家族信託の相談会その53

お気軽にどうぞ。

2023年3月24日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第5章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第5章民事信託支援業務に関する懲戒事例と懲戒規範

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P346、P347

苦情が聞かれた、苦情も聞かれる、とも噂されるなどの記述について

→このような表現から結論が導いても良いのか、分かりませんでした。

P355

また、通常、子どもである受託者となるべき者の側から、本懲戒事例のように、自分たちのものにできないかとの旨の不法・不適切な動機を開示してくる場合は少ない。あくまでも、表面上、高齢の親のためであると言い張るだろう。そのような場合、司法書士は、どのようにして真の動機を知るのか、知りうべきか、知ることができるのか(そのメルクマークは何か)。

→信託設定時、外形上、明らかに子どもである受託者の利益のために設定されていると認められる信託でない限り(信託法8条)、結果として委託者・受益者に損害が出るかどうかになると考えられます。

P357

それでは、成年後見人事案でない場合で、親の財産の先取りや他の推定相続人からの囲い込みを意図した家族信託を組成した後、実際、信託財産を着服した場合、どの時点で犯罪の実行の着手と評価されるのだろうか、組成時だろうか、着服時だろうか。あるいは、家族信託だけの場合も、業務上横領罪であると評価されるのだろうか。

→犯罪の実行の着手と評価される時期について、外部に対して、明らかに受託者自身が自己の利益のために領得する意思を発現した場合を除いて、着服時だと考えられます。

家族信託だけの場合も、信託行為の内容によっては、法定後見制度、未成年後見制度と同様に業務上横領罪であると評価される可能性はあると考えられます。このような場合、公益信託の存在が評価に影響を与えるのではないかと思います。

最高裁判所第二小法廷平成24年10月9日決定

1 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,同条項は準用されない。

2 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があることを量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当ではない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=82627

最高裁判所第一小法廷平成20年2月18日決定

家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合,未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても,その後見事務は公的性格を有するものであり,同条項は準用されない。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=35770

P358

会則違反について―中略―違法行為の射程は、信託組成支援業務の違法に留まると考えます。理由として、信託組成支援業務の違法により、信託の違法が生じているので、司法書士が実際に行った信託組成支援業務の評価に留めることが、妥当だと考えたからです。

P361

しかし、医師でもない司法書士に、認知症患者の積極的な意思能力の有無を判断する責任を負えるのか検討を要する。そのようなノウハウはあるのか。証拠保全方法はどうなるか。

→通院先のカルテや、施設・デイサービスの介護日誌などをコピーして保存する方法があるかと思います。

P365

他人の作成した信託契約書に対する有償でもって行う鑑定を法的根拠および公益意識なく反復継続し、それが不完全かつ悪質であり、かような鑑定により損害を生じたこと

→公益意識の有無、不完全かつ悪質、損害の有無が必要なのか、疑問に思いました。

P366

インターネットやSNS等を濫用し、公然と、書籍・資料等の無断転載等を行い、引用を逸脱し、違法となる著作権法違反(刑事罰)の行為

→多数決で、一方的に除名処分などをせず、根拠をもって立件や懲戒処分申立てをしていただきたいと思います。お互いに敬意があれば、メールでの議論で済むとは思うのですが。

P381

司法書士との長年にわたる継続的な依頼者の事案であるなどの特段の事情がある場合を除いて、医師でもない司法書士が、認知症患者の判断能力が戻ったなどの判断は容易ではない。

→前提として、認知症と診断されたことは、判断能力の喪失とイコールではありません。

なお、公証人が、判断能力ありと判定した場合は、司法書士の確認義務の程度はどうなるのか、などの応用問題がある。

→公証人が、判断能力ありと反転した場合、というのは、公正証書を作成した場合、と言い換えます。公証人が、この方には判断能力がある、と断定することを私は聴いたことがないからです。その場合でも、司法書士の確認義務は変わりません。司法書士と公証人は独立して仕事をしているからです。

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第4章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第4章東京地判令和3.9.17にみる民事信託支援業務と5号相談

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P274

司法書士は、医師と同様の受託強制主義の下、公益代表型の法律家として、そのような債務を負っている。

→受託強制主義は司法書士法21条を指しているものと考えられます。民事信託支援業務は、原則として、簡裁訴訟代理等関係業務ではないことが想定されます。司法書士法3条1項各号を根拠として民信託支援業務を行う場合、司法書士法21条の依頼は、相談から依頼の間に、時間を要します。相談の段階で法律整序事務であることを、司法書士が判断した上での依頼であることが必要となります。法律整序事務ではない相談は、依頼される前に断る、他士業を紹介することになります。依頼に応じた後(委任契約締結後)においても同じです。

 そして、司法書士法21条の存在によって、依頼を受けた以上、きっちりやらなければいけない、というような感覚を持つことが多いような気がします。きっちりやる、というのは、完了させるまで出来るだけミスなく、違法になりそうな場合は事前に通知したうえ、そのような事実が起きた場合、すぐ断ることも含みます。民事信託支援業務を行うにあたって、委任契約の範囲を具体的に決めることが出来れば、良い方向に向かう場面が多いように感じます。

P279

なお、本判決の事案において、分別管理された信託口口座が開設出来なかった主たる理由は、信託契約公正証書の作成(信託契約の締結)にあたって、司法書士が委託者を代理してしまったことにあったようだ。

→主たる理由は、司法書士が信託契約公正証書の作成前に、信託口口座開設予定の金融機関に、事前に信託口口座の開設要件を確認しなかったことです。

P285

それでは、司法書士は、司法書士法上の業務範囲であれば、すべての分野において情報収集義務を生じるのだろうか。どのレベルまで情報収集を行うべきなのか。

→結果論ではありますが、依頼者が通常想定していなかったような損害を与えない程度の情報集、ではないかと考えています。

P311

民事信託の専門家を自負する若い司法書士の人々には、地に足を付けた民事信託支援業務の地固めのためにも、金森コラムに対するさらなる反論を期待したい。

→私はしています。なお、反論ではなく批評です。

 司法書士の体質として、ある程度の地位を得てから、何名かで議論を固めてから組織名で、というのが多いと考えられるので、難しいのではないかと思います。沖縄県会ではそうです。著者についても、実務に就いている場合に同じことが出来るのか、金森弁護士と面識がなく、予め反論しますと断っていない場合、同じことが出来るのか、私には分かりません。

P319

あるいは、受託者ではなく、最大の利害関係者である受益者に対して、このような訴えを提起して信託財産を保全すること、を期待することができるのだろうか。

→知り得るのであれば、受託者より期待できる場合もあると考えられます。

P343

ところで、以上みてきたとおり、司法書士による民事信託支援業務の生成のプロセスは、成年後見業務や簡裁訴訟代理等関係業務などの他の司法書士業務とは全く異なる。

→似ている場面はあると思います。相談時に情報提供、リスク説明を行うことはあるのではないでしょうか。

道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』→『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』第6章委託者、第7章信託の変更・併合・分割、第8章終了・清算・倒産、第9章罰則

道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』2017年、有斐閣と、同氏著『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』2021年、有斐閣の比較です。

『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』2021年、有斐閣を基準にしています。

誤りなどがあれば、指摘願います。

第6章委託者

第7章信託の変更・併合・分割

P413 追加

 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に基づいて信託業務を行う受託者が、民法584条の4の定める方法による定型約款の変更を行う場合について、追記。

P416 変更

信託目的に反しない信託の変更(信託法149条)の効果について、曖昧な記述を削除。

P422 追加

委託者の地位を取得しない第三者による追加信託は、贈与と解釈することについて追記。

第8章終了・清算・倒産

P429 追加

 信託法90条1項各号に定める遺言代用信託が、自己信託のかたちで設定され、委託者が第1受益権を有している場合で、委託者の死亡時まで1年以上経過したとき、信託法163条2号に該当するか、整理。

P442 変更

信託法180条の正当性について、限定責任信託と、限定責任信託以外で区別することに変更。

P443 追加

 信託法182条2項の該当要件と、残余財産受益者または残余財産の帰属権利者の地位が相続される場合について、補足。

第9章罰則

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第3章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会、第3章家族信託をめぐる裁判例の整理

前提として、私の解説では、組成という用語を使わないようにしています。引用としては利用します。

P138

組成支援者として、どこまで、組成した信託の帰趨を見守っていくべきか。

→依頼者との委任契約書の範囲だと考えられます。

組成支援後、放置してしまい、その後、信託にトラブルを生じた場合、事前に、「司法書士は免責される」という念書をとっていても、司法書士の信認義務として、当初の契約起案者の責任が追及されよう。かような念書実務の存在(その可否)とその法的効果という問題は、司法書士会で調査する必要がある。

→放置してしまい、の部分は、上に記載の通り、委任契約書の範囲によると思います。信託にトラブルが生じた場合については、それが信託行為の内容や、信託行為の設定までの過程における司法書士の関わりの記録によって判断されるものだと思います。

 念書の存在を司法書士会が調査することに関しては、自主申告になると考えられるので、調査する会員の負担、財源、公表が前提となるので、調査して得られる利益・損失などを考えて行う必要があると思います。

一部の親族(推定相続人)の利益となるであろうことを想定しながら、信託組成を支援しただろうか。

→推定相続人に対して、法定相続分に沿った民事信託支援業務を行ったことは今までないので、支援すると思います。

あるいは、潜在的紛争性ある事件として弁護士への相談を助言しただろうか。

→助言します。

P164~

読者が、当該信託組成にかかわった司法書士であると仮定してみて、親族の一人であり、受益者となる長男に不利であると結果的に受け取られてしまう可能性がる信託のしくみを助言するような状況を想像してみよう。その場合、その後に、長男と親族との間で紛争可能性を予測できただろうか。

→遺留分に関しては、予測できたと思います。

予測すべきであっただろうか。

→分かりませんでした。

潜在的な紛争可能性を予測すべきであっただろうか。

→分かりませんでした。

司法書士の業として報酬を得て、新たな権利義務を発生させるような事件への介入と評価されてしまうような事態に陥ることを心配しなかっただろうか。

→東京地判平成30年9月12日のような信託行為を私が設定した場合、長男からの清任追及に対して対策をしていないときは、心配すると思います。

かような複雑な法的仕組みを内包する信託が適法であると司法書士として判断したならば、そのような判断は専門的な法律判断(鑑定)であると評価されてしまうおそれはないのだろうか。

→信託設定時の一般の方への認知度や、依頼者への情報提供の仕方にもよりますが、法律判断(鑑定)であると評価される可能性はあると考えます。

P167

読者が、かような状況下で相談された司法書士であったならば、どのように対応し、いかなる助言を下すだろうか。―中略―依頼者の希望であるからとして、適法性の問題や紛争性の問題はとりあえず問わないという姿勢をとるのだろうか。

→適法性の問題は考えます。紛争性の問題は、弁護士に同席での立ち合いを依頼するか、替わって受任してもらうと思います。なお、執務姿勢としては遺言書作成を参考にします。

本判決の事実認定によれば、司法書士が、委託者に対して、信託を説明している。―中略―単なる情報提供なのか、あるいは、推奨なのか、説得という要素はなかったのか、主導の要素はどうか、法的助言(法律相談)の範疇に該当するのか、などの検討を要しよう。

→個別具体的な事件の記録によると思います。推奨、説得、主導については依頼者との関係で決まる要素が大きいように感じます。

P168

説明は、教示、主導、説得と同じなのか。「方法の説明」と助言は異なるものなのか。

→説得は依頼者が納得していない場合に行われると考えられるので、その点、教示、主導、とは分けて考えて良いのではないかと考えます。信託の方法の説明は、記載されている文言のみで判断するのであれば、説明に当たると考えられます。

委託者の信託行為の意思形成に関与してしまうこととはなかったのか。

→関与しない民事信託支援業務、というのは、難しいのでないかと感じます。

P169

契約書の案を示すこと、そして、説明することの二つは別の行為なのか。

→契約書の案を示して、説明をしないということを考えることは難しいのではないかと思います。よって1つの行為として評価されるのではないかと考えます。

「提案」と「情報提供」の差異は何か、「提案」と「推奨」は違うのか否か、「提案」と「説得」はどうなのか、司法書士が、信託契約書の案を示すことの司法書士法上の法的根拠は何か、などの諸論点がある。

→提案は、依頼者に言われていない新しい方法等の情報提供を行うこと、という認識です。推奨は、比較するものAがあって、依頼者に、Aより良いと提案すること、という認識です。

なお、裁判所の争点に対する判断では、二女であるHの夫が「司法書士に相続の対応を依頼し」としている。「相続の対応」とは何か。信託の方法や信託契約書の提案まで含むものなのだろうか。「相続の対応の依頼」に対する「提案」とは法律相談なのか、「民事信託契約書の案」の説明は法律相談とならないのか、などの論点を考えることも重要である。

→「相続の対応」とは、Eの相続が開始した場合に関して、どのような方法があるのか、というような相談だと想定されます。

 信託の方法や信託契約書の提案まで含むものだと考えられます。遺言なども含めてです。

 「相続の対応の依頼」に対する「提案」は、それが法的効果をもたらす提案であれば、法律相談に該当する可能性があると考えられます。

P170

かつて、司法書士の裁判事務では、すべての手続きの選択肢を示すことで「メニューの提示」といわれたことがあるが、それは「提案」と同旨なのか。

→情報提供の要素が多く、提案の要素が少ない方法、だと考えられます。

P170~

仮に下級審レベルであっても、結果として裁判官から公序良俗違反と評価されるような法的な仕組みを業として教示した場合、司法書士における自己規律や業務遂行に対するリスクはないのか。その判断基準は何か。

→リスクはあると思います。判断基準に関しては、信託設定時の民事信託支援業務の状況、司法書士の執務の目的が、一方の当事者にとって著しく不合理な結果をもたらすものであることなどを総合勘案されて判断されると思いますので、一律に基準を決めることが出来るのか、分かりませんでした。

P175~

複数の受託者の意思決定の特段の定めが行われ、結果として遺留分権者(長男)の意思決定権限を制約している仕組みであることが重要である。ちなみに、信託法105条1項は、「受益者が2人以上ある信託における受益者の意思決定(第92条各号に掲げる権利の行使に係るものを除く。)」は、すべての受益者の一致によってこれを決する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる」と規定している。

→前提として、東京地判平成30年9月12日における受益権は、1個です[1]。よって、複数受益者で1個の受益権を割合で定めています。複数受益者が持っている受益権を、信託法105条1項ただし書きで異なる定めをしています。

P178

ところで、受益権の内容の設計は、信託法解釈に基づき権利義務内容を決定していく他人のための法律事務とならないのだろうか。

→情報提供の仕方によると思います。例えば、依頼者から訊かれた場合、このような方法があります、といくつかの方法を示し、依頼者が決めるとすれば、情報提供・法律整序に留まるという評価を受ける可能性が高いと考えられます。

P179

とりわけ、複数の受益者が存在する場合、一部の受益者だけを不利益に取り扱うことの可否という論点で考えたい。―中略―現に不利益を受ける受益者に対しての確認は不要なのか。不利益を被るものに対する不法行為とはならないか。

→複数の受益者が存在する場合に、受益者すべてを平等に扱う信託を設定するということは、難しいのではないかと思います。

P190

2月5日に信託契約を締結(信託譲渡)しているのに対して、信託登記の完了まで1カ月もかかっているが、どうしてだろうか。

→平成27年当時であれば、遅くはないと考えられます。登記申請がいつだったのか分かりませんが、登記審査に時間がかかった可能性があります。

P208

この点、実際の遺留分侵害の場合だけではなく、信託設定時には、遺留分なきことの確認を行うべきといわれているが、実際、受益権の評価が難しいとすれば、いかにして遺留分侵害の有無を確認しているのか、という点にかかわるかもしれない。

→遺留分なきことの確認ではなく、信託設定時にこれまでの贈与などを確認する、遺留分を侵害している場合は、その手当を別の財産で補う、遺留分を侵害している推定相続人に対して説明が可能であれば行う、信託設定後も支援事務や信託監督人などで関わるのであれば、定期的に確認をする、等の対応が必要だと思います。


[1] 道垣内弘人『信託法―現代民法別巻第2版』、有斐閣、2022年、P372。

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