第201回国会(常会)において成立した法律

 

衆議院HP 2020年6月19日閲覧 加工

http://www.shugiin.go.jp/internet/index.nsf/html/index.htm

 

家畜伝染病予防法の一部を改正する法律 交付の日に施行

養豚農業振興法の一部を改正する法律 公布の日から施行

地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律 効力を令和七年三月三十一日まで延長

国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律 令和二年五月一日から施行

令和二年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律 公布の日から施行

公職選挙法の一部を改正する法律 公布の日から起算して六月を経過した日から施行

防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法 公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行

令和二年度ひとり親世帯臨時特別給付金等に係る差押禁止等に関する法律 公布の日から施行

外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律 令和2年5月29日公布

地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 2月 5日公布

平成三十年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律 令和 2年 2月 5日公布

所得税法等の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

防衛省設置法の一部を改正する法律 令和 2年 4月24日公布

国家戦略特別区域法の一部を改正する法律 令和 2年 6月 3日公布

地方税法等の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

地方交付税法等の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

関税定率法等の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

国際金融公社への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

労働基準法の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

雇用保険法等の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

土地基本法等の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律

 令和 2年 5月20日公布

道路法等の一部を改正する法律 令和 2年 5月27日公布

電波法の一部を改正する法律 令和 2年 4月24日公布

裁判所職員定員法の一部を改正する法律 令和 2年 4月24日公布

在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 3月31日公布

文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律

 令和 2年 4月17日公布

持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律 令和 2年 6月 3日公布

都市再生特別措置法等の一部を改正する法律 令和 2年 6月10日公布

特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律 令和 2年 6月 3日公布

特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律 令和 2年 6月 3日公布

株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律 令和 2年 5月22日公布

家畜伝染病予防法の一部を改正する法律 令和 2年 4月 3日公布

強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律 令和 2年 6月12日

電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 5月22日

無人航空機等の飛行による危害の発生を防止するための航空法及び重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の一部を改正する法律 公布日未定

マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律 公布日未定

地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律 令和 2年 5月27日公布

地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 令和 2年 6月10日公布

復興庁設置法等の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日公布

年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律 令和 2年 6月 5日公布

家畜改良増殖法の一部を改正する法律 令和 2年 4月24日

家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律 令和 2年 4月24日

道路交通法の一部を改正する法律  令和 2年 6月10日

割賦販売法の一部を改正する法律 公布日未定

金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

公益通報者保護法の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 公布日未定

森林組合法の一部を改正する法律 令和 2年 6月 3日

新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律 令和 2年 3月13日

科学技術基本法等の一部を改正する法律 公布日未定

個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律 令和 2年 6月12日

中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律 公布日未定

大気汚染防止法の一部を改正する法律 令和 2年 6月 5日

新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律 令和 2年 4月30日

地方税法等の一部を改正する法律 令和 2年 4月30日

株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律 公布日未定

金融機能の強化のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律 公布日未定

新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律 令和 2年 6月12日

遠藤英嗣先生「民事信託の基礎と実務」講義メモ

6月17日、(一社)民事信託推進センターの実務入門講座が、zoomを利用してオンライン生中継で行われました。運営の皆さまありがとうございます。

ついに物理的な距離がなくなって、個人的には嬉しいことです。

内容メモ

・相続は(換金可能性が高い)財産がないほど苛烈に揉める。

そのようなことは一概にはいえないと思います。もともと財産が少ない人の割合の方が多いと思います。遺産分割調停などに持ち込まれる事件の割合と相関があるのか、調べてみないと断言出来ないと感じました。

・遺言は効力を失った。

相続法改正を踏まえてのことだと思いますが、効力は失ってないし登記を先にすれば良いことだと思います。また法定相続分の登記が先にされたとしても、第三者に対抗することが出来ないだけで、当事者同士で和解、強制執行などの解決方法はあるのではないかと考えます。

・家族信託の3つの成立要件のうちの1つ、受託者と受益者の信認関係が確立されていること。受益者代理人が設置されていること。

遠藤弁護士は、提携している金融機関で家族信託をチェックする立場からこのことを成立要件の1つとしていました。信認関係についての具体的基準は示されません。受益者代理人を選任することが出来る、と信託契約書に入っていて、内容がよっぽど受託者中心でない限り、金融機関のチェックは通るのかなと感じました。個人的には、受益者代理人は必須ではないし、置く場合は慎重になる必要があると考えます。東京に事務所がなくて良かったと感じました。

・誰のものでもない財産

私の考えでは、民法上は受託者の財産です。税法上は受益者の財産です。

・物がないと信託は成立しない

譲渡制限のついていない、法律上制約がない債権はどうなるのかなと感じます。

・信託の目的と信託の設定目的がある

信託の目的は信託法上の目的で、信託の設定目的は信託を設定するにいたった目的のようでした。ここは理解できませんでした。

・信託の変更と信託行為の変更がある

ここも理解出来ませんでした。

・受託者と受益者の合意による信託の終了はだめ

遠藤弁護士は、提携している金融機関で家族信託をチェックする立場からこのことを指摘していました。理由は終了基準が曖昧だから、受益者が認知症になっていた場合は受益者の意思に反することになるから、ということでした。

「その他信託法による終了事由により本信託は終了する。」などを追加することで解決できるのではないかと感じました。

・自筆遺言証書保管制度は使えない

理由は、利用者が書類を揃えることが大変なこと、相続人が適切に処理することは難しい、ということでした。

個人的に問題ないと感じました。

1行で書いていますが、文脈は捉えているつもりです。間違っていたら指摘していただきたいと思います。

唯一残念だったのは、みんながオンラインで同じ時間にみているのに、チャットが運営の方しか見えないようになっていたことです。これでは同じ時間に観る意味があまりありません。講師に質問は出来ないとしても、受講者同士でやり取り出来る環境は必要だと感じました。私は1人でチャット欄に書き込んでいました。

「信託管理人・信託監督人・受益者代理人制度の隙間問題への実務的対応」について

田中和明「信託管理人・信託監督人・受益者代理人制度の隙間問題への実務的対応」[1]について、考えてみたいと思います。

信託管理人、信託監督人、受益者代理人の制度について、制度創設の理由から、信託法の解釈から出来ること、出来ないことが簡潔に分かりやすく解説されていると感じました。

・隙間問題はどこか。

下線は私です。

p9 ―民事信託の実務においては、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託のように、信託期間が長期にわたり、かつ、現存の受益者と将来に受益者となるべき者とが存在するような信託においては、これらすべての受益者となるべき者の公平を勘案しながら、数十年の長期間にわたり、受益者への金銭交付の時期・金額・方法等を定める権限を有する者や受益者指定権・変更権を行使する者が求められている。

 このような場合、信託管理人、信託監督人、受益者代理人、さらには、信託行為の定めにより授権した第三者が、この役割を担うことが想定される。

 しかし、私見はさておき、前述したとおり、学説の通説的見解では、信託管理人、信託監督人のいずれも、この役割を担うことはできないものと解されている。-

・すべての受益者となるべき者の公平を勘案しながら、数十年の長期間にわたり、受益者への金銭交付の時期・金額・方法等を定める権限を有する者や受益者指定権・変更権を行使する者が求められているのか。

それを行うのが受託者の仕事なのかなと感じます。

著者は、これらの権限を持つ者を信託監督人が兼任することを提唱されています。信託監督人に適正な人(法人を含めます。)を充てることが可能であれば、機能すると考えます。想像ではありますが、信託監督人には専門職の士業などが想定されているのではないかと思いました。

一般市民は受託者の仕事でも簡単ではないのに、受益者を指定・変更したり将来の受益者との公平を勘案することは、少し難しく感じます。私が信託監督人なら、現段階では無理です。

私がやるとすれば、任意後見契約の同意権目録に記載して、任意後見監督人に行ってもらいます。信託監督人を就ける必要がある民事信託・家族信託の状況によって使い分けを行えるようになると、幅も広がるのかなと感じます。


[1]  『市民と法123号P3~』2020年(株)民事法研究会

民事信託の契約書と登記

登記ができない信託契約書という記事について

以下、私が加工した記事です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「登記ができない信託契約書」

登記が難しい信託契約書がある?!あります。

不動産の信託で、せっかく信託契約書を作っても、登記できなかったら困りますよね。今日のポイントを踏まえておくと、司法書士以外の人が信託契約を作るとき役立つと思います。

そうじゃないと、

「この信託、どうやって登記すんの??」

ということになりかねません。

そうゆう信託契約に時々遭遇することがあります。

意識すべきは、不動産登記法97条ですね。1号〜11号まであり、民事信託で特に重要なのは以下。

(信託の登記の登記事項)

第九十七条 信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。

一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所

(中略)

八 信託の目的

九 信託財産の管理方法

十 信託の終了の事由

十一 その他の信託の条項

ちなみに第五十九条は、登記の目的や、申請の受付の年月日及び受付番号、登記原因及びその日付、などですから、あまり気にしなくていいです。

良くあるのは、管理方法の定めが分散して書かれていること。97条の9号は「信託財産の管理方法」これを登記しなければなりません。維持保全するとか、売却していいとか、担保に入れていいとか。売却を目的とする信託なのに、売却できる旨を登記しておかないと、大変です。信託して、その後、買い主も見つかり、信託財産を売買する所有権移転登記を申請しても法務局から電話がかかってきて「これ移転登記できるんですか?」ということになりかねません。

つまり、売買がパー。(誰が責任をとるんだ?)ですから、「信託財産の管理方法」の登記は重要です。

ところがです。

信託登記のことを意識しないで作られた信託契約書は、管理方法が、あちこちに分散して書かれていることがあります。

どれが管理方法に関する条項なのか、1条ずつ、じっくりと読み解かなければならなくなります。

司法書士が作った信託契約書なら、自分で登記するから、それはそれでいいでしょう。自分の責任を自分でとるのですから。

でも、信託契約書を作って、信託登記を別の司法書士に頼む場合は、ちょっと大変。人間ですから、ヒューマンエラーがあります。

もちろん司法書士も注意深く登記事項を拾うんでしょうけど、人間ですから。(苦笑)万一、漏れがあると、後で困ってしまいます。

気づいて、後で更正の登記をするにも、委託者が認知症だったりして・・・

内容によっては、委託者の承諾書が必要な場合もありますので。登記って、登記された内容が正しかったかどうかは、チェックする仕組はありませんから(あくまで人間による、確認)注意しなければいけないんですよね。

そのためには、「間違われない信託契約書」「登記しやすい信託契約書」を作ることが重要です。

となると、

八 信託の目的

九 信託財産の管理方法

十 信託の終了の事由

少なくとも、この三つの項目は、それぞれまとめて書いておくといいですね。

 こんな契約書は登記が大変

信託財産の管理方法(っぽいこと)があちこちに分散されて書いてある契約書。「これも管理方法なの?」と、信託登記をする司法書士が、一個ずつ判断しなければなりません。信託の目的もしかり。

目的みたいなことがあっちの条項にも、こっちの条項にも書いてあると登記するとき、拾い出さなければいけません。

終了事由もそうですね。一つの条項でまとめて書いておくべきですね。

条件をつけて、「この場合は終了しない」なんて項目が、別の条項に書いてあると、ちょっと大変ですね。

 司法書士的に問題なのは11号

不動産登記法97条の十一 その他の信託の条項は何を登記したらいいのか?

しかもこれについて解説した書籍がない!もう、経験を積み重ねるしかないですね。これについては、話すと長くなりますから、また別の機会にしたいと思います。

おすすめ書籍はこちら。

信託登記の実務

 信託登記実務研究会 (著) 日本加除出版

信託登記するときはよく読んでいます。

信託登記の申請書の作り方については、ビデオセミナーを作っていますよ。

12,000円

・設定時・変更時・売却時・終了時について解説しています。もちろん、ひな形もワード形式で提供!

抹消1件分くらいの金額です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

というようなことが書いてありました。

「登記ができない信託契約書」と「登記が難しい信託契約書」は、違うのかなと考えます。

「そうゆう信託契約に時々遭遇することがあります。」

時々とは、10件ぐらいでしょうか。

「信託して、その後、買い主も見つかり、信託財産を売買する所有権移転登記を申請しても法務局から電話がかかってきて「これ移転登記できるんですか?」ということになりかねません。」

登記について気付くとしたら、(受益権)売買契約を締結する段階だと思います。

全部事項証明書を取得して信託登記がされている。宅地建物取引士と買主は、手付金支払前か、売買契約前に司法書士に確認することになります。買主が融資を受けるとしたら、金融機関が司法書士にチェックを依頼することになります。

「信託財産の管理方法(っぽいこと)があちこちに分散されて書いてある契約書。「これも管理方法なの?」と、信託登記をする司法書士が、一個ずつ判断しなければなりません。信託の目的もしかり。目的みたいなことがあっちの条項にも、こっちの条項にも書いてあると登記するとき、拾い出さなければいけません。」

ここについては、作成した方にメールで確認を取ることで足ります。商業登記でも、新株予約権の内容の中から、何を登記するのか、しないのか事前に確認を行うことになります。

・信託財産の管理方法については、条項の内容が任意規定である場合に、これと異なる管理・処分の方法の定めが信託行為に存在する場合に、それが登記事項になる[1]、というのが最初の考え方になると思います。ここから出発して注意書きとして法定されている条項も登記するのか、考えていくことになります。

「司法書士的に問題なのは11号 不動産登記法97条の十一 その他の信託の条項は何を登記したらいいのか?しかもこれについて解説した書籍がない!もう、経験を積み重ねるしかないですね。これについては、話すと長くなりますから、また別の機会にしたいと思います。」

その他の信託の条項についても、信託財産の管理方法と考え方は同じです。

渋谷陽一郎『信託目録の理論と実務』平成26年 民事法研究会その他の論文を探せばあります。そこから、不動産登記法97条1項1号から10号までを除いた部分がその他の信託の条項、というのが考える出発点になると思われます。

「12,000円」

経済を回すには良いのかなと思います。開業当初、司法書士会費を1回滞納した私は、本を買って論文を書くことします。本は残るし論文は実務年数と関係ないので、開業当初の時間があるときから取り組んでおけば良かったと思います。

12,000円。収入が安定してきて、初めて登記研究の定期購読を申し込むことが出来た時を思い出しました。ありがとうございます。


[1] 七戸克彦監修『条解不動産登記法』P604 2013年 弘文堂

鑑定について

鑑定(かんてい)について[1][2]、考えてみたいと思います。

法律用語辞典[3]では、一般には、特別の知識経験を有する者が、その知識経験により知り得る法則又はこれに基づく事実について判断を行うこと、と定義されています。

注2では、あなたのこの事案について私はこの方法で対処することが良いと思うということがいえる、ということが鑑定だと定義されています。

注1では、法律専門家としての法律判断、と定義されています。

行政先例としては、昭和29年1月13日民事甲2554号民事局長回答があります。一部抜粋します。いかなる趣旨内容の書類を作成すべきかを判断することは、司法書士の固有の業務範囲には含まれないと解すべきであるから、これを専門的法律知識に基づいて判断し、その判断に基づいて右の書類を作成する場合であれば、弁護士法72条の違反の問題を生ずる。

判例としては、高松高裁昭和54年6月11日判決があります。一部抜粋します。

司法書士が行う法律的判断作用は、嘱託人の食卓の趣旨内容を正確に法律的に表現し司法(訴訟)の運営に支障を来たさないという限度で、換言すれば法律常識的な知識に基づく聖女的な事項に限って行われるべきもので、それ以上専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法で担任間の法律関係に立ち入る如きは司法書士の業務範囲を超えたものといわなければならない。

以上、いくつか定義を挙げてみました。他にも様々な定義があります。

ここまで整理して1ついえることは、鑑定と呼ばれているものに対して、弁護士法72条に違反してはならないこと、違反しないためには司法書士制度に根拠が必要なことです。

民事信託・家族信託の業務にしぼります。

いくつかの場面を思い出してみます。

・司法書士会などを通さずに、司法書士が司法書士に対してセミナー、相談、信託契約書のチェック、登記申請書のチェック、共同受任という名前の司法書士の監督人を行って〇万円から○○万円をもらうこと。

私が合格当初に研修で入った事務所の先生は恐いけど商業登記では有名らしい方でした。司法書士同士の勉強会も積極的に主催していました。事務所には、司法書士からの質問のFAXが毎日のように来ていました。この先生がお金を貰ったところを見たことがありません。

・電話で、「自分で公証人役場とかいって信託契約書は作った。チェックして欲しい。」と言われた場合。結局は来ませんでした。

・信託中に、受託者を変えようと思っているんですけど、と受益者から相談があった場合。話を聞いてみましたが、信託契約書を示しながら、変えることは出来るし、変えた場合はこうなる、ということは言いました。未だ変更なしです。

・事務所のホームページを読みこんでいただき、ある程度の知識を持って民事信託を利用するつもりで相談に来られる人と、ほとんど分からないけれど遺言との違いを教えて欲しい、と相談に来られる人。相談の内容が大分変ります。後者の方が鑑定に含まれるようなことを訊かれることが多いです。

・宅地建物取引士と経営コンサルタントが民事信託の流れを図に書いて、信託契約書の作成と不動産登記申請を依頼された場合。報酬も勝手に決められていたので断りました。不動産登記申請の仕事を受任していた宅地建物取引士とも関係を切りました。

ここまで書いてきて、私には、鑑定(法律判断)と書類作成(法的整序)の違いを明確に答えることが出来ません。

逆回りで、鑑定と評価され得る場合はどのような場合か考えてみます。

・依頼者から「あの時、先生にこの方が良いと言われたから。」と言われたら場合。

・関係者から、「あの司法書士が勝手にやった。」と言われた場合。

・司法書士から、「あの先生の有料チェックを受けています。あの先生に有料相談をして、回答の通り業務を行っています。」と言われた場合。

民事信託契約書の場合は、公正証書にする(公証人の前で本人が印鑑を押す)のが現在の一般的実務なので、代理している感覚が薄くなるのかもしれません。

評価から考えて、司法書士は主観的には適法だと認識して民事信託支援業務を行っていることを前提とします。

司法書士の認識が適法だと認められるには、どのような事実が必要なのか、少し考えてみます。野口雅人「民事事件における書類作成業務」[4]を参考にします。

・法令・判例の立場を理解した書類を作成する。

・作成した文書のうち、原本があるもの(公正証書)などを預からない。

・依頼者以外の関係者から民事信託に訊かれた場合、依頼者が答えられるような書類を作成する。

・文書の送達、メールの送信は依頼者から行ってもらう。

・成功報酬型の報酬基準を取らない。見積書も積立て型にする。登記申請の代理と、信託契約書などの書類作成については見積書を別にする。

自分自身気を付けたいと思います。


[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(1)」市民と法123号 2020年6月(株)民事法研究会

[2] 斎木賢二ほか「司法書士法改正と司法書士制度の未来(上)」市民と法122号 2020年4月(株)民事法研究会

[3] 法令用語研究会編『法律用語辞典第4版』2012年(株)有斐閣

[4]『月報司法書士』2017年1月号


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