民事信託の登記の諸問題14

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(14)」からです。

不動産登記令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416CO0000000379

申請情報

第三条 登記の申請をする場合に登記所に提供しなければならない法第十八条の申請情報の内容は、次に掲げる事項とする。

一 申請人の氏名又は名称及び住所

二 申請人が法人であるときは、その代表者の氏名

三 代理人によって登記を申請するときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名

四 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、申請人が代位者である旨、当該他人の氏名又は名称及び住所並びに代位原因

五 登記の目的

六 登記原因及びその日付(所有権の保存の登記を申請する場合にあっては、法第七十四条第二項の規定により敷地権付き区分建物について申請するときに限る。)

七 土地の表示に関する登記又は土地についての権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項

イ 土地の所在する市、区、郡、町、村及び字

ロ 地番(土地の表題登記を申請する場合、法第七十四条第一項第二号又は第三号に掲げる者が表題登記がない土地について所有権の保存の登記を申請する場合及び表題登記がない土地について所有権の処分の制限の登記を嘱託する場合を除く。)

ハ 地目

ニ 地積

八 建物の表示に関する登記又は建物についての権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項

イ 建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)

ロ 家屋番号(建物の表題登記(合体による登記等における合体後の建物についての表題登記を含む。)を申請する場合、法第七十四条第一項第二号又は第三号に掲げる者が表題登記がない建物について所有権の保存の登記を申請する場合及び表題登記がない建物について所有権の処分の制限の登記を嘱託する場合を除く。)

ハ 建物の種類、構造及び床面積

ニ 建物の名称があるときは、その名称

ホ 附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積

ヘ 建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積(トに掲げる事項を申請情報の内容とする場合(ロに規定する場合を除く。)を除く。)

ト 建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称

九 表題登記又は権利の保存、設定若しくは移転の登記(根質権、根抵当権及び信託の登記を除く。)を申請する場合において、表題部所有者又は登記名義人となる者が二人以上であるときは、当該表題部所有者又は登記名義人となる者ごとの持分

十 法第三十条の規定により表示に関する登記を申請するときは、申請人が表題部所有者又は所有権の登記名義人の相続人その他の一般承継人である旨

十一 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる事項

イ 申請人が登記権利者又は登記義務者(登記権利者及び登記義務者がない場合にあっては、登記名義人)でないとき(第四号並びにロ及びハの場合を除く。)は、登記権利者、登記義務者又は登記名義人の氏名又は名称及び住所

ロ 法第六十二条の規定により登記を申請するときは、申請人が登記権利者、登記義務者又は登記名義人の相続人その他の一般承継人である旨

ハ ロの場合において、登記名義人となる登記権利者の相続人その他の一般承継人が申請するときは、登記権利者の氏名又は名称及び一般承継の時における住所

ニ 登記の目的である権利の消滅に関する定め又は共有物分割禁止の定めがあるときは、その定め

ホ 権利の一部を移転する登記を申請するときは、移転する権利の一部

ヘ 敷地権付き区分建物についての所有権、一般の先取特権、質権又は抵当権に関する登記(法第七十三条第三項ただし書に規定する登記を除く。)を申請するときは、次に掲げる事項

(1) 敷地権の目的となる土地の所在する市、区、郡、町、村及び字並びに当該土地の地番、地目及び地積

(2) 敷地権の種類及び割合

十二 申請人が法第二十二条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、当該登記識別情報を提供することができない理由

十三 前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の申請情報欄に掲げる事項

別表(第三条、第七条関係)

信託に関する登記

信託目録に記録すべき情報が添付情報であるとすれば、一体、信託登記における申請情報とは何だろうか。

 不動産登記令4条に定められている事項となります。不動産登記令別表(第三条、第七条関係)信託に関する登記において、申請情報は規定されていません。

どうして不動産登記令では、信託目録に記録すべき情報が添付情報とされているのだろうか。不動産登記法という法律と不動産登記令という政令との間に「捻じれ」があるのか、ないのか。

 不動産登記法97条に定められている信託の登記の登記事項を、明らかにするための信託目録という位置付けであり、申請情報の内容ではなく添付情報として提供する政令の定めであると思われます[2]

信託目録に記録すべき情報が信託内容の公示を目的としているとすれば、公示されるべき内容として、当該情報は申請情報の地位を与えられて然るべきではないか。

 信託目録に記録すべき情報が、信託内容の公示を目的としているのか、分かりませんでした。不動産登記法は必要最低限の申請情報、登記すべき事項を定めており、その他の情報については信託目録に委ねているようにみえます。不動産登記令では信託の登記についての申請情報について定めがないので、制定当初はその必要性は考えられていなかったのかもしれません。

例えば、受託者の実体的な属性情報である報告義務、書類作成義務、一般的な忠実義務、善管注意義務、公平義務などに関する情報を、信託目録に記録すべき情報として提供することは無意味であり、誤りである(資格者代理人の法令実務精通義務違反)。

 一般的な、とあるので別段の定めなどはないものと想定します。第三者へ公示する目的を考えると、無意味である可能性はあると感じます。誤りかというと、分かりません。不動産登記法97条1項11号は、同法同条1項1号から10号以外の信託の条項、という制限以外の定めを置いていないからです[3]。法令実務に精通する義務の違反は、懲戒事由(司法書士法2条)でもあり、慎重な判断が必要だと思います。

この点、信託目録に記録すべき情報の存在によって、信託登記は、実体に一番近い登記であると思われがちであるが、実は、それらの情報は極めて形式的な存在でもあるという逆説がある。

 信託登記は一番ではないかもしれませんが、実体に近い登記である必要があると思いました。極めて形式的な存在というのは、不動産登記の連続性におけることを指しているとすれば、そのような面があるかもしれないと感じます。

登記実務では、受託者権限に関して、取り消されない処分行為であるための要件に関する情報を、積極的に公示している。そうでないと、当該処分行為に係る登記申請が、信託目的に適合しているのか、そして、受託者の権限内であるか否か、登記官の判断を難しくするからだ(実体判断を強いることは避けたい)。

 登記官は、原則として不動産登記法24条(本人確認)に対して実体判断を認めています。不動産登記法25条1項に関する限りでは、手続上の要件を満たしているか判断し、実体法的な事項について判断する権限を持っているものだと思います[4]

承認を得ない取締役・会社間の利益相反取引は、当事者間では無効であるが、善意・無過失の第三者には対抗できない相対効であり(最判昭和43年12月25日)、意思能力ある未成年者の行為も、取消権者に取り消されるまで有効である(民法5条1項、2項参照)。

かような登記手続の取扱いを前提にすると、登記実務家の立場としては、法律上、取消権が存在するかもしれない場合、取消うる行為か否かを全く確認せずに、当該処分行為に基づく登記を実行処分することに対して違和感を生じよう。

 信託目録に、受託者と受益者の利益相反取引を許容する定め(信託法31条2項1号、同法32条2項1号)がない場合を想定します。

 会社法は、利益相反取引について取引の都度、機関の承認を求めています(会社法356条、同法365条)。信託における委託者の意思凍結機能により、受託者と受益者の利益相反取引を予め許容する定めが信託目録に記録されている場合を考えてみます。

 許容する定めの内容が、後続登記申請の申請情報に必要な情報を全て網羅する具体的な定めである場合、単に許容することを定める抽象的な定めである場合を問わず、利益相反取引を伴う登記申請を行う場合には、事前に信託行為の確認を行うのではないかと思います。抽象的な定めの場合は、後続登記申請の前に信託目録の変更登記申請が必要な場合が出てくるかもしれません。

原則、受益権は財産権として相続の対象となりうるが(信託法95条の2参照)、その譲渡性を禁止・制限することもでき(信託法93条2項)、また、受益者の死亡で消滅させることも可能なので(信託法91条参照)、信託目録情報とする場合、受益権の相続性の有無等は、信託条項化して明確にしておきたい(後続登記の保全のための積極主義)。

4 信託条項(4)その他の信託の条項

受益者変更 受益者の死亡時、受益権は相続されない。

 引用の文章から、遺言代用信託(信託法90条)、受益権の譲渡が予定されていない信託[5]ではないと想定します。

 このような信託の場合に、受益者の死亡時、受益権は相続されない。と定めることが出来るのか、分かりませんでした。受益者の死亡により受益権が相続される場合、その権利移転は一般承継であり、譲渡とは異なり信託法93条2項の適用はないと考えます。

 

その場合、受益権に対する質権が実行され、任意売却された場合、任売で取得した新受益者が出現したとしよう。そのような場合、かような新受益者は、第二次受益者となるべき者として指定されていた者に関する情報の記録との関係はどうなるのか、という問題がある。

 任意売却の場合、強制競売とは異なり、事前に登記事項証明書、信託契約書等を確認し、受益者や受託者から表明保証の協力を得ることも可能な状況と考えると、任意売却による受益者変更の前に信託目録の変更の登記申請を請求することが可能だと思います。または質権設定の際に行うのではないかと考えます。

 

例えば、当該受益者にとって、受益権を売却して資金を得る必要がある場合を想定してみよう。仮に受益権売却によって受益者変更を生じれば、特定の受益者の生活・介護支援という信託目的を達成することが出来なくなった場合として、信託は終了しないのだろうか(信託法163条1項)。

 受益権売却によって、信託財産に属する金銭が増加し、信託の目的とされている受益者の生活・介護支援が、生活費の確保・介護サービスを受けるという形で可能になるのであれば、信託が終了しないという考え方もできるのではないかと思います。


[1] 896号(令和4年10月号)、テイハン、P59~

[2] 河合芳光『逐条不動産登記令』2005、(一社)金融財政事情研究会P329~

[3] 七戸克彦 監修・ 日本司法書士会連合会編・日本土地家屋調査士会連合会編『条解不動産登記法』2013、弘文堂、P604

[4] 七戸克彦 監修・ 日本司法書士会連合会編・日本土地家屋調査士会連合会編『条解不動産登記法』2013、弘文堂、P186 ~

[5] 道垣内弘人編著「条解信託法」2017年、弘文堂、P487~

民事信託の登記の諸問題13

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(13)」からです。

資格者代理人による報告形式の登記原因証明情報の作成支援は、資格者代理人の善管注意義務上、何を確認しなければならないのか、という資格者代理人の確認義務の問題に関わり、クリティカルな問題である。

 報告形式の登記原因証明情報を作成するということは、信託契約書の作成案から関わる、民事信託支援業務とは切り離した、所有権移転及び信託登記申請の代理業務のみを受任した場合と想定します。

従って、上記のような信託行為の定めは、登記手続上、後続登記申請における登記原因証明情報の名義関与者の指定という機能をもつ。

 後続登記申請における添付情報の関与者(承諾情報・同意情報等)という意識はありましたが、登記権利者、登記義務者という名義関与者の指定という感覚は今まで持っていなかったことに気付きました。

4 その他の信託の条項

 信託の変更 信託目的に反しないことが明らかな場合、受託者が単独で変更できる。

この場合の「信託目的に反しない場合」という情報は、誰が変更権者となるのか、に関わる要件(条件)となろう(信託変更の要件そのものであると解する余地もあるが、読者の皆さんはどう思うであろうか)。

 誰が変更権者となるか、については、受託者が単独でという記載が当てはまり、「信託目的に反しない場合」という情報は、信託変更の要件(信託法149条2項1号)だと思います。

2 信託財産の管理方法 受託者による不動産の売却の条件

            最低売却価格金×億円を満たすこと

このような情報は、登記手続そのものに影響を与える情報であると言えるだろうか。前述の信託の変更に関する信託行為の定めも、同じ水準感の問題として、当該情報が、信託目録に記録すべき情報として抽出すべき情報なのか否か、という資格者代理人の関心事に関わる。

 信託目録に記録した場合、現行法上、信託目録の連続性がない登記申請が登記されるという通達・先例がない以上、後続登記申請の登記原因証明情報には、売買契約における代金を記載する必要が出てきます。

 信託目録に記録しない場合、登記申請前の売買契約・決済の場面において、信託契約書や売買契約書のチェック、関係者への確認を行うことになると思います。

 私なら後者で考えますが、所有権移転及び信託の登記申請時に、委託者と受託者に確認が必要なことだと考えます。


[1] 895号、令和4年9月、テイハン、P47~

民事信託支援業務のための執務指針案100条(11)

市民と法[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(11)―AI契約書審査に関する法務省回答の衝撃―」からです。

経済産業省 グレーゾーン解消制度の活用事例

・法曹無資格者による契約書等審査サービスの提供【回答日】令和4年7月8日

・AIによる契約書等審査サービスの提供【回答日】令和4年6月6日

https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/gray_zone.html

おそらく記事執筆後の活用事例

・契約書レビューサービスの提供【回答日】令和4年10月14日

URLは上と同じです。

このAIによる有償契約書審査に対する回答では、弁護士法72条違反の構成要件該当性の基準が下げられているように感じられるが、読者は、どのように感じられるだろうか。

・契約書レビューサービスの提供【回答日】令和4年10月14日における回答書では、「弁護士法第72条本文に規定する「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている訴訟事件その他の具体的例示に準ずる程度に法律上の権利義務に争いがあり、あるいは疑義を有するものであることが要求される。」と紛争性の有無に触れられています。また、「契約書のレビュー結果として表示される選択した立場に応じた法的リスクの判定結果、これに関する解説、修正例等は、いずれもレビュー対象契約書の条項等に係る法律効果について、法的観点から評価を加えた結果を表示するものであり、これらは法律上の専門知識に基づいて法律的見解を述べるものとして「鑑定」に当たると評価される可能性がある。」とされ、鑑定の評価基準についても触れられています。

「契約書のひな形との比較結果及び利用者が設定した留意事項の表示は、レビュー対象契約書の条項等のうち、あらかじめ登録した契約書のひな形の条項等と異なる部分がその字句の意味内容と無関係に強調して表示され、また、利用者が自ら入力した内容がその意味内容と無関係にそのまま機械的に表示されるにとどまるものである限り、「鑑定(中略)その他の法律事務」に当たるとはいい難い。

 本件サービスの提供の態様や比較対象とされた契約書の条項等の内容等の個別具体的な事情に照らし、比較対象となる契約書のひな形の条項等の選定が、単に言語的な意味内容の類似性を超えて法的効果の類似性を表示するものと評価される場合には、法律上の専門知識に基づいて法律的見解を述べるものとして「鑑定」に当たると評価される可能性がないとはいえない。」とされています。

 あらかじめ登録した契約書のひな形の条項等と異なる部分がその字句の意味内容と無関係に強調して表示され、また、利用者が自ら入力した内容がその意味内容と無関係にそのまま機械的に表示されるにとどまるもの、と法的判断を伴わず法的効果の類似性を表示するもの、という留保を付けて、鑑定に該当しない場合に言及しています。

「また、類似度判定の結果は、レビュー対象契約書の条項等と契約書のひな形の条項等との言語的な意味の類似性の程度を表示するにとどまるものである限り、「鑑定(中略)その他の法律事務」に当たるとはいい難いが、個別具体的な事情に照らし、単に言語的な意味の類似性を超えて法的効果の類似性の程度を表示するものと評価される場合には、法律上の専門知識に基づいて法律的見解を述べるものとして「鑑定」に当たると評価される可能性がないとはいえない。」として、レビュー対象契約書の条項等と契約書のひな形の条項等との言語的な意味の類似性の程度を表示するにとどまるものである限り、と鑑定に該当しない場合に言及しています。

 これらは個別具体的なサービスに対する回答であり、鑑定に該当するか否かの基準の全てではありませんが、弁護士法72条違反の構成要件該当性の基準が下げられているようには感じませんでした。

これらは、契約書に対する有償サービスに対する回答であることから、有償による信託契約書の作成業務、そして、信託契約書の審査(チェック)業務、信託契約書の雛型提供業務などに対する弁護士法72条の適用の可能性の可否が心配となってくる。

 有償による信託契約書の審査(チェック)業務、有償による信託契約書の雛型提供業務に関しては、弁護士法72条の適用可能性の可否について考える必要もあると思います。審査・提供を行った司法書士などに過誤があった場合、責任がない、という構成は難しいと感じます。

 個人的見解ですが、のような留保を付けていたとしても、有償で専門士業等に対してサービスを提供しているということは、より高度な役務を業として行っていると考えられます。  

 審査を受けた司法書士が過誤を起こした場合や紛争になった場合に、何の責任も負わない、という可能性は低いと考えます。以前、日司連民事信託推進委員で信託の学校運営者の司法書士に質問してみましたが、関係がない、という回答でした。

今後どうなるのかは分かりません。

法的根拠論は多ければ多いほどよい。盾=防御は多いほどよいからだ。複数の法的根拠論は、原則として並存であり、非両立の関係にはない。法的観点は競合しうる。しかし、それらは、とにもかくにも説得的・理論的なものである必要がある。そうでなければ、司法書士実務家を守れないからだ。

 司法書士法3条に基づく、司法書士法施行規則31条に基づく、司法書士法1条に基づく考え、司法書士法3条・司法書士法施行規則31条にも当てはまるものではなく、司法書士は時代に合わせて市民のために債務整理や震災被害者支援などプロボノ活動を行ってきたのであり、民事信託支援業務もその一環であるという考え、などが私の現在知っているものです。

 プロボノ活動を行ってきたのであり、という主張は立法事実を作る、という考えも含まれているのかもしれません。令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件の判決文において、司法書士、民事信託支援業務という記載があることも、事実を積み重ねるという意味があるのかなと思います。

有償の信託契約書の作成業務や審査業務について、仮にグレーゾーン解消制度を利用したとしたら、どのような回答が出てくるのだろうか。さらにはAIによる信託契約書の作成、あるいは、諸条件を入力することで信託契約書の雛型が提示されるなどのサービスはどうだろうか。やはり、弁護士法72条の適用の可能性は否定できない、と評価されるのかもしれない。

 有償の信託契約書の作成業務や審査業務について、AIによる信託契約書の作成、あるいは、諸条件を入力することで信託契約書の雛型が提示されるなどのサービスについて、どちらも弁護士法72条の適用の可能性は否定できない、と評価されると思います。ただ、照会の書き方によって、基準が示される可能性が高いと思います。言語的な意味内容の表示をどの程度超えるか、が1つ論点としてあるのかなと思います。

信託法は、デフォルトルールと信託行為の別段の定めの選択という法技術的(柔軟)な構造でもって、信託契約を非定型な構造のものとしている。

 利用者(委託者)が、あらかじめ準備されたデフォルトルールと別段の定めを選択できるのであれば、定型的に処理することも一定程度で可能だと思います。

 どちらかというと、所轄庁がないことが民事信託支援業務における信託契約書の非定型化を招いている面が強いのかなと感じます。判例や、誰かが登記が完了したという経験を待ってから実務が少しずつ固まる形では、時間がかかります。

いずれにせよ、法3条と規則31条は、並存であり、共存であって、どちらかを選ぶというような択一的な関係にあるわけではない。一種の法的観点・請求権競合にある。

 司法書士法という法律が上位で、司法書士法施行規則が法律の解釈を超えない政令としての意味で下位だと思います。

民事信託初体験の司法書士が法務局提出書類として作成した信託契約書を、民事信託のエキスパートを称する他の司法書士が有償で審査(チェック)する場合があると聞くが、そのような審査(チェック)業務も法3条1項2号に該当するものなのだろうか。

 審査を受ける司法書士に対する報酬の額、業として行う程度によりますが、信託契約書案の作成・相談と比較して、鑑定と評価される可能性が高いではないかと考えます。


[1] №137、2022年10月、民事法研究会、P33~

参考

池尻範枝「隣接法律専門職の業務範囲と弁護士法七二条 : 行政書士による相続手続の事例」阪大法学71巻6号、2022-03

七戸克彦「司法書士の業務範囲(5) : 司法書士法3条以外の法令等に基づく業務(1)」『市民と法102号』民事法研究会、2016-12

小林昭彦・河合芳光・村松秀樹『注釈司法書士法(第四版)』テイハン、2022/06

経済産業省グレーゾーン解消制度の活用事例「利用者が本店移転登記手続に必要な書類を生成できるWEBサイトを通じたサービス等の提供について」【回答日】平成30年8月27日

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「受益者代理人は信託行為の変更で選任できるかー信託監督人の選任と比較してみるー」、「第3回民事信託実務入門信託契約条項の起案」

 信託フォーラム[1]の記事、遠藤英嗣弁護士「家族信託への招待第18回相談室、受益者代理人は信託行為の変更で選任できるか─信託監督人の選任と比較してみる─」からです。

指図権者・・・信託業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000154

第四章 指図権者(指図権者の忠実義務)第六十五条、(指図権者の行為準則)

第六十六条

信託業法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416M60000002107_20221001_504M60000002055

第四章 指図権者(指図権者の行為準則)第六十八条

法第六十六条第三号に規定する内閣府令で定める取引は、次に掲げる取引とする。

一 取引の相手方と新たな取引を行うことにより自己又は信託財産に係る受益者以外の者の営む業務による利益を得ることを専ら目的としているとは認められない取引

二 第三者が知り得る情報を利用して行う取引

三 当該信託財産に係る受益者に対し、当該取引に関する重要な事実を開示し、書面による同意を得て行う取引

四 その他信託財産に損害を与えるおそれがないと認められる取引

2 法第六十六条第四号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。

一 指図を行った後で、一部の受益者に対し不当に利益を与え又は不利益を及ぼす方法で当該指図に係る信託財産を特定すること。

二 他人から不当な制限又は拘束を受けて信託財産に関して指図を行うこと、又は行わないこと。

三 特定の資産について作為的に値付けを行うことを目的として信託財産に関して指図を行うこと。

四 その他法令に違反する行為を行うこと。

(2)一方、受益者代理人について、「信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべきものを指定する定めを設けることができる」(信託法138条1項)と規定するのみで、裁判所による選任は認められていない。その理由は、受益者代理人については、その指定選任は、受益者の権利行使に重大な影響を及ぼすため、裁判所が受益者を代理するものを選任することはふさわしくないとされるからである(寺本昌弘『逐条解説新しい信託法』322-323頁)。

 なぜ、受益者代理人に信託法139条のような、大きな権限を持たせているのかについて、受益者代理人が利用される想定事例として、

・年金信託や社内預金引き当て信託のように、受益者が頻繁に変動するためにその固定生を欠くような場合

・単なる投資の対象として受益権を取得した受益者が多数存在する場合

・受益証券発行信託(第185条以下)において、無記名式の受益証券が発行され、当該証券が転々流通する場合等

が挙げられ、民事信託・家族信託が想定されていないこともあると思います[2]。なお、信託監督人は信託の機関であり、受益者代理人は、あくまでも一定の範囲の受益者の代理人としての地位、という違いもあると考えられます。

参考

一般社団法人信託協会 受益証券発行信託計算規則

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/corporation/beneficiary_certificate.html

(3)このことからすると、信託行為の変更により新たに選任された信託監督人について、受益者代理人のように、これが特定の「裁判上の行為」を求められることもないし、もしそれが危惧されるのであれば、信託条項に、「信託監督人は信託法132条1項本文が定める一切の裁判外の行為をする権限を有するものとする」と定め、信託登記目録に搭載することもできる。

 特定の「裁判上の行為」を求められることがないのは、信託法132条記載の通り、信託監督人が自己の名で受益者のために使う権利であり、使わないことも可能であり、受益者の権利を奪うものでもないからだと思います。

 ただ、信託目録については第三者対抗要件、取引の安全などの要請があるため信託監督人が選任された場合には、その住所、本店、氏名、名称などを記録する方が望ましいと感じます。権限については、信託法に定める権限以外の定めがある場合には記録する方が良いと考えます。

(2)―中略―このような受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者の意思決定を経ずに、他の関係者が創成することができるかというのが、問題の核心部分といえよう。このような受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者以外の者の意思によって登場させることは、委託者が考えた信託スキームを大きく変更するものであり、一律制限するのが相当と考える。

 受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者以外の者の意思によって登場させることを、信託行為によって委託者が定めている場合に、制限できるという根拠が分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・

金森健一弁護士「第3回民事信託実務入門信託契約条項の起案」からです。

信託契約の内容を一から起案し、当事者に対し一から説明した経験のある者であれば、契約書の定型化や説明のマニュアル化等による業務の効率化に対し、果たしてそこまでこの仕事が単純であるのか疑問を抱かれる方が多いと思われるが、読者の皆様はいかがだろうか。

 程度によると思います。

もっとも、このような条項(一文)があれば、信託契約が成立したと即断してよいかどうかについては、一考を要する。「必要な行為をすべき」という文言により受託者に対し課す義務の内容が信託法の許容する限界を超えてしまうと、それをもって信託の成立が否定されることになるからである。

 信託の成立の要否は、信託契約全体、及び第三者との関係(例えば信託法第10条の訴訟信託、事後的な取消しとして信託法第11条の詐害信託の取消し等)から総合的に判断するものであり、信託法3条1項に沿った条項のみで判断するということはあまりないのではないかなと感じます。

一方、民事信託の利用を勧める場面において、「財産を受託者に預けるだけ」、「単に形式的な所有権が受託者に移るだけ」、「権利は残る」などという説明がなされることがあると聞く。

まだあるのかなと思いました。

民事信託は、自分では行うことのできない財産の管理を受託者に用いられる。言い換えれば、民事信託の受益者は、財産管理能力が低下又は喪失した者である。

私が書くのであれば、次のようになります。

民事信託は、自分では管理を行うことが出来なくなる可能性がある財産の管理を、受託者に依頼する場合に用いられることがある。自益信託における受益者は、財産管理能力の低下、喪失に備える者であることが多い。また親なき後に備える民事信託の受益者は、財産管理能力を既に喪失している者の場合もある。


[1] vol.18、2022年10月号、日本加除出版、P105~

[2] 寺本昌広『逐条解説新しい信託法補訂版』2008、商事法務、P321、P323

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