7月相談会のご案内

お気軽にどうぞ。

家族信託の相談会その35

2021年7月23日(金)14時~17時
□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所 司法書士宮城事務所(西原町)
要予約   司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp
後援  (株)ラジオ沖縄

最近の民事信託・家族信託に関するあれこれ

最近の民事信託・家族信託に関する記事について、考えてみたいと思います。

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■■ 一人暮らしの高齢者が増えている

これはみなさんも知っていると思います。子供がいる夫婦でも、子供は独立して親元を離れる。夫婦でどちらかがなくなれば、一人暮らしです。令和2年の高齢者白書(内閣府)によると一人暮らしの高齢者1980年:男性約19万人、女性約69万人2015年:男性約192万人、女性約400万人 お!すごい増加ですね。一人暮らしなだけなので、身寄りがない訳ではないですが、この中は身寄りがない人も含まれています。私の事務所で任意後見の受任者をしている、93歳の女性(今もすごく元気!)もご主人は亡くなられ、お子さんが一人いるのですが、知的障がいがあります。つまり、彼女も終末期は誰もサポートしてくれる人が、いません。あ、もちろん、私の方で、しっかりサポートしますので、今は大丈夫です!身寄りなし問題は3つあるとのこと。

1医療同意

2. 金銭担保

3. 死後事務

1.医療同意

本人が判断力がないと、医師は困ると思います。身元保証を求める理由ですね。でも、20年も会っていない甥の同意って意味があるのか?だったら、医療や介護チームで最適解を見つけるACP(アドバンス・ケア・プランニング)が重要になってきます。我々専門家も、金銭負担ができるかどうかの判断でACPに加わることは意味があると思います。つまり、連携が必要!

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 以前まで、家族信託専門コンサルタントの肩書でしたが、肩書を外して地域連携に方向転換をしたようです。

ACPとは何でしょうか。人生会議のことです。日本医師会

https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/006612.html

ACP(Advance Care Planning)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、 本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援するプロセスのことです。

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2. 金銭担保

施設や医療費を本人に請求しようにも、本人は認知症。だから、身元保証を求めますね。これこそ、成年後見がパワーを発揮する場面。身寄りない人とつながる地域包括や行政などとつながることにより、後見にもスムーズに移行できるのではと考えられます。

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 地域包括は地域包括支援センター(介護保険法 第115条の45、同法第115条の46)のことです。行政などの「など」には、日常生活自立支援事業(社会福祉法第2条第3項第12号、同法第81条)の実施主体である社会福祉協議会も入っているのだと思います。

厚生労働省「地域包括支援センターの手引きについて」

https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/03/tp0313-1.html

社会福祉法人全国社会福祉協議会「日常生活自立支援事業」

https://www.shakyo.or.jp/news/kako/materials/100517_01.html

福祉サービスを利用したいけれど、手続きの仕方がわからない。銀行に行ってお金をおろしたいけれど、自信がなくて誰かに相談したい。商品勧誘の人が来たとき、どう対応していいかわからない。毎日の暮らしのなかにはいろいろな不安や疑問、判断に迷ってしまうことがたくさんあります。日常生活自立支援事業は、このような場合に、福祉サービスの利用手続きや、金銭管理のお手伝いをして、あなたが安心して暮らせるようにサポートします。

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3. 死後事務

ご遺体の引き取りですよね。これも、身元保証を求める大きな理由。

でも、後見人は、火葬と埋葬が法的にできるようになりましたし、死後事務委任を受けていれば、葬儀や、お墓も事前に決めることもできますよね。このように、身寄りなし問題って、我々専門家が活躍できるシーンが非常に多い。ですから、医療や介護のチームとつながることが大事なんですね。

■■ 身寄りなし(お一人様)って、不幸なの?もちろん、経済的に困窮していると大変だと思います。でも、案外行政の支援が厚いから、なんとかなる部分もあります。逆に生活に心配がない人はどうでしょう?これが案外、生活の満足度は高いそう。ちなみに、満足度最低は、夫婦二人暮らしのようです。

■■ 「認知症を怖がる社会から」から、「安心して認知症になれる社会」へ

そこで重要なのは後見制度。今は専門職による後見人が上位を占めていますが、財産管理はしてくれるが、身上監護はしてくれないと述べています。う〜ん。反省。

■■ 地域連携は求められている

その方が言うには、「法律側がそのような地域連携の情報発信をしたことは今までほとんどなかった。待っているのではなく、自分から発信することを大変うれしく思います」とのこと。やはり待っていてはダメですね。みなさんの地域でも、おそらく地域連携は求められているはず。暖かくなってきたので、外に出て、今まで会ったことがない人と連携の話しをしてきてはいかがでしょうか!

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「経済的に困窮していると大変だと思います。でも、案外行政の支援が厚いから、なんとかなる部分もあります。」について、そうなのでしょうか。行政の支援とは生活保護などを指しているのか、なんとかなる、がどのような範囲なのか分からないので、何ともいえません。

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1-1.親が認知症になってしまうと・・・

医療技術などの進歩により平均寿命がのび日本自体が長寿化としています。

健康寿命と本来の寿命との差が10年。今後も伸び続ける予測が立ており、「独居老人、老老介護」という言葉も出てくるほど。その反面、認知症が問題となっています。

認知症になってしまうと、介護等の問題だけではなく、契約などをする際法律上必要とされる判断能力がない状態になります。結果、様々な行為・契約に制限がかかり、親の財産が動かせなくなるのです。

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認知症になってしまうと、当然に法律上必要とされる判断能力がない状態になるわけではありません。親の財産を動かす必要があるのか、個別具体的な検討が必要だと思います。

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例えば、・親が入所する施設のための費用を親の預貯金から引出・振込ができない。・介護施設に入所後の親が住んでいる家を売ることができない。

・親の代わりに賃貸物件の管理や修繕、建替えができない。などなど。

相続対策についても当然検討する必要がありますが、それと同時に生前の財産管理も併せて行わなければならない状況となっています。

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キャッシュカードがあれば振込みは出来るかと思います。住んでいる家や賃貸物件の管理や修繕・建替えは法定の成年後見人でも必要があれば可能だと考えられます。

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このような認知症や認知症になった後のことを元気なうちから親にするのは気が引ける…という方は非常に多いでしょう。市場調査でも、7割の人は認知症に関することを親と会話していないのが現状です。(「認知症」に関する調査結果」 2018年 SOMPOホールディングス株式会社 調査)しかし、認知症になってしまったら、介護費用に充てるために自宅を貸したり、親の預貯金を引き出したりができないのです。そのような状態になってしまったら、あなたもご両親も困ってしまいます。もし、このことについて少しでも不安や心配があるのであれば、是非この後の内容も読んでみてください。

1-2.「認知症」を契機としてとるべき対策

認知症後の財産管理対策の必要性については、前のタイトルでお伝えしました。その他の対策はどうなのでしょうか?親の財産管理に関する話をするタイミングは、これまで「相続」を契機としていました。多くの人が、・財産の分け方(遺産分割対策)・相続税をいかに下げるか(相続税対策)に関する話し合いを本人が亡くなるか少し前にするイメージではないでしょうか?しかし、もしそうなると、本人の意思を全く無視した話し合いになる可能性があります。「親の資産についてどう分けるか」について、子供同士が親なしで話し合おうとすることが争続に発展する原因の一つです。親の資産については、親の決定権が絶対なのですから。

もし、親を入れて円満に相続するのであれば、事前対策をしておく必要がありますが、遺言作成や生前贈与をするにしても本人の意思判断能力は必要です。また、現代では、「代々受け継いだ土地をそのまま残したい」「兄弟仲良く半分ずつ分けたい」「この人には財産を渡したくない」といったように要望が多様化していますね。そんな中で「これをやっておけば大丈夫」といったすべての人に適合する対策はありません。

1)まずは、具体的に、ご両親の認知症によって発生する将来考えられるリスクを顕在化すること。

2)そして、財産状況や本人や家族の希望を見てそれに合うような対策をとるか検討すること。この2つの行動をしていく必要があります。これを避けて、何もしなかった場合、例えば、親の財産が凍結し、不動産売却や賃貸契約、預貯金の引出しができなると、介護や通院費用等を捻出がむずかしくなる可能性もあります。そのために、「財産管理対策」に加えて、「遺産分割対策」「相続税対策」についても認知症をきっかけに話し合うことが重要なのです。

【本日のまとめ】

◎認知症になってしまうと、判断能力がない状態と 判断されてしまい、介護費用に充てるために自宅を貸す・売る等の契約をしたり、親の預貯金を引 き出したりできなくなる。

◎相続対策も意思能力が必要なので、「認知症」を 契機に「財産管理対策」「遺産分割対策」「相続税対策」を家族で話し合う機会が必要。

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 このような一連の記事も、人生会議で話し合う内容なのかもしれません。私は未だ定義されているような人生会議に参加したことはありませんが、どのような関わり方が出来るのか、考えてみたいと思います。

 ただ、これらの記事、特に成年後見や地域連携を前面に出す記載は、成年後見の審判開始の申立て書作成や成年後見人の仕事について支援するなど、直接成年後見人になる、ということは考えていないと思います。民事信託・家族信託など報酬になる仕事が来ることを考えてのものだと思います。

「信託契約の発効時期」

家族信託実務ガイド[1]の記事から考えてみます。

一般社団法人家族信託普及協会代表理事 司法書士 宮田浩「信託契約の発効時期」

信託契約の開始時期に関する例

1委託者が認知症になったとき

2委託者が主治医から認知症と診断されたとき

3委託者が判断能力を喪失したとき

4委託者が受託者に対し信託契約を発効すべき旨の意思表示をしたとき

5委託者につき成年後見開始または保佐開始の審判が下りたとき

6委託者につき要介護認定4以上となったとき

 1について、「認知症の定義が曖昧」という指摘があります。そうなのでしょうか。下のように、厚生労働者ほか様々な機関が認知症について定義しています。定義に共通するのが、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態、という状態を表していることです。これは1つの明確な定義といって良いのではないかと思います。また曖昧であるのが認知症といっても良いのではないかと考えます。

 反対に法律行為の発効時期に関して、契約書に署名することは誰が観ても分かり、署名が残るので発効時期は信託契約書に署名を行ったとき、という定義は、法令関係者が判断するには分かりやすいと思います。これは1つの行為である署名と状態である認知症の違いなので、指摘するほどのことでもないと感じます。例えば、毎日自分の名前を書くことを日課としている人でも、信号の判断が出来ない方もいるかと思います。契約書を読み、理解し、署名することは出来ても、日常生活に支障を来たしている状態にある、といえると思います。このような方はどうするのでしょうか。

・国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 認知症センター

「認知症」とはどんな状態ですか?

https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sd/dementia.html

・厚生労働省

「認知症」とは

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html

 2について、「「主治医」というのは誰になるのかという疑問が生じます」、に関しては、通常かかりつけ医、またはかかりつけ医からの紹介を受けた医師になるのではないでしょうか。また信託行為以前に、その辺りの準備は行うことが可能な場合が多いのではないでしょうか。

 「委託者側の意向を無視して、診断書の発効日を恣意的に操作することも可能となり得るという点においても問題が多い」について、診断書の発効日を恣意的に操作するのは、誰なのでしょうか。受託者でしょうか。推定相続人その他の利害関係者でしょうか。どちらにしても、医師に対して診断書の発効日を恣意的に操作するという事が可能となり得るのか、私は経験がないので疑問に感じます。

 3について、同意です。4について、「結局成年後見制度下で本人の全財産の管理を実行する以上、家族信託をスタートさせるメリットが半減してしまいます。」について、そうなのでしょうか。信託行為と併せて任意後見契約を締結し、代理権目録に、信託行為との調整事項を記載しておけば良いのではないでしょうか。また成年後見人を就けない場合、家族信託だけで進めていけるのでしょうか。

 5について、「成年後見制度の代用」とありますが、併用ではなく代用という目的で利用する場合、著者のような考え方になるかもしれません。

 6について、「(要介護度と本人の判断能力の有無は無関係ですので、要介護度が高いからといって判断能力がないとも言い切れませんが)」とあります。

厚生労働省 「要介護認定はどのように行われるか」

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo2.html

 審査基準の一つに、認知機能や思考・感情等の障害により、十分な説明を行ってもなお、予防給付の利用に係る適切な理解が困難である状態、があります。要介護度が高いからといって判断能力がないとも言い切れないことには、私は同意しますが、要介護度と本人の判断能力の有無は無関係ではないと思います。

 「委託者本人名義の預貯金口座から受託者が管理する信託金銭の管理口座(信託口口座または受託者個人名義の信託専用口座)への金銭の移動が実質的に不可能になるという事実」、について、そうなのでしょうか。著者が要介護度が高いからといって判断能力がないとも言い切れないと記載しているように、身体に過重な介護負担が必要な場合も要介護度4や5と判定される場合があります。そのような場合は、委託者が介護サービスを利用して金融機関窓口まで行き、資金移動を行うことが可能です。

  その後の「原則として信託契約日をもって効力発生日とすべき」、以下には基本的に賛成です。「受益者たる親のお金」、「受託者を不動産管理会社兼ATMだと思って」、「子側に預けておく」を除きます。

・家族信託実務ガイドの不思議

 当初この雑誌は、家族信託普及協会と司法書士法人ソレイユ、民事信託活用支援機構の関係者の記事が中心でした。現在22号ですが、民事信託推進センターの専門家が頻繁に登場するようになっています。今まででいえば、遠藤英嗣弁護士。信託の学校主宰の谷口毅司法書士。本号でいえば金森健一弁護士、渋谷陽一郎先生などです。民事信託推進センターの講座や信託フォーラム、市民と法、などでは家族信託普及協会と司法書士法人ソレイユ、民事信託活用支援機構の関係者のやり方を、名前を出さずに批判していましたが、家族信託実務ガイドではお互いを批判したりはないようです。記事になれば良い、という事なのでしょうか。同じ場所で記事を書くのであれば、名前も出ているので議論を行うのが通常だと感じます。


[1] 2021.8第22号日本法令P74~

渋谷陽一郎「高齢者の幸福な生活と福祉の実現」という信託の目的を「不動産投資」に変更する登記は可能なのか。

家族信託実務ガイド[1]の記事からです。

一体、登記官は、登記された「信託の目的」でもって、何を審査(判断)するのでしょうか。

 法務省から公式な見解は出ていませんが、私は、法人登記の会社の目的の審査基準に準ずると考えています。「会社法施行後の会社の目的における具体性の審査の在り方」に関する意見募集の実施結果について(報告)

http://www.moj.go.jp/MINJI/public_minji65_result_minji65.html

 「1「幸福の実現」の前提となる「生活費を給付」する」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的には、不動産と直接の関係がない記載のため、記載は不要と考えます。記載しても信託目録には記録されると考えます。

 「2生活費給付の原資を得るため「アパート経営」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得まます。また、アパートとしての不動産を信託して、受託者が経営(管理・運用・処分)するため、不動産登記申請における信託の目的にもなり得ると考えます。

 「3アパート経営を学ぶため「アパート経営者養成講座」に入会する」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託財産に属する財産となる不動産と関係のない行為だからです。記載しても信託目録には記録されると考えます。

 「4アパート経営を成功させるためにプロに「第三者委託」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託目録に記録するとすれば、信託の目的ではなく、信託財産の管理方法(不動産登記法97条1項9号)だと考えます。

 「5アパート経営を持続させるため「定期的な修繕」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託財産に属する財産となる不動産の権利と関係のない行為だからです。記載しても信託目録には記録されると考えます。

 「6継続的な修繕実施のために賃料収入から「毎月の積立て」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託財産に属する財産となる不動産の権利と関係がなく、信託財産に属する財産となる金銭の管理方法だからです。記載しても信託目録には記録されると考えます。

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当該信託が、福祉型信託であることを示唆し、福祉型信託の水準の受託者責任を要請する具体的な機能と規律を有するというものです。

 私は信託の目的に現在、「受益者の幸福な生活と福祉の実現」と記載することはありません。もし引用記事のように福祉型信託の水準の受託者責任、ということを明確にする場合について考えてみます。信託の目的には、任意後見制度を利用した場合に準ずる生活、という用語を入れると思います。

例えば、生活費、医療費、介護費などをどれだけ支給するのか、あるいは、介護施設を利用するのか否か、受益権の配当額の決定その他、受益者の善管注意義務(受益債権に係る債務の履行)に直接的に関係します。

 「受益者の善管注意義務(受益債権に係る債務の履行)」というものが、私には分かりませんでした。

なお、そもそも、委託者兼受益者から、信託を終了させる権限を奪っているような場合、そのような信託は、委託者兼受益者の利益のための信託なのか、という疑問も生じます。

 それが意思凍結機能というものだと思います。受託者との関係性から、一様に権限を奪うという形にはならないのかなと考えます。ハードルは高いですが、信託法165条における信託の終了も用意されています。私は使われないことを願います。

信託の目的を「孫の教育資金の確保」から「孫の生活保障」に変更することは、孫への金銭的な支援を行うという信託事務の形式それ自体に大きな差異はなく、なんとなく信託の同一性が認められそうです。

 おそらく、信託の変更自体は可能だと思いますが、私は同一性がないと思います。受益者は同じでも信託財産の用途が違うからです。

 参考として、下の公益信託の審査基準を挙げます。公益信託は不特定多数のためのものなので、逆を考えれば民事信託・家族信託への当てはめが可能な部分があると思います。また同じ信託なので本質は同じだと思います。

平成6年9月13日公益法人等指導監督連絡会議決定

公益信託の引受け許可審査基準等について

https://www.soumu.go.jp/main_content/000694250.pdf

 P15に、イ 授益行為の内容は、原則として、助成金、奨学金、奨励金、寄附金等の支給若しくは物品の配付のような資金又は物品の給付であること。

とあります。これを生活保障とすることが出来るかと考えれば、出来ないと思います。同じ信託なので本質は同じ、の部分です。従って、高齢者の幸福な生活と福祉の実現から、「中小企業の事業承継」、「京町屋の保存」、「不動産複合施設の開発」などは全て孫の場合と同じ結論となります。

極端な「信託の目的」変更に係る信託変更登記を申請した場合、果たして、登記官はどのように判断するのでしょうか。登記官は、そのまま受理するのか、却下するのか、補正を命じるのでしょうか。

 登記官は、却下事由がない限り受理する、という事務を執ると考えます。


[1] 2021.8第22号P62~日本法令

【資産評価政策学会】固定資産税評価、不動産鑑定はどこまで必要か

【資産評価政策学会】「固定資産税評価、不動産鑑定はどこまで必要か」6月29日開催シンポジウム

松浦新 朝日新聞経済部記者。最近は『負動産時代』(朝日新書)をまとめた。NHK記者、くらし編集部、週刊朝日編集部、be編集部、特別報道部など。

0円物件サイト(北海道)工務店が運営

https://zero.estate/category/zero/hokkaido/

長野県安曇野市

2018年2月に10万円で買った土地。年間の固定資産税2万3000円。

茨城県の固定資産評価。随意契約から競争入札まで。評価に関する費用(不動産勘定士費用)は、ばらばら。機械的な計算方法で良いのではないか。

→一定の土地に関しては良いと思います。

慶応義塾大学大学院法務研究科教授 石岡克俊

論点1「固定資産税と固定資産税評価は何のためにあるのか」

→資産を保有していることに対する税。

論点2「固定資産税評価・相続税評価・地価公示等の異同、公共サービスの対価としての固定資産税のあり方、土地と建物への課税の意味」

→固定資産税評価は毎年、相続税評価は人が亡くなったときの所得再分配、地価公示は売買の促し。固定資産税が公共サービスの対価とは考えが及びません。

論点3「固定資産税評価業務は、誰がどのように行うべきか:業務の発注方式のあり方」

→自治体、競争入札または地元の不動産鑑定士に一任と公開が良いと思います。

随意契約と公正取引委員会

明治大学専門職大学院法務研究科教授 岩崎政明

・建物課税は撤廃の提案。

・林道のような土地については、免税の提案。

・徴税コストが高い。

・富裕層ほど、金融資産を不動産に代えて相続税の負担を少なくする選択肢がある。

→これはあると思います。沖縄県だと軍用地を購入する、など。

大規模なオフィスビルの評価方法として、製造原価から測定するBMI方法。居住用建物には適用できない。

→居住用建物に関しては、基幹部分のみで評価すれば良いと思います。それ以外は、売る側(または売ったメーカー)が内装に○○を付けた、○○年にペンキを塗り替えた、など表明していくことが必要だと思います。また中古建物の取引事例がオープンデータになっていると、売買価格決定の一定の基準となり得ます。

不動産勘定士 堀川裕巳

免税点以下の不動産に対する評価替えに対する費用が大きい。評価基準の複雑さ。全ての土地建物に関して、不動産勘定士の評価が必要か?

行政改革により、地方ほど行政負担が大きいが人口が少ない、少なくなるため、税収は少ない。公示価格も減少する、している地域が多い。都市部は反対。人口が減ると、地価が低くなる。

→そうなのか?魅力を見出す人、企業が出てくるの可能性があるのではないか。

一括で大きな規模の土地を購入できる可能性が高まるのではないか。

自治省告示第百五十八号 固定資産評価基準

最終: 令和2年11月6日総務省告示第 322号

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran13/pdf/tochi.pdf

第12節 経過措置

一 宅地の評価において、第3節二(一)3(1)及び第3節二(二)4の標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法(昭和44年法律第49号)による地価公示価格及び「不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用する」こととし、これらの価格の7割を目途として評定するものとする。この場合において、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用するに当たつては、全国及び都道府県単位の情報交換及び調整を十分に行うものとする。

弁護士 三木義一

令和元年7月16日最高裁判所第三小法廷判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88795

固定資産課税台帳に登録された価格を不服として固定資産評価審査委員会に審査の申出をした者は,「同委員会による審査の際に主張しなかった事由であっても,当該申出に対する同委員会の決定の取消訴訟において,その違法性を基礎付ける事由として,これを主張することが許される。」→自治体負担増。

令和2年3月24日最高裁判所第三小法廷判決

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89345

家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税及び都市計画税の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の「除斥期間は,当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時」から進行する。→自治体負担増。

固定資産税は時価と距離を置くべき。

保有税なのに、時価を基準としているから、評価が複雑になり矛盾が出てくる。

今後、固定資産の評価基準が明確になって他の自治体と比較が出来るようになっていくと、住民から異議が出てくる可能性も高くなるのではないか。

政策研究大学院大学教授、資産評価制作学会副会長 福井秀夫

建物課税は無益有害。

固定資産税は廃止し、相続税に一元化すべき。

→相続税の課税方法をどうするのか記載がなかったので、直ぐに固定資産税を廃止するという考えに賛成は出来ません。

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