加工 法制審議会担保法制部会第2回会議 議事録

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00064.html

部会資料2 担保法制の見直しに向けた検討(1)

https://www.moj.go.jp/content/001348285.pdf

第1 日 時  令和3年5月11日(火) 自 午後1時31分                 至 午後5時32分

第2 場 所  法務省大会議室

第3 議 題  担保法制の見直しに向けた検討(1)

第4 議 事  (次のとおり)

議        事

○道垣内部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会担保法制部会の第2回会議を開会いたします。

  御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

  本日は沖野委員,衣斐幹事が御欠席と伺っております。また,大西委員,門田委員,青木則幸幹事,横山委員というのが途中で中座されるということを伺っておりまして,それは適宜お願いいたします。

  次に,本日の審議に入ります前に,配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。

○笹井幹事 部会資料2「担保法制の見直しに向けた検討(1)」がございます。こちらにつきましては,後ほど,審議の中で,事務当局から御説明いたします。

○道垣内部会長 ありがとうございます。資料の方を御確認いただけましたでしょうか。

  それでは,本日の審議に入りたいと思います。本日は「担保法制の見直しに向けた検討(1)」という,担保法制部会資料2というものについて,一読目の検討をしたいと思います。まず事務当局から御説明いただくのですが,御一読いただいた方は既にお分かりだと思うのですが,本日準備した資料もかなり広範囲にわたっております。そんな勢いでどんどん審議をやって,内容を決めていくのかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,そんなつもりはありませんで,あくまで一読ということです。ですので,今日この段階でそれぞれのところについて意見をまとめる必要はありませんけれども,どのようにそれぞれについてお考えかということについて皆さんの御意見をお伺いできればと思います。

  それでは,資料1の「第1 総論」について,まず説明をお願いいたします。

○笹井幹事 それでは,部会資料2の「第1 総論」のうち,1から3までの部分につきまして,まとめて御説明いたします。

  まず,1ページの「1 統一的な担保制度を設けることの是非」では,担保制度全体の設計として,動産か債権か,担保権者が目的物を占有するのか,設定者が占有するのかなどの態様に応じて複数の類型の担保制度を設けるのか,一つの統一的な担保制度を設けるのかという問題を取り上げました。日本法の既存の制度は,複数の類型の担保制度となっているわけですけれども,アメリカの統一商事法典を始め,これに倣った担保制度は,統一的な担保制度だと理解されていると思います。

 統一的な担保制度は,統一的な公示制度を設けるということとも結びつきやすく,対抗要件制度を含めた制度の単純化にもつながり得るともいえますし,また,その目的物の特定としてどの程度詳細なものを求めるかということにもよりますけれども,債務者の財産に包括的に担保を設定するという議論にも対応することができる可能性もあろうかと思います。もっとも,目的物の性質によって,例えば実体的な効力や実行方法など,設けるべき規定がかなり異なってくるとも思われますし,どれだけ意味のある共通の規定を設けられるかという疑問もあろうかと思います。

  なお,今御紹介いたしましたアメリカのUCCやUNCITRALのモデル法は統一的な担保制度だと申し上げましたけれども,目的物が動産である場合や債権である場合に特有の規定も設けておりますので,統一的な担保制度なのか,あるいは類型ごとの複数の制度なのかといいましても,結局は程度の問題だといえるかもしれません。

  また,具体的にどういう規定が必要なのかを個別に検討していくに当たって,まずは動産についてはどうなのか,債権についてはどうなのかというように,目的物の性質等に応じた検討を行わざるを得ないと思います。

  ただ,ここでは,分析の視点といいますか,理念型として,統一的な担保制度と,個別に必要に応じて一個一個制度を設けていくというモデルがあり得るのではないかと考えて,問題提起をいたしました。

  続きまして,3ページの「2 担保の類型」というところですけれども,これは,1において複数の類型の担保制度を設けるという考え方を採った場合に,現在の動産質や権利質に加えてどういった類型を設ける必要があるのかという問題提起をしたものでございます。

  まず,再三指摘されておりますとおり,現在は動産の非占有型の担保制度が存在しておりませんので,この類型については規定を設ける必要があるのではないかと思います。その際,集合動産についても検討の対象にする必要があるのではないかと考えております。

  また,債権につきましては,現行法上も債権質という典型担保権がございますけれども,実務的には債権譲渡担保が用いられることが多いという現状を踏まえますと,債権を移転する形式による担保制度についても併せて規定を設けることが考えられるかと思います。また,動産や債権以外のどのような財産について担保制度を設ける必要があるのか,そもそもそれ以外に設ける必要があるのかということにつきましても,御意見をいただければと思っております。

  「第1 総論」の最後,5ページの「3 担保制度の規定の設け方」につきましては,前回少し御紹介申し上げましたけれども,現在の譲渡担保や所有権留保の形式を踏襲して,当事者が担保目的で所有権その他の財産権を移転あるいは留保したというような場合の具体的な法律関係を規定するという方式と,あるいは一つの新しい典型担保権を設けるという方法とが考えられるかと思います。これにつきまして,3において問題提起をいたしました。

  第1につきまして,簡単ですけれども,私からは以上でございます。

○道垣内部会長 どうもありがとうございました。

  お気付きかもしれませんけれども,UCCのように統一的な担保制度を設けるといったときに,いろいろなレベルというのがあるわけでして,完全に登録制度にして,登録を一本化するというのと,それは別に,概念的に一本化する,様々な担保手段を概念的に一つの担保権としてとらえるとか,いろいろあり得ます。そして,それが,どういうふうに結び付くか,UCCならUCCという制度を捉えて,日本の立法論とどのように結び付くかというのは,いろいろな結び付き方というのがあろうかと思います。そういう幾つかの分岐があることも踏まえまして,全体としてどういうふうなタイプの担保制度というのを目指すかということについて,ざっくばらんに御意見を伺えればという次第でございます。どなたからでも結構でございますので,御自由に御発言いただければと思います。

○鈴木委員 地方銀行協会,鈴木でございます。部会のゴールの一つは,法的な安定性確保にほかならないけれども,もう一つは,停滞するABLなどの融資形態の一層の普及と考えております。1ページの30行目のところですが,統一的な担保制度について,実務に大きな変革を迫るとか,導入するのであれば大きなメリットが必要とされていますけれども,一方で制度が単純化できるなどのメリットが示されています。今現在十分に普及していないABLなどの融資形態にインパクトをもたらす何らかの仕掛けは必要だと感じていまして,統一的な担保制度はその仕掛けになり得ないだろうかと,アナウンス効果が期待できるのではと考えております。

  金融機関としては,現行の譲渡担保で機能している担保に害が及ぶのは好ましくないので,各論としては保守的なポジショニングをとるわけですけれども,一方でABLの特徴としては,比較的足の短い貸出しであることが多いので,不動産担保よりは機動的にルール変更に対応できる面があるとは思っております。さらには,移行措置が確保されれば,そこの部分は問題にならないと考えております。飽くまで選択肢を増やすという目線であれば,使い勝手を追求していくこともできるのではないかと考えております。

  立法作業では多くの調整が必要ですし,実務の連続性を重視する点,そこは理解しておりますけれども,ユーザー目線で何かが変わったという出来栄えの部分も欲しいかなというところはお伝えしておきたいと思っております。これは何も統一的な担保制度であったりとか,新たな典型担保でなければいけないということではありませんけれども,議論のスタートですので,ここの部分は確認しておきたいと思いまして,手を挙げさせていただきました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○山崎委員 山崎金属産業の山崎です。今,総論の統一的担保制度を設けることの是非に関してなのですけれども,やはり我々中小企業の立場としては,統一的な担保制度が実現できればそれには越したことないのですが,ただ,種類ごとに担保を設定した方が立法化に掛かる時間や動産担保融資などの普及に掛かる時間が短くなるのであれば,そちらの方を肯定したいと思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。先ほど鈴木委員から,統一的な担保制度を設けることについての意義に関するお話をいただいておりますが,私も同じく金融機関の立場からの意見として,目的物の種類ごと,それから占有権限の所在等の態様に応じて複数の類型の担保制度を設けるという方が実務にとっては望ましいのではないかということを申し述べたいと思います。

  部会資料においても言及されているのですけれども,仮に,統一的な担保制度を設けることの一環として,統一的な対抗要件具備制度を設けるということになりますと,それがいわゆる真正譲渡の場合の対抗要件制度と異なる制度として設計されるという場合には,例えば,ある譲渡行為として行われた取引が,事後的に,実は実態として担保設定行為であった,そして,その担保設定行為に関する対抗要件は具備されていなかったといった攻撃がなされ,結果として行為の効力が覆ってしまうということなりうるのだとすれば,慎重に検討する必要がありそうなのかなとは考えております。

  現状の実務上,例えば証券化・流動化取引という取引類型において,いわゆる真正譲渡性が大きな論点として慎重に検討されているところでございまして,真正譲渡性を確保するために,例えば契約中において真正な譲渡をする意図であるということを明記する等の契約上のアレンジメントを行っていたり,法律専門家から真正譲渡に関する御意見書をいただいたり,といった対応を行っているところがございまして,これが統一的な担保制度の導入と,それに伴う担保固有の統一的な対抗要件具備制度の導入に伴い,一般的な売買等の譲渡取引に関しても同じような配慮が求められるということになるのだとすると,取引に対する影響というのは必ずしも少なくはないだろうと考えているところではございます。

  ABLの話がございましたが,そういう取引を普及させていく際の起爆剤の一つとして,何らかの象徴的な取組があった方がよいというところはよく理解できるところではあるのですけれども,現場の意見を差し当たり拝聴している限りにおいては,例えば現状におけるような,個別の目的物ごとの担保権を積み上げることによっても大きな支障はないでしょうという見解も多く聞かれるところではございます。こうした意見も総合的に勘案させていただきながら,新制度の導入のされ方によるとは思うのですが,そのインパクトに鑑みた場合に,統一的な担保制度の導入のメリットをどこまで享受できるのかということについては,少し慎重に考える必要がありそうなのかなと考えているところでございます。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○佐久間委員 私は実務のことは全然分かりませんので,実務について妨げになるようなことを改正でしてはいけないと思っているということを申し上げた上で,せっかく今回,立法することになるのですから,説明でいうと6ページの下の方にあります,実質的な担保取引なのだけれども,今回の改正を経ても結局適用する規定がない,そういう担保取引が存続する,ということを回避することがすごく大事なのではないかと思っています。その回避を図ることに当たっては,一つ一つの担保の積み上げというのはものすごくハードルが高くて,包括的というか網羅性のある担保制度,どのぐらい包括的かは分かりませんが,そういうことをした方がよろしいのではないかと思っています。

  そう思っているところ,先ほど本多委員が真正譲渡と担保取引とで真正譲渡の証明が要るようなことになると困るとおっしゃいました。それは正しくそうなのだろうと思うのですが,例えば,今日の後半の方で出てくることだと思うのですけれども,対抗要件の制度は,例えば現状のまま存置をして,しかし,担保取引の場合にはそのための特別のファイリングを求める,そのファイリングがされているものは担保として一定の処遇がされるけれども,そのようなファイリングがされていないものについては,対抗要件は具備しているけれども担保としての処遇はできないというようなことをすれば,例えば真正譲渡の証明が要る,対抗要件が欠けていて困るなんてことは起こらないと思います。何を申し上げたいかというと,必ずしも担保を個別に積み上げていかないと今までの実務を台無しにするようなおそれが強くなるとは限らないのではないかと思うということです。

  もう一つ,その関連で,実は資料でよく分からないので,説明をいただければと思うところがございます。それは,5ページの3のところなのです。【案2.1.3.1】と【案2.1.3.2】の違い,特に【案2.1.3.2】の意味だと思うのですが,新たな典型担保物権を設けるというときも,例えば次のような二つの設け方で全然イメージも違ってくるし,設けるべき内容も違ってくると思うんです。

  例えば,一つは,現状の譲渡担保を前提に考えますと,【案2.1.3.1】の①にあるような,債権を担保するため財産権を移転する契約というのがありますが,これに続けて,その「契約がされた場合に,その契約により債権者が取得する権利を譲渡担保権という。」,といってしまえば,これは一応,一つの典型担保権になるのではないかと思うのです。他方で,例えば今の抵当権の規定を模して,動産譲渡担保権というかどうか分かりませんが,例えば,「動産抵当権者は債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」と定めた場合も,これも新たな典型担保権だと思うのです。

  結局のところ,中身でどういう担保権,譲渡担保を包括的に全部捉えられるような【案2.1.3.1】の①型で組んでいくのか,そうではなくて,既存の典型担保権に極めて近い形で新たな担保権を設けていくのかで全然違うと思うのですが,【案2.1.3.2】ではどちらもあり得ることだと思うものですから,【案2.1.3.2】の心としてどうなのか,私が申し上げたのでいうと後者の方を基本的には念頭に置いておられるのか,資料においてですね,ということを伺えたら有り難いと思いました。

  私自身は,【案2.1.3.1】の①型でなるべくやっていって,あとほかの財産権についてもできるだけ漏れがないように,同じような規律を設けられるのだったら,というか,広く捉えられる規律を設けられるのだったら,そうしておいた方がいいのではないかと思っているということです。

○道垣内部会長 ありがとうございます。少し質問にわたる部分がございますので,何か笹井さんの方からお話があれば,お願いします。

○笹井幹事 今,佐久間先生の御指摘がございまして,もしかしたら【案2.1.3.1】も【案2.1.3.2】も程度問題という面があるのかもしれませんが,資料作成時に念頭に置いていたものとしましては,【案2.1.3.2】は佐久間先生がおっしゃったものでいいますと後者の方,現在の典型担保物権に非常に近いものを念頭に置いておりまして,【案2.1.3.1】の,譲渡担保権と名前を付けたら確かに一つの担保物権かもしれませんけれども,そこでは形式的には所有権が移転するという形を採る。所有権が移転したのであって,担保物権とは少し質的に違っているものだというふうに考えておりました。

○道垣内部会長 まだ幾人も手を挙げていただいておりますので,いろいろな御意見をまず伺いたいと思います。金融庁の尾﨑さんからお願いいたします。

○尾﨑幹事 統一的な担保制度を設けることの是非に関連して,3点ほど申し上げます。

1点目ですけれども,まず,現状の個別の動産や債権の担保実務について,正確に認識した上で議論する必要があると考えています。いただきました資料の2ページ目の(注5)に,「優先順位のルールを通じて最初の債権者が包括的に優先権を取得できる点も踏まえ,それがアメリカの融資実務を反映したものであること,これに対して日本においては融資額に見合った個別の動産や個別の債権に担保権の設定を受けるのが一般的な担保実務」といった記載があり,この注書きが付された,1ページ目の本文29行目には,米国の「UCC第9編のような統一的担保制度を導入することも考えられるが,これは実務に大きな変革を迫ることになる」といった記述がございます。こういった記述は,必ずしもそうした意図ではないのかもしれませんが,“米国では包括的な担保制度に則した融資実務があり,日本では個別担保制度に則した融資実務があり,それぞれの融資実務に沿った制度が既にあるのであるから,制度を変えることには慎重で在るべき”とも読めるように思います。

  しかしながら,日本の金融機関については,不動産ではなく,融資額に見合った個別の動産や個別の債権に担保権の設定を受けるといった実務は,太陽光発電事業や比較的規模の大きな事業再生案件を除いてほとんど普及しておらず,一般的とまでいえるような確立した実務はないと考えられます。もちろんそういった実務がないわけではないけれども,現状の実務を前提とすれば,制度の導入によって変革を迫られるものというのは融資実務全体からみるとかなり限定されたものではないかと考えております。

  加えまして,米国におきましても,事業全体の担保を活用して事業に必要な資金を丸抱えで融資する実務しかないわけではなく,融資額に見合った不動産や動産・債権を個別に担保として取るといった実務もございます。

 また,前回御説明しましたように,日本におきましても,事業の将来性を見た融資への取組が広がりつつあります。

 重要なのは,アメリカにおきましては事業者のニーズに応じた複数の制度オプションと,その制度に支えられた資金調達手段が用意されているのに対して,日本ではこれらの選択肢が少ない状態にあることだと考えております。例えば,前回申し上げたように,事業の将来性を見た融資を行うに際しても,事業そのものを担保にするということができないという状況にあります。

  担保制度を議論する場合においても,多様な金融ニーズに応じて,様々な使いやすい担保のオプションが用意されているという観点がまず重要であって,統一的な担保制度かどうかというは,どちらかというと形式的な話かと考えております。

  次に,2点目です。現状を理解した上で,今回の担保制度の改正によって後押しする実務をはっきり共有する必要があるのではないかと思います。実務を後押しするに当たって,法制度やその他の要素をどのように変える必要があるのか,借手や貸手双方のコストやリターンの関係を踏まえたロジックと,活用事例のイメージを共有することが重要だと思います。例えば,現在活用されているABLですけれども,これを,先ほど申し上げました太陽光発電関連事業や再生局面以外の場面で普及させようとするのであれば,何の課題を乗り越える必要があるのか,しっかり検討する必要があると考えています。

  特にABLの場合は,事業全体の評価やモニタリングだけでなくて,特定のアセットについての評価やモニタリング,万が一の場合の処分にコストが掛かることに注意が必要になってくると考えております。活用されるのは,こうしたコストを上回るリターンが確保される場合であり,かつ,それが事業者にとっても利益となる場合であって,多くは借入の規模が比較的大きい場合なのではないかと考えています。このような規模の比較的大きなABLを更に推進することを目的とするのか,あるいはもっと規模の小さいABLについても普及させたいと思うのか,また,再生局面以外にも普及させたいと思うのか,その目的によって,例えば対抗要件とか優先順位に関する制度を整備する際にどのような点を重視すべきなのかということが変わってくるのではないかと考えています。

  最後に,3点目ですけれども,これは後の会合で詳しく取り扱われる論点であると考えておりますが,統一的な担保制度について議論するこの機会に,統一的な担保権の優先関係や登記の制度について意見を申し上げたいと思います。結論から最初に申し上げますと,2ページの26行目以降に書かれているような,国連のモデル法のような方向性,つまり目的財産の種類にかかわらず利用することができる統一的な登記制度,あるいは登記ほどには詳細ではない統一的なプラットフォームなどを設けて,ここに情報を登録することを担保の第三者対抗要件とし,また,担保が競合した場合の優劣を判断するに当たっての基準とするといった方向を重点的に議論すべきではないかと考えています。

  今のように動産や債権で登記制度が分かれていて,それぞれ見に行かなければならない,しかも,登記を備えていない優先する担保権者がいるかもしれないといった状況は,個別動産の担保融資など一部の融資実務にとっては都合がよいという面もあるのかもしれませんが,それ以外の融資実務を不安定でコストの掛かるものとしてしまって,その発展を阻んでいる可能性があるのではないかと考えています。そのため,透明性の高いルールとプラットフォームを整備して,権利調査のコストや不意打ちのリスクを大きく下げることで,法律家でない一般の事業者や金融機関でも優先関係について理解でき,担保権を幅広く活用できるようにすることが望ましいと考えています。そうすることで様々な貸手が参入しやすくなり,競争が促されますので,事業者はよりよい貸手を選びやすくなると考えます。もちろん今まで占有改定によって登記をせずに対抗要件を備えられたのに,新たに登記を求められるようになると,負担が掛かってしまうという御意見もあると思います。しかし,登記優先ルールという形をとれば占有改定の実務が否定されるわけではありません。また,そういった限られた一部の実務が登記なく優先できることで,その他の実務,特に金融機関による融資のコストが大きく上がっており,そのリスクを負えないために融資に踏み出せない金融機関もいる,つまり,融資を受けられない事業者もいるという事実にも目を向ける必要があるのではないかと思います。日本経済,社会全体の利益を考えれば,全ての担保権について登記を優先させつつ,一つ一つの登記のコストを下げることを目指すべきであろうと考えています。

  もちろん,これまでの議論の中でも出ましたけれども,真正譲渡への影響を抑えるために,登記優先ルールの対象範囲など具体的な制度設計は問題になるかもしれません。しかし,一番重要なのは制度のユーザーの視点であります。結局,ユーザーに利用してもらえるものでなければ作っても残念ということになりますので,これを第一に考えていく必要があると考えています。個別に限界事例を考えれば様々な難問があると思いますけれども,日本経済,社会全体の利益を考えて,多くの真っ当なユーザーに利用してもらえるように検討していく必要があると考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

○大西委員 大西です。よろしくお願いします。実務家の立場で申し上げますと,先ほどいろいろな方々の御意見も出たように,まず,やはりこの立法のスピードというのはそれなりに維持しなくてはいけない,一方で分かりやすい制度,それから使いやすい制度,そして,今の実務に弊害,悪影響を与えないような制度,そういうようないろいろな視点を踏まえたユーザー目線でそういう制度を作っていくべきなのかなと思います。

  そういう中で,私自身は立法に携わったわけではないのですが,統一的な担保制度での検討から出発して,それで,何らかの困難な事情があったときに別の個別制度に途中でスイッチするパターン,若しくは,逆に個別に考えていった上で共通項を見付けて,統一の担保制度になるパターンのように,検討の途中から法制度体系を変えることがもしできるのであれば,余りこの制度体系の議論をどちらかに決まるまでやる必要はないのかなと思いました。この場合やってはいけないことは,統一的な担保制度を作るという価値のために,実務に悪影響を及ぼすような制度になることも辞さずという考え方で進めることだと考えます。この点は,是非諸先生方のいろいろ御意見をいただきたいです。

  それから,2点目は,先ほど尾﨑さんの言われたとおり,ABLがどれほど普及しているか,ABLは実際今のニーズとしてあるのか,またはABLはもっと普及すべきなのか,それとも既に相応に普及していて充足しているのかどうかについて,事実関係を把握した上で対応した方がいいと思います。先ほどのお話にも出ました,事業の担保制度については,私は実務ニーズが相応にあると思っていますので,これは制度上きちんとカバーしていかなくてはいけないと考えています。ただ,その前提として,その辺の事業担保のニーズの把握ということも重要だと考えています。いずれにせよ,ユーザーにとって使いやすい担保制度という前提で方向性を決めていければと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○井上委員 ありがとうございます。最初のところの統一的な担保制度についてですけれども,統一的という用語の意味について,今,何人かの委員の方々の御発言を聞いていて,もしかすると理解が一致していないような気もしたので,そこを確認したいのですけれども,私自身の理解は,統一的な担保というのは,包括的な担保とは別のもので,包括的担保というのは,資料でいえば3ページの2の直前のところになお書きで書いてある,金融庁あるいは中小企業庁から御提案があったような担保のことだと思うのですけれども,ここで統一的な担保というのは,むしろ個別動産であれ,個別債権であれ,あるいは集合動産,集合債権であれ,あるいは知財であれ,「担保といえばこれ」という一つの担保を作るということかなと思っていまして,それがもちろん包括的な担保と重なる場合もあると思うのですけれども,財産の種類を問わず担保を一つのものにすると,もちろん特則はそれぞれ設けるのでしょうけれども,担保を統一するという意味の用語かなと考えています。そういう観点で申し上げると,包括的な担保については,前回議論されましたように,私は動産・債権等の担保とは別に検討すべきだと思いますけれども,統一的な担保に関していうと,メリットよりも,日本の現状を大きく変えるインパクトといいますか,ハードルが高すぎるような印象を現時点では持っております。

  例えば,一つの例を挙げれば,債権の担保については,将来債権譲渡担保は,現行法上の将来債権譲渡のルールをベースに,将来発生する債権を現時点で譲渡でき,対抗要件も現時点で備えられることを前提として成り立っていると思うのですけれども,それに比べると,動産の担保については,将来の動産を現時点で有効に譲渡できるという考え方をとらずに,集合物という概念を媒介にして,将来入ってくるものについても現時点の担保設定の効力を及ぼし,対抗要件も備えられると考えられているわけですけれども,こういったかなり基本的なところで将来債権と集合動産は違う構成によって担保が成り立っている中で,統一的な一つの担保で動産,債権,知財その他を規律するとなると,どちらかをどちらかに合わせることになるのか,よく分かりませんが,かなり根本的な,実体法上の効力も含めた説明の変革を要するような,現時点ではイメージを持っておりまして,少し難しいのではないかと考えます。その意味では,包括的な担保とは違って,統一的な担保のハードルはすごく大きくて,それを超えるメリットが今の時点では見いだせないという印象を持っております。これが1についてです。

  次に,続けて申し上げますと,5ページのところの3の担保制度の規定の設け方ですけれども,これについては1案と2案があるわけですが,私は,この二つの区別は,先ほどの事務局の御説明のように理解しておりました。ただ,事務局の説明の理解をベースにしながらも,6ページの35行目のところを見ますと,担保目的で所有権が移転された場合について,新たに設けた担保物権の設定契約であるとみなすことも一つのバリエーションとして書かれているわけです。ただ,これを担保物権創設型に入れるのは,個人的には少し不思議な感じがしていまして,不思議な感じというのは,ここの部分は,担保目的で財産権を移転する契約をした場合には,新たに設けた担保物権の設定契約であるとみなすということですから,「担保目的で財産を移転する契約をした場合にはこれこれという規律に服す」と定めるのと変わらないように思うのです。そうすると,これは担保物権創設型と担保目的取引規律型の中間といいますか,両方を立法するのにむしろ近いような印象を持っておりまして,その意味で,三つを比べる方がよいように思うのですが,比べるという意味でいうと,先ほど佐久間先生がおっしゃったように,狭義の,つまりみなしのない担保物権創設型は,隙間が残るという点で残りの二つと大きく違っていて,結局のところ,担保物権の創設をする際に合理的に見通しのよい非占有の動産担保制度を整備すると,見通しの悪い非典型担保,譲渡担保などは使われなくなって,新しい典型担保に収斂していくのだという考え方,そういう志向の立法をするということではないかと思うのですが,実際には,それほどうまくいくかというと,恐らくそんなこともなくて,例えば,非典型担保として残る譲渡担保の方が,新しく作った担保物権よりもレンダーに有利であるとか,あるいは,取引時点であまり違いをあらわにせずに問題を先送りして曖昧さを好むような当事者がいると,結局のところ新たに作った典型担保が使われなくなってしまうように思うので,私も佐久間先生がおっしゃるように,隙間がない方がいいのではないかと思います。

  そうすると,担保目的取引規律型か,あるいはみなし付きの中間型といいますか,どちらかにすべきではないかと思っておりまして,その二つにどういう違いがあるのかというのは現時点では十分に検討できていないのですが,この二つは果たして実質的な違いがあるのだろうかということについて,もし事務局の方でお考えのことがあれば,教えていただきたいと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  最後,質問が事務局に対してありましたが,全体に関わる事柄ですので,少しほかの方の御意見を伺ってから,場合によっては事務局に答えていただくことにしたいと思います。

○亀井幹事 ありがとうございます。中小企業庁としても,借手の中小企業の立場から,この制度をどう在るべきなのかということを考えさせていただいております。個々の資産の価値ではなくて,事業の価値を評価して融資を受けられるというようなインフラを是非作っていただきたいと考えております。また,作られるべき制度は分かりやすくてシンプルなもの,そういうものがよいとも考えております。そういうふうに考えると,個々の資産ごとに担保を押さえる制度のままでは動産とか債権とか,事業の中で形を変えていく資産をそれぞれおさえなければならず,複雑な仕組みが必要となります。そのため,個別の資産を区別せずに事業に用いられる資産を包括的に担保として設定できるような,そういう制度がよいのではなかろうかと思います。1の統一的な担保制度を設けることの是非というものについては,先ほどの金融庁さんが述べられた意見と同じく,区別をしないで統一的な担保制度を作るべきであろうと考えます。

  また,5ページの3の担保制度の規定の設け方については,こうした検討の結果新たな典型担保を設けるという必要があるのであれば,そうすべきなのだろうと考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  それでは,冨高さんからも手が挙がっていますので,よろしくお願いいたします。

○冨高委員 担保制度を使いやすくすることは,労働者から見ると,資金調達が容易になり,事業が継続することによって雇用も継続する,という視点で,一定程度メリットがあると思います。しかし一方,倒産間際のケースで考えると,動産に担保が設定されていれば,未払賃金債権のような労働者の労働債権は担保に劣後することとなり,労働者に対する引当財産が減る懸念があります。担保制度の使いやすさと労働債権の保護とのバランスを慎重に考える必要があると思います。

  もう一点,5ページ12行目の契約上の地位には,使用者の地位や労働契約も含まれるようにも考えられます。その場合,事業譲渡に類するということであれば,事業譲渡においては,労働契約の承継について,労働者の同意が必要です。事業譲渡との兼ね合いについて考えなければならない点や,労働者保護の観点から,留意すべきことがあるか慎重に検討するべきだと考えます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  片山さん,さきほどは接続状態が悪かったようなので,再度お願いします。

○片山委員 片山ですが。

○道垣内部会長 大丈夫です。

○片山委員 よかったです。ありがとうございます。大変失礼いたしました。貴重な時間をお取りしてしまいまして。私の方からは,統一的な担保制度を設けることの是非と,それから担保の類型ということについて若干,コメントさせていただければと思います。

  まずは,井上委員からも御指摘がございましたように,包括的担保ということではなくして債権,物権,動産も含めて全て統一的な担保にするかどうかということですけれども,これはいろいろ御指摘もありましたとおり,仮に統一的な担保制度を設計するとしましても,ふたを開けてみると,やはり目的資産の類型に応じて個別の規定を設けざるを得ないという面はあるようですので,決して刻む担保がよいということではないでしょうけれども,やはり2番の担保の類型という点は意識せざるを得ないと考えております。

  特に,比較法的に見ますと,私が研究しております大陸法圏でも,UCCの影響を受けまして,1991年に抵当権の一元構成を採用したケベック法がございますし,それからUNCITRALのモデル法に準拠した2013年のベルギーの動産質権の一元構成というのもございますけれども,いずれも近時は債権担保については動産担保から切り離して例外的な取扱いをする傾向が強く見られているということでありますので,今日的には,動産も債権も含めた統一的な担保というのを模索するということ自体は余り意味があることではないのではないかと思っているところでございます。

  他方,包括的担保の必要性ということは,やはり当然あるでしょうから,担保の類型ということに関しまして,私が考えている点を2点ほど述べさせていただければと思います。それは,担保目的資産を分類するに際して,民法上の担保制度設計におきましても,やはり貸借対照表,バランスシートの固定資産,流動資産という区分,法令では会社計算規則の139条ということになりますけれども,その区分を意識しておく必要があるように思っております。固定資産につきましては,不動産を除いた資産として,設備とか機械などの有体動産だけでなく,知財等の無体資産,それから,のれんとか契約上の地位,そういったものについては収益を生み出す装置ということで,担保目的資産の集合的な把握を可能とする枠組みや概念が有用であるように思っています。

  一方では,事業とか事業財産という切り口で特別担保を制度化するという方向もあるわけですけれども,事業という単位の大風呂敷でなくても,というのは,事業と申しますと,やはり流動資産も含めた全ての資産ということを意識しておられる方が多いかと思いますが,そうではなくして,流動資産を切り離した固定資産の集合体,すなわち収益を生み出す装置という意味での集合的な把握を,例えば集合財産であるとか,あるいは集合物といった概念で導入していくということも一つの選択肢として考えていくべきではないかと思っております。その限りで,金融機関も収益装置としての固定資産を集合的に把握して,事業者と一体となったリレーションシップバンキングといったものが推進し得るのではないかと思っております。

  これに対して流動資産ですけれども,近時は流動資産担保ということがいわれてはおりますけれども,流動資産は基本的には設定者である事業者が次の事業の展開のために活用されるべきものでありまして,その間の事業活動を通じて関与する様々な利害関係人,すなわち事業債権者とか労働債権者などとの間での調整が必要になってくるものですので,本質的にその全てを金融機関が管理したり,独占的に排他的に支配を及ぼすということには一定程度,抑制的であること,換言すれば,いわゆる利害関係人の調整というものが必要になってくるのではないかと感じております。

  2番目に申し上げたいことは,担保目的財産としての動産と債権の本質的な差異があるということを,きちんと認識すべきではないかということでございます。動産というのは,そのままでは債権の満足に供することはできず,必ず換価というものを前提とします。債権者は動産自体が欲しいわけでは決してありませんし,その限りで動産に関しては,動産の所有権自体を担保権者に帰属させるということが本質的に過剰な効果であるということになるかと思います。担保の制度設計としては,債権者に換価処分権とか優先弁済権を付与する構成を基本とするということにそれなりの合理性があるのかと思っております。

  これに対して債権というのは,担保目的財産としてはやはり動産に勝るメリットがあります。それは,狭義でのいわゆる換価を必要としないという点です。債権自体を担保権者に直接排他的に帰属させるということは決して過剰な効果ではなく,既に取引社会において一定の合理性が認められるに至っていると思われます。その点では,比較法的に見ても,支配,コントロールということによる占有担保構成であるとか,ケベックとかベルギーですけれども,それから,債権譲渡担保などの枠組みと同じように所有権担保構成を,脱法的な担保形態ではなくして,排他的な担保として正面から容認する,フランスもそうでありますけれども,そういった立法動向によっても裏付けられていると考えられます。

  以上,担保類型ということに関しまして,異なる二つの視点,固定資産と流動資産という区分を民法の中でも用いることができないかと,それから,動産と債権の本質的な差異という点を指摘させていただきました。どうもありがとうございました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

○尾﨑幹事 井上先生から,統一的な担保制度と包括的な担保制度の間で少し誤解があるのではないかというお話もございましたので,私が申し上げたことについて,念のため確認させていただきたいと思います。

  まず,包括的な担保制度,事業全体に対する担保制度については,前回申し上げたように,是非御議論いただきたいと思っているものでございます。それに対して,統一的な担保制度に関しましては,先ほど申し上げたとおり,事業者の様々なニーズに応じて便利な担保制度がきちんと用意されていることの方が非常に重要であると思っています。他方で,それとは別に,対抗要件制度というか,担保権の間の優劣関係について,そういったものを明確にするための統一的な制度が在るべきだと申し上げました。先ほどの亀井幹事の御発言もそうした趣旨だと理解しております。統一的な担保制度というものがなければならないということを申し上げたものではございません。少し誤解があるといけないと思いましたので,確認のため,以上です。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○横山委員 規定の仕方というところで,私も少し,どのような観点でこの二つ規定の仕方が対置されているかということについて教えていただければと思います。規定の仕方の違いについては,先ほど佐久間委員,それから井上委員からもご指摘がありました。井上委員からは3番目の方法というのもありましたけれども,最初,私は,部会資料を読んで,この2番目の,典型担保物権を設けるという規定の仕方は,譲渡担保が担保権であるという権利の法性決定から出発する考え方によるものだと思いました。それに対して,この【案2.1.3.1】は,言わば仮登記担保法と同じように,契約の効力という観点から立法して,それによって移転された,あるいは担保のために留保された権利の性質決定について考えることはしない,権利の性質決定は解釈に委ねるという,そういうスタンスが示されているのかと思いました。

  しかし,先ほどの笹井さんのご説明では,この【案2.1.3.1】というのは,形式的であれ所有権が債権者に移転する,権利の帰属が移転するということが前提になるということでした。資料の後の方の説明は,そのような前提で読めばよいのでしょうか。つまり,この【案2.1.3.1】は,担保の目的であるけれども,所有権あるいは権利の帰属が移転するという,法性決定はされていることを前提に理解していいのか,後のお答えのときに一緒に教えていただければと思います。

  それとの関係で,部会資料の中には,担保の範囲内で所有権が移転するという言い方と,担保の目的で所有権が移転するという表現があるのですけれども,この二つの意味は異なったものとして使い分けられているのかについても,併せて教えていただければと思います。何となく,感覚的には,「担保の範囲内で」所有権が移転するというと,設定者に何か残っているような感じもしますので,よろしくお願いいたします。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  御発言は,いかがでしょうか。

  別にまとめる必要はないかと思うのですが,少し感想めいた整理をいたします。

 今までいろいろな御発言をいただきましたが,横山さんの最後の質問についても,後で私ないし笹井さんの方から答えますけれども,統一的な制度にするといったときの意味とか,何のために統一的な制度にするのかという問題がまず提起されたように思います。「何のために」というのは,本当はよく分からないところがあるのですけれども,ただ,統一的な制度にするということが,別のところについての一定の判断に結び付きやすいという点が幾つかあるというのが,皆さんの御見解ではなかったのかと思います。つまり,統一的な担保概念を採用すると,登録制度を一元化して,それを対抗要件にするということと結び付きやすいというのがあるというわけです。ただ,担保権概念としては統一しても,個別的に登録制度を設ける,動産と債権は現在は違うわけですが,それを維持する,また,特許権の場合にはこういうふうにするのだということになる可能性もあります。ただ,統一的な登録制度の採用という判断に,結び付きやすいという考え方なのだろうと思います。

  ただ,そのときに,動産については占有改定で対抗要件を具備しているという現在の実務において,急に登録制度というものが全部に要求されるということになると,実務に結構負担なのではないかという話も出ていました。しかし,それに対しては,占有改定自体の効力は否定しないで,登記を優先させるというふうに考えるということも可能なのではないかというのが尾﨑さんから示された御意見だったように思いますし,また,佐久間さんの方から,対抗要件とは別個に担保ファイリングという制度を用意して,担保ファイリングをすることによって一定の効力を付与するという可能性について発言がありました。まあ,担保ファイリングをすると効力が限定されるというのでは,誰もしないと思うのですが,それを行っていると効力が拡大されるということになりますと,ある種の登記優先ルールということで,同じ方向なのかもしれません。

  また,亀井さんの方からは,一貫した,というか,単純な,というか,一個の登録制度にすることが,目的物がいろいろ変容したときに対抗要件の問題を捉えやすい,対抗要件が具備されているという状態を維持するというように考えやすいという御発言があったと認識しております。つまり,債権の登録制度と動産の登録制度が全然違いますと,動産が売られて債権に変わったといったときに,その債権について担保権は効力が及んでおり,対抗要件が具備されているとはいいにくいのに対して,同じ登録制度において,動産から債権に変容しても担保権の効力が及ぶというふうに登録をしておくと考えると,それの方が対抗要件具備ということの継続が言いやすいのではないかということかなと思いました。

  もう一つ大きな柱として出てまいりましたのが,オプションを増やすという言葉が何人かの方から出てきたのですけれども,選択肢でありますけれども,そこに実は大きく二つの考え方の対立といいますか,違いがあったような気がいたします。尾﨑さんの御発言というのは,どちらかといえば,どういったときにどういうふうなものが使えるというふうなことを根本から考え直して,きちんとした担保制度を作りましょうというお考えではなかったかと思います。それに対して,新たな担保制度を作ることによって現在のものは現在のままで,それにプラスして,オプションが増えるという御認識で発言された方もいらっしゃったかもしれません。つまり,現在,譲渡担保というものが存在し,その譲渡担保について判例法理が進展しているのですが,それはそれとして存続し,プラスして,登録型の担保制度というものもできる,というお考えなのかなという気もしました。ただ,一言だけ感想を述べますと,それは少し無理だろうと思います。譲渡担保について手付かずのまま,新たな登録型の担保制度を作るというのは難しいのではないかという気がいたしました。

  それとも関係しますが,横山さんやほかの方がおっしゃいましたが,担保権を創設するというのと,担保目的の契約についてその効力を定めるというものとの選択肢ということなのですけれども,私自身は,この資料とは立場が違うかもしれませんけれども,契約の効力を定めるといったときに,所有権の移転が原則になると考える必要はないのだろうと思うのです。横山さんがおっしゃったように,譲渡担保についての現在の判例法理にように,所有権が担保の範囲内で移転するという考え方は,そもそも,通常の売買における所有権の移転というのと,所有権という概念自体を変容させているわけです。それならば,それって何なのだろうか,所有権ダッシュなのという感じがしてきまして,そうすると,所有権が移転しているという言葉遣いをしたとしても,それがどういう意味を持つのかというのは変わってくるのだろうと思います。なお,「担保の範囲内で移転する」というのと「担保目的で移転する」という言葉は資料において使い分けているのかという質問もできましたが,笹井さんが使い分けているとおっしゃったら使い分けているのですけれども,私が思う限りは使い分けていないのではないかという気がいたします。

  もう一つ,労働債権の問題というのが出たわけでありまして,労働債権保護の問題というのは,労働債権の保護にとどまる問題ではなくて,担保制度が使いやすくなって担保権者の権利が強くなってきますと,例えば倒産の局面などで,被担保債権全額については行使できませんというふうに担保権の効力を縮減するといった制度設計というのはあり得るわけです。労働債権との関係を考えるというときにも,担保制度自体は使いやすくするのだけれども,最後,効力において,コンフリクトがあるときは縮減されるというふうな制度設計もあり得るのかなと思います。また,事業譲渡などの関係で労働者保護の問題というのが提起されましたが,これは前回,大西さんからも,事業譲渡的な形で事業全体を担保に取ったときには,会社法の規律との関係でいろいろな手当てが必要になるということをきちんと押さえるべきだという御意見がございました。それはそのとおりだろうと思います。

  それと,ユーザー目線という考え方が何人かから出てきたのですが,これは若干,皆さんがおっしゃっているのが同じなのかどうなのかというのがよく分からなくて,尾﨑さんは一番明快で,新たに全部の制度枠組みを作って,ユーザーに使いやすくするというふうな方向で出されたのに対して,現在がこうやっていると,それもまあ使いやすいので,余り急にそれを使えないようにするのはいかんのではないかという意見もあったと思います。そのときには,移行期間を置けば,それは何とかなるのではないかという御発言もどなたからかあったと思います。

 そんなところがいろいろ対立軸としてあったのかなという気がいたします。まとめについておかしいという御意見も後でいただければと思いますが,藤澤さんから更に御発言のお申出をいただいておりますので,藤澤さんからもお願いいたします。

○藤澤幹事 道垣内先生のお取りまとめの後に発言することになってしまい,大変申し訳ございません。2つコメントをさせていただければ幸いです。

  一つ目は,UCC第9編にいう「統一的な担保制度」とは何かということについてです。UCC第9編の「統一的」という言葉には二つの側面があると思います。一つは担保目的物に関するもので,不動産を除く財産,すなわち「パーソナルプロパティー」といわれるものについて,それが有体物であろうが無体物であろうが,それらを目的とする担保権全部を一つの法典にまとめたというところに「統一的」といわれる理由があります。特に,財産の種類を問わず一つのファイリング制度に服していることで,担保についての対抗要件具備のコストが下がったと同時に,第三者からすれば情報が得やすくなったというメリットがあります。

  もう一つの「統一的」な点は,当事者がどのような法形式を採ったかにかかわらず,それは担保権であると性質決定して,一定のルールに服させるという点だと思います。質権(プレッジ)のような担保権だったり,動産モーゲージのように,担保権か所有権か争いがあった権利だったり,それから,所有権留保のように明らかに所有権であるもの,それらを全部まとめて「担保権」であるとした上で,一定のルールに服させ,取引類型に応じて特別扱いが必要であれば例外ルールを置いていくというような法体系にした,そういう意味で「統一的」といわれる側面もあると思うのです。

  「統一的」な担保制度を日本で作るかどうか検討するときには,後者の側面についてどう考えるかということも重要なポイントかなと思っています。つまり,不動産ではそうなっているのですけれども,担保目的で抵当権という権利を設定することと,担保目的で譲渡する(所有権を移転する)こととが両立しているのだけれども,それで分かりやすいのか,大丈夫なのかという問題です。動産・債権について新たにルールを作るとすれば,この二つが併存するような形,例えば債権譲渡担保と債権質とが併存する形が望ましいのかということも議論する必要があるかなと思いました。以上が一つ目のコメントです。

  二つ目のコメントは,条文の作り方についてのコメントと質問です。これは,先ほどお話しした「統一的」という言葉の前者の意味に関するものです。取りあえず担保目的取引規律型の立法を選択して,かつその規定を民法の中に置くとしたら,という感じで仮定を置きながら質問をさせていただきたいと思うのですけれども,民法の第2編の中に規定されている先取特権や質権の規定ぶりを見ると,まず総則があって,それに続いて財産の種類に応じた規定が置かれるというような構造になっています。債権担保目的の財産権移転契約について条文を作るときにも,総則があって,それに続いて動産の節,債権の節が置かれることになるのでしょうか。その場合には,総則の部分は不動産譲渡担保にも適用されたり,不動産・動産・債権以外の財産にも適用されたりすることになるのでしょうか。総則を置くという選択をした場合には,財産の種類を問わず適用されるという意味で,「統一的」な担保のルールが譲渡担保についてはできるような気がしたのですけれども,これについては諮問の範囲を超えてしまうのかなというような懸念も感じております。その辺りについて少し方向感を教えていただければと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。方向感はここの会議体が作るものであって,方向感を聞くというよりは,藤澤さんはどのようにお考えになるかの方が重要だろうと思うのですが,ただ,おっしゃった中に,譲渡担保について総論部分というのを作ると,それが不動産について適用されないというのは少し変な感じがすると,そうしたときには,諮問として不動産担保を今回扱っていないというふうにすると,そういうふうな形は置きにくいのかなと,そういう御意見かなとは思いましたが,何か笹井さんの方でありましたら。

○笹井幹事 幾つか御質問もいただきましたのでまとめてお答えしたいと思います。

  まず,井上先生,それから横山先生からも関連で,5ページの3の【案2.1.3.1】と【案2.1.3.2】についての御質問がございました。実質的なルールとしてどういうものが妥当なのかということを考えていけば,結果的に形成されるべき法律関係というのは最終的には一致してくるのではないかと思います。そういう意味では,どちらを採ろうと,目指すべきものというのが,もしかすると全く一緒ではないかもしれませんけれども,どこかに収斂していくということになるのではないか。ただ,そのときに出発点として【案2.1.3.2】では,明らかに担保物権という形で出発をしますので,その出発点が少し違っていると。したがいまして,設けるべき規定の中身などが変わってくることがあり得るのではないかと思っています。

  例えば,この後また御議論いただく範囲内を少し先取りするような形になりますけれども,設定者の債権者が差し押さえた場合に,担保権者が担保物権を持っていると考えるのだとすると,あまり第三者異議の訴えを提起できるということにはならないのではないかとも考えられ,そういったところで,どちらかの形式を採った場合に問題になったり,ならなかったりというものが出てくるのではないか。あるいは,同じような例ですけれども,14ページの4で,担保権者による処分を取り上げていますが,あえてここで「担保所有権者」としたのは,担保物権者であるとすると,処分できないというのは当然出てくるので,【案2.1.3.2】の立場からすれば,この4についてはそもそも議論する必要がないのではないかというように思いました。

  そういう意味で,今,二つの例を挙げましたけれども,目指すべきものとしては最終的には収斂するかもしれないけれども,そこにたどり着くに当たって,どういう規定,どういう論点を考えないといけないかということがそれぞれの方式によって違ってくるのではないかと考えていたということでございます。

  その点で横山先生から,【案2.1.3.1】を採った場合における担保権者といいますか,債権者の取得した権利について,一定の法性決定がされているのかということですけれども,私自身は,その譲渡担保における今までの判例の考え方は,権利移転型と理解されてきたと思いましたので,そういう理解を前提に先ほど御説明申し上げましたけれども,それを理論的にどういうふうに考えるのか,それは所有権そのものではなくて,何か変容しているものであるという理解を否定する趣旨ではございませんでしたので,先ほど部会長がおっしゃったような理解というのは当然あり得るものと思っております。

  それに関連して,目的で移転したか範囲内で移転したかということですが,判例の表現としては,「譲渡担保における所有権移転の効力は担保目的を達成する範囲においてのみ生ずる」というものですので,できるだけそれに近付けようと思ったのですけれども,全部書くとやや長いということもありまして,簡略化している箇所もあります。また,そもそもその取引が何のために行われたのかということだけ書けばいい場面と,所有権移転の効力がどの範囲で生じているのかということが問題にされているのかというところで,若干ニュアンスがあるかもしれませんが,結論的には部会長がおっしゃられたとおり,厳密な使い分けはされていないという御理解でよろしいかと思います。

  それから,最後に藤澤先生からありました,そもそも民法に置くのか,民法に置くとして第2編でいいのかということについては,まだ決めたわけではございません。民法に置くとしても第2編は物権ですので,その中に契約の効力を書いていいのか,特に債権を目的とする担保について,担保物権という概念に含まれるのかという問題もあろうかと思いますので,そもそもここに入れるのかということ自体がまだ確定的にはいえないと思います。その上で,どこに置くにしても,譲渡担保を総則プラス各則という形で設けるということは十分あり得ると思っております。十分あり得ると申しますのは,少なくとも債権と動産で共通する部分をくくり出すということは十分あり得るのではないかと思っておりますけれども,その際に,不動産を含めた形で規定を設けるのかという問題はあろうかと思いますし,また,動産や債権以外のものを含むという前提で総則的な規定を設けるのかということも含めて,今後の検討課題かなと思っております。

○道垣内部会長 どうもありがとうございました。

  契約の効力の規律型と担保物権の創設型について,その二つは違うのか,という話がありまして,同じ,ないし,かなり近付くのではないかという話もあったわけですが,笹井さんがおっしゃったように,どういうふうな規律と親和性が高くなるのかということはあるのだろうと思います。ただ,私は,例えば担保物権であると性質決定しても,そうすると第三者異議は絶対に認められないのかというと,私はそうではなくて,それは当該担保物権の効力次第だろうと思うのですけれども,議論のやり方とか頭の中の整理の仕方というのが差し当たっては変わってきますし,最終的にはもちろんどういうふうな形の条文構造を採るのかというのでは大きく変わってくるだろうと思います。ただ,最初はどういうふうな内容にするのかというのを決めていくという方が大切だと思います。

○片山委員 すみません,少しお時間を頂戴できればと存じます。関連する点,すなわち,担保目的取引規律か担保物権創設型かという切り口ですが,煎じ詰めて言えば,所有権移転型の担保なのか,制限物権型の担保なのかと,そういう対比とも理解できるかとは思います。その点に関して申し上げますと,摺り合わせをすればどちらでも同じなのだということはあるのかもしれませんが,基本的な対立図式としては,やはり私的実行の問題をどう考えるのかという問題とか,あるいは排他的権利の付与をどこまで認めるのか,排他的担保をどこまで認めるのかという点で,少なくとも理念的には大きく対立しているということかと思います。私的実行については所有権移転型が認められやすいのでしょうが,立法するとなると執行裁判所の関与も認めなければいけないという意味では,私的実行だけというわけではないのかもしれませんし,逆に,典型担保であっても私的実行を広く認めていけば,それほど差はなくて,程度差ということになるのかも知れません。これに対して,排他的な担保としてどこまで認めていくかという問題はやはり重要な点で,後順位担保権者を排除していいのかどうかという点,それから,この後も議論される設定者の債権者の差押えの排除すべきかという点,それから,倒産手続における取戻権の行使がどこまで認められるのか,あるいは取立権の排他的な行使が認められるのかという点などについて,両構成の理念的な対立はあるのかなとは思っておりました。

  そして,それとの関連で申し上げますと,結局二者択一にしなければいけないという議論なのか,それとも,6ページのところを拝読しておりますと,いろいろバリエーションはあるのですよというようなことを書いておられまして,例えば債権については債権質という典型担保の規定の充実とともに,債権が担保目的で譲渡された場合に関する規律を設けるということも考えられるということを書いておられますし,他方,動産については非占有型の典型担保,債権については譲渡型という規律も考えられなくはないですというようなことを書いておられますので,是非,二者択一ではなくて,これらのバリエーションも検討していただければと切に思っている次第であります。

  と申しますのは,動産担保に関しましては現在,非占有担保としての典型担保がございませんので,実務上,所有権移転型の譲渡担保が使われているということではありますけれども,立法するときに,実務との連続性という意味では譲渡担保の立法化ということは一つ重要な点ではあるのですけれども,やはり財産権の移転というのは過剰な効果だという面はどうしてもあるかなと思っております。債権者側のニーズとしては,当然それはあるのでしょうけれども,設定者の方としては所有権を手放さずに担保設定したいということもあるでしょうし,それから,担保余力を広く活用したいということもあるかもしれません。その点からは,いわゆる非典型型の担保もまずは検討するし,それだけで足りず,権利移転型の担保もやはり重要である,ニーズがあるということであるならば,それを考慮した立法も併せて行うべきだという点からは,決してどちらか一方に限定した議論をするということではなくして,両方のバリエーションを考えた上での検討をしていただければと思った次第でございます。どうもお時間ありがとうございます。

○道垣内部会長 ありがとうございます。さらに,何かございますでしょうか。

○本多委員 ありがとうございます。第1の議論が終了し切らないうちに幾つか申し上げておきたいところがございますので,発言させていただきます。

  まず,先ほど佐久間委員から,統一的な担保制度の一環としての統一的な担保登記制度を導入した場合の真正譲渡の影響に関する議論について,担保ファイリングによって克服できる可能性があるのではないかという御指摘をいただいていまして,私もそのとおりと考えられるところはあるのかなと思っております。そうであるとして,真正譲渡の場合と担保設定の場合の対抗要件は,現状のとおり統一的に維持した上で,担保ファイリングという別の制度を担保固有の制度として導入することになりますと,対抗要件制度と担保ファイリング制度という二元的な制度となると思うのですけれども,そうした場合に,担保ファイリングについてどのような機能を持たせるものとして設計するのか,現状の真正譲渡と担保設定の場合と共通している,例えば譲渡登記のようなものとの関係をどのように整理をしていくのかという議論が生じやすそうなのかなというところがございまして,念のために問題提起をさせていただきます。

  また,別の点ですけれども,部会資料の5ページ目の11行目に,預金債権,預金口座の担保化の要否についての御議論があるのですけれども,実務におきましては,例えば普通預金のような流動性の預金について,担保権を設定させていただくということは相応にございまして,この流動性預金についての担保権の有効性であるとか,それから,対抗要件具備の仕方であるといったことが明確化されるというのは相応に意義があると思っています。ちなみに,対抗要件具備に関しまして,現状の実務上,例えば,当初の1回限りの対抗要件具備によって,残高の異動にかかわらず対抗要件が維持されるという考え方がございます一方で,残高の異動のたびに対抗要件を取り直す必要がないか議論されることがあり,また,定期的に対抗要件を具備するといった実務も行われているところでございまして,この辺りが,例えば当初の1回の対抗要件具備によって有効な対抗要件となりますという規律が明確になりますと,実務にとって大変使い勝手が向上すると申し上げられると思っております。

  一方で,普通預金についての担保権の設定の有効性が認められる結果として,預貯金債権についての譲渡制限特約の有効性が揺らぐことになりますと,実務上の影響が大きいところがございまして,譲渡制限特約により預金者を固定することについての民法466条の5の規律は引き続き維持されるべき必要があると考えております。要は,質入制限特約の有効性と普通預金担保の有効性というのは同時に成り立つということを前提として,普通預金担保に関する規律の設計が必要という考え方でございます。

  それから,部会資料の7ページ目の29行目から30行目なのですけれども,先ほど片山委員からの御発言にもございましたが,担保目的取引規律型と担保物権創設型の差異によりまして,例えば後順位担保権の設定について影響が生じるかどうか,仮に排他的な権利性というものが担保目的取引規律型の方で強調される結果として,これが導入し難くなるかどうかという問題については慎重に検討する必要があると考えております。私の個人的な考えは,先ほど笹井幹事からもございましたとおり,この類型論によって結論として大きな差異が生じることはないと思っていまして,合理的に規律の検討ができまして,最終的に収斂する過程において,担保目的取引規律型が選択されたとしても,後順位担保権の有効性が認められる余地があると考えております。

  ちなみに,実務上は後順位担保権についての要望は大きいものがございまして,例えば,複数の与信者が単独の借入人に対して与信を行う際に優先劣後構造のトランチングが行われるということがございます。その際に,例えば動産や債権を目的とする担保につきまして後順位担保権の設定をするということについて,実務上のニーズは大きいものがございますが,現状はその有効性が必ずしも明確ではないことから,後順位担保権の設定を躊躇しており,その他の方法により優先劣後構造を実現するための工夫をさせていただいているというところがございます。この制度改正に際しまして後順位担保権の有効性が明確になるということは,ファイナンス実務を向上させる上で大変有意なのかなと考えています。

  もう一点だけ発言させていただきますと,担保権の処分に関しまして,この後また議論があると思っておりますが,転譲渡担保であるとか,譲渡担保権の譲渡又は放棄だったり,譲渡担保権の順位の譲渡又は放棄だったりということについて,複数の与信者間でファイナンスの組換えを行う際の対応方法の選択肢を広げられる点において実務の柔軟性を高められるとも思われ,導入可能性を検討させていただける余地がありそうなのかなと考えております。

  長くなりましたが,以上でございます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  いろいろな重要な点を御指摘いただいたと思います。水津さん,どうぞ。

○水津幹事 よろしくお願いいたします。

 部会資料では,担保目的取引規律型と担保物権創設型とが対置されています。もっとも,担保目的取引規律型は,担保に関する規定を設ける方法について,債権担保の目的でされた契約の効力等を定める方法をとるものです。これに対し,担保物権創設型は,債権者が取得する権利の捉え方について,これを新たに創設される典型担保物権と構成するものです。このように,担保目的取引規律型と担保物権創設型とでは,扱っている問題がややずれているように思いました。

  そして,部会資料では,担保目的取引規律型によると,債権者が取得する権利は,「担保所有権」という新たな概念によって捉えられるものとされています。新たに創設される典型担保物権が,抵当権のような制限物権型のものでなければならない理由はありません。そのため,担保目的取引規律型も,債権者が取得する権利を「担保所有権」という新たに創設される典型担保物権と構成するものであるといえそうです。そうであるとすると,担保目的取引規律型を担保物権創設型から区別する意味が,分かりにくくなる気がいたしました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  総論の議論をずっと続けてまいりましたが,もちろん今回でこのような議論が終わるわけではないのですが,本日のところでさらに何か御発言ございますでしょうか。

  それでは,その後にまた,お気付きになるということもあろうかと思いまして,そのときに,項目を遡って御発言されるというのが禁じられるわけではございませんで,一言断っていただければ御発言いただいて結構だろうと思いますので,議事自体は次のところに進んで,場合によっては1のところについての御発言もいただくというふうにさせていただければと思います。

  そこで,部会資料2の「第2 個別動産を目的とする担保の実体的効力」というところの1から3についての議論に入りたいと思います。

  それでは,事務当局におきまして部会資料の説明をお願いいたします。

○寺畑関係官 それでは,「第2 個別動産を目的とする担保の実体的効力」のうち1から3までの部分について御説明いたします。

  はじめに,この第2は個別動産を担保とするものを対象として御議論いただきたい内容であり,いわゆる集合動産については次回以降に扱う予定です。

  まず,8ページの「1 担保の効力が及ぶ範囲」についてです。本文の(1)では,担保の目的動産に附属させられた従物について,附属させられた時期が担保の設定前か後かにかかわらず担保の効力が及ぶものとすることを提案しております。設定前の従物に担保の効力が及ぶことには争いがないですが,設定後については見解が分かれております。【案2.1.3.1】の担保目的取引規律型を前提とする場合,担保目的物の所有権は担保権者に移転するため,設定者が従たる物を附属させても主物と所有者が異なり,従物の定義に該当しないこととなりますが,設定後であっても経済的に見て主物の効用を高めていることなどから,担保の効力が及ぶとする提案をしております。

  次に,本文の(2)では,担保目的物から生じた果実について,被担保債権に係る債務の不履行後に生じた果実に担保の効力が及ぶとして,抵当権に関する民法第371条と同様の規定を設けることを提案しております。なお,民法第371条については,不履行後に生じたという文言が適切ではないのではないかといった批判もございますが,いずれにしてもこの条文と整合的な考え方を採るべきではないかと考えております。

  なお,本文には記載しておりませんが,付合,混和の場合の付合物等にも担保の効力が及ぶということについては,民法第243条以下の規定によって導くことができるため,特段の規定を設ける必要はないのではないかと考えております。

  次に,11ページの2は,設定者の一般債権者が目的物を差し押さえた場合,担保権者に配当要求や第三者異議の訴えの提起を認めるかどうかについてです。【案2.1.3.2】のように新しく担保物権を作ることにした場合,その担保物権の内容をどのように設計するかにもよりますが,抵当権とのバランスを考えても,担保権者に第三者異議の訴えを認めることは困難だと思われます。これに対して,【案2.1.3.1】の担保目的取引規律型を前提とすると,担保権者は一応,所有権者となるため,配当要求に加えて第三者異議の訴えの提起をすることができるかが問題となります。

  本文の(1)では,担保権者は配当要求をすることができる旨を提案しております。現行の譲渡担保に関する判例では,担保権者は原則として第三者異議の訴えを提起することができるとされる一方,明文の規定のない配当要求はできませんが,ここでは譲渡担保の担保取引としての実質に照らして,配当要求を認める旨を提案しております。

  次に,本文の(2)では,担保権者は原則として第三者異議の訴えを提起することができますが,無剰余の場合はできないとする旨を提案しております。担保取引の実質を強調すると,配当要求だけを認めて第三者異議の訴えの提起は認めないとすることも考えられますが,現在の判例でも,特段の事情がない限りとして,剰余があって担保権者が満額の配当を受けられる場合を除いて第三者異議の訴えの提起を認めております。また,特に動産の場合,仮に配当要求だけを認めると,最終的に売却してみなければ無剰余になるかどうかが分からず,その間に価値が減少することもあるかもしれません。そういったことを踏まえて,第三者異議の訴えに伴う執行停止の利益が得られるような形にしておいた方がよいのではないかということで,第三者異議の訴えを認めることを提案しております。全体としては,第三者異議の訴えの提起については,現行の譲渡担保の規律を維持した上で,一般債権者が始めた手続に乗る形で配当要求ができるとして,担保権者の権能を一つ増やした提案をしております。

  次に,13ページの「3 設定者の使用収益権限」については,非占有型の担保制度を設けることの帰結として,設定者に目的物を占有し使用収益する権限があることを明らかにすることを提案しております。特約によって担保権者が使用収益をすることは妨げられませんが,担保権者は物権的には使用収益権限を持っていないため,第三者が登場した場合には,特約に基づく債権的な使用収益権限は第三者に対抗することができないこととしております。

  なお,本文には記載しておりませんが,設定者が目的物を占有し使用収益するに当たり,善管注意義務を課すかといった点も問題となり得ると思いますが,抵当権などについて規定が設けられていないことを考え,特段の規定を設けるといった提案はしておりません。

  以上の内容について,皆様に御議論いただきたいと考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  それでは,以上の点につきまして,どなたからでも結構でございますので,御意見等をいただければと思います。

  私から最初に質問して申し訳ないのですが,附合物については243条か何かの規定があるので特段の規定は不要であるとおっしゃったのですが,抵当権に関する370条というのは,附合物も付加一体物に入る,逆に付加一体物は附合物だけだという見解があるぐらいで,そうすると,抵当権の効力が附合物に及ぶというのは370条で説明しているのではないですか。243条でうまくいきそうだと思うのは,どこかに所有権の移転構成というのを採っているというのがあるからなのかなという気がして,そうなのかなと思いながら伺っていて,そうすると,逆に第2の1というのは370条と同じように付加一体物に及ぶと書いた方が,いいのかなという気がしました。すみません,私から恐縮です。

○佐久間委員 ありがとうございます。今正に道垣内先生がおっしゃったことを申し上げようと思っていて,附合については別に243条でも私は処理できるのではないかと。附合物は所有権の客体の内容を構成することになるので,所有権に対して設定された権利だったら当然に及んでしまうということで,370条がなくても行けると思いますが,他方で370条の解釈として,附合物は問題ないよねということがあるので,そこをはっきりさせる必要はないと思うと同時に,ここからは部会長がおっしゃったことと変わらないのですけれども,現在の第2の1(1)の書きぶりだと,確かに従物は抵当権の場合に,抵当権設定後の従物についても効力が及ぶという見解が有力であると思いますけれども,例えば,元物の経済的効用を増すということでもってのみ従物を概念規定するといたしますと,その従物の経済的価値がものすごく実は高いのだというときも,本当に抵当権設定後にそのように飛び抜けて高い価値を持っている従物にも及ぶのかという議論はあると思うのです。今も。そういったことも踏まえると,第2の1(1)は,わざわざ従物についてのみ切り出して規定を設けようという方向よりは,370条とそろえておいて,その解釈と同じような解釈でもって目的物の範囲が定まるのですよ,としておく方が本当ではないかと思いました。

  それが1点で,続けて申し上げてよろしいですか。すみません。次に13ページの3の使用収益権限のところなのですが,これはもう決めを打つということなのかもしれませんけれども,一応,今の譲渡担保だと目的物の使用収益権を設定者に留めるのはもちろん構いませんが,別段,譲渡担保権者に使用収益権も与える,それが物権的なものであるというのは,所有権の内容を構成する権利の一つであると思うのです。それをわざわざ債権的な権利にとどまるのですということにする方がいいのかどうか,やや疑問に思うところがありました。

  例えば,組み方としましては,目的物の使用収益,特に収益を,譲渡担保権者というか担保所有権者が有することで収益を上げ,そこから,例えば,当然充当になるのかどうか分かりませんが,その被担保債権の弁済に充てることも妨げられないように思うのです。その場合は質を使えばいいではないかと言われれば,それはそのとおりだと思うのですけれども,例えば私的実行をこの担保所有権については広く認めるというようなことになったとすると,質を使えばいいというようなことで割り切って話をすることもできないと思うのです。

  だから,3のところについて,私は,契約の当事者がどちらに物権的な使用収益権があるかということを決めることができるということにして,もし担保所有権者に物権的な使用収益権があるということだとすると,そうなった場合は,設定者が仮に何らかの処分を当該目的物についてしても,使用収益権が担保所有権者から奪われることはないと。もちろん対抗要件が備わってとか,登録がされてとかいったことで担保権の主張ができる場合についてのことですが,その場合に奪われることはないと考えておく方がよろしいのではないか,少なくとも現行法からの乖離は少ないのではないかという気がいたしました。間違っているかもしれませんが。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  賛成かどうか,私はにわかに決められなかったのですが,藤澤さん,お願いいたします。

○藤澤幹事 私もこの部分について一つコメントをさせていただければと思います。特に,(注18)に書いてあることなのですが,担保目的物が担保所有権設定者の財産と附合混和する場合については,資料の御説明のとおりで理解することができました。他方,(注18)に登場する償金の負担者といった問題は,第三者の所有物と担保目的物とが附合混和する場合にも問題となりそうです。

  具体的には,第1に第三者が附合混和によって所有権を失った場合に,償金を負担するのはどちらかという問題,第2は,反対に担保目的物の所有権が第三者の所有権に吸収されることになった場合に,償金を請求することができるのはどちらかという問題です。特に,第2の問題の場合には,担保所有権者が当然償金を受け取ることができるのか,それとも物上代位の手続が必要かといった違いが出てきそうです。

  (注18)では,解釈に委ねるということが書かれていますけれども,他方で従物については,「形式的には所有権が担保所有権者にあるので」という理由で新たな条文を作るとすれば,このような場面でも条文を作る必要はないかというような疑問が出てきます。「この場面は,条文がないから形式どおり担保所有権者を所有者として解釈するべきだ」というような解釈を導かないかということを懸念しています。

 なお,こういった細かい問題が色々と考えられることから,条文の書き方としては,「民法の第何編第何節の規定については担保所有権設定者に所有権があるものとして適用します」みたいな条文の書き方はあり得ないかな,と考えました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。結論を書いた方がよさそうな感じがしますけれども。この場合には所有権がこちらにあるものとみなすと書いたら,書いていないときには全部逆なのかとか,逆にそれを根拠にして,全部あるということにするのかとか,いろいろな他の場面に波及することがあり得るのですが,ただ,償金について丁寧に考えるべきだとおっしゃるのは,そのとおりだと思います。

  ほかに御意見ございませんでしょうか。

○阿部幹事 すみません,今の話と違うところに行ってもよろしいでしょうか。

○道垣内部会長 はい,結構です。

○阿部幹事 資料の10ページ以下の設定者の債権者のために目的物が差し押さえられた場合における担保権者の権限について,配当要求を認めるほか,第三者異議も認めるけれども,剰余があるときに限るというのがこの資料の提案となっておりまして,ただ,これに関しては先ほど片山先生からも少し御指摘がありましたけれども,この担保所有権は,優先型とは異なる排他型の担保権なのだと考えれば,剰余の有無にかかわらず第三者異議を認めるといった方向性もあり得るのではないかと思いました。

  その上で,仮に第三者異議が一定の場合にしかできないとした場合には,配当要求の可否と第三者異議の訴えの可否以外にも,幾つか検討しておいた方がいいことがあるような気がします。一つは,設定者の債権者のために差押えがされたときに,それを無視して担保権者が私的実行すると,差押えと私的実行が競合する感じになると思うのですけれども,そのときにどちらがどうなるのかといったことを検討しておく必要があると思いました。もう一つは,特に根担保のときだと思うのですけれども,根抵当に関しては398条の20という規定があって,差押えがあった後も2週間はその元本を確定しないこととなっており,その趣旨は,その間に,例えば極度額に余裕があって,担保権者が追加融資して,それで執行債権を弁済して差押えを飛ばすことができるのであれば,追加融資をするなどの対抗手段をとる余地を認めるものであると説明されています。そういった形で強制執行を止めるための手段が,この場合の根担保においても認められるべきかどうか,ということを検討しておくとよいと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○横山委員 すみません,すごく細かいことなのですけれども,14ページで,設定者が使用収益するに当たって善良な管理者の注意による保管義務を課せられるかについては書かないということが書かれています。その理由として,抵当権について規定はないから要らないというように読めたのですけれども,先ほどのご説明により,財産権が担保権者に移転すると考えると,抵当権と同じように直ちにいえないのではないでしょうか。共有についても,共有者は共有物を善管注意義務をもって使用しなければいけないという民法改正もされていますし,保管義務が使用収益とどういう関係にあるのかもよく分からないところがあります。書かないなら書かないで,全然私は反対ではないですけれども,何か実質的な理由が要るのではないかと思いました。特に,共有の場合と違うことの説明は要るかもしれないと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。目的物自体に対する善良な管理者の注意の話というのか,それとも,債権者が持っている権利を保全するに当たっての善良な管理者の注意の問題なのかという問題も背後にあろうかと思いますが,それが法律構成とどういうふうに結び付くのかということになるのかなという気がいたします。どうもありがとうございました。

  多くのお手をいただいているのですが,山本和彦さん,お願いいたします。

○山本委員 2の差し押さえられた場合の話についてですけれども,2点コメントですけれども,第1に,基本的には私自身はこの提案に賛成です。やはり基本は,剰余がある場合には差押えに基づく換価を認めて,担保権者は100%弁済を受けるわけですから,その剰余部分は他の一般債権者の配当に委ねるというのが筋であり,他方,剰余がない場合には担保権者は優先するわけですから,その段階での執行を排除できるということにするのが筋だろう,要するに剰余主義という基本的な考え方が筋なのではないかと思っています。

  その上で,12ページの選択肢で,そうすると②か③ということで,私自身は個人的には③というのも,つまり配当要求だけを認めて執行手続上の無剰余措置,無剰余取消しに全面的に委ねるという考え方もあり得ないではないとは思っています。第三者異議に基づく執行停止についても,恐らく私の理解では,その場合も無剰余の疎明というのは必要になるのかな,執行手続を停止するについてですね,無剰余の疎明というのは必要になるのかなと思っていて,だから,執行官が無剰余を判断するのとどこまで違うのかというところはあるようには思っています。

  ただ,確かに判断主体が受訴裁判所になるのか執行官になるのかとか,判決手続でやるのか,決定手続でやるのかとか,違いはあることは確かにありますし,それから,何といっても現行法上,判例は当然,第三者異議を認めておりますので,ここで第三者異議を否定するというのは現行の取扱いからすると180度変えることになるので,そこまでラジカルにこの改正でやる必要があるのかという点からすれば,結論的には私はこの原案(1),(2)で配当要求を認めながら,剰余がない場合には第三者異議を認めるという規律でいいかなと思っています。それが第1点です。

  第2点のコメントは,その前提問題として,消除主義を採るのか引受け主義を採るのかという問題もあって,恐らく原案は消除主義,譲渡担保は差押え,換価に基づいて当然消えるという,だからこそ配当要求等を認めるという前提でできていると思っています。それは,私は,現行の動産執行手続からすれば素直な理解なのかなと思っているのですが,ただ,13ページの4のところで書かれているように,担保取引型でしたっけ,という考え方を採ったときには,結局,善意無過失であれば即時取得が成立する一方,そうでない場合には担保所有権が残るということになって,買受人が善意無過失であれば消除され,善意無過失でなければ,悪意等の場合には譲渡担保は残るということで,一種の,それによって消除か引受けかが分かれる規律に実質的にはなるのだろうと思っていまして,それは,私は政策的なあれからすれば,結論的にはそれなりに合理的な規律になるのかなと思っておりまして,その点も私自身は賛成です。

  ただ,やはり一つ問題は,買受人が善意無過失の場合には担保所有権が消えてしまいますので,担保所有権者に手続保障といいますか,何か差押えがあったということを知る機会というのがなくていいのかというところは問題としてはなお残るようには思います。この点は,担保所有権についてどのような対抗要件,登記等で,を認めるのかというようなところとも関係してくるところで,なかなか難しい,具体的に執行手続の中でどうするかというのは難しいところがあるようには思うのですけれども,今後,登記,対抗要件等も固まってくる中では,引き続き考えていくべき課題にはなるのかなという印象を持っています。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  まだたくさんのお手を挙げていただいているのですけれども,少し議論を整理したいと思います。まず,1の担保の効力が及ぶ範囲と,設定者の使用収益権限のところに関しましては,仮に条文を作るとしたときの条文の書き方等についてはいろいろ問題があるところかと思うのですが,実体的にはいかがなのでしょうか。実体的にも,ここについてもう少し考えるべき点があるということでしたらば,その点について御発言をいただいて,1,3の問題を片付けるといったら変ですけれども,まずお伺いしたいと思います。1,3についての御意見があられる方はいらっしゃいますか。手を挙げていらっしゃる方で,片山さん,阪口さんは1,3ですか,2ですか。

○阪口幹事 阪口は1のつもりですけれども。

○片山委員 私は両方なのですけれども,1,3だけで,まず。

○道垣内部会長 中村さん,お手を挙げていらっしゃいましたけれども,1,2,3とどれでしょうか。

○中村委員 2についてです。

○道垣内部会長 分かりました。青木哲さんも2ですか。

○青木(哲)幹事 2です。

○道垣内部会長 それでは,2を後回しにいたしまして,1,3を。両方についてご発言をされる方も,1,3についての発言を先にしていただければと思います。片山さん,お願いします。

○片山委員 1,3ということですので,まず1のところは,佐久間委員を始めほかの先生方からも御指摘があった点ですけれども,やはり主物,従物という切り口ですと,動産の場合,例の船とモーターの事件等もありますように,そもそもどちらが主物なのだという話になってしまうというところがありますし,不動産の場合につきましては,不動産という価値が高いものに動産が付加されますので,いいのかもしれませんが,動産の場合については,同様に論じて,いいのかどうかというのは,若干心配なところもございます。ですから,少なくとも設定後の従物についての効力は再度検討しておく必要があろうかと思いますので,表現としては付加一体物辺りが落ち着きどころなのかなという気がしております。これは繰り返しになるかと思います。

  次いで,3のところの設定者の使用収益権限の問題ですが,確定的な所有権取得までは設定者が使用収益することができるということで,原則としてそれでいいのかもしれないですけれども,他方,実行段階になり弁済期が到来すると担保権者に占有処分権が付与されるというのが判例法理ということになりますので,実行時の規律との整合性を意識した書きぶりが必要になるのではないかということでございます。

  最後に,3の設定者の保管義務,担保価値維持義務に関連するところに関して意見を述べさせていただければと存じます。設定者の保管義務については,それを設ける必要性が低いということですが,他方,担保価値維持義務という形で整理しておくことも考えられるという御指摘がなされています。いわゆる広義での担保価値維持義務に関しましては,御案内のとおり平成11年判決,18年判決を契機に判例,学説が大きく進展をしておりまして,私自身は現時点では三つの義務に整理できるのではないかと考えております。

  一つは,有体動産担保における占有に伴う保存義務で,これは占有担保については298条とか350条に既に規定がありますが,非占有担保にはないところをどうするかという問題。それから,もう一つは18年判決が提起した債権質等のいわゆる権利担保,財産権担保に関する設定者の拘束力の問題,これを18年判決は担保価値維持義務と呼んだわけです。それから,3つ目は,在庫担保等の流動動産担保における補充義務の問題です。これは通常の営業の範囲で処分権が与えられていることの裏返しとして,どこまで補充義務を負うかという問題で,近時はそれを担保価値維持義務の一典型例として位置付ける学説が有力に主張されています。

  立法に際しましては,この三つの義務をどのように整理して規定を設けるかという視点が必要かと思います。義務の本質からしますと,占有に伴う保存義務と,担保権が価値権だからということを理由に認められる担保価値維持義務というのは,かなり違ったものであります。もちろん占有に伴う保存義務を担保価値維持義務の概念で収斂して一元化するという立法も可能かとは思います。しかし,やはり立法としては目的物の種類,有体動産か,無体動産か,あるいは集合動産かに応じて,きめ細やかに効果を規律していくということが必要であってその統一的な把握とか理論的な把握は学説に委ねるということになるかとは思っております。

  そうしますと,効果という意味では,権利担保に関しては398条が規定しているような対抗不能という効果が中心になるのでしょうけれども,有体動産については一方で,既に規定のある137条で期限の利益の喪失という効果一本で済むかというと,それは担保関係を失わせる方向での効果ですから,逆に担保関係を維持する方向での代わり担保の請求であるとか,追加担保の請求といったことを認めるニーズがどこまであるのかということを考えていく必要があるのではないかと思います。動産担保については補充義務が不可欠ですけれども,個別動産についても,保存義務違反で期限の利益を失ってしまうというのは,債権者にとってもリスクということになりますので,融資を継続する方向での選択肢,具体的には担保の補充に関する効果を規定の上で設けていく必要があるのではないかと考えている次第でございます。

○道垣内部会長 どうもありがとうございました。

  3もそう簡単ではないよということですが,阪口さんの方から1についてお話があるということですので,まず先にそれを伺いたいと思います。

○阪口幹事 阪口です。1のところについて,二つあります。一つは,担保所有権は私的実行が中心となる担保権ですので,効力が及ぶ範囲をできるだけ明確にしておく必要があるという点です。抵当権であれば裁判所が絡む手続なので,問題は比較的少ないですけれども,担保所有権については,効力とか範囲はできるだけ規定化しておく必要があるだろうというのが一つです。

  二つ目は,従物について効力が及ぶということについて,所有権留保はそれでいいのでしょうかという問題提起です。本文の方では,8ページから9ページにかけて,説明はどちらかというと譲渡担保を中心に書いてあるのだけれども,結論部分としては,所有権留保も含めて,従物に効力が及ぶという同じ結論が書かれています。動産の所有権留保で主物,従物というのはどんな場合かというのは,必ずしもよく分からないのだけれども,例えば車とスペアタイヤ,取り外し容易なカーナビ,愛車セットという,こういうのが仮に主物,従物の関係だとすれば,車を所有権留保で売ります,買った人,所有権留保買主がスペアタイヤなどを自分で付けました,期限の利益を失ったので売主の方が引き揚げます,スペアタイヤも,取り外し容易なカーナビも,愛車セットも全部持って帰りますという結論になりますが,譲渡担保のときと比べると違和感があるように思います。それは,先ほども申し上げたとおり,明確に規定化することが大事だというのも他方ではあるので,絶対おかしいとまでいえず,決めたらそれで実務が動くのかも分からないけれども,譲渡担保のときよりはかなり違和感があるというのが正直なところです。もしそういうふうにするのだったら,もう少し,こういう必然性があるといった御説明が要るのではないのかと思っています。

○道垣内部会長 ありがとうございました。所有権留保は動産売主の保護のために若干強い効力を認めている国が多いのですが,それが所有権留保売買後の従物までを対象とすることを正当化できるのか,そこまでほかの担保に関する優先権を拡大できるのかという問題があるのかもしれないと思いました。

  1,3についての御発言はほかにございませんでしょうか。

  2について,片山さんが残っていらっしゃいますし,青木さん,中村さんからもお手が既に挙がっていて,ほかの方もいらっしゃると思います。2については議論をもう少し深める必要があろうかと思います。

  しかるに,もう開始いたしまして2時間15分たっておりますので,皆さんそろそろお疲れのことと存じます。少し中途半端なところになるのですけれども,この辺りで15分間,休憩を入れさせていただきまして,16時から第三者異議等の問題,配当要求等の問題につきまして,議論を再開するということにさせていただいてよろしいでしょうか。

  それでは,そういうことで4時まで一旦休憩ということにさせていただきます。

          (休     憩)

○道垣内部会長 それでは,青木さんからお願いします。

○青木(哲)幹事 ありがとうございます。神戸大学の青木哲です。設定者の債権者による強制執行に対する担保権者の権限の問題について,意見を申し上げます。

  一般に担保権設定者の債権者による強制執行により,その目的物上の担保権者の利益が損なわれるべきではないので,担保所有権者に被担保債権の全額の弁済がされる見込みがない場合には強制執行は認められるべきではないということ,それから,担保所有権者が被担保債権の弁済を受ける機会がなく売却がされた場合には,買受人が即時取得をしない限り担保所有権は失われないということ,これらの基本的な考え方に賛成です。

  その上で,提案されている個々の内容のうち,第1に担保所有権者が強制執行手続に配当要求をすることを認めることに賛成です。ただし,部会資料11ページ32行目,下から3行目になりますが,一般債権者による差押えに基づいて開始された競売手続で配当を受ければ足りると担保権者が考える場合には,というのは,担保権者が配当要求をした被担保債権の全額の配当を受ければ足りると考える場合には,という趣旨だと理解しました。その上で,追加で提案をするとすれば,担保所有権者が同意をする場合には,担保所有権者が被担保債権の全額の弁済を受けられなくても,競売により売却する可能性を認めることも考えられます。

  第2に,第三者異議の訴えについてですが,担保権者が被担保債権額の全額の弁済を受けられる見込みがある場合を除き,第三者異議の訴えにより強制執行を排除することを認めるという提案に賛成です。確かに民事執行法129条2項において,手続費用と優先債権を考慮して剰余を生ずる見込みのない場合に,執行官が差押えを取り消す旨が規定されているので,担保権者が被担保債権全額の弁済を受けない限り売却されないという利益については,配当要求をすることで強制執行の手続内で保護が与えられます。しかし,例えば動産執行に対して第三者異議の訴えが提起され,原告が所有権の取得を主張したのに対して,被告差押債権者が原告の所有権の取得が担保目的であると主張して,その結果,真正譲渡か担保権かについて争いがあるという場面を想定すると,仮に担保権であると判断がされる場合であっても,剰余が生じる見込みがないのであれば,同じ第三者異議の訴えの手続において請求が認容されるということにした方がよいのではないかと考えます。

  第3に,担保権者が配当要求をすることなく売却がされた場合に,担保所有権が消滅しないということには基本的に賛成です。しかし,担保権者が配当要求をしない限り買受人が担保付きの不動産を取得するということになると,即時取得がされないような場合には事実上,買手が現れないというようなことになるかと思います。このことに対する対応として,担保権者の存在が判明している場合には,その担保権者に配当要求の機会を与えることで,担保権者が配当要求を実際にはしなかったとしても,目的物を競売により売却する際に担保権を消滅させるという仕組みを設けることが考えられるかと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。第1のところでお伺いしたいのですが,配当要求して,全額の弁済を受けられないというようなときでもいいのではないかという話だったのですけれども,それって,私が民事執行法の手続が十分に理解できていないのかもしれないのですけれども,競売は続くのですか,つまり無剰余にならないのですか。

○青木(哲)幹事 無剰余ではあるけれども,優先債権者が同意をすれば,そのまま低い価額で売却してしまっても,優先債権者のために売却をすることになるかと思いますけれども,それで構わないのではないかという意見です。不動産執行については無剰余の措置のところで同じような趣旨の規定がありますので,それと同じように考えることができるのではないかということです。

○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。

○中村委員 東京地裁の中村でございます。

  配当要求に加えて,担保権者が第三者異議の訴えを提起することができるかどうかということについて,御提案内容は無剰余の場合に第三者異議を認めるというものですけれども,この点について若干疑問があるという意見を述べさせていただきたいと思います。

  まず,動産執行において担保権者から配当要求を受けますと,執行官が無剰余であるかどうかを判断しまして,無剰余があると判断して差押えを取り消しますと,差押えを取り消された設定者の債権者はこれに対して執行異議を申し立てることができることになります。また,執行官が無剰余であるとは認められないと判断して売却手続を実施しますと,担保権者の方が執行異議を申し立てることができることになります。これらの執行異議に対しては,執行裁判所において無剰余かどうかということを判断していくことになると思います。これに加えて,担保権者が無剰余であるとして第三者異議の訴えを提起することができるとしますと,第三者異議訴訟の受訴裁判所も無剰余であるか否かの判断をするということになりまして,そうしますと,これら二つの裁判所の判断が矛盾抵触するというおそれが生じてしまうと思います。このような事態というのは,担保権と所有権という異なる二つの性質に基づく配当要求と第三者異議という二つの制度を同一場面で利用することができるとすることによって生じてしまうものだと思われます。

  無剰余の場合に第三者異議の訴えを提起することができるものとするという見解を採る理由として,早期に執行停止の裁判を利用することができるとするのが妥当であるという点が挙げられておりますけれども,第三者異議の受訴裁判所も訴え提起があれば直ちに執行を停止するというものではなく,疎明の程度に応じて担保の要否や額などを検討しなければなりませんので,目的物の評価が困難な場合に,手続の違いによって判断の迅速性に有意な違いが生じるとは考えにくいのではないかと思っております。なお,第三者異議訴訟の提起に伴い,執行の停止のみならず取消しまで認めることはほとんどないといわれております。他方,動産執行の手続で,執行異議の申立てを受けた執行裁判所は,執行異議についての裁判の効力が生ずるまでの間,有担保若しくは無担保で執行手続の全部若しくは一部の停止を命じ,又は有担保で執行手続の続行を命ずることができるとされております。そして,この決定に対しては不服を申し立てることはできないという点は第三者異議訴訟の提起に伴う執行停止取消しの決定と同じです。また,執行官が剰余の有無の判断に時間を掛けすぎるような場合には,執行官の処分の遅怠に対しても執行異議を申し立てるという手続もございます。

  そうすると,配当要求を認めた上で別途,第三者異議を認めるという必要性は乏しいのではないか,かえって担保所有権者に担保権者として配当要求という新たな権利行使の方法を認めるということであれば,第三者異議による権利行使は認めず,動産執行手続内で無剰余の有無を判断するということに手続を一本化するのが相当ではないかと考えます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  山本和彦さんから,無剰余措置に一本化するというのも十分に考えられるけれども,なお第三者異議というものを認めるというのがいいのではないかと自分は判断したとおっしゃったのですが,今の中村さんの御見解との関係ではどのようにお考えになられますか。

○山本委員 そうですね,二つの理由を先ほどは申し上げました。第1の理由,無剰余で,今,執行異議というお話が出ましたけれども,そちらでの判断と,第三者異議に伴う執行停止の裁判との間の,迅速性とか,あるいはその判断の中身の違いというのが一定程度あるのではないかということを申し上げましたが,ここはかなり実務的なところなので,実務上はそこは完全に重なり合って,二つのルートを開いておく必要性はなく,かえって混乱するという,今,御趣旨だったように思いまして,もし実務上そういうことなのであれば,私の第1の理由はそれほど説得力はないということになるのだろうと思います。

  他方,第2の理由は,現在の制度との段差みたいな,ラジカルさみたいなことを申し上げて,現在は配当要求は基本的に認めず,第三者異議のルートだけで行くというのを,配当要求だけにして第三者異議を排除するというのは,制度構成としては素直なのだけれども,そこまでこの立法で飛ぶというのが果たしてどうなのだろうかということですけれども,これも,どちらかといえばそれほどロジカルな理由ではないところではあるので,私自身はそれほど固執するわけではなくて,もしそれは配当要求,無剰余というルートだけでも実務上はいいし,そちらの方がより妥当だということであれば,それについて反対するものでもありません。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  関連しているのだと思いますが,阪口さん,松下さんから手が挙がっておりますので,阪口さん,お願いいたします。

○阪口幹事 阪口です。実務的な観点で,執行異議と第三者異議の違いというと,ほとんどの場合は執行異議でカバーされるのはそのとおりだと思います。また執行異議,正確に言えば,まず執行官の職権発動による差押えの取消しを上申して,それでも取り消してもらえない場合には執行異議ということになるのだと思いますが,それでも執行異議の方が早いというのもそのとおりだと思います。ただ,被担保債権に争いがあるような場合などを考えたときには,やはり手続的には,第三者異議という判決手続で決着を付けるべきではないかと思います。そういう意味では,ある意味,最後の手段の確保ということかも分かりませんけれども,二本立てというのは実務的には必要ではないかと思っています。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○松下委員 松下です。

  無剰余取消しに対する執行異議と第三者異議の訴え,あるいはそちらの方の執行停止との間に重複や矛盾があるのではないかという御指摘は,なるほどと思いました。ただ,だから配当要求一本にそろえるというのは,少し違和感があります。譲渡担保権者に第三者異議の訴えを認めるというのは,やはり私的実行の機会を保障するというところに多分大きな意味があるのではないかと思います。第三者異議の訴えを封じてしまって,要するに優先回収できればいいのでしょうという形で配当要求に一本化するというのは,担保権者の私的実行の機会を奪うという点で,適切ではないのではないかと考えました。

○道垣内部会長 剰余があるときには第三者異議が否定されるということは構わないのですか。

○松下委員 ええ,資料第2の2の(2)は,本文の方では担保権者の私的実行の利益を優先し,ただし書の方は差押債権者が剰余を手にする機会を保障するというバランスだと私は思っていますので,これはこれで構わないと思っています。

○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございます。

  お待たせいたしました。片山さん,御発言をお願いできますか。

○片山委員 すみません,度々,少し調子が悪いもので。

  この点なのですけれども,先ほど私が発言した内容とも関連しますが,制限物権的な構成か所有権的な構成かということで,所有権的な構成をするときに,どこまで排他的な担保としての効力を認めるかという問題で,その際に,バリエーションといいますか,両方の担保の規定を設けていただくということも御検討いただきたいというお話をさせていただいたのですけれども,そうしますと,仮に動産抵当のような制限担保型の担保ができるということになれば,当然3で配当要求一本ということになるのかと思いますけれども,他方,それと併せて,所有権担保を認めるということであれば,何のために所有権担保を認めるのかというと,正しく排他性ある担保を認めるためだということになりますと,第三者異議が言えるという1の立場を採ることになると思います。所有権的構成からしますと,そもそも設定者は使用収益権限しかないわけですから,何故その財産を設定者の債権者が差し押さえられるのだという基本に帰ると,そういう結論になるのではないかとは思うわけです。

  ただ,今回の改正では,新しい担保は1個しか設けないということになりますと,そこでは折衷的な構成にならざるを得ないということでしょうから,2ですか,剰余がない場合に限って第三者異議を提起することができて,剰余があれば配当要求のみという,二面的な結論を支持するということになるのかとも思いました。

  ただ,ここでやはり所有権的構成に基づく譲渡担保のメリットが何かという話になったときに,私自身は教壇にしか立っていないので,よく分からないところですけれども,実務における譲渡担保のメリットは,後順位の利害関係人の排除ができる点にあるという説明を教壇ではしております。後順位担保権者の担保権の設定の可否の問題もそうですし,ここの設定者の債権者の差押えとの関係もそうですけれども,それらを排除できるというところに譲渡担保の魅力があると実務家の方々はニーズとして捉えていらっしゃるのかとも思っておりました。

  ただ,他方,先ほどの本多委員の御発言ですけれども,金融機関としてもやはり後順位担保権は重要であって,その法律関係の明確化ということが重要な問題点となるのだという御発言もありましたので,その辺りについて実務的なニーズを捉えておられるのかというところを私としても確認しておきたいと思ったところです。というのは,近時,収益型担保や管理型担保といわれているABL等に関していいますと,これは専ら第一順位の担保権者が排他的な支配をして担保を独占して利害関係人を排除するからこそ成り立つ担保であるということが言われてきていて,そのとおりだな,そういった担保が必要だなと考えてきていたわけですけれども,必ずしもそういうことではないのか,それとも,あるいは,今議論しているのが個別動産の担保の話をしているからそういう議論になるのであって,また集合動産とかABLだと違う話になるのかというような疑問が素朴に出て参りました。もしここで確認ができるようでしたら,実務家の方々にその辺りのニーズをどう捉えていらっしゃるのかという点を是非伺わせていただければと思った次第です。よろしくお願いいたします。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  何かその点について御発言はございますでしょうか。

○本多委員 三井住友銀行の本多でございます。片山先生,御案内ありがとうございます。先生が御指摘のとおり,場合によっては単独のABLのレンダーが対象の動産なり債権なりを独占的に掴取するということがファイナンスの設計上,求められることもあると思います。一方で,動産や債権を引当てとさせていただいて,そこから生じる事業キャッシュフローについて,複数の与信者間において,優先劣後構造を設けた上で,最先順位者の取り分と後順位者としての取り分とに区分けした上でファイナンスを取り組む場合もあります。これは,ファイナンスの規模だったり,与信者の意向だったり,といった事情によりますが,与信者の意向に関していえば,最先順位のポジションを確保した上でファイナンスをしたいという与信者もいれば,優先関係では多少劣るかもしれないのだけれども,例えば利率がより大きくなるメザニンといわれるポジションでファイナンスをしたいという与信者もいますので,そういう与信者ごとに順位の考え方,それからファイナンスの設計に関する考え方が異なるというのは実務上,生じるところではございまして,こうした点に鑑みますと,後順位担保権の設定が許容される方がよいのではないかと考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。まっさらな状態でどのようなファイナンスのストラクチャーを作るかという場合と,実際に既に担保が設定されている後に出てくる債権者がどのようなニーズを有するのかというのは,また違う問題であり,また,そのニーズがあるということが,それが合理的だから認めるということに必ずしもつながらないということだろうとは思いますが,今は多分,まっさらな状態なところでストラクチャーを作るときにも後順位というのが必要であるという御発言ではなかったかと思います。

  ほかに,第三者異議等の問題につきまして,御意見はございますでしょうか。

○大塚関係官 先ほどの後順位担保権者との関係について,少し細かいことなのですけれども,2の(2)について,第三者異議ができる主体が担保権者となっているのですけれども,これだけ見ると,後順位担保権者も第三者異議の訴えが提起できると読むことができます。そうした場合,先順位担保権者が配当要求でよいと判断しているけれども,しかし後順位担保権が第三者異議ということをして,それが認められるという可能性は文言上は出てきそうな気はいたします。そのとき,この文言で行くかどうかというよりも,後順位担保権者にそういった権限を与えていいのかどうかということは議論,検討してもよろしいのではないかと思いました。これは,後に出てくる後順位担保権者による実行手続について,先順位担保権者がどういった請求ができるのかといった論点とも絡んでくる問題だと思います。

  それから,もう1点ですが,後順位担保権者がいる場合に,配当要求や第三者異議がされずに,買受人が現れたというとき,即時取得の成立可能性を担保権ごとに検討されるのでしょう,そういうことになるのかなと思いますけれども,そうすると,買受け後の法律関係がかなり複雑になってしまうおそれが,もしかしたらあるような気もいたしました,ということです。

○道垣内部会長 後半は差押えの関係の話ですか。

○大塚関係官 そうですね,差押え債権者,差押え手続がなされて,買受人が現れた場合に,買受人が即時取得できるかということですね。そのときに,先順位担保権については知っていたけれども,後順位担保権については善意無過失であったというような可能性は出てくると思うのです。

○道垣内部会長 それは,けれども,一般的な処分の場合も起こるわけですね。

○大塚関係官 そうですね,はい。

○道垣内部会長 大塚さんがおっしゃった問題は,後順位の権利者にどのような権利を与えるのかというのと,処分と差押えの関係で,担保権者ごとに話を考えるのかどうなのかという問題につながるのだろうと思います。

  ほかに何かございますでしょうか。

  大きな対立点としては,第三者異議を一定の場合には認めていいのではないかということと,無剰余措置で全てを処理すれば足りるのではないかということがあって,それに,更に最後,大塚さんがおっしゃったような後順位の問題,片山さん,本多さんがおっしゃった後順位の問題というのが絡んできて,どういうふうに考えるのかということがあろうかと思います。二読のときにはそれを更に詰めた形で検討をするということにさせていただきまして,次の問題に入ってもよろしいでしょうか。

  では,すみません,先を急ぐようで恐縮でございますけれども,部会資料2の第2の4についての議論に入りたいと思います。

  事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。

○寺畑関係官 14ページの「4 担保権者による処分」は,設定者の債務不履行前に担保権者側が目的物を処分することができるかどうかについてでございます。

 この論点は【案2.1.3.1】と【案2.1.3.2】のいずれかによって位置付けが変わってくるかと思います。【案2.1.3.2】のように新しく担保物権を作る場合,担保権者には所有権がないため,特段の規定を設けなくとも目的物を売ることはできないことになります。

 これに対して,【案2.1.3.1】の担保目的取引規律型を採る場合,担保権者は一応,所有権を取得しているので,目的物を処分することができるようにも思われます。しかし,これを認めるとすると,担保所有権と被担保債権が分離し法律関係が錯綜するため,設定者の債務不履行前には担保権者は目的物の処分権限を持たず,仮に処分をしたとしても無効であることを本文の(1)と(2)で提案しております。

 さらに,担保権者の債権者が目的物を差し押さえた場合にどうなるかということも問題となりますが,第三者異議の訴えに関する現行の民事執行法第38条の解釈によって対応できると考えられることから,本文の(3)では,これについて特段の規定を設けないことを提案しております。

 具体的には,債務不履行は設定者が被担保債権を弁済して目的物を受け戻す期待権が保護に値するとして第三者異議の訴えの提起を認める一方,債務不履行後には,そのような期待権は保護に値せず,第三者異議の訴えの提起を認めないということが民事執行法38条の解釈によって導かれると考えられます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  期待権という言葉は,またこれもドイツ法的にいろいろなことを含んでいますので,権という言葉を使ったのはどういう意味なのかが気になる方もいらっしゃるとは思いますが,聞かないようにしてください。余りそこは厳密には使っておりませんので。

  御自由に御議論いただければと思います。どなたからでも結構でございますので。

○阪口幹事 すみません,阪口です。4の,15ページの(注39)に関係するところについて,まず最初に確認をしたいと思っています。(注39)のところは,所有権留保のことを考えた場合にどうなるかということで,ここには,「他方,所有権留保売買においては,目的物の所有権のうち担保目的で留保された部分以外の部分は所有権留保買主に移転し,引渡しも完了しているため」と書かれていて,引渡しが完了して占有が完全に所有権留保買主に移っていることを前提にしているような記載になっています。しかし,差押えというのは担保権者側に占有がある局面のはずですから,ここの書き方は,いわゆる,占有改定で引き渡しているけれども担保権者に残っているというような局面を想定して書かれているのでしょうか。所有権留保という言葉の定義の問題かも分かりませんけれども,何らかの形で占有が移転し終わっていないと,もうそれは所有権留保と呼ばないという前提の記載のようにも読めます。

  一番単純な例としては,所有権留保特約付きで売買契約を結びました,まだ物も渡していません,占有改定も行っていません,さあ渡そうかなと思っているときに所有権留保売主の債権者が差押えしてきましたという,それがここで問題となる局面,つまり14ページの4の(3)ですね,担保所有権者の債権のために担保所有権の目的物が差し押さえられた場合を所有権留保に当てはめた場合というのは,むしろそういう,まだ何も渡していない局面での差押えを考えるように思ったのですけれども,ここでいう(注39)とか16,17ページの記載は,所有権留保というのは,一旦は完全に占有を渡し終わっていることを想定しているようにも読めて,ここら辺をどういうふうにお考えなのかをお教えいただけたらなというのが,まず質問です。

○道垣内部会長 何かありますでしょうか。笹井さんからお願いできますか。

○笹井幹事 ここは,引き渡していないと所有権留保とはいわないというような言葉遣いをしているわけではありませんで,売買契約において所有権,代金債務が完済されるまで所有権が買主に留保されるという場面を広く所有権留保といっております。確かに阪口先生がおっしゃったように,引き渡そうと思っていて,引き渡す前に差し押さえられたという場面ももちろんあるかもしれませんけれども,多くの場合,所有権留保の契約がされれば,もちろん多少のタイムラグがありますけれども,現実の占有が移転するということですので,そういう場面を念頭に置いて,ここは記載がされているということになります。おっしゃるように,その前に僅かなタイムラグのタイミングで差し押さえられたということであれば,(注39)の記載は妥当しないということになろうかと思いますので,その場合どういうふうに考えるのかというのはもう少し検討したいと思います。

○阪口幹事 ただ,担保権者の債権者による差押えや,(注39)が考えている担保権者による譲渡については,完全に所有権留保買主に行ったきりの局面と,直接占有が所有権留保売主に残っている局面,それが占有改定かどうかは別にしてですね,とは,かなり法律関係が違うように思われます。また,(注39)の後半に書かれている,担保所有権という統一概念で,譲渡担保権と同じようにしたらいいではないかという辺りの妥当性にもかなり差が出てくるようには思えたので,一定の局面ではこれでもいいことはあると思いますけれども,すべてがそこまで割り切れるのかなとは正直,思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。確かに少し言葉遣いが曖昧かもしれないと思うのは,ここにいう引渡しというのは何なのかということで,民法178条にいうところの引渡しを意味しているのか,物理的な意味にすぎない引渡しということで書いているのか,仮に所有権が移転していないということになりますと,178条にいう引渡しというのは存在し得ないとも考えられるわけであって,そこら辺も少し理論的に詰める必要があるかなとは確かに思います。ただ,誠に恐縮ではございますけれども,それらの問題をひとまず措きまして,担保権者の債権者が差し押さえられないということを前提にしていいかということで,それで一定の規律を置くかということについて御議論いただければと思います。所有権留保のときの現実の所在に応じて丁寧に考えなければいけないというのは,正にそのとおりだとは思いますけれども。

  ほかに何か御意見がございますでしょうか。

  本多さん,お願いします。

○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。今ほどの論点とはまた別のところになってしまうのですけれども,4の(2)のところ,(1)に反する譲渡は,その効力を有しないものとするということの意味なのですけれども,例えば譲渡担保を想定した場合の目的物について,担保権者が第三者に譲渡する,その譲渡行為につきまして,例えば,転譲渡担保のような処分行為の場合と,その目的物を所有権者として処分する場合とでは異なるのかなと思っております。この規律は基本的に後者の方を意味しているのだと思うのですが,転譲渡担保については許容される余地が残されているという理解でおります。その確認でございます。

○道垣内部会長 何かありますか。

○笹井幹事 はい,そこは御理解のとおりだと思います。

○道垣内部会長 残されているというのは,これが残るということを前提にした規律であるというわけではなくて,それをどう考えるのかということはまた別に考える,議論をしていくべき問題であるということだと思います。

○中村委員 中村でございます。担保所有権者の債権者が目的物を差し押さえた場合を想定した御説明がこちらにされているかと思いますが,非占有型の動産譲渡担保であれば設定者が動産を占有しているのが通常ですので,担保所有権者の債権者がその動産自体を差し押さえるということは通常は想定されないのではないかと思います。阪口弁護士がおっしゃられたように,動産の譲渡担保の設定者が当該動産を直接占有しているのか,あるいは担保権者の下にその動産があるのかというところで,差押えの仕方も違ってきますので,そこをきちんとそれぞれ分けた検討をしなければならないのではないかと思います。

  それで,御説明にある,動産の差押えがされる場合ということが,実際どのような場合があり得るかということを考えてみますと,既に弁済期が経過したとして担保所有権者がその動産の現実の引渡しを受けた場合か,あるいは設定者がその動産を第三者に占有させていて,その第三者において当該動産を提出したという場合が考えられるかと思いました。前者の場合には,設定者はその後,弁済をしても受け戻すことは認められないとすることで,もちろん差し支えないと思います。後者の場合は,弁済期前はなお設定者に所有権があるとして,第三者異議の訴えを提起することができると解するのも相当だと思います。ただ,それを譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者の解釈として導くとして,規定を置かないということについては,やや明確性を欠くのではないかと感じております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。特約で担保権者が占有を取得していたら,それは単純には担保権者が占有している状態というのが起きるわけですよね。そのときに,債権者というか担保権者が所有者ではないかというふうになると,その物件について差押えを排除するというのが難しくなるので,何らかの条文が必要だろうというのがここの趣旨であると思います。しかし,いずれにせよ,もう少し場面をきちんと分けて,所有権留保の場合も含めて検討して,それをまとめてみると単純なルールになるのかもしれませんけれども,もう少し丁寧に分解して考えなければいけないというのは,そのとおりかなと思います。

  ほかに何かございますでしょうか。藤澤さん,お願いします。

○藤澤幹事 すみません,この項目についての質問ということではないのですけれども,これまでの御議論に出てきましたように,担保所有権者による処分というのは考えづらい場面で,これに対して担保所有権設定者よる処分は頻繁に起こりそうな場面で,また,この後の物上代位の議論の前提となったりする問題のような気がするのですけれども,その項目がないのは何か理由があるのでしょうか。

○道垣内部会長 まだ書いていないだけだと思いますが,もしよろしければ,どうぞ。

○笹井幹事 書いていないといいますか,設定者による処分ということですので,どういう構成を採るのかにもよるかもしれませんけれども,設定者が,残った所有権といいますか,所有権設定者留保権のようなものを譲渡することができるかということですとか,あるいは重ねて担保権を設定することができるかというようなことが,先生がおっしゃるように,問題としては出てくるのだろうと思います。

  ただ,それを改めて条文として書く必要があるのかどうかということを少し検討したのですけれども,ここはいろいろ御議論があるかもしれないので,問題提起をした方がよかったのかもしれません。仮に担保物権を新たに設けるということになった場合には,今の抵当権に類似するわけですが,その場合に,設定者が残った所有権を譲渡することができると,その際に担保物権の負担付きの所有権を譲渡することができることとなります。あるいは,担保目的取引規律型と称しておりますけれども,所有権なのか財産権自体を担保目的で譲渡するということになった場合に,仮にここで理論的に設定者留保権という物権的なものが帰属しているとすると,設定者が自身に帰属している物権的な権利を譲渡することができること自体は,規定がなくてもよいのではないかということで,項目を設けていないということです。

 また,実行の箇所において,後順位,あるいは優先劣後する担保権が存在しているということが裏から規定されるということになりますので,そのような規定が設けられることになった場合には,そこから読み取るということもできるのかなということで,項目としては設けなかったということです。ただ,今後,規定の要否も含めて一度議論をした方がよいということでありましたら,その点も含めて一度検討させていただきたいと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございます。そういうふうな前提があるということですが,しかし,考えてみますと,片山さんが,担保価値維持のところで,かなり細かく分けて考えなければいけないとおっしゃったのですけれども,現行法のもとで譲渡担保設定している人が第三者に当該物件を占有移転したら駄目なのではないかと思うのです。債権者は実行がすごくやりにくくなりますよね。自分に物権が残っているというのと,それを処分できるのかというのは別問題であり,それが駄目だと考える余地は十分にあるような気がいたしますので,もう少し考える必要があろうかと思います。どうもありがとうございました。

○大塚関係官 一つコメントなのですけれども,資料15ページの22行目辺りから,被担保債権の債権者と担保所有権者との分離を認めることになって法律関係が錯綜するということを理由として,担保所有権の処分を禁ずるということが提案されておりますけれども,例えばセキュリティートラストのように,設定の段階では被担保債権の債権者と担保所有権者が分離するということが実務上,多くはないみたいですけれども,行われていると。この御提案は,それを禁ずるということが明文化されているわけではありませんが,しかし,その理由付けとして,そういった分離が余り望ましくない,そういうポジションを採るとすると,こういった担保所有権についてセキュリティートラストのような組み方をすることが解釈上否定されるという可能性は出てきてしまうのではないかと,無効にされるというリスクが生じると,セキュリティートラストのような組み方が実際上しづらくなってしまうのではないかという気がいたします。そうすると,こういった分離が望ましいのか,望ましくないのかという点を議論しておくということにも意味があるのではないかと思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。それは重要な点だろうと思います。

○井上委員 今の点なのですが,セキュリティートラストがやりにくくなるということがもしあるとすると,実務的には問題だというのはおっしゃるとおりだと思うのですけれども,セキュリティートラストですとか,あとは転担保の話も先ほど少し出ましたが,元々の被担保債権との結び付きがきちんとできている範囲であれば,形式的な担保権者と,被担保債権者とがずれても構わないと思うのですが,ここで恐らく事務局資料が法律関係が錯綜するといって危惧している点は,分離それ自体を全て駄目といっているというよりは,無関係にずれてしまうとまずいのではないかということかなと思いますので,その意味では悪影響はないと私は考えたいと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございます。その点は明らかにしなければ危ないのではないかという意見も,もちろんあろうかと思います。

○阿部幹事 私も井上先生と同じようなことを感じたのですけれども,例えば抵当権のように,通常は被担保債権の債権者と担保権者とが分離しないものであっても,被担保債権者と担保権者とを分離できる,というのがセキュリティートラストだと思います。その意味では,ここで書かれている担保所有権も他の担保権とそれほど変わらないのではないかと思いますので,ここで,被担保債権の債権者と担保所有権者の分離を認めることで法律関係が錯綜する,といったからといって,そのことから,この担保所有権のセキュリティートラストもできない,というのは,少し飛躍しているのではないかと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかにはいかがでしょうか。

  残り時間では,この資料の最後まで行くとはとても思えませんけれども,少しでも議論を進めておきまして,細かな点について,1か月置くことによって,皆さんがお考えくださるところもあろうかと思いますので,物上代位のところにつきまして御説明をいただきまして,それで少し議論をしたいと思います。5,6ではなくて,5だけということでお願いします。

○寺畑関係官 18ページの「5 物上代位」について御説明いたします。現在の譲渡担保の物上代位については,様々な御議論があるところですが,判例には売買代金債権や損害保険金請求権に物上代位権を行使することができるとしたものがあります。

  本文の(1)と(2)では,先取特権の物上代位に関する民法第304条と同様の規定を設ける形で物上代位を認め,その手続として差押えを必要とする旨を提案しております。本文の(3)は,物上代位を認めた上で,目的物の代償物が他の担保の目的財産となっていた場合の優劣について御議論いただきたいというものです。同様の問題は先取特権と抵当権についてもあり,それぞれ判例がございますが,そこで示された優劣の基準は先取特権と抵当権とで異なっており,いずれに倣った規定を設けるべきかの見解が分かれているため,抵当権型とするものを【案2.2.5.1】,先取特権型とするものを【案2.2.5.2】として,両論併記の形でお示ししております。

  また,諸外国の制度を参考として物上代位の範囲を拡大したり,手続を簡易化したりすることも考えられます。日本法においては,担保物権に共通する制度として物上代位制度が設けられていることから,この動産の非占有型の担保だけでなく,先取特権や抵当権などとも整合的に検討すべきところ,実務上の影響の大きさを考えると慎重に検討する必要があるかと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  5の(注)のところについて一言だけ説明をしておきますと,現在,新しい担保制度においてどのような対抗要件という制度を考えるかというのを議論はしていないわけです。仮にそこで,本日の前半で出ましたような統一的な登録制度,統一的でなくてもいいのですが,新たな登録制度を置くということになりますと,非占有型の動産担保についても,そういうふうな登録簿ないしは登記簿における公示というものがされているということになります。そうすると,(注)で,担保ファイリングがされているときのみ認めるという選択肢がとられることはないだろうと思うのです。この(注)が意味を有するのは,非占有型の動産担保制度については,少し佐久間さんがおっしゃった話ですけれども,占有改定で一応,対抗要件を具備することができることとし,しかし,いろいろな担保としての効力というものを是認してもらおうとするならば,一般的な対抗要件とは別個に,これは担保ですよという担保のファイリングという,担保登録みたいなものをするという制度を考えることができるのではないかというのを踏まえまして,対抗要件そのものは占有改定で大丈夫なのだけれども,そのときには担保ファイリングがないと物上代位ができないよということで,(注)があるのだろうと思います。混乱しそうなので,最初にこうではないかということを申しました。

  御自由に御議論いただければと思います。

○藤澤幹事 個別動産の売却代金に対する物上代位について,コメントというか質問があります。

  資料の中では,平成11年や平成29年の判例を参考にして,売却代金に対する物上代位を認めてもいいのではないかというようなことが書いてあったように理解したのですけれども,両方とも輸入の際の信用状取引に関係する判例で,譲渡担保権設定者に目的物の売却権限があるような場合,つまり譲渡担保権者が追及できない場合についての事例判断ではなかったかと記憶しております。このようなルールを一般化しても大丈夫なのかということが少し気になっています。また,平成11年や平成29年の判例の事案のような場合には,追及と物上代位とを併用するという問題が生じないので,難しい問題はないかと思うのですけれども,追及できる場面では少し面倒な問題が生じるのではないかと考えました。

  例えば,個別動産の担保所有権設定者が善意有過失の買主に物を売ったというような場合を考えてみたいと思います。先ほど質問したこととも関わるのですけれども,設定者が処分した場合には買主には設定者留保権が移転すると考えるとします。そうすると,完全な所有権を前提として売買代金が決まっていたような場合には,買主としてはやはり代金減額請求権を行使したいのではないかと考えられます。担保所有権者が売買代金を差し押さえたとしても,買主から代金減額の主張をされることがあり得て,そういう場合には担保権者と買主との間で減額をめぐって争うことになるのかという点が少し気になりました。それから,もし減額が認められた場合には,今度は目的物自体に対する担保権実行も認められないと,担保権者にとっては酷になるかなと思います。しかし,反対に代金減額請求権が行使されずに,担保権者が完全な所有権を前提とした売買代金全部を取り立てることに成功した場合には,担保目的物自体に対する実行は認めなくてもいいような気もするのです。このように,物上代位権の行使と追及効との関係をどう処理するか検討する必要がありそうです。ちなみに,アメリカでは,担保権者の保護になるから,両方取れていいではないかという考え方が採られているのですけれども,日本法でもそういう割り切りができるのでしょうか。

○道垣内部会長 ありがとうございます。抵当権でも何でも,売却のときの問題は複雑なのですが。

○佐久間委員 今,藤澤先生がおっしゃったことで気になることがございまして,設定者が処分した場合に即時取得が成立してしまうと,これはもう売買代金しか掛かっていくことができるものはないということになりますよね。そうであるところ,即時取得が成立しているかどうかなんていうのはすぐには分からないわけで,そうすると担保所有権者としては,即時取得が成立している場合に備えてといいますか,そういうことがあり得るので,売買代金債権に物上代位したいというニーズはあるのではないかと思うのです。差し押さえて,更に取立てまで行くということになれば,それはやはり,もし即時取得が成立しない場合であっても,譲渡担保権自体が消滅するという形で整理をすることの方がましなのではないかというふうに,お話を伺っていて,思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。ただ,抵当権の場合にも同じ問題があると思うのです。抵当権のところは仮に触らないで,ここについては触るということになると,動産のこういうシチュエーションの方がその問題が先鋭な形で生じるのであるということがいえないと,多分ここだけを触るということにはならないと思うのですが,その辺りはいかがなのでしょうか。

○佐久間委員 抵当権の場合は,一応,抵当権が公示されていて,所有権自体が移っても抵当権が,即時取得で消えるということはあるのですかね。私が心配しましたのは,動産の場合はそもそも即時取得されてしまうと譲渡担保権自体が飛んでしまうことになるという点で,僕,勘違いしているかな,何か違うのではないかと思ったのですけれども。

○道垣内部会長 その場合は違いますけれども,抵当権者が売買代金債権に物上代位権を行使したときに,それは抵当権の実行に当たって抵当権が消滅するというふうに,抵当権についても考えることが前提になるのでしょうか。しかし,それを根拠付ける条文はないわけですよね。

○佐久間委員 それはないですね。ないですが,被担保債権が全部回収されれば,少なくとも当然,抵当権もなくなるし,譲渡担保の方もそれでいいということになるのだろうと思うのですが,全額回収できなかったら,そこで,そうですね,先ほど申し上げたように,まだましかなと思ったということなので,これからもう少し私も考えます。

○道垣内部会長 すみません,誰にも答えられないような問題を佐久間さんに突っ込んでしまって,申し訳ございません。

  その点でも結構ですし,物上代位一般につきまして,更に御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。

○佐久間委員 たびたびすみません,賃料についても少し申し上げたいことがあります。まず債務不履行があった後の賃料については,取りあえずそれは物上代位の対象になり得るという前提を採った場合に,371条が根拠条文なのか,370条か304条かという,その議論があるということは踏まえつつも,371条が根拠条文だという考えが抵当権についてあったとしましても,担保所有権における物上代位について,371条と同じようなものなのだということが分かるような定め方というのは本当にできるのだろうかということが少し気になりました。何が言いたいかというと,仮に371条が抵当権の場合の賃料債権の物上代位の根拠だとしても,抵当権についても一応304条が準用されていて,賃料というのが入っているので,どちらか決めなくていいという形になっているのですね。そうだとすると,こちらもどちらか決めなくていいという形にする方が条文の作り方としては望ましいのではないか,すなわち,【 】のところはやはり入れておいた方がいいのではないかと私は思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに何かこの段階で御意見はございませんでしょうか。これは別にもうこういう感じでいいではないかということでしょうか。

  いろいろ本当は問題点が多分ありまして,(1),(2)に関しましては,そもそも物上代位というのが認められるのかという問題がございますけれども,(3)については,ある程度明らかにしなければならないだろうと,ルールが不明確だからということもあるのですけれども,抵当権先取特権等についてルールを明文化しないというときに,仮にそういうふうに仮定しまして,ここにいう非占有型の動産担保についてだけルールを明確化するというのが適当なのか,あるいは,それというのだったら,全体として民法304条についてルールを明確化しないとやはりおかしいのではないかとか,いろいろ御意見もあろうかと思うのですが,これはいかがでしょうか。

○水津幹事 座長が指摘された問題については,できればこの機会に,次のようにしたほうがよいのではないかと思います。すなわち,ここでいう非占有型の動産担保については,代位目的債権を目的とする担保との優劣関係のみならず,代位目的債権に対する差押えや代位目的債権の真正譲渡等との優劣関係についても,明確なルールを新たに設けることとする。他方,先取特権や抵当権等についても,これと同じように,代位目的債権を目的とする担保,代位目的債権に対する差押え,代位目的債権の真正譲渡等との優劣関係について,現行法の規定を改正して明確なルールを設けることとする。

○道垣内部会長 今,水津さんは,一般的な譲渡等も含めてとおっしゃったのですが,あるいは他の担保権との優劣ともあるのかもしれませんが,それ全体としてはどういうお考えでしょうか。それを譲渡などについても置く,そのときの内容で,それで抵当権についても置く,先取特権についても置くということになると,全体としてはどういう絵になるというお考えですか。

○水津幹事 判例法理を前提とするならば,動産先取特権と抵当権とで規定の内容を区別することとなるのではないかと思います。また,代替的物上代位と付加的物上代位とで規定の内容を区別すべきかどうかについても,検討する必要があるのではないでしょうか。

○道垣内部会長 分かりました。どうもすみません。

  ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいですか。大丈夫かな。

○井上委員 今の【案2.2.5.1】か【案2.2.5.2】かという観点なのですが,この点は【案2.2.5.1】というルールを採用する方がいいのではないかと私は考えています。その理由は,確かに今考えている担保権は,動産先取特権とは違って,追及効があるものを考えていますので,その点は抵当権に近いと思うのですけれども,ただ,もう一つ考えなければいけないのは,担保権がどの程度一般に公示されているかという点だと思っておりまして,その公示の程度を考えると,不動産登記による抵当権の周知度合いと比べて,今後動産担保についてどういう公示制度を作るかにもよりますけれども,なかなか抵当権と同じレベルの担保権の公示は難しいのではないかと感じるところがありますので,そうだとすると,担保権の設定によって,その後そこから発生する債権にまで権利が及んでいることを認めて,その債権自体を直接譲り受けたり,譲渡担保に取ったりしている人を負かせるといいますか,動産担保権について先に対抗力を備えれば勝たせるということには少し抵抗があります。

  ですので,そういう意味で不動産と違うルールを採用することになるとすると,それは何らかの形で明文化する必要があるのではないかというのは水津先生のおっしゃるとおりだと思っておりまして,その際に,それではやはり抵当権の方のルールも明文化するべきではないかということになりそうな気はしますが,どこまでどういうふうに規定を設ける必要があるかは少し措いて,【案2.2.5.1】と【案2.2.5.2】の間でどちらを採用すべきかと言えば,【案2.2.5.1】であり,そのためには,少なくともその点において明文化が必要なのではないかと思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

○佐久間委員 私は実務的な感覚はよく分からないので,井上さんが今おっしゃったことで大分自信がなくなったのですけれども,私は【案2.2.5.2】でもいいのかなと思っていました。というのは,動産先取特権の場合には,おっしゃったとおり公示が不十分というか,ないわけで,それに対してこちらも不十分,ないのに近いということだから,動産先取特権の場合と同じような並びで【案2.2.5.1】でどうかということはよく分かります。ただ,一応,動産先取特権の場合には,第三者に引渡しがされると先取特権自体がなくなるのだから,それとの関連も考慮してという理屈もあるとすると,動産担保所有権の場合は必ずしもそこは妥当しないし,ひょっとしたら担保ファイリングで,何でもすぐ分かりますということにはならないと思いますけれども,若干の公示というのはされるようになる可能性もあるということだとすると,【案2.2.5.2】でもいいのではないかと思っています。【案2.2.5.2】の方が絶対いいのだというほどではありませんが,それもあり得るのではないかと思っています。

  その上で,ここからは井上さんがおっしゃったのと同じか,よく似ていると思うのですが,【案2.2.5.2】を仮に採るといたしましても,やはりここはルールをはっきりさせて明文の規定を設ける方がいいと思っています。その上で,抵当権とか先取特権の場合について判例を基に明文の規定を起こすことにしてもいいとは思うのですが,仮にそれをしないとしても,どちらになるのか分からないということがこの場面では正に出てくるわけですから,抵当権と先取特権については判例法理に委ねておいた上でも,こちらはこうしますと,【案2.2.5.1】であれ,【案2.2.5.2】であれ,規定を設けることがすごく大事なのではないかと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

○本多委員 ありがとうございます。今ほど佐久間先生がおっしゃったことに関し,追及効や公示制度があるものとそういうものが全くないものとの間において差はありそうなのかなという感覚は持っておりまして,そういう意味では【案2.2.5.2】の方が議論の出発点になりそうなのかなと考えておりました。

  一方で,これは井上先生も,それから佐久間先生も同じく御指摘になっているとおりなのですけれども,占有改定の場合の公示力というのがどれほどなのかというのは,いろいろなところで疑問視をされているところではありまして,一方で占有改定でも立派な公示といえるかはともかく,これにより対抗要件は具備できるところではございまして,その辺りを実務的にもう少し考えていかないといけないのかなとは思っております。その延長線上に担保ファイリングの議論があると考えているところではございまして,それが,先ほど申し上げました二元的な制度設計になるということの妥当性も含めて,改めて実務に落としていった場合にどのような影響があるのか,というのも併せて検証していかなければならないとは考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。一言申しますと,公示というのと対抗要件というのは意味が違うと思うのです。つまり,占有改定も立派な公示である,というのはあり得ない考え方ではないかと思います。立派な対抗要件であるというのはあり得るのですけれども。公示力はないのだけれども,対抗要件として認められているのだからいいではないかという議論はあると思うのですが,立派な公示だというのが実務の感覚だと言われますと,それは実務の感覚がおかしいのではないかと私は思いますけれども。また,実務が,そういう感覚かどうかも私は疑問ですし。

○藤澤幹事 【案2.2.5.1】についてコメントさせていただきます。実務のことが全然分からないので,こんなことをいってよいか分からないのですけれども,もし私が債権者だったら,【案2.2.5.1】のルールの下ではすごく心配なので,債権についても担保を取っておくという行動に出るのかなと思いました。そのときに,目的物が滅失したときの保険金とか,第三者から壊されてしまった場合の損害賠償金とか,いろいろなものについてまとめて債権譲渡担保の対抗要件を取れるみたいな,債権譲渡担保の制度の方で少し使いやすくしないと不便になってしまうのではないかという感触を持ちました。

○道垣内部会長 藤澤さん,どうしてその人に便利にしてあげなければいけないのでしょうか。つまり,不便なのではないかというのは分かるわけですが,片方で個別の担保を取る人がいるかもしれないのですよね。前の動産についてした人にだけ,なぜそれほど便利にしてあげなければいけないと藤澤さんはお考えになったのでしょうか。

○藤澤幹事 代替的物上代位についてなのですけれども,担保目的物の滅失のリスクに備えるのは担保権者として当然の行動だと思うのですが,それができないということになると,担保の価値を低く見積もらざるを得なくなって,そのことは債務者にとっても金融の便宜を損なうことにつながるのかなと思いました。

○道垣内部会長 よく分かりました。つまり,やはり代償物に対して及ぶということの当然性の評価というのが前提にあるわけですよね,多分。それで大変よく分かりました。批判したつもりは全然ありません。

○井上委員 ありがとうございます。今の点ですが,正に私は同じことを考えていて,だから【案2.2.5.1】を採るべきではないかと思っておりました。担保を取る段階で,こういうルールが明確になれば当然,心配でしょうから,レンダーとしてはそこから派生する債権についても担保に取ることになり,そういう実務が広がると比較的安定した担保融資になると思うのですけれども,そういうことをせずに動産だけを担保に取り,そこから生ずる債権については何ら手を打たないでおいて,それでその後,動産についてどのぐらいの公示が今後できるようになるかは,先ほど申し上げたとおりですが,幾らか調べてもすぐにはよく分からないという状況で,債権自体を買ったり,譲渡担保に取ったりした方をむしろ保護する方がいいのではないかと考えました。

  その意味では,ルールが決まれば融資行動が変わるのではないかということも含めて,【案2.2.5.1】のようなルールを採った上で,動産の担保を取ったときに,それ以外について担保に取らない人をそれほど保護しなくてもいいのではないか,あるいは,動産の担保を取った後にそれを知らずに債権を譲り受けた人のことを考えてもいいのではないかということです。

○道垣内部会長 ありがとうございます。価値判断はいろいろ分かれるところかもしれませんし,さらには目的債権を目的財産とする担保というのを取った人の,目的債権の特定性の度合いですかね,つまり,将来誰かに売った売買代金債権は全部担保になりますよというふうに1個設定しておけば,その人が絶対勝つのかというと,それでいいのかなという気もするのですが,それを細かく分けていくと大変なことになりそうなので,難しいところかもしれません。

○片山委員 どうもありがとうございます。今の【案2.2.5.1】と【案2.2.5.2】の話と関連するのですけれども,立法する際に類型論がどこまで可能かという点はございますが,物上代位に関しては,代替的物上代位と付加的物上代位の類型論はかなり定着をしておりまして,代替的物上代位の場合についていうと,本来的には抵当権が及んでいないものについて,物上代位によって抵当権を及ぼすというものなのでしょうが,付加的物上代位の場合は賃料債権への物上代位が基本的に念頭に置かれていて,これをどう捉えるかは別としまして,一つの学説ですと371条で果実に抵当権の効力が及ぶということを前提とした上で初めて認められる付加的物上代位だということになります。

  そうしますと,【案2.2.5.2】ルールですね,いわゆる登記時基準ルールというのは,基本的には賃料債権の物上代位に関する判例を基本として出てきたもので,それについては本来的に抵当権の効力が及んでおり,そのことが公示されているというのが理屈になっていたのだと思います。しかし,その他の代替的物上代位に関しては,本来的に担保権の効力が及んでいない,そういうものについて物上代位をしていくのだから,やはり差押え基準になるべきだと私自身は考えております。一般的には,類型論を前提とした立法は難しいとは思いますけれども,少なくとも371条に引っ掛ければ類型論も何とか可能ということになろうかと思いますので,371条に類する規定を設けるということであれば,いわゆる賃料等については【案2.2.5.2】ルール,その他の代替的物上代位については【案2.2.5.1】ルールというような考え方もできるのではないかと私自身は考えているところでございます。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  もう一方ぐらい今日のうちにいただいてもいいかと思いますが,いかがでしょうか。

○水津幹事 片山委員から,付加的物上代位については,【案2.2.5.2】ルールによる一方,代替的物上代位については,【案2.2.5.1】ルールによるという意見が出されました。しかし,類型論をとるのであれば,これと逆のルールとすることも考えられます。すなわち,付加的物上代位では,担保権者は,元の財産について担保権の実行をすることができます。そのため,この意味では,物上代位は,担保権者にとって文字どおり付加的なものです。これに対し,代替的物上代位では,担保権者は,元の財産について担保権の実行をすることができません。そのため,この場合には,担保権者は,物上代位によるほかありません。このことに着目すれば,付加的物上代位については,【案2.2.5.1】ルールによる一方,代替的物上代位については,【案2.2.5.2】ルールによることとなりそうです。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  物上代位に関しましては,私の個人的な考え方かもしれませんけれども,今の範囲で議論を終結させるというわけにはいかないような気がいたします。藤澤さんだったと思いますが,処分権限の問題を明らかにしないままに,実は(1)の問題は語れないのではないか,そもそも売却することができるのかとか,できないのか,売却したときにどういうふうなルールになるのかという,善意無過失という話が出たりしましたけれども,そういうのが決まらないうちに本当は(1)の問題は分からないのではないかという話も早い時期に出ていたところだと思います。そういった観点からの整理も必要だと思います。もちろん1回で全ての整理が済むわけではありませんし,そういった処分に関しましては今後詰めていって,それとの関係でまた5の1に戻るということも必要かとも思いますけれども,もう少し皆さんが考える問題点ないしは考えるべき点だと思われる点につきまして,御意見が伺えればと思います。また,本日用意していただきました資料のうちの6については,まだ一切やっていないという状況にあります。しかし,時間が参りましたので,本日は5の途中まで行ったと考えて,5と6は次回,続けてやるとともに,次回はまた次回で御議論いただくべき点は多々あろうかと思いますけれども,時間でございますので,この辺りにさせていただければと思いますが,よろしいでしょうか。

  本日の段階で何か特に御発言というものがありましたら,お願いしたいと思いますが,よろしいですか,次回続けてということで。

 それでは,本日の審議はこの程度にさせていただくことにいたしまして,次回の議事日程等につきまして,事務当局から説明をしていただきます。

○笹井幹事 本日もありがとうございました。

 次回日程ですけれども,6月8日火曜日,時間は同じく午後1時30分から午後5時30分までとなっております。

○道垣内部会長 それでは,法制審議会担保法制部会の第2回会議を閉会にさせていただきます。

  どうも熱心な御議論をありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

-了-

⽂字情報基盤のIPAmj明朝フォント

文字情報技術促進協議会

IPAmj明朝フォント・・・人名の表記等で、細かな字形の差異を特別に使い分ける必要のある業務等での活用を想定したフォントです。また、同フォントを十分に活用するためには、対応したアプリケーションソフトが必要となります。通常の文書作成等では、JIS X 0213:2012に準拠したIPAexフォントのご利用をお勧めします。

・なぜ必要か。

現在、行政手続について使うことが可能な文字が異なる。

戸籍に使える文字・・・戸籍統一文字

https://houmukyoku.moj.go.jp/KOSEKIMOJIDB/M01.html

登記に使える文字・・・戸籍統一文字に加えて、記号などが入る。

https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/cautions/kankyo/charaset.html

 

JIS第1及び第2水準のほか,以下の文字が使用できます(以下に代表的なものを例示)。不動産登記関係手続においては,「①②③④」が使用できます。

各種記号 ※    !”#$%&’()

英数字 ※        ABCDEFGH123456

かな      あいうえおかきくけこ

カナ      アイウエオカキクケコ

囲み文字(不動産関係手続のみ)          ①②③④

※ 全角及び半角が使用できます。

※ 申請用総合ソフトの漢字検索機能により,不動産登記,商業・法人登記手続においては全ての登記統一文字を,成年後見登記手続においては戸籍統一文字を入力することができます。

使用できない文字について

 登記・供託オンライン申請システムにおいては,JIS第3及び第4水準の文字は,使用できません。

 また,上記以外の文字についても,登記・供託オンライン申請システムにおいて正しく取り扱うことができない文字等(以下に代表的なものを例示)が入力されていた場合には,情報ダイアログが表示されることがありますので,漢字検索機能を使用して入力するか,代替文字を入力して下さい。

※ 登記・供託オンライン申請システムにおいて正しく取り扱うことができない文字の例

※ 動産譲渡登記関係手続において使用することができない文字については,「動産譲渡登記 オンライン申請データ仕様」及び「動産譲渡登記 オンライン証明書請求データ仕様」を参照してください。

※ 債権譲渡登記関係手続において使用することができない文字については,「債権譲渡登記 オンライン申請データ仕様」及び「債権譲渡登記 オンライン証明書請求データ仕様」を参照してください。

・今後の方針

政府CIOポータル

https://cio.go.jp/node/2708

文字情報基盤の民間移行 2020.8.26

 氏名、法人名、土地等を表記するのに、一般のコンピュータでは扱うことが難しい外字を用いることがありますが、それにより、行政システムの相互運用性が損なわれるのはもちろんのこと、開発や運営のコストが上がり、更には、民間との情報交換においても多くの問題が生じてきました。情報システムの基本である文字およびそのコードにおいて相互運用が担保されていないのは日本だけでしたが、2011年から進めてきたコンピュータ上の文字の統一プロジェクトである文字情報基盤事業が完了し、健全なIT活用が促進される基盤が整いました。日本の情報システム環境の整備において、文字情報基盤整備事業の果たした役割は非常に大きいと評価されています。

 今後、戸籍連携システム、自治体情報システム(住民記録システム・印鑑登録システム・固定資産税システム等)、不動産ID等との連携を行うために、文字が統一されているか、一旦コード(英数字の列など)に入れ替えて、表示する必要が出てくる。

文字情報基盤を入れてみる。

ダウンロード


ipamjm.tffファイルをインストール



ワードでは表示されました。他のソフトで試してみます。NotionをGoogleクロームででは表示されませんでした。

https://extns.notion.site/Npedia-9851b488b96846c3b04c691cd3419326

eKYC

本人確認手段としての eKYC と今後の発展

日本電気株式会社 シニアエキスパート デジタルアイデンティティWG リーダー宮川 晃一

https://www.jnsa.org/jnsapress/vol48/JNSA_Press_No48.pdf

顧客の受け入れに対して明確な方針と手続きを持ち、それらの方針と手続きに沿って新規に顧客が口座開設を行う際はその顧客がどんな人物なのか、十分な身元確認を行う業務を一般的にKYC(Know Your Customer)と呼ぶ。eKYCは、オンラインによる非対面本人確認

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027

(定義)第二条8 この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第七条第一項及び第二項、第八条並びに第四十八条並びに附則第三条第一項から第三項まで及び第五項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

別表第一(第九条関係)

UDID・・・UniversallyUnique Identifierの略で、アプリごとに使用40文字の英数字コード。識別子。

IMEI・・・携帯電話機の製造番号

ソルト・・・パスワードを暗号化する際に付与されるデータ。

 例えばメールアドレスとパスワードでアカウント登録を要求されるようなサービスにおいて、メールアドレスをSaltに含め、パスワードをハッシュ化して保存するといった使い方をします。パスワードを捨ててパスワードハッシュを保存し、さらに保存されたハッシュは非可逆でパスワードを復元できないことが重要となります。もしサーバーのrootに第三者が侵入したとしてもパスワードの漏洩を防げるからです。

 また、この方法は総当り攻撃を阻止することを意図していて、攻撃が意図的に遅くなるように設計されているのが特徴で、ストレッチング(1000回ハッシュ計算を繰り返して計算に時間がかかるようにする)という方法と併せてよく使用されます。そのため、Saltは秘密であることを重要視していないですが、いくつかの条件があります。

・ユーザーごとに異なるSaltであること (漏洩時のリスクを最小限にする為)

・ある程度の長さを確保すること (推測されにくくする為)

事業者が匿名加工情報の具体的な作成方法を検討するにあたっての参考資料

(「匿名加工情報作成マニュアル」)Ver1.0平成28年8月経済産業省

ハッシュ化・・・暗号化とは異なり、入力値から誰でも計算できる種類の処理である。不可逆的な(一方向の)変換ではあるが、識別可能な値を生成する。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/privacy/downloadfiles/tokumeikakou.pdf

HMAC・・・メッセージ認証符号の一つであり、鍵(メッセージ認証符号のことです)とデータとハッシュ関数を元に計算されたハッシュ値を持つ。

認証と改竄検出のために使われるアルゴリズムで、HMACにより算出された値をMAC (Message Authentication Code) 値。

HMACは基本的に暗号チェックサムであり、攻撃者がメッセージを改竄したことを検出するために使用。鍵は秘密である必要があり、可能な限り高速となるように設計されている。

電子証明書を使う際に必要となる暗証番号・・・署名用電子証明書については6桁~16桁の英数字、利用者証明用電子証明書は4桁の数字を設定

https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kojinninshou-01.html

署名用暗証番号・・・?

署名用パスワード・・・6~16桁の英数字のパスワード。インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用

(例)特別定額給付金(10万円)の申請、e-Tax等の電子申請、銀行口座開設、不動産取引(住宅ローン)

https://www.kojinbango-card.go.jp/jpki/

第5回インフラ海外展開懇談会

https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/infura_kaigaitenkai/005.html

日本で唯一の次世代デジタルIDアプリ「xID」

xID株式会社2020年10月2日

5. マイナンバーカード読み取り、署名用電子証明書を読み取り

「何に対して」(どんな内容の文書(電磁的記録)に対して)署名しようとしているのか。

8. 公的個人認証

社会保障・税番号大綱―主権者たる国民の視点に立った番号制度の構築―政府・与党社会保障改革検討本部2011/06/30

https://www.soumu.go.jp/main_content/000141660.pdf

P34(注2)「番号」を一定の関数、手順等を用いて変換することで(複数回にわたって変換することを含む。)、新たに符号を生成した場合であって、生成した符号が「番号」と一対一に対応する関係にあるときは、生成した符号についても、「番号」に該当することとする。

xID株式会社

2021.9.24 ソーシャルメディア等で頂いているxIDアプリに関するご意見について

https://xid.inc/home

現在開発中で年内リリース予定の次期バージョンでは個人番号入力を伴う手順を廃止するよう進めております。

高木浩光@自宅の日記 ID番号は秘密ではない。秘密でないが隠すのが望ましい。なぜか。2012年03月03日

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20120303.html

ID番号は秘密にすべき情報ではない。他人に知られるとなりすましの被害に遭う番号ではない。そのように社会の側が構成されているべきである。しかし、ID番号が目的外で使用されたり、事業者をまたがって広範に共通して用いられる場合には、プライバシーの問題が生じてくる。そのため、消費者は、安易にID番号を提供することは避けるよう注意した方がいい。

我々が、ネットに自分のID番号を含む写真やログデータなどを掲載するときは、ID番号部分を隠す処置を施すことが多い。例えば、MACアドレスやUDID、IMEIを含むデータを掲載する場合などだ。実際のところこの処置は必須ではないのだが、たいていそうしている。そうする理由は、(1)万が一どこかにそのID番号でなりすましを許してしまう欠陥サービスがあった場合に備えた、念のための警戒として、(2)万が一どこかでそのID番号でトラッキングされている場合に、それが自分だとバレないようにするため、この2点である。

特に、他人のID番号を掲載する場合は、隠す処置を施すのは必須であろう。どこかで、そのID番号が誰のものであるか知っている者(本人以外の)がいる可能性があるからだ。

符号・・・?

電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0000000153

(署名用電子証明書又は利用者証明用電子証明書の発行の番号の利用制限等)

第六十三条 機構、署名検証者等、署名確認者又は利用者証明検証者以外の者は、何人も、業として、署名用電子証明書の発行の番号又は利用者証明用電子証明書の発行の番号の記録されたデータベース(自己以外の者に係る署名用電子証明書の発行の番号又は利用者証明用電子証明書の発行の番号を含む当該自己以外の者に関する情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。以下この項において同じ。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているものを構成してはならない。

2 総務大臣は、前項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復して同項の規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、当該行為を中止することを勧告し、又は当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずることを勧告することができる。

3 総務大臣は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、当該勧告に従うべきことを命ずることができる。

署名用電子証明書の発行の番号・・・?

利用者証明用電子証明書の発行の番号・・・?

利用者証明用電子証明書のシリアル番号・・・利用者証明用電子証明書には、基本4情報(氏名、住所、性別及び生年月日)は登録されていませんが、 シリアル番号、有効期限等が記録。一般的にシリアル番号とは、製品などを一つ一つの個体として識別するために割り当てられる固有の番号。

https://www.e-tax.nta.go.jp/kojin/mycd_login.htm

暗号論的ハッシュ関数・・・?

ITをめぐる法律問題について考える 弁護士水町雅子のIT情報法ブログ

eKYCの犯収法上の確認要件を振り返る

犯罪による収益の移転防止に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000022

第二章 特定事業者による措置

(取引時確認等)第四条

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(顧客等の本人特定事項の確認方法)

第六条 法第四条第一項に規定する主務省令で定める方法のうち同項第一号に掲げる事項に係るものは、次の各号に掲げる顧客等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める方法とする。

一 自然人である顧客等(次号に掲げる者を除く。) 次に掲げる方法のいずれか

イ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類(次条に規定する書類をいう。以下同じ。)のうち同条第一号又は第四号に定めるもの(同条第一号ハからホまでに掲げるものを除く。以下「写真付き本人確認書類」という。)の提示(同条第一号ロに掲げる書類(一を限り発行又は発給されたものを除く。ロ及びハにおいて同じ。)の代表者等からの提示を除く。)を受ける方法

6条1号イは、写真付き本人確認書類の提示を受ける方法(対面)

ロ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類(次条第一号イに掲げるものを除く。)の提示(同号ロに掲げる書類の提示にあっては、当該書類の代表者等からの提示に限る。)を受けるとともに、当該本人確認書類に記載されている当該顧客等の住居に宛てて、預金通帳その他の当該顧客等との取引に係る文書(以下「取引関係文書」という。)を書留郵便若しくはその取扱いにおいて引受け及び配達の記録をする郵便又はこれらに準ずるもの(以下「書留郵便等」という。)により、その取扱いにおいて転送をしない郵便物又はこれに準ずるもの(以下「転送不要郵便物等」という。)として送付する方法

6条1号ロは、本人確認書類の提示&書留郵便等で転送不要郵便物等として送付する方法(対面後郵送)

ハ 当該顧客等若しくはその代表者等から当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号ハに掲げるもののいずれか二の書類の提示を受ける方法又は同号ハに掲げる書類及び同号ロ、ニ若しくはホに掲げる書類若しくは当該顧客等の現在の住居の記載がある補完書類(次項に規定する補完書類をいう。ニ及びリにおいて同じ。)の提示(同号ロに掲げる書類の提示にあっては、当該書類の代表者等からの提示に限る。)を受ける方法

6条1号ハは、保険証等2種類の本人確認書類等の提示を受けるの方法(対面)

ニ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号ハに掲げるものの提示を受け、かつ、当該本人確認書類以外の本人確認書類若しくは当該顧客等の現在の住居の記載がある補完書類又はその写しの送付を受ける方法

6条1号二は、保険証等の本人確認書類の提示&他の本人確認書類等の写しの送付(対面・郵送)

通常の対面確認の方法も、犯収法施行規則6条で定められています。6条1号ホへトチヲワカが、オンラインと関係ありますね。

以下は、金融庁のPDF図です。6条1号ホへトしか図には出ていませんが、チはオンライン+郵送なので、図から割愛されたのでしょう、ヲワカは電子署名だから割愛されたんですかね。。。

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/01.pdf

ホ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受ける方法

6条1号ホ「本人確認書類の画像送信+本人の容貌の画像送信」

金融機関等(特定事業者)が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報の送信を受ける方法です。

そのソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものでなければなりません。

ヘ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌の画像情報をいう。)の送信を受けるとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の写真付き本人確認書類(氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路(半導体集積回路の回路配置に関する法律(昭和六十年法律第四十三号)第二条第一項に規定する半導体集積回路をいう。以下同じ。)が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報の送信を受ける方法

6条1号ヘ「ICチップ情報+本人の容貌の画像送信」

金融機関等(特定事業者)が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報と、ICチップの情報の送信を受ける方法です。

ICチップ情報は、写真付き本人確認書類(氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれたもので、具体的にはマイナンバーカードやIC免許証、IC在留カード等とのことです。

ト 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号又は第四号に定めるもの(同条第一号ニ及びホに掲げるものを除き、一を限り発行又は発給されたものに限る。以下トにおいて単に「本人確認書類」という。)の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受け、又は当該顧客等若しくはその代表者等に当該ソフトウェアを使用して読み取りをさせた当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報の送信を受けるとともに、次に掲げる行為のいずれかを行う方法(取引の相手方が次の⑴又は⑵に規定する氏名、住居及び生年月日の確認に係る顧客等になりすましている疑いがある取引又は当該確認が行われた際に氏名、住居及び生年月日を偽っていた疑いがある顧客等(その代表者等が氏名、住居及び生年月日を偽っていた疑いがある顧客等を含む。)との間における取引を行う場合を除く。)

(1) 他の特定事業者が令第七条第一項第一号イに掲げる取引又は同項第三号に定める取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、当該確認に係る確認記録を保存し、かつ、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等しか知り得ない事項その他の当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告を受けることにより当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを確認していることを確認すること。

(2) 当該顧客等の預金又は貯金口座(当該預金又は貯金口座に係る令第七条第一項第一号イに掲げる取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、かつ、当該確認に係る確認記録を保存しているものに限る。)に金銭の振込みを行うとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該振込みを特定するために必要な事項が記載された預貯金通帳の写し又はこれに準ずるものの送付を受けること。

6条1号ト(1)「銀行等への照会」

これを使える事業者が限られそうなので、説明割愛

6条1号ト(2)「少額振込」

これを使える事業者が限られそうなので、説明割愛

チ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類のうち次条第一号若しくは第四号に定めるもの(以下チ並びにリ及びヌにおいて単に「本人確認書類」という。)の送付を受け、又は当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた半導体集積回路に記録された当該情報若しくは本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に特定事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類(次条第一号イからハまでに掲げるもののうち一を限り発行又は発給されたものに限る。)の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信(当該本人確認用画像情報にあっては、当該ソフトウェアを使用した送信に限る。)を受けるとともに、当該本人確認書類に記載され、又は当該情報に記録されている当該顧客等の住居に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

6条1号チ「本人確認書類又はICチップ情報若しくは画像情報の送信+書留郵便等により転送不要郵便物等として送付」

①ー1本人確認書類の送付を受ける

①ー2又は当該顧客等の本人確認書類(氏名、住居及び生年月日の情報が記録されている半導体集積回路が組み込まれたものに限る。)に組み込まれたICチップ情報

①ー3若しくは本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に特定事業者が提供するソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の本人確認書類の画像情報であって、当該本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日並びに当該本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受けるとともに、

②住居に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

リ 当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の現在の住居の記載がある本人確認書類のいずれか二の書類の写しの送付を受け、又は当該顧客等の本人確認書類の写し及び当該顧客等の現在の住居の記載がある補完書類(次項第三号に掲げる書類にあっては、当該顧客等と同居する者のものを含み、当該本人確認書類に当該顧客等の現在の住居の記載がないときは、当該補完書類及び他の補完書類(当該顧客等のものに限る。)とする。)若しくはその写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類の写し又は当該補完書類若しくはその写しに記載されている当該顧客等の住居(当該本人確認書類の写しに当該顧客等の現在の住居の記載がない場合にあっては、当該補完書類又はその写しに記載されている当該顧客等の住居)に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

ヌ 次の(1)若しくは(2)に掲げる取引又は当該顧客等との間で(2)に掲げる取引と同時に若しくは連続して行われる令第七条第一項ム若しくはヰに掲げる取引を行う際に当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の本人確認書類の写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類の写しに記載されている当該顧客等の住居に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

(1) 令第七条第一項第一号イに掲げる取引のうち、法人(特定事業者との間で行われた取引の態様その他の事情を勘案してその行う取引が犯罪による収益の移転の危険性の程度が低いと認められる法人に限る。)の被用者との間で行うもの(当該法人の本店等又は営業所に電話をかけることその他これに類する方法により給与その他の当該法人が当該被用者に支払う金銭の振込みを受ける預金又は貯金口座に係るものであることが確認できるものに限る。)

(2) 令第七条第一項第一号リに掲げる取引(特定事業者が行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十四条第一項の規定により当該顧客等から同法第二条第五項に規定する個人番号の提供を受けている場合に限る。)

ル その取扱いにおいて名宛人本人若しくは差出人の指定した名宛人に代わって受け取ることができる者に限り交付する郵便又はこれに準ずるもの(特定事業者に代わって住居を確認し、写真付き本人確認書類の提示を受け、並びに第二十条第一項第一号、第三号(括弧書を除く。)及び第十七号に掲げる事項を当該特定事業者に伝達する措置がとられているものに限る。)により、当該顧客等に対して、取引関係文書を送付する方法

ヲ 当該顧客等から、電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号。以下この項において「電子署名法」という。)第四条第一項に規定する認定を受けた者が発行し、かつ、その認定に係る業務の用に供する電子証明書(当該顧客等の氏名、住居及び生年月日の記録のあるものに限る。)及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

6条1号ヲ「電子署名」

電子署名法第四条第一項に規定する認定を受けた者が発行し、かつ、その認定に係る業務の用に供する電子証明書及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

ワ 当該顧客等から、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号。以下この号において「公的個人認証法」という。)第三条第六項の規定に基づき地方公共団体情報システム機構が発行した署名用電子証明書及び当該署名用電子証明書により確認される公的個人認証法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法(特定事業者が公的個人認証法第十七条第四項に規定する署名検証者である場合に限る。)

6条1号ワ「電子署名」

公的個人認証法第三条第六項の規定に基づき地方公共団体情報システム機構が発行した署名用電子証明書及び当該署名用電子証明書により確認される公的個人認証法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法(特定事業者が公的個人認証法第十七条第四項に規定する署名検証者である場合に限る。)

カ 当該顧客等から、公的個人認証法第十七条第一項第五号に掲げる内閣総理大臣及び総務大臣の認定を受けた者であって、同条第四項に規定する署名検証者である者が発行し、かつ、当該認定を受けた者が行う特定認証業務(電子署名法第二条第三項に規定する特定認証業務をいう。)の用に供する電子証明書(当該顧客等の氏名、住居及び生年月日の記録のあるものに限り、当該顧客等に係る利用者(電子署名法第二条第二項に規定する利用者をいう。)の真偽の確認が、電子署名及び認証業務に関する法律施行規則(平成十三年総務省・法務省・経済産業省令第二号)第五条第一項各号に掲げる方法により行われて発行されるものに限る。)及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

二 法第四条第一項第一号に規定する外国人である顧客等(第八条第一項第一号に掲げる特定取引等に係る者に限る。) 当該顧客等から旅券等(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号に掲げる旅券又は同条第六号に掲げる乗員手帳をいい、当該顧客等の氏名及び生年月日の記載があるものに限る。)であって、第八条第一項第一号に定める事項の記載があるもの又は同法第十四条の二第四項に規定する船舶観光上陸許可書(その交付に際して当該交付を受ける者の同法第二条第五号に掲げる旅券の写しが貼り付けられたものに限る。次条第一号イ及び第三号において単に「船舶観光上陸許可書」という。)の提示を受ける方法

三 法人である顧客等 次に掲げる方法のいずれか

イ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号又は第四号に定めるものの提示を受ける方法

ロ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受け、かつ、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成十一年法律第二百二十六号)第三条第二項に規定する指定法人から登記情報(同法第二条第一項に規定する登記情報をいう。以下同じ。)の送信を受ける方法(当該法人の代表者等(当該顧客等を代表する権限を有する役員として登記されていない法人の代表者等に限る。)と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)

ハ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受けるとともに、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第三十九条第四項の規定により公表されている当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地(以下「公表事項」という。)を確認する方法(当該法人の代表者等と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)

ニ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号若しくは第四号に定めるもの又はその写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類又はその写しに記載されている当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

ホ 当該法人の代表者等から、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第十二条の二第一項及び第三項の規定に基づき登記官が作成した電子証明書並びに当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

6条1号カ「電子署名」

公的個人認証法第十七条第一項第五号に掲げる総務大臣の認定を受けた者であって、同条第四項に規定する署名検証者である者が発行し、かつ、当該認定を受けた者が行う特定認証業務の用に供する電子証明書及び当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方

 

難しいです。

 犯罪による収益の移転防止に関する法律4条1項、同法施行規則6条の要件を満たす場合、同法令の範囲内の本人確認の方法として有効となる。

 司法書士法関連法令と司法書士会の会則・規定による本人確認は、本人確認が必要な場面と、犯罪による収益移転防止法関連法令より少し細かな記載(日本司法書士会連合会、司法書士執務調査室執務部会「司法書士にとっての犯罪収益移転防止法Q&A」令和2年8月など。)。

 個人情報保護法とその関連法令、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律とその関連法令は、本人確認を行う相手の権利を不必要に奪わないように定められている、という理解で良いのか。

 

デジタル化と司法書士

令和3年9月4日九州ブロック司法書士会協議会令和3年度会員研修会

政府の進めるIT戦略と司法書士業務に与える影響~ポストコロナの時代で加速するDXへの対応

「使命」「オンライン利用促進」「書面・対面・押印の見直し」「裁判IT」「ODR」「相談センターのIT化」など

日本司法書士会連合会 会長 小澤吉徳

はじめに

•令和は、司法書士法に「使命規定」が明記された記念すべき時代•すべての業務は国民の権利擁護と自由かつ公正な社会の実現のために法改正の理由近時の司法書士制度及び土地家屋調査士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ、司法書士及び土地家屋調査士について、それぞれ、その専門職者としての使命を明らかにする規定を設けるとともに、懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改める等の懲戒手続に関する規定の見直しを行うほか、社員が一人の司法書士法人及び土地家屋調査士法人の設立を可能とする等の措置を講ずる必要がある。

取り巻く状況の大きな変化とは?

 近年の司法書士・土地家屋調査士を取り巻く状況の大きな変化として指摘されているのは、例えば、(1)簡易裁判所における訴訟代理や成年後見・財産管理業務への司法書士の関与が大幅に増加であり、(2)ADR手続における代理や登記所備付地図の作成等の分野において,土地家屋調査士の活躍の場が拡大していることであり、(3)空家問題・所有者不明土地問題への対応,自然災害における復興支援等に,それぞれ専門家として参画していること。

3つの課題

 上記の状況の変化、すなわち、業務範囲の拡大や活動範囲の広域化に伴い,司法書士・土地家屋調査士の制度について,

  • 専門家としての使命を明確にする必要(使命の明確化)、現状に即して,懲戒手続をより合理化する必要(懲戒手続の適正・合理化)、一人法人を認めることによる多様なニーズへの対応が必要(一人法人の可能化)、という3つの課題に対応する必要がある。

使命の明確化

 司法書士は、司法書士法の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすることを明らかにすること(第1条関係)とされ、この規律を司法書士法人に準用すること(第46条第1項関係)とされた。

使命規定の意義

不動産登記、商業登記、裁判所提出書類作成、簡裁訴訟代理、債務整理、成年後見、遺産承継、民事信託など、多様な業務の根底にあるもの?

全ての業務に通底するもの、自由かつ公正な社会とは?

 「自由で公正な社会とは,様々な考え方を持ち,多様な生き方を求め る人々が,お互いの存在を承認し,多様な考え方や生き方を尊重しながら共に協力して生きていくことのできる社会である。 法は 本来このような共生のための相互尊重のルールとして 国民の権利を守り また,国民の責務を明確にすることによって,各人の自律的な活動を 促進し,その生活をより豊かにするものであって,ただ単に国民を規制するだけのものではない。また,司法とは,すべての当事者を平等・対等の地位に置く公正な手続を通じて,法に基づく権利の救済を図り,ルール違反に対処することにより,法秩序の維持・形成を図るものである。」

法教育委員会の見解

司法書士という用語 行政改革・司法改革のようなレベルを凌駕する旗印

・中央省庁等改革基本法

・司法制度改革推進法

・法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律

・総合法律支援法

の4つの法律にしか使われていない。

(司法書士法改正記念誌 日本司法書士会連合会顧問 寺田逸郎氏の講演録から)

平成31年4月11日参議院法務委員会における大臣の答弁①

○国務大臣(山下貴司君) 全国青年司法書士協議会における人権擁護活動として、全国一斉生活保護一一〇番、あるいは全国一斉養育費相談会、全国一斉労働トラブル一一〇番、法律教室事業、あるいはその他の人権擁護活動、これはもう本当に関係者の皆様に対して深い敬意と謝意を表する次第でございますし、また、日本司法書士会連合会においても、もちろん市民の権利擁護推進室を設置して、経済的困窮者や高齢者の権利擁護などに関する様々な事業を行っておられるということでございます。

 こうした様々な人権擁護活動を行っているその背景には、司法書士の皆様が国民にとって身近な法律家であり、そうした方々がその専門性を生かしておられるということで、そうした人権擁護活動の一翼を担っていただくこと、これは非常に重要なことであると考えております。

平成31年4月11日参議院法務委員会における大臣の答弁②

○国務大臣(山下貴司君)改正法案の第一条は司法書士の使命を規律するものでありますが、主語が司法書士を主体としたということでございます。そして、国民の権利を擁護することをその使命として明確にしたものでございます。そして、司法書士が国民に身近な法律家として幅広く国民の権利を擁護することが期待されていることに照らせば、ここで言う権利の内容として当然憲法上の基本的人権も含まれると考えております。

平成31年4月11日参議院法務委員会における大臣の答弁③

○国務大臣(山下貴司君)もうまさにおっしゃるとおり、この法律の定めるところにより、主体性を持って「国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」ということで、その活動について期待しているところでございます。

令和元年5月31日衆議院法務委員会における大臣の答弁

○山下国務大臣 お答えします。

 改正法案では、司法書士の使命として、司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすると定めることとしております。

 このような改正を行った趣旨は、司法書士を専門家として位置づけた上で、司法書士が主体的に国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与するということをその使命として規定するものでありまして、司法書士の皆様の能動的な規範を定めるものでございます。

 新たにこのような使命規定を設けることによりまして、それぞれの司法書士の皆様が、より高い使命感のもとに、登記や裁判に関する司法書士の業務に加え、それ以外の例えば被災者支援や人権擁護活動も含めた各種活動等を通じて、国民の権利の擁護のためにその職責を果たしていくことが期待されているものでございます。

司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

1 司法書士及び土地家屋調査士の実務能力の向上のために実施される各種の研修制度について、その一層の充実に向けて協力すること。

2 司法書士法人及び土地家屋調査士法人につき、その設立の諸手続が円滑に進められ、司法書士会及び土地家屋調査士会による指導が適切にされるよう努めること。

3 空き家や所有者不明土地問題等の諸課題の解決に当たっては、司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見や財産管理、筆界確定等についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ること。

司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

4 司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見を活用したADR手続により国民の権利擁護及び利便性の向上を図るため、引き続き、それらの手続の周知に努めること。

5 総合法律支援法に基づく特定援助対象者法律相談援助事業に関して、司法書士の更なる活用を進めるなど、関係団体と連携しつつ、国民の権利擁護及び利便性の向上に資するよう努めること。

6 IT環境の急速な進展の下で、各種登記制度やこれを支える司法書士制度及び土地家屋調査士制度に対する国民の信頼を損なうことのないよう、非司法書士行為及び非土地家屋調査士行為に対して引き続き厳正に対応すること。

7 土地家屋調査士の有する専門的知見やその保有する知識、情報等を広く活用することにより、法務局における登記所備付地図の整備を一層促進すること。

8 国民の権利擁護の観点から、司法書士でない者が司法書士の業務について周旋することを禁止する規定の整備について、本法施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること。

9 司法書士の登録前の研修を義務化することなど、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士の資質の向上のための施策について、本法施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること。

今後の具体的な課題

権利擁護事業のさらなる推進

倫理の涵養

執務レベルの向上のための研修

改正司法書士法の施行にあたって~社会の期待に応え,その使命を果たす(会長声明)

• 使命規定は,司法書士が行う不動産登記,商業登記,裁判所提出書類作成,簡裁訴訟代理,債務整理,成年後見,遺産承継,民事信託など,多様な業務のすべてに通底するものであり,すなわち司法書士の行う業務のすべては国民の権利擁護に資するものでなければならない。

• 今,新型コロナウイルスの影響によって,国民の生活様式や社会経済のあり方が大きく変容を迫られ,失業者や経済的困窮者の増加,自死や倒産の増加も懸念されている。

• 連合会は,これまで以上に社会の期待に応えることのできる法律家団体を目指すため,全国の司法書士が使命を自覚しつつ職責を十全に果たし,倫理の涵養を図り,執務レベルを向上させるための研鑽を積むことができるような体制を強化することをここに宣言する。

今日のお話「ポストコロナの時代で加速するDXへの対応」

• 1 戸籍情報連携システム

• 2 法人設立関連手続について等

• 3 オンライン利用の促進

• 4 書面・押印・対面の見直し

• 5 裁判手続きのIT化により高まる本人支援のニーズに応える

• 6 ODR時代到来に備える専門家として

• 7 司法書士総合相談センターのIT化

政府の進めるIT戦略

経済財政運営と改革の基本方針2021

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/decision0618.html

• 日本の未来を拓く4つの原動力

• ~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~

• 令和3年6月18日閣議決定

• 第1章 新型コロナウイルス感染症の克服とポストコロナの経済社会のビジョン

• 1.経済の現状と課題

• 2.未来に向けた変化と構造改革

• 3.ポストコロナの経済社会のビジョン

• 4.感染症の克服と経済の好循環に向けた取組

• (1)感染症に対し強靱で安心できる経済社会の構築

• (2)経済好循環の加速・拡大

• 5.防災・減災、国土強靱化、東日本大震災等からの復興

• (1)防災・減災、国土強靱化

• (2)東日本大震災等からの復興

• 第2章 次なる時代をリードする新たな成長の源泉

• ~4つの原動力と基盤づくり~

• 1.グリーン社会の実現

• (1)グリーン成長戦略による民間投資・イノベーションの喚起

• (2)脱炭素化に向けたエネルギー・資源政策

• (3)成長に資するカーボンプライシングの活用

• 2.官民挙げたデジタル化の加速

• (1)デジタル・ガバメントの確立

• (2)民間部門におけるDXの加速

• (3)デジタル人材の育成、デジタルデバイドの解消、サイバーセキュリ

ティ対策

• 3.日本全体を元気にする活力ある地方つくり~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~

• (1)地方への新たな人の流れの促進

• (2)活力ある中堅・中小企業・小規模事業者の創出

• (3)賃上げを通じた経済の底上げ

• (4)観光・インバウンドの再生

• (5)輸出を始めとした農林水産業の成長産業化

• (6)スポーツ・文化芸術の振興

• (7)スマートシティを軸にした多核連携の加速

• (8)分散型国づくりと個性を活かした地域づくり

•• 4.少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現

• (1)結婚・出産の希望を叶え子育てしやすい社会の実現

• (2)未来を担う子供の安心の確保のための環境づくり・児童虐待対策

• 5.4つの原動力を支える基盤づくり

• (1)デジタル時代の質の高い教育の実現、イノベーションの促進

• (2)女性の活躍

• (3)若者の活躍

• (4)セーフティネット強化、孤独・孤立対策等

• (5)多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実

• (6)経済安全保障の確保等

• (7)戦略的な経済連携の強化

• (8)成長力強化に向けた対日直接投資の推進、外国人材の受入れ・共生

• (9)外交・安全保障の強化

• (10)安全で安心な暮らしの実現

• 第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革

• 1.経済・財政一体改革の進捗・成果と感染症で顕在化した課題

• 2.社会保障改革

• (1)感染症を機に進める新たな仕組みの構築

• (2)団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革

• 3.国と地方の新たな役割分担等

• 4.デジタル化等に対応する文教・科学技術の改革

• 5.生産性を高める社会資本整備の改革

• 6.経済社会の構造変化に対応した税制改革等

• 7.経済・財政一体改革の更なる推進のための枠組構築・EBPM推進

• 8.将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係の在り方

• 第4章 当面の経済財政運営と令和4年度予算編成に向けた考え方

•• 1.当面の経済財政運営について

•• 2.令和4年度予算編成に向けた考え方

2.官民挙げたデジタル化の加速

• デジタル時代の官民インフラを今後5年で一気呵成に作り上げる。

• デジタル庁を核としたデジタル・ガバメントの確立、民間のDXを促す基盤整備を加速し、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を構築する。

(1)デジタル・ガバメントの確立

• 「デジタル・ガバメント実行計画」に従い行政のデジタル化を強力に推進する。

• デジタル庁は各府省庁への勧告権等を活用し総合調整機能を果たす。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20191220/siryou.pdf

• 2022 年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すとの方針の下普及に取り組む。

• マイナンバーカードの健康保険証、運転免許証との一体化などの利活用拡大、スマホへの搭載等について、国民の利便性を高める取組を推進する。

• 給付事務等への活用を念頭に行政機関間の情報連携を推進する。

• 住民情報の連携について、マイナンバー制度の活用を図る。

• 法整備も視野に入れ、本年中に給付事務用やGビズID発行事務用等を含めた国の行政機関間の全ての商業登記情報連携を無償化するとともに、独立行政法人及び地方自治体との間の全ての連携についても本年度中の無償化を目標に作業を進める。

• これによりデジタルで手続を完結させ、紙の登記事項証明書の添付省略を促進する。会社法上の決算公告義務の履行を確保しつつ、経済産業省及び国立印刷局は、契約情報・会社決算情報等の官報掲載情報のGビズインフォとの情報連携を本年中に開始する。

• 記帳等の経理事務のデジタル化及び記帳水準の向上を図るなど民間部門の経理・行政事務のDXを推進する。

• デジタル庁は、ベース・レジストリの構築・管理・運営において知見のある国立印刷局等の公的機関の協力を求め、その早期構築に取り組む。

https://cio.go.jp/node/2764

• オンライン化されていない行政手続の大部分を、5年以内にできるものから速やかにオンライン化し、オンライン化済のものは利用率を大胆に引き上げる。

【2020年改定版】デジタル・ガバメント実行計画の概要

➢ デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 ~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~

➢ デジタル庁設置を見据えた「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を踏まえ、国・地方デジタル化指針を盛り込む等デジタル・ガバメントの取組を加速サービスデザイン・業務改革(BPR)の徹底

https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/bpr#:~:text=BPR%E3%81%AF%E3%80%81%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AE%E6%9C%AC%E6%9D%A5,%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

行政手続のデジタル化、ワンストップサービス推進等

✓ 書面・押印・対面の見直しに伴い、行政手続のオンライン化を推進

✓ 登記事項証明書(情報連携開始済)、戸籍(令和5年度以降)等について、

行政機関間の情報連携により、順次、各手続における添付書類の省略を実現

✓ 子育て、介護、引越し、死亡・相続、企業が行う従業員の社会保険・税及び法人設立に関する手続についてワンストップサービスを推進

✓ 法人デジタルプラットフォームの機能拡充による法人等の手続の利便性向上デジタル・ガバメント実現のための基盤の整備(上記指針以外)

✓ 政府全体で共通利用するシステム、基盤、機能等(デジタルインフラ)の整備

✓ クラウドサービスの利用の検討の徹底、セキュリティ評価制度(ISMAP)の推進

✓ 情報セキュリティ対策の徹底・個人情報の保護、業務継続性の確保

✓ 新たなデータ戦略に基づき、ベースレジストリ(法人、土地等に関する基本データ)の整備、プラットフォームとしての行政の構築、行政保有データのオープン化の強化等を推進

✓ デジタル庁の設置も見据え、全ての政府情報システムについて、予算要求前から執行までの各段階における一元的なプロジェクト管理を強化

https://cio.go.jp/guides

政府情報システムの効率化、高度化等のため、情報システム関係予算の一括計上の対象範囲を拡大(全システム関係予算のデジタル庁一括計上を検討)

https://cio.go.jp/node/1426

✓ 機動的・効率的・効果的なシステム整備のため、契約締結前に複数事業者と提案内容について技術的対話を可能とする新たな調達・契約方法の試行

✓ 政府情報システムの運用等経費、整備経費のうちシステム改修に係る経費を令和7年度までに3割削減を目指す(令和2年度比)

外部の高度専門人材活用の仕組み、公務員試験によるIT人材採用の仕組みを早期に導入一元的なプロジェクト管理の強化等

地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進

デジタルデバイド対策・広報等の実施

✓ 身近なところで相談を受けるデジタル活用支援員の仕組みを本格的に実施

✓ SNS・動画等による分かりやすい広報・国民参加型イベントの実施

※本計画は、デジタル手続法に基づく情報システム整備計画として位置付けることとする。

✓ 自治体の業務システムの標準化・共通化を加速(国が財源面を含め支援)

✓ マイナポータルの活用等により地方公共団体の行政手続(条例・規則に基づく行政手続を含む)のオンライン化を推進

✓ 「自治体DX推進計画」に基づき自治体の取組を支援

https://www.soumu.go.jp/main_content/000726912.pdf

✓ クラウドサービスの利用、AI・RPA等による業務効率化を推進

✓ 「地域情報化アドバイザー」の活用等によるデジタル人材の確保・育成

国・地方デジタル化指針

✓ 利用者のニーズから出発する、エンドツーエンドで考える等のサービス設計12箇条に基づく、「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」な行政サービス

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/servicedesign_betten1.pdf

✓ 利用者にとって、行政のあらゆるサービスが最初から最後までデジタルで完結される行政サービスの100%デジタル化の実現

✓ 業務改革(BPR)を徹底し、利用者の違いや現場業務の詳細まで把握・分析

「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告(工程表含む)」に基づき推進

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/kaizen_wg/dai4/gijisidai.html

✓ 国・地方の情報システムの共通基盤となる「(仮称)Gov-Cloud」の仕組みの整備

https://www.soumu.go.jp/main_content/000731217.pdf

✓ ワンス・オンリー実現のための社会保障・税・災害の3分野以外における情報連携やプッシュ通知の検討、情報連携に係るアーキテクチャの抜本的見直し

✓ 国・地方のネットワーク構造の抜本的見直し(高速・安価・大容量に)

✓ 自治体の業務システムの標準化・共通化・「(仮称)Gov-Cloud」活用

✓ 強力な司令塔となるデジタル庁設置、J-LISを国・地方が共同で管理する法人へ転換

✓ 公金受取口座を登録する仕組み、預貯金付番を円滑に進める仕組みの創設

✓ マイナンバーカード機能をスマートフォンに搭載、電子証明書の暗証番号の再設定等を郵便局においても可能に、未取得者への二次元コード付きカード交付申請書の送付、各種カードとの一体化(運転免許証、在留カード、各種の国家資格等)

✓ マイナポータルのUX・UI改善(全自治体接続等)、情報ハブ機能の強化

✓ 個人情報保護法制の見直し(法律等の一元化、民間事業者等の負担軽減)

✓ 戸籍における読み仮名の法制化(カードへのローマ字表記、システム処理の迅速化)

1 戸籍情報連携システム

戸籍謄抄本の添付省略

• 令和元年5月に改正された戸籍法により、新たに「戸籍情報連携システム」が構築された。

→マイナンバー制度に基づく情報連携、戸籍事務内連携が図られることとなった、

• 令和5年度中に施行予定

マイナンバー制度に基づく情報連携

• マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)が改正され、戸籍情報が、マイナンバー制度に基づく情報連携の対象

• 各種の社会保険手続の申請等を行う際、行政機関側は、申請者が記入したマイナンバーを利用して必要な情報(親子関係や婚姻関係等)を確認できることとなった。

• →戸籍謄抄本の添付不要

地方公共団体システム機構

利用者クライアントソフトに係る技術仕様について

https://www.j-lis.go.jp/jpki/procedure/procedure1_2_3.html

総務省 マイナンバーカードには、住基アプリケーション(住基AP)が入っている、既に住民基本台帳ネットワークは整備させれているので、戸籍連携においてマイナンバーカードを利用する必要がない。個人情報取得に関しては最低限に留めるという趣旨。

https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/03.html#hikaku

情報連携の対象となる具体的な行政事務

• マイナンバー法の別表で定められる。

• 1児童扶養手当の支給事務における続柄、死亡の事実、婚姻歴の確認

• 2国民年金の第3号被保険者(被保険者が扶養する主婦など)の資格取得事務における婚姻歴の確認

• 3奨学金の返還免除事務における死亡事実の確認

• 4健康保険の被扶養者認定事務における続柄の確認などに活用される予定

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律

別表第一(第九条関係)、別表第二(第十九条、第二十一条関係)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027

戸籍事務内連携

戸籍情報システム標準仕様書  日本加除出版株式会社

https://www.moj.go.jp/content/001321623.pdf

戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書(R2.1 版)

令和2年3月法務省

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

• 各市区町村長が必要な範囲内で法務大臣の保存する戸籍又は除かれた戸籍の副本を利用して戸籍事務を行えるようになった。

• 各市区町村では、婚姻の届出や養子縁組など戸籍に関する各種届出の際、市区町村長による確認が必要な戸籍情報について「戸籍情報連携システム」で参照可能となった。

• →戸籍の届出に必要とされていた戸籍謄抄本の提出不要に

所有者の登記名義人の死亡情報等を不動産登記記録に反映させる仕組み

• 令和3年4月に不動産登記法改正

• 登記官が、他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や住所等の異動情報等を取得し、これらを職権的に不動産登記記録に反映させられる仕組みの創設

• 所有権の登記名義人が自然人の場合には住民基本台帳ネットワークシステムから、法人の場合は法人登記のシステムから、それぞれ必要な情報を取得することが想定

• 施行期日は、公布日(令和3年4月28日)から起算して5年を超えない範囲

2 法人設立関連手続について等

• 法人設立関連システム等について、費用対効果を考慮した上で、次回システム刷新時に合わせて英語でも対応を行うことを原則とすべきである。法人設立関連手続に関しては、以下の取組を行う

• ①2021年度中に、英語申請ガイドの作成、書式見本の作成等を行う。

• →更なる取組を推進

• ②オンライン申請手続については、2021年度中に設立登記申請時の手続で利用される登記情報システムなどに自動翻訳システムを付すことを検討し結論を得る。

• →左記結論を踏まえ必要な措置を講ずる

•なお、手続代行を担う士業等と連携し、登記申請後の労働基準監督署、ハローワーク及び年金事務所への設立届出の円滑な提出を可能とする。

•→更なる取組を推進

• 商業登記電子証明書について、法人の本人確認をデジタル完結させる手段として一般的に利用されるよう広報活動を行う。

ブリッジ認証局CP/CPS (PDF) 令和3年3月1日改定 行政情報システム関係課長連絡会議了承

https://www.gpki.go.jp/bca/cpcps/index.html

2021年度中に、利便性の向上策や無償化の可否を検討する。

• →更なる取組の検討・実施

• あわせて、クラウド化に向けた検討を行う。また、費用対効果も踏まえつつ、2025年度までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す。

• →費用対効果も踏まえつつ、2025年度までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す

• 2021年度中に設立後の法人の実質的支配者の把握に寄与する制度を導入する

引っ越し関係手続、死亡・相続関係手続

•内閣官房において、「引っ越し」や「死亡・相続」の際に必要となる届出等について、手続きのワンストップ化を検討

•法務省では、不動産登記の所有者の住所変更や、死亡の届出、相続に伴う不動産登記の所有者変更等の制度を所管する立場から、関係省庁と連携し検討

3 オンライン利用の促進

オンライン利用率を大胆に引き上げる取組

• 各府省は、令和2年度に旗艦的なものとして開始した以下の28事業について、規制改革推進会議が示す考え方も踏まえ、短い期間でPDCAを回してオンライン利用率を大胆に引き上げる取組を着実に推進する。

• ・ 商業・法人登記関連手続(法務省)

• ・ 不動産登記関連手続(法務省)

• ほか26事業

• c 法務省は、登記・供託オンライン申請システムについて、開発者等が使いやすい形でのAPI仕様の公開方法に係る改善に取り組むとともに、利用時間の24 時間対応に向け、ニーズや費用対効果を踏まえた検討を行う。

API概要

登記・供託オンライン申請システム

https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/developer.html

• また、申請ページ(法人設立ワンストップサービスを含む)への導線や手続案内等が、手続に精通していない申請者に分かりやすいものとなるよう、法務省・法務局のウェブサイトを見直す等周知方法を改善する。

•d 法務省は、これまでデジタル化の推進に多くの課題があったことを踏まえ、登記その他のデジタル社会の基盤となる制度を所管する省として、デジタル化を強力に推進する観点から、民間人材の登用を含め、デジタル化を推進する体制を構築する。

• g 各府省は、手続件数、手続の性質、手続の受け手となる機関等に応じた優先順位を踏まえつつ、オンライン利用が100%のものなどを除き、原則として年間10 万件以上の手続を含む事業の全てについて、28 事業(上記a)に準じてオンライン利用率を引き上げる目標を設定した取組を行う。

• h 各府省は、オンライン利用率の大胆な引上げを含むデジタル化の推進のため、デジタル技術又は民間におけるデジタル改革について知見のある者の登用を含め、規制改革推進に関する答申(令和3年6月1日)Ⅱ6.(2)アの「基本的考え方」に示した取組を確実に実施できる体制を整備する。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html

•各府省は、オンライン利用を促進する上で、API連携により民間企業等の参入を図ることは極めて重要であることを踏まえ、オンライン利用率を引き上げる目標を設定した取組に当たっては、手続の性質に応じて、開発者・利用者にとって利便性の高い形でAPIが構築・公開されているか点検し、必要な措置を講ずる。デジタル庁(IT室)は、民間が利用しやすい形でAPIが提供されるよう、APIの仕様の標準化など、各府省に対して必要な助言・支援等を行う。

行政手続の100%オンライン利用→司法書士・弁護士については義務化。

• d 法務省は、商業登記・不動産登記に係る手続について、オンライン利用率が中程度となっていることを踏まえ、まずは、上記No.5 の取組を通じてオンライン利用の向上を図る。

•併せて、司法書士等による手続代行が多いことを踏まえ、デジタル化を抜本的に進める上で司法書士等の果たすべき役割について検討を行う。

デジタル化に向けた基盤の整備等

• b 法務省は、デジタル庁(IT室)と連携し、法令において登記事項証明書の添付が求められる手続については、能動的に働きかけを行い、情報連携の促進に係る工程表を作成し、可及的速やかに添付書類の省略を実現する。

• また、法務省は、法整備も視野に入れ、給付事務用やGビズID発行事務用等を含めた国の行政機関間の全ての商業登記情報連携を無償化するとともに、独立行政法人及び地方公共団体との間の全ての連携についても無償化を進める。これによりデジタルで手続を完結させ、紙の登記事項証明書の添付省略を促進

する。

• b:法令において登記事項証明書の添付が求められる手続における情報連携の拡大について、令和3年中に工程表を策定し取組を開始。国の行政機関間の全ての商業登記情報連携の無償化について、令和3年中に措置。独立行政法人及び地方公共団体との間の全ての連携の無償化について、令和3年度中を目途に措置

4 書面・押印・対面の見直し

書面・押印・対面見直しの確実な推進

• a 令和3年3月末までに押印義務の見直しについて法令改正等が行われていない305種類の手続について、速やかに行政手続における押印の見直しを確実に実施する。

• b 各府省は、オンライン化する方針の手続について、可能な限り前倒しを図りつつ措置。なお、オンライン化の手法等については、今後の情報通信技術の発展、政府の方針等を踏まえ柔軟に改善する。

• c 各府省において性質上オンライン化が適当でないと考える432 種類の手続のうち、少なくとも年間の手続件数が1万件以上の手続については、最新のデジタル技術や補完的手段の活用等によるオンライン化を含む利用者負担の軽減策について、引き続き検討する。

デジタル整備法による戸籍法改正

• デジタル整備法により、押印の見直しのために改正された法務省所管の法律は、戸籍法など5つ

• 施行は、9月1日

• 現在、署名と押印を求めている婚姻届・離婚届等について、押印廃止。真正性確保のため署名のみ求める。

• 明治時代から戸籍の届出には押印するとされていいる。人生の節目である婚姻届等については、押印の存続を求める国民の声あり。

• →民事局長通達により、届出人の任意の押印を認め、標準様式にも押印できることを明記予定金融分野の行政手続における書面・押印・対面手続の見直し

• 金融庁は、金融機関等から受け付ける申請・届出等について、令和3年3月末までに整備したシステム及び制度面での対応を踏まえ、令和3年度の可能な限り早期に運用を開始する。また、押印については、府令・監督指針等の改正を行い、令和2年中に全て廃止する。

• (前段)令和3年度措置

• (後段)措置済み

民間における書面・押印・対面規制等の見直し

• a 内閣府及び法務省は、民法(明治29 年法律第89号)第486 条の改正により、令和3年9月から弁済に係る受取証書について電磁的記録の提供の請求が可能となることを踏まえ、施行後に小売店等の店頭において混乱を来さないよう、あらかじめQ&A等で法令解釈を明らかにし、広く周知を図る。

• b 法務省は、令和3年10月以降に開催される株主総会について、新型コロナウイルス感染症の影響により株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大する措置が引き続き必要となった場合には、当該措置を講ずる。

• c 経済産業省は、株主総会プロセスにおける企業と株主による対話の充実に向けて、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施の推進のため、実施ガイドなどの更なる充実を図る。

• d 国土交通省は、不動産の売買取引におけるオンラインによる重要事項の説明について、社会実験の結果を踏まえ、ガイドラインを改定し、テレビ会議等による非対面の説明が可能である旨を明らかにする。

• e 国土交通省は、設計受託契約・工事監理受託契約に係るITを活用した重要事項の説明について、暫定的に運用しているテレビ会議等による非対面の説明を本格的に運用するためのガイドラインを整備する。

書面の見直し(民法・受取証書の電子化)

電子的な受取証書(新設された民法第486条第2項関係)についてのQ&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00269.html

• インターネットを用いた電子商取引が増加。

弁済者側には受取証書(領収書)に代えて電磁的記録の提供を受けたいというニーズあり。弁済受領者側にも受取証書の交付が過度な負担となっている場面あり。

• 民法486条2項を新設。弁済者は受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電データの提供を請求できることとした。

• ただし、電子データの提供に直ちに対応することが困難な小規模事業者などに配慮し、弁済受領者にとって電子データの提供が不相当な負担となる場合には、弁済者は請求できないこととした。

書面の見直し(借地借家法等)

• 電子契約システム等を利用した遠隔地での契約を容易にするため、借地借家法を改正

• 一般定期借地権の設定(法定更新等を排除する特約)や定期建物賃貸借契約について、書面に代えて電磁的記録によって行うことを可能とした。定期建物賃貸借の事前説明事項について、電磁的記録による提供も可能。

定期建物賃貸借契約自体の電子化を検討

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/hotline/h_index.html

• 被災地短期借地権設定契約(大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法の改正)、書面よってしなければならないとされている催告等の手続(建物の区分所有等に関する律の改正)について、相手方の承諾を得た場合には、電磁的記録によることを可能。

5 裁判手続きのIT化により高まる本人支援のニーズに応える

• 裁判のIT化は誰のため?

• 現状と今後のスケジュールについて

• 司法書士会の急務は裁判事務の実績づくり!!

• 平成30年3月30日 裁判手続等のIT化検討会による取りまとめ

• 令和元年12月 民事裁判手続等IT化研究会による報告書世界銀行の“DoingBusiness”の低評価

• 世界銀行の“Doing Business”(注:世界銀行が毎年発表する、世界190か国を対象とし、事業活動規制に係る10分野を選定し、順位付けしたもの)2017年版では、「裁判手続の自動化(IT化)」に関する項目について、我が国に厳しい評価が示されている。

• 我が国のビジネス環境や国際競争力の観点から見た場合、利用者目線に立った裁判手続のIT化を更に進める必要があるのではないかとの声が高まった。

当会のスタンス

• 「裁判記録のペーパレス化・データベース化」「多数当事者を想定する事件における省力化」「遠隔地の当事者間の裁判におけるコスト軽減」「裁判官や裁判所職員、法律家やその事務員の働き方改革にもつながる」「利用者の利便性の向上と民事訴訟の効率的な進行」「真に望ましい迅速かつ効率的な民事訴訟を実現すること」などといったメリットにはすべて基本的に賛成するものである。

• その上で、「利用者目線での推進」「国民に利用しやすく、わかりやすい民事訴訟手続という、現行の民事訴訟法の基本に合った理念の実現」という趣旨こそが、すべてのメリットに最優先されるべき重要な視点である。

実現までの工程表

• 令和元年度 • 民事裁判手続等IT化研究会の報告書取りまとめ

• フェーズ1(ウェブ会議等を用いた争点整理)の特定庁での実施

• 法制審議会への諮問 • 令和2年度 • 専門部会における調査審議 • フェーズ1の拡大(令和2年度以降、順次全国へ)

• 令和3年

• 専門部会における調査審議において中間試案

• パブリックコメント

• 要綱案の取りまとめに向けた議論

• フェーズ3の先行実施(準備書面等のオンライン提出)

• 令和4年

• 専門部会における要綱案決定

• 法制審議会答申、改正法案の国会提出

• フェーズ2の一部実施(ウェブ会議等を用いた双方不出頭の争点整理)

令和5年以降

• フェーズ2の完全実施(口頭弁論のウェブ化)

• フェーズ3の完全実施(訴状を含めたオンライン申立て、記録の電 子化の実現)

日本司法書士会連合会の取り組み

• 平成30年1月3日から5日 韓国視察

• 平成30年2月22日 検討会への意見書提出(HP参照)

• 山本和彦座長、杉本純子先生、湯淺墾道先生らとの意見交換

• 平成30年4月9日 検討会取りまとめに対する会長談話(HP参照)

• 平成30年7月24日から開催された「民事裁判手続等IT化研究会」にオブザーバー参加

・令和元年8月19日より8月14日までアメリカ視察(報告書は会報THINK118号に掲載)

・令和元年9月17日 民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明(HP参照)

・令和2年2月8日 法務士を招いて韓国の新しい電子訴訟についてレクチャーを受ける

諸外国の状況は?

• 欧米を中心に裁判手続等のIT化が既に進められてきており、アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT化した裁判手続等の運用が広く普及・定着している。

• ドイツ等でも、近年、IT化の本格的取組が着実に進展している。

韓国の特徴

(法務士の権限について)民事訴訟等における電子文書利用等に関する規則

• 第4条(使用者登録)

• 1電子訴訟システムを利用しようとする者は電子訴訟システムに接続して、次の各号の会員類型別に電子訴訟ホームページで要求する情報を該当欄に入力した後、電子署名のための証明書を使って使用者登録を申請しなければならない。登録した使用者情報は証明書の内容と一致しなければならない。

• 1.個人会員 2.法人会員 3.弁護士会員

• 4.法務士会員 5.回生・破産事件の手続関係人会員 6.執行官等

• 2 第1項第2号から第6号までの使用者登録をした者(以下「登録使用者」という)は、利用権限の範囲を定めて所属使用者を指定でき、それにより指定された者は電子訴訟システムに所属使用者として登録することができる。

• 第11条(電子文書の作成・提出)

• 1 登録使用者は電子訴訟ホームページで要求する事項を空欄補充方式で入力した後、残りの事項を該当欄に直接入力し、または電子文書を登載する方式で訴訟書類を作成・提出することができる。

• 2 省略

• 3 第4条第1項第4号の法務士会員は次の各号の中でいずれか一つの方法により電子文書を作成・提出することができる。ただし、 民事訴訟等の当事者、訴訟代理人または第3条第1号から第4号ま でに規定された者に該当する委任者が電子訴訟同意をしなかった場合には第24条第1項第3号により登録使用者を送達領収人として 申告する趣旨の書面および今後委任者が直接訴訟書類を提出し、ま たは送達を受ける時に電子訴訟同意をするものとの確約する趣旨の書面を添付しなければならない。

• 以下省略

シンガポールの特徴

(CJCによるサポート)

• The Community Justice Centre

という、公益団体が本人訴訟等の支援も行っている。

• Automated Court Documents

Assembly(ACDA)というシステムにより、本人が入力すると申請書が作成されるシステム

アメリカの特徴

•セルフサポートセンターによる本人訴訟支援(サンフランシスコ)

• LIMITED SCOPE

REPRESENTATION (LSR)という弁護士代理のばら売り制度など(サンフランシスコ)裁判手続等のIT化検討会による取りまとめ(平成30年3月30日)

• IT化に向けた課題として

• (1)本人訴訟について

• (2)情報セキュリティ対策

「本人訴訟について」

• 裁判手続等の全面IT化の実現に当たっては、代理人として弁護士等が選任されていない本人訴訟について、当事者の裁判を受ける権利にも十分配慮しつつ、当事者の置かれた立場や訴訟の各進行段階等に応じ、裁判所による適切なウェブ上の利用システム・環境の構築や、適切な担い手による充実したIT面のサポート(ITリテラシー支援策)が必要である。

• 資力がない当事者への法的側面でのサポートは法テラス等で行われているが、それとは区別されるIT面のサポート策として、その実施主体や内容等について、様々な方策やアプローチが考えられるところであり、今後、総合的な対策を、非弁活動の抑止等の観点にも留意しつつ、検討していく必要がある。

「本人訴訟について」(2)

• この点は、当事者間で利害の対立することが多い裁判事件の一方当事者に対する支援であることからすると、まずは、裁判上の代理人として関与する弁護士、司法書士等の法律専門士業者が、代理権の範囲の中で、所属団体の対応枠組みを使うなどして、法的側面とともにIT面の支援をも行っていくことが考えられる。

• もっとも、充実したサポート体制の実現のためには、これに限る必要はなく、特に、経済的事情で司法アクセスが容易でない当事者への支援の在り方は、既存の各種相談機関や法テラス等の支援窓口の関与・活用も含め、しっかりと検討を進める必要がある。この支援スキームの一案として、裁判所外で、紙媒体の書面の電子化を含めたサポートを行うための支援センターを設けてはどうかという意見も述べられたところであり、引き続き、望ましいサポート策の在り方の検討と対応が求められよう

民事裁判手続等IT化研究会による報告書

• 民事訴訟手続を全面的にIT化した場合における課題の整理や規律の在り方の検討等を行うことを目的として設置され,平成30年7月から令和元年12月までの間,合計15回にわたり,山本和彦一橋大学大学院法学研究科教授を座長として,研究者や,弁護士,司法書士,関係省庁等の関係者をメンバーとして,開催されたものである。

• IT機器を有していない又はITに習熟していない者に対するサポートの在り方については,現在,内閣官房に設置された「民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議」において,書面の電子化については,裁判所や法テラス等の公的機関はもとより,弁護士会や弁護士,司法書士会や司法書士をはじめとする士業者団体・士業者等,受皿 になり得る者において幅広く担当される必要があるとの有識者の意見を踏まえた検討が進められている 。そして,このようなサポート体制について,日本弁護士連合会からは「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」が,日本司法書士会連合会からは「民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明」が,それぞれ示されているところである。

民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議

• 「民事司法制度改革の推進について」(令和2年3月10日)

• 個々の弁護士や司法書士によるサポートとしては、書面の電子化等のITリテラシー支援サービスを提供するとともに、本人の依頼に応じて、民事訴訟の追行に必要な法的助言の提供を行う(司法書士の場合には、代理業務が可能な範囲で法的助言の提供を行う)こと等が考えられる。また、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び各地の弁護士会や司法書士会におけるサポートとしては、窓口に書面の電子化のための機器を設置すること等が考えられる。こうした方策を前提に、さらに具体的なサポートの内容については、個々の弁護士や司法書士、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び各地の弁護士会や司法書士会において検討することが期待される。

令和2年度革新的事業活動に関する実行計画

• その過程において、弁護士・司法書士等の士業者に限りオンライン提出の義務化を検討する

• 代理人が選任されていない本人訴訟に関して、日本司法支援センターによる書面の電子化等のIT支援や法的助言も含めた支援の内容を2020年度から検討する。日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会等が行う取組の検討も期待する

• 法制審議会における民事訴訟手続のIT化の検討も踏まえつつ、2020年度中に家事事件手続及び民事保全、執行、倒産等の民事非訟事件手続のIT化のスケジュールを検討する

法制審議会の基本的な視点

• 我が国においては,平成16年の民事訴訟法の改正によってオンラインでの裁判所への申立て等を可能とする規定が整備され,平成18年には支払督促手続 について オンラインでの申立てが可能となった 。しかし ,民事訴訟手続一般については,最高裁規則等が整備されていないため,いまだオンラインでの訴え提起等は認められていない。また,ITを利用した本格的な取組が急速に進展している諸外国の状況を踏まえると,我が国においても民事訴訟手続のIT化を更に進めることが,重要な課題であるといえる。

• そのため,政府において,近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに時代に即して民事訴訟制度をより一層 適正かつ迅速なものとし国民に利用しやすくするという観点から訴状等のオンライン提出訴訟記録の電子化情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しについて検討し,令和4年中の民事訴訟法改正を視野に入れて取り組むこととしている。

「成長戦略フォローアップ工程表」• 令和3年6月18日に閣議決定

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/portal/follow_up/index.html

• 民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議の取りまとめに基づき、ITに関する状況を踏まえ、国民の司法アクセスの確保に配慮しつつ、訴状等の書面をオンライン提出に一本化する全面オンライン化を司法府の取組を含め段階的に実現

• その過程において、弁護士・司法書士等の士業者に限りオンライン提出の義務化を検討

• 本人訴訟に関して、日本司法支援センターによる書面の電子化等のIT支援や法的助言も含めた支援の内容を引き続き検討する。日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会等が行う取組の検討も期待 →IT化の範囲や導入されるシステム等の具体的内容等を踏まえて検討

司法書士の役割

簡易裁判所における訴訟代理人としての対応

地方裁判所における本人訴訟のサポート

簡易裁判所における本人訴訟のサポート

ITサポートと手続きのサポート

司法書士・司法書士会のすべきこと裁判業務についての実績づくりが急務→実績のない資格者には権限も与えられることはない

• 今後の法制審議会における議論にも注目していただき、前向きで建設的な意見を述べていくこと(パブコメ対応)

• これまでの本人訴訟支援の実績で得た知見を、ITサポートも含めて、国民に提供していくことが求められている

• 司法書士総合相談センターにおけるサポート体制づくりも急務

6 ODR時代到来に備える専門家として

ODR(OnlineDispute Resolution)とは?

ODR は多義的な概念ではあるが、一般的には、IT・AI 等の先端技術を用いたオンラインでの紛争解決手続を指すものと理解されている。

ODR 活性化に向けた取りまとめ

• 令和2年3月16日 ODR 活性化検討会

内閣府 政策会議

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/odrkasseika/index.html

• 政府の「成長戦略フォローアップ」(令和元年6月21日閣議決定)において、「裁判手続等の IT 化の推進」に係る施策の一つとして、「紛争の多様化に対応した我が国のビジネス環境整備として、オンラインでの紛争解決(ODR)など、IT・AI を活用した裁判外紛争解決手続などの民事紛争解決の利用拡充・機能強化に関する検討を行い、基本方針について 2019 年度中に結論を得る。」とされた。

• これを受けて、令和元年9月、「ODR活性化検討会」(本検討会)が設置された

日本の司法アクセス環境の現状等

• 第一審民事訴訟通常事件の新受件数

• 地方裁判所 平成30年には約13万8000件

• 簡易裁判所 平成30年には約34万1000件

• 民事調停事件の新受件数 平成30年には約3万4000件

• 認証 ADR 制度の利用 平成30年度約1650件

• 弁護士会等における法律相談件数 平成30年度約62万件超え

• 国民生活センター及び消費生活センター等に寄せられる消費生活相談の件数 平成30年には約102万件

ODRに適する分野について

• ニーズや諸外国の取組を踏まえると、

• ①一般的には、低額で定型的な紛争が大量に生じることが想定される分野などについては、ODR による解決、早期の実用化が求められている。

• ②紛争の前提となる取引等がオンラインで行われる場合についても、オンラインでの紛争解決に馴染みやすい。

• これらの分野については、早急な試用・実装。

その他の法的紛争におけるODR活用

• 検討会でのヒアリング結果等を踏まえると、離婚・相続等の家庭問題に関する法的紛争、交通事故に関する紛争、家賃増減・敷金返還などの賃貸関連紛争、スポーツ関連紛争などについても、定型的なものも相当数見込まれることから、ODRによる解決のニーズがあるように思われる。

• また、金融取引紛争についても取引そのものがオンラインで行われるフィンテック分野を始めとして、ODR の活用が期待される分野といえよう。

• その他、検討会では、いわゆる災害 ADR や倒産紛争に関する ADR についても、ODR 活用が期待されるのではないかとの意見もあったところであり、更なる ODR の活用に向けて、ニーズやあい路の検討が進められることが期待されるところである。

ODR の実装に向けた課題とその支援策のあり方について

•1 ODRの実施に関し、これまでに必ずしも念頭に置かれていなかったコミュニケーションのオンライン化などについて弁護士法やADR法等といった関連する法令との関係を整理していく必要があろう。

•2 ODRの活用には初期投資 やランニングコストを含め一定のコストが生じることが不可避であり、この観点からの検討も必要と考えられる。諸外国の実情等やニーズを踏まえ、特定の分野で先行してODR のスキームやシステムを試行・実装し、利用者を拡大していくアプローチが相当と考えられることから、民間の取組を促す環境整備も含めて、政府による積極的な支援・サポートも検討されるべきものと考えられる。

•3 また、多様な分野の紛争を取り扱う150以上の認証ADR機関を含め、様々なADR機関が全国各地で活動していることからすると、これらのADR機関は ODR の早期の実装に向けた担い手となることが期待されるが、現状では、本検討会で紹介されたアンケート調査の結果にもあるとおり、様々なコスト負担感等により、十分にODRを活用することができていない。今後、そのあい路をも踏まえた検討が必要であろう。

• ODR推進検討会を設置(令和2年10月から1年程度)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04200001_00002.html

• 検討事項は、

• ⑴ ODRの推進に向けた裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律関連の規律(法,法務省令,ガイドライン等)の見直しについて

• ⑵ 民間紛争解決手続における和解合意への執行力の付与について

• ⑶ ODRにおける認証紛争解決事業者の守秘義務の在り方について

日本司法書士会連合会の取り組み

• チャットベース(完全非対面)のODRについての実証実験

• 認証ADR機関におけるウェブ調停の促進

司法書士ODRチャット相談・チャット調停(無料)― チャット相談toチャット調停の試み

【phase1】 相談 【phase2】 調停(ODR)

司法書士

相談者/申立人(賃借人)

相手方(賃貸人)

【留意点】

賃貸借契約における敷金返還請求等の原状回復事件

● LINE上で、チャットベースで相談対応(受付は24時間対応可能とする)

● 担当する司法書士は、ODRの手続実施者とは別の司法書士

● システム(teuchi(テウチ)*ミドルマン社)を利用し、チャットベースで調停遂行(日程調整不要・出頭不要・非対面)

https://www.teuchi.online/

● 一定期間(例:14営業日~30営業日)で調停人から調停案提示

● 資料は画像添付により提供

● 合意に至った場合、合意書にクラウドサインを行う

https://www.cloudsign.jp/

● 手続き実施者は相談対応司法書士とは別司法書士

【phase3】 訴訟等

●日司連のLINE公式IDを使用して相談対応

https://www.linebiz.com/jp/service/line-official-account/

●日司連のLINE公式IDを、「友だち」追加したうえで、相談

●調停申し込みがあった旨連絡(メールなど)

●テンプレートに必要事項を入力し、調停の申立て*「相談」からのシームレス化の工夫

●調停実施

●調停申し込みがあった旨連絡

●事案に応じて、【phase2】・【phase3】を案内

●必要に応じて、訴訟、ADR等の手続きにつなぐためのフォローアップ

(主催)日本司法書士会連合会

≪手続きのながれ≫※

※ フロー図は、賃借人から相談を受けた場合。なお、賃貸人から相談を受ける場合も本制度の対象。

執行力付与について

(1) 執行力付与に関するさまざまな意見及び事例

a 執行力の付与となれば手続きは重厚になり、「それなら裁判所の手続きを選択する」ということにならないか。

b 当事者間の対話を促進し、信頼関係を醸成することで、自発的な履行を促すのがADRとして好ましいのでは。

c 執行力の付与を恐れて、ADRに応諾しない相手方が想起され、この場合貴重な話し合いをする機会を失うことにならないか。

f 調停の利用希望申込、あるいは、法14条に基づく説明段階で、手続きには、執行力がない旨を説明したところ、当事者が手続きの利用を選択しなかったケースがあった。

e 合意成立後に、即決和解、公正証書(執行受諾文言付)の作成を行うことになったケースがあった。

d 執行力を付与することにより、裁判手続における事務的・時間的・経済的負担も軽減できる可能性が拡大する(例えば、不動産の相続における遺産分割調停事案において、民間ADR機関で合意した場合、当該合意書だけでは相続登記ができない)

● 認証紛争解決機関である各地の単位会、当連合会の関連WT内において出された主な意見や報告をまとめると、以下のとおり、肯定的・否定的いずれもみられる。

(2) 執行力に関する考え方(上記(1)をふまえて)

【考え方1】 特定の事件を対象として、執行力の付与をすべきではないか。

● 一定の事件類型(登記関連等)については、執行力付与の必要性が存在(d)。

● 執行力付与の有無を、手続き選択の判断要素にするケースの存在(f)

● 但し、すべての事件を対象とするのでは、応諾率の低下(c)、ADR独自の良さを活かせない(b)等の懸念も存在。

● 対象事件は、現状をふまえ※①当事者の意思(当事者の選択の機会付与)、②事件類型などにより、絞込みを行うことが考えられるのではないか。

● なお、上記絞込みに際しては、既存の様々な履行確保手段が、「執行力付与」の代替手段として消去法的に選択されている手段であるか否かについても留意する必要があるのではないか。

【考え方2】 現在各ADR機関において履行確保に向けて行われている対応や今後導入を検討している「執行力付与」以外の方法につき、これらを実行するための課題(法律上等)を抽出し、課題解決に必要な対応をすべきではないか。

● 例えば、ADR(ODR)手続き内で、合意内容に基づく履行が終了するのであれば、「執行力の付与」まで要しないと考えられる(例えば、金銭請求事件につき手続き内で支払いを完了させる)。この際、金銭支払いにつき、ODRにおいて、その手続き内で履行を行う場合の、法律上(例えば資金決済法)等の課題についても抽出すべきではないか。

※ 例えば、①合意成立時に支払うべき金銭を持参した事案、②建物明渡請求につき、合意成立後、明渡期日に調停人が現場に立ち会い、その後合意書への署名押印を行った事案、③遺産分割調停事案につき、合意内容に沿った具体的な遺産承継手続きが当事者には困難であったため、その後専門職に引き継いだ事案(手続上のアシスト)などがある。

• 我が国の離婚した父母のうち8割近くにも及ぶ養育費の不払い状態を解消することが,待ったなしの喫緊の課題であるという共通認識の下,まずは,養育費不払い問題の改善に資する取組として,できるこから一刻も早く着手すべきである• 法務省において,厚生労働省(厚労省),最高裁判所(最高裁),地方自治体等の公的機関や,法テラス,養育費相談支援センター等の関係機関,日本弁護士連合会(日弁連),弁護士会,ひとり親支援団体等の関係団体等と十分に連携を図って,各機関・団体等の自律性を尊重しつつ必要な協力を得て,スピード感ある取組を進めていくべきである。

2020年養育費相談会 代表相談事例

• 40代女性(同居親)

• 今年6月に調停離婚をした。面会交流なし、養育費なしの合意をしたが、将来の子どものことを考えるとやっぱり養育費を受け取りたい。今後、養育費をもらうためには、どのような手続きをすればよいか。

• 50代女性(同居親)

• 12年前に調停離婚が成立し、数年間は調停での定めに従い養育費をもらっていたが、数年前から全く支払われない状況になった。過去に裁判所へ履行命令申立をしたが、裁判所からの書面を受け取ってもらえず、手続きが進まない。強制執行をしなければならないか。

• 年齢不詳女性(同居親)

• 離婚時に養育費の取り決めをし、文書も作成したように思うが手元にない。養育費を1回支払ってもらったが、その後の支払いはない。自分で養育費の支払いについての調停ができるだろうか。

養育費の不払い解消に向けた当面の改善方策

(中間取りまとめ~運用上の対応を中心として~)

• 相談体制の充実のため,利便性の高いSNSサービスを入口とした非接触型の相談対応の実現や利用可能なサービス時間帯の延長が望まれるし,相談者のニーズによっては,司法書士による書類作成援助業務の在り方について今後検討する。

• 養育費を請求する裁判所の手続について司法書士による申立書等の書類作成援助の活用の在り方を検討してはどうかとの意見があった。

養育費不払い解消に向けた検討会議・取りまとめ

(~子ども達の成長と未来を守る新たな養育費制度に向けて~)令和2年12月24日 法務省養育費不払い解消に向けた検討会議

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00101.html

• 全国的に見ると法律家が地域的に偏在していることを踏まえつつ,養育費案件について事案に応じた選択肢を増やすという観点から,法テラスの地方事務所において,利用者のニーズに応え,適切な案件の振り分けの下で,弁護士の代理援助のみではなく,家事調停手続や民事執行手続の申立書作成などの書類作成援助や,書類作成事務についての相談業務について,司法書士の活用を検討すべきではないか,との意見があった。

• これに対し,案件の振り分けは法的判断を伴い,法テラス職員が行うのは困難である,請求額の妥当性や執行方法,離婚に伴う各種法律問題などにつき,法的助言や相手方との交渉・手続の代理等が必要となり書類作成援助で足りなくなることが多いが,法的助言等を司法書士が行えない以上,改めて弁護士に依頼することになって時間と費用の負担が更に発生するおそれがあるなどとの意見があった。

法務省委託調査「養育費の不払い解消に向けた自治体における法的支援及び紛争解決支援の在り方に関する調査研究」にご協力いただける自治体を募集いたします。(商事法務)

• この度、当会では法務省の委託調査「養育費の不払い解消に向けた自治体における法的支援及び紛争解決支援の在り方に関する調査研究」を受託しましした。本事業は、養育費の不払い解消に向け、モデル事業を実施することで、自治体のニーズを把握し、今後の法的支援及び紛争解決支援のあり方や問題点について調査・研究することを目的としております。

• そこで、モデルとして、本事業にご協力くださる自治体を募集します。

• ご検討いただける自治体は、詳細につき下記宛にお問い合わせください。• モデル事業担当TEL:03-5614-5633 *平日10時~17時におかけください。

7 司法書士総合相談センターのIT化

相談センターIT化の必要性

• 業務拡充を含む次なる司法書士法改正の立法事実の準備として

• 全国の司法書士無料相談のDB化

• 利用者の利便性向上に資するため

• スマホ時代のへの対応

• ウェブ相談への対応

• 司法書士会事務局の事務効率化のため

• 記録化、配転等

司法書士界を覆う閉塞感

不動産登記、商業登記事件の減少は本当か?

民間事業者による登記参入はどの程度進んでいるのか?

他士業による登記参入はどの程度進んでいるのか?

AIによって登記業務は代替されてしまうのか?

変革の時代は好機(チャンス)ではないのか?

不動産登記・商業登記の件数の推移

• 不動産登記(権利)について

• 平成9年から令和元年までの推移(白書参照)

• 平成9年が1297万3298件(最大値)

• 平成30年が800万4543件(最小値)令和元年は803万6297件

• 相続登記の増加傾向

• 商業登記について

• 平成4年から令和元年までの推移(白書参照)

会社登記は平成7年が213万3339件(最大値)平成25年が115万4979件(最小値)そこからは微増。令和元年は124万6751件

東洋経済新報社「誰が日本の労働力を支えるのか」より『職業別代替可能性』

• 行政書士 93.1% • 税理士 92.5% • 弁理士 92.1% • 土地家屋調査士 89.0% • 公認会計士 85.9% • 社会保険労務士 79.7% • 司法書士 78.0% • 裁判官 11.7% • 弁護士 1.4% • 中小企業診断士 0.2%

AIに負けないためには!

(3つのポイント)

「創造性」抽象的な概念を整理・創出するための知識

「ソーシャルインテリジェンス」社会的な情報(を収集する能力)、本当のことを話してくれない相手のことを理解したり、説得する力

「非定型」臨機応変な対応や状況判断が求められること

司法書士制度は発展していないのか?

• 成年後見制度がスタート(平成12年)

• 民事法律扶助に書類作成援助が認められる(平成12年)

• 簡裁代理権の付与(平成14年)とその後の改正

規則31条による附帯業務、民事信託支援業務

• 空き家、所有者不明土地問題における法的需要

• 民事裁判のIT化に伴う本人支援への期待

• などなど

デジタル時代の規制・制度について

(令和2年6月22日規制改革推進会議決定)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html

• 5.規制・制度の類型化と具体的な見直しの基準

• (3)業規制の見直し

• ④ 特定の資格保有者による業務独占の見直し

• デジタル技術の発展により、ネットやリモート技術を活用した事業展開が容易になってきている。特定の資格保有者しか業務ができない規制・制度についても、業務の一部をデジタル技術によって支援・補完・代替することによって、柔軟かつ消費者利便に合致した新たなサービスの提供が可能となる。業務の一部をデジタル技術によって行うことを業務独占の範囲から除外するなど、業務独占を定める規制のあり方を見直すべきである。

おわりに

変革の時代は好機ととらえるべし!イノベーションを!

問われるのは、われわれの姿勢と実績

これからの司法書士制度を創るのは、私たち。

平成30年11月30日金融庁

「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令」の公表について

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/20181130.html

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(顧客等の本人特定事項の確認方法)

第六条一

ホ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受ける方法

ヘ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌の画像情報をいう。)の送信を受けるとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の写真付き本人確認書類氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路(半導体集積回路の回路配置に関する法律(昭和六十年法律第四十三号)第二条第一項に規定する半導体集積回路をいう。以下同じ。)が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた導体集積回路に記録された当該情報の送信を受ける方法

半導体集積回路・・・SDカードやUSBメモリなど。

ト(1) 他の特定事業者が令第七条第一項第一号イに掲げる取引又は同項第三号に定める取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、当該確認に係る確認記録を保存し、かつ、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等しか知り得ない事項その他の当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告を受けることにより当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを確認していることを確認すること。

ト(2) 当該顧客等の預金又は貯金口座(当該預金又は貯金口座に係る令第七条第一項第一号イに掲げる取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、かつ、当該確認に係る確認記録を保存しているものに限る。)に金銭の振込みを行うとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該振込みを特定するために必要な事項が記載された預貯金通帳の写し又はこれに準ずるものの送付を受けること。

司法書士法第3条1項4号、5号業務について

司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC1000000197

(業務)

第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。

五 前各号の事務について相談に応ずること。

事実関係

1 知人を通じて相談にのって欲しいと依頼される。

2 相談者から話を聴く。

・飲食店を営んでいる。

・沖縄県感染拡大防止対策協力金(うちなーんちゅ応援プロジェクト)の申請を行った。

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/covid19/kyoryokukintop.html

・何回か申請しており、1度目、2度目は協力金が支給された。

・3回目は不支給決定の通知がメールで来た。

・メールに返信する形で不支給決定の理由を県の担当者に訊いたが、教えてもらえなかった。

・居住地の役場に相談し、行政書士を紹介してもらった。

・行政書士に相談すると、「このようなことは行政書士には出来ない。司法書士か弁護士の仕事。」と指摘された。

3 当職の行動

・沖縄県総務部行政管理課(沖縄県行政不服審査会の管轄課)に、司法書士であることを示して問い合わせのメールを送信した。

・電話での返信と確認内容

 普通は不支給決定に関して理由がある。もう一度訊いてみて欲しい。沖縄県感染拡大防止対策協力金(うちなーんちゅ応援プロジェクト)は行政処分ではなく決定なので、不服申立て制度がない。行政不服審査請求(弁護士・(特定)行政書士業務)は不可能。

 理由を訊いて、不備があれば訂正、協力金の審査要件を満たしていなければ不支給決定。理由が分からなければ、対応は出来ない。

新型インフルエンザ等対策特別措置法45条2項

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=424AC0000000031

・私を書類作成者として、沖縄県の担当宛に協力金不支給決定の理由を開示するよう、内容証明郵便を送付。3度受取拒否されたため、レターパック370により送付。

・協力金不支給決定の理由を開示する書面の宛名は相談者本人。

・電子内容証明を利用したため、相談者と私は署名押印していない。レターパック370で送付した書面についても同様。

4 沖縄県担当者の行動

・沖縄県の担当者から相談者宛に、司法書士は県庁に対する書類を作成できず違法であること、報酬を支払う約束をしていることから悪質であり、関係捜査機関と協力して然るべき対処を行う、という内容の電話あり。相談者には捜査・事情聴取に協力して欲しいとのお願い。

・相談者への協力金支払いが遅くなる、私は懲戒請求の調査、刑事事件の捜査で対応する可能性があるため、当職と相談者の委任契約解除。協力金支給に関しては、弁護士に繋げる。

上記の行動は、司法書士法違反、行政書士法違反、弁護士法違反でしょうか。

 私は司法書士法3条1項4の前段業務として、当然に可能だと考えていました。これまで、貸金の返還請求や、アパート賃料未払い金請求のための内容証明郵便を、書類作成者として受任してきました。相談者から資料を見せていただき話を聴いた後、選択肢を示し、書類を作成する。最後に書類の内容を依頼者に確認してもう。依頼者から印鑑などは預からない。というような内容で進めてきました。

 今回も、内容証明郵便が届かなかった事実を含めて未支給決定の理由が開示されなければ、書類作成者として、民事調停などを申し立てることを前提としていました。

 宛先が官公庁だと、司法書士には出来なくて行政書士・弁護士業務である、という根拠法令・判例を見つけることが出来ませんでした。もしあれば、どなたか教えていただければ幸いです。

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