渋谷陽一郎「日弁連ガイドラインにみる司法書士業務としての民事信託支援の難しさ(1)」

市民と法[1]の記事、渋谷陽一郎「日弁連ガイドラインにみる司法書士業務としての民事信託支援の難しさ(1)」からです。

1、の東京青年司法書士協議会の民事信託研究会については、沖縄県では働きかけても参加する方がいない、率直に良いなと思います。ゲストに関しては記載されている方々が、同業の司法書士等に対してどのようなビジネスを行っているのか、考えた方が良いように感じましたが、能力や経験があると勉強会の主催者が判断出来れば良い、という考えかもしれません。記事の筆者は、民事信託に関する記事で、何度も公益、市民のための、という用語を使用します。

司法書士の執務規律としては、ガイドラインに対して、どのように向き合うべきだろうか。司法書士の場合、子ども世代を依頼者として認識する人もいるようであるし、さらには、委託者と受託者の双方から受任を行っていると思う人もあろう。親族全体を依頼者であると感じている人もいるそうだ。

 日本司法書士会連合会の指針は、依頼者は委託者のみ、依頼者は委託者及び受託者の双方、という2つです[2]。依頼者は委託者及び受託者の双方、という考え方について、司法書士法関連法令に基づく根拠は記載されていません[3]

 1、利益相反による不当性の回避措置、2法律整序としての執務方法に注意、3、利用者に対して、そのリスクを説明し、明示的に委託者と受託者の承諾を得ることが出来れば、双方受任は適当(適法)と認められるのか、分かりませんでした。

たとえば、終了に関する別段の定めなどを信託条項化する場合、委託者と受託者との間の利益相反を生じうるリスクがあるが、そのような局面では、委託者と受託者の双方が、それぞれリスクを認識しておく必要があることから、それぞれに別の司法書士が助言する、弁護士のオピニオンをとるなどの手当てが必要となる場合があり、一人の司法書士が、双方を(特に委託者のリスク認識が曖昧なまま)、仲裁人的な立場で丸め込むようなことに加担してはならない(仮に仲裁であれば簡裁訴訟代理等関係業務の範疇ともなりうる)。司法書士法3条の法律整序事務であればこそ、適正な許容要件を踏まえた双方受任の理論構成を試行しうる(アプリオリに許容されるわけではない)。

 なお、民事信託支援業務に携わる司法書士の人々は、法律整序事務とは何か、その方法はいかなるものなのかを熟知しておく必要がある。

 別の司法書士が助言する、弁護士のオピニオンをとるなどの手当てが必要となる場合があり・・・同意です。費用面で上がりますが後の過誤や紛争を防ぐ可能性を上げることで、依頼者には説明することになると思います。定型がない現在、図を付けるとして、助言やセカンドオピニオンを得やすい提示の方法は模索が必要だと思います。信託設定書類のチェックは、事案によっては案の作成よりも時間や労力を使うことがあります。

 仲裁人的な立場で丸め込む・・・仲裁人的な立場と、日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部が考えている調整役の違いが分かりませんでした。また仲裁法上の仲裁人は、依頼者を丸め込むこともあるのか、分かりませんでした。

 民事信託支援業務に携わる司法書士の人々は、法律整序事務とは何か、その方法はいかなるものなのか・・・著者が本記事P115で記載している裁判事務におけるメニュー論、に同意です。

受託者支援は、司法書士にとって、司法書士法施行規則(以下、「規則」という)31条1項業務となり得るので、情報提供およびリスク説明義務の履行が重要となる(同条1号の文言上、委託者支援は、同様の要件には該当しない)。

 文脈から、信託期中ではなく、信託設定時の場面であると想定されますが、司法書士法施行規則31条1項を根拠に、受託者支援業務を委託者との委任契約と同時進行で行い得るのか、分かりませんでした。私なら、信託設定時と信託期中は分けて考えます。

 記事で触れている、利益相反のリスクを最小化、という表現についても、分かりませんでした。私なら、信託設定時の受託者支援業務について、司法書士法施行規則31条1項を根拠にするのであれば、利益相反関係にあることを前提にします。

この点、家族信託契約書の自動作成ソフトやひな形提供サービスを利用することにリーガルリスクはないのだろうか、慎重に考えてみたい。

たたき台として利用する分には、良いのではないかと思います。最終的に責任を問われるのは司法書士個人です。

司法書士にとっての、遺留分侵害の有無に対する着眼点は、紛争性(法定紛議性)の蓋然性の有無である。遺留分が侵害される推定相続人(遺留分権者)の理解と納得があるか否かを確認しておきたい。

 たとえば、司法書士による遺留分対抗(潜脱)のしくみの教示や、司法書士が組成に関与した家族信託のしくみが遺留分権利者の意向に反し、結果として紛争を生じれば、司法書士の関与形態に応じて、潜在的に紛争性ある事件関与であると評価され、評価規範上、職務範囲の逸脱であると判断されるリスクも生じうる危険な領域である。

 遺留分侵害の有無に対する着眼点は、紛争性(法定紛議性)の蓋然性の有無・・・信託設定時に遺留分を侵害していると職務範囲の逸脱と判断されるリスクがあるのか、分かりませんでした。

 記事のように考えると、遺言書の作成支援で、全ての財産を相続させる、という内容だった場合、司法書士法3条の業務範囲で行っている限りでも、違法とされるリスクがある、とされる可能性が出てくるのではないかと考えられます。

 例として挙げられている、司法書士による遺留分対抗(潜脱)のしくみの教示と、遺留分権利者の意向に反し結果として紛争を生じた場合では、分けて考える必要があると思います。

 前者については、判例や法改正がない限り、法令の独自解釈であり、紛争性があると判断されるリスクがあると考えても良いと思います。

 後者については、記事記載のとおり関与形態が問われ、司法書士法3条の業務範囲である限り、紛争性がある判断された例は現在、ないと思われます。

 遺留分が侵害される推定相続人(遺留分権者)の理解と納得があるか否かを確認・・・本記事に記載の推定相続人(遺留分権者)は、信託設定時の人であると思われます。理解と納得がどの程度のものなのか分かりませんでした。私なら、説明をして、説明を受けました、という書類に署名(記名押印)を求めます。


[1] №142、2023年8月、民亊法研究会、P110~。

[2] 日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部『任意後見と民事信託を中心とした財産管理業務対応の手引』2023年、日本加除出版、P20。

[3] 調整役について日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説 弁護士職務基本規程【第三版】』日本弁護士会連合会、2017、P81 。

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