産記録証明書の手数料について準用する。

1 請求権者

・所有権の登記名義人 (1項)

・相続人その他の一般承継人(2項)

  • 1,2とも法人対象

・任意代理人【部会資料 (60)9 頁】・【Q&A325頁】

・不在者財産管理人、相続財産管理人、遺言執行者、破産管財人これらに類する法定代理人(不動産の管理権限を有する者に限る)【部会資料 (60)10 頁】

「所有権の登記名義人に準ずるものとして法務省令で定めるもの」(1項括弧書)

→将来、表題部所有者などを対象とすることも可能なように省令で定めることとした。【部会資料 (53)23 頁】・【ポイント 11頁】・【Q&A323頁】

 証明の意味、形式、その他

・請求された登記名義人の氏名又は名称及び住所等の情報に基づいてシステム検索を行った結果・あくまで情報が一致したものの目録としての証明であり、 不動産の網羅性には限界あり【部会資料(60)9頁】

・記録がないことの証明書も交付(1項括弧書)

・法務大臣の指定する法務局(3項)

・郵送による請求を認める。【部会資料(60)10頁】

 相続登記の義務化等に係る制度の概観

登記官による、住基ネットから死亡、住所、氏名の変更等の情報の取得(自然人)

商業・法人登記システムから本店・商号の変更情報の取得(法人)

・登記官による、住所・氏名、本店・商号の変更の職権登記

・登記 官による、死亡した旨の符号の職権登記

・所有不動産記録証明書制度の利用

・相続登記・相続人である旨の申出制度(相続人申告登記)

・遺産分割に関する見直し(民法の改正)

・相続により取得した土地の国庫帰属制度

表題部所有者について

・表題部所有者に関しては、 所有権登記名義人に係る規律と同様の規律を設けず、将来的課題とする。【部会資料 (57)19頁】

相続等により取得した土地の所有権国庫へ帰属関する法律ついて

 土地の所有者は、法務大臣に対し、土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる。(2条1項)

行政処分である。

承認申請者(2条1項、2項)

・相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によりその土地の所有権の全部又 に一部を取得した者に限る。

・共有持分の国庫帰属は認めない(共有者が全員で行う)。

・相続等以外の原因により共有持分を取得した共有者も、相続等に共有持分を取得した共有者と共同して承認の申請をすることができる。【ポイント22頁】

「手数料」及び「管理に要する10年分の標準的な費用の額を勘案して政令で 定めるところにより算定した額(負担金)」を納付しなければならない。(3条2項、10条)

参考:200㎡の宅地の10年分の管理費用は約80万円

粗放的な管理で足りる原野約20万円【ポイント21頁】

国庫帰属した土地が、仮に10年以内に売却されたとしても、負担金は返却されない。【Q&A378頁】

 承認申請者が負担金を納付したときに、土地の所有権が国庫に帰属する。(11条 1項)

主に農用地又は森林として利用されている土地は農林水産省、それ以外の土地は普通財産として財務省が管理する。

 法務大臣の権限の一部を法務局又は地方法務局の長に委任する。(15条)

 以下の事項のいずれかに該当する場合は、承認申請をことができなない。(2条 3項)

・当該要件は却下事由となる(4条 1項)

1)建物の存する土地

2)担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

3) 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

4)土壌汚染対策法2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

5) 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲につて争いある土地

「本文3、5の境界は所有権界を意味するが、それが特定されていることを判断するために承認申請者に提出を求める資料としては、土地の区画を現地において明らかにする能力(現地復元性)を備えている登記所付地図(国土調査において作成された地籍図、土地改良図等の土地所在図、登記所備付地図(国土調査において作成された地籍図、土地改良区図等の土地所在図、登記所備え付地図作成作業により法務局が作成した地図等)や積測測量図が考えられる。

これらが存在し、現場に境界標等の明確な目印があり、承認申請者が境界は図面のとおりであり争いがないと述べているような土地であれば、境界の確認に当たって周辺住民からの聴き取り調査までは必要がない場合もあると考えられる。

登記所備付地図が存在しない場合には、地積測量図ほどの精度は有しない図面であっても、国庫帰属後の 土地の管理機関が管理を要する土地の範囲を認識できる程度に所有権界が明らかあり、管理費用の算出可能な 範囲を認識できる程度に所有権界が明らかであり、管理費用の算出が可能な程度に所有権界が明らかであり、管理費用の算出が可能な範囲を認識できる程度に地積が示されている図面(例えば、現況測量(境界標や工作物を基に土地を測量して、現況の面積求めたり、平面図を作成したりする測量をいう。)により作成された図面等)が必要であると考えられる。

なお、登記所備付地図の有無にかかわらず、境界の特定の有無を判断するに当たたっては、法務局や関係行政機関の職員が現地調査に赴き承認申請者が提出する図面を基にして境界の確認行うとともに、場合よっては周辺住民からの聴き取り等の調査を実施することも想定されており、境界は提出図面のみで特定されるものではないと考えられる。それを前提にした上で、承認申請者にどのような資料の提出等を求めるかについては、承認申請者に係る費用の負担も踏まえて引き続検討する。

【部会資料 (54)6頁】

以下の事項のいずれにも該当しない場合は、法務大臣は、承認をしなければならない。(5条)

・崖(勾配、高さその他事項について政令で定める基準に該当するものに限る 。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

・土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

・除去しなければ土地 の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

・隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

・上に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

粗放的な管理で足りるものに限定している。

8 見直し規定

・政府は、この法律の施行後 5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講じなければならない。(附則 2)

 不動産登記法の改正(その他新しい規律2)

外国に住所を有する登記名義人の在把握ため方策

(所有権の登記事項)

第73条の2 所有権の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

1 省略

2 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの

3 省略

・連絡先の登記を必須とすることはできない。

「連絡先なし」の登記を認める。 その要件等については、省令で規律する。

【ポイント17頁】 【部会資料 (53)20頁】

・連絡先として第三者の氏名又は名称及び住所等を登記する場合には、当該第三者の承諾があることを要件とする。【部会資料 (60)8頁】

・連絡先となる者の氏名又は称及び住所等の登記事項に変更があった場合には、所有権の登記名義人のほか、連絡先として登記されている者が単独で変更で登記の申請をすることができる。【部会資料 (60)8頁】

・連絡先である第三者が死亡した場合、又は辞任した場合も含めて「連絡先なし」とする変更の登記をする。【第23回部会議事録 回部会議事録 40頁】

・外国人だけでなく、外国に住所を有する日本人も規律の対象となる。【第23回部会議事録 40頁】

・国内に住所を有する者が住所変更した場合は、その住所変更の登記につき義務が課され、かつ連絡先の登記をしなければならない。【部会資料 (57)16頁】

「施行までに十分な期間を設けることで担い手の確保(登記申請時の資格者代理や取引時に関与した不動産業者なども考えられる。)の準備も可能となるものと考えられる。【部会資料 (35)13 頁】

「広く国内における連絡先となる者が具体的に登記されるよう、不動産関連業者や資格者代理人(司法書士、土地家屋調査等)が協力しならこの制度の定着に向けて積極的に関与していく必要がある」【部会資料 (57)16 頁】

不動産関連業者・司法書士等が給源となることを期待【ポイント17頁】【Q&A3 17頁】

実効性は十分でないが、できる限りの方策をとるという方針。

→「他に有効で実現が可能な解決策も直ちには見当たらないと考えられる。」【部会資料 (53)20頁】

 DV 被害者等の保護ため住所情報公開見直し

(登記事項証明書の交付等)

第 119 条 省略

2~5 省略

6 登記官は、第1項及び第2項の規定にかわらず、登記登録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより、人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度の心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において、その者から申出があったときは、法務省令で定めるころにより、第 1項及び第2項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定め

る事項を記載しなければならない。

制度概要

・被害者等であることの公的な証明書を添付することが前提

・登記事項証明書は住所に代わる連絡先を表示し、不動産登記情報としては現 不在の住所情報を記録

・本人に対しては現住の住所を記載した証明書を交付する仕組みを検討予定。 【部会資料 (12)8 12)8頁】

登記名義人の住所に代わって登記事項証明書等に記載する住所の例【部会資 料(53)24頁】

・ 登記名義人の親族・知人等の住所

・委任を受けた弁護士事務所や被害者支援団体等の住所

・法務局の住所

対象者の範囲拡大【部会資料 (12)8頁】

・「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」対象被害者

・「ストーカー行為等の規制に関する法律」対象被害者

・「児童虐待の防止等に関する法律」対象被害者

・その他被害者(事態等の公的機関が証明書を発行することが前提)も検討

 不動産登記法の改正( その他新しい規律 3)

1 遺贈による所有権の移転の登記の手続簡略化

(判決による登記等)

第 63条 省略

2 省略

3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転登記は、第60条の規定にかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

2 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

要綱

(法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化)

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続を簡略化するため、法定相続分での相続登記がされている場合において、更正の登記によることができるものとした上で、次に掲げる登記をするときは、登記権利者が単独で申請することが出来るものとし、これを不動産登記実務の運用により対応するものとする。

1 遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記

2 他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記

3 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記

4 相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記

3 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

(1)除権決定による登記の抹消

(除権決定による登記の抹消等)

第 70条 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。

2 前2項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又買戻の特約に関する登記であり、かつされた存続期間又は買戻が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請すべき者の所在が 判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

3 前2項の場合において、非訟事件手続法第106 条第1項に規定する除権判決があったときは、第 60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第1項の抹消を申請することができる。

4 第1項に規定する場合おいて、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。

同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されときも、同様とする。

4 買戻しの特約

(買戻しの特約に関する登記の抹消)

第69条の2 買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から10年を経過したときは、第 60条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

5 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化

(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)

第70条の 2 登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から30年を経過し、かつ、その法人の解散の日から30年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

6 附属書類の閲覧制度見直し

(登記簿の附属書類写しの交付等)

第121条 1項省略

2 何人も、登記官に対し手数料を納付して、登記簿の附属書類のうち前項の図面(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項において同じ。)の閲覧を請求することができる。

3 何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、登記簿の附属書類(第1項の図面を除き電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。次項おいて同じ。)の全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。

4 前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。

5項省略

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