商業登記受託促進研修会第1部 日本司法書士会連合会
1.登録免許税の基礎知識編
1ー1商業登記と法人登記
(1)商業登記
商業登記の意義
商法、会社法または商業登記法の規定に基づき商人の組織等について商業登記簿にする登記
商業登記規則(登記簿の編成)第1条
商業登記簿は、登記簿の種類に従い、別表第1から第8までの上欄に掲げる各区に区分した登記記録をもつて編成する。
主体での分類
個人商人、未成年者、支配人、会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)
(2)法人登記
法人登記の意義
・会社以外の法人について、それぞれの法人の設立根拠法に基づき、各種法人登記簿にする登記
・統一した法律根拠法なし
設立根拠法による分類
社団法人・財団法人
組合等登記令の別表に記載のない法人
組合等登記令の別表に記載のある法人
独立行政法人等登記令の別表に記載のある法人
・組合等登記令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029
(2)法人登記|一般社団法人・一般財団法人
設立根拠法(実体法)と登記手続法令(手続法)が同一
法人名、設立根拠法(実体法)、登記手続法令(手続法)
一般社団法人、法人法、法人法(法登規)
一般財団法人、法人法、法人法(法登規)
※法人法 = 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法48号)
※法登規 = 一般社団法人等登記規則(平成20年法務省令48号)
実体法 手続法
法人法301条(一般社団法人の設立の登記)
一般社団法人の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない。
一 省略二 省略
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。省略
一般社団法人等登記規則2条(登記簿の編成)
一般社団法人等の登記簿は、登記簿の種類に従い、別表第1又は第2の上欄に掲げる各区に掲げる区分した登記記録をもって編成する。
2 前項の区には、その区分に応じ、別表第1又は第2の下欄に掲げる事項を記録する。
【コラム】株式会社と社団・財団法人の準用関係
法人法330条により、大部分を商業登記法を準用法登規3条により、大部分を商業登記規則を準用
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
(商業登記法の準用)第三百三十条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000048
条文摘要
1条の2会社法人等番号
50条商号【名称】の登記に用いる符号
61条1項 定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に定款を添付
61条4項 設立(合併及び組織再編による設立を除く。)の登記は、設立時取締役【理事】が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付取締役【理事】の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑についても同様
61条5項 取締役会【理事会】設置会社における前項の規定の適用については「設立時取締役【理事】」とあるのは「設立時代表取締役【理事】」
【コラム】株式会社と社団・財団法人の準用関係
61条6項 代表取締役【理事】の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。
ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役【理事】が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
①株主総会【社員総会】の決議によって代表取締役を定めた場合
議長及び出席した取締役【理事】が株主総会【社員総会】の議事録に押印した印鑑
②取締役【理事】の互選によって代表取締役【理事】を定めた場合取締役【理事】がその互選を証する書面に押印した印鑑
③取締役会【理事会】の決議によって代表取締役【理事】を選定した場合
出席した取締役【理事】及び監査役【監事】が取締役会【理事会】の議事録に押印した印鑑(※法人法95条3項で押印者の別段の定めが可能)
(理事会の決議)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000048
第九十五条 1項、2項略
3 理事会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した代表理事とする旨の定めがある場合にあっては、当該代表理事)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
61条7項 本人確認証明書
61条8項 登記所に印鑑を提出した代表取締役【理事】の辞任の登記は、辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書の添付。又は、登記所に提出した印鑑での押印
81条の2 役員等につき、旧氏の併記の申出
(2)法人登記 組合等登記令の別表に記載がある法人
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029
組合等登記令第1条(適用範囲)
別表の名称の欄に掲げる法人の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。
別表の名称に記載(84種類)
・登記事項
目的及び業務
名称
事務所の所在場所
代表権を有する者の氏名、住所及び資格
組合等登記令プラスαの登記事項
資産の総額
存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
別表の登記事項の欄に掲げる事項(プラスα)
(※各法人固有の登記事項)
設立根拠法:医療法第43条
医療法人は、政令【筆者注:組合等登記令】で定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転、その他登記事項の変更、解散、合併、分割、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない。
(2)法人登記―組合等登記令の別表に記載がない法人
株式会社、社団・財団法人、組合等登記令対象法人以外に法人は存在するか?
宗教法人設立根拠法:宗教法人法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000126
宗教法人法52条(設立の登記)
宗教法人の設立の登記は、規則の認証書の交付を受けた日から2週間以内に、主たる事務所の所在地においてしなければならない。
2 設立の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的(第6条の規定による事業を行う場合には、その事業の種類を含む。)
二 名称
三 事務所の所在場所
四 当該宗教法人を包括する宗教団体がある場合には、その名称及び宗教法人非宗教法人の別
五 基本財産がある場合には、その総額
六 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
七規則で境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物に係る第23条第1号に掲げる行為に関する事項を定めた場合には、その事項
八規則で解散の事由を定めた場合には、その事由
九公告の方法設立根拠法に登記手続法令も規律その他、事業協同組合(中小企業等協同組合法)が該当
(2)法人登記 独立行政法人等登記令の別表に記載のある法人(参考)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000028
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
独立行政法人通則法
9条(登記)独立行政法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000103
独立行政法人等登記令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000028
2条(設立の登記)
独立行政法人等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地においてしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一名称
二事務所の所在場所
三 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
四 独立行政法人及び国立大学法人等にあつては、資本金
五 代表権の範囲又は制限に関する定めがある独立行政法人にあつては、その定め
六 独立行政法人北方領土問題対策協会にあつては、基金
七 別表の名称の欄に掲げる法人にあつては、同表の登記事項の欄に掲げる事項
(3)課税対象
法人は登録免許税適用法人ではない
登録免許税・・・第三者に対する対抗要件を備える等、その権利が保護される利益に着目して課税
登録免許税は、別表第1に掲げる登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明について課する。
登録免許税法 別表第1(抜粋)
1不動産の登記(不動産の信託の登記を含む)
2船舶の登記
5 工場財団等
9 動産譲渡又は債権の譲渡若しくは質権の設定の登記
法人登記の規律なし
租税法律主義(憲法84条)
会社又は外国会社の商業登記(相互会社及び外国相互会社の登記並びに一般社団法
24人及び一般財団法人に関する法律の規定によってする一般社団法人(公益社団法人を除く。)及び一般財団法人(公益財団法人を除く。)の登記を含む。)
25特定目的会社の登記
26投資法人の登記
27有限責任事業組合契約の登記(LLP)
28投資事業有限責任組合契約の登記(LPS)
28の2 限定責任信託の登記
29個人の商業登記(※未成年者・後見人の登記を含む)
登録免許税法別表1・24(抜粋)
登録免許税は、別表第1に掲げる登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明について課する。
(一)会社・一般社団法人、一般財団法人
登記の事項、課税標準、税率
イ 株式会社の設立の登記(新設合併・組織変更・新設分割の設立を除く)
資本金の額×1000分の7(計算した税額が15万円に満たないときは15万円)
ロ 設立の登記合名会社・合資会社・一般社団(財団)法人の申請
件数 1件につき6万円
合同会社の設立の登記
ハ (新設合併・新設分割・組織変更・種類変更による設立を除く)
資本金の額×1000分の7(計算した税額が6万円に満たないときは6万円)
ニ (株式会社吸収合併・合同会社の資本金の増加の登記吸収分割による資本金の増加を除く)
増加した資本金の額×1000分の7(計算した税額が3万円に満たないときは3万円)
ホ 合同会社の設立の登記新設合併・組織変更・種類の変更による株式会社又は資本金の額×1000分の1.5(新設合併により消滅した会社等の新設合併等の直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については1000分の7)計算した税額が3万円に満たないときは3万円
登録免許税法別表1・24(抜粋)
登録免許税は、別表第1に掲げる登記、登録、特許、免許、許可、認可、指定及び技能証明について課する。
(一)会社・一般社団法人、一般財団法人
登記の事項、課税標準、税率
ヘ 増加の登記吸収合併による株式会社・合同会社の資本金の増加した資本金の額
1000分の1.5(吸収合併により消滅した会社の吸収合併の直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については1000分の7)(税額が3万円に満たないときは3万円)
ト 新設分割による株式会社・合同会社の設立の登記
資本金の額×1000分の7(計算した税額が3万円に満たないときは3万円)
チ 吸収分割による株式会社・合同会社の資本金の増加の登記 資本金の額増加した資本金の額×1000分の7 (計算した税額が3万に満たないときは3万円)
ヌ 新株予約権の発行による変更の登記
申請件数
1件につき9万円
ル 支店・従たる事務所の設置の登記
支店・従たる事務所の数1か所につき6万円
ヲ 本店(主たる事務所)・支店の移転の登記
事務所の数1か所につき3万円
登録免許税法別表1・24(抜粋)
(一) 会社・一般社団法人、一般財団法人
登記の事項、課税標準、税率
ワ 取締役会、監査役会、監査等委員会・指名委員会等又は理事会に関する事項の変更の登記
申請件数1件につき3万円
取締役、会計参与、監査役、会計監査人、指名委員会等のカ 委員、執行役、社員(※持分会社)理事、監事、評議員に関する事項の変更の登記
申請件数1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社・一般社団法人等については1万円)
ヨ 支配人の選任の登記・その代理権の消滅の登記
申請件数1件につき3万円
レ 会社・一般社団法人等の解散の登記
申請件数1件につき3万円
ソ 会社・一般社団法人等の継続の登記
申請件数1件につき3万円
ツ 登記事項の変更、消滅又は廃止の登記(上記以外)
申請件数1件につき3万円
ネ 登記の更正の登記
申請件数1件につき2万円
ナ 登記の抹消の登記
申請件数1件につき2万円
登録免許税法別表1・24(抜粋)
(二)外国会社・外国相互会社の登記 省略
(三)会社・一般社団法人等の清算に係る登記
登記の事項、課税標準、税率
イ 清算人・代表清算人の登記
申請件数1件につき9,000円
ロ 清算人(代表清算人)の職務執行者の停止、その取消、変更又は清算人(代表清算人)の職務代行者の選任、解任、変更の登記
申請件数1件につき6,000円
ハ 清算の結了の登記
申請件数1件につき2,000円
登記事項の変更、消滅、廃止の登記
ニ (これらの登記のうちロに掲げるものを除く)登記の更正の登記、登記の抹消
申請件数1件につき6,000円
(2)定額課税
申請件数、本店・支店の数を基準に登録免許税が定められているもの
論点
登録免許税法別表における同一区分の扱い(数個の登記)は?
結論
1件の登記として登録免許税を納付
根拠 昭和29年4月2日民甲866号通達 (登記研究79号42頁)
登記事項が時を異にする場合でも可能
• 例:令和5年2月1日商号変更、2月10日の目的変更を同一申請(大正11年11月10日民事4841号民事局長回答)
具体例免許税根拠、結論、備考
商号変更、目的変更、(ツ)、同一区分
商号変更、取締役の変更、(ツとカ)、同一区分ではない
商号変更、取締役会設置会社の定めの廃止、(ツとワ)、同一区分ではない
監査役変更、監査権限の廃止、(カ)、同一区分
取締役会廃止、監査役廃止、(ワとツ)、同一区分ではない
支店設置、支店廃止、(ルとツ)、同一区分ではない、設置は支店数基準、廃止は申請件数基準
支配人の辞任、選任、(ヨ)、同一区分取り扱わない(昭和42年7月22日民甲2121号、登記研究237号114頁)【例外】財貨の流通があるときは、資本金の額等に一定の比率を乗じた税額を算定。ただし、最低税率の定めあり
ポイント
その税額の基準となる額 = 課税標準額
課税標準額×税率=登録免許税
具体例 課税標準額、税率、根拠
株式会社の設立の登記、資本金の額、1000分の7、24号(1)イ
株式会社の資本金の額の増加の登記、増加した資本金の額、1000分の7、24号(1)ニ
吸収合併による株式会社の資本金の増加の登記、増加した資本金の額、100分の1.5、24号(1)ヘ
増資により、発行済株式の総数が増加するが、別途、登録免許税は不要
端数処理
課税標準額に1,000円未満の端数
端数切り捨て(国税通則法118条1項)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000066
税額に100円未満の端数
端数切り捨て(国税通則法119条1項)
課税標準が1,000円未満
1,000円として計算(登録免許税法15条)
【具体例】3,015万9,500円の増資(すべて資本金の額に計上)
3,015万9,000円
1000分の7
21万1,113円
21万1,100円
課税標準額 税率 登録免許税
最低税額
具体例 課税標準額 計算式 計算額 最低額
株式会社設立 1,000万円 ×7/1000 7万円 <15万円
株式会社設立 3,000万円 ×7/1000 21万円>15万円
合同会社設立 500万円 ×7/1000 3万5,000円<6万円
合同会社設立 1,000万円 ×7/1000 7万円>6万円
増資 300万円 ×7/1000 2万1,000円<3万円
増資 2,000万円 ×7/1000 14万円 >3万円
(4)定率課税と定額課税の同一申請の計算方法
それぞれの登記について登録免許税を合算
登録免許税法18条
(2以上の登記等を受ける場合の税額)
同一の登記等の申請書により、別表第1に掲げる登記等の区分に応じ2以上の登記等を受ける場合における登録免許税の額は、各登記等につき同表に掲げる税率を適用して計算した金額の合計金額とする。
特例有限会社の株式会社移行(資本金変動なし)と目的変更
登記事項、登録免許税、根拠
有限会社の解散、3万円、24(一)レ
株式会社の設立、3万円、税法17条の3、24(一)ホ
目的変更、※課税なし(設立に内包されていると考える。)
合計6万円
増資・同一管轄内の本店移転・商号変更
登記事項、登録免許税、根拠
増資分、3万5,000円、24(一)ニ 定率課税
本店移転、3万円、24(一)ヲ 定額課税
商号変更、3万円、24(一)ツ 定額課税
合計 9万5,000円
登録免許税法第21条
方策 税額に相当する金銭を納付書を添えて提出
提出先 日本銀行・金融機関・国税の収納を行う税務署
貼付 領収書(原本)を登記申請書に貼付
(2)電子納付
歳入金電子納付システム(登録免許税法第24条の2)
•電子情報処理組織を使用して登記の申請をする方法による納付の特例
ATMを利用した方法(ペイジー)
•ATMのメニューの中から「税金・各種料金の払込み」を選択
•通知された納付情報の収納機関番号を入力
•事前に金融機関に登録
•申請用総合ソフトを利用の場合は電子納付画面の「納付」ボタンを利用して各金融機関のインターネットバンキングにアクセス
インタ―ネットバンキングを利用した方法
登記・供託オンライン申請システムの解説(法務省HP)
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/cautions/charge/charge.html
•手数料の納付状況は、処理状況一覧画面の納付情報で確認
•電子納付を利用できる時間は、各金融機関のシステムで確認
•手数料合計金額が11桁を超える場合は、電子納付不可
(2)電子納付
連件申請の電子納付に係る一括納付の取扱いが可能に
対象•電子納付
•書面申請や領収書・印紙納付は対象外
時期•令和4年12月19日~
留意点•申請時に一括納付の希望を選択
•連件の1件目に対し、合算した納付情報が発行
•連件申請内に無税や免税の申請があっても可能
•従来の連件申請としての範囲の登記が対象
•一括納付希望後に収入印紙で納付することも可能
(3)印紙納付
登録免許税法22条
条文上の原則
•管轄登記所の近傍に収納機関が存在しないために現金納付が困難であると(地方)法務局長が認め、これを当該登記所に公示した場合
•登録免許税が3万円以下であるか、または税額の3万円未満の端数の部分を納付する場合
•このほか、印紙により納付することに特別の事情があると登記機関が認めた場合
実務上の取扱い
• 昭和45年12月8日民事三発958号依命通知(登記研究 278号 70頁)
「特別の事情があると認められる場合には、(省略)登録免許税を印紙によって納付することができるが、右の特別の事情が認められない場合でも登録免許税相当額の印紙を申請書にはり付けて申請された登記の申請を、商業登記法の規定によって却下するのは、相当ではない。
結論
•事実上、無限定で印紙納付が認められている
(2)特定創業支援事業証明書
創業希望者、創業して間もない人を支援するための国・自治体によるサポート事業「産業競争力強化法」に基づく支援事業
•セミナーや勉強会への参加
株式会社・・・資本金×0.35% (最低額7.5万円)
合同会社 資本金×0.35% (最低額3万円)
合名会社・合資会社 3万円 (通常6万円)
設立における登録免許税軽減(半減)
日本政策金融公庫の新規開業資金融資の低利率
日本政策金融公庫の新創業融資が受けやすい
自治体の助成金や補助金の利用範囲の拡充
•創業計画書の作り方の指導
•専門家の派遣
※対象でない自治体もあり支援事業の受講を修了
「特定創業支援事業の支援を受けたことの証明書」
1還付理由
•申請が却下された場合(登録免許税法第31条1項1号)
•申請が取り下げられた場合(同条2号)
•登録免許税を過大に納付したとき(超過額)(同条3号)
•再使用証明の還付(同条5項)
2対象
•領収書、収入印紙、電子納付
3留意点
•代理人が受領することも可能
•委任状必要(平成21年3月31日法務省民二第844号)
•代理受領の委任状につき、登記申請の際の委任状に代理人の還付金受領権限が記載されているものでもよい(平成26年5月9日法務省民二第272号・商事課長依命通知、登記研究 805号178頁。)
•申請人に国税の未納がある場合、還付金は未納付の国税に充当される委任状記載事項:「登記に係る還付金を受領すること」
却下事由(商業登記法24条)
一 申請に係る当事者の営業所の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
二 申請が登記すべき事項以外の事項の登記を目的とするとき。
三 申請に係る登記がその登記所において既に登記されているとき。
四 申請の権限を有しない者の申請によるとき。
五 第21条第3項に規定する場合において、当該申請に係る登記をすることにより同項の登記の申請書のうち他の申請書に係る登記をすることができなくなるとき。
六 申請書がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。
七 申請書に必要な書面(第19条の2に規定する電磁的記録を含む。)を添付しないとき
八 申請書又はその添付書面(第19条の2に規定する電磁的記録を含む。以下同じ。)の記載又は記録が申請書の添付書面又は登記簿の記載又は記録と合致しないとき。
九 登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき。
十 申請につき経由すべき登記所を経由しないとき。
十一 同時にすべき他の登記の申請を同時にしないとき。
十二 申請が第27条の規定により登記することができない商号の登記を目的とするとき。
十三 申請が法令の規定により使用を禁止された商号の登記を目的とするとき。
十四 商号の登記を抹消されている会社が商号の登記をしないで他の登記を申請したとき。
十五 登録免許税を納付しないとき。
還付通知書
•登録免許税の過誤納があるときは、登記を受けた日から5年以内に、請求することが可能(登税31条2項、登税施行令31条2項)
•領収証書又は印紙について再使用の証明を受けた場合、その領収証書、又は印紙を再使用しないこととなったときは、その証明の日から1年以内に、再使用証明を無効とするとともに、登録免許税の還付を受けたい旨の申出をすることが可能
•特定創業支援事業の支援を受けたことを失念し、通常の税率による設立を了した場合には、すでに納付した登録免許税の還付は不可
•登記官から所轄税務署長に通知(登録税31条)
•商業登記等事務取扱手続準則第76条(別記48号様式)
(2)再使用証明
収入印紙または領収証書が対象(電子納付は再使用の概念なし)
趣旨
• 都度、還付手続をとることは煩雑
• 商業登記等事務取扱手続準則第77条(別記50号様式)
取下げの日から1年以内
再使用証明をした登記所に申出書を提出
領収書・印紙を張り付けた用紙の余白に
「再使用できることを証明する」旨の文言
(2)再使用証明
1補正のための取下げ
• 登記の申請を却下しなければならない場合であっても、登記官が相当と認めるときは、事前にその旨を申請人又はその代理人に告げ、その申請の取下げの機会を設ける(商業登記準則40条4項)
2申請意思の撤回
• 撤回に係る委任状が別途必要(昭和29年12月25日民事甲2637号通達、登記研究 87号 33頁)
3留意点
•登記の完了、申請の却下の決定があるまでは、いつでも申請の取下げ可
(商業登記準則54条2項)
•数個の登記の申請がされた場合に、一部の取下げも可(商業登記準則54条8項)
•取下げが不動産登記の印紙の場合、商業登記に再使用することも可
•同じ登記所において使用(登録免許税法31条3項)
(1)設立類型
設立行為
形態、単独
完全子会社設立、完全親会社設立
類型、通常設立、新設分割、株式移転
留意点
•設立登記申請日が会社設立日になるため、法務局が開庁していない土日祝日は選択できない
•日付のバックデートが当然にできない
•債権者異議手続等が必要な類型については、時間がかかる
•組織再編のスケジュールについては、後半の組織再編を参照
•法人の届出印の作成についても考慮
•グループ再編としての位置付けの場合、新設分割や株式移転のスキームによることも
(1)設立類型
圧倒的に発起設立が多い
発起設立
定款の作成(26条)
定款の認証(30条)
設立時発行株式に関する事項の決定(32条)
出資の履行(払込)(34条)
設立時役員等の選任 (38 条)
設立時役員による事項の調査(46 条)
本店所在場所の決定
設立時代表取締役の選定
設立登記申請
募集設立
定款の作成(26条)
定款の認証(30条)
設立時発行株式に関する事項の決定(32条)
出資の履行(払込)(34条)
設立時募集株式に関する事項の決定(58条)
設立時募集株式の申込み(59条)
設立時募集株式の割当(60条)
設立時募集株式の引受け(62条)
設立時募集株式の払込金額の払込(63条)
創立総会における役員等の選任(88条)
設立時役員による設立事項の調査(93条)
本店所在場所の決定
設立時代表取締役の選定
設立登記申請
(2)設立時発行株式に関する事項(32条)
•発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数(各発起人ごとに記載)
•設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
•成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
設立時発行株式に関する事項が「定款」に記載してあるか否か
ある→ 充足
ない→発起人同意書
問題意識
定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じない(30条)
定款に発起人を記載。効力が生じないとすると発起人の定めも未確定ではないか?
認証後でなければ、払込ができないのではないか?
1 時期
• 設立時発行株式の引受「後」、遅滞なく出資に係る金銭の全額払込み(34条)
2例外
• 定款認証日前であっても払込金額が記載された定款又は発起人全員の同意書の作成日より後の日付をもって払い込まれた事実が判明する払込も可(昭和31.5.19民四第103号回答。登記研究103号29頁。)
3 さらに例外的(救済的)処置
•条文上、設立時発行株式の引受後の払込となっているが?
払込時期の緩和(例外的・救済的措置)
令和4年6月7日規制改革実施計画(閣議決定)https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html
(5.個別のスタートアップ・イノベーションより)
• 株式会社発起設立時の出資に係る払込みの時期について、設立時発行株式に関する事項が定められている定款の作成日又は発起人の同意があった日前に払込みがあったものであっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る)の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものについて、設立登記申請の4週間前など近接した時期のものであれば、出資に係る払込みがあったものと認めることとする。
令和4年6月13日株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について(令和4年6月13日民商286号)通知
•預金通帳の写し又は取引明細表その他払込取扱機関が作成した書面に記載された払込みの時期については、設立時発行株式に関する事項が定められている定款(商業登記法第47条2項1号)の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面(同条第 3項)に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、
•その前に払込みがあった場合であっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る(平成29年3月17日民商第41号通達参照。登記研究 833号 147頁。))の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば、差し支えない。
払込取扱場所(34条)
払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法2条第1項に規定する銀行をいう。)、信託会社(信託業法第2条第2項に規定する信託会社をいう。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所
可否、備考
○株式会社ゆうちょ銀行、昔の郵政公社は不可
○外国金融機関の本店、施行規則7条・銀行法47条
○信用金庫、施行規則7条
○農業協同組合、施行規則7条
○ネット銀行、銀行法4条1項
○ 邦銀の海外支店、平成28年12月20日民商179号。登記研究 832号 172頁。
払込があったことを証する書面(商業登記法47条2項5号)
すでにある残高でもよいか→不可
振込でなければならないのか→入金でもよい
発起人各自での入金が必要か→複数人まとめても可
複数回分けての入金でもよいか→可能
資本金の額よりも多い金額の入金は→可能
発起人が法人の場合、代表取締役個人口座は→不可
発起人毎に口座への入金は→可能
当該預金通帳の口座名義人の範囲について
原則・発起人
例外・設立時取締役
発起人から払い込みの受領を委任した旨の書面をあわせて添付記載例 「出資の払込を受領する権限を設立時代表取締役○○に委任」
例外
外国居住の例外
発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合の特
例として、発起人及び設立時取締役以外の者であっても差し支えない
(平成29年3月17日民商第41号通達)。
募集設立の場合には払込保管証明書を金融機関で発行してもらうことが必要
払込を証する書面には押印の有無の審査を要しない
令和2年7月17日(閣議決定)
「経済財政運営と改革の基本方針2020」
• 書面・押印・対面主義からの脱却等
書面・押印・対面を前提とした我が国の制度・慣行を見直し、実際に足を運ばなくても手続できるリモート社会の実現に向けて取り組む。このため、全ての行政手続を対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す。また、押印についての法的な考え方の整理などを通じて、民民間の商慣行等についても、官民一体となって改革を推進する。行政手続について、所管省庁が大胆にオンライン利用率を引き上げる目標を設定し、利用率向上に取り組み、目標に基づき進捗管理を行う。
平成3年1月29日民商10号「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」(通達)
• 第4 押印既定の見直し
法令上,押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面については,押印の有無について審査を要しないものとする。
※申請書・商業登記規則61条4項(就任承諾)、6項(選任担保の議事録)、8項(登記所に印鑑を提出した者の辞任)については押印規定を維持
(4)取締役・監査役の選任
出資の履行が完了した後に選任(38条)
役員の記載
定款に定められている場合
出資の履行が完了した段階で設立時役員に選任されたものとみなす(38条4項)
定款に定められていない場合
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時役員を選任(38条1項)
(5)現物出資
金銭以外の財産を出資すること
1メリット
• 会社が必要としている財産を発起人が所有している場合、端的に取得することが可能
2デメリット
•検査役の調査が必要(時間と費用がかかる)
•検査役調査不要の例外規定あり(合同会社は常に不要)
3定款記載事項(28条1号)
• 出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額、その者に割り当てる株式の数
4規定の理由
• 現物出資の目的財産の価額を過大評価し、他の株主持分の希釈化を阻止するため
•いつ、検査役の選任を申し立てるのか?→公証人の定款認証後遅滞なく(33条1項)
•選任された検査役は、必要な調査を行い、調査報告書を裁判所に提出
(5)現物出資
現物出資の検査役がいらない類型
33条10項、備考
1号 現物出資の目的財産の定款に定めた価額の総額が500万円を超えない場合
全体の価額× 自動車200万円 有価証券400万円
2号 市場価格のある有価証券であり、定款に定めた価額 が、その市場価格を超えない場合
原則、市場価格の算定は、公証人の認証の日における最終市場価格
3号 目的財産の定款に定めた価額が相当であることにつき、弁護士等の証明を受けた場合(不動産である場合には、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価
証明者:弁護士・弁護士法人、外国法事務弁護士、共同法人、公認会計士・監査法人、税理士・税理士法人)※資格者である旨の証明書は不要
定款認証の機能
認証地
会社の本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の所属公証人(公証人法62条の2)
紛争予防機能、不正な起業を抑止する機能、実質的支配者を把握する機能。
•不明瞭な規定の防止
•面前認証による心理的抑止
•暴力団員・国際テロリスト関与の否定
•定款に沿わない行為の防止
•なりすましによる起業の防止
•マネー・ロンダリングの防止
規制改革実施計画(令和4年6月7日閣議決定)
規制改革推進会議
共通課題対策WG
スタートアップ・イノベーションWG
人への投資WG
医療・介護・感染症対策WG
地域産業活性化WG
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2210_01startup/221111/startup02_agenda.html
実態調査中
規制改革の内容
法務省は、定款認証時の不正抑止の効果やマネー・ロンダリング防止の効果が定量的に把握されていないことを踏まえて、公証人や嘱託人を対象として、定款認証に係る公証実務に関する実態を把握するための調査を行った上で、当該結果を分析し、定款認証が果たすべき機能・役割について評価を加えるとともに、その結果に基づいて、定款認証の改善に向けて、デジタル完結・自動化原則などのデジタル原則を踏まえた上で、面前での確認の在り方の見直しを含め、起業家の負担を軽減する方策を検討し、結論を得た上で、必要な措置を講ずる。
定款認証の手続のコスト
•手続の所要時間
•予約が取れずに待った時間
設立手続全体に要する金銭的コスト
•設立手続全体の費用
•その内訳
今後の手続コストの削減の方策
•Web認証の利用率、理由
• その他手続全般の改善点
面前での定款認証のスケジュール
1定款案の連絡
法令に沿っているか
2実質的支配者申告書案の連絡
不正な起業の抑止等
3認証日の予約
公証人との日程調整
4定款作成・認証の委任
委任状と定款合綴
5定款の電子署名
電子署名の用意、定款認証日前に申請
6オンライン申請
電子署名の自認
7公証人面前での認証
8費用の精算(クレジット払い)
9定款・実質的支配者申告書の受領
電子媒体・紙媒体
公証人手数料令35条の改正
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405CO0000000224
令和4年1月1日からの公証事務運用(令和3年12月10日付)
変更された背景規制改革実施計画(令和3年6月18日閣議決定)
会社設立時の定款認証に係る公証人手数料について、起業促進の観点からその引下げを検討し、必要な措置を講ずる。
→資本的規模の小さな会社に係る定款認証の手数料をその規模に応じて引き下げることに
従来
定款認証の手数料5万円
改正後
成立後の株式会社の資本金によって金額が変更
認証費用は、定款記載の資本金等の額
定款記載の資本金の額
1号 資本金100 万円未満のもの 3万円
2号 100万円以上300万円未満のもの 4万円
3号 前2号に掲げる場合以外のもの 5万円
ポイント
• 資本金の額の記載がなければ、「設立に際して出資される財産の価額」
• 一般社団法人の定款認証の手数料は、公証人手数料令35条により5万円
その他費用、費用額、根拠条文、備考
電子定款、収入印紙不要
電磁的記録の保存、300円、41条の2
同一情報の提供、700円、41条の3
紙謄本代、枚数×20円、41条の4、認証文頁込み
事象、定款認証費用
具体例
•定款 資本金75万円定款 資本準備金75万円→3万円
具体例
•定款 設立に際して出資される財産150万円
発起人同意 資本金75万円、資本準備金75万円→4万円
具体例
•定款 設立に際して出資される財産の最低額50万円
発起人同意 資本金50万円→5万円(注:3号に該当)
(3)テレビ電話を利用した認証手続
オンラインでの定款認証制度の創設(平成31年)
社会的背景
•未来投資戦略2018年(平成30年6月15日閣議決定)
•より効果的・効率的な定款認証手続の実現及び利便性の向上
•「株式会社の設立手続に関し、一定の条件の下、本年度中にテレビ電話等による定款認証を可能に」
•指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令の一部改正(平成31年法務省令第4号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413M60000010024
•平成31年3月5日公布
•平成31年3月29日施行
法令
要旨•嘱託人が指定公証人の面前において行う行為を映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法(FaceHubというテレビ電話ソフト)によってする
•Skype、zoomの使用は不可
•電磁的記録の認証の付与についても、電気通信回線により嘱託人に送信してすることが可能
難点
• 電子署名された委任状を送信する方法による必要があったため、電子証明書の普及が進んでおらず、送信が事実上、難しい
(3)テレビ電話を利用した認証手続
オンラインでの定款認証制度の課題の克服
再改定 •指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令の一部改正(再改正)令和2年5月1日公布•令和2年5月11日施行
要旨
•発起人の実印の押印された紙の委任状と、当該委任者の印鑑証明書を郵送する方法も可能に
•原始定款をオンラインで受領するか、紙ベースで返送されるか選択可能
•パソコン使用の場合には、Google Chromeを事前にインストールスマートフォンの場合には、FaceHubアプリのインストール
手続
1. 定款案、実質的支配者申告書案(定款作成代理を行う場合は、司法書士の電子署名など)の連絡
2. 認証日の予約(認証費用の事前連絡)
3. 必要書類(委任状・印鑑証明書等)を事前に郵送(紙謄本や申告受理証明書が必要の場合、返信用封筒を同封)
4. 公証人がテレビ電話用のURLを嘱託人にメール送信
5 認証費用について事前に振込み
6 公証センターに、登記・供託オンライン申請システムから、電子定款の認証申請
6. 認証日当日に画面越しに顔写真付き身分証明書(会員証と、運転免許証など)の提示による自認
7. 認証後、定款データのダウンロード(紙媒体での返送も可能)
実質的支配者申告書については、法人の銀行口座開設の際に必要になることが多い
社会的背景
•昨今、法人の実質的支配者を把握することにより法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用(マネー・ロンダリング、テロ資金供与等)を抑止することが国内外から求められている
対象•株式会社一般社団法人•一般財団法人
ポイント
•公証人法施行規則13条の4の新設(平成30年法務省令26号)平成30年10月12日公布•平成30年11月30日施行
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324M50000001009
内容•定款認証を行う公証人に実質的支配者の氏名・住所・生年月日、当該者が暴力団員又は国際テロリストに該当するか否かを申告
実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当(該当するおそれがある)場合、嘱託人又は実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない
公証人法施行規則第13条の4第1項第2号に基づく嘱託人の申告の方法等について(照会)
令和3年7月1日付日公連第18号
•嘱託人と実質的支配者となるべき者が異なる場合、嘱託人は、実質的支配者が暴力団員等に該当するか否かを証明する必要はない
•実質的支配者となるべき者が作成したその旨の表明保証書を提出することも可能
•公証人連合会HP参照
株式会社が発起人である場合の定款認証の際の実質的支配者の認定根拠資料
令和4年6月7日(閣議決定)「規制改革実施計画」(28頁)
• 法人設立手続の迅速化・負担軽減
・定款認証時における実質的支配者の申告の際に公証人が嘱託人に提出を求める資料に関し、株主名簿に代えて株式会社が発起人である場合における実質的支配者の認定根拠資料としては当該株式会社の議決権数上位 10 名の株主又は議決権割合が3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主を対象として作成される株主リスト(商業登記規則(昭和 39 年法務省令第 23 号)第 61 条第3項参照)等をもって足りるものとする運用を全国統一的に実施する。
FATF対応定款認証制度に関するQ&A(問31)
•発起人が法人である場合などの実質的支配者の認定根拠資料としては、どのようなものが考えられるか。
•従前は株主名簿の提出を求めることもあったが、株主が多数いる場合に嘱託人に不必要な負担を課すものであるという批判を招いた。また、会社法上、株主名簿の閲覧、謄写の請求権があるのは、株主及び債権者とされており(会社法125条)、一般に公開されているものではなく、個人情報保護の観点からも問題がある。このような株主名簿の性質を考慮すると、発起人が法人である場合の実質的支配者の認定根拠資料として、株主名簿にこだわるべきではなく、むしろその提出を求めることが不適切となる場合がある。
•実質的支配者の認定根拠資料となる書類は、当該会社のしかるべき立場の者が作成名義人となっており、所要の事項(実質的支配者である株主の名前・住所、保有株式数、議決権割合など)が記載されているもので足りる。
具体的書類:上申書、報告書、陳述書、株主リスト
(1)その他手続の流れ
取締役・監査役による設立手続の調査(46条)
設立時取締役(設立時監査役)は、その選任後遅滞なく、調査しなければならない。
•会計監査に限定した監査役にはこの調査義務はない
•現物出資がない限り、この書類は登記の添付書類にならない調査事項
1号検査役の調査のいらない現物出資、財産引受の価額の相当性
2号現物出資の弁護士等の証明書が相当であること
3号出資の履行が完了していること
4号上記のほか設立手続が法令又は定款に違反していないこと
設立起算日は、発起設立による会社法第46条第1項の規定に基づく調査が終了した日か、発起人が定めた日のどちらか遅い方。
登記懈怠のないことの確認が必要(911条)登記の事由 令和●年●月●日発起設立の手続終了
(1)ファストトラック(優先的処理)
• 「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクション・プラン」に基づく会社の設立登記の優先処理について(平成30年2月8日民商第19号通達、登記研究 864号104頁)
社会的背景•世界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月14日閣議決定)国のIT化・業務改革の推進や起業の促進等の観点から、法人設立に必要な各種手続の簡素化・迅速化が強く求められる
ファストトラックの対象• 株式会社の設立、合同会社の設立、新設合併・新設分割・株式移転によるものを含む
時期•平成30年3月12日~
内容•申請の受付日の翌日(オンライン申請において別送書類がある場合には書面の全部が登記所に到達した日の翌日)から起算して、原則として3日以内に完了
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00110.html
内容・定款認証と設立登記のオンライン同時申請が可能
時期・令和3年2月15日
対象○ 株式会社、✖合同会社 (※定款認証不要のため )、✖一般社団法人 ・一般財団法人
要件(定款認証)
•定款認証と 設立登記のオンライ同時申請がされたこと
・テレビ電話を使用した認証であること
要件(登記申請)
•添付情報がすべて電磁的記録により作成されいること(完全オンライン)
•※就任承諾書等への電子署名が必要
•補正の必要がないこと
•設立時役員等が5人以内
•登録免許税の電子納付利用
効果•同時申請のから24時間以内に電子定款の認証とも設立登記を完了
通常の設立手続の流れとの差異に注意
1 発行株式の引受け(定款又は発起人全員の同意)
2出資の払込
3設立時取締役等の選任
4定款認証以外の手続完了
5定款認証・設立の同時申請
留意点
•申請できる士業:弁護士・司法書士(行政書士を除く)
•オンライン同時申請がされた定款は、遅くとも当日中に公証人の認証手続を完了する必要
•実務的には、午後3時ころまでを推奨
•同時申請がされた日に定款が認証されないと、登記申請は却下(定款認証自体は、有効なものとして維持)
•オンライン申請は定款認証の予定日前に行うことはできない
(1)解散の端緒
株主総会の決議によることが多数
1 存続期間の満了(471条)
2 解散事由の発生
3 株主総会の特別決議
4 合併(当該株式会社が消滅する場合に限る)
5 破産手続開始の決定
6 解散命令
7 解散判決
8 一定の営業に係る免許等の取消し(銀行法40条・保険業法152条3項)
(2)解散原因
解散をもって事業年度が終了(494条)
清算事務年度の開始 (※合同会社では、同様の規定なし)
例:3月決算の会社が令和4年12月31日に解散した場合解散時期は、月末や事業年度に合わすことが望ましい
当初事業年度
清算 当解 年 初散 度 決時 開 算期 始 期
3月31日
12月31日・解散時期
1月1日・清算年度開始
3月31日・当初決算期
12月31日
1月1日から12月31日が清算事業年度
(3)期限付解散決議と存続期間
期限付決議の有効性を認めつつ、存続期間との異同に留意
趣旨• 期限付解散決議自体は、公示の対象にならず、債権者に不測の損害を及ぼすおそれ
原則• 数ヶ月も先の一定日時に解散する旨の解散決議は、期限付解散決議ではなく、存続期間の定め(昭和34年10月29日民事甲第2371号回答、登記研究145号 27頁。)
留意点・会社法上、変更の登記及び解散の登記にいずれも2週間の猶予期間が設けられていることに鑑みれば、当該株主総会決議日から解散日が2週間以内とされているものであれば、取引の安全を図るという会社法の趣旨に必ずしも反しないと考えられ、期限付解散決議に係る解散の登記を受理して差し支えない。
12月1日に、12月31日を解散とする決議をした場合
•存続期間の定めと解する
•登記事由 令和5年1月1日存続期間の満了により解散
株主総会のほか、下記の組み合わせ(477条)
1清算人
2清算人+監査役(公開会社又は大会社)
3清算人+清算人会
4清算人+清算人会+監査役
5清算人+清算人会+監査役+監査役会
留意事項
•取締役会設置会社が、清算人会設置会社に移行しなければならないわけではない
•会計参与、会計監査人又は委員会(指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社)を置くことは不可
→会計監査人・会計参与は、解散と同時に退任
•清算開始段階で「公開会社」又は「大会社」であった場合、監査役を置かなければならない(477条3項)
合併、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、清算人による清算が必要(478条)
1定款の定め
2株主総会の決議
3清算開始時の取締役
•これらにより清算人となる者がないときは、裁判所が選任した者
(解散命令又は解散判決によって解散した場合には、常にこの方法による)
•解散前に任期満了又は辞任により退任した取締役が存在する場合(346条)、株主総会で清算人を選任せず、かつ、定款に清算人に関する規定がなかった場合には、権利義務取締役の全員が清算人(昭和49年11月15日民四5938号、登記研究 325号 68頁。)
代表清算人
清算人会を置かない場合
1各自代表(483条)
2定款の定め
3株主総会の決議
4定款に清算人互選の定めを設け、清算人の互選
清算人会を置く場合
・清算人会で選任(489条3項)
(5)登記事項
株式会社と特例有限会社の異同
清算人が1名の場合
株式会社 清算人氏名 代表清算人住所・氏名
特例有限会社 清算人住所・氏名
清算人が複数の場合
株式会社 清算人氏名 代表清算人住所・氏名
特例有限会社 清算人住所・氏名 代表清算人氏名
会社法928条、整備法43条2項
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000087
(登記に関する特則)
第四十三条 1項略
2 特例有限会社の清算人の登記については、会社法第九百二十八条第一項第一号中「氏名」とあるのは「氏名及び住所」と、同項第二号中「氏名及び住所」とあるのは「氏名(特例有限会社を代表しない清算人がある場合に限る。)」とする。
解散の際の検討事項
定款変更の検討
•清算手続中も譲渡制限規定の効力が維持されるため、その承認機関の変更をすることを要する
•解散と同時に譲渡制限規定を変更しないことが解散登記の却下事由に該当はしない(登記研究708号177頁)
本店移転の有無
•営業所を借りていたが、清算結了にむけて代表者個人の住所またはその他の所在地に本店を移すことはないか
特別清算申立ての義務(511条)
•債務超過の疑いがあること
破産手続申立ての義務(484条)
•財産がその債務を完済するに足りないことが明らかとなったとき
解散・清算人就任登記の添付書類
定款
•清算人会設置会社の定めの有無を確認するため
•定款で定める者が清算人となる場合には、その定めを確認するため
•特例有限会社取締役が法定清算人となる場合に定款に別段の定めがないことを確認するため(消極証明)
•清算人会設置不可(整備法33条1項)のため、株主総会決議で解散決議
・清算人を選任する限り、定款の添付は要しない
株主総会議事録
•解散決議、清算人の選任のため株主リスト
• 提出者は、清算人
就任承諾書 •• 商業登記規則商業登記規則6161条条47項の適用なく、市町村長の作成した証明書の添付は不要項に基づく本人確認証明書の適用なし
登記委任状 • 委任者は、清算人
印鑑届書 • 印鑑証明書の徴収は必要
その他 • 婚姻等により氏を改めた清算人、代表清算人、(商業登記規則81条の2) 旧氏をも登記するよう申出可能
登録免許税(その他の事由と同時に申請する場合)
解散•3万円 (一)ㇾ
清算人選任•9,000円(三)イ
代表取締役住所変更•1万円 (一)カ ※(三)ニの登記事項変更 (6,000円)に該当しない
商号変更•3万円(一)ツ ※(三)ニの登記事項変更 (6,000円)に該当しない
(1)解散後の規律の適用の有無
適用不可
• 自己株式の取得(但し、無償による自己株式の取得は可能)
• 計算書類の公告
• 資本金(準備金)の額の減少
• 剰余金の配当
• 株式交換・株式移転・株式交付の当事者となること
• 特別支配株主の株式等売渡請求の対象会社となること
• 合併存続株式会社、分割承継株式会社となること(474条)
• 監査役の任期の不適用(491条、336条)
適用可
• 商号の変更
• 本店移転
• 募集株式の発行(487条2項)(※資本金が増えない点に留意)
• 募集新株予約権の発行
• 支配人の選任
• 支店の設置
• 社債の発行
個別催告
•「知れている」債権者への個別催告(499条)
•官報のほか、定款に定める公告方法による(ダブル公告)、個別催告の省略は不可(組織再編との違い)
債権者保護手続
公告
•官報
•会社が定める公告方法ではない
•官報販売所に申込みについては、後述
•解散公告は、旧商法では、3回必要だったが、1回でよいことに
•2か月間の除斥期間(2か月の期間計算については後述)
【官報公告案】
解散公告
当社は、令和○年○月○日開催の株主総会の決議により解散いたしましたので、当社に債権を有する方は、本公告掲載の翌日から2箇月以内にお申し出下さい。
なお、右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。
令和○年○月○日
○県○市○丁目○番○号
○○商事株式会社代表清算人 法務太郎
個別催告書案
令和○年○月○日債権者各位
○県○市○丁目○番○号
○○商事株式会社代表清算人 法務太郎債権申出のご催告
拝啓 時下ますますご清栄の段慶賀申し上げます。
さて、弊社は、令和○年○月○日開催の株主総会において、同日をもって解散いたしました。これまで債権者各位より賜りましたご愛顧に感謝いたすとともに、今後とりおこなわれます清算手続において速やかに債務の弁済をなしご迷惑のかからぬよういたす所存であります。
つきましては、令和○年○月○日までに同封の債権申出書をもって、貴殿の弊社に対する債権をお申出頂きたくお願い申し上げます。なお、上記期間内にお申出がないときは清算から除斥されます。
敬 具
(ご参考)
会社法の規定に基づき、債権者各位に、このような催告をすることになっております。不明な点につきましては、弊社●●部(電話××-××××―××××)までご連絡頂きたく存じます。
個別催告書案
債権申出書
令和 年 月 日
○県○市○丁目○番○号
○○商事株式会社
代表清算人 法務太郎 殿
債権者の表示
(住所)
(氏名)
(電話)
(担当者の部署・氏名)
令和○年○月○日現在において、貴社に対して下記のとおり債権を有しているので、その旨申出ます。
債権の表示
1.債権額
(元本額)
(利 息)
(損害金)
2.債権発生の年月日及びその原因
債権者保護手続期間中の取扱い
会社視点
公告・催告開始の翌日から2か月間は、債務の弁済不可(500条)
債権者視点
債権者の裁判上、裁判外問わず、個別権利行使は許容せざるを得ない
•実務上、解散前に債務の弁済によって対処することも
•債権者の平等が阻害されるような場合には留意が必要
清算人の職務(481条)
・現務の結了
・債権の取立て
・債務の弁済
・残余財産の分配(金銭以外の現物を交付することも可能(504条1項1号))
(3)少額債権弁済
少額債権弁済の申立て
意義
•債権申出期間中は、裁判所の許可を得てする場合を除き、債務の弁済をすることができない(500条2項)総債権者に対する公平な弁済を保障する趣旨
•債権者が清算株式会社に対して強制執行を禁ずる趣旨ではない
管轄
•清算株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所(会社法869条)
申立人
•清算株式会社清算人が2名以上あるときは、その全員の同意が必要
要件
•公告及び催告したこと上記期間内(2か月)であること弁済しても他の債権者を害するおそれがないこと
•弁済期にあること
中小企業では、解散前にある程度、会社の規模縮小のため、弁済等が行われていることもあり、当該手続の利用が積極的に行われている状況ではない
(4)清算事務の終了
清算事務終了後に決算報告書(清算事務報告書)作成
• 株主総会(普通決議)での承認(507条3項)
• 清算結了の添付書類に「決算報告の承認があったことを証する書面」(商登法75条)
• 清算結了 登録免許税2,000円決算報告書の必要的記載事項
1債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
簿外の債務がないか(連帯保証人)
2 債務の弁済、清算に係る費用の支払いその他の行為による費用の額 継続的提供契約が締結のままではないか
3残余財産の額 支払税額がある場合、税額・控除後の額
1株当たりの分配額(分配完了日)
種類株式発行会社は株式の種類ごと
4債権放棄証書の必要性
・清算過程における債権債務の取立や弁済について、逐一それらを証する書面の添付は求められていない
・清算結了の決算報告の承認総会時に、負債が残っていることが書類上判明する場合には、債権放棄証書を株主総会議事録の「附属書類」として添付
(4)清算事務の終了
留意事項
•債権者に対し公告・催告をしたことを証する書面の添付は要求されていない
ただし、解散から公告手続に要する2ヶ月の期間が経過した日以後でなければ、清算結了の登記は受理されない
(昭和33年3月18日民事甲572号通達)
帳簿資料保管者について
•清算結了の時から10年間、清算人は、清算株式会社の帳簿等を保存(508条1項)
•旧商法では、必ず裁判所に対し保存者の選任の申立をする必要があったが、清算人以外が帳簿資料の保管者となる場合を除き必須ではなくなった(改正前商法429条)
清算結了後に財産が見つかった場合
•残余財産がある限り、会社の法人格は消滅しておらず、残余財産の分配その他の清算手続を履践
•清算人は、清算結了の登記の抹消及び清算人就任の登記を申請し、登記官は、登記記録を復活して、これらの登記を行う(昭和45年7月17日民事甲回答参照)
解散から10年経過後の登記記録の閉鎖
•登記官の職権での抹消(商業登記規則81条1項1号)
•清算結了していない旨の申出
(5)解散後の手続
会社継続
要件
株主総会の特別決議
•みなし解散が適用された会社にあっては、その後3年以内に限る(473条)
•残余財産分配後も清算手続の終了により清算中の会社が消滅するまで可能(最判昭和59年2月24日)
効果
• 解散前と同様に営業取引をなす権利能力を回復
•遡及的に解散がなかったことになるのではない
•解散前の取締役が復帰するのではなく、新たに選任する必要あり