民事信託の登記の諸問題(15)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(15)」からです。

受託者は、信託目的達成に必要な行為である処分しかできない、という内在的制約がある。しかしながら、受託者による当該処分が、信託目的達成のために必要な行為であるか否か、一義的な判断は難しい。登記の形式主義の下、いかにして当該処分の有効性を判定すればよいのだろうか。

 登記の形式主義というのは、必要な情報が提供されていれば、登記される、ということだという理解で進めてみたいと思います。登記申請の代理業務において、事実と実体法上の確認・判断は資格者代理人により行われ、登記された後で納得できない方には、権利行使の機会があるように設計されているのだと考えます(信託法8条、27条、40条、58条、92条に列挙されている事項、163条から166条、民法1条、90条、415条、709、858条から866条など)。

△整合性の解釈が難しい要約例

4信託条項

信託の目的 高齢者の生涯に亘る住居の安定的な提供

信託財産の管理方法

受託者の権限 高齢者の居住する信託不動産を売却することができる。

 特定の不動産を指しているわけではないので、新しい住居を用意した上での売却するであれば、問題にはならないのではないかと考えられます。

賃貸物件からの収益を受益債権として定期給付する信託目的に対して、その収益源である当該賃貸物件を売却することは、信託目的の達成に必要な行為とはならない、と評価できそうである。

 何十年という期間にわたり存続する可能性がある信託行為の目的で、生涯に亘る、などの用語の使うのは、難しいのではないかと感じます。ただし、委託者の意思が、生涯、が条件でありそれが達成できないのであれば、信託を終了する、という信託行為であれば良いのかなと思います。


[1] 令和4年11月、897号、テイハン、P51~

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