登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(7)」について、考えてみたいと思います。
4.信託の条項
1.信託の目的(省略)
2.信託財産の管理方法
受託者の善管注意義務は自己の財産に対するのと同一の注意義務まで軽減する。
3.信託の終了の事由(省略)
4.その他の信託条項(省略)
受託者の善管注意義務違反それ自体は、信託法29条2項に規定される法律上の義務である。それを第三者に公示しても、何らの信託法上の効果を生じない。登記手続上も、後続登記申請との関係において何らの機能を有しない。また、同項但し書きによる信託行為の別段の定めも、同様に、不特定多数の第三者に対して公示すべき登記事項ではなかろう。後述する登記連続主義に基づく連続構造にも関わらないので、手続的な意味での登記事項でもない。
善管注意義務その他の条項において、信託行為の関係者が観て分かるように信託目録に記録する、ということもあると聴いたことがあるような気がしますが、不動産登記制度の目的からいえば、第三者対抗要件として記事記載の通り、必要な事項のみを記録することが妥当だと思います。
しかしながら、かつて、一部の資格者代理人からは、信託設定に対して、信託の対象となるべき財産の所有権の移転は不要であると教示されたような事例もあり(資格者代人の法令実務精通義務違反)、当事者は信託が成立したと思っていても、実は民事信託が有効に成立していない事例もあった。
信託の設定の方法である信託契約の内容も、売買や抵当権設定に関する契約などと比べて、それ自体が極めて複雑である。また、従来、理論の場において、信託であることの要件を探求する際には、信託銀行などが受託者となる営業信託が想定されてきたような事情もあろう。
上の文章は、信託法(平成十八年法律第百八号)下での民事信託に当てはまるのか、分かりませんでした。
第45回帝国議会 衆議院 本会議 第15号 大正11年2月21日
https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/#/detailPDF?minId=004513242X01519220221&page=21
[1] 889号、令和4年3月、(株)テイハン、P71~