渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(2)」

『市民と法』[1]の記事からです。気になった部分を抜粋して考えてみたいと思います。

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第7条 定義(民事信託組成相談)

 司法書士の民事信託組成相談とは、信託設定のための情報提供や選択肢の提示、そして、リスクの教示として、法3条1項5号に該当する相談、あるいは、同項7号に該当する相談の範囲で、法令順守と社会的相当性に留意して行われるべき相談をいう。

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自分はどういう根拠で相談を受けることが出来るのか、考えてみることが必要になっていると感じます。

特に紹介の場合は受任に繋がりやすく、揉める可能性も少なく、紹介者の立場もあるので無料にしているという場合は、あまり考えないかもしれません。

入り口を広くする考えで、無料相談や無料講座を行っている場合もあまり考えることがないのかもしれません。

現状の私の考えは、記事にあるように1回毎の個別受任の相談として、幾らかでも相談料を頂いた方が私たちも意識することが出来て、相談者も真剣度が増すことが多いと思うので、お互いにとって良いのではないかと思います。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC1000000197#8

司法書士法

(業務)

第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

一 登記又は供託に関する手続について代理すること。

二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。

三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。

四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。

五 前各号の事務について相談に応ずること。

六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。

イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの

ロ 民事訴訟法第二百七十五条の規定による和解の手続又は同法第七編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの

ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの

ニ 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの

ホ 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの

七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。

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第9条 定義(信託関係者)

 本指針において、信託関係者とは、委託者及び受託者という信託当事者に加えて、受益者と受益者代理人等を加えたものをいう。又、信託の組成とその内容に対して法的に利害関係を有する委託者の親族等を含めて用いる場合もある。

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信託監督人が入っていないところを興味深く読みました。信託監督人の独立を重く置いている印象を持ちます。

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第14条 総則(司法書士会の責任)

 司法書士会は、公益的立場から、所属会員が業務として行う民事信託支援の適法性、適切性の維持に対して責任をもつものとする。

 そのため、司法書士会は、民事信託支援業務の特殊性と法律事務性に鑑み、常日頃より、所属会員の業務規律に対して監督や指導を行い、適宜、適切な調査、聞き取り、そして、研修等を行うことで、所属会員の業務方法、報酬算定方法、業務誘致方法などの適法性と妥当性を確保するものとする。

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ここは、今後どうなるのか注目したいところです。各司法書士会で対応が分かれてきそうです。また司法書士が中心となって設立準備中の民事信託会社が各地域に支店を作って監督的機能を果たすのか、その他の民間団体がサービスとして監督的機能を果たすのか(信託契約書のチェックなどで既に始まっているともいえます。)

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第24条 総則(利益相反)

司法書士は、支援対象の信託にかかわる信託当事者並びに信託関係者の利益相反関係に十分に注意して、本人の利益が害されないように、民事信託の組成を支援しなければならない。

 又、司法書士は、自らの業務にかかわる利益相反性の有無にも十分に注意を払わなければならない。

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私は、信託監督人を未だ付けたことがありません。任意後見監督人に少しだけその役割を期待しています。

例えば、自分で受託した民事信託事件について、自分が理事になっている監督人協会を信託監督人に就ける場合はどうなるのでしょうか。信託前は委託者から受任して、信託期間中に関しては受託者から受任することになります。

会社・法人の監査役が、自身が委託者(受託者は利益相反関係となります。)の家族の民事信託について、監査役である法人を信託監督人とすることが出来るのでしょうか。受託者を監督する法人(信託監督人)を監査するというのは、委託者の都合で自由に賛成・反対が出来るという理由により、難しいような気がします。自益信託であれば受益者の立場でも出来ることなのではないかと考えます。

 信託期中においては、受託者の(信託行為の制限の中での)利益を追求していくのが受託した場合の業務の姿勢の原則になると思います。信託監督人は、受託者を監督して、受託者の(事務負担などの)利益を害する機関ともいえると思います。この場合は利益相反関係に立っていると考えることが出来ます。

 有償で司法書士の民事信託組成業務の支援をした司法書士が、継続的にその司法書士の業務を有償で支援している場合はどうでしょうか。一方の利益となることが一方の害となることにはならないので、利益相反には該当しないような気がします。


[1] ナンバー124 2020.8 民事法研究会P18~