民事信託における監督機関の設置の意義

月報司法書士[1]の一般社団法人民事信託推進センター・代表理事押井崇司法書士・民事信託士「民事信託における監督機関の設置の意義」からです。

日本司法書士会連合会 月報司法書士

https://www.shiho-shoshi.or.jp/gallery/monthly_report/

一般社団法人民事信託推進センター

https://www.civiltrust.com/

「あなたの判断能力が低下した場合に備えて民事信託を活用し、今から信頼できる家族に託しておきませんか。」「そうしておかないと、硬直的な後見制度に依拠しなければなりませんよ。」おおよそこのような謳い文句で集客をはかる司法書士等のホームページが散見される。

 前段に異論はない。まさに民事信託を活用する積極的な理由である。問題は後段である。あたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする。この種の喧伝を行う司法書士等は、後見業務に携わっていない者が多いのではないか。後見業務の実務に精通し、誠実に業務に従事している者は、このような認識を持ちえないからである。

「あなたの判断能力が低下した場合に備えて民事信託を活用し、今から信頼できる家族に託しておきませんか。」「そうしておかないと、硬直的な後見制度に依拠しなければなりませんよ。」のような謳い文句で集客を図る司法書士のホームページがどこにあるのか分かりませんでした。

 問題は後段である。あたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする、については、書き方や捉え方の問題だと感じました。選択肢として、(任意)後見制度を民事信託と同列に載せるか、民事信託を上位に置くかの提案になるので、司法書士法3条上も意見が分かれる、というところが個人的には問題になるのかなと感じました。著者が問題だとしているあたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする、という事に関しては司法書士法2条(業務精通義務)に入ると考えられますが、私の認識とは違うと感じました。

 この種の喧伝を行う司法書士等は、後見業務に携わっていない者が多いのではないか。後見業務の実務に精通し、誠実に業務に従事している者は、このような認識を持ちえないからである、については、私は後見業務を専門で行っていた時期もありますが、どのような根拠で「このような認識を持ちえない」、と書かれているのか分かりませんでした。

「委託者が、信託契約などに基づき、受託者に対し、信託財産を移転し、受託者は、委託者が設定した信託目的に従って、受益者のために、信託財産の管理及び処分などを行う制度」

 信託財産、は財産に訂正(信託法2条1項)。委託者が設定した、は委託者及び受託者が設定した、に訂正(信託法2条、記事では信託契約が主とされているため。)。管理及び処分、は管理又は処分に訂正(信託法2条1項。実務では管理のみという民事信託は少ないので、及びを利用している可能性があります。)

「信託口口座」とは、受託者で名寄せされるが受託者固有の財産とはならない口座のことで、倒産隔離機能を有する口座である。

受託者で名寄せされる、という箇所が、よく分かりませんでした。

参考

令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件

当該金融機関において、内部システム上、当該受託者の個人名義の預貯金口座(固有財産に属する預貯金口座)に係るCIF(Customer Information File。顧客情報ファイル)コードとは別異のCIFコードが備えられる、内部手続上、当該預金口座とは異なる取扱いがされる旨の規定が設けられるなど、当該預金口座から分離独立した取扱いがされる預金口座、の要件を満たす口座。

信託口口座を開設する予定の金融機関から契約書案のゴーサインが得られ次第、公正証書作成のために契約書案を公証役場に提示する。

 色々な方法があるのだなと感じました。私は契約書案を、公証人役場(公証センター)と金融機関に提示するのは、同時です。公正証書作成の日付を決めておいて(予定が変われば変更します。)、金融機関に提示することで返答が欲しい日もお願いすることが出来ます。公証人役場(公証センター)、金融機関、その他の機関全て同時進行になります。この場合は、1つの機関から指摘があって契約書案が変更になる場合は、他の全ての機関に連絡することが重要となります。

ただし、そのためには信託の知識だけではなく、遺言、後見、基礎的な税務に関する知識や経験が必要である。

 経験、に関しては経験者に訊くことで解決出来るのではないかと思います。経験を必要条件としてしまうと、民事信託支援業務を行う司法書士は、極端にいうといない、という事になります。また経験者の立場から書いているとすれば、今後、民事信託支援業務を行う司法書士は出てこない、という意味なのか、いずれにしても無理があると感じます。

そこで、私(司法書士)が信託監督人に就任します、と提案しても快諾されるケースは稀である。先に申し上げたように、民事信託を組成する目的の一つが「後見制度の回避」だからである。

 記事中の、「そうしておかないと、硬直的な後見制度に依拠しなければなりませんよ。」おおよそこのような謳い文句で集客をはかる司法書士等のホームページが散見される。前段に異論はない。まさに民事信託を活用する積極的な理由である。問題は後段である。あたかも民事信託を活用しなければ取り返しがつかなくなるといった誤った認識を喧伝し、民事信託へミスリードする。、との整合性が分かりませんでした。また、記事後半では民事信託に関して信託監督人や受益者代理人の設置を検討する必要があるだろう、と記載がありますが、具体的にどのような方法で設置するのか、分かりませんでした。

令和4年4月1日、一般社団法人民事信託士協会と一般社団法人民事信託推進センターが合併し、新たに一般社団法人民事信託推進センターが誕生した。民事信託支援業務の専門家である「民事信託士」の育成に引き続き注力しつつ、民事信託に関する研鑽を深め、健全な民事信託の発展に寄与する所存である。

民事信託推進センターで民事信託士の育成に注力するため、ということでしょうか。

1. 議題 宮城直会員除名の件 35/45 35人承認可決

https://miyagi-office.info/?s=%E9%99%A4%E5%90%8D


[1] 2022年6月、604号、日本司法書士会連合会P34~

民事信託の登記の諸問題(10)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(10)」について、考えてみたいと思います。

この点、準物権的救済(受益者取消権等)の実効性の確保や受託者権限に対する規範性(拘束性)に鑑み、信託の目的を鈍化・峻別し、明確化して公示することが大切である。信託の目的は、信託が終了するか否か(信託法163条1号)や信託の変更権者の選択(信託法149条2項1号、2号、3項2号)その他の具体的な基準ともなる現実的なものである。

 例えば、受益者の介護その他の生活支援・受益者が現在の住居を離れなくてはならなくなった場合の、不動産の売却、などのように一定程度信託の当事者間で明確になっているのならば、信託目録の信託の目的欄への記録も可能だと思います。介護その他の生活支援の場合は、受益者の死亡により信託の終了、不動産の売却の場合は、売却時に金銭信託なども終了して清算に移るのか、その後も他の信託財産に属する財産について信託を続けるのかは最初に検討、という形を採るのかなと思います。

受託者の権限として「財産の管理又は処分」が記されているが、それは、それ自体が独立した権限とされて、後の「及び」で、その他の必要な行為が付加されている形の文の構造となっているのだろうか。あるいは、「財産の管理又は処分」は、直後の「及び」という接続詞で「その他の」と並列にされ「信託の目的の達成のために必要な行為」の例示とされているのだろうか。

財産の管理又は処分それ自体が独立した権限とされて、後の及びで、その他の必要な行為が付加されている形の文の構造となっているのだと考えます。[2]

また、信託法26条の文言は、「管理又は処分」と「or」で結び、択一的に記しているところ、「管理及び処分」と(and)で結ぶのは、法令上の文言とは異なる(その効果の差異は何か)。

  受託者が、信託財産に属する財産の管理も処分も行う、と信託行為で決めた、ということだと思います。効果は管理、処分、信託の目的を達成するために必要な行為のうち、管理と処分行為については第三者対抗要件を備えるということになると考えられます(不動産登記法177条)。

信託不動産の賃貸借契約の締結や解除は管理行為とされるので(民法252条参照)、管理権限に限定された受託者でも、収益物件の信託が可能かもしれないが、処分権限を有しない受託者による賃貸借は短期賃貸借に限られることはないのか否か(民法602条)、借地借家法の適用関連も含めて確認しておきたい(ちなみに、兼営法の規定上、信託財産の貸借は、処分と同分類である)。

 処分権限を有しない受託者による賃貸借は、民法602条の短期賃貸借に限られると考えます。例えば、受託者を貸主として、第三者と土地の賃貸借契約(期間5年)を締結した場合、借地借家法の適用を受けません(借地借家法9条。)。受託者を貸主として、受益者と建物の賃貸借契約(期間3年)を締結した場合、借地借家法が適用されます(借地借家法29条~。)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

また、残余財産の帰属権利者への帰属は、信託の終了後に生じるので、それが信託期中における弱者保護を重視する福祉型信託の目的たり得るのか否か、という論点がある(重要な問題である)。

 資産(財産)承継と福祉型信託の目的は両立し得ると思います。ただし、信託財産に属する財産の現在の状況どのようなものか、どのように承継したいのか、各親族の意思など個別具体的な状況によるのだと思います。このような場合、財産の状況や親族の意思によっては、信託を利用しない、という選択になることもあり得ると思います。

それでは、「(3)高齢者の変わらぬ住居の維持」という信託の目的からは、受託者による自宅不動産の売却が許容されるのだろうか。売却が許容される基準は何だろうか。そのような判断を形式的に行うのは容易ではない。

許容される基準や要件は、信託行為で定めておけばよいのではないかなと思います。

将来の資産残高を減らさないため、高齢者に対する余計な支出を避けたい、と信認義務を忘れて短絡する場合もあろう(受託者自らが承継人の一人となっていれば猶更だ)。

 この辺りは、信託を利用しなくても、同居の親族であればやる人はやると思うので、任意後見、法定後見制度との併用を考えておく必要があると考えます。

しかしながら、信託終了・清算の結果としての資産承継を、高齢者の認知症対策であり、生活支援の福祉型信託において、受託者が達成すべき「信託の目的」として、信託期中の目的と同列にし得るのか、よく考えてみたい。

 私は現在のところ、このような目的は利用していませんが、当事者が望めば両立可能だと思います。その際注意する点は、福祉型信託において守る財産と資産承継において守る財産を分けることです。


[1] 892号、令和4年6月、(株)テイハン、P34~

[2] 法制執務委員会『ワークブック法制執務』平成19年ぎょうせい、P672、P742

民事信託のあれこれメモ

信託契約書作成

委託者 父A

受託者 長男〇(信託設時に委託者の既存債務を引き受ける)

受益者 父A

信託行為 信託契約

信託財産 金銭,不動産(居住用,賃貸用)

信託の終了 受益者父Aの死亡

帰属権利者 長男〇,二男△

(第二次受益者 長男〇及び二男△両名)の場合

 信託事務処理の第三者への委託

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(信託事務の処理の第三者への委託)

第〇条 受託者は,信託財産目録記載の建物の管理を第三者に委託することができる。

・信託法28条1項1号に基づく条項

・「第三者」には委託者や受益者も含まれるが,それらの者に対する委託によって,信託の実質が失われるような場合には許されない(信託として認められない場合がある)。例えば,全ての信託事務の処理を第三者へ委託することは認められない。

例2

(信託財産の管理方法)

第〇条 

〇 受託者は、信託事務の一部について必要があるときは、受託者と同様の管理方法を定め、第三者へ委託することができる[1]

(善管注意義務)

第〇条 受託者は,信託財産の管理,処分その他の信託事務について善良な管理者の注意をもって処理しなければならない。

信託法29条2項に基づく条項

・信託法と同内容の規定を信託契約書に記載すること。信託法29条2項ただし書きに基づく条項については、慎重。

例2(信託財産の管理方法)

第○条

〇 受託者は、善良な管理者の注意をもって、受益者のために忠実に職務を遂行する[2]

(分別管理義務)第〇条 受託者は,信託財産に属する金銭及び預貯金と受託者の固有財産とを,以下の各号に定める方法により,分別して管理しなければならない。

  • 金銭 信託財産に属する財産と受託者の固有財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法

(2)預貯金 信託財産に属する預貯金専用の口座を開設し、当該口座で管理する方法

信託法34条1項2号ロによる分別管理方法を,同条1項ただし書きの「別段の定め」により,変更した条項

・金銭を預貯金債権で管理する場合には,受託者に信託口口座の開設を義務付ける。

・趣旨は,①信託財産であることの証明を容易にするため,②受託者が忠実義務違反行為を起こす際の心理的バリアになる(条解280頁)。

例2

(信託財産の管理方法)

第○条

(2)受託者は信託金銭について、次の信託事務を行う。

□信託に必要な表示又は記録等[3]

□受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理[4]

(帳簿等の作成等,報告及び保存の義務)

第〇条 本信託の計算期間は,毎年1月1日から同年12月31日までとする。ただし,第1期の計算期間は,信託開始日から令和〇年12月31日までとする。

2 受託者は,信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状 況を明らかにするため,信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は,前項の帳簿等に基づき,第1項の計算期間に対応する信託財産目録及び収支計算書を当該計算期間が満了した月の翌月末までに作成しなければならない。

4 受託者は,前項記載の信託財産目録及び収支計算書の内容について,受益者に報告しなければ ならない。

5 受託者は,第2項に基づき作成した帳簿等は作成の日から10年間,第3項に基づき作成した信託財産目録及び収支計算書は信託の清算の結了の日までの間,保存しなければならない。

・信託法37条に基づく条項

・民事信託では,極めて重要な条項。

・信託法37条3項に基づいて,受託者が受益者に報告しなければならない対象 は,同条2項の「財産状況開示資料」(貸借対照表(財産目録),損益計算書(収支計算書))であり,同条1項「帳簿」は報告の対象となっていない(信託法37条3項)。

受託者の辞任・解任

(受託者の辞任)

第○条 受託者は,委託者及び受益者の同意を得て,辞任することができる。

(受託者の解任)

第○条 委託者及び受益者は,いつでも,その合意により,受託者を解任することができる。

信託法57条1項本文,58条1項に基づく条項

 受託者の解任を制限する条項の可否。委託者、受益者の意思のみによって解任可能な信託に関する法定安定性と、受託者候補の心証。信託行為の説明時に正確に可能か。・・・委託者、受託者それぞれ意思のみで受託者の解任が可能な信託にするのであれば、受託者のみの意思で受託者を辞任可能にして清算条項を付けないと、受託者としても職務執行しずらいと感じます。

例2

第〇条 (受託者)

□受託者の任務は、次の場合に終了する。

 □ただし、信託法58条1項は適用しない。

□受益者の同意を得て辞任したとき。

□受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合。

□受益者と各受託者が合意したとき[5]

□【受託者が○○歳になったとき・                

□受託者が唯一の受益者となったとき。ただし、1年以内にその状態を変更したときを除く。

□その他信託法で定める事由が生じたとき。

信託費用の償還

(信託費用の償還)

第〇条 受託者は,信託事務処理に要する費用を,直接,信託財産から償還を受けることができる。

2 受託者は,信託財産から,信託事務処理に要する費用の前払を受けることができる。

信託法48条1項,2項に基づく条項

 信託法上,受益者に義務は課せられていない。受益者から(本条項は,「信託財産」から)費用償還又は前払いを受けるには,受託者と受益者の「個別合意」が必要。

例⒉

第〇条(信託財産の管理方法)

□ 受託者は、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合は、本信託の目的に従い受益者の承諾を得て、支出することができる[6]

□ 受託者は、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする合意をすることができる。ただし、受託者に就任して1年を経過した場合は合意があるものとみなす。

第〇条(信託事務処理に必要な費用)

□ 受託者が信託事務の処理に必要な費用に関して、【金額】円を超える場合、事前に信託金銭の中から支払いまたは事後に信託金銭から償還を受けるときは、受益者に対してその額のみを通知する。ただし、算定根拠を明らかにすることを要しない。

信託報酬

(信託報酬)

第〇条 受託者は,無報酬とする。

(信託報酬)

第〇条 受託者は,毎月末限り,月額〇万円の信託報酬を受ける。

・信託法54条1項に基づく条項(信託行為に受託者が信託財産から信託報酬を 受ける旨の定めがある場合に限り,信託財産から信託報酬を受けることができる)。

・民事信託では,受託者は無報酬であることが多い。

・信託法54条1項により,民法648条2項(委任における受任者の報酬の支払時期)が準用されている結果,報酬は後払いとなる(受託者の信託事務が終了しなければ報酬を受け取れない)。

例⒉

受託者の報酬の定めを置かない。無報酬の定めも置かない。

(受益者)

第〇条 本信託の当初受益者は,委託者〇とする。

2 前項の当初受益者が死亡したとき,同人の有する受益権は消滅する。

3 前項の場合には,第二次受益者として〇及び△が,以下のとおり,新たな受益権を取得する。

〇 信託財産目録記載2(土地)及び同(自宅)2の不動産に係る受益権

△ 同1(土地)及び同2(アパート)の不動産に係る受益権

・後継ぎ遺贈型受益者連続信託にする場合には,受益者の死亡により受益権は消 滅すると明記する(受益権が相続の対象とならないことを明確にする)。

例⒉

第〇条(受益者)

(1)本信託の第1順位の受益者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】

(2)受益者の死亡により受益権が消滅した場合、受益権を原始取得する者として次の者を指定する。

   第2順位

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

 □ 第3順位

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

□次の順位の者が既に亡くなっていたときは、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。

□受益権を原始取得した者は、委託者から移転を受けた権利義務について同意することができる[7]

□受益者に指定された者または受益権を原始取得した者が、受益権を放棄した場合には、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。

□受益者に指定された者が、指定を知ったとき又は受託者が通知を発してから1年以内に受益権を放棄しない場合には、受益権を原始取得したとみなす。

□【委託者氏名】は、【委託者以外の受益者氏名】が受益権を取得することを承認する。

(受益権、受益債権の内容)

第○条 受益者は,受益権として,以下の内容の権利(以下「受益債権」という。)及びこれを確保する ために信託法の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利を有する。

(1)信託財産目録記載の信託不動産を生活の本拠として使用する権利

(2)信託財産目録記載の信託不動産を第三者に賃貸したことによる賃料から給付を受ける権利

(3)信託財産目録記載2の信託不動産が処分された場合には,その代価から給付を受ける権利

(4)信託財産目録記載1の金銭から給付を受ける権利

(受益権の譲渡,質入れの禁止)

第○○条 受益者は,受益権を譲渡又は質入れすることはできない。

・信託法2条7項の受益権とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)と規定している。

・残余財産受益者の指定したとき、「本信託が終了したときの残余財産の帰属すべき者として,本信託終了時の受益者を指定する。」には,この受益債権の内容が影響するので注意。

・信託法93条2項,96条2項に基づく条項

・趣旨は,委託者の親族以外の者が当該信託に関わることを防止するため。

例⒉

第〇条(受益権)

1 次のものは、元本とする。

□(1)信託不動産。

□(2)信託金銭。

□(3)遺留分推定額。

【修繕積立金、敷金・保証金等返還準備金・        】

□(4)上記各号に準ずる資産。

2 次のものは、収益とする。

(1)信託元本から発生した利益。

(2)□【賃料・             】

(3)元本又は収益のいずれか不明なものは,受託者がこれを判断する。

(4)受益者は、信託財産から経済的利益を受けることができる。

(5)【受益者氏名】は、【医療、入院、介護その他の福祉サービス利用に必要な費用の給付・生活費の給付・教育資金・      】を受けることができる。

 受益者は、事前に□【受託者・信託監督人】の書面による同意を得なければ、受益権の全部または一部を□【譲渡・質入れ・担保設定・その他の処分】することができない。ただし、受託者の書面による同意は、信託財産または受益権に金融機関による担保権が設定[8]されているときは、あらかじめ当該金融機関の承認を受ける[9]

(6)受益者は、遺留分侵害額請求があった場合は、受託者に事前に通知のうえ受益権(受益債権は金銭給付を目的とする。)を分割、併合および消滅させることができる[10]

(7)受益権は、受益権の額1円につき1個とする[11]

(8)【任意後見人の事務について同意する事項(    )・        】

信託監督人

(信託監督人)

第〇条 次の者を,信託監督人として指定する。

住 所

氏 名

職 業

2 信託監督人は,受益者及び受託者の同意を得て辞任することができる。

3 信託監督人の報酬は,以下のとおりとする。

事務処理1時間当たり 〇万円(消費税込)

(受益者代理人)

第〇条 次の者を,当初受益者の受益者代理人として指定する。

住 所

氏 名

職 業

2 受益者代理人は,受益者及び受託者の同意を得て辞任することができる。

3 受益者代理人の報酬は,以下のとおりとする。

月額〇万円(消費税込)

・民事信託では,士業のサポートなしに信託を適切に運営することはできない。

タイムチャージ方式か,月額方式かについては,事務内容に照らして判断する。

・監督される立場の受託者が,監督する立場の受益者代理人を選任できるとすることは明らかに不適切。

例⒉

第〇条(受益者代理人など)

□1

(1)本信託の受益者【氏名】の代理人は次の者とし、□【本信託の効力発生日・

受益者が指定した日・受益者に成年後見開始または成年後見監督人選任の審判が開始したとき・    】から就任する。

(2)本信託の信託監督人は次の者とし、□【本信託の効力発生日・受益者が指定した日・        】から就任する。

  【住所】【氏名】【生年月日】【職業】

(3)受益者(受益者の判断能力が喪失している場合で、受益者代理人が就任していないときは受託者)は必要がある場合、受益者代理人、信託監督人を選任することができる。

(4)受益者代理人および信託監督人の変更に伴う権利義務の承継等は、その職務に抵触しない限り、本信託の受託者と同様とする。

第〇条(受益者の代理人が行使する権利)

□1 受益者代理人が就任している場合、受益者代理人は受益者のためにその権利を代理行使する[12]

□2 受益者に民法上の成年後見人、保佐人、補助人または任意後見人が就任している場合、その者は受益者の権利のうち次の代理権および同意権を有しない。ただし、任意後見人、保佐人および補助人においては、その代理権目録、代理行為目録および同意行為目録に記載がある場合を除く[13]

□3 受託者の辞任申し出に対する同意権[14]

□4 受託者の任務終了に関する合意権[15]

□5 後任受託者の指定権[16]

□6 受益権の譲渡、質入れ、担保設定その他の処分を行う場合に、受託者に同意を求める権利。

□7 受益権の分割、併合および消滅を行う場合の受託者への通知権。

□8 受託者が、信託目的の達成のために必要な金銭の借入れを行う場合の承諾権[17]

□ 9受託者が、信託不動産に(根)抵当権、その他の担保権、用益権を(追加)設定する際の承諾権[18]

□10 受託者が、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合に、本信託の目的に従い費用を支出するときの承諾権。

□11 受託者が、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする場合の合意権[19]

□12 受託者が、本信託契約に記載のない特別の支出が見込まれる場合に、本信託の目的に従い費用を支出するときの承諾権。

□13 受託者が、各受益者と信託事務処理費用を受益者の負担とする場合の合意権。

□14 本信託の変更に関する合意権[20]

□15 残余財産の帰属権利者が行う、清算受託者の最終計算に対する承諾権[21]

本信託の終了に関する合意権[22]

□16 信託監督人が就任している場合、受益者の意思表示に当たっては事前に信託監督人との協議を要する。

(信託の変更)

第〇条 信託法149条1項から3項の規定に代えて,信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるときに限り,受託者は,信託監督人の同意を得て,書面又は電磁的記録による意思表示により信託を変更することができる。

・信託法149条4項の「別段の定め」

・別段の定めとして,元の信託法の規定に信託条項を付加するのか,元の 信託法の規定と信託条項を入れ代えるのかを明確にする。

・・・・信託の変更に受益者が関わることを想定していない?元の信託法の規定に信託条項を付加する場合には,「信託法○○条のほかに」元の信託法の規定を信託条項に入れ代える場合には, 「信託法○○条に代えて」などと規定する。元の信託法の規定に信託条項を付加する場合、最終項に、その他信託法に規定する場合、を記録すれば足りるのではないかと思います。

例⒉

第〇条(信託の変更)

□1 本信託の変更は、次の各号に掲げる方法による。ただし、信託財産が金融機関に担保提供されている場合、受託者はあらかじめ当該金融機関の承認を受ける。

□(1)信託法149条1項に代えて、信託目的の範囲内において、受託者と受益者による合意[23]

□(2)その他信託法が定める場合。

□2 信託法149条のほかに、受益者が受益権を分割、併合および消滅させたときは、信託の変更とする。

【                       】

(信託の終了)

第〇条 本信託は,以下の各号に該当する事由が生じたときは終了する。

(1) 委託者〇が死亡したとき。

(2)その他信託法が定める信託終了の原因があるとき。

・本条1号は,信託法163条9号に基づく条項

・「終了事由」(信託法163条各号)と「終了の原因」(信託法164条以下も含む)との使い分け。

例⒉

第〇条(信託の終了)

□1 本信託は、次に掲げる各号のいずれかの場合に終了する。

□(1)【氏名】が亡くなったとき。

□(2)信託の目的に従って受益者と受託者の合意があったとき[24]

□(3)信託財産責任負担債務につき、期限の利益を喪失したとき[25][26][27]

□(4)受益者と受託者が、○○県弁護士会の裁判外紛争解決機関を利用したにも関わらず、和解不成立となったとき。ただし、当事者に法定代理人、保佐人、補助人または任意後見人がある場合で、その者が話し合いのあっせんに応じなかった場合を除く[28]

□(5)受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき。

□(6)受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき。

□(7)信託財産が無くなったとき。

□(8)その他信託法で定める事由が生じたとき。

□(9)本信託において、信託法164条1項は適用しない[29]

□(10)【                       

(帰属権利者等)

第〇条 本信託が本信託契約書〇条(信託の終了)1号に定める(委託者〇の死亡)により終了したときの残余財産の帰属すべき者を,以下のとおり指定する。

(1)別紙信託財産目録記載1の土地,同1の建物(自宅),同2の土地及び同22の建物(アパート)については,△を帰属権利者として指定する。

(2)信託財産である金銭については,□を帰属権利者として指定する。

(3)上記(1)及び(2)に記載のほか,信託終了時の信託財産につき,不動産については△を帰属権利者として指定し,金銭等その余の財産については,□を帰属権利者として指定する。

2 本信託が本信託契約第〇条(信託の終了)2号(その他信託法が定める信託終了の原因)の定めにより本信託が終了したときの残余財産の帰属すべき者として,本信託終了時の受益者を指定する。

・受益者の死亡終了とそれ以外の原因での信託終了で,残余財産の帰属先を分ける。

・民事信託においては,信託の終了時の処理は非常に重要(不動産の単独所有or不動産の共有など)。

・信託終了時の課税関係にも細心の注意を払う。例えば,小規模宅地の特定の適用範囲など。

例⒉受益者の死亡終了とそれ以外の原因での信託終了で,残余財産の帰属先を分けない例

第〇条(信託終了後の残余財産)

□(1)本信託の終了に伴う残余財産の帰属権利者は、本信託の清算結了時の【受益者・受益者の相続人・【氏名】・        】とする[30]

□(2)清算結了時に信託財産責任負担債務が存する場合で金融機関が求めるときは、合意により残余財産の帰属権利者は、当該債務を引き受ける[31]

(管轄裁判所)

第○○条 本契約に定める権利義務に関して争いが生じた場合には,○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

・委託者(委託者の地位を承継した者を含む。)と受託者の間で効力が生じる。

例⒉管轄裁判所を定めない例。

第〇条(契約に定めのない事項の処理)

□1 本信託の条項に定めのない事項は、信託法その他の法令に従い、受益者及び受託者の協議により処理する。

□2 受益者及び受託者のみでは協議が整わない場合で、意見の調整を図り信託の存続を希望するときは、○○県弁護士会の裁判外紛争解決手続を利用する。

□3【                】

援用方式の信託目録

東京法務局不動産部門首席登記官 横山亘登記官の見解(登記情報712号15頁以下など)

・信託目録に,「令和○年○月○日○○○○作成に係る公正証書第○条のとおり」

と記載することの是非

2 FATF金融活動作業部会対応(FATF第4次対日相互審査報告書)

https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20210830/20210830.html

・審査報告書概要から抜粋

「国内外の信託,特に信託会社によって設立されていない,あるいは管理されていない信託の透明性に関しては,課題がある。法執行機関は,より複雑な法的構造を有する実質的支配者情報を備えるために必要な手段を有していないようであり,法人や法的取極めに関連するリスクは十分に理解されていない。」

・審査結果を受けた国の行動計画

項目:民事信託・外国信託に関する実質的支配者情報の利用・正確性確保

行動内容:信託会社に設定・管理されていない民事信託及び外国信託に関する実質的支配者情報を利用可能とし、その正確性を確保するための方策を検討し、実施する。

民事信託契約の公証実務

判例タイムズ2021年6月号~10月号

民事信託の例(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)

信託契約の方式

・書面性は要求されておらず、公正証書による法的必要もないが・・・金融機関(信託口口座)との関係

・代理人による締結(とりわけ、委託者)

・東京地裁令和3年9月17日判決(家庭の法と裁判2021年12月第35号134頁)・・・代理人により作成された信託契約につき、金融機関から信託口口座開設を拒絶されたこと等を理由とする、作成に関与した司法書士に対する損害賠償請求訴訟

・公正証書作成の場合の例外的取扱い

・「家族信託実務ガイド」第23号22頁以下

次男

受託者について

・停止条件付き信託契約

以下のような条項はどうか?

・本信託は、委託者が精神上の障害により後見相当となったときに開始する。

・・・難しい。

登記手続能力に注意?

・「本信託は、医師により、委託者が精神上の障害により保佐又は補助相当となったと診断されたときに開始する。」・・・難しい。

・「本信託は、医師2名以上により、委託者が精神上の障害により保佐又は補助相当となったと診断され、2通目の診断書が作成されたときに開始する。」

補助→保佐→後見とのグレードとの関係・・・難しい。後見でも難しい

信託目的と条項との関係

 利害対立の諸相・受益者の生活の安定と、財産の承継

・遺言代用信託が遺留分を侵害しているか否かについては、受益権割合によって判断する(多数説)と東京地裁平成30年9月12日判決(金融法務事情2104号78頁)。

目的条項の機能

・受託者が信託事務を行う際の指針

・受託者が信託財産についてある行為をしようとする場合に、それが権限内の行為か否、ある結果につき受託者の善管注意義務違反があったか否かを判断する基準

・信託終了の判断基準(163条1号)

・信託の変更(149条2項)・追加信託の基準など

以下のような条項で大丈夫?

「受託者は、信託不動産の瑕疵により生じた損害につき、賠償の責を負わない。」

「受託者は、信託不動産の瑕疵担保責任を免れるものとする。」・・・民法717条、民法562条など

条項例についての提言

ア 「受託者が、本信託の期間中及び本信託終了後、信託不動産の瑕疵に関して固有財産から支出したとき、及び信託不動産の瑕疵により生じた損害の責任を負い第三者に賠償したときは、委託者に対して求償することができる。」(判例タイムズ1483号31頁)

あるいは、

「・・・第三者に賠償したときは、受託者に任務懈怠がある場合を除き、委託者に対して求償することができる。」

後継ぎ遺贈型受益者連続信託(91条)

・ 受益権を「承継」する旨規定する条項

・期間制限に注意(ペット信託など)

民事信託と任意後見の比較

・信託:財産についての管理、処分

・任意後見:財産の管理・処分+身上監護

・老人ホーム入居契約、医療契約等の場合に違いが出る

・新たにローンを組む場合には信託の方が適している・・・任意後見契約の代理権目録に記録可能。金融機関と事前調整出来るのでは?

・信託の方が裁量の幅が大きい

民事信託と任意後見の併用の有用性

・追加信託の際にも委託者に意思能力必要→信託単体だと、委託者の判断能力が低下すると信託の変更・追加信託等はできない・・・信託法146条との関係と、根拠規定が分かりませんでした。

・追加信託時に医師2名以上の診断書を取って保管しておく・・・公正証書作成と比較して、どのような意味があるのか分かりませんでした。金融機関との関係も考える必要があるように思います。

(3)任意後見契約と併用(任意後見契約の代理権目録に、「信託契約における受益権の行使に関する事項」、「信託契約の変更に関する事項」のように明記する)・・・代理権目録と、信託行為との整合性を予めチェックしたいと思います。

自動送金について

・併用の場合の留意点

・受託者(とりわけ、帰属権利者でもある場合)が任意後見人を兼ねることができるか・・・原則として可能と考えます。

・任意後見監督人の役割(現在の家庭裁判所実務は主に横領防止)

・親族の中からの任意後見人の確保

・信託+法定後見の場合の東京家裁の運用

・信託監督人・受益者代理人の活用・・・・・個別具体的な運用が望ましいとは思いますが、家庭裁判所の受け入れ容量もあるので、当事者で予め決められるところは、たとえ後から受け入れられなくても決めておいた方が良いと思います。

金融機関での信託契約書のチェックポイント

• 自己執行義務

• 善管注意義務・忠実義務の免除

• 信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成の免除

• 信託終了時の最終計算の承認を求める義務の免除

・受託者の辞任、解任の規定

・信託法28条(前提:自己執行義務)

・信託法29条2項ただし書、信託法31条1項、32条1項、信託法31条2項、32条2項

・信託法34条2項

・信託法184条1項、信託法184条

・不可条文例(受託者の辞任) 受託者の任務は、下記の事由に該当したときに終了する。

(1)信託法第56条1項各号に掲げる事由

(2)後継受託者の同意を得て辞任したとき

 信託法57条1項本文では、受託者は、委託者及び受益者の同意を得て辞任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、受託者は、委託者及び受益者の同意を得た場合には辞任できず、後継受託者の同意を得た場合にのみ辞任できる(=信託法の原則的な規定を排除する趣旨)のか、それとも、委託者及び受益者の同意を得た場合だけでなく、後継受託者の同意を得た場合にも辞任できる(=信託法の規定に加えて事由を付加する趣旨)のかが不明確である。補足文言の追加を検討する必要あり。・・・その他信託法で定める場合、と追加すれば良いのではないかと思います。受託者の解任についても同じ。

東京地裁平成30年10月23日判決金融法務事情2122号

・受益者連続型の信託契約において、受益者死亡による信託終了の定めがない場合又は信託期間の定めがない場合に、半永続的に信託が継続することにならないか。・・・信託法164条1項で終了などで終了可能だと考えられます。

チェック内容

・遺留分を侵害している場合、取り扱わない金融機関もある。・・・金融機関の自由なので、依頼者が望めば変更。

 金融機関が、預金者が高齢等により意思能力を喪失したことを知ることが出来る場合は支払停止の措置・・・窓口業務の場合、郵便物が届かない場合以外で、どのようなタイミングで知ることが出来るのか、教えて欲しいと感じました。預金者の生活に必須な公共料金等については、例外的な対応は可能な金融機関もあるとのことですが、棲み分ける根拠は何なのだろうと感じます。


[1]信託法28条1項1号、35条

[2] 信託法29条、30条。

[3]「倒産隔離」については、大垣尚司ほか編『民事信託の理論と実務』2016日本加除出版P255注18の見解を採り使用しない。貸金庫と銀行預金を例として説明するものとして、桐生幸之介『不動産の信託による都市創生』2017実務出版P231

[4] 信託法34条。『家庭の法と裁判』35号、2021年2月日本加除出版P141、P142「【1】受託者を預金者とし、【2】外観上、当該受託者個人の名義と区別できる表示が付され、【3】当該金融機関において、内部システム上、当該受託者の個人名義の預金口座(固有財産に属する預金口座に係るCIF(Customer Information File。顧客ファイル)コードとは別異のCIFコードが備えられる、内部手続上、当該預金口座とは異なる取扱いがされる旨の規定が設けられるなど、当該預金口座から分離独立した取扱いがされる預金口座)。」

[5] 信託法56条1項7号。

[6]信託法26条但し書

[7] 信託法91条の読み方として、道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P385、道垣内弘人『条解信託法』2017弘文堂P476、477、法制執務委員会『ワークブック法制執務』2007ぎょうせいP642

[8] 「信託受益権担保」「質権と国税との優先関係」『金融機関の法務対策5000講Ⅳ』2017きんざい

[9] 不動産所有権について、伊藤眞ほか『不動産担保 下』2010金融財政事情研究会P131~。改正民法466条から468条まで。

[10]債権・動産担保について、伊藤眞ほか『債権・動産担保』2020金融財政事情研究会P78~85。株式会社の株式について会社法180条から182条の6、183条、184条。

[11] 村松秀樹他『概説新信託法』2008金融財政事情研究会P255。道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P351。

[12] 信託法139条。

[13] 任意後見契約に関する法律第2条1項1号。成年後見制度の利用の促進に関する法律11条1項5号。民法13条、17条。平成28年12月20日第6回成年後見制度利用促進委員会議事次第P7。成年後見制度利用促進基本計画2017年、3成年後見制度の利用の促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策(4)制度の利用促進に向けて取り組むべきその他の事項①任意後見等の利用促進。

[14] 信託法57条1項但し書。委託者および受託者が本信託のために定めた条項であり、法定後見人および代理権目録に記載のない任意後見人の権限は及ばないと考えられる。

[15] 信託法56条1項7号。

[16] 信託法62条2項の新受託者への就任催告を行うことは出来る(信託法92条1項16号)。

[17] 受託者の行う借入れに対して差し止め請求することは可能(信託法44条、92条1項11号)。

[18] 受託者の行う担保設定に対して差し止め請求することは可能(信託法44条、92条1項11号)。

[19] 信託法48条5項。

[20] 合意が可能な見解として、遠藤英嗣『家族信託契約』P32

[21] (清算中の)信託財産の現状報告請求、書類の閲覧請求は可能(信託法92条1項7号、8号)。

[22] 信託法166条の利害関係人には、法定後見人および代理権目録に記載のない任意後見にも含まれると考える。

[23] 信託法149条1項1号。

[24] 信託法164条3項。

[25] 参考改正民法542条。

[26] 渋谷陽一郎『信託目録の理論と実務』2015民事法研究会P393~

[27] 中村克利ほか「不動産信託受益権質権実行に関する法律と実務」『事業再生と債権管理』2010きんざいP29~P38

[28] 信託法163条1項9号、166条、信託業法85条の7。

[29] 信託法164条1項但し書。

[30] 信託法182条、183条。

[31] 信託法181条。

令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件を踏まえた相談業務と委任契約書について

相談シート(民事信託支援業務)

氏名フリガナ                        

氏名                             

住所                               

電話番号 (     )                      

その他の連絡先(写真やファイルを添付送信可能なメールアドレスなど) 

                                     

                                   

目的(例)

□ ご自身の認知症や疾病への備え。

□ 障がいを持つ子どもや孫の生活保障のため。

□ 共有の不動産があり、管理・処分を1本化したい。

  • その他                        

ご自身が所有する財産

種類種類備考(金額等)
不動産  
預貯金  
保険  
   
   

ご自身が負担中の負債等

項目金額備考(借入先等)
借入金  
連帯保証  
   
   

ご自身の月別収支

収入項目金額支払い項目金額
    
    
    
    
    
    
合計 合計 

1、スケジュール

その1 現状把握

 確認検討
自身の財産・健康状態□ 健康状態
□ 資産の種類と現状
□ どのように活かす
□ 将来の具体的な課題
家族・親族関係□ これまでの関係資産を託せる人  
□個人  
□家族で法人設立  
□信託銀行・信託会社

その2 今後に向けて

 10年前10年後20年後
自身の生活
不動産・お金の行方

その3 他の方法と比較

方法メリット留意点
法定後見・家庭裁判所の監督・本人のための制度
・家族のための制度ではない
任意後見・予め代理する範囲を決めることができる。
・後見監督人の監督
・家庭裁判所の監督  
・本人のための制度
・家族のための制度ではない
ゆいごん・亡くなるまで、資産を動かす必要がない
・遺留分減殺の順序を定めることが可能
・金銭で遺留分を支払うことが可能
・手続に時間がかかる可能性がある。

2、設定手続

 手続の順番設定手続に関わる人専門家
家族信託の説明□ 他の方法や何もしないことと比べて、今後の方向性をつかむ                      □ 司法書士が業務として可能な範囲の説明
□ 他の方法の紹介
□ 他の方法への移行、併用
□ 遺留分の確認
□ 信託口口座開設の状況説明
□ 課題の有無
□ 課題別に他の専門家の紹介・連携 
情報の収集・子どもや孫の生活保障に充てる予定の資産の資料で、現状を把握
□ 金銭(      )   
不動産(     )   
□登記事項証明書   
□固定資産評価証明書

□ 保険
□ 必要書類・情報を確認
□ 道路や建築年数が古い建物、形状が複雑な土地など現地確認
□ 関係者と面談  
・必要な時は変更
□ 他の方法を利用
□ 他の方法を併用
見積書□ 項目についての説明□ 実費
□ 専門家報酬

↑ 相談毎に、

無償の場合、相談者と司法書士事務所との情報の共有。事務所で持つ情報については相談者の署名。

有償の場合、項目毎に請求書・領収書の発行。

民事信託・家族信託を利用するかの判断 □委任契約書(相談業務の終了)

設計案□ 生活の節目ごとに確認・想定される場面ごとに説明
□ 図面(委託者・受託者・受益者・信託財産に属する財産の変更に伴う信託口口座・登記・保険等の財産所有名義、財産管理上の手続き名義の変更)
□ 書式
契約書(案)□ 読み合わせ
□ 分からない箇所
□ 表現を変えたい箇所
□ 修正      
関係機関□ 金融機関
□ 公証センター・公証人役場
□ 保険会社など
□ 口座開設・借入れ予定等について事前確認
□ 事前確認の報告、説明
□ 同行
契約書(案)の最終確認□ 事前確認に基づく修正
・民事信託支援業務の委任契約終了
□ 契約書の読み合わせ
□ 関係者全員の同意
  □ 意思確認
公証人役場 公証センター
□ 公正証書
□ 契約書の保全
□ 高齢者の場合、判断能力の有無に関する一定の予防
□ 同行
関係機関へ 手続き →スタート□ 必要書類準備
□ 金融機関での通帳作成
□ 不動産について登記申請
□ 計算の開始
□ 登記手続き
□ 運営支援
      
      

委任契約書(例)[1]

 【依頼者氏名】、【受託司法書士氏名】は、以下の通り、委任契約を締結する。

第1条(受任の範囲)

 【依頼者氏名】は【受託司法書士氏名】に対し次の事務(以下「本件民事信託支援業務」という。)の処理を委任し、【受託司法書士氏名】はこれを受任した。

(1)民事信託[2]契約書(案)の作成

(2)民事信託契約書(案)に基づく公証人との公正証書作成の調整[3]及び支援[4]

(3)民事信託契約書(案)に基づく信託口口座[5]開設の調整[6]

(4)信託契約公正証書に基づく、不動産登記代理申請及び商業法人登記代理申請

(5)信託契約公正証書に基づく、信託財産に属する財産の受託者への名義変更手続きの支援[7]

(6)前各号の事務処理のため必要な戸籍謄抄本、住民記載事項証明書、固定資産評価証明書等官公署等の発行に係る証明書類の請求および受領

(7)上記に付随する一切の業務

  

第2条(司法書士報酬等)

  【依頼者氏名】は、【年月日】見積書の定めに合意した。

 2 本件委任事務の処理に関する費用は、【依頼者氏名】の負担とする。

第3条(情報の提供、説明および保持)

 1 【受託司法書士氏名】は、本件民事信託支援業務を遂行するにつき【依頼者氏名】対して、次の情報を提供する。

(1)民事信託契約書(案)に基づく公証人との公正証書作成の調整において、公証人から修正案などが示された場合の情報

(2)民事信託契約書(案)に基づく信託口口座開設の調整その他の信託内融資など信託の目的、受託者の権限に対する金融機関の対応について、金融機関からの返信に関する情報

(3)信託契約公正証書に基づく、信託財産に属する財産の受託者への名義変更手続きの支援について、【受託司法書士氏名】に対して連絡が来た場合の情報

(4)その他の本件民事信託支援業務を遂行するにつき必要な戸籍謄本、住民票写し、固定資産評価証明書等、官公署等の発行に係る証明書類を受領した場合の情報

2 【受託司法書士氏名】は、本件民事信託支援業務に関して知り得た秘密を、正当な理由なく第三者に漏らしてはならない。

第4条(契約の終了)

 1 依頼者氏名】、【受託司法書士氏名】は、いつでも本契約を終了させることができる。

 2 本契約は、次の事由により終了する。

   (1)【依頼者氏名】または【受託司法書士氏名】の死亡

   (2)【依頼者氏名】または【受託司法書士氏名】が補助、保佐、後見開始の審判を受けたとき

第5条(契約終了後の措置)

1 契約終了後は、【依頼者氏名】、【受託司法書士氏名】ともに権利義務を清算する。

2 費用の清算については、【年月日】見積書の項目について業務が完了している項目について【依頼者氏名】が【受託司法書士氏名】に対して支払う。

3 業務が完了していない項目については、次の場合、【依頼者氏名】が【受託司法書士氏名】対して支払う。

(1)【受託司法書士氏名】が立替払いしている費用

(2)【受託司法書士氏名】が書類作成、相談、関係機関同行などで時間を費消しているもの【年月日】見積書に定める時間・書類ごとの報酬

 4 契約終了が【受託司法書士氏名】の情報提供義務、説明義務違反に基づく場合、【依頼者氏名】は、前各号に基づく項目について費用を支払う義務を負わない。

第6条(契約に定めのない事項)

本契約に記載のない事項は、【依頼者氏名】と【受託司法書士氏名】が協議の上、これを決定する。

 【依頼者氏名】と【受託司法書士氏名】は、本委任契約の合意内容を十分に理解したことに相互に確認し、その成立を証するため本契約書2通を作成し、それぞれ保管する。

   年   月  日

依頼者

住   所 〒                               

氏   名                               

電話番号                                

    (その他の連絡先)                        

生年 月日          年     月   日 

司法書士

   所 在 〒                   

   氏 名 司法書士                   

参考

『家庭の法と裁判』 2021年12月号vol.35日本加除出版         


[1] 他に任意後見契約、遺言公正証書などを併用する場合でも、契約終了時点を明確にするため、委任契約書は別に作成する。

[2] 大垣尚司、新井誠『民事信託の理論と実務』平成28年日本加除出版P2「委託者以外の物が尾受託者となる信託行為(他社信託)のうち、信託(受託者)の引受けが営業としてなされる結果商行為となる信託行為(協議の商事信託または営業信託【商法502条1項13号】)以外のもの(民事他者信託)と委託者が受託者となる信託行為(自己信託)のうち、信託業法に基づく登録(信託業法50の2条)が不要なもの(民事自己信託)、ならびに、営業として信託の引受けにあたるが、信託業法に基づく免許・登録(信託業法3条、同法7条)が不要なもの(適用除外信託、信託業法2項1項括弧書、信託業法施行令1の2条)の3つの信託の思総称。

[3] メールによる文言などの調整を指す。

[4] 公証センター(公証人役場)への同席を指し、嘱託代理を含まない。

[5] 令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件において示されている【1】受託者を預金者とし【2】外観上、当該受託者の名義と区別できる表示が付され、【3】当該金融機関において、内部システム上、当該受託者の個人名義の預貯金口座(固有財産に属する預貯金口座)に係るCIF(Customer Information File。顧客情報ファイル)コードとは別異のCIFコードが備えられる、内部手続上、当該預金口座とは異なる取扱いがされる旨の規定が設けられるなど、当該預金口座から分離独立した取扱いがされる預金口座、の要件を満たす口座。

[6] 信託口口座開設予定の金融機関が利用可能な手段(メール・FAX等)での事前調整、同行支援を指す。信託口口座開設手続の代理を含まない。

[7] 手続方法の説明、手続情報作成の支援、手続が必要な機関への同行を指す。手続代理を含まない。

民事信託支援業務と司法書士の責任―東京地裁令和3年9月17日判決を題材に

市民と法[1]の記事、橋谷聡一大阪経済大学教授「民事信託支援業務と司法書士の責任―東京地裁令和3年9月17日判決を題材に―」からです。

一方、本件において、Yは自らが説明すべき事実について認識していた、あるいは認識し得たのかについて疑問が残る。換言すれば、その専門性に基づく知見や自ら負う義務についての認識がーあくまでも結果論にすぎないがー欠如していたことを認識していたのであろうか。

 私見ですが、この点は認識していなかった可能性が高いのではないかと思います。理由としては、民間の民事信託・家族信託系の資格を持っている(研修を受けている)ので、講師からの情報を基に、これなら大丈夫と考えながら、自分の目の前の具体的な事件に対して、当てはめることをしなかっただけではないかなと感じます。

 例えば、信用金庫提携の士業が研修講師であれば、事前確認しなくとも、多少間違っていても、口座を開設出来るのではないか、などと考えてしまったのかなと思ったりします。

すなわち、形式ではなく実質をみるならば、相談・助言の段階から本件第1委任契約を含む「民事信託支援業務」の履行が開始されていた、あるいは少なくとも本件第1委任契約に直接つながる司法書士の相談業務が開始されていたとみるべきではないか。

 私は委任契約前の相談・助言と、その他の民事信託支援業務の切り離しは可能だと思います。ただし、個別具体的事件に当てはめたとき、実質的に一体と評価される可能性はあり得ると考えます。

しかし、信託について専門性を有するというYは、本件判決でいうところの信託口口座(広義)、信託口口座(狭義)について、いかなるものであり、何を目的としてどのように開設するのか、両者のメリット・デメリットをXに説明し、その意思を確認したうえで信託契約の締結を支援する義務を負っていたのではないか。

 義務を負っていたと思います。特にデメリット面に関して、平成30年当時は金融機関の口座は、事前確認をしていても、実際に開設をするまで分からない、ということは説明していても良かったのかなと思います。

ただ、本件では、AがXの意向を汲みつつではあるが、Xの意向がYに伝えられていた。裁判所はどの程度契約の内容が確定されていることを求めるのかとの点でいささか厳格にすぎる判断を下したとみえる。

 個人的には、原告の主張立証との関係が影響しているのではないかなと感じます。ただ、現時点で上手く言語化出来ません。

また、不法行為と構成しようが債務不履行と構成しようが、ある特定の司法書士が他の司法書士等、つまり、本件ならば、司法書士のみならず弁護士、行政書士等のように広狭あれども競合する業務を行う可能性がある他の専門職よりも自らの能力が高く、提供する業務の品質が優良であると依頼者が認識しうる広告をし、あるいは肩書を用いているなら、依頼者からの信頼に対する責任がさらに加重されることはやむを得ない。

私も名刺に、民事信託、と記載しているので責任は自覚しています。同時に、(一社)民事信託推進センターから除名処分された者でもあります(公開しています。)。そのことを踏まえて、依頼者は私に委任してくださっています。

あるいは、弁護士および司法書士等隣接法律専門職種がイニシアチブをとり信託が設定されるという状態が福祉型の信託を含む民事信託で生じているなら、それこそが背後に存在する重大な問題である。

 同意しますが、民事信託について知らない市民の場合、どのような情報提供に留めるのか、バランスの問題なのかなと思います。

今後、このような課題が顕在化した場合、重大な問題となるだろう。たとえば、受益者の依頼により民事信託支援業務を行う弁護士や司法書士等法律専門職種が、依頼者に対する説明とその理解の確認すらないままに信託契約において受託者の義務をあらかじめ軽減したり、一方では受益者のために信託監督人の地位にありながら受託者に利益が生じ忠実義務違反ともなりかねない信託事務の遂行について相談・助言等を行うという状況が生じないと断言できようか。

 この辺は、難しい点だと感じます。

例えば、一般社団法人民事信託監督人協会という法人がありますが、法人内部の士業が民事信託支援業務を行った民事信託について、法人が信託監督人になっている場合、記事のような点についてどのような整理がされているのか、分かりません。司法書士会内部での声を聴いたこともありません。

https://info.gbiz.go.jp/hojin/Search

 民事信託支援業務を行った士業個人が信託監督人に就く場合もあると思います。委託者からの信頼が厚く、請われて就任した場合もあると思います。このような場合、当初は委託者兼受益者のために業務を行うことが可能だと思います。しかし、受益者の判断能力が衰えてきたとき、信託の終了が近づいてきたとき、相続に向けてどのように財産を残すか受託者(兼残余財産の帰属者・残余財産の帰属権利者)が判断をするとき、第2次受益者の要望と受託者の判断が異なるとき、どのような立ち位置を取るのが適切なのか、分かりません。人間関係に引きずられる、受益者の要望や信託の目的ではなく、信託財産に属する財産全体の帰属先(出口)のことを考えて損か得かを助言してしまう、ということは私にも充分あると思います。

私は現在のところ、信託監督人への就任は断らせていただいています。

しかし、このように厳密に解釈すると、依頼の趣旨に沿い書類作成のために法律的に整序する相談を有償で行えるとしか解することができない。整序にとどまると考えると、司法書士が専門職としてよりよい方法を「提案」することを通じ、依頼者の要請に応えることはできないか、極めて狭い範囲にとどまり、かえって依頼者の利益を損なう可能性がある。

同意します。

貸金業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=358AC1000000032

このような観点からは、無理にコンサルティング業務を進めるのではなく、上述の専門家らとともに相互補完的に民事信託支援業務にかかわるべきであろう。

同意です。

まぁ、あの論争のど真ん中で振り回されてる立場としては疲れますよ、正直。

今回は橋谷先生、渋谷陽一郎さん、いずれもいい味を出していました。


[1] 135号、2022年6月、民事法研究会、P22~

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