任意後見と民事信託の連携

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

民事信託の仕組み

●委託者の特定の財産の所有権を移転して、受託者(親族等)に管理処分してもらう制度。
●受託者は、信託財産の所有権を取得するが、その所有権から生じる利益が受託者に帰属することはなく、受益者に帰属する。 
●受益者は受託者に対する債権者であり、受益債権を通じて信託財産から利益を享受することになる。

・受託者に所有権が移転する。 受託者は、受益者のために、信託目的に従って、不動産等を管理処分する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 司法書士、弁護士、学者、税理士が集まった勉強会の備忘録です。なお、私は今回の発表者の実務に関しては肯定的ではありません。。Twitterで知った、マウントを取る、という姿勢が無理でした。質問の一部は一番下に掲載しました。

2020年度民事信託勉強会  令和2年9月2日(水)

 後見制度(法定・任意)と民事信託の関係性のイメージ
 民事信託の設定によって、本人から切り離された財産

●後見制度は、財産管理のみならず身上保護(施設入所・入院など)も 対象となるため、本人の生活全般についての支援が可能となる。

●後見人は、本人の全財産を包括的に管理することができるため、財産状況が分からない事案においても、積極財産・消極財産の調査をすることができる。

●後見人は、将来、本人が取得する財産(例えば、相続財産・年金・ 保険金等)も管理することができる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

受託者も、将来、受益者が取得する財産をその都度、信託財産に属する財産として管理することは可能だと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●後見人は投資・投機行為はできない。本人の財産は、本人のた めに安全に管理される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見制度の場合、異なると感じます(任意後見契約に関する法律2条)。民事信託ならば投機行為が出来るのか、分かりません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●後見人は、判断能力が十分でない本人に代わって、遺産分割協議をしたり、訴訟を提起をしたり、高齢者虐待の被害等にも対応することができる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見制度の場合、少し異なると感じます(任意後見契約に関する法律2条)。また、信託法132条、139条。

平成29年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果報告書 

厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
障害福祉課 地域生活支援推進室 

https://www.mhlw.go.jp/content/12203000/000464431.pdf

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●裁判所による監督体制がある。 ➡後見制度は、本人の権利擁護を中心に据えた生活支援を行うた めには、必要不可欠な制度である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少し異なると感じます。(信託法150条、信託法研究34号 新井誠「平成18年信託法と民事信託」信託法学会2010、新井誠「信託法」P389~ 2014年有斐閣)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

民事信託 
特定の財産をめぐる法律関係 
●特定の財産につき目的を定めて受託者に管理処分等を託すものであり、投資用不動産の購入など、後見制度では難しいとされる積極的な財産管理も可能となる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見契約の定め方次第では、可能だと感じます(任意後見契約に関する法律2条)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●民事信託では、特定の財産(信託財産)以外は管理できない。信託を設定しなかった 財産や将来取得する財産(相続財産・年金・保険金など)については、本人が追加信託しない限り、受託者は管理することができない。なお、本人が判断能力を欠く状況になった後は、追加信託をすることはできない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見契約の内容によっては、少し異なると感じます(任意後見契約に関する法律2条)。その他に、信託法146条、139条。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●入院や施設入所等の身上保護、遺産分割・訴訟等の法律行為については、対応できない。➡民事信託は、後見制度を「補完」することは可能であるが、「代替」(=後見制度は不要)となる制度ではない。民事信託でできないことは、後見制度を併用することで解決できる。それぞれのメリットを活かしたスキーム作りが重要である。民事信託特定の財産をめぐる法律関係 ➡信託法には、次のようなことが規定されている。

・・・・・・・・・・・・・・・

信託法132条、139条。民事信託で出来ないことは後見制度を併用することで解決が出来るのか、分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ●誰が受託者になることがきるのか? ➡受託者の資格(§7)※未成年者は不可●どのような信託が禁止されるのか? ➡受託者の利益享受(§8)、脱法信託(§9)、訴訟信託(§10) 詐害信託(§11)

・・・・・・・・・・・・・・・・

民法7条、90条など。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ●信託契約の内容を変更する必要が生じた場合は? ➡当事者の合意による変更(§149)、変更を命ずる裁判(§150)3 3 後見制度(法定・任意)と民事信託の関係性のイメージ

信託法149条3項の範囲

 【どのようにして、信託が終わるのか】  ●信託の終了事由は何か? ➡法定の終了事由(§163)、合意による終了(§164)、 終了を命ずる裁判( § 165)など

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

信託法163条1項9号の範囲

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ●信託が終了した場合に受託者(清算受託者)がすべきことは何か? ➡現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、受益債権に係る債務の弁済、 残余財産の給付(§177)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最終計算の承認(信託法184条)が抜けています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遺言代用信託(§90) 「委託者が死亡した時にBが受益権を取得する」等の定めのある信託 

受益者連続型信託(§91) 「受益者Aの死亡によりAが有する受益権は消滅し、Bが新たな受益権を取得し、B の死亡によりBが有する受益権は消滅し、Cが新たな受益権を取得する」等の定 めのある信託

➡信託契約書の中で、遺言代用信託や受益者連続型信託に関する定めを設けた場合、その定めによって、受益権が承継される。つまり、受益権は受益者の相続人に承継されるのものではない。

➡信託契約書の中で、遺言代用信託や受益者連続型信託に関する定めを設けない 場合は、受益権は相続財産となり、受益者の相続人に承継される。 この場合、受益者は、遺言によって受益権の承継先を決めることができる。 受益者の相続人間の遺産分割協議により、受益権の帰属先を決めることもでき る。(受益者の他の財産も併せて遺産分割協議をすることができる。)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後記「民事信託設定により、遺言は、撤回したものとみなされるので、遺言を活かすことはできない。」との整合性が分かりませんでした。後記のように考えて上の方法を採ると、信託契約は終了してしまうと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4 任意後見で管理する財産と民事信託で管理する財産の 切り分け方の視点 

・信託を設定できる財産か否か 農地・・・農業協同組合等が引き受ける場合を除き、農地は 信託できない(農地法第3条2項3号)。

 年金・・・年金受給権は、一身専属権であり、信託できない。

 預金・・・譲渡制限特約が付されているので、信託できない。 (⇒預金は現金化して、金銭を信託財産とする)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

預貯金債権のことかなと感じます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.法律上は可能であるが、事実上、制限される財産もある。 上場株式、生命保険、担保付の不動産、など。 ➡ 任意後見での管理が望ましい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

生命保険の何を信託財産に属する財産とするのか分かりませんでした。担保付不動産については、金融機関との調整になるので直ぐに任意後見という考えにはならないのかなと感じました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

➁任意代理(財産管理契約)の代替として機能し得るか

 昨今、移行型任意後見契約(任意後見契約が発効するまでの間、任意代理で支援するもの)の問題点が指摘されている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どこで問題とされているのか、分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【問題点】 ●監督制度がない(ただし、LS会員は、監督を受けている。)
●任意後見契約を発効すべき時期にあるにも関わらず、任意後見監督人の選任申立てをせず、任意後見受任者による不祥事が発生している。
➡将来型任意後見契約を原則とし、任意後見契約の発効までの支援を 任意代理ではなく、民事信託によることは可能か?
➡民事信託では、信託監督人・受益者代理人を設置して監督を強化する ことはできるが、実効性は未知数。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「将来型任意後見契約を原則とし、任意後見契約の発効までの支援を 任意代理ではなく、民事信託によることは可能か?」前記の通り、民事信託は、信託財産に属する財産とするには制限があるので、任意代理契約の代替とはならないのかなと感じます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・任意後見の限界を補うことが可能か

 任意後見では、積極的な資産運用や相続税対策は、難しいとさ れる。
➡老朽化した収益不動産の再築、資産の組み替えの予定がある場合は、その財産を民事信託で管理することは有益である。 ただし、一定の限界もある(22頁、52頁参照)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見契約の内容次第では可能だと考えます(任意後見契約に関する法律2条)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Cf. 任意後見制度における財産管理の在り方について、独自の見解を示す論考として、実践 成年後見NO.85(民事法研究会)「任意後見の相談現場からみた利用されるためのポ イント」(司法書士大貫正男)』がある。これまで議論されることが少なかった論点で あり、示唆に富む論考であるので参考にされたい。

・関係者の理解を得られるか、不明瞭な実務上の論点等は無いか、老朽化した収益不動産の再築、資産の組み替えに備えるため、収益不動産を信託財産とするにあたり、担保権者の同意を得られるか?

●被担保債権の扱い(免責的債務引受・併存的債務引受)はどうする か?

●建物を新築する際、信託内融資を受けることはできるのか?

●税務上の問題(債務控除の可否など)は無いのか? ➡金融機関と調整がつかなければ、民事信託で管理する財産とするこ とは難しい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不明瞭な点は、事前に依頼者に伝えておき、その都度対応していくことになると思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

本人(委託者)の意思尊重と本人保護の観点

 本人(委託者)が、任意後見制度を利用することによる負担(親族が担う任 意後見人の事務負担、任意後見監督人の報酬の負担等)を回避するために、 民事信託を利用したいと考えているケース。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

専門家が任意後見人候補になることは不可能なのかなと感じました。任意後見監督人の報酬の負担等について、どのように説明し民事信託の報酬と比較するのか分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この場合、本人(委託者)の大半の財産は民事信託で管理し、その他の財 産管理や身上保護については、監督が及ばない家族の事実上の支援によるこ とになる。しかし、受益者の保護を考えると、果たして、これでよいのか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見制度を利用することで良いのかなと感じました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

➡この点、信託監督人や受益者代理人を設置して、受益者を保護することも 考え得るが、監督の実効性は未知数である。 民事信託で管理する財産の範囲は、本人保護の観点も考慮した上で、慎重 に考えるべきであろう(相談者の私見)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

信託監督人や受益者代理人の族人生によるのかなと感じました。相談者の私見という部分はよく分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【相談者の不安・希望】 
(1)認知症に備えておきたい 
(2)月極駐車場の土地について 相続税対策も視野にいれて、小規模保育所・有料老人ホーム・コンビ ニなどの事業用地として貸してはどうか、収益アパートを建築しては どうか等の提案を受けることがあるが、自分では判断できない。空き が多くなってきた駐車場経営をこのまま続けるのがよいのか、相続税 のことも考え、何らかの対策をしておいたほうがよいのか、売却した ほうがよいのか、悩みは尽きない。 土地活用については、すぐにでも、会社を経営する長男に託したい。

(3)自宅について 可能な限り、自宅で過ごしたい。施設に入所することになっても、 子供等と集まる場所として使いたいので、売却したくない。 維持管理費が負担になるようであれば、売却してもよい。

(4)遺産の承継について 子供等で、そのときの経済状況等に応じて、話し合って決めてほし い。 

連携(事例)

(1)認知症に備えておきたい 兄の相続が開始したときに、相談者の判断能力が低下している場合 は、本人に代わって遺産分割協議を行う後見人等が必要となる。 ➡民事信託だけでは不十分。任意後見の利用が必要となる。

(2)月極駐車場の土地について 移行型任意後見契約で対応することも考え得るが、任意代理の段階 では、実務上、代理人のみで対応することはできず、相談者の負担軽減とはならない。 民事信託を利用すれば、受託者に所有権が移転するので、本人の関 与は不要となり、相談者の負担軽減につながる。

(3)自宅について 本人は居住中であり、月極駐車場の土地のように管理の負担はないので、 受託者名義で管理する必要性は低い。 自宅を信託財産としてもよいが、本事例では信託財産とはせず、必要が生じたときは、任意後見人において売却することにした。 

(4)その他の財産について 株式、投資信託、預金、将来取得する年金・相続財産の管理は、任意後見で対応する。

 相談者は、長男だけに負担をかけたくないと考えていたため、二男 を任意後見受任者、長男を受託者として、役割分担をしてもらうこ とにした。

任意後見受任者:二男 

任意後見で管理する財産:自宅・株式・投資信託・預金 ⇒静的な財産管理 受託者:長男 信託で管理する財産:月極駐車場、現金(当面の維持費相当額) ⇒積極的・柔軟な財産管理 

6 任意後見人と受託者の兼任の可否
 事案によっては、親族が少ない等の理由で、任意後見人と受託者 を別人とすることができない場合もある。
任意後見人と民事信託の受託者を同一人とすることはできるか? ➡任意後見人と信託の受託者を兼務することは原則として不可であろう。

任意後見人は、受益者の代理人として受益者の監督権限等を行使する ところ、受託者を同一人とすると利益相反関係が生じてしまうため。

信託法では、受託者は信託管理人・信託監督人・受益者代理人とな ることはできないと規定されており(法124条、137条、144条)、 任意後見人は受益者代理人に準じるものと考えられるから。 【新井誠・神田秀樹・木南敦編「信託法制の展望」(日本評論社)383頁には「受託者が 任意後見人を兼務することは慎重に扱うべきである」の記載がある。】

②任意後見人の代理権目録から、委託者の権限と受益者の権限を 除外すれば、任意後見人と受託者を兼ねることは可能か? ➡前記➀(ⅰ)の趣旨からすると、利益相反関係は生じないため可能 であるとも考えられる。

実例を有しているが、慎重に検討す べきである。なお、この場合、受益者を保護するために、受益者代理人を設置するのが望ましいと考える。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

実際に経験した際に、慎重な検討は具体的にどのように行ったのか分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf 任意後見人と受託者が兼任する場合において、受益者代理人を設置することについては、司法書士山崎佳乃先生が意見を述べておられるので、参考にさ れたい(信託フォーラムVol.8、44頁)。

 民事信託における任意後見人の役割

➀信託財産以外の財産を管理する。
②受益者を代理して、受託者から受益債権にかかる給付を受ける。
③委託者の権限・受益者の権限を代理行使して、受託者を監督する。
④身上保護を行う。 
⑤登記義務の履行 ※農地法5条の許可を停止条件として、農地を信託した場合において、 条件成就した際の登記の義務の履行、など。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

任意後見契約の内容次第なのかなと感じました(任意後見契約に関する法律2条、例えば登記義務の履行(債務の履行)のみではなく、農地法の許可申請など)。

①で信託財産以外の財産を管理しているのに、②で受益債権にかかる給付を受けることが出来るのがどのような構成を採っているのか分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

専門職の関わり方

➀ 受託者(親族)・任意後見人(親族)・受益者代理人(親族) ➡監督機能を果たすことが可能か?

➁ 受託者(親族)・任意後見人(専門職)・受益者代理人(親族)

③ 受託者(親族)・任意後見人(親族)・受益者代理人(専門職) ➡受託者を監督するだけで十分か?

④ 受託者(親族)・任意後見人(親族)・受益者代理人(親族) 受託者の支援(専門職) ➡専門職が受託者の法律顧問のような役割につくことの重要性。 弁護士山中眞人先生がこの重要性について述べておられるので参考にされ たい(信託フォーラムVol.9、51頁)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

司法書士法上のどの業務として行うのか分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

9 積極的な財産管理のために民事信託を活用 する場合の留意点

➀ 成年後見制度では難しいとされる積極的な財産管理を民事信託を活用して 行う。これは、スタンダードになりつつあると思われるが、実務上の論点等を知った上で、活用することが重要である。

(1)積極的な財産管理とはいえ、無制限ではないことを理解しておくこ と。➀受託者が受益者以外の者に対し、暦年贈与することは可能か? ➡不可 ∵信託は、受益者のための制度であるから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



考え方が逆だと考えます。信託行為の受託者の事務に定めておくことで暦年贈与(例えば、大学在学中は暦年贈与する)し、その間は受贈者は受益者になるという構成だと考えます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

cf.商事信託における暦年贈与の信託商品は、受益権の一部の贈与を受 けた者に対し、金銭を給付する等の仕組みとなっており、受益者以 外の者に給付するものではない。

②受益者の一族の資産管理会社のために信託財産を利用(ex担保提供等) することは可能か?

受託者は、受益者のために財産を管理処分しなければならないため、受益者以外の第三者の債務のため 信託不動産に担保設定することは、受益者の利益に反して第三者の利益を図ることになり、そもそも信託 の目的(趣旨)に反することになる。

そのため、旧信託法時代(平成18年以前)の登記実務では、受益者以外の第三者を債務者とする担保設定の登記は認められていなかった。 信託法では、受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必 要な行為をする権限を有するものとされ、その権限の範囲が旧信託法のそれと比較して拡大されている。

一方、受託者は、受益者のために忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならず(信託法30 条)、受益者保護のため一定の行為が禁止されている(31条)。受託者による第三者を債務者とする抵 当権の設定の登記は、形式的には受益者の利益が害されることとなり、禁止行為である利益相反行為に該 当するが、絶対的に認められないというわけではなく、信託行為をもって当該利益相反行為を許容する旨 の定めがあれば、かかる登記は認められるものと解される(信託法31条2項参照)。(信託に関する登 記(第二版)横山亘著622頁から引用)

信託法31条2項の利益相反行為を許容する旨の定めは、信託の目的の達成のために必要で受益者の利 益を害しないものとして想定されるものを予め信託行為に明記しておくものである。この許容する旨の 定めは、受託者の利益相反行為の禁止を解除するだけであり、この定めにより受託者が自己または第三 者の利益を図る行為までを許容するものではない(道垣内弘人「信託法」有斐閣212頁)。

したがって、信託行為において、受益者の一族の資産管理会社の債務を担保するため、受託者が信託 財産に属する不動産に担保権を設定することができる旨の定めを設ける場合は、受益者の利益と信託の 目的との関係性にも配慮する必要があると考える。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

登記が認められるだけでなく、信託行為に定めがあり、信託目的に適合し、受益者の不利益にならない行為であれば、法律上、形式上、事実上、実体上可能だと感じます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【問題のある事例】
信託の目的:受益者の生活支援と福祉の確保

受託者の権限:受託者は受益者の生活に必要となる金銭を信託財産から給付する。生活に必要のない余剰の信託財産は、一族の資産管理会社のために使うことができる。 上記のような趣旨の条項を見かけることがあるが、このような受託者の権限の定めは、信託の目的との関係においても、問題であると思われる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「生活に必要のない余剰の信託財産は、一族の資産管理会社のために使うことができる。」というような条項が存在しているのか分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



出口(残余財産の帰属)の難しさを理解しておくこと。

【一般的な帰属権利者の定め方】

①帰属権利者としてAを指定する

②帰属権利者としてAを指定する。Aが死亡しているときはBを帰属権利者と して指定する。等々 ➡このような定めでは対応できない場合がある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一般的な定め方ではないと感じます。書籍などでもあまり見かけたことがありません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【問題のある条項例】

委託者兼受益者Aの死亡により、信託は終了する。 信託財産は、Aの相続財産に組み込まれ、遺産分割協議によって帰属を決定する。

このような条項を書籍などで見かけたことがないのですが、どのようなところから作成されたのか分かりませんでした。

(問題点) 信託財産がAの相続財産に戻ることはないため、遺産分割協議によることはできない。

【問題のある条項例】 残余財産の帰属権利者は、委託者Aの法定相続人とする。 取得する財産の種類・割合については、遺産分割協議によって定める。

このような条項を書籍などで見かけたことがないのですが、どのようなところから作成されたのか分かりませんでした。

(問題点) 残余財産は、信託行為の定めによって法定相続人に物権的に帰属するもので あり、遺産分割によって、取得する財産の種類・割合を決めることはできな い。

【問題のある条項例】 
残余財産の帰属権利者は、委託者Aの法定相続人とする。 取得する財産の種類・割合については、帰属権利者間の協議によって定める。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このような条項を書籍などで見かけたことがないのですが、どのようなところから作成されたのか分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(問題点) 帰属権利者間で財産の取得の内訳を協議した場合の、法律上・税務上の規定が存在しない。遺産分割と異なり、遡及効の規定はないので、「被相続人か ら取得した」と扱うことができないリスクがあることに注意すべきである。

【以上の問題点の解決策と課題】
➀残余財産の帰属権利者は、「信託終了時の受益者」とする。
➁信託行為では受益権の承継先を指定せず、受益権を相続の対象とする。

③受益者死亡後、遺産分割によって、その受益権を取得する者を決する。

④遺産分割後、信託当事者の合意により、信託を終了させ、帰属権利者(信託 終了時の受益者)に信託財産を引き継ぐ。 ➡この方法によれば、相続人間の協議で信託財産の引継ぎを受けるものを決す ることができ、また、帰属権利者の協議による場合の課税上の問題(50頁 参照)も生じない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遺産分割協議を行うのであれば、任意後見契約で代替できる可能性も一定程度出てくるのかなと感じます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【以上の問題点の解決策と課題】 
法定相続人の一人が残余財産の全てを取得するのであれば、上記の方法で対応することができる。しかし、「収益アパートは相続人A、自宅は相続人Bが取得したい」という場合は、この方法では対応できない。

これは、受益者は受託者に対する債権者であり、受益債権を通じて信託財産全体から利益を享受することになる以上、個々の信託財産に紐づいた受益権なるものは観念できないからである。➡あらゆる財産を信託財産とすると、「出口」で困るこ とがある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「受益者は受託者に対する債権者であり、受益債権を通じて信託財産全体から利益を享受することになる以上、個々の信託財産に紐づいた受益権なるものは観念できない」という根拠がよく分かりませんでした。受益権の内容の条項で定めることが出来るのではないかと感じました。受益権を割合ではなく個数で分けることが出来れば可能と考えます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 遺言と民事信託の併用の失敗事例

【事例】⇒遺言作成後、直ちに民事信託の設定を行うスキーム

➡このスキームは、委託者死亡によって信託を終了させ、信託財産を亡委託者に戻し、 遺言の内容によって信託財産を承継させることを意図している。

遺言と民事信託の併用の失敗事例
【スキームの問題点】

●民事信託設定により、遺言は、撤回したものとみなされるので、遺言を 活かすことはできない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「民事信託設定により、遺言は、撤回したものとみなされる」については、信託財産に入っていない財産については遺言の効力は活きるので(民法1023条)、少し違うのかなと感じます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●帰属権利者を亡委託者と指定しているが、死者は権利の主体とはなり得ない。 帰属権利者の定めがないものとして、信託法第182条第2項により、委託 者の相続人に帰属することになる。つまり、「甲不動産・乙不動産は長男に 相続させる、丙不動産・丁不動産は二男に相続させる。」の希望は実現できないことになる。

➡民事信託の設定する際の検討が不十分である。 組成に関与した専門職が対応できず、他の専門職が信託終了に関する登記等 を対応しているケースがままある。

最後に 

民事信託は、歴史も浅く、判例の蓄積もないため、まだま だ手探りの状態で実務を行っている。 信託の魅力を引き出そうとすると、どうしても、内容が複雑になりがちで、その分、不確定要素が多くなる。

講師の個人的なスタンスとしては、民事信託を利用する場 合、他の法律との抵触や問題が生じないようするため極力 シンプルな内容とするようにしている。 信託を活用するにあたり、信託法の知識はもちろん、最新の実務上の論点をおさえておくことが大切である。


質問
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
受託者が受託者以外の者に対し、暦年贈与は可能か?→不可について
可能だと考えます。暦年贈与を受けた者が受益者に加わるので、考え方が逆ではないでしょうか。

回答・・・受益権を譲渡した後に、暦年贈与を受けるなら、OK

あなたのように、司法書士を対象としてセミナーを個別で開き、信託の学校と称して月額会費、相談料を取っている場合、実質的に信託監督人のような立場として責任が生じませんか?

回答・・・講義と関係がない。

残余財産は、信託行為の定めによって法定相続人に物権的に帰属するものであり、遺産分割協議は出来ない。の根拠は?

回答・・・遺産の共有状態にならないから、遺産分割協議は出来ない 私見。

受益権は一本ではないのでは?信託行為で定めることが出来る。

回答・・・資産の組み換えで、信託終了時の財産の特定が出来ない可能性がある。から一本にした。私見

民事信託設定により、遺言は、撤回したものとみなされるので、遺言を 活かすことはできない、というのは違うのでは?信託財産に重複する部分だけでは?

回答・・・遺言は撤回されたとみなされる。私見。全て相続させるとしても、無理。