登記情報2024年10月号

登記情報2024年10月号(755号)、(一社)金融財政事情研究会

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T

 法窓一言 境界紛争解決とADR

東京土地家屋調査士会境界紛争解決センター センター長 味田昌也

 筆界と占有界、所有権界に誤差の範囲内では処理しきれない誤差が生じる場合。

特 集 近時の民事法制・重要判例先例

民事基本法制の立法動向

法務省大臣官房司法法制部長(前大臣官房審議官) 松井信憲

 法務省 民法等の一部を改正する法律について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00315.html

 公益Information 公益信託に関する法律

https://www.koeki-info.go.jp

 法務省 法制審議会-区分所有法制部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00004

 法務省において、法案の立案作業中。

 衆議院 事業性融資の推進等に関する法律案

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/213/meisai/m213080213057.htm

 譲渡担保権の内容や被担保債権の範囲に関する規律。

 集合動産譲渡担保契約について対抗要件の特例等を定めること。

 所有権留保契約の効力について。

法務省 法制審議会-担保法制部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003008.html

金融庁 金融審議会 事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html

 法務省 法制審議会-商法(船荷証券等関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00002

 商法(船荷証券等関係)等の改正に関する要綱案

法務所 法制審議会-民法(遺言関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00009

 自筆証書遺言のデジタル化について

公益社団法人商事法務研究会 成年後見制度の在り方に関する研究会

https://www.shojihomu.or.jp/list/seinenkoken

 法制審議会民法部会において調査審議中。

近時の重要判例と士業実務

司法書士 早川将和

最判二小判令5・11・27判タ1519号162頁

 抵当権の登記を重視。登記後は差押え前であっても、将来賃料債権を受働債権とする相殺をして抵当権者に対抗することは出来ない。

最三小決令6・3・19銀法912号69頁

 真正相続人の相続回復請求権(民法884条)の消滅時効の前後に関わらず、表見相続人は、真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができる。

最二小判令6・6・21LLI/DB判例秘書L07910030

 親の現在の法的性別は認知の届出(民法781条)は受理される。

最三小決令6・3・27LLI/DB判例秘書L07910009

 医療法46条の3の2第4項、理事長は、総社員の五分の一以上の社員から社員総会の目的である事項を示して臨時社員総会の招集を請求された場合には、その請求のあつた日から二十日以内に、これを招集しなければならない。ただし、総社員の五分の一の割合については、定款でこれを下回る割合を定めることができる。について、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項、次に掲げる場合には、前項の規定による請求をした社員は、裁判所の許可を得て、社員総会を招集することができる。一前項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、二前項の規定による請求があった日から六週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を社員総会の日とする社員総会の招集の通知が発せられない場合、を準用規定がないので、類推適用することは出来ない。

最二小判令6・4・19LLI/DB判例秘書L07910011

 株券発行会社における株主間の株式の譲渡は、株券発行前であれば、契約のみで効力が生じる。

大阪高判令4・128法学教室511号136頁

 取締役の善管注意義務、忠実義務について(会社法330条、355条)。

近時の重要先例と士業実務

司法書士 田口真一郎

令和5年3月30日民二第555号回答

 本人確認情報(不動産登記法23条4項1号、不動産登記規則72条)を作成するにあたり、テレビ電話会議システムによる方法が可能と考えられる要件について。

・・・遠隔の場合、テレビ電話会議に依頼者の現地に事務所を持つ司法書士に同席してもらい、同時に画面で映って確認する方法もあるのかなと思います。

令和5年9月12日民二第927号通達

 相続登記における過料の消極要件について。

令和5年12月15日民二第1596号通達

 外国に住所がある外国人・外国を本店等とする法人の住所・本店等を証する情報について。

令和5年12月18日民二第1619号回答

 相続を広義の原因とする登記申請において添付する被相続人の同一性を証する情報について、性別を補完する情報。

令和6年3月15日民二第535号通達

 相続人申告登記の抹消申出を、次順位相続人が出来るかについて。

令和6年3月19日法務省民事局民事第二課補佐官事務連絡

 租税特別措置法84条の2の3の第1項と第2項の関係について

令和6年3月21日民二第569号通達

 登記申請時における法定相続情報の提供について。

令和6年3月22日民二第551号通達

 所有権の登記事項に法人等が記録される場合の取扱いについて。

令和6年3月22日民二第552号通達

 所有権の登記名義人に、ローマ字併記が認められる場合と添付が必要な情報について。

令和6年3月27日民二第553号通達

 所有権の登記名義人が旧氏併記の申出が可能な場合と必要な情報について。

令和6年4月1日付け民二第555号通達

 不動産登記法116条6項に関する通達。信託目録に記録されている者について、不動産登記法97条1項11号その他の信託の条項に記録される者についても適用があるのか、分かりませんでした。

法制審議会だより

民法(成年後見等関係)部会、第1回~第4回会議を開催

編集部

法務省 法制審議会-民法(成年後見等関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00008

 現在7回まで開催。重度の身体障害により意思疎通が困難な場合など、法定後見制度の対象となる範囲について。

 

民法(遺言関係)部会、第1回~第4回会議を開催

編集部

法務省 法制審議会-民法(遺言関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00009

 遺言が要式行為であることの趣旨を確認。死亡危急時遺言や一般隔絶地遺言等の見直しについて検討。

検討会だより

定款認証の負担軽減に向けたデジタル活用のための実務検討会の第2回会議が開催される

編集部

https://www.kinzai.jp/seminar/digital_utilization

 金融財政事情研究会の主催。現在、4回まで開催。モデル定款に取締役会設置会社を含めることについて。既存システム(登記・供託オンライン申請システムや法人設立OSS)を有効活用し、モデル定款の作成を既存システムの新たな機能として位置付けた上で、国がその基本的機能を開発することとし、そのAPIを提供して民間が広く活用する方向で検討。

商業登記規則逐条解説 第22回

土手敏行

https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023

(登記すべき登記記録等)

第九十四条外国会社の登記は、その登記をするに最も適する登記簿の種類に従つた登記記録にしなければならない。

2登記すべき事項の記録は、これに最も適する区に記録しなければならない。

 商号規定は適用されない。

(設立の準拠法等の記録)

第九十五条外国会社の設立の準拠法に関する登記は商号区に、外国会社の日本における代表者に関する登記は社員区又は役員区にしなければならない。

 外国会社の設立の準拠法は、具体的な法律名。外国会社の日本における代表者は、代表取締役や支配人の地位を持つ者でなくても良い。

(登記記録の閉鎖等)

第九十六条次の登記は、登記記録区にしなければならない。

一営業所を登記所の管轄区域外に移転した場合において、当該営業所の旧所在地においてする移転の登記(登記所の管轄区域内に他の営業所がある場合を除く。)

二営業所を閉鎖した場合において、当該営業所の旧所在地においてする閉鎖の登記(登記所の管轄区域内に他の営業所がある場合及び登記所の管轄区域内に日本における代表者の住所地がある場合(すべての日本における営業所を閉鎖した場合に限る。)を除く。)

三日本に営業所を設置している外国会社のすべての日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。)の退任の登記(清算の開始の命令がある場合を除く。)

四日本に営業所を設置していない外国会社の日本における代表者がその住所を登記所の管轄区域外に移転した場合において、当該代表者の旧住所地においてする移転の登記(登記所の管轄区域内に他の日本における代表者の住所地がある場合を除く。)

五日本に営業所を設置していない外国会社が登記所の管轄区域外に営業所を設置した場合において、当該外国会社の日本における代表者の住所地においてする営業所の設置の登記

六日本に営業所を設置していない外国会社の日本における代表者の住所地においてする当該代表者の退任の登記(登記所の管轄区域内に他の日本における代表者の住所地がある場合及び清算の開始の命令がある場合を除く。)

七清算結了の登記

2前項各号に掲げる登記をしたときは、その登記記録を閉鎖しなければならない。

 外国会社の登記のうち、登記記録区にする登記を規定。登記記録の閉鎖について。

(準用規定)

第九十七条第九条の四第二項の規定は、外国会社の日本における代表者である法人の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該外国会社の日本における代表者である法人の代表者の職務を行うべき者)が登記の申請をする場合について準用する。

2第六十五条第一項の規定は、法第百三十一条において準用する法第五十二条第二項の規定による申請書の送付について準用する。

3第七十四条及び第七十五条の規定は、外国会社の登記について準用する。

 国税庁 アイルランド共和国に本店を有する法人が我が国会社法の規定に基づき日本における代表者の選任及び外国会社の登記をし、その代表者が日本において一定の行為をした場合の恒久的施設の有無の判定

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/hojin/230222/index.htm

空き家問題の解消および相続登記の申請義務化における司法書士の役割

江島・猪之鼻司法書士事務所、日本司法書士会連合会 常任理事 猪之鼻久美子

 一般財団法人国土計画協会 所有者不明土地問題研究会

https://www.kok.or.jp/project/research.html

 各市町村における空き家対策協議会への参加。海外に移住した相続人や国内に居住する外国籍の方からの相談など、渉外登記業務についての対応。

リスクベース・アプローチに基づくマネロン対策⑷―“司法書士ガイドライン”から考える―

司法書士 末光祐一

 依頼者の属性、依頼の種類・目的、形態、同種の依頼との比較など。

法律業務が楽になる心理学の基礎第13回 産業・組織心理学から見た社会的手抜きと働く意義

弁護士(認定心理士) 渡部友一郎

 社会手抜き。集団で仕事をすると生産性が低くなる原因。キャリアの自己責任化との関係。

供託ねっと―実務から学ぶ供託―第113回 不法行為に基づく損害賠償金の供託について、供託者による取戻請求をさせないために被供託者が採り得る手段について

甲府地方法務局供託課長 小山真治

 供託受諾書について(供託規則48条)。

第66話 「共済」って知っていますか?

司法書士法人鈴木事務所、司法書士 鈴木龍介

 全税共年金

http://www.zenzeikyo.com/nenkin.html

実務の現場から

台湾人の相続登記―令和5年12月15日付け法務省民二第1596号通達を踏まえて

司法書士 竹内淳史

 登記研究804号P325、2015年2月28日発行【登記簿】台湾の会社を登記権利者とする所有権の移転の登記に係る添付情報について

登記研究919号

登記研究919号、2024年9月号、テイハン

https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html

【論説・解説】

■後見登記等に関する法令の改正経緯等について(下)

法務省民事局民事第一課長 櫻 庭  倫

第3 後見登記等に関する省令の改正経緯

後見登記等に関する省令

https://laws.e-gov.go.jp/law/412M50000010002

(副記録)

第四条登記官は、後見登記等ファイル等に記録した事項と同一の事項を記録する副記録を備えなければならない。

2登記官は、後見登記等ファイル等の記録によって登記の事務を行うことができないときは、前項の副記録によってこれを行うことができる。この場合において、副記録に記録した事項は、後見登記等ファイル等の記録に記録した事項とみなす。

3登記官は、後見登記等ファイル等の記録によって登記の事務を行うことができるようになったときは、直ちに、前項の規定により副記録に記録した事項を後見登記等ファイル等の記録に記録しなければならない。

(登記申請書等の送付方法)

第八条 登記の申請をしようとする者が登記申請書等を送付するときは、書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)の役務であって当該一般信書便事業者若しくは当該特定信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによらなければならない。

(登記の方法等)

第十二条登記をするには、登記の事由及びその年月日並びに登記の年月日をも後見登記等ファイルに記録しなければならない。

2登記官が、法令の規定により、磁気ディスクをもって記録等を調製する場合においては、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術(官民データ活用推進基本法(平成二十八年法律第百三号)第二条第四項に規定するクラウド・コンピューティング・サービス関連技術をいう。)その他の情報通信技術の進展の状況を踏まえた適切な方法によるものとする。

(登記事項証明書等の交付請求の方式)

第十七条登記事項証明書等の交付の請求は、書面でしなければならない。

2前項の申請書には、次に掲げる事項を記載し、申請人又はその代表者若しくは代理人が記名しなければならない。

一申請人の氏名又は名称及び住所並びに申請人の資格

二後見登記等ファイル等に記録されている事項を証明した登記事項証明書等の交付を請求するときは、請求に係る登記記録又は閉鎖登記記録を特定するために必要な事項

三後見登記等ファイル等に成年被後見人等、任意後見契約の本人若しくは後見命令等の本人又はこれらの者であった者としての記録がない旨を証明した登記事項証明書等の交付を請求するときは、その旨並びに証明の対象となる者の氏名、出生の年月日及び住所又は本籍(外国人にあっては、国籍)

四後見登記等ファイル等に前号に規定する者以外の者としての記録がない旨を証明した登記事項証明書等の交付を請求するときは、その旨並びに証明の対象となる者の氏名又は名称及び住所

五請求する登記事項証明書等の数

六手数料の額

七年月日

八登記所の表示

(登記事項証明書等の作成方法)

第二十条 登記事項証明書等を作成するには、登記官は、証明すべき事項(令第八条の規定による更正前の登記事項を除く。)を記載した書面の末尾に認証文を付記し、年月日及び職氏名を記載し、職印を押し、毎葉のつづり目に契印又はこれに準ずる措置をしなければならない。

2前項の規定にかかわらず、法第七条第一項の規定による変更の登記の記録があるときは、特別の請求がない限り、変更前の登記事項の記載をすることを要しない。

・・・自宅の住所記載を不要に。

(登記事項証明書等の交付の請求方法)

第二十五条 第二十二条の規定により同条第二号の請求をするには、申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務大臣の定めるところに従い、第十七条第二項各号に掲げる事項に係る情報を、これについて電子署名を行い、送信しなければならない。

2申請人又はその代表者若しくは代理人は、法令の規定により登記事項証明書等の交付の申請書に添付すべき書面があるときは、法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報にその作成者による電子署名が行われたものを併せて送信しなければならない。

3第二十三条第三項の規定は、前二項の電子署名が行われた情報を送信するときに準用する。

・後見登記等に関する省令の一部を改正する省令(平成24年法務省令第44号)による改正・・・自然人と法人をまとめた形で表現。

第4 その他

 欠格事由の見直し。・・・登記されていないことの証明書の発行件数の減少。

■外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて

法務省民事局付 森 下 宏 輝、法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之、法務省民事局民事第二課補佐官 太 田 裕 介

1 はじめに

外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて」(令和5年12月15日付け法務省民二第1596号民事局長通達

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00589.html

従前

登記研究124号P28、昭和33年1月22日民事甲第205号民事局長心得回答「住所を証する書面について」

 国外移住者であるときは、住所地を管轄する在外公館の証明を得た書面を提出。

登記研究213号P37、昭和40年6月18日民事甲第1096号民事局長回答「米国に住所を有する者が登記を申請する場合の不動産登記法第四十三条の規定による書面等について」

 アメリカ国籍の者、アメリカに住所がある日本人の住所を証する書面として、アメリカ合衆国公証人の証明にかかるものを提出するときは、便宜受理してさしつかえない。

2 本通達の発出の経緯等

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00049.html

(2)外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し

外国に住所を有する外国人(法人を含む。)が所有権の登記名義人となろうとする場合に必要となる住所証明情報については、次の①又は②のいずれかとするものとする。

①外国政府等の発行した住所証明情報

②住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)

民法・不動産登記法部会資料35、P15

3 外国に住所を有する外国人の住所証明情報の見直しについて

前記1のパブリック・コメントの結果等を踏まえると、現在の登記実務で用いられている外国の公証人による証明書を住所証明情報として利用することを一切認めないこととすると、不動産登記をするコストを増大させるだけでなく、住所証明制度がない国においては登記申請が事実上困難となり、かえって所有者不明土地が発生しやすくなるおそれがある。

所有権の登記名義人について住所証明情報の提供を求めている趣旨は、①正確な住所を登記するとともに、②虚無人名義の登記を防止する点にあるが、①正確な住所を登記する観点からは、住所証明制度が整備されていない国においては、次善の策として、公証人による証明の方法で一定の正確性を担保することとせざるを得ないと考えられる。この点については、各国における法人の登録制度によっては法人自体についても問題となり得るものと考えられる。 他方で、②虚無人名義の登記を防止するという観点からは、外国政府等の発行する本人確認書類(旅券や身分証明書等)をもって本人の実在性の確認を補強することが考えられる。

ただし、旅券や身分証明書をそのまま登記所に提供することはできないことから、公証人において外国政府等の発行する本人確認書類を確認し、住所を証明した公証人の作成に係る書面に当該本人確認書類の写しを添付するといった方法によることがあり得るものと考えられる。 また、法人については、設立準拠法国と営業上の本拠地国とが異なることがあるが、実在性を確認する観点からすると、設立準拠法国による証明書を提供することを要するものとすることが相当である。

3 本通達の解説

外国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報

(1)住所証明情報・・・外国に住所を有する外国人・法人が、新たに所有権の登記名義人となる登記申請(所有権保存・所有権移転・合体)の住所を証する情報に限る。登記名義人の住所変更登記の申請をする場合には、本通達の住所証明情報の対象とならない。→対象とならないものは、従前の取扱い。

・原本であること。

・有効期限確認。

・記載事項を証明する文言があるもの。

・公印がなくても、通達の要件を確認することが可能で、本人が原本であることを説明した書面を添付すれば良い。

・政府機関の作成した情報は、書面に限られデータを含まない。

・登記名義人となる者の国籍の政府・居住国の政府の作成によるもの、どちらでも良い。

・本国等政府の作成に係る住所を証明する書面と同視できるものの例。

・・・本国等政府の作成に係る住所を証明するデータの内容を書面に出力したものであって、当該本国等政府のウェブサイトにおいて当該書面に記載された番号を入力することなどにより当該電磁的記録が当該本国等政府の作成に係るものであることを確認できるものについては、その確認結果画面の内容を書面に出力したものと併せて提供された場合には、その証明力に疑義を生じさせる事情がない限り、住所証明情報と認められる可能性が高い。

→そのような国があるのか、分かりませんでした。

(2)登記名義人となる者の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面(宣誓供述書)と、それを補足する情報

・登記申請時点において、期限が有効な旅券(パスポート)の写し

・登記申請時点において、期限が有効ではない(パスポート)の写しで合っても、宣誓供述書とともに旅券(パスポート)の写しが公証人の認証文書の一部を構成しているケース(公証人の作成に係る住所を証明する書面と旅券の写しが合綴されていて一体となっているケースなど。)

・旅券(パスポート)を持っていない場合は、登記名義人となる者の作成に係る旅券を所持していない旨の上申書(作成者の記名押印のあるもの)と、本国等政府の作成に係る書面(運転免許証、IDカード、永住者カードなど。データを書面に出力したものも可能。)の全てのページの写し。

・外国語の書面は、日本語の訳文を併せて提出。証明に関する書面の名称、氏名、住所、発行日、有効期間、有効期限、発行機関、証明する旨の記載(証明力の制限に係る事項があればその事項)の訳文で足りると考えられるが、全文訳した方が無難。

(3)日本の公証人の作成に係る本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨の上申書

・該当要件は、本国・居住国のいずれも公証制度がない、登記名義人となる者が疾病、障害等により本国・居住国のいずれにも帰国できないなどの事情がある、などを上申書として提出。宣誓認証書と一体として作成した方が望ましいと考えます。

・登記名義人となる者がその住所が真実であることを宣誓して公証人が認証して作成したもの(宣誓認証)を併せて提出。

外国に住所を有する法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報

(1)設立準拠法国の発行した書面

・原本であること。

・記載事項を証明する文言があるもの。

・公印がなくても、通達の要件を確認することが可能で、本人が原本であることを説明した書面を添付すれば良い。

・設立準拠法国の政府の作成に係る書面と同視できるものの例。日本における履歴事項全部証明書に該当する書面。

・外国語の書面は、日本語の訳文を併せて提出。証明に関する書面の名称、氏名、住所、発行日、有効期間、有効期限、発行機関、証明する旨の記載(証明力の制限に係る事項があればその事項)の訳文で足りると考えられるが、全文訳した方が無難。

・政府機関の作成した情報は、書面に限られデータを含まない。

(2)住所を証明する申請人の設立準拠法国の公証人の作成に係る書面(宣誓供述書)と、それを補足する情報

・登記申請時点において、期限が有効な設立準拠法国の発行した住所証明情報の写しなどを併せて提出。

・法人の代表者などが書き記した登記名義人となる者の名称及び住所が真実であることを宣誓したうえで署名した文書であって、設立準拠法国の公証人が認証した宣誓供述書。

・宣誓供述書の内容として、宣誓人が法人の代表者であることを含む。

・従業員等が宣誓する場合は、その権限に係る本国法の該当箇所と訳文を併せて提出。例えば日本の会社法第十一条、支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する、など。

・外国語の書面は、日本語の訳文を併せて提出。証明に関する書面の名称、氏名、住所、発行日、有効期間、有効期限、発行機関、証明する旨の記載(証明力の制限に係る事項があればその事項)の訳文で足りると考えられるが、全文訳した方が無難。

・例えばアメリカの場合、法人の本店所在地と宣誓供述書を作成する公証人が所属する州が異なっていても可能。

・設立準拠法国の政府の作成に係る書面が発行されない国(発行機関の記載のない形式でのみ法人情報が提供される国)の場合は、設立準拠法国の作成に係るものであることを証する書面を併せて提出。設立準拠法国政府においては設立準拠法国政府の作成に係るものであることを確認することができるものが発行されていない旨、当該写し等に係る原本が当該国の政府の作成に係るものである旨及び当該写し等に係る原本の請求先・請求方法を説明した書面など)を当該写しなどと併せて提出。

(3)日本の公証人の作成に係る本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨の上申書

・該当要件は、設立準拠法国には公証制度がない、代表者等が設立準拠法国に居住していない、代表者等が疾病、障害等により本国・居住国のいずれにも帰国できないなどの事情がある、などを上申書として提出。宣誓認証書と一体として作成した方が望ましいと考えます。

・代表者等が法人の事項が真実であることを宣誓して公証人が認証・作成したもの(宣誓認証)を併せて提出。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第124回)

一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問 神﨑 満治郎

組合等登記令

https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029

(適用範囲)

第一条別表の名称の欄に掲げる法人(以下「組合等」という。)の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。

(設立の登記)

第二条組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

2前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一目的及び業務

二名称

三事務所の所在場所

四代表権を有する者の氏名、住所及び資格

五存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

六別表の登記事項の欄に掲げる事項

別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)

名称 医療法人

根拠法 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

登記事項

資産の総額

医療法第四十六条の三の六において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四十七条の二に規定する電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め

医療法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205#Mp-Ch_6-Se_3-Ss_6

第四十六条の六医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。

2第四十六条の五第一項ただし書の認可を受けて一人の理事を置く医療法人にあつては、この章(次条第三項を除く。)の規定の適用については、当該理事を理事長とみなす。

第四十六条の七理事会は、全ての理事で組織する。

2理事会は、次に掲げる職務を行う。

一医療法人の業務執行の決定

二理事の職務の執行の監督

理事長の選出及び解職

3項以下略

第四十六条の五 医療法人には、役員として、理事三人以上及び監事一人以上を置かなければならない。ただし、理事について、都道府県知事の認可を受けた場合は、一人又は二人の理事を置けば足りる。

2社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によつて選任する。

3財団たる医療法人の役員は、評議員会の決議によつて選任する。

4医療法人と役員との関係は、委任に関する規定に従う。

5第四十六条の四第二項の規定は、医療法人の役員について準用する。

6医療法人は、その開設する全ての病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(指定管理者として管理する病院等を含む。)の管理者を理事に加えなければならない。ただし、医療法人が病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を二以上開設する場合において、都道府県知事の認可を受けたときは、管理者(指定管理者として管理する病院等の管理者を除く。)の一部を理事に加えないことができる。

7前項本文の理事は、管理者の職を退いたときは、理事の職を失うものとする。

8監事は、当該医療法人の理事又は職員を兼ねてはならない。

役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。

■Q&A不動産表示登記(95)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

法定敷地。登記記録上は規約敷地との区別はない。

 不動産登記規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018

(表題部にする敷地権の記録方法)

第百十八条登記官は、区分建物である建物の登記記録の表題部に法第四十四条第一項第九号に掲げる敷地権を記録するときは、敷地権の登記原因及びその日付のほか、次に掲げる事項を記録しなければならない。

一敷地権の目的である土地に関する次に掲げる事項

イ当該土地を記録する順序に従って付した符号

ロ当該土地の不動産所在事項

ハ地目

ニ地積

二敷地権の種類

三敷地権の割合

登記研究449号P87、1985年6月30日質疑応答【六五四九】「建物の登記簿の所在欄の記載」

規約敷地

登記研究431号P83、昭和58年11月10日、法務省民三第6400号民事局長通達「建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて」

建物の区分所有等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069

(規約による建物の敷地)

第五条区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。

2建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。

(公正証書による規約の設定)

第三十二条 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。

■逐条解説不動産登記規則(48)

元法務省民事局民事第二課地図企画官 小宮山 秀史

不動産登記規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018

(地番区域)

第九十七条地番区域は、市、区、町、村、又はこれに準ずる地域をもって定めるものとする。

大字、子字、地字

地方自治法

https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067

第二百六十条 市町村長は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、市町村の区域内の町若しくはの区域を新たに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、当該市町村の議会の議決を経て定めなければならない。

② 前項の規定による処分をしたときは、市町村長は、これを告示しなければならない。

③ 第一項の規定による処分は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。

登記研究221号P51、1966年4月20日質疑応答四三一七「不動産の表示に関する登記手続についての法令等の規定に関する疑義」

 甲市乙町一丁目の乙町一丁目のような、「大字」又は「字」の付されない地番地域がその例。

■商業登記の変遷(65)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

 登記官の審査権について。公正証書原本不実記載罪(刑法157条)について。

■民事信託の登記の諸問題(36)

渋 谷 陽一郎

 信託監督人の定め、あるいは、信託監督人の表示が登記すべき(できる)という場合、その法的根拠は何なのかである。について・・・信託法26条(受託者の権限の範囲)。信託監督人の同意を要するなどの制限の定めがある場合に、信託財産の管理方法(不動産登記法97条1項9号)として。信託監督人の記載が出てくる場合、第三者が不動産取引に入る前に信託監督人が誰なのか、公示する必要があると考えます。よって、上の信託財産の管理方法に信託監督人の記載がある場合は、信託監督人の表示(住所・本店・主たる事務所、氏名・商号など。)をその他の信託条項(不動産登記法97条1項11号)として登記する必要があると考えます。

【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(12)

登記研究76号P33、昭和29年2月18日民事甲第364号民事局長通達 「株主総会で議長に一任された取締役の解任、選任の登記について(商通第十五号)」

 最後に株主総会の決議が必要。

登記研究238号P44、昭和42年7月6日民事甲第2047号民事局長回答 「登記事務の取扱について」

登記研究166号P45、昭和36年4月24日民事甲第977号民事局長指示 登記官吏会同決議「大阪法務局管内登記課長会同決議」

 取締役の出席を拒否したなどの事由がない限り、株主総会決議の取消事由とはならない。登記研究457号P136、1986年2月28日発行、神崎 満治郎:法務省民事局第一課補佐官「【先例漫歩】商業・法人登記の実務(8)――第5 株主総会」

登記研究698号P73、平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 役員選任決議の効力が有効な期間内は、定款に定めがなくても補欠の取締役を選任することができる(会社法332条、会社法施行規則96条)。登記研究665号P150、平成15年4月9日法務省民商第1079号民事局商事課長通知「定時株主総会における社外監査役補欠者の予選の可否について」補欠監査役の選任に関する定款の定めがある場合、定時株主総会において、社外監査役の予選を行うことができる。定時株主総会の後、補欠者の就任までの間に、新株発行等により株主構成に変動がある場合も同様。

登記研究698号P73、平成18年3月31日、民商第782号民事局長通達 「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

登記研究698号P73、平成18年3月31日、民商第782号民事局長通達 「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 定款を変更して取締役の任期を伸長した場合には、現任の取締役の任期も、特別の事情がない限り伸長される。登記研究506号P31、1990年3月30日発行 柳田 幸三:法務省民事局第四課長、渋佐 愼吾:法務省民事局付、竹田 盛之輔:法務省民事局第四課補佐官、門田 稔永:法務省民事局第四課補佐官、井内 省吾:法務省民事局第四課係長、宮田 和一:法務省民事局第四課係長、藤部 富美男:法務省民事局第四課係長「【論説・解説】 株式会社に関する先例をめぐって(29)」約委任の就任に関する会社と役員間の委任契約については、特段の意思表示がない限り、定款所定の任期内ということが委任契約の内容に含まれると解釈。

登記研究184号P57、昭和37年10月15日民事四発第215号民事局第四課長回答「登記研究問題の決議について」

 定時株主総会で、増員・補欠取締役の任期についての定めを設ける定款変更の決議を行い、同じ定時株主総会において前取締役を任期満了を原因として改選を行うことができる。

登記研究135号P36、昭和33年12月23日民事甲第2655号民事局長回答「株式会社の役員の任期について」

 定款が定める期間内に定時株主総会が開催されなかった場合の取締役の任期は、定款の定めによって株主総会が開催されるべきであった期間の終了時に人気が満了すると取り扱うことができる(会社法332条)。

登記研究170号P79、昭和36年8月8日民事甲第1909号民事局長指示 ◇登記官吏会同決議◎津地方法務局管内登記官吏会同決議

 定時株主総会が延期・続行となった場合の取締役の任期満了の日。

登記研究736号P178、2009年6月30日【質疑応答】〔七八九二〕「取締役の全員の改選の決議に係る定時株主総会の継続会が開催されなかった場合における取締役の任期と選任懈怠について」

 取締役の全員の改選の決議に係る定時株主総会の継続会が開催されなかった場合、再度臨時株主総会で取締役の全員が改選されたとき。

登記研究333号P73、1975年8月20日第六部質疑・応答五一八〇「株式会社の役員の変更登記における重任の概念について」

 取締役が定時株主総会の終結と同時に辞任し、同じ定時株主総会で取締役に選任決議、就任承諾があった場合の登記原因

登記研究409号P86、1982年1月30日第六部質疑応答【六〇三一】役員の重任登記と氏名の変更又は更正の登記の要否

 登記申請書における役員の氏名が登記簿に記録されている役員の氏名と相違している場合、役員を選任した株主総会議事録などで役員の氏名が同一人と認められる場合の変更・更生登記の要否。戸籍抄本、住民票抄本などを添付。

登記研究808号P111、平成27年2月20日法務省民商第18号法務省民事局長通達「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 取締役の住所を確認する書面について。

登記研究325号P73、1974年12月20日第六部質疑・応答五一二六「取締役等が就任を承諾したことを証する書面について」

 役員を選任した株主総会議事録に、選任された役員の記名押印がない場合に就任承諾書として取り扱うことの可否。

登記研究386号P100、1980年1月30日第六部質疑応答【五七五五】「未成年者の取締役の就任について」

 未成年者の法定代理人が創立総会議事録において、未成年者の取締役就任について同意していることの記載がない場合で、法定代理人が署名押印しているときの、法定代理人の同意書の要否。

関連

登記研究409号P79、昭和56年11月9日民四第6427号法務省民事局第四課長回答「株式会社の取締役を特定するために生年月日を登記することの可否について」

 取締役に同姓同名の者がいる場合。

登記研究906号P68、令和4年8月25日法務省民商第411号法務省民事局長通達「商業登記規則及び電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 登記可能な旧氏・提出する戸籍抄本等の範囲。

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第12章民事信託の補充論点と今後の活用

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令、第12章民事信託の補充論点と今後の活用。

Q958、遺言代用信託と成年後見人の権限の限界、現に、信託設定の後に、高齢者本人である委託者兼受益者の法定代理人として就任した後見人が、信託終了や受託者解任の意思表示を行うことで、本人の全体財産の管理を可能とするような試みがあると聞く(委託者兼受益者の後見人にとっては、信託の存在が、本人のための財産管理を計画し、遂行するうえで邪魔になると感じられる場合があるという)。について・・・後見人が委託者兼受益者(本人)の法定代理人として各種権限を行使することは、本人の身上監護・財産管理のために必要であれば、行使する義務があると考えます。ただし、権限行使の際は、受託者との話し合いや、家庭裁判所への事前の情報提供と意思決定判断の根拠を示す過程を経て行われるのが委託者兼受益者(本人)のためになるのではないかと思います。

Q959、成年後見人による信託変更権限(その1)、現に高齢で認知症である委託者兼受益者の生活支援を優先し、現在の弱者保護を図るべきか、あるいは、将来実現されるべき財産の承継の確実性を図るべきか、双方の目的の間で利益相反が生じている可能性もある。について・・・現に高齢で認知症である委託者兼受益者の生活支援が優先になると考えます(民法858条)。利益相反が生じる余地があるのか、信託行為の条項によるのかもしれませんが、分かりませんでした。

Q960、残余財産受益者の追加と受益権割合の変更であり、代理権の濫用行為になると考えられるので、成年後見人による信託変更行為は、無効となるという見解がある。しかしながら、遺言と信託は異なる制度なので、最終的な解釈がどうなるか、現段階ではよくわからないところが実情であろう。について・・・考え方としては、信託行為に信託変更・終了に関する信託行為の別段の定めはない、と本書では記載されていることから、受託者が合意するならば、信託の変更を行うことが可能となります(信託法149条1項)。また、信託の目的に反しないことが明らかである場合、成年後見人は単独で、信託の変更を行うことが出来ることになります(信託法149条2項)。

 論点としては、信託の目的に反しないことが明らか、という判断は、信託行為全体から行うことから難しい場面があることだと思います。受託者が辞任する可能性もあるのではないかと思います。信託の変更に関して、家庭裁判所が判断できるのか、委託者が契約当事者となって定めた残余財産受益者の受益割合を、1人から3人に変更して1:1:1に変更する合理的な理由があるのか、裁判所の判断になる可能性が出てくるのではないか、その場合の金銭面、時間、精神的コストと比較して他の方法を探ることは出来ないのか、などを考えて判断・決定していくことになると思います。

Q965、受益者代理人が保護すべき受益者の範囲、残余財産受益者となるべき者として指定された者の場合、信託終了の以前から受益者として監督機能を有していると言われるが、残余財産受益者となるべき者として指定された者と、信託期中の第二次、第三次受益者となるべき者として指定された者との違いは何かなどの疑問の声もあり、必ずしも議論が安定しているというわけではないことに注意しておきたい。について・・・委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例(信託法90条1項)では、委託者(兼受益者)の死亡の時までは、受益権を取得していないので、信託期中の第二次、第三受受益者となるべき者として指定された者は、監督機能を持っていないと考えます。

Q966、信託監督人が保護すべき受益者の範囲、について。・・・解説は、信託法の公平義務の範囲内で、未存在の受益者の利益を図ることができる、という記載であり、信託法の条文の範囲内であると考えます。

Q972、受託者の権限濫用、不正行為等、受託者の解任に関しては、信託財産に利害関係を有する受託者が帰属権利者に指定されているような場合どうなるのか(信託条項の定め次第では帰属権利者たる地位だけ残るのか)、について・・・受託者を解任するかどうかと帰属権利者たる地位に関しては別なので、信託条項に別段の定めがなければ、帰属権利者たる地位だけ残るのが原則だと考えます。

 解任により損害が生じたといえるのか、について・・・やむを得ない事由がある場合(信託法58条2項但し書き)とはどのような場合なのかを考えて判断することになると考えます。例えば受託者が病気で信託事務を処理することが出来ない場合等。受託者が帰属権利者に指定されているような場合に解任することは、不利な時期の解任(信託法58条2項本文)には該当しないと考えます。受託者の地位と残余財産の帰属権利者の地位は異なるからです。

 信託行為の定めで信託監督人に対しても受託者解任権を付与することができるのか、について・・・消極に解します(金森健一『民事信託の別段の定め 実務の理論と条項例』2022、日本加除出版、P205)。

Q976、受益権差押の禁止、P1183の受益者は受益権の誤植だと思います。民事信託分野において、いわゆる民事信託による福祉型信託の高齢者、認知症患者、障碍者に対する生活支援のための受益権は、帰属上・行使上の一身専属兼なのか否か、一身専属権なのか否か、未だ議論が深められていない。について・・・受益権に対する差押えは、民事執行法上の債権差押え(民事執行法143条~)と同様に行われ、差押禁止財産の範囲で制限される(民事執行法152条)という考え方がしっくりきます。

Q984、日本における撤回可能自己信託の可能性、論点1は、米国における信託宣言による撤回可能信託は、当初、委託者兼受託者兼受益者であるが、日本の信託法上、委託者兼受託者兼受益者とすると1年で信託が終了してしまうー中略ー。そこで、遺言代用信託の第二次受益権が定められ、それを委託者が取得していないことをもって、当初受益権とは別の受益権が存在するものと考えて(受益権の全部を有するわけではないと考えて)、信託法163条2号の適用はないと考えることができるのか。について・・・どのような考え方で適用があると考えるのか分からないので、適用がないと考えることは可能だと考えます。

 論点2は、第二次受益者に対して監視・監督権を付与することで、信託法163条2号を前提とする受託者と受益者の信頼関係および監督関係という信託の構造が認められると考えて、1年で終了しない状態であるということができるのか。について・・・1年で終了する場合の考え方が分からないので、1年で終了しない状態であるということも可能だと考えます。

 3つ目の論点として、自己信託の受託者を第三者に変える受託者変更は、信託法上可能なのか。例えば、不動産登記手続における受託者変更手続はどうなるのか。について・・・信託法上、禁止されていないので可能だと考えます。不動産登記手続における受託者変更手続は、新受託者と、前受託者・任意後見人、補助人、保佐人、成年後見人などの共同申請により行われると考えます。

第26回九州ブロック会員研修会本人確認・意思確認の再考 ~デジタル時代における人・物・意思の確認~

第26回九州ブロック会員研修会

本人確認・意思確認の再考 ~デジタル時代における人・物・意思の確認~

社会から司法書士に期待される本人確認・意思確認 ―過去から未来への展望石田京子 早稲田大学大学院法務研究科教授

  1. 社会と司法書士、その変遷

(1)司法書士制度の歴史概観➔制度的建付けとしては、明治5年から司法制度を支える専門家。

歴史概観

明治5年(1872年)司法職務定制第10章「証書人・代書人・代言人職制」

「各区代書人ヲ置キ各人民ノ訴状ヲ調成シテ其訴訟ノ遺漏無カラシム」(42条1項)後の公証人、弁護士と共に、司法を担う職務として代書人が位置付けられる。

明治19年(1886年)旧登記法制定「登記事務ハ治安裁判所ニ於テ之ヲ取扱フモノトス」

大正8年(1919年)司法代書人法司法代書人と行政代書人の分化。司法代書人は地方裁判所の所属とされ、所属裁判所の認可を受けて職務を行っていた。

代書人(1872年)⇒司法代書人(1919年)⇒司法書士(1935年)

当初は「代書」人・司法「代書」人。1919年司法代書人法により、初めて法的資格としての位置づけが与えられる。当時は裁判所所属。「裁判所に提出すべき書類」の代書業務。(1887年登記法制定)

昭和10年(1935年)司法書士法司法代書人から司法書士へ

戦後の司法書士(1950年)から司法制度改革以前(2000年頃)

昭和25年(1950年)司法書士法全面改正

司法制度改革以降(2002年以降)

平成14年(2002年)司法書士法改正により、簡裁代理権が業務に。

令和元年(2019年)司法書士法改正により、第1条に使命規定が置かれ、懲戒権者が法務大臣に。

(2)社会と司法書士の関係変化➔法改正を重ねるごとに、社会における位置づけは変化していった。

(3)「代書人」から「専門家」へ

2.専門職倫理としての「司法書士行為規範」

(1)プロフェッションとは何か?➔単なる「職業」ではない。

「学識(科学または高度の知識)に裏付けられ、それ自身一定の基礎理論をもった特殊な技能を、特殊な教育または訓練によって習得し、それに基づいて、不特定多数の市民の中から任意に提示された個々の依頼者の具体的要求に応じて、具体的奉仕活動をおこない、よって社会全体の利益のために尽くす職業」

(2)司法書士のプロフェッション性➔その法的基盤、職業倫理

理念を基にするとすれば、法専門職は社会と契約し、公益的役割を担う引き換えとして、一定のマーケットについて公的に独占を認められている。

(3)専門職倫理としての「司法書士行為規範」➔各章冒頭で書かれている「基本姿勢」に注目

「司法書士行為規範」は直接司法書士を法的には拘束しない。

司法書士の行動を規律する法源:司法書士法、所属する司法書士会会則等。

懲戒事由(司法書士法47条、48条):「司法書士がこの法律又はこの法律に基づく命令に違反したときは、法務大臣は、当該司法書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。」

ただし、「職責」(司法書士法2条)としての品位保持義務の解釈に用いることは可能。

依頼者が司法書士に対し、債務不履行に基づく損害賠償請求など、民事上の請求を行い、これが司法書士の専門職としての行為規範に影響を与える可能性もある。

•各業務分野における基本姿勢

不動産登記業務・・・第43条司法書士は、不動産登記業務を行うにあたり、登記の原因となる事実又は法律行為について調査及び確認をすることにより登記の真正を担保し、もって紛争の発生を予防する。

商業・法人登記業務・・・第49条司法書士は、商業・法人登記業務を行うにあたり、登記原因及び添付書面等の調査及び確認をすることにより真正な登記の実現に努め、もって取引の安全と商業・法人登記制度の信頼の確保に寄与する。

供託業務・・・第52条司法書士は、供託業務を行うにあたり、実体上の権利関係を的確に把握し、登記手続、裁判手続その他の関連する手続を踏まえて供託の目的を達成させる。

裁判業務等・・・第54条司法書士は、裁判の公正及び適正手続の実現に寄与する。

成年後見業務等・・・第69条司法書士は、成年後見業務等を行う場合には、本人の意思を尊重し、その心身の状態並びに生活及び財産の状況(以下「心身の状態等」という。)に配慮する。

財産管理業務・・・第74条司法書士は、他人の財産を管理する場合には、自己の財産又は管理する他者の財産と判然区別することが可能な方法で各別に保管するなど、善良な管理者の注意をもって行う。

民事信託支援業務・・・第80条司法書士は、民事信託支援業務を受任したときは、信託目的の達成に向けて、委託者、受託者、受益者その他信託関係人の知識、経験、財産の状況等に配慮して業務を行う。

・軸となる価値

誠実義務:委任契約を超えて「誠実に」業務を行う義務。では誰に対して?どのように振る舞うことが専門職として誠実

守秘義務:法専門職が依頼者のために適切な仕事をするための義務。いかなる時に守秘義務が発生し、どのような場合に解除が認められるのか。

利益相反回避義務:紛争性のある事件における規律。ある依頼者の秘密を守り、他方の依頼者のために誠実に業務を行うことができるか。一般の利用者はそのようなふるまいをどのように考えるか。(では、紛争性のある案件とそうでない案件を扱う法専門職において、どのように考えるか。)

法曹倫理(弁護士倫理)で論じられる問題の多くは、弁護士以外の日本の法専門職にも当てはまるものが多い。

一方で、いわゆる隣接職には、その特有の職務における行為規範も存在する。(近年の本人確認義務・意思確認義務の強調などは司法書士の特徴であろう。)

現実に法専門職を規律する具体的ルールは、時代と共に変化する。

10年前に問題なかった実務の態様(あるいは、みんながやっていたこと、「この程度で良いよね」)が、今は問題となる。場合によっては、懲戒の対象となる。

国民の消費者意識、法専門職の存在の顕在化、日本社会の国際化、法専門職内部(ひとつの専門職、または複数の専門職間において)での競争の激化。

法律専門職であり続けようとするならば、個人としても、集団としても、これらの動向に敏感であることは不可欠。

・・・法令に基づかない多数決による人や意見の廃除は、出来ないと思います。

3.本人確認・意思確認の過去・現在・これから

(1)本人確認と意思確認➔いずれも、今日の文脈では司法書士としての「誠実義務」に基づく。

犯罪収益移転防止法の規律を除くと、どうか?どうして司法書士には、依頼者のなりすまし等を防ぐ義務があるのか?

・・・不動産取引を例にすると、不動産登記法177条だと考えます。物件変動の対抗要件として登記が必要→登記申請代理人として、登記後に紛争が起こることは防ぎたい→登記が確実にされる必要→依頼者のなりすまし等を防ぐ必要→本人確認が必要。

(2)なぜ本人確認「義務」、意思確認「義務」なのか➔「代書」モデルから「専門家」モデル、あるいは、「形式的処理モデル」から「実質的処理」モデルへ

(3)司法書士に対する期待は本人確認義務、意思確認義務をどう変えていくか➔令和2年最高裁第二小法廷判決の草野判事の補足意見をどう捉えるか?

最高裁第二小法廷令和2年3月6日判決

「司法書士法は,登記等に関する手続の適正かつ円滑な実施に資することにより国民の権利の保護に寄与することを目的として(1条),登記等に関する手続の代理を業とする者として司法書士に登記等に関する業務を原則として独占させるとともに(3条1項,73条1項),司法書士に対し,当該業務に関する法令及び実務に精通して,公正かつ誠実に業務を行わなければならないものとし(2条),登記等に関する手続の専門家として公益的な責務を負わせている。

このような司法書士の職責及び職務の性質と,不動産に関する権利の公示と取引の安全を図る不動産登記制度の目的(不動産登記法1条)に照らすと,登記申請等の委任を受けた司法書士は,その委任者との関係において,当該委任に基づき,当該登記申請に用いるべき書面相互の整合性を形式的に確認するなどの義務を負うのみならず,当該登記申請に係る登記が不動産に関する実体的権利に合致したものとなるよう,上記の確認等の過程において,当該登記申請がその申請人となるべき者以外の者による申請であること等を疑うべき相当な事由が存在する場合には,上記事由についての注意喚起を始めとする適切な措置をとるべき義務を負うことがあるものと解される。」

最高裁第二小法廷令和2年3月6日判決

委任者に対する義務

①申請人となるべき者以外の者による登記申請であること等を「疑うべき相当な事由が存在する場合」には,②契約解釈から導かれる「適切な措置」をとる義務が認められうる。

第三者に対する義務

委任者以外の第三者が当該登記に係る権利の得喪又は移転について重要かつ客観的な利害を有し,このことが当該司法書士に認識可能な場合において,当該第三者が当該司法書士から一定の注意喚起等を受けられるという正当な期待を有しているときは,当該第三者に対しても,上記のような注意喚起を始めとする適切な措置をとるべき義務を負い,これを果たさなければ不法行為法上の責任を問われることがあるというべき。

草野耕一裁判官の補足意見

「「職業的専門家」とは長年の研さんによって習得した専門的知見を有償で提供することによって生計を営んでいる者のことであり,「依頼者」とは職業的専門家と契約を締結して同人から専門的知見を提供する旨の約束を取り付けた者のことである。」

(依頼者以外の者に対して知見の提供を怠ったことを理由として法的責任を負う、特段の事情として以下を挙げている)

〔1〕法的には依頼者でないにもかかわらず職業的専門家から知見の提供を受け得ると真摯に期待している者がいること。

〔2〕その者がそのような期待を抱くことに正当事由が認められること。

〔3〕その者に対して職業的専門家が知見を提供することに対して真の依頼者(もしいれば)が明示的又は黙示的に同意を与えていること。

•プロフェッションとしての司法書士という地位を確立すれば、「第三者からの一般的な期待」は高まる方向に。

•(草野意見)「上記の場合,職業的専門家たる者は,その者の期待どおりに知見を提供するか,しからざれば,時機を失することなくその者に対して自分にはそれを行う意思がない旨を告知する法律上の義務を負っていると解すべきである。」

自分が依頼者に対してどのような義務を負っていて、関係者がどのような期待をする可能性があるかを適切に予測し、適切な対応をすることが求められる。

(相続登記の義務化を受けて、個別に様々な場面を想定して、どのような説明義務・告知義務があるかを検討する必要がある。)

→例えば、相続人申告登記の申出制度があること・過料が科される要件の告知。

4.まとめ:この先の司法書士に求められるもの

(1)日本社会の変化からの要請:技術革新と価値の多様化にどのように対応するか

•「依頼者に対する義務」については、専門家としての委任契約に基づく注意義務。(業務が重なる部分については、弁護士と同水準。

・専門職倫理の側面:既存の法専門職倫理に追加すべき行為規範や見直すべき行為規範がないか?

→行為規範は、見直し・追加のみで少なくする・削除する方向の条項はないのか、気になります。

・リーガルサービスを独占していることの裏返しとしての、アクセスを提供(促進)する責任。技術を使えない個人が取り残されてはいけない。

→同意です。

・依頼者に対する誠実義務とIT化:どこまで効率化してよいのか。「依頼者に寄り添うこと」の重要性は変わらないのではないか。

→寄り添う、が時間であれば、事務の効率化が進むほど寄り添う時間を取れることになるので、事務所内部の効率化できる部分は可能な限り進める、依頼者間では、依頼者別に対応することになるのではないかと思います。

CCBEコア原則憲章

https://www.ccbe.eu/documents/publications

(2)グローバルな変化:司法書士は国際的な法曹倫理の動向に無関心でいられるか

ODR Tyler Technologies

https://www.tylertech.com

一般の人々がこれらのサービスを使い始めるとき。

(3)司法書士が法専門職であり続けるために

日本司法書士会連合会 司法書士行為規範

https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/intro/reguration

近時の法改正及びデジタル化から見る司法書士の本人確認

日司連常任理事隂山克典

犯罪収益移転防止法改正の経緯

平成2年4月FATF「40の勧告」

平成2年6月大蔵省から金融機関へ通達

平成4年7月麻薬特例法の施行

平成6年6月第一次対日相互審査

平成8年6月FATF「40の勧告」改訂

平成10年8月第二次対日相互審査

平成12年2月組織的犯罪処罰法の施行

平成13年10月FATF「8の特別勧告」

平成14年7月テロ資金提供処罰法・改正組織的犯罪処罰法の施行

平成15年1月金融機関等本人確認法の施行

平成15年6月FATF「40の勧告」再改訂

平成20年3月犯罪収益移転防止法の完全施行

平成20年10月第三次対日相互審査

平成24年2月FATF「新40の勧告」

平成25年4月改正犯罪収益移転防止法の完全施行

平成26年6月日本に関するFATF声明公表

平成26年11月改正犯罪収益移転防止法の成立

令和3年8月第四次対日相互審査

令和3年8月マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画の公表

令和4年12月犯罪収益移転防止法の改正

令和6年4月犯罪収益移転防止法の施行

財務省「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」を策定しました(令和6年4月17日)

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/20240417.html

犯罪収益移転防止法により司法書士等に課せられている主な義務

法4条、本人特定事項、取引を行う目的、(自然人)職業、(法人)事業の内容、実質的支配者の確認

法6条、取引時確認のために取った措置に関する記録の作成等(確認記録は特定取引等に係る契約が終了した日その他の主務省令で定める日から、7年間保存)

法7条、顧客等の確認記録を検索するための事項、当該特定受任行為の代理等を行った期日及び内容その他の主務省令で定める事項に関する記録の作成(取引記録等は、当該取引又は特定受任行為の代理等の行われた日から7年間保存)

法11条 取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を的確に行うため、当該取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講ずること。

司法書士の特定業務

別表(第四条関係)

一 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続

・・・宅地又は建物の売買による所有権移転登記手続など。

二 会社の設立又は合併に関する行為又は手続その他の政令で定める会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続(会社以外の法人、組合又は信託であって政令で定めるものに係るこれらに相当するものとして政令で定める行為又は手続を含む。)

・・・株式会社の設立、組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、定款の変更、取締役若しくは執行役の選任又は代表取締役若しくは代表執行役の選定など。持分会社の設立、組織変更、合併、合同会社にあっては会社分割、定款の変更又は業務執行社員若しくは代表社員の選任など。一般社団法人又は一般財団法人の設立、合併、定款の変更、理事の選任又は代表理事の選定など。

三 現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分(前二号に該当するものを除く。)

・・・財産管理業務など。

依頼の主体確認の対象者

自然人である顧客等(依頼者)から依頼を受ける場合・・・顧客等(依頼者)(法4条1項)

自然人である顧客等(依頼者)の依頼を代理人等から受ける場合・・・顧客等(依頼者)+ 代表者等※(代理人等)(法4条4項)

法人である顧客等(依頼法人)から依頼を受ける場合・・・顧客等(依頼法人)+ 代表者等※(代表取締役等)(法4条4項)

国等、人格のない社団又は財団から依頼を受ける場合・・・代表者等(担当者等)(法4条5項)

本邦内に住居を有しない短期在留者(観光者等)であって、旅券等の記載によって当該外国人の属する国における住居を確認することができないもの(一定の取引を行う場合に限る。)・・・氏名、生年月日が記載のある旅券、乗員手帳、船舶観光上陸許可書。

本邦に在留していない外国人及び外国に本店又は主たる事務所を有する法人・・・日本国政府の承認した外国政府又は国際機関の発行した書類等であって、本人特定事項の記載のあるもの。

 自然人である顧客等の本人特定事項及び確認の方法・・・マイナンバーカード対面確認アプリ。

【在留カード等に係る本人確認書類の整理】

•在留カード、特別永住者証明書…交付時16歳未満の書類には顔写真が表示されない。

•精神障害者保健福祉手帳…やむを得ない場合は顔写真が表示されない。

•外国人登録証明書(平成24年改正命令)…一部の書類には顔写真が表示されない。

【犯収規則、平成24年改正命令】

・「顔写真のない本人確認書類」に位置付けるため、犯収規則(第7条)等を改正。

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/kaiseishiryo20181130.pdf

「公的個人認証サービスの署名用電子証明書(マイナンバーカードに記録された署名用電子証明書)」を用いた方法(規則6条1項1号ワ)

法務省 商業登記電子認証ソフト 署名者の電子証明書表示・有効性確認

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00027.html

本人確認書類

自然人の場合

規則7条1号イ・・・運転免許証等(運転免許証、運転経歴証明書※)、在留カード、特別永住者証明書、個人番号カード、旅券等、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、戦傷病者手帳(当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるものに限る。)

規則7条1号ロ・・・官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があり、かつ、当該官公庁が当該自然人の写真を貼り付けたもの

規則7条1号ハ・・・国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書若しくは母子健康手帳(当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるものに限る。)又は特定取引等を行うための申込み若しくは承諾に係る書類に顧客等が押印した印鑑に係る印鑑登録証明書

規則7条1号ニ・・・印鑑登録証明書(ハに掲げるものを除く。)、戸籍の附票の写し、住民票の写し又は住民票の記載事項証明書(地方公共団体の長の住民基本台帳の氏名、住所その他の事項を証する書類をいう。)

規則7条1号ホ・・・そのほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるもの

規則7条2号イ・・・当該法人の設立の登記に係る登記事項証明書(当該法人が設立の登記をしていないときは、当該法人を所轄する行政機関の長の当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地を証する書類)、印鑑登録証明書(当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるものに限る。)

規則7条2号ロ・・・イに掲げるもののほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるもの

外国人及び外国に本店又は主たる事務所を有する法人の場合

規則7条4号・・・第一号又は第二号に定めるもの(この場合において、第一号中「当該自然人」とあるのは「当該外国人」と、第二号中「当該法人」とあるのは「当該外国に本店又は主たる事務所を有する法人」とする。)のほか、日本国政府の承認した外国政府又は権限ある国際機関の発行した書類その他これに類するもので、第一号又は第二号に定めるものに準ずるもの(自然人の場合にあってはその氏名、住居及び生年月日の記載があるものに、法人の場合にあってはその名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるものに限る。)

完全オンライン方式による登記申請

 商業登記電子証明書のみではなく、マイナンバーカードによる電子証明書や特定認証業務電子証明書を送信することで、他の取締役は事業者署名型電子署名を活用できる。

 PDFデータの名称を変更すると、電子証明書の検証ができなくなるという性質をもっているため、管理には注意が必要(PDFデータに電子証明書を埋め込む形式の場合は、ファイル名を変更しても問題ない)。

日司連公的個人認証有効性確認システムとは

 公的個人認証(マイナンバーカード)の署名用電子証明書の有効性を確認することができる。

 PDFに埋め込まれた電子証明書が、マイナンバーカードによって電子署名された電子証明書であるか、一致性を確認できる。

デジタル時代の本人確認方法

 司法書士のみが対面を求め続けることができるか。

電子署名に関する動向~リモート署名や事業者署名型電子署名について~

電子署名の形式

 申請用総合ソフトを活用した場合、XML形式の署名が付与されることも・・・XMLの場合は紐づくイメージ。埋め込みをせず署名データを生成しているため、元のデータに変更を加えると、検証不可となる。

 あくまでも、当該メールアドレスに送付されたリンクからのアクセスがあったことを示すのみであり、身元確認が適正になされているかは別問題。この点は、メールのやり取りや名刺に記載されているメールアドレス等から立証していくことになると思われる。サービスによっては、身元確認を実施することもある。履歴記載の時刻につき、どの時刻源を採用しているかは事業者に確認する必要がある。

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第11章民事信託の実務の基本的枠組み

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令。第11章民事信託の実務の基本的枠組み

 Q705、民事信託解説書の選び方について・・・寺本昌広『逐条解説新しい信託法』2008年、商事法務、村松秀樹他『概説信託法』2008年版、2023年版、商事法務、別冊NBL商事法務『信託法改正要綱試案と解説 (別冊NBL no. 104)』2005年、商事法務、大蔵財務協会『改正税法のすべて平成19年版』2007年、書籍としてはこの辺なのかなと思います。

 その他には大垣尚司先生、道垣内弘人先生など、ご自身の状況に合わせて勉強していく形で良いのかなと個人的に思います。

 インターネット上では、信託法制部会の議事録や国会答弁を読むことが出来ます。

Q713、信託の消極的要件、受託者の損失補填義務等が完全に排除されていないこと、につて・・・限定責任信託(信託法2条2項12号)はどのようにせいりするのか、分かりませんでした。委託者が圧倒的な指図権を有し、かつ、受託者から信託財産の管理の委託を受けるなどして、受託者の信託判断の余地が全くなく、受託者が単に認容する義務を負うにとどまるものではないこと、について・・・圧倒的な、全く、などの文言から、信託行為の条項から受託者の権限(信託法26条但し書)が制限ではなく、ないという状態を想定しているのかなと思いました。

Q726、信託契約の公正証書化の意義、公証人による当事者の確認と法的検討について・・・士業が信託行為の案に関わっている場合、二重チェックになり、安定する一方で当事者のコスト負担は大きくなります。信託口口座開設のために選択肢が公正証書化しかないとすれば、士業が関わる場合に公証人が行うことと、金融機関が行うこととの棲み分けが必要なのではないかなと感じます。

 公証センター(公証人役場)のリソースがさけるなら、士業を入れない信託行為の書類作成について公証人のみによる関与の割合が多くなっていくことも良いのかなと思います。

 遺言、任意後見契約を信託行為と同じ日に公正証書化するのであれば、当事者の負担感は抑えられるのかなと思ったりしますが、正解は分かりませんでした。

 

Q775、居住用物件と委託者兼受益者の管理事務、委託者兼受益者は居住するに際して、具体的な義務を一切負わないのだろうか。について・・・土地の工作物等の占有者の責任(民法717条)を負うと考えます。

Q792、受託者の変更に伴う信託契約の見直し、信託変更は誰と誰との間で行うべきか、受託者交代時において、委託者兼受益者の判断能力が喪失されている場合どうするか。・・・信託法と成年後見等関連法令、信託行為の内容に従って必要な信託契約の見直しを行っていくものと考えます。

Q795、受益者の変更に係る受託者の事務、なお、新受益者が受益権を取得したことを知らない時は、受託者が通知することを要するが(信託88②。信託行為の別段の定めが可能。)、その際、旧受益者にあわせて作られていた受益債権の内容を、新受益者に対してアジャストしなくてもよいのか、という問題を生じ得る。について・・・新受益者は受益権の放棄(信託法99条)権があるので、受益権の内容条項を中心に見直す必要はあると思います。

Q803、修繕積立金、信託財産修繕のための積立金を留保するため、信託行為であって、その計算方法を定めておきたい。について・・・私は修繕積立金の確保を受託者の信託事務として定めるのみで、計算方法を定めていません。計算方法を定めることによってこう着しないか、気になるからです。今後、ケースによっては必要なのか検討したいと思います。

Q809、信託元本組入、一般に、信託契約書上、受託差は、各計算期日において、純収益から、信託事務処理のための積立金、修繕のための積立金、公租公課のための積立金、保険料のための積立金の金額の合計額について、各信託期日の翌日、信託の元本に組み入れる、という趣旨の定めがおかれている。について・・・一般に置かれていることを初めて知りました。今後この定めを入れるかどうか考えます。

Q814、計算事務の委託、行政書士やFPなどの専門職も支援に適していよう。について・・・計算事務の委託の文脈で行政書士が出てくるのは適しているのか、分かりませんでした。

Q826、信託監督人の設置の判断、成年後見制度における後見監督人が設置される場合を参考にすることについて、同意です。親族・第三者との間で紛争がある場合については、信託を行うのかどうかの判断を含め、弁護士を紹介することが適していると個人的に思います。

Q827、信託監督人への同意見の付与、同意見者となるからといって、必ずしも監督者としての中立性が害されるというわけでもないかもしれない。について・・・監督者は後見人、受託者を本人、受益者のために監督するので(信託法131条4項)、中立性は求められていないのではないかと思います。

Q832、受益者代理人の職務と不正リスク、信託金の配当に関しては、それを認知症にり患した受益者に代わって、受託者から直接受益者代理人の口座に入金するような形で受領できるのか、認知症患者の名義の預金口座では凍結されてしまいかねないか、について。・・・受益者代理人の権限はあると考えられます(信託法139条)。ただし、受益者代理人は受益者の代理人なので、口座名義は成年後見人同様に受益者代理人であることが外観上、金融機関システム上分かる必要があると考えます。受益者代理人の選任の有無に関わらず、判断能力を失った人の名義の預金口座は、原則として凍結されると考えます。

Q833、信託監督人の合意書、新しい受益者が、信託内容を理解し、信託監督人制度を理解するためには、かような合意書を締結することが望ましい。しかし、新しい受益者が未成年者、あるいは、認知症患者などの判断能力が減退した者である場合等もあり得るので、そのような場合にはどうすべきか、検討を要する。について・・・未成年者であれば法定代理人が、判断能力が減退した方で、成年後見制度の利用を必要とする程度であれば、成年後見制度の利用を行い後見人等が合意書の締結を行うことになると思います。

Q840,裁判所による信託監督人の選任、なお、信託法131条4項の「受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき」というような裁判所による信託監督人の選任の規定があることから、当初の信託行為の定めがない場合、信託期中、信託の変更を行うことで、信託監督人の選任を行うことはできるのだろうか、委託者兼受益者の自益信託の場合はどうなのか、について。・・・裁判所が関与せず、信託行為中の信託の変更条項に従って信託監督人を選任できるのか、という論点だと思います。受益者代理人の選任(信託法138条)に関する定め、信託法131条4項のような定めが受益者代理人にはないことから、信託の目的に反せず、信託の終了事由に該当せず、信託変更の当事者に受益者(受益者代理人、成年後見人を含みます。)が入っている場合は、信託変更により信託監督人の選任を行うことが可能だと考えます。委託者兼受益者の自益信託の際も同様だと考えます。

Q842、信託登記事項証明書、というものが分かりませんでした。

Q843、賃貸物件の信託譲渡時の賃借人のへの通知、賃貸管理会社への通知が多いのではないかと思います。

Q893、9.12判決で残された信託と遺留分の問題、また、遺留分減殺された受益権については、その結果、いかなる内容の受益債権を準共有するのだろうか(減殺請求された受益者の障害に限定されるのか、遺留分権利者の生涯に変化し得るのか)。について・・・受益権の個数を分けておけば(例えば1円につき1個)、準共有という問題は生じないのではないかと思いました。

Q903、10.23判決―信託契約の拘束力、委託者兼受益者であれば、受託者を解任することもできるのがデフォルトルールである(信託法58条1項)。この点、(一般論として)受託者兼帰属権利者が、当初より、委託者兼受益者の心変わり(他の推定相続人の存在)の可能性を想定して、用意周到に信託法のデフォルトルールを修正した技術的な信託条項を仕組むような場合をどのように考えるべきか、よく考えたい。について・・・受託者の解任について、委託者兼受益者が自由に解任できる条項については、私は何かしら解任事由という制限を付けることが必要だと考えています。そうでなければ、いつ解任されるか分からない信託に、受託者として責任を持つ人を探すのは難しいのではないかと思います。

Q904、合意終了等に関する信託条項のひな型リスク、について・・・合意できない場合は、信託法165条(特別の事情による信託の終了を命ずる裁判)で手当てが可能ではないかと思います。

Q906、合意終了と単独終了、について・・・委託者兼受益者による単独終了(信託法164条1項)を定める場合、何かしらの客観的な終了事由を追加する必要があるのではないかと思います。

Q929、委託者からの倒産隔離、について・・・登記研究463号、昭和61年4月30日民三第2777号民事局第三課長回答「信託による所有権移転の登記のある不動産に対して破産登記等の嘱託の受理の可否について」を根拠とする記載に同意です。

Q940、信託目録の仕組み、信託目録について、私なら信託不動産という用語は省略すると思います。登記記録から信託不動産であることが分かるからです。

信託契約書を単に引き写し、長文の信託条項を転記するのでは、第三者が即座にみてわかるものになっておらず、公示の機能を果たすことができない。について・・・信託契約書の信託条項を、可能な限り信託目録に転記しやすいような形で作成するが良いと思います。信託契約当事者、関係者に分かりやすいものであることが望ましいこと、信託契約書から要約や抽出をすると、信託契約書と信託目録の齟齬が生じる恐れがあること、信託契約書から要約・抽出された信託登記の申請を審査する登記官の負担が増すと思われることが理由です。

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