金融法学会第39回大会メモ

資金決済法制の最近の動向について

2022年10月15日金融庁企画市場局参事尾﨑有

・資金決済法改正(2022年)の概要

電子決済手段等への対応

(1)暗号資産・ステーブルコインを巡る動向

(2)今回の法改正の内容

 銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応高額電子移転可能型前払式支払手段への対応

資金決済法改正(2022年)の概要

金融のデジタル化等に対応し、安定的かつ効率的な資金決済制度を構築する

海外におけるいわゆるステーブルコイン等の発行・流通の増加

銀行等におけるマネロン対応等の更なる高度化の要請

高額で価値の電子的な移転が可能な前払式支払手段の広がり

電子決済手段等への対応

電子決済手段等取引業等の創設

電子決済手段等の発行者(銀行・信託会社等)と利用者との間に立ち、以下の行為を行う仲介者について、登録制を導入

[対象行為]電子決済手段の売買・交換、管理、媒介等

銀行等を代理して預金債権等の増減を行う行為

[参入要件]財産的基礎、業務を適正/確実に遂行できる体制等

[規制内容]利用者への情報提供、体制整備義務等

[監督]報告・資料提出命令、立入検査、業務改善命令等

銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応

銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応

為替取引分析業の創設

 預金取扱金融機関等の委託を受けて、為替取引に関し、以下の行為を共同化して実施する為替取引分析業者について、許可制を導入

[対象行為]取引フィルタリング、取引モニタリング

[参入要件]財産的基礎、業務を適正/確実に遂行できる体制等

[規制内容]情報の適切な管理、体制整備義務等

[監督]報告・資料提出命令、立入検査、業務改善命令等

高額電子移転可能型前払式支払手段への対応

高額電子移転可能型前払式支払手段の発行者について、

業務実施計画の届出、犯収法の取引時確認義務等の規定を整備

電子決済手段等への対応

  • 暗号資産・ステーブルコインを巡る動向

デジタル資産の拡大

 ブロックチェーン技術の登場を契機に、デジタル資産は、暗号資産をはじめ、資金調達手段、送金手段、更にはコンテンツ・著作物など急速にその範囲を拡大させた。こうした実態を踏まえ、当局はイノベーション促進と利用者保護等を目指した制度整備を継続的に実施。

暗号資産に係る法制度の整備(2016年法改正)

2014年ビットコインの売買業務を行っていたMTGOX社について、破産手続が開始

G7エルマウ・サミット首脳宣言(2015年6月)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_001244.html

「我々は、仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め、全ての金融の流れの透明性拡大を確保するために更なる行動をとる。」

FATF(金融活動作業部会)ガイダンス(2015年6月)

https://www.fatf-gafi.org/documents/guidance/?hf=10&b=0&s=desc(fatf_releasedate)

各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に対し、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認義務等のマネーロンダリング・テロ資金供与規制を課すべきである。

資金決済法・犯罪収益移転防止法等の改正(2017年4月施行)

暗号 資産の交換業者に 登録制を導入 登録制を導入

口座開設時における本人確認等を義務付け

・利用者保護の観点から、一定の制度的枠組みを整備

(最低資本金、顧客に対する情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理、システムの安全管理など)

暗号資産に係る法制度の整備(2019年法改正)顧客の暗号資産の流出事案が発生

暗号資産が投機対象化

事業規模の急拡大の一方で、交換業者の態勢整備が不十分

暗号資産が投機対象化

暗号資産を用いた新たな取引が登場(証拠金取引、ICO)

暗号資産に係る法制度の整備(2019年法改正)

利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備

国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更

5.資金決済法・金融商品取引法等の改正(2020年5月施行)

⇒「仮想通貨交換業等に関する研究会」を11回にわたり開催(2018年4月~12月)し、暗号資産交換業等を巡る諸問題についての制度的な対応を検討

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/kasoukenkyuukai.html

利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備

国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更

 交換業者が顧客から預かっていた暗号資産のうち、ホットウォレット(オンライン)で管理していた暗号資産が流出する事案が複数発生

 交換業者に対し、業務の円滑な遂行等のために必要なものを除き、顧客の暗号資産を信頼性の高い方法(コールドウォレット等)で管理することを義務付け。ホットウォレットで管理する顧客の暗号資産については、別途、見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持を義務付け

過剰な広告・勧誘への対応

交換業者による過剰な表現を用いた広告・勧誘

広告・勧誘規制を整備

・虚偽表示・誇大広告の禁止

・投機を助長するような広告・勧誘の禁止など

暗号資産の管理のみを行う業者への対応

 FATF(マネロン対策等を扱う国際会議)が、暗号資産の管理のみを行う業者(カストディ業者)について、各国協調して規制を課すことを求める勧告を採択〔2018年10月〕

 カストディ業者に対し、暗号資産交換業規制のうち、暗号資産の管理に関する規制を適用(本人確認義務、分別管理義務など

問題がある暗号資産への対応

移転記録が公開されずマネロンに利用されやすいなどの問題がある暗号資産が登場

交換業者が取り扱う暗号資産の変更を事前届出とし、問題がないかチェックする仕組みを整備

(注)交換業者が取り扱う暗号資産を審査する自主規制機関とも連携

問題がある暗号資産への対応

暗号資産の取引において、不当な価格操作等が行われている、との指摘

風説の流布・価格操作等の不公正な行為を禁止

暗号資産に関するその他の対応

交換業者の倒産時に、預かっていた暗号資産を顧客に優先的に返還するための規定を整備

国内の暗号資産の取引の約8割を占める証拠金取引について、現状では規制対象外

外国為替証拠金取引(FX取引)と同様に、金融商品取引法上の規制

(販売・勧誘規制等)を整備

詐欺的な事案も多い等の指摘がある中、ICOに適用されるルールが不明確

※ICOは、企業等がトークン(電子的な記録・記号)を発行して、投資家から資金調達を行う行為の総称

 収益分配を受ける権利が付与されたトークンについて、投資家のリスクや流通性の高さ等を踏まえ、

・ 投資家に対し、暗号資産を対価としてトークンを発行する行為に金融商品取引法が適用されることを明確化

・ 株式等と同様に、発行者による投資家への情報開示の制度やトークンの売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制等を整備

米国連邦法・NY州法における暗号資産・ステーブルコインに関連する現行規制の概観

米国NY州において、暗号資産・ステーブルコインに関するビジネスを行う場合、

・連邦銀行機密法(BSA)に基づく基本的なAML/CFT規制

・スキームの実態等に応じて送金・銀行規制、暗号資産規制、証券規制、商品先物規制等の中で該当する規制

が重畳適用されることになる。

デジタル資産の責任ある開発を確保するための米大統領令(2022年3月)

 2022年3月、ホワイトハウスは、デジタル資産の責任ある開発に関する米大統領令を公表。本大統領令は、暗号資産やステーブルコイン、CBDCを含むデジタル資産に関する政府全体戦略として、米国当局間の連携を含めた対応を指示するもの。

欧州の暗号資産に対する規制案

2020年9月、欧州委員会はステーブルコインを含む暗号資産(注1)の規制案(通称「MiCA」)を公表(注2)

 ステーブルコイン(電子マネートークン及び資産参照型トークン)の発行体に開示規制や資産保全義務を課すとともに、暗号資産のカストディ、交換、トレーディング・プラットフォームの運営を含む暗号資産サービスの提供者についても認可制を採用して様々な規制を課す内容となっている(注3)

(注1)規制案にいう「暗号資産」とは、分散型台帳技術又は類似の技術を用いて電子的に移転・価値保存される価値・権利をデジタルに表章したものをいう。

(注2)2022年3月14日に欧州議会で承認。次の段階として、2022年後半に三者協議(欧州議会・欧州理事会・欧州委員会)を実施予定。6月末に暫定合意。

(注3)現行のEU規制が適用される金融商品、電子マネー(電子マネートークンとしての性質を有するものを除く)等については、適用対象外

英国を暗号資産技術の世界的なハブとするための施策に関する発表(2022年4月)

2022年4月、英国政府は、英国を暗号資産技術と投資の世界的なハブとするための各施策を公表。公表された一連の施策は、英国における企業の投資、発展、成長を支援し、英国の金融サービス業界がテクノロジーやイノベーションの最先端の地位を維持することが目的

米国連邦法・NY州法におけるステーブルコインに関連する現行規制の概観

 連邦法

 いわゆるステーブルコインのみを対象とする固有の規制はないが、ステーブルコインを送付等する場合、連邦銀行機密法(BSA)のMoney Transmitterとして、AML/CFT規制に服する。現状、ステーブルコインに関して、複数の連邦規制当局からの監督を受ける可能性がある(連邦証券諸法、商品取引法等がステーブルコインに適用されるかについては、議論がある。)。

 ニューヨーク(NY)州法

 いわゆるステーブルコインのみを対象とする固有の規制はないが、ステーブルコインの発行・移転等を含む暗号資産事業活動を行う場合、NY州暗号資産規制(23 NYCRR Part 200)に基づきBitLicenseを取得しなければならない。

※ NY州銀行法上の銀行・信託会社であって、当局の承認を得た者は、BitLicenseの取得は不要(NY州暗号資産規制には従う必要)。

※ 法定通貨を送金する場合には、NY州のMoney Transmitterライセンスが必要であり、Bitライセンシーが顧客の暗号資産(NY州法上はステーブルコインを含む)を償還するためには、BitLicenseに加えてNY州法上のMoney Transmitterのライセンスを取得するのが一般的とされている。

電子決済手段等への対応

  • 今回の法改正の内容

資金決済WG報告(2022年1月11日)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220111.html

金融サービスのデジタル化への対応

1.電子的支払手段に関する規律のあり方

 ステーブルコインの分類

 ステーブルコインについて、現行制度の考え方に基づけば、価値を安定させる仕組みによって、以下のとおり分類できると考えられる。

ア 法定通貨の価値と連動した価格(例:1コイン=1円)で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの(及びこれに準ずるもの59)イ ア以外(アルゴリズムで価値の安定を試みるもの等)

59 上記アに該当するかどうかは、スキーム全体を見て実質的に判断することとなる。(略)

(参考1-3)電子的支払手段について

 本報告では、電子的支払手段について、送金・決済サービスにおける活用との機能に着目し、「資金決済法の『通貨建資産』のうち不特定の者に対する送金・決済に利用することができるもの(電子的方法により記録され、電子情報処理組織を用いて移転することができるものに限る)」と整理している。この定義は、既存のデジタルマネー(預金・未達債務)及びステーブルコインのうちの「デジタルマネー類似型」をカバーするが、同時に同様の機能を果たす様々な性質のものを含み得る。

 この点について、「不特定の者に対する送金・決済に利用することができる通貨建資産」に該当するもののうち、一般的に広く送金・決済手段として利用され得る状況には至っていないと評価されるもの(国債、社債、電子記録債権、前払式支払手段等)の取扱いが論点となる。これらの通貨建資産については、原則として「電子的支払手段」から除外しつつ、例外的にその流通性等に鑑み送金・決済手段としての機能が強いと認められるものを「電子的支払手段」に含めることができる枠組みとすることが考えられる 。

「高額電子移転可能型前払式支払手段」の実務上の対応等

[利用者利便・実務上の対応への配慮]

対応

前払式支払手段の利用の多くは少額。

前述の犯収法に基づく本人確認(取引時確認)は、オンラインで完結する本人確認方法で行うことが可能。

利用者が同一のアプリ等においてシームレスに高額電子移転可能型に移行できるような仕組みを可能とする。

発行者側のシステム対応に加え、既存ユーザーへの周知が必要であること等を踏まえ、適切な猶予期間を設ける。

(参考)高額電子移転可能型前払式支払手段の詳細(以下のア~オの全ての要件を満たす前払式支払手段

第三者型前払式支払手段(電子機器その他の物に電磁的方法により記録されるものに限る)

電子情報処理組織を用いて移転することができるもの((a)残高譲渡型、(b)番号通知型(狭義)及び(c)これに準ずるもの)

アカウント(発行者が前払式支払手段に係る未使用残高を記載し、又は記録する口座をいう)において管理されるものエ 上記ウのアカウントは繰り返しのチャージ(リチャージ)が行えるものに限る

次の(a)~(c)に掲げる場合の区分に応じ、当該区分に定める要件のいずれかに該当するもの。

(a)残高譲渡型の場合 他のアカウントに移転できる額が一定の範囲を超えるもの(例:1回当たりの譲渡額が10万円超、又は、1か月当たりの譲渡額の累計額が30万円超のいずれかに該当)

(b)番号通知型(狭義)の場合 メール等で通知可能な前払式支払手段(ID番号等)によりアカウントにチャージする額が一定の範囲を超えるもの(例:1回当たりのチャージ額が10万円超、又は、1か月当たりのチャージ額の累計額が30万円超のいずれかに該当)

(c)上記(b)に準ずるものの場合 アカウントへのチャージ額・利用額が一定の範囲を超えるもの(例:1か月当たりのチャージ額の累計額、1か月当たりの利用額の累計額のいずれもが30万円超)

※ただし、上記(a)~(c)のいずれかに該当するものであっても、アカウントに係る未使用残高の上限額が一定額以下のもの(例:30万円以下)は、対象外(高額電子移転可能型前払式支払手段には該当しない)。

金融法の体系の中の「資金決済法」

得津晶(一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻)

報告の内容

 金融監督法(公法)の中の資金決済法の位置づけ

資金決済(為替取引)を銀行業からの独立した一分野に

監督法上の特殊性(倒産隔離の必要性)のため倒産法上の取扱い

 金融取引法(私法)の中の資金決済法の位置づけ

倒産法上の取扱い(倒産隔離効ある救済の有無)の基準

「法的性質論」(or 当事者間の合意)→社会的な種類物性の程度へ

金融監督法(公法)

伝統的な金融法の体系:銀行・証券・保険(金融庁設置法3条などより)

機能的な金融法の分類

金融審議会「金融制度スタディ・グループ中間整理―機能別・横断的な金融規制体系に向けて」(平成30年6月19日)

資金決済法の独立

資金決済領域の様々な事業

•銀行法:為替取引(銀行法2条2項2号)

•資金決済法:前払式支払手段(3条)・資金移動業(2条2項)・暗号資産交換業(2条7項)・電子決済手段等取引業(2条10項)

•割賦販売法:包括信用購入あっせん(2条3項)

伝統的には銀行の固有業務の一部→多様な決済手段を銀行以外にも認める=「資金決済」が銀行業から独立

•「資金移動業」(資金決済法2条2項)「銀行等以外の者が為替取引を業として営むこと」

2009年改正で導入:送金上限額規制などで制約

2020年改正で拡充・一般化:第一種~第三種の類型ごと

⇒問:資金決済に銀行規制を課さなくてよい理論的な正当性はどこにあるのか?

銀行規制の根拠

問:資金決済に銀行規制を課さなくてよい理論的な正当性はどこにあるのか?

→問:そもそも銀行業に銀行規制を課す理論的な根拠はどこにあるのか?

• 伝統的な整理:「システミックリスク」(岩原紳作「銀行の決済機能と為替業務の排他性」『金融法論集(上)』51ー52頁)

銀行業=受信(預金の受入れ)と与信(貸付)の兼営+為替取引(銀行法2条2項)

「受信と与信の兼営」と「為替取引」のシステミックリスクの違い

ナローバンク論:「違う」

ナローバンク:与信の提供を行わず預入金は100%リザーブ×

同じ/分けて考えるべきではない(岩原紳作「銀行の決済機能と為替業務の排他性」『金融法論集(上)』73-74頁)

銀行規制の根拠:システミックリスク

問:そもそも銀行業に銀行規制を課す理論的な根拠はどこにあるのか?

2つの「システミックリスク」の区分←「困難は分割せよ」

預金の受入れと貸付の兼営=流動性ミスマッチを原因とする取り付けをめぐる囚人のジレンマ状況

→強制的な預金保険→モラルハザード→債権者モニタリングの「代替」としての法規制・銀行の健全性確保のための規制

② 資金決済=ネットワーク効果・連鎖倒産のおそれ→2つの解決策

1) 破産させない=銀行の健全性確保

2) 倒産隔離

⇒資金決済と預金の受入れ・貸付の兼営とを同一の規律にする理由はない

•資金決済と受信・与信の兼営とを同一の規律にする理由はない=資金決済を銀行業から独立

理論的なインパクト

•銀行法の銀行業定義規定:「為替取引」の法定他業への降格?

銀行法3条「みなし銀行業」の位置づけ

流動性のミスマッチ(受信を与信せず有価証券投資など)を銀行業の本質に→「みなし」から「銀行業」への昇格?

「銀行代理業」(2条14項3号):為替取引にのみ関与する場合と受信・与信の兼営に関与する場合とで規制に区分の可能性?

金融監督法からの「資金決済法」:ネットワーク効果・連鎖倒産のおそれ

2つの解決策

1)破産させない

2)倒産隔離→資金決済手段が利用者の倒産時(特に誤振込や無権限取引)にいかなる規律に服するかの議論が必要

=金融取引法における倒産隔離効・占有と本件の一致という問題の位置づけの明確化が必要

資金決済手段の倒産時の取扱い

•「帰属」:倒産した場合に取戻権が認められる主体

•占有=紙(有体物)の占有+記録の保持

当事者間で当該権利について移転する契約が成立したものの、記録が移転していなかった場合、当該権利は譲渡人と譲受人のいずれの責任財産に帰属するのか。=権利移転の対第三者対抗要件

記録の移転後に、当該譲渡の原因となった契約が解除されたものの、記録は譲受人にとどまっていた場合に、当該権利はどちらに帰属するのか。=原因契約が解除された場合(原因関係との無因性1)

記録の移転の原因となった契約が錯誤や詐欺で取り消された場合に、記録が譲受人にとどまっている状態で、当該権利はどちらに帰属するのか。=原因契約無効・取消の場合の帰属(原因関係との無因性2)

これまでの議論:法的性質論

物権なのか債権なのか、金銭なのか

所有権・物権=倒産隔離効あり(=優先権あり)

(金銭)債権=原則・倒産隔離効なし(=優先権なし)

限界:暗号資産・ステーブルコインなど新たな支払決済手段

•近時の有力説:当事者間の契約によって決定可能(小塚=森田『支払決済法〔第3版〕』196、203)

×第三者(債権者)の利害に影響

法的性質の操作可能性の限界

•そもそも法的性質を政策判断に基づいて操作できるのか?

例題:「有価証券」ないし「金銭」を契約で自由に設定することができるか?

2つの問題

法令上の根拠なく「金銭」・「有価証券」(ないし「証券口座」)を作ることができるか?

紙ではないデータを「金銭」「有価証券」とすることができるか?

•「預金口座」の法的性質をめぐる議論―契約による金銭的な取り扱いの創出

•有価証券をめぐる議論

問題:法令上の根拠のない有価証券

民事行政当局:有価証券には特別の法律の規定または慣習法が必要(民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針III—契約および債権一般(2)』344頁)

最判昭和44・6・24民集23巻7号1143頁:制定法上の根拠のない学校債について「無記名証券たる有価証券」であることを肯定

調査官解説:「券面上の記載を客観的に観察」=所持人払の趣旨が表れているかどうかすなわち発行者の意思が無記名証券を発行することにあったかどうか(吉井直昭「判解」最判解民事昭和44年度532)※学説も立場が分かれる

問題:紙ではないデータの「有価証券」化=特別法(社債等保管振替法など)に根拠のない「口座」を認めることができるか?

法的性質決定の操作可能

なにが金銭(所有と占の一致)―有価証券・証券口座―その他その他債権を決めるのか。

種類物性基準の提唱

•金銭の所有と占有の一致の根拠:「究極の種類物」=種類物性(「特定」が生じないこと)⇒「種類物」としての性質の強さが必要条件(≠十分条件)

種類物性が強い:物権的保護(倒産隔離効ある保護)が不可能

種類物性が弱い:物権的保護(倒産隔離効ある保護)の可能性(必須ではない)

「物権」「債権」「財産権」という法的性質に直接の関係はない

具体的な当事者の合意のみには依存しない

社会的な取り扱い・受容が決定基準の必要条件

参考:

「支払単位」(森田宏樹「仮想通貨の私法上の性質について」2018・森田宏樹「電子マネーの法的構成」1997未完)=高い種類物性として説明可能

貨幣・暗号資産(財産権)・決済性預金(債権「更改的効果」森田宏樹「振込取引の法的構造」2000)

「口座の記録」(森田宏樹「有価証券のペーパーレス化の基礎理論」2006):口座の記録に占有を認める

それを証券口座的に扱うか(有価証券基準)決済性預金口座的に扱うか(金銭基準)は社会的な「種類物性」に依存

結論

金融監督法(公法)の中の資金決済法の位置づけ

銀行業の規制根拠である「システミックリスク」に2つの異なる意味

1)流動性ミスマッチ←受信と与信の兼営

囚人のジレンマ状況→強制的預金保険→債権者にモラルハザード→代替としての銀行規制

2)ネットワーク効果・連鎖倒産のおそれ←為替取引≒決済領域

倒産隔離規制(供託など)⇒資金決済・為替取引は銀行業からの独立可能。倒産隔離の必要性のため倒産法上の取扱いの議論が必要

金融取引法(私法)の中の資金決済法の位置づけ

倒産法上の取扱い(倒産隔離効ある救済の有無)の基準

「法的性質論」(あるいは当事者間の合意)→社会的な種類物性の程度へ

金銭その他の支払手段の預かりに関する規制について

加毛明(東京大学大学院法学政治学研究科)

1.はじめに

決済と金銭その他の支払手段の預かり

為替取引:「為替業者による受信行為と資金移動指図の執行行為」(岩原

[2003]539頁)

業として預り金をすることの禁止

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)による預り金の原則的禁止

金融規制法における金融業者の預り金の禁止→預り金禁止の趣旨・射程に関する検討の必要性

新たな支払手段の登場→預り金禁止の趣旨が妥当するか否かの検討の必要性

決済と金銭の預かりの関係

金融審議会・金融制度スタディ・グループ「中間整理」

機能別・横断的な金融規制の体系

金融の機能の分類――「決済」、「資金供与」、「資産運用」、「リスク移転」

「預金受入れ」の位置付け

「……預金には元本保証性があり、国民に広く利用される安全確実な価値の貯蔵、運用手段という側面や、法定通貨とほぼ同等に決済に利用できる決済手段という側面がある。」(金融審議会・金融制度スタディ・グループ[2018]10頁)

「……預金は資金の出し手から見れば「資産運用」という機能の一形態であるほか、サービス提供者から見れば、「預金受入れ」を単独で行うのではなく、「決済」や「資金供与」と併せて行うことが一般的とも考えられる。」(金融審議会・金融制度スタディ・グループ[2018]10-11頁)

決済と金銭の預かりの関係

預金者が(商業)銀行に金銭を預ける目的

「安全確実な価値の貯蔵」

「安全確実な資産運用」

銀行による運用方法としての「資金供与」=信用創造機能

「法定通貨とほぼ同等に決済に利用できる決済手段」の利用

銀行による預金(預金通貨)という支払手段の提供

(商業)銀行による金銭の預かり(預金)の特徴

規定の内容

業としての預り金の禁止(出資法2条1項)

罰則

預り金禁止違反(出資法8条3項1号)

預り金禁止を免れる行為(出資法8条3項2号) cf. 銀行業の無免許営業罪(銀行法61条1号)

みなし銀行業(銀行法3条)/営業の免許(銀行法4条1項)

他の法律に特別の規定のある者の除外(出資法2条1項)

預り金の意義(出資法2条2項)

不特定かつ多数の者からの金銭の受入れ(出資法2条2項柱書)

預金、貯金又は定期積金の受入れ(出資法2条2項1号)又は社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、1号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの(出資法2条2項2号)

金融庁「事務ガイドライン第3分冊:金融会社関係 2 預り金関係」

不特定かつ多数の者が相手であること

金銭の受け入れであること

元本の返還が約されていること

主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること

 出資金規制との関係

 立法の経緯

昭和24年 貸金業の取締に関する法律(旧貸金業法)

貸金業者による預り金の禁止(旧貸金業法7条1項)

「最近の金融梗塞に伴いまして、あるいは高金利惡質な貸金業者が乱立し、あるいは巧みに仮装して預金貯金等の受入れをなし、銀行法等の違反行為をなすものも多数生ずる状態になりましたので、これらの貸金業者を取締り、その公正な運営を保障するとともに、最近の金融の逼迫に乘じて発生いたしました不正金融等を取締ることにより、金融の健全な発達をはかるために、本法案を提出しようとするものであります。」(第5 国会衆議院大蔵委員会議録32号(1949年)898頁〔愛知揆一〕)

「……預金等は正規の金融機関のみが取扱い、貸金業者はもつぱら金銭の貸付またはその媒介のみを行うこととするため、貸金業者は預金、貯金、掛金その他何らの名義をもつてするを問わず、不特定多数の者からこれらのものと経済的性質を同じくする金銭の受入れをしてはならないこと……としたのであります。」(第5国会衆議院大蔵委員会議録32号(1949年)898頁〔愛知揆一〕)

  立法の経緯

昭和29年出資法

銀行法その他の金融関係法規の脱法行為の禁止

「また預金の受入れ等の受信業務につきましては、現在すでに各般の金融関係法規によりまして、行政庁の免許ないし認可を受けた金融機関以外の者がこの業務を営むことを禁止しているのでありますが、最近はこの面における脱法的な行為もいよいよ巧妙な手段がとられるようになりまして、取締りに困難を加えて参つておる実情であります。従いまして、この際預金の受入れ等の禁止の範囲について明確な規定を設ける等の措置によりまして、取締りに便ならしめ、もつて金融秩序の維持をはかることといたしたいのであります。」(第19回国会衆議院大蔵委員会議録18号(1954年)371頁〔植木庚子郎〕)

 出資金の規制

不特定かつ多数の者に対し、出資金の全額以上に相当する金銭を払い戻す旨を示して、出資金を受け入れることの禁止(出資法1条)

出資金の性質に反する元本返還の約束→出資をしようとする者の誤認の防止(津田[1954]770頁)

背景:利殖機関による大衆からの金銭受入れの社会問題化(経済保全会事件、日本殖産金庫事件など)

罰則

出資金規制違反(出資法8条3項1号)、出資金規制を免れる行為(出資法8条3項2号)

刑法に正条がある場合の不適用(出資法8条4項)

「実際には、本条にふれる行為は詐欺罪にあたる場合が多いであろうが、詐欺罪を以てしては、捜査権の発動、立証の点につき困難な場合が少なくなく、早期に出資者大衆を不測の損害から保護することに欠けるうらみがあるところに、本条の実際上の意義があるわけである。この意味において、その防犯的意義は、……いわば詐欺罪を挙動犯形式においては握規制をしたものということができよう。」(吉田[1968]43頁)

 運用の実態

出資法1条ではなく、出資法2条1項による立件

「このように本条は当時多発した大衆からの資金集めの形態を念頭に置いて新設されたが、本法成立後はこれに該当するものとしての摘発は余りなく、また一条違反と二条違反の関係が微妙であることも理由となって、一条が実際に適用される例はほとんどみられず、その後はむしろ二条が適用される事例が多くみられる。」(芝原[2005]385頁)

原因

出資法1条の適用範囲の限定

出資法2条1項の適用範囲の広範さ

出資金(出資法1条)と預り金(出資法2条1項)の関係

出資金規制との関係

課題

「出資法二条の規制範囲は広すぎるから、実際の適用範囲を明確にするためにも(……)、もう少し絞り込む必要があり、また、②出資法一条の規制範囲は狭すぎるのであって、もう少し拡大する必要があるだろう(……)。」(京藤[1998]363頁)

出資法1条の適用範囲の拡張

金銭提供者による適切なリスク判断の可否という基準

金銭提供者のリスク判断を著しく歪める行為の存在

リスク判断ができない金銭提供者からの金銭の受入れ

出資法2条1項の適用範囲の限定

起訴便宜主義と処罰範囲の不明確化

⑶ 預り金禁止の趣旨

 判例

最判昭和36年4月26日刑集15巻4号177頁

「……預金の受入等の受信業務は、それが一般大衆を目的とするときは、その一般大衆から財貨を受託することになるのであるから極めて公共的色彩が強く、したがつて、その契約の履行には確乎たる保障がなければならないとともに、その業務がひとたび破綻をきたすようなことがあれば、与信者たる一般大衆に不測の損害を及ぼすばかりでなく、ひいてはこれら大衆と取引関係に立つ者にまでつぎつぎに被害を拡大して、社会の信用制度と経済秩序を攪乱するおそれがあり、これを自由に放任することは、預金等を為さんとする一般大衆の地位を保護し、社会の信用制度と経済秩序の維持と発展を図る上に適当でないので,既に銀行法等他の法律によつて、免許ないし認可を受けた金融機関等のみに行わせ、それ以外の者がこれを営むことを禁止しているのである。」

銀行規制の根拠との関係

 銀行の特徴――資産・負債間の流動性ギャップ(ミスマッチ)

• 要求払預金の受入れと信用創造

預金の一部が恒常的に銀行に留まることに対する合理的な期待(「返済期限の到来しない借入れ」(高橋編著[2010]199頁))

銀行の信認低下などを原因とする多数の預金者からの払戻しの請求と取付け

「返済期限が到来した借入れ」への転化(高橋編著[2010]199頁)

銀行規制の根拠との関係

預金者の要保護性

預け入れた金銭の払戻しを受けられないおそれ

預金者による自衛の困難

預金者が長年にわたって同じ銀行に口座を有し続ける傾向

小口預金者のモニタリング能力・インセンティヴの欠如(関口[2020]85-86 頁)

預り金禁止の趣旨

銀行規制の根拠との関係

システミック・リスク

破綻した銀行と関係のない者への影響の波及(関口[2020]85頁)

システミック・リスクを考慮に入れた経営を行うインセンティヴの欠如(関口[2020]85頁)

システミック・リスクが生じる原因(白川[2008]299頁)

取付けに関する預金者の心理的な連想

銀行間での与信の焦げ付き

時点ネット決済システムを通じた連鎖的波及

 預り金禁止の趣旨

銀行規制の根拠との関係

 銀行規制の根拠と預り金禁止の関係

資産・負債間の流動性ギャップ

流動性ギャップの重大さを基準とせずに預り金を禁止すること

流動性ギャップの発生を回避・抑制する方策

預り金の運用による長期の非流動資産の保有の禁止

預り金の保全

決済目的での利用への限定

流動性の高い金融資産による運用への限定(関口[2020]88頁)

金銭を預かる期間の制限

 預り金禁止の趣旨

 銀行規制の根拠との関係

銀行規制の根拠と預り金禁止の関係

金銭を預け入れた者の要保護性

預り金が返還されないリスクの低減

預り金の保全

金銭を預かる期間の制限

金銭を預け入れた者が負担可能なリスクへの限定

一人当たりの預り金の上限額の制限

預り金禁止の趣旨

 銀行規制の根拠との関係

銀行規制の根拠と預り金禁止の関係

• システミック・リスク

取付けに関する預金者の心理的な連想→預り金の保全

銀行間での与信の焦げ付き→預り金を原資とする資産供与の禁止

時点ネット決済システムを通じた連鎖的波及→決済システムへの参加の有無・態様

預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

前払式支払手段

保有者に対する払戻しの原則禁止(資金決済法20条5項本文)

元本返還約束の不存在を理由とする預り金該当性の否定

「……プリペイド・カードについて、一般的換金を行うような、すなわち一般的に元本の返還が約されていると解されるような場合には、出資法違反の疑いが生じよう。」(プリペイド・カード等に関する研究会[1989]22頁)

保有者に対する払戻しの義務付け(資金決済法20条1項)又は許容(資金決済法20条5 項ただし書)

流動性ギャップ発生の抑制

cf. 出資金規制との関係

「一般大衆の保護の観点については、元本保証を行って資金を募る詐欺的な資金募集が行われないようにするものと考えられる。」(高橋編著[2010]63頁)

預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

前払式支払手段

発行保証金の供託(資金決済法14条1項)、発行保証金保全契約

(資金決済法15条)、発行保証金信託契約(資金決済法16条1項)

預り金が返還されないリスクの低減

保有者1人当たりの発行額の制限

保有者が負担可能なリスクへの限定

預り金禁止が決済法制において有する意義

 資金決済法による預り金禁止への対処

 資金移動業

資金移動業者による利用者からの資金の受入れ

パブリック・コメントに対する金融庁の回答

「例えば、資金移動業者が、送金依頼人から送金指図を受けるとともに、当該指図に係る送金資金を送金依頼人のアカウントに受け入れるなど、送金資金が具体的な送金依頼と結びついている場合には、当該送金資金の受入れは、出資法第2条第2項で禁止される「預り金」には該当しないと考えられます。ただし、資金移動業者は、銀行と異なり預金の受入れはできず(銀行法第2条第2項)、送金と無関係に資金を預かったり、送金用口座と称して長期間金銭を預かり利息を付すなど、その実態によっては実質的に「預り金」に該当する場合も考えられます。」(金融庁[2010]40頁)

預り金該当性の否定と出資法2条1項の適用の否定(高橋編著[2020]195頁参照)

資金移動業者による金銭の受入れが許容される根拠の検討

 預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

 資金移動業

第二種資金移動業

履行保証金の供託(資金決済法43条1項2号)、履行保証金保全契約(資金決済法44条〔利用者から受け入れた資金を原資とする貸付け等の防止措置(資金移動業者に関する内閣府令30条の3)〕)、履行保証金信託契約(資金決済法45条)

流動性ギャップ発生の回避、預り金が返還されないリスクの低減、システミック・リスク顕在化の抑制

為替取引に用いられることがないと認められる利用者の資金を保有しないための措置(資金移動業者に関する内閣府令30条の2)

流動性ギャップ発生の回避、預り金が返還されないリスクの低減

 預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

 資金移動業

第一種資金移動業

履行保証金の供託(資金決済法43条1項1号)、履行保証金保全契約(資金決済法44条)、履行保証金信託契約(資金決済法45条)

利用者からの金銭の受入れと供託までの期間の短縮

流動性ギャップ発生の回避

資金移動事務の処理に必要な期間等を超える債務負担の禁止(資金決済法51条の2第2項)

預り金が返還されないリスクの低減

預り金禁止が決済法制において有する意義

 資金決済法による預り金禁止への対処

資金移動業

第三種資金移動業

各利用者に対して負担する債務の額の制限(資金決済法51条の3、資金決済に関する法律施行令17条の2)

利用者が負担可能なリスクへの限定

履行保証金の供託(資金決済法43条1項2号)、履行保証金保全契約(資金決済法44条)、履行保証金信託契約(資金決済法45条)

預貯金等による管理の許容(資金決済法45条の2)

 預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法の適用がない場合における預り金禁止への対処

収納代行

収納代行業者による利用者からの金銭の受入れ

弁済受領権限の意義

預り金禁止への対処

受け入れた金銭の保全

分別管理

金融機関による保証

信託の設定

自己信託による信託設定の可能性

利用者の金銭を預かる期間の制限

利用者1人当たりの受入れ金銭の制限

預り金禁止が決済法制において有する意義

 金銭を受け入れない決済サービスの提供

電子決済等代行業

為替取引の指図の受領・伝達(銀行法2条17項1号)、口座情報の取得・提供(銀行法2条17項2号)

「電子決済等代行業については、利用者の資金を預かることは想定していない……。」(井上監修[2018]37頁)

利用者から金銭を受け入れずに決済サービスを提供する可能性

預り金が許容される金融業者

金融商品取引業

有価証券の売買等に関して顧客から金銭などの預託を受けること(金融商品取引法2条8項16号)

分別管理・信託(金融商品取引法43条の2第2項、金融商品取引業等に関する内閣府令141条~141条の3)

暗号資産交換業

暗号資産の売買等に関して利用者の金銭の管理をすること(資金決済法2 条7項3号)

分別管理・信託(資金決済法63条の11第1項、暗号資産交換業者に関する内閣府令26条)

預り金が禁止される金融業者

金融商品仲介業

顧客から金銭等の預託を受けることの禁止(金融商品取引法66条の13、201条4号)

「証券仲介業者は証券取引行為に関し顧客に対し自らが証券取引の法的主体となることがないため、顧客から金銭等の預託を受ける必要がないこと」、「金銭等の預託の受入れの機会があると投資者被害を誘発するおそれがあること」(高橋編[2004]129頁)

金融商品仲介業務と金銭等の受入れの関連性、顧客の利便性に基づく批判(洲崎ほか[2004]50-51頁〔河本一郎〕)

 預り金が禁止される金融業者

金融商品仲介業

顧客から金銭等の預託を受けることの禁止(金融商品取引法66条の13、201条4号)

金融商品仲介業者に期待される役割の限定

「仲介者」である金融商品取引業者等と顧客を「仲介」する者としての位置づけ

金融商品仲介業者の資質・能力に対する評価

「……立法者は、金融商品仲介業者は証券会社と顧客の『つなぎ』に徹するべきであって、顧客の投資活動に深く関与することは妥当でないと考えているように思われます。」(洲崎ほか[2004]40頁〔洲崎博史〕)

「……金融商品仲介業者には証券会社を代理し得るほどの専門性を具備することは求められてないとみられる。」(戸田[2009]505頁)

金銭等の預託のニーズ

「また、売買代金の支払いや受取りも銀行振込みによって行われることが一般化しており、顧客が金融商品仲介業者に金銭を預託するニーズはあまりないといえそうである。」(神田ほか編[2014]984頁注3〔洲崎博史〕)

 預り金が禁止される金融業者

金融サービス仲介業

顧客から金銭等の預託を受けることの禁止(金融サービス提供法27 条本文、88条2号)

「流用・費消等による顧客被害を未然に防止することを図るため、金融サービス仲介業者には、原則として顧客からの財産の受入れを禁止することとしている(……)。」(岡田ほか[2021]11頁)

 預り金が禁止される金融業者

 金融サービス仲介業

決済サービスを提供する方法

顧客から金銭を預かる方法

「顧客の保護に欠けるおそれが少ない場合として内閣府令で定める場合」(金融サービス提供法27条ただし書)

資金移動業の兼業など(金融サービス仲介業者等に関する内閣府令46条)

顧客から金銭を預からない方法

電子決済等代行業の兼業など

cf. 電子金融サービス仲介業務(金融サービス提供法13条1項6号)を行う金融サービス仲介業者による電子決済等代行業の届出(金融サービス提供法18条1項)

 預り金が禁止される金融業者

電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業

利用者から金銭その他の財産の預託を受けることの禁止(改正資金決済法62条の13本文、110条2号、改正銀行法52条の60の13本文。63条の2第2号)

「仲介者が取り扱う電子的支払手段はそれ自体決済手段であり、投資対象ではないこと等から、(暗号資産交換業等と異なり、利用者による機動的な売買を可能とするために)仲介者が別途利用者の金銭を管理することは通常想定されない。」(金融審議会・資金決済ワーキング・グループ[2022]28 頁注101)

預り金が禁止される金融業者

電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業

利用者から金銭その他の財産の預託を受けることの禁止(改正資金決済法62条の13本文、110条2号、改正銀行法52条の60の13本文。63条の2第2号)

批判

特定信託受益権の場合、顧客は必ずしも信託銀行や信託会社に別途金銭を預託しているわけではない。……顧客は第一種金商業者兼電子決済手段等取引業者に金銭をあらかじめ預託し、適宜のタイミングで電子決済手段に交換することができるほうが利便性が高い(……)。特定信託受益権……の典型的な利用例は、ブロックチェーン上のトークンであることを利用して、セキュリティトークンや暗号資産との決済に利用することであるから、電子決済手段等取引業者が金銭の預託ができないとすると、この業登録の取得のインセンティヴが大きく低下すると考えられる。」(河合[2022]31-32頁)

預り金が禁止される金融業者

電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業

預り金禁止の趣旨との関係

金銭の分別管理・信託による保全(河合[2022]32頁注18)

電子決済手段等取引業者による決済サービスの提供の可能性

顧客から金銭を預かる方法

資金移動業の兼業など

顧客から金銭を預からない方法

電子決済等代行業の兼業など

cf. 電子決済等取扱業者による電子決済等代行業を営むことの許容(銀行法52条の60の8第1 項)

 預り金禁止の根拠が金銭以外の支払手段について有する意義

新たな支払手段の登場

「『預金受入れ』の取扱いについては、IT の進展等により、資産を預けて電子的に決済に利用できるなど、預金類似とも言える手段が登場したり、あるいは、将来的にデジタル通貨のようなものが登場したりしてくると、預金の位置付けが大きく変容し、その重要性が相対的なものになっていく可能性があることにも留意する必要があると考えられる。」(金融審議会・金融制度スタディ・グループ[2018]11頁)

詐欺的方法による金銭以外の支払手段の受入れ

出資法2条2項の「金銭」の解釈

預金

脱法行為の処罰(出資法8条3項2号)

「これは、経済情勢が変化し、業者が常に新しい脱法方法を案出するから必要な規定であると説かれている。例えば、法文に『金銭』とあるので『収入印紙』とか『物品』を授受しておき、別にこれを金銭に交換するなどの脱法も抑えなければならない。」

金銭以外の支払手段の預かりに対する規制

受け入れた支払手段の決済利用

支払手段が返還されないリスクの低減、システミック・リスクの顕在化の回避

資産保全(分別管理・信託など)

受け入れた支払手段を原資とする「資金」供与?

参考文献

井上俊剛監修『逐条解説 2017年銀行法等改正』(商事法務・2018年)

岩原紳作『電子決済と法』(有斐閣、2003年)

岡田大ほか「『金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律』の解説(2・完)――金融商品の販売等に関する法律等関連」NBL1191号(2021年)7頁

小田部胤明『出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律と判例の解説〔増補第5 版〕』(東洋企画・2004年)

河合健「ステーブルコインに対する法規制の実務上の論点および関連ビジネスへの影響金法

2193号(2022年)22頁

神田秀樹ほか編著『金融商品取引法コンメンタール2 業規制』(商事法務・2014年)

京藤哲久「出資法の預り金・出資金規制について」『西原春夫先生古稀祝賀論文集 第3巻』(成文堂・1998年)341頁

金融審議会・金融制度スタディ・グループ「中間整理――機能別・横断的な金融規制体系に向けて」https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20180619/chukanseiri.pdf(2018年)

金融審議会・資金決済ワーキング・グループ「報告」

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220111/houkoku.pdf(2022年)

金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」

https://www.fsa.go.jp/news/21/kinyu/20100223-1/00.pdf(2010年)

参考文献

芝原邦爾「出資法をめぐる法解釈上の諸問題」芝原邦爾『経済刑法研究 上』(有斐閣・2005年)383頁〔初出1996年〕

白川方明『現代の金融政策――理論と実際』(日本経済新聞出版社・2008年)

洲崎博史ほか「平成一五年の証券取引法等の改正Ⅲ――証券仲介業制度」別冊商事法務275 号(2004年)37頁

関口健太「金融規制法における『預金受入れ』の位置付けについての一考察――スイスにおける改正銀行法を手掛かりとして」金融研究39巻2号(2020年)55頁

高橋康文編『詳解 証券取引法の証券仲介業者、主要株主制度等――平成15年における証券取引法等の改正』(大蔵財務協会・2004年)

高橋康文編著『詳説資金決済に関する法制』(商事法務・2010年)

津田実「出資の受入預り及び金利等の取締等に関する法律」曹時6巻7号(1954年)767頁

戸田暁「金融取引における『仲介業者』の法規整――証券取引の分野を中心として」川濵昇ほか編『森本滋先生還暦記念企業法の課題と展望』(商事法務・2009年)491頁

プリペイド・カード等に関する研究会『プリペイド・カード等に関する研究会報告』(1989年)

吉田淳一「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の概要」捜研17巻10号(1968 年)37頁

   

ベンチャー企業と司法書士

市民と法[1]の記事、日本司法書士会司法書士総合研究所登記研究員・司法書士丸山洋一郎「ベンチャー企業と司法書士―挑戦者の想いに向き合いながら―」からです。

私がベンチャー企業に関連する業務を行った経験がないため、用語の意味や現在の状況を調べてみることに留めたいと思います。

アベノミクスの未来投資戦略2018では、ベンチャー支援強化が掲げられている。たとえば、政策課題と施策の目標の中では「このままでは日本は世界の成長に取り残されるのではないか、いまこそグローバルに成長するベンチャー企業を生み出すために英知を結集すべきではないかという危機感のもと、世界で勝つことのできる有望なベンチャー及びそれらの候補を創出する若者に対して政策リソースを重点化することにより、我が国経済を牽引するような企業を創出することが求められている」という記載がある。

内閣官房

未来投資戦略(2018年)、成長戦略(2019年)成長戦略(2020年)成長戦略(2021年)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/kettei.html

「成長戦略会議の開催について」の廃止について

令和3年10月15日内閣総理大臣決裁

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/index.html

未来投資戦略、成長戦略の後継の位置付け

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ(2022年)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~令和4年6月7日

スタートアップに関する記載の一部

 スタートアップの育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵である。このため、以下の項目等について、実行のための司令塔機能を明確化し、新しい資本主義実現会議に検討の場を設け、5年10倍増を視野に5か年計画を本年末に策定する。

公共調達の活用とSBIR制度のスタートアップへの支援の抜本拡充

海外のベンチャーキャピタルも含めたベンチャーキャピタルへの公的資本の投資拡大

・個人金融資産及びGPIF等の長期運用資金のベンチャー投資への循環

・優れたアイディア、技術を持つ若い人材への支援制度の拡大

・スタートアップが集積するグローバル・スタートアップ・キャンパス

・創業時に信用保証を受ける場合に経営者の個人保証を不要にする等の制度の見直し

・IPOプロセスの改革実行とSPACの検討

・事業化まで時間を要するスタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備

・社会的課題を解決するスタートアップの環境整備として法人形態の在り方の検討

・従業員を雇わない創業形態であるフリーランスの取引適正化法制の整備

・未上場株のセカンダリーマーケットの整備

・海外における起業家育成の拠点の創設

・起業家教育

・スタートアップ・大学における知的財産権の戦略の強化

・スタートアップとは・・・急成長をする組織

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社

・各ステージについて

経済産業省スタートアップ支援策一覧

2022年6月版

https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220621001/20220621001.html

(C)上場前の実務で使用する用語

上場前になると、ロックアップ、ローンチ、オーバーアロットメント、グリーンシューオプション、ロードショーマテリアル、ドライラン、ブックビルディングなどの耳慣れない用語をベンチャー企業の担当者が会話の中に交えてくる。ベンチャー企業グリーンシューオプションを支援する司法書士としても用語の概要を掴んでおく必要がある。

 


auカブコム証券

https://kabu.com/sp/glossary/default.html

ロックアップ・・・オプションのポジションを手仕舞い、権利行使価格が高いオプションでポジションを新たに持つことを言います。例えば、権利行使価格5000円のコールオプションを売っていて、価格が上昇したため、そのオプションを手仕舞い、権利行使価格が6000円のコール・オプションを新たに売るという取引のことです。

ローンチ・・・ローンチは、英語の「launch」から使われ、金融においては、有価証券を発行する時に、発行することを市場に発表することをいいます。

オーバーアロットメント・・・募集・売出しにおいて、当初の募集・売出し予定株数を超える需要があった場合、主幹事証券会社が対象企業の株主等から一時的に株券を借りて、募集・売出しと同一条件で追加的に投資家に販売することです。

グリーンシューオプション・・・オーバーアロットメントにおける株式調達手段の一つです。主幹事証券が、当初の募集・売出予定株数を大きく超える需要がある場合に、いわゆる「冷やし玉」として発行会社等から株式を調達するオーバーアロットメントにおいて、あらかじめ募集価額で株式を調達できる権利を付与してもらうことがあります。この権利をグリーンシューオプションと言います。

市場価格が高騰し、市場で株式を調達するよりも有利な場合にグリーンシューオプションは行使されます。なお、募集価額よりも市場価格が低迷している場合は、グリーンシューオプションを行使せず市場で株式を調達しますが、これをシンジケートカバーと言います。

ブックビルディング[2] ・・上場株式の発行価格の決定に関する方式。公開価格に係る仮条件を決定後に投資家に提示し、投資家の需要状況に基づいて公開価格を決定する。

上場前の公募又は売出し等に関する規則(ブック・ビルディングの方法に関する指針の策定)

第12条 元引受取引参加者は、上場前の公募等に係る投資者の需要状況を適正に把握するため、ブック・ビルディングの方法に関する指針を策定するものとし、当該指針に基づきブック・ビルディングを行うものとする。

2 元引受取引参加者は、当取引所が適当と認める方法により前項に規定する指針を書面により公表するとともに、当該指針の内容を当取引所に通知するものとする。

(公開価格に係る仮条件の決定等)

第13条 新規上場申請者及び元引受取引参加者は、ブック・ビルディングを行う場合には、新規上場申請者の財政状態及び経営成績並びに有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者の意見その他の公開価格の決定に関し参考となる資料及び意見を総合的に勘案し、公開価格に係る仮条件(投資者の需要状況の調査を行うに際して投資者に提示する価格の範囲等をいう。)を決定するものとする。

2 新規上場申請者及び元引受取引参加者は、前項の規定により公開価格に係る仮条件を決定した場合には、直ちに当取引所が適当と認める方法により当該仮条件及び決定の理由等を書面により公表するとともに、当該書面の写しを当取引所に提出するものとする。

(需要状況の調査に含めてはならない需要)

第14条 元引受取引参加者は、ブック・ビルディングにより把握すべき需要状況に、次の各号に掲げる需要その他の上場前の公募等における配分の対象とならないことが明らかに見込まれる需要を含めてはならない。

(1) 投資者の計算によらないことが明らかな需要

(2) 一の投資者の計算による需要が重複して取り扱われる場合の当該重複する需要

(需要状況の調査の記録の保存等)

第15条 元引受取引参加者は、上場前の公募等の申込期間終了の日から5年間、当該上場前の公募等に係るブック・ビルディングにより把握した需要状況についての記録を保存するものとする。

2 元引受取引参加者のうち主たるものは、上場前の公募等の申込期間終了の日から5年間、当該上場前の公募等に係るブック・ビルディングにより把握した需要状況すべてを集約した結果についての記録を保存するものとする。

3 元引受取引参加者は、前2項の記録につき、当取引所が必要に応じて行う提出請求又は検査に応じなければならない。

ロードショーマテリアル・・・投資家との面談で利用する補足説明資料

マリモ地方創生リート投資法人

https://www.marimo-reit.co.jp/

ドライラン・・・企業が主幹事の機関投資家にプレゼンテーションすること

公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ

https://www.jsda.or.jp/about/kaigi/jisyukisei/gijigaiyou/20210915170847.html

公正取引委員会

(令和4年1月28日)新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jan/220128_IPO.html

日本公認会計士協会

「資本政策ハンドブック」の製作について

2002年04月23日

https://jicpa.or.jp/specialized_field/httpwww_1.html

Evening Pitch in 名古屋

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中小企業庁

ミラサポplus

ビジネスプランコンテスト

大西利佳子@コトラ社長

@Kotora_onishi

上場準備で一番たいへんだったのは公開資料作り。ここは改行、ここは半角とか400件くらいの形式的指導が入ります。決算短信では二桁の数字は半角、一桁の数字は全角って知ってました?私は対応不能だけどメンバーが完璧に対応。上場やめて開示する場所がなく寂しいのでサイトにIR情報を作りました

質問への回答が分からないときは、現時点はわかりかねるとはっきりものを言い、その代わりいつまでに回答をするという期限を明確にする・・・


同意です。

ベンチャーキャピタルには、さまざまな種類があり、1独立系ベンチャーキャピタル、2政府系ベンチャーキャピタル、3大学系ベンチャーキャピタル、4金融機関系ベンチャーキャピタル、5コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)があげられる。現在は、5のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の動きが活発である。

現在はどうでしょうか。探すことが出来ませんでした。

SPEEDA

https://jp.ub-speeda.com/ex/analysis/archive/68/

Tongaliプロジェクト

ビデオセミナー

会社の作り方と法務上の注意点

丸山洋一郎司法書士事務所 丸山 洋一郎氏

三重大学キャンパス・インキュベータ

https://www.crc.mie-u.ac.jp/incu/indexi.html

三重大学研究基盤推進機構

https://www.opri.mie-u.ac.jp/cooperation/qa/qa04.html

九大起業部

https://qusis-official.studio.site/

https://twitter.com/QDAISTARTUP?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1259654456439758848%7Ctwgr%5E54bd5f19f76282e538829976e18edb82338b87de%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fushigyu.net%2F2022%2F01%2F14%2Fkyushu-university-start-up-club-after%2F

Tongaliプロジェクト、九大起業部で起業した企業、三重大学キャンパス・インキュベータに関わった企業がどのような経過を辿っていっているのか、探すことが出来ませんでした。

全国起業部マップ

https://airtable.com/shrQgJMi6zdlXQndM/tblM0vumCHEgrgkcC

沖縄県

Startup Lab Lagoon

拠点

OKINAWA Startup Program

https://okinawa-startup.com/#about

ピッチイベント

LEAP DAY

https://2021.leapday.jp/

大学発ベンチャーのあり方研究会

平成30年6月

経済産業省産業技術環境局大学連携推進室

https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/start-ups/daigakuhatsu.html

関連

経済産業省

新規事業・スタートアップ

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/index.html

経済産業省

「METI Startup Policies ~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」2022年6月21日

https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220621001/20220621001.html

経済産業省

秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上にむけて~(令和4年5月改訂版)

【参考資料2】各種契約書等の参考例 (令和4年5月改訂版)

秘密保持誓約書といった各種契約書等の参考例について、word版をダウンロードいただけます。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html#handbook

経済産業省 Digital Service playbook

https://github.com/meti-dx-team/METI-Digital-Service-Playbook

自社だけではすべてを賄うことは難しいのでIR支援会社に依頼することも多い。宝印刷株式会社や株式会社プロネクサスがその代表例である。

宝印刷株式会社・・・紙資料などがあるので、印刷会社は向いているのでしょうか。

https://www.takara-print.co.jp/

株式会社プロネクサス

https://www.pronexus.co.jp/

・ローカルベンチャー

牧大介『ローカルベンチャー 地域にはビジネスの可能性があふれている』2018、木楽舎

株式会社 西粟倉・森の学校

中山間地域における起業促進の支援システム

岡山県西粟倉村を事例として

中塚 雅也, 谷川 智穂, 井筒 耕平

https://www.jstage.jst.go.jp/article/arp/39/Special_Issue/39_238/_article/-char/ja/

特定非営利活動法人日本森林管理協議会(FSCジャパン)

https://jp.fsc.org/jp-ja/about_FSC_certificate

FSC認証について

FSC認証は環境、社会、経済の便益に適い、きちんと管理された森林からの製品を目に見える形で消費者に届け、それにより経済的利益を生産者に還元する仕組みです。

ローカルベンチャー協議会

https://initiative.localventures.jp/

ローカルベンチャー協議会の事務局

特定非営利活動法人エティック

https://www.etic.or.jp/

ローカルベンチャーサミット

https://localventures.jp/localventurelab

独立系の運用会社 レオス・キャピタルワークス株式会社

https://www.rheos.jp/

運用メンバーインタビュー

代表取締役 会長兼社長

最高投資責任者(CIO)

藤野 英人

https://hifumi.rheos.jp/interview/fujino/

フューチャーベンチャーキャピタル株式会社

株式会社 飛騨の森でクマは踊る(通称「ヒダクマ」)

https://hidakuma.com/

株主   株式会社ロフトワーク(54%)飛騨市(32.5%)株式会社トビムシ(13.5%)

環境省

環境ビジネスの先進事例集

https://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/B_industry/frontrunner/reports.html

飛騨市は更に市有林を現物出資[3]

https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/ider-project.jp/stage2/feature/00000149/report06.pdf


飛騨市監査委員告示4号・・・探すことが出来ませんでした。

(B)会社名変更についての助言(最近のトレンド)

現在、どのようになっているのか、探すことが出来ませんでした。

「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」及び「投資事業有限責任組合契約(例)及びその解説」令和4年3月改訂

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/ventureinvestnotice.html

経済産業省

ベンチャー・ファイナンスの多様化に係る調査報告書

株式会社野村資本市場研究所2021年3月31日

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/venture_finance_report.html

一般社団法人信託協会

株主名簿の管理や株式に関する専門的なアドバイスを行う信託銀行

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/corporation/securities_agency.html#:~:text=%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E5%90%8D%E7%B0%BF%E7%AE%A1%E7%90%86%E4%BA%BA%E3%81%A7,%E3%82%92%E7%99%BA%E9%80%81%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

経済産業省

スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス

2022年4月

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/financeguidance.html

証券取引所・・・

日本取引所グループ

https://www.jpx.co.jp/corporate/

株式型クラウドファンディング

日本証券業協会

https://market.jsda.or.jp/shijyo/kabucrowdfunding/seido/gaiyou/index.html

株式投資型クラウドファンディングとは、新規・成長企業へのリスクマネーの円滑な供給に資することを目的として、金融商品取引法等の改正及び本協会の自主規制規則の整備により、2015年5月に創設された非上場株式の発行を通じた資金調達を行うための制度です。

金融商品取引法等の一部を改正する

法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料

https://www.fsa.go.jp/search.html?q=%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%95%86%E5%93%81%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%B3%95%E7%AD%89%E3%81%AE%E4%B8%80%E9%83%A8%E3%82%92%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%9026%E5%B9%B4%E6%B3%95%E5%BE%8B%E7%AC%AC44%E5%8F%B7%EF%BC%89

株式会社FUNDINNO(旧商号:株式会社日本クラウドキャピタル)

https://corp.fundinno.com/company/

株式会社CFスタートアップス(旧商号:DANベンチャーキャピタル株式会社)

https://campfire-startups.co.jp/

関東財務局

https://lfb.mof.go.jp/kantou/disclo/tuuchi/mokuji.htm

有価証券通知書・届出書提出の要否・・・その他に細かな要件があるようです。

中小企業庁

第一種少額電子募集取扱業務を行う者の認定申請

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/application/crowd.html

経済産業省

令和2年度 産業経済研究委託事業(新株予約権型投資手段等を通じたスタートアップ投資及びオープンイノベーションの推進を通じた我が国企業の産業競争力強化に関する調査研究) 調査報告書

令和3年2月1日

株式会社ボストン・コンサルティング・グループ

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf

司法書士監修の元、J-KISS型新株予約権を発行するに当たってのフローを整理

•また、登記を含む各フローにて必要となる書類の雛型をまとめたパッケージを利用可能

臨時株主総会議事録

証明書

J-KISS型新株予約権申込証

登記申請書

記載事項証明書等

J-KISS2.0パッケージ

大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き(令和元年7月10日)

https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/start-ups/tebiki.html

種類株式

日本証券業協会

非上場株式の発行・流通市場の活性化に関する検討懇談会

https://www.jsda.or.jp/about/kaigi/jisyukisei/gijigaiyou/hijojokon.html

第4回

潜在株としてのストックオプション

新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)

株式会社ココナラ

https://www.jpx.co.jp/listing/stocks/new/nlsgeu000005atm9-att/03coconala-1s.pdf

Coral Capital

シードファイナンス勉強会 #1

[1] 117号、2019年6月、民事法研究会、P35~

[2] 大垣尚司『金融と法』2010年、有斐閣、P146

[3] 大垣尚司『金融と法』2010年有斐閣、P112

「疑わしい取引」と司法書士38

登記情報[1]の末光祐一司法書士「疑わしい取引」と司法書士(38)からです。

司法書士にとってのリスクベース・アプローチ(RBA)においては、依頼の類型を取引類型といい、取引モニタリングのためには重要な要素となる。ここで、「依頼」とは、例えば、不動産登記業務において、売買を登記原因とする所有権移転登記手続の依頼の場合は、当該登記手続の委任契約と、当該登記の原因となった売買契約の両者を含むものであり、当該委任の内容、状況、携帯及び経緯等を勘案して依頼の類型を判断すべきであると考える。


トラストを確保したDX 推進サブワーキンググループ報告書https://www.digital.go.jp/councils/0567fe93-b7d8-4c25-8a6c-46312c687f88/

加工トラストを確保したDX 推進サブワーキンググループ報告書

・P62の高リスクの類型の例、低リスクの類型の例のいくつかを、IALで分けてみます。

・P62の高リスクの類型の例、低リスクの類型の例のいくつかを、AALで分けてみます。

・P62の高リスクの類型の例、低リスクの類型の例のいくつかを、渡部友一郎弁護士の5×5のリスクマトリクスで分けてみます。

リスクベース・アプローチにおいて行うべき厳格な措置は、犯罪収益移転防止法において厳格に本人特定事項の確認を行わなければならないハイリスク取引の場合の措置(犯罪収益移転防止法4条2項)とは異なる概念であり、両者が適用となる場面や範囲は必ずしも一致しない。ハイリスク取引の場合とは取引時確認、つまり、依頼を受けた際の措置のことであるが、リスクベース・アプローチにおける厳格な措置は依頼の場面も含めて、以後、継続的顧客管理において求められる措置である。

 今まで、業務の場面毎によって、知識(司法書士業務関連法令・会則、個人情報保護法等、犯罪による収益の移転防止に関する法律等)や経験によって対応していたことを、記録に残しやすいように、リスクベース・アプローチというフィルターをかけよう、という考えなのかなと感じます。

 特に、継続的・長期間の業務において要請されているように思います。業務が面倒くさくなる面もあるかもしれませんが、何度も不動産登記の依頼を受けている個人の場合など、リスクが少ないと思われる方の場合は、リスク許容度を下げたりするなど可能であれば、業務に割く時間を減らせることもあり得るように感じます。

[1] 728号、2022年7月、(一社)金融財政事情研究会P60~

20220719連発0541号 司法書士倫理の一部改正

新旧が見つからない。私が参照した会員必携の司法書士倫理が 古いかもしれません。

○司法書士行為規範

司法書士の使命は、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することにある。

その使命を自覚し、自らの行動を規律する規範を明らかにするため、司法書士行為規範を制定する。

我々は、これを実践し、社会の信頼と期待に応えることをここに宣言する。

第1章基本倫理

(使命の自覚)

第1条司法書士は、使命を自覚し、その達成に努める。

(基本姿勢)

第2条司法書士は、その職責を自覚し、自由かつ独立の立場を保持して、司法書士としての良心に従い行動する。

(信義誠実)

第3条司法書士は、信義に基づき、公正かつ誠実に職務を行う。

(品位の保持)

第4条司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持する。

(法令等の精通)

第5条司法書士は、法令及び実務に精通する。

(資質の向上)

第6条司法書士は、自ら研鑚するとともに、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会(以下「司法書士会等」という。)が実施する研修に参加し、資質の向上に努める。

(自治の維持及び発展)

第7条司法書士は、司法書士自治の維持及び発展に努める。

(法制度への寄与)

第8条司法書士は、法制度が国民に信頼され、国民が利用しやすいものとなるようにその改善及び発展に寄与する。

(公益的活動)

第9条司法書士は、その使命にふさわしい公益的な活動に取り組み、実践するように努める。

第2章一般的な規律

意思の尊重)

第10条司法書士は、依頼者の意思を尊重し、依頼の趣旨に沿って、その業務を行わなければならない。

2司法書士は、意思の表明に困難を抱える依頼者に対して、適切な方法を用いて意思の表明を支援するように努めなければならない。

(秘密保持等の義務)

第11条司法書士は、業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。司法書士でなくなった後も同様とする。

2前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合は、その必要の限度において、秘密を開示することができる。

(1)本人の承諾がある場合

(2)法令に基づく場合

(3)司法書士が自己の権利を防御する必要がある場合

(4)前3号に掲げる場合のほか、正当な事由がある場合

(不当誘致等)

第12条司法書士は、不当な方法によって事件の依頼を誘致し、又は事件を誘発してはならない。

2司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を支払ってはならない。

3司法書士は、依頼者の紹介をしたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を受け取ってはならない。

(非司法書士との提携禁止等)

第13条司法書士は、司法書士法その他の法令の規定に違反して業務を行う者と提携して業務を行ってはならず、またこれらの者から事件のあっせんを受けてはならない。

2司法書士は、第三者に自己の名義で司法書士業務を行わせてはならない。

3司法書士は、正当な事由がある場合を除き、その業務に関する報酬を司法書士又は司法書士法人でない者との間で分配してはならない。

(違法行為の助長等)

第14条司法書士は、違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

(品位を損なう事業への関与)

第15条司法書士は、品位を損なう事業を営み、若しくはこれに加わり、又はこれに自己の名義を使用させてはならない。

(相手方等からの利益授受等)

第16条司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等から利益の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくはその約束をしてはならない。

2司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等に対し、利益の供与若しくは供応をし、又はその約束をしてはならない。

(広告又は宣伝)

第17条司法書士は、虚偽の事実を含み、又は誤認を生じさせるおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

2司法書士は、品位又は信用を損なうおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

(記録の作成等)

第18条司法書士は、受任した事件の概要、金品の授受に関する事項その他重要と考えられる事項に関する記録を作成し、保管しなければならない。

2司法書士は、前項の記録を保管するに際しては、業務上知り得た秘密及びプライバシーに関する情報が漏洩しないように注意しなければならない。廃棄するに際しても同様とする。

補助者に対する指導及び監督)

第19条司法書士は、常に、補助者の指導及び監督を行わなければならない。

2司法書士は、補助者をしてその業務を包括的に処理させてはならない。

3司法書士は、補助者に対し、その者が業務上知り得た秘密を漏洩し、又は利用しないように指導及び監督しなければならない。

第3章依頼者との関係における規律

(依頼の趣旨の実現)

第20条司法書士は、依頼の趣旨を実現するために、的確な法律判断に基づいて業務を行わなければならない。

(受任の際の説明)

第21条司法書士は、事件を受任するにあたり、その処理の方法その他依頼の趣旨を実現するために必要な事項について説明しなければならない。

(報酬の明示)

第22条司法書士は、事件を受任するにあたり、報酬及び費用の金額又はその算定方法を明示し、かつ、十分に説明しなければならない。

2司法書士は、その報酬については、依頼者の受ける経済的利益、事案の難易、その処理に要した時間及び労力その他の個別具体的事情に照らして、適正かつ妥当なものとしなければならない。

契約書の作成)

第23条司法書士は、事件を受任するにあたり、依頼の趣旨並びに報酬及び費用に関する事項を記載した契約書を作成するように努めなければならない。

(事件の処理)

第24条司法書士は、事件を受任した場合には、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。

2司法書士は、依頼者に対し、事件の経過及び重要な事項を必要に応じて報告し、事件が終了したときは、その経過及び結果を遅滞なく報告しなければならない。

(公正を保ち得ない事件)

第25条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由がある事件については、業務を行ってはならない。

(公務等との関係)

第26条司法書士は、公務員又は法令により公務に従事する者として取り扱った事件については、業務を行ってはならない。

2司法書士は、仲裁人として取り扱った事件又は裁判外紛争解決手続において手続実施者その他これに準ずる者として関与した事件については、業務を行ってはならない。

(公正を保ち得ないおそれ)

第27条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由が発生するおそれがある場合には、事件を受任するにあたり、依頼者に対し、その事由の内容及び辞任の可能性があることについて説明しなければならない。

(不正の疑いがある事件)

第28条司法書士は、依頼の目的又はその手段若しくは方法に不正の疑いがある場合において、合理的な方法により調査を行ってもなおその疑いが払拭できないときは、その事件を受任してはならない。

(特別関係の告知)

第29条司法書士は、事件の受任に際して、依頼者の相手方と特別の関係があるために、依頼者との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を告げなければならない。

(受任後の措置)

第30条司法書士は、事件を受任した後に前5条に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し速やかにその事情を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(利益相反の顕在化)

第31条司法書士は、同一の事件で依頼者が複数ある場合において、その相互間に利益相反が生じたときは、各依頼者に対してその旨を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(他の司法書士の参加)

第32条司法書士は、受任している事件について、依頼者が他の司法書士又は司法書士法人に、相談又は依頼をしようとするときは、正当な理由なくこれを妨げてはならない。

(受任司法書士間の意見の不一致)

第33条司法書士は、同一の事件を受任している他の司法書士又は司法書士法人がある場合において、その処理に関して意見の不一致により依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を説明しなければならない。

(依頼者との信頼関係の喪失)

第34条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者との信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難である場合には、辞任する等適切な措置をとらなければならない。

(預り書類等の管理)

第35条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から預かった書類等を、善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。

(預り金の管理等)

第36条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から又は依頼者のために金員を受領した場合には、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にして管理しなければならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、依頼者のために金品を受領した場合には、速やかにその事実を依頼者に報告しなければならない。

(受任の継続不能)

第37条司法書士は、受任している事件の処理を継続することができなくなった場合には、依頼者が損害を被ることがないように、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(係争目的物の譲受け)

第38条司法書士は、係争事件の目的物を譲り受けてはならない。

(依頼者との金銭貸借等)

第39条司法書士は、特別の事情がない限り、依頼者と金銭の貸借をし、又は自己の債務について保証をさせ、若しくは依頼者の債務について保証をしてはならない。

(賠償保険)

第40条司法書士は、依頼者を保護するために、業務上の責任について賠償責任保険に加入するように努めなければならない。

(事件の終了後の措置

第41条司法書士は、受任した事件が終了したときは、遅滞なく、金銭の精算、物品の引渡し及び預かった書類等の返還をしなければならない。

(依頼者との紛議等)

第42条司法書士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じた場合には、協議により円満に解決するように努めなければならない。

第4章不動産登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第43条司法書士は、不動産登記業務を行うにあたり、登記の原因となる事実又は法律行為について調査及び確認をすることにより登記の真正を担保し、もって紛争の発生を予防する。

(実体上の権利関係の把握等)

第44条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、依頼者及びその代理人等が本人であること及びその意思の確認並びに目的物の確認等を通じて、実体上の権利関係を的確に把握しなければならない。

2司法書士は、前項の確認を行った旨の記録を作成し、保管しなければならない。

(公平の確保)

第45条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、当事者間の情報の質及び量の格差に配慮するなどして、当事者間の公平を確保するように努めなければならない。

(登記手続の中止又は登記申請の取下げ)

第46条司法書士は、当事者の一部から、不動産登記手続の中止又は不動産登記申請の取下げの申出を受けた場合においては、他の当事者の利益が害されることのないように当事者全員の意思を確認し、適切な措置をとらなければならない。

(補助者による立会の禁止)

第47条司法書士は、不動産取引における立会を、補助者に行わせてはならない。

(複数の代理人が関与する登記手続)

第48条司法書士は、複数の代理人が関与する不動産登記業務を受任した場合には、依頼者の依頼の趣旨を実現するために必要な範囲において他の代理人と連携するように努めなければならない。

第5章商業・法人登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第49条司法書士は、商業・法人登記業務を行うにあたり、登記原因及び添付書面等の調査及び確認をすることにより真正な登記の実現に努め、もって取引の安全と商業・法人登記制度の信頼の確保に寄与する。

(実体関係の把握)

第50条司法書士は、商業・法人登記業務を受任した場合には、会社若しくは法人の代表者又はこれに代わり依頼の任に当たっている者(以下「代表者等」という。)が本人であること、依頼の内容及び意思の確認をするとともに、議事録等の関係書類の確認をするなどして、実体関係を把握するように努めなければならない。

2司法書士は、議事録等の書類作成を受任した場合には、代表者等にその事実及び経過等を確認して作成しなければならない。

(法令遵守の助言)

第51条司法書士は、商業・法人登記業務を受任し、又はその相談に応じる場合には、会社及び法人の社会的責任の重要性を踏まえ、依頼者に対して、法令を遵守するように助言しなければならない。

第6章供託業務に関する規律

(基本姿勢)

第52条司法書士は、供託業務を行うにあたり、実体上の権利関係を的確に把握し、登記手続、裁判手続その他の関連する手続を踏まえて供託の目的を達成させる。

(供託が関係する相談)

第53条司法書士は、供託が関係する相談に応じる場合には、相談者が置かれている状況を的確に把握したうえで、供託手続の役割、内容及び方法について説明及び助言をしなければならない。

第7章裁判業務等に関する規律

(基本姿勢)

第54条司法書士は、裁判の公正及び適正手続の実現に寄与する。

(紛争解決における司法書士の役割)

第55条司法書士は、依頼者が抱える紛争について、正確な知識及び情報を提供し、最善の方法をもって業務を遂行することにより、依頼者の正当な権利の擁護及びその利益の実現に努めなければならない。

(裁判書類作成関係業務)

第56条司法書士は、裁判書類作成関係業務を受任した場合には、依頼者との意思の疎通を十分に図り、事案の全容を把握するように努め、依頼者にその解決方法を説明するなどして、依頼者自らが訴訟等を追行できるように支援しなければならない。

(簡裁訴訟代理等関係業務)

第57条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務を受任した場合には、代理人としての責務に基づき、依頼者の自己決定権を尊重して、業務を行わなければならない。

(業務を行い得ない事件)

第58条司法書士は、裁判業務(裁判書類作成関係業務及び簡裁訴訟代理等関係業務をいう。以下同じ。)に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は相手方から受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

2司法書士は、かつて司法書士法人の社員等(社員又は使用人司法書士をいう。以下同じ。)であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(受任の諾否の通知)

第59条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼に対し、その諾否を速やかに通知しなければならない。

(法律扶助制度等の教示)

第60条司法書士は、依頼者に対し、事案に応じて法律扶助制度又は訴訟救助制度を教示するなどして、依頼者の裁判を受ける権利が実現されるように努めなければならない。

(見込みがない事件の受任の禁止)

第61条司法書士は、依頼者が期待するような結果を得る見込みがないことが明らかであるのに、あたかもその見込みがあるかのように装って事件を誘発し、受任してはならない。

(有利な結果の請け合い等の禁止)

第62条司法書士は、受任した事件について、依頼者に有利な結果を請け合い、又は保証してはならない。

(偽証等のそそのかし等)

第63条司法書士は、偽証又は虚偽の陳述をそそのかしてはならない。

2司法書士は、虚偽と知りながらその証拠を提出し、又は提出させてはならない。

(裁判手続の遅延)

第64条司法書士は、不当な目的のために又は職務上の怠慢により、裁判手続を遅延させてはならない。

(相手方本人との直接交渉等)

第65条司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいる場合は、特別の事情がない限り、その代理人の了承を得ないで相手方本人と直接交渉してはならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいない場合において、相手方が代理人の役割について誤解しているときは、その誤解に乗じて相手方を不当に不利益に陥れてはならない。

第8章司法書士法第3条に定めるその他の業務に関する規律

(審査請求手続)

第66条司法書士は、審査請求手続を受任した場合には、審査請求の意義を依頼者に説明し、依頼者の権利が実現されるように努めなければならない。

(国籍に関する書類の作成)

第67条司法書士は、国籍に関する書類の作成を受任した場合には、その要件等を依頼者に説明及び助言をし、依頼者や関係者のプライバシー等の人権に配慮して、業務を行うように努めなければならない。

(検察庁に提出する書類の作成)

第68条司法書士は、検察庁に提出する書類の作成を受任した場合には、関係者の人権に配慮して、正義の実現に努めなければならない。

第9章成年後見業務等に関する規律

基本姿勢)

第69条司法書士は、成年後見業務等を行う場合には、本人の意思を尊重し、その心身の状態並びに生活及び財産の状況(以下「心身の状態等」という。)に配慮する。

法定後見等に関する相談)

第70条司法書士は、法定後見又は任意後見に関する相談に応じる場合には、本人のほか、親族、福祉、医療及び地域の関係者等の支援者(以下「支援者」という。)から、その意見、本人の心身の状態等を聴取するなどしたうえで、適切な助言をしなければならない。

(後見等開始申立書類の作成)

第71条司法書士は、後見等開始申立書類を作成する場合には、本人、申立人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した内容になるよう配慮しなければならない。

(任意後見契約の締結等)

第72条司法書士は、自己を受任者とする任意後見契約の締結を依頼された場合には、見守り契約等の任意後見契約に関連する契約の必要性を検討したうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した契約になるように配慮しなければならない。

2司法書士は、前項の任意後見契約及びこれに関連する契約を締結する場合には、本人の心身の状態等に配慮し、本人が理解できるように適切な方法及び表現を用いて契約内容を説明しなければならない。

3司法書士は、第1項の任意後見契約を締結した場合において、精神上の障害により本人の事理弁識能力が不十分になったときは、本人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、任意後見契約の効力を生じさせるなど、遅滞なく適切な措置をとらなければならない。

(支援者との連携)

第73条司法書士は、成年後見人等に就任した場合には、支援者と連携を図るように努めなければならない。

2前項の場合において、司法書士は、本人のプライバシーに配慮しなければならない。

第10章財産管理業務に関する規律

(基本姿勢)

第74条司法書士は、他人の財産を管理する場合には、自己の財産又は管理する他者の財産と判然区別することが可能な方法で各別に保管するなど、善良な管理者の注意をもって行う。

(委任による財産管理)

第75条司法書士は、委任により他人の財産を管理する場合には、委任者が適切な手続を選択することができるように説明しなければならない。

2司法書士は、前項の場合には、委任者と利益相反する行為をしてはならない。

3司法書士は、財産管理の状況について、定期的に委任者に報告しなければならない。委任者から報告を求められたときも、同様とする。

(法律の定めによる財産管理)

第76条司法書士は、法律の定めにより他人の財産を管理する者に選任された場合には、その目的を達するため誠実に財産管理を行わなければならない。

(遺言執行)

第77条司法書士は、遺言執行者に就任した場合には、遺言の内容を実現するため直ちに遺言執行事務に着手し、善良な管理者の注意をもってその事務を遂行しなければならない。

2司法書士は、遺言執行者に就任している場合において、遺言者の相続財産(遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産に限る。)に係る事件であって、相続人又は受遺者の依頼により、他の相続人又は受遺者を相手方とする裁判業務を行ってはならない。遺言執行者でなくなった後も、同様とする。

(遺産承継業務)

第78条司法書士は、遺産承継業務を受任する場合には、委任契約書を作成するなどして、依頼者に対し、受任事務の内容及び範囲を明らかにしなければならない。

2司法書士は、前項の場合においては、事案に応じて、依頼者に対し、業務の中断又は終了に関する事由を明らかにしなければならない。

(事件の終了)

第79条司法書士は、他人の財産の管理を終了したときは、遅滞なく、その管理する財産を委任者など受領権限がある者に引き渡さなければならない。

第11章民事信託支援業務に関する規律

(基本姿勢)

第80条司法書士は、民事信託支援業務を受任したときは、信託目的の達成に向けて、委託者、受託者、受益者その他信託関係人の知識、経験、財産の状況等に配慮して業務を行う。

(適正な民事信託の支援)

第81条司法書士は、民事信託の設定を支援するにあたっては、委託者の意思を尊重し、かつ、信託法上の権利及び義務に関する正確な情報を提供するように努めなければならない。

2司法書士は、民事信託の設定後においては、受託者の義務が適正に履行され、かつ、受益者の利益が図られるよう、必要に応じて、継続的な支援に努めなければならない。

第12章共同事務所における規律

(遵守のための措置)

第82条複数の司法書士が事務所を共にする場合(以下「共同事務所」という。)において、その共同事務所を監督する立場にある司法書士があるときは、当該司法書士は、共同事務所に所属する全ての司法書士(以下「所属司法書士」という。)が、法令、会則等を遵守するために必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第83条所属司法書士は、正当な事由がある場合を除き、他の所属司法書士が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。所属司法書士でなくなった後も同様とする。

(共同事務所における業務を行い得ない事件)

第84条所属司法書士は、他の所属司法書士(所属司法書士であった者を含む。)が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(所属司法書士であった者が裁判業務を行い得ない事件)

第85条所属司法書士であった司法書士は、所属司法書士であった期間内に、他の所属司法書士が取り扱った裁判業務に係る事件で、自らこれに関与していた事件については、その事件の相手方の依頼を受けて裁判業務を行ってはならない。

(受任後の措置)

第86条所属司法書士は、事件を受任した後に第84条本文に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第87条所属司法書士は、共同事務所として、当事者情報の確認その他必要な措置をとるなどをして、業務を行い得ない事件の受任を防止するように努めなければならない。

第13章司法書士法人における規律

(遵守のための措置)

第88条司法書士法人は、その社員等が法令、会則等を遵守するための必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第89条社員等は、正当な事由がある場合を除き、司法書士法人、他の社員等が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。社員でなくなった後も同様とする。

(司法書士法人が業務を行い得ない事件)

第90条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合はこの限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

(司法書士法人が社員等の関係で業務を行い得ない事件)

第91条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等が相手方から受任している事件

(2)第25条、第26条若しくは第58条第1号から第6号まで又は第92条第2項第1号から第3号までに掲げる事件として社員の半数以上(簡裁訴訟代理等関係業務に係る事件については特定社員の半数以上)の者が裁判業務を行ってはならないこととされる事件

(社員等が司法書士法人との関係で業務を行い得ない事件)

第92条社員等は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第2号に掲げる事件については、司法書士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、この限りでない。

(1)司法書士法人が相手方から受任している事件

(2)司法書士法人が受任している事件の相手方の依頼による他の事件

2社員等は、かつて別の司法書士法人(以下「その司法書士法人」という。)の社員等であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又は依頼を承諾した事件

(3)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(社員等が他の社員等との関係で業務を行い得ない事件)

第93条社員等は、他の社員等が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(受任後の措置)

第94条司法書士法人は、事件を受任した後に、第90条又は第91条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

2社員等は、事件を受任した後に、前2条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第95条司法書士法人は、業務を行い得ない事件の受任を防止するために、当事者情報の確認その他必要な措置をとるように努めなければならない。

(準用)

第96条第1章から第11章まで(第4条、第5条、第6条、第11条第1項、第26条第2項及び第58条を除く。)、第14章及び第15章の規定は、司法書士法人について準用する。

第14章他の司法書士との関係における規律

(名誉の尊重)

第97条司法書士は、他の司法書士(司法書士法人を含む。以下、本章において同じ。)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。

(他の事件への介入)

第98条司法書士は、他の司法書士が受任している事件に関して、不当に介入してはならない。

(相互協力)

第99条司法書士は、他の司法書士と共同して業務を行う場合には、依頼者とそれぞれの司法書士との間の委任関係を明確にして、依頼の趣旨の実現に向け、相互に協力しなければならない。

2司法書士は、事件処理のために復代理人を選任する場合には、依頼の趣旨の実現に向け、復代理人と十分な意思疎通を図らなければならない。

第15章司法書士会等との関係における規律

(規律の遵守)

第100条司法書士は、自治の精神に基づき、司法書士会等が定める規律を遵守する。

(組織運営への協力)

第101条司法書士は、司法書士会等の組織運営に積極的に協力する。

(事業への参加)

第102条司法書士は、司法書士会等が行う事業に積極的に参加する。また、司法書士会等から委嘱された事項を誠実に遂行する。

附則(令和4年6月23日・24日第87回定時総会承認)

この規範は、令和5年4月1日から施行する。

Tsuyoshi Taniguchi

これ見てる人全員アウトー!!

司法書士行為規範 (品位の保持) 第4条 司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持 する。

Tsuyoshi Taniguchi

非弁と言われる可能性は数年前まではかなり悩んでましたが、今はほとんど意識しなくなりましたかね。 「信託は魔法のツール」ってやりたい放題やってた時期はいつ誰が刺されるかとドキドキしてました。 司法書士行為規範に民事信託を盛り込んで、「目指すべき適正な形」を明文化したのは大きかった。

https://x.com/Hamuuuuuuuuuuu/status/1714521896757407774?s=20

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加工戸籍法等の改正に関する中間試案メモ

戸籍法部会第6回会議(令和4年5月17日開催)

https://www.moj.go.jp/shingi1/koseki20220517_00002.html

第1 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍の記載事項化に関する事項

1 戸籍の記載事項への追加

戸籍の記載事項として、戸籍法第13条に次のいずれかの規定を設けるもの

とする。

【甲案】氏名を平仮名で表記したもの

【乙案】氏名を片仮名で表記したもの

(注)氏名を平仮名(片仮名)で表記したものとして戸籍に記載することができる平仮名又は片仮名の範囲は、平仮名についての表記の方法を定める現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)本文第1(直音、拗音、撥音、促音)又はこれを片仮名に変換したもののほか、小書き(「ぁ」、「ァ」など)及び長音(「ー」)など、戸籍の氏名に用いることができる文字及び記号も範囲に含めることが考えられる。

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性に関する審査について、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法には規定を設けず、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による(注1)。

【乙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものとする。

【丙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、次のいずれかとする。

① 国字の音訓又は慣用により表音されるもの

② 国字の音訓又は慣用により表音されるものでなくても、字義との関連性が認められるものその他法務省令で定めるものを届け出た(申し出た)場合における当該表記

(注1)【甲案】について法令に規定することも考えられる。

(注2)【乙案】又は【丙案】における「慣用」は、社会的にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されているという社会的慣用を意味するものである。

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224#:~:text=%E7%AC%AC%E5%8D%81%E4%B8%89%E6%9D%A1%20%E6%88%B8%E7%B1%8D,%E8%A8%98%E8%BC%89%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%91%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82&text=%E7%AC%AC%E5%8D%81%E5%9B%9B%E6%9D%A1%20%E6%B0%8F%E5%90%8D,%E3%81%AF%E3%80%81%E5%B7%A6%E3%81%AE%E9%A0%86%E5%BA%8F%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%80%82&text=%E2%91%A1%20%E5%AD%90%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%A7%E3%81%AF,%E3%81%AB%E3%81%93%E3%82%8C%E3%82%92%E8%A8%98%E8%BC%89%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

第十三条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。

一 氏名

二 出生の年月日

三 戸籍に入つた原因及び年月日

四 実父母の氏名及び実父母との続柄

五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄

六 夫婦については、夫又は妻である旨

七 他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示

八 その他法務省令で定める事項

第2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集に関する事項

1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集

 戸籍法第13条第1号に定める氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係るものについては、氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書(出生、国籍取得、帰化、氏の変更、名の変更、就籍の届書等)の記載事項とし、これを戸籍に記載することとする(注)。

(注)例えば、「届出事件の本人の氏又は名を初めて戸籍に記載するときは、届書にその氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載しなければならない。」というような規定を戸籍法に設けることが考えられる。

2 既に戸籍に記載されている者に係る収集

 既に戸籍法第13条第1号に定める氏名が戸籍に記載されている者は、一定期間内に本籍地の市区町村長(注1)に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの申出をしなければならないものとし、一定期間内に当該申出があった場合には、当該市区町村長が当該申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする(注2)(注3)。

 一定期間内に当該申出がない場合には、本籍地の市区町村長が国字の音訓又は慣用その他法務省令で定める方法により職権で、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする。

(注1)ここでは当該戸籍を管掌する本籍地の市区町村長を想定しているが、所在地の市区町村長を加えることも考えられる。

(注2)申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが第1の2により許容されるものでないとして戸籍に記載されなかった場合、その不服申立てについては、戸籍法第122条の規定を準用するものとすることが考えられる。

(注3)市区町村長の職権による戸籍への記載を促すものとしての「申出」ではなく、戸籍法上の「届出」と整理した上で、届出義務を課し、正当な理由なく期間内に届出がない場合には、過料の制裁を科す(戸籍法第137条参照)方法も考えられる。

原則

申出・・・提出機関の承認等が必要。

届出・・・提出機関の承認等が不要。

第3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する事項

1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律

氏又は名の変更に伴わない場合の規律は、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注1)。

1 やむを得ない事由【正当な事由】(注2)によって氏を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

2 正当な事由によって名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

【乙案】【甲案】に加え、戸籍法に次のような内容の規律を設けるものとする(注3)。

氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、成年に達した時から1年以内に届け出る場合その他法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

(注1)成年に達した者が自ら氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを届け出た(申し出た)後、これを変更しようとする場合には、その変更の許否はより厳しく審査されるべきものとすることも考えられる。

(注2)変更の要件について、氏の変更(戸籍法第107条第1項)よりも緩和することとし、「やむを得ない事由」に代えて「正当な事由」とする案も考えられる。

(注3)【乙案】による変更は、一度に限ることとする。

2 氏又は名の変更に伴う場合の規律

戸籍法第107条第1項又は第107条の2の規定により氏又は名を変更しようとするときは、その平仮名(片仮名)で表記したものとともに、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないこととする。

戸籍法等の改正に関する中間試案の補足説明

令和4年5月

法務省民事局民事第一課

戸籍法等の改正に関する中間試案の補足説明

目 次

はじめに ……………………….. 1

第1 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍の記載事項化に関する事項 …. 3

1 戸籍の記載事項への追加 ………………. 3

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性 …. 5

第2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集に関する事項 ……. 9

1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集 …………… 9

2 既に戸籍に記載されている者に係る収集 …………………. 10

第3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する事項 …….. 13

1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律 ……………………. 13

2 氏又は名の変更に伴う場合の規律 ……………………… 17

はじめに

 我が国に全国統一の近代的身分登録制度が設けられたのは、明治4年太政官布告第170号の戸籍法によってであり、以後、昭和22年法律第224号による戸籍法の全面改正を含め、幾度の制度改正がされてきたが、これまで、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを付することに関して、戸籍法令に規定されたことはない。

 また、昭和50年、昭和56年及び平成29年に、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍の記載事項とすることが検討されたものの、いずれもその制度化は見送られてきた。

 こうした中、令和2年12月25日に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画において、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」報告のとおり、迅速に戸籍における読み仮名(カナ氏名)の法制化を図ることとされた。

 さらに、令和3年5月12日に成立し、同月19日に公布されたデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)附則第73条においても、「政府は、行政機関等に係る申請、届出、処分の通知その他の手続において、個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを利用して当該個人を識別できるようにするため、個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とすることを含め、この法律の公布後一年以内を目途としてその具体的な方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」との検討条項が設けられた。

 なお、上記デジタル・ガバメント実行計画は令和3年12月24日に廃止され、同日閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画の中で、「デジタル社会形成整備法附則第73条の規定を踏まえ、戸籍法制の見直しに関する法務大臣の諮問に対する法制審議会からの答申が得られ次第速やかに、戸籍における氏名の読み仮名の法制化に向けた作業を進め、令和5年(2023 年)の通常国会に関連する法案を提出した上で、令和6年度(2024 年度)を目途に実現を図る。」こととされた。

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを法制化する必要性が高まった背景として、①我が国における社会全体のデジタル化の推進、特にベース・レジストリの整備を推進する方針が定められたこと、②今般の新型コロナウイルス感染症対応を契機として、行政のデジタル化を更に推進し、デジタル社会における国民サービスを拡充する必要性が高まったこと、③難読な名の読み方(読み仮名)が増えていること、④我が国における国際化の進展に伴い、例えば、まず、外来語の名又は外国で出生したり、父若しくは母が外国人である子などについては音としての名を定め、次に、その意味又は類似する音に相当する文字を文字で表記された名とする場合など、文字で表記された名よりもその読み方(読み仮名)により強い愛着がある者も少なくないと考えられることなどが挙げられる。

 そして、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの登録・公証が必要な理由は、次のとおりであると考えられる。

(1) 正確に氏名を呼称することが可能となる場面が多くなることによって、他人から自己の氏名を正確に呼称される権利・利益の保護に資する。

(2) 社会生活において「なまえ」として認知されるものの中には、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものも含まれているとの理解が広がりつつあり、これを登録・公証することは、まさしく「なまえ」の登録・公証という点からも意義がある。

(3) 情報システムにおける検索及び管理の能率を向上させるとともに、行政手続等において、公証された氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの情報を利用することによって、手続をより円滑に進めることが可能となり、国民の利便性の向上に資する。また、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを本人確認事項の一つとすることを可能とすることにより、各種手続における不正防止を補完することが可能となる。

 以上のような状況を踏まえ、令和3年9月16日開催の法制審議会第191回会議において、上川陽子法務大臣(当時)から法制審議会に対し、「個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とする規定を整備するなど、戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられるので、その要綱を示されたい。」との諮問(諮問第116号)がされ、その調査審議のため、戸籍法部会(部会長・窪田充見神戸大学大学院教授)(以下「部会」という。)が設置された。

 部会では、上記の問題意識を踏まえ、令和3年11月から令和4年5月までの間、約1か月に1回のペースで審議を重ね、令和4年5月17日の第6回会議において、「戸籍法等の改正に関する中間試案」(以下「試案」という。)を取りまとめるとともに、事務当局においてこれを公表し、意見照会の手続を行うことが了承された。以上の経緯により、事務当局である法務省民事局民事第一課において試案を公表し、意見照会の手続を行うこととなった。

今後、部会においては、試案に対して寄せられた御意見を踏まえ、要綱案の取りまとめに向けて、引き続き審議が行われる予定である(要綱案の取りまとめの時期及びこれを受けた法案の提出時期は、現時点では未定である。)。なお、この補足説明は、試案を公表するに当たり、これまでの部会における審議を踏まえ、試案の内容の理解に資するため、試案に掲げられた各項目について、その趣旨等を補足的に説明するものであり、事務当局である法務省民事局民事第一課の責任において作成したものである。このように、この補足説明は、飽くまでも意見募集の対象である試案の内容について検討を加える際の参考資料として作成したものであって、それ以上の意味を持つものではない。

第1 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍の記載事項化に関する事項

1 戸籍の記載事項への追加

戸籍の記載事項として、戸籍法第13条に次のいずれかの規定を設けるものとする。

【甲案】氏名を平仮名で表記したもの

【乙案】氏名を片仮名で表記したもの

 (注)氏名を平仮名(片仮名)で表記したものとして戸籍に記載することができる平仮名又は片仮名の範囲は、平仮名についての表記の方法を定める現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)本文第1(直音、拗音、撥音、促音)又はこれを片仮名に変換したもののほか、小書き(「ぁ」、「ァ」など)及び長音(「ー」)など、戸籍の氏名に用いることができる文字及び記号も範囲に含めることが考えられる。

(補足説明)

1 試案の概要

試案は、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍法に定める戸籍の記載事項とするに当たり、戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものと位置付けた上、戸籍の記載事項としての表記を平仮名又は片仮名のいずれかに定めることとするものである。

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの法令上の位置付け氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍法上の位置付けとしては、戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」の一部と規定する方法又は戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものとして規定する方法が考えられる。

 戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」の一部と規定する場合には、戸籍法における「氏名」に関する他の規定及び戸籍法以外の各種法令の規定において、「氏名」に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが含まれるのか、疑義が生じないように手当てをする必要があるものと考えられるところ、部会では、データ項目としての取扱いの観点から戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものと位置付けるべきであるとの意見があったことや、各種法令の規定への影響をも考慮して、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものと位置付けることとされた。

3 戸籍の記載事項としての表記

 令和3年5月26日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室決定において、戸籍の記載事項は、「今後ベース・レジストリとして整備のあり方を含め検討するもの」として指定されており、戸籍に記載する氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、いわゆるマスターデータとなることや、データの利用に当たっての利便性の観点などから、戸籍の記載事項としての表記については平仮名又は片仮名のいずれかに特定すべきものと考えられる。

 この点、平仮名と片仮名とでは、長音の場合に平仮名では母音を重ねるのに対し、片仮名では長音記号(「ー」)が用いられることが多いなど、表記の方法が異なる場合があるものの、令和4年1月7日文化審議会建議「公用文作成の考え方」の解説において、「片仮名で表記されている人名、地名、外来語の長音に平仮名で振り仮名を付ける必要があるような場合には、便宜的に長音符号をそのまま用いてよい。」とされている。

 なお、常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)においては、「字音は片仮名で、字訓は平仮名で」表記されているものの、前書きにおいて、「この表は、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。」とされている。

4 各案の内容

(1) 【甲案】

【甲案】は、戸籍の記載事項としての表記を平仮名と定めるものである。

 現行の戸籍事務において使用していないものの、法務省民事局長通達に定める出生届書等の標準様式には、氏名の「よみかた」欄が設けられているところ、法務省ホームページに掲載されている出生届書の記載例において、「よみかた」欄には、平仮名で記載されている。

 したがって、戸籍の届書の「よみかた」欄には、平仮名で記載されていることが多いと想定されるところ、【甲案】を採用すると、「よみかた」欄の表記と整合する場面が多くなると想定され、届書に記載された「よみかた」をそのまま戸籍に記載することが考えられる。

(2) 【乙案】

【乙案】は、戸籍の記載事項としての表記を片仮名と定めるものである。

 部会では、片仮名表記は、平仮名表記と比較して表音が容易であり、外来語の表記に違和感を覚えにくいという特徴があるとの指摘や、金融機関においては、データ通信量等の観点から、半角カナが用いられているとの指摘があった。

 また、我が国における国際化の進展に伴い、今後も増加することが想定される外国を起源とする名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、片仮名表記の方がなじみやすいとの見方もある。

5 戸籍に記載することができる平仮名又は片仮名の範囲(試案の注)

 現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころとして、現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)及び「現代仮名遣い」の実施について(昭和61年内閣訓令第1号)が定められている。「現代仮名遣い」は、平仮名による表記の方法を定めたものであることから、【甲案】を採用する場合には、戸籍に記載することができる平仮名の範囲は、「現代仮名遣い」本文第1に定められた直音、拗音、撥音、促音とすることとし、【乙案】を採用する場合には、戸籍に記載することができる片仮名の範囲は、「現代仮名遣い」本文第1に定められた直音、拗音、撥音、促音を片仮名に変換したものとすることが考えられる。

 また、戸籍先例上、小書き(「ぁ」、「ァ」など)及び長音「ー」なども戸籍に記載することができるとされていることから、これらも範囲に含めることが考えられる。

6 その他

 氏又は名の全部又は一部が平仮名又は片仮名の者も想定して、規定振りについては、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性に関する審査について、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法には規定を設けず、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による(注1)。

【乙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものとする。

【丙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、次のいずれかとする。

① 国字の音訓又は慣用により表音されるもの

② 国字の音訓又は慣用により表音されるものでなくても、字義との関連性が認められるものその他法務省令で定めるものを届け出た(申し出た)場合における当該表記

(注1)【甲案】について法令に規定することも考えられる。

(注2)【乙案】又は【丙案】における「慣用」は、社会的にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されているという社会的慣用を意味するものである。

(補足説明)

1 試案の概要

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの審査においては、①氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの自体の許容性(氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを単独で見た際の許容性)と、②氏名との関連性(氏名とそれを平仮名(片仮名)で表記したものを照らし合わせた際の許容性)という2つの観点があるものと考えられる。

【甲案】は、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則により審査することとするものであるが、【甲案】だけでは、②の観点からの審査に支障を来すおそれがあるとの見方もある。

そこで、【乙案】及び【丙案】は、法の一般原則により①の観点から審査するのに加えて、②の観点からの審査基準を明記するものである。

また、【丙案】は、【乙案】を基本としつつ、名乗り訓(名前に特有の訓読み)や部分音訓(漢字の音訓の一部のみを用いた読み)などを想定し、②の観点から許容される範囲を広げるものである。

2 各案の内容

(1) 【甲案】

【甲案】は、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則により審査することとするものである。

【甲案】の権利濫用の法理における「権利」については、次のように考えることが可能である。試案の第2の1の氏又は名を初めて戸籍に記載される場合のうち、親権者が子に命名する場面においては、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについての命名権が考えられる。

【甲案】の公序良俗の法理による審査については、商標の例が参考となる。商標登録を受けることができない商標を定める商標法第4条第7号において、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」と規定されており、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標の例示として、特許庁ウェブサイトにおいて、「商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合。なお、非道徳的若しくは差別的又は他人に不快な印象を与えるものであるか否かは、特に、構成する文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断する。」と掲載されている。

上記の例によれば、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについても、それ自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるようなものである場合には、許容されないこととなるものと考えられる。

特許庁ウェブサイト商標審査基準

六 第4条第1項第7号(公序良俗違反)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html

(2) 【乙案】

旅券法施行規則(平成元年外務省令第11号)第5条第2項においては、旅券に記載されるローマ字表記の氏名について、「法第6条第1項第2号の氏名は、戸籍に記載されている氏名(戸籍に記載される前の者にあっては、法律上の氏及び親権者が命名した名)について国字の音訓及び慣用により表音されるところによる。ただし、申請者がその氏名について国字の音訓又は慣用によらない表音を申し出た場合にあっては、公の機関が発行した書類により当該表音が当該申請者により通常使用されているものであることが確認され、かつ外務大臣又は領事官が特に必要であると認めるときはこの限りではない。」と規定されている。

旅券法施行規則(平成元年外務省令第十一号)

(旅券の記載事項)第五条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=401M50000020011

【乙案】は、これを参考として、氏名との関連性の観点による審査基準について、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものとするものである。

(3) 【丙案】

【丙案】は、【乙案】を基本としつつ、氏名との関連性の観点から、名乗り訓や部分音訓などが含まれることを明確にしようとするものであり、国字の音訓又は慣用によらない場合についても一定の範囲で許容できる場合を規定するものである。

部会では、「字義との関連性」について、字義との関連性の有無の判断には困難を伴うとの意見があったことなどを踏まえ、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、国字の音訓又は慣用により表音されるものでなくても、字義との関連性が認められるもののほか、法務省令で定めるものにつき、「届出(申出)」を要件として許容することとしている。

【丙案】の「法務省令で定めるもの」としては、既に戸籍に記載されている者については、旅券やその他の公簿等に氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの又はこれらを元にしたローマ字が登録され公証されている場合などが考えられる。また、名乗り訓や部分音訓によるものが考えられる。

3 各案の問題

(1) 【甲案】の問題

 【甲案】については、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの自体の許容性の観点から審査することは可能であるが、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による審査である以上、氏名との関連性の観点から審査することは困難であるとも考えられ、審査に支障を来すおそれがあるとの見方もある。

 他方で、部会では、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による場合であっても、氏名との関連性の観点からの審査も可能ではないかとの意見があった。

 この点、例えば、「鈴木」という氏について、それを平仮名(片仮名)で表記したものを「さとう(サトウ)」とするものなど、相手方に、当該氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが常に誤記されたものと受け取られるものについては、【甲案】の規律の下でも、氏名との関連性が乏しく、広く誤解を招くなどの弊害を生ずるとの観点から、これを排除することができるか否かについて、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

(2)【乙案】の問題

 【乙案】に関しては、①慣用については、その範囲や判断基準を明確に定めることは困難である、また、②氏にあっては、慣用にない氏を平仮名(片仮名)で表記したものや字義と一致しない氏を平仮名(片仮名)で表記したものが実際上使用されている、③名にあっては、命名文化として、最初に誰かが名を平仮名(片仮名)で表記したものとして考えた漢字の読みが広まって一般的な名乗り訓となるところ、仮に新たな名乗り訓となり得るものが認められないことになると、これまでの命名文化・習慣が継承されないこととなるなどの指摘があった。

 また、【乙案】における「国字の音訓若しくは慣用による表音」及び「字義との関連性」は、氏名が漢字で表記されていることを前提としているものとも考えられ、氏又は名の全部又は一部が平仮名又は片仮名の者も想定して、規定振りについては、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

 なお、部会では、漢字の中には、反訓読みといわれる反対の意味の読みが存在するものがあるとの指摘があったところ、反訓読みによるものについては、混乱が生じることを防止するため、これを認めるべきでないとの意見があった一方で、反訓読みは中国の訓詁学の中で育まれてきたものであり、その一部は漢和辞典にも掲載されているとの指摘があった。

(3) 【甲案】を法令に規定する場合の問題(試案の注1)

試案の(注1)のとおり、【甲案】については法令に規定することも考えられる。

東京家裁八王子支部平成6年1月31日審判(判例時報1486号56頁)において、「市町村長の命名についての審査権も形式的審査の範囲にとどまり、その形式のほか内容にも及び、実質的判断までも許容するものとは解されないが、例外的には、親権(命名権)の濫用に亙るような場合や社会通念上明らかに名として不適当と見られるとき、一般の常識から著しく逸脱しているとき、または、名の持つ本来の機能を著しく損なうような場合には、戸籍事務管掌者(当該市町村長)においてその審査権を発動し、ときには名前の受理を拒否することも許されると解される。」とされたとおり、名を初めて戸籍に記載する場合には、戸籍窓口において、許容性について法の一般原則による審査が行われているものの、現行法上、その審査に関する明文の規定はなく、戸籍法第50条第1項において、「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。」と規定されているに過ぎない。そこで、【甲案】を法令に規定する場合には、氏名についても同様に、その審査に関する明文の規定を設けることが考えられるものの、慎重な検討が必要であると考えられる。

(4) 【乙案】及び【丙案】における「慣用」(試案の注2)

 試案の(注2)のとおり、【乙案】又は【丙案】における「慣用」は、社会的にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されているという社会的慣用を意味するものである。具体的には、次のような考え方のいずれかが満たされていれば「慣用」があると解することが考えられる。すなわち、①不特定多数人において、氏又は名から当該氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを判読することが可能であること、②名を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、多数人において当該名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されていることなどが考えられる。

4 その他

 部会では、氏名及び氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが個人の権利・利益と密接に関わるものであることは明らかであるが、その一方で、氏名は、社会において個人を識別する機能を有するものであり、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものもまた、同様の機能を有するものであることから、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを定めるに当たっては、社会的な混乱を防止するため、一定の制約を受けると考えられるとの意見があった。

 また、字義との関連性などを戸籍窓口において審査することは困難であり、抽象的な規律とせざるを得ないとの意見や、戸籍窓口における混乱を防止するため、これまでの「よみかた」については審査をしないという取扱いを大幅に変更するのは相当でなく、一般的抽象的な規律を設け、個別に判断することとするのが適切であるとの意見があった。

 さらに、戸籍窓口の事務への影響や不受理件数の増大、ひいては家庭裁判所の実務への影響も懸念されるとの意見や、戸籍窓口や家庭裁判所において、どのような要件をどのようなスタンスで審理・判断することになるのかについて、議論を尽くすことが重要だとの意見、特に、【甲案】における権利濫用や公序良俗等の概念は抽象的なので、具体的基準として機能するよう、具体的に議論を尽くすべきであるとの意見もあった。

 これらの意見を踏まえると、戸籍窓口である市区町村に対し、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの審査に関する明確な資料を示す必要があるものと考えられ、また、家庭裁判所から市区町村に対し、当該審査の運用状況に関する調査嘱託等がなされた場合には、上記資料を提供することなどの手続的な手当についても、検討する必要があるものと考えられる。

第2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集に関する事項

1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集

 戸籍法第13条第1号に定める氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係るものについては、氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書(出生、国籍取得、帰化、氏の変更、名の変更、就籍の届書等)の記載事項とし、これを戸籍に記載することとする(注)。

(注)例えば、「届出事件の本人の氏又は名を初めて戸籍に記載するときは、届書にその氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載しなければならない。」というような規定を戸籍法に設けることが考えられる。

(補足説明)

 戸籍の記載は、届出、報告、申請、請求若しくは嘱託、証書若しくは航海日誌の謄本又は裁判によってするとされているところ(戸籍法第15条)、実情として、届出による記載がほとんどである。

 そこで、試案のとおり、氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書の記載事項とすることにより、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを収集することを提案している。

2 既に戸籍に記載されている者に係る収集

 既に戸籍法第13条第1号に定める氏名が戸籍に記載されている者は、一定期間内に本籍地の市区町村長(注1)に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの申出をしなければならないものとし、一定期間内に当該申出があった場合には、当該市区町村長が当該申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする(注2)(注3)。

 一定期間内に当該申出がない場合には、本籍地の市区町村長が国字の音訓又は慣用その他法務省令で定める方法により職権で、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする。

(注1)ここでは当該戸籍を管掌する本籍地の市区町村長を想定しているが、所在地の市区町村長を加えることも考えられる。

(注2)申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが第1の2により許容されるものでないとして戸籍に記載されなかった場合、その不服申立てについては、戸籍法第122条の規定を準用するものとすることが考えられる。

(注3)市区町村長の職権による戸籍への記載を促すものとしての「申出」ではなく、戸籍法上の「届出」と整理した上で、届出義務を課し、正当な理由なく期間内に届出がない場合には、過料の制裁を科す(戸籍法第137条参照)方法も考えられる。

(補足説明)

1 試案の概要

 既に戸籍法第13条第1号に定める氏名が戸籍に記載されている者に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集方法として、試案の(注3)のとおり、戸籍法上の「届出」と整理した上で、戸籍に記載されている者に届出義務を課すことにより、自ら届出をすることとし、法定の期間内に届出がない場合には本籍地の市区町村長が職権で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載することも考えられるが、部会では、このような整理の下では、法定の期間内に届出がされなかった場合に過料の対象となることを理由として、否定的な意見が多数であった。

 他方で、短期間にできるだけ多くの氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを収集するためには、過料の対象とならない市区町村長の職権による戸籍への記載を促すものとしての申出事項と整理しつつ、申出をしなければならないこととすべきであるとの意見もあった。

 以上の意見も踏まえ、効果的かつ国民にとって過度の負担にならない方法により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを収集することを目指し、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、職権での記載を促す申出事項と整理した上で、一定期間内に申出を容易にする方策を講じ、当該期間内に申出がない場合には本籍地の市区町村長が職権で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載する案を提示している。

 なお、氏名を平仮名又は片仮名で表記したものが試案第1の2により許容されるものでないとして戸籍に記載されなかった場合、その不服申立てについては、戸籍法第122条の規定を準用し、家庭裁判所に不服の申立てをすることができるとすることが考えられる((注2)参照)。

2 試案の内容

 試案は、戸籍に記載されている者に対し、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについての申出(職権記載の申出)の義務を課した上で、一定期間内に申出があった場合には、本籍地の市区町村長(なお、試案の(注1)のとおり、所在地の市区町村長を加えることも考えられる。)が当該申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載することとし、他方、当該期間内に当該申出がない場合には、本籍地の市区町村長が法務省令で定める方法により職権で、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとするものである。なお、職権記載の申出に義務を課すことについては、法制上、そのような仕組みとすることが可能かどうか、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

 現在の運用として、例えば、出生や死亡があった場合、戸籍法に規定された届出人がいる場合には、届出人により出生や死亡の届出がされることになるところ、届出人がいない場合や既に亡くなっている場合であって、届出人以外の者から出生証明書や死亡診断書等の確実な資料が提出された場合には、職権記載の申出として取り扱い、本籍地の市区町村長は、戸籍法第24条第2項により出生事項や死亡事項を戸籍に記載することとなる。

 このようにして戸籍に記載する端緒となる職権記載の申出自体については特段の根拠規定がないものの、職権記載申出の義務を課すこととするのであれば、試案の第1文前半については、法令に規定する必要があり、第2文については、法令に規定する方法又は法令に規定しない方法が考えられる。

 試案の第2文を法令に規定しない方法については、以下のとおり整理することが可能である。すなわち、試案の第1の1により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが戸籍の記載事項として法令に規定されている以上、戸籍法第24条第1項の「戸籍の記載に遺漏がある」状態と評価することができ、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、試案の第1の2において【乙案】を採用する場合には、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものであり、【丙案】を採用する場合には、申出がない限り、国字の音訓又は慣用により表音されるものであることから、本籍地の市区町村長は、同条第2項の戸籍訂正により、戸籍の氏名の記載を元にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載することができると考えられる。

 なお、試案の第2文により、本籍地の市区町村長が職権により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載した場合には、戸籍法施行規則第47条の2に基づき、届出人又は届出事件の本人に戸籍訂正した旨を連絡することが考えられる。

3 申出期間

 試案の規律によると、一定期間内に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの申出がされなかった場合、申出義務違反の状態になるため、当該期間が適切なものとなるよう検討する必要がある。当該期間について、法の施行日から長期間とすることは相当でないものの、具体的な期間については、収集方法を踏まえて引き続き検討することとされた。

4 申出を容易にする方策

 申出期間内に多くの申出がされるよう、効果的な収集方法を検討する必要があり、いわゆるプッシュ型の取組も効果的であると考えられるところ、申出を容易にする方策の一つとして、本籍地の市区町村や住所地の市区町村が氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの若しくはこれに準ずる情報を保有している場合には当該情報又は氏名に係る国字の音訓若しくは慣用により表音されるところにより、申出人となるべき者に戸籍に記載する氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、まず通知をすることが考えられる。

5 職権記載に当たっての指針

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、試案の第1の2において【乙案】を採用する場合には、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものであり、【丙案】を採用する場合には、申出がない限り、国字の音訓又は慣用により表音されるものであることから、本籍地の市区町村長は、戸籍法第24条第2項の戸籍訂正により、戸籍の氏名の記載を元にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載することができるが、氏名を平仮名(片仮名)で表記されるものが複数想定されることも考えられる。そこで、【甲案】はもとより、【乙案】・【丙案】のいずれを採用する場合であっても、本籍地の市区町村長が氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載するに当たっての指針となるべきものを定める必要があると考えられる。

 また、本籍地の市区町村長による職権記載に当たり、本籍地の市区町村や住所地の市区町村が氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの又はこれに準ずる情報を保有しており、当該情報を参照することが可能な場合には、「その他法務省令で定める方法」として法務省令に規定することが考えられる。もっとも、本籍地の市区町村と居住する市区町村が異なる者も存在することから、住所地の市区町村が保有する氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの又はこれに準ずる情報を参照することが困難な場合についても想定する必要がある。そのような場合には、試案の第1の2においていずれの案を採用するかにかかわらず、本籍地の市区町村長が氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載するに当たっての指針となるべきものを定める必要があると考えられる。

 なお、氏を平仮名(片仮名)で表記したものについて、夫婦間で認識が異なる場合も想定されるところ、本籍地の市区町村長において、実際に使用されているものがいずれであるか判断することができない場合には、戸籍に記載しないこととすることが考えられるが、具体的な運用方法については、引き続き検討する必要がある。

6 申出期間の経過により職権記載した後の職権訂正の申出

 試案の第2文により、本籍地の市区町村長が職権により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載した場合において、実際の氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが戸籍に記載されたものと異なるときは、当該記載に係る者は、次の3つの方法のいずれかをとることが考えられる。

 1つ目に、本籍地の市区町村長に職権訂正の申出をすることが考えられ、この場合には、戸籍法第24条第2項の規定により、本籍地の市区町村長は管轄法務局長等の許可を得て、職権で当該申出による氏名を平仮名(片仮名)で表記したものに戸籍訂正することができるとすることが考えられる(管轄法務局長等の許可を得た戸籍訂正)。なお、管轄法務局長等の許可は、包括的に承認しておくことが考えられる。

 2つ目に、利用される場面は多くないと想定されるものの、戸籍法第113条の「その記載に錯誤があること」に該当するとして、家庭裁判所の許可を得た上で、戸籍訂正を申請することも当然可能である(家庭裁判所の許可を得た戸籍訂正)。

 また、3つ目に、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更手続によることも可能であると考えられる。

 この点、部会では、本籍地の市区町村長が職権により戸籍に記載した氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、戸籍に記載されている者等の申出によるものとは異なり、職権による記載であることが分かる形(戸籍記載例を区別する方法)で管理し、その変更については、試案の第3の1の規律の例外と位置付けるという方法も考えられるとの意見があった。

第3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する事項

1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律

氏又は名の変更に伴わない場合の規律は、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注1)。

① やむを得ない事由【正当な事由】(注2)によって氏を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

② 正当な事由によって名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

【乙案】【甲案】に加え、戸籍法に次のような内容の規律を設けるものとする(注3)。

氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、成年に達した時から1年以内に届け出る場合その他法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

(注1)成年に達した者が自ら氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを届け出た(申し出た)後、これを変更しようとする場合には、その変更の許否はより厳しく審査されるべきものとすることも考えられる。

(注2)変更の要件について、氏の変更(戸籍法第107条第1項)よりも緩和することとし、「やむを得ない事由」に代えて「正当な事由」とする案も考えられる。

(注3)【乙案】による変更は、一度に限ることとする。

(補足説明)

1 試案の概要

試案は、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更に関する規律である。

 【甲案】は、氏又は名の変更(戸籍法第107条又は第107条の2)と同様に、家庭裁判所の許可を得た上で、届け出ることとするものであり、【乙案】は、【甲案】を前提としつつ、法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を不要とし、届け出ることのみで変更することができるとするものである。

 部会では、家庭裁判所の許可を不要とすれば、戸籍窓口において変更の要件を審査することとなることを考えると、家庭裁判所の許可を要することとせざるを得ないとの意見を始めとして、家庭裁判所の許可を要することとすべきとの意見が複数あった。また、氏又は名の変更手続(戸籍法第107条又は第107条の2)と異なるものとすると混乱が生じることが懸念されることから、氏又は名の変更手続と同様の規律にすべきであるとの意見があった。

 他方で、家庭裁判所の許可を得るために申立てをすることは、一般的に敷居が高いと感じられることから、名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、幼少の頃から戸籍の記載とは異なるものを使用していたような場合には、家庭判所の許可を不要とすることも考えられるのではないかとの意見や、氏を平仮名(片仮名)で表記したものについて、成年に達したことを契機として、家庭裁判所の許可を得ずに変更を認めることも考えられるのではないかとの意見があった。

 こうした意見を踏まえ、【乙案】のとおり、成年に達した時から1年以内に届け出る場合など、法務省令で定める一定の場合に限り、家庭裁判所の許可を不要とし、届け出ることのみで変更することができることとする案を提案している。

2 各案における変更の要件

(1) 【甲案】

ア 【甲案】は、氏又は名の変更(戸籍法第107条又は第107条の2)と同様に、家庭裁判所の許可を得た上で、届け出ることとするものである。

【甲案】を採用する場合、その要件については、氏の変更(戸籍法第107条第1項)と同様に、「やむを得ない事由」とすることが考えられる一方で、これを緩和すべきとの意見もあることから、緩和した要件をブラケットを付して記載している。

イ 【甲案】を採用した場合において変更が想定される場面については、現在の氏又は名の変更の取扱いが参考となる。

 氏の変更については、戸籍法第107条第1項及び第4項(外国人である父又は母の称している氏に変更しようとするものなどの要件あり)等に規定されており、同条第1項において、「やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」とされている。

 このやむを得ない事由に該当する事例としては、著しく珍奇なもの、甚だしく難解難読のものなど、本人や社会一般に著しい不利不便を生じている場合はこれに当たるであろうし、その他その氏の継続を強制することが、社会観念上甚だしく不当と認めるものなども、これを認めてよいと考えられている(青木義人=大森政輔全訂戸籍法439頁)。

 また、やむを得ない事由に関して、婚姻により夫の氏になったものの、その後離婚し、婚氏続称の届出をして、離婚後15年以上婚氏を称してきた女性が、婚姻前の氏に変更することの許可を申し立てた事案において、婚氏が社会的に定着していることを認定しつつ、①離婚時に幼少だった子が既に成人し、申立人の氏の変更許可を求めることに同意していること、②申立人は、同居の実両親とともに、9年にわたり、婚姻前の氏を含む屋号で近所付き合いをしてきたこと等の諸事情を考慮して、やむを得ない事由があると認められると判断し、申立てを却下した原審判を変更して、氏の変更を許可した事例(東京高裁平成26年10月2日決定(判例時報2278号66頁))もある。

ウ 戸籍法第107条の2に規定する名の変更については、正当な事由があ

る場合に家庭裁判所の許可を得て、届け出ることができるとされている。

 この正当な事由の有無は一概に言い得ないが、営業上の目的から襲名の必要があること、同姓同名の者があって社会生活上支障があること、神官僧侶となり、又はこれをやめるため改名の必要があること、珍奇な名、異性と紛らわしい名、外国人に紛らわしい名又は難解難読の名で社会生活上の支障があること、帰化した者で日本風の名に改める必要があること等はこれに該当するであろうが、もとよりこれのみに限定するものではないと考えられており、また、戸籍上の名でないものを永年通名として使用していた場合に、その通名に改めることについては、個々の事案ごとに事情が異なるので、必ずしも取扱いは一定していないが、相当な事由があるものとして許可される場合が少なくないとされている(前掲全訂戸籍法442頁)。

 また、性同一性障害と診断された戸籍上の性別が男性である申立人が、男性名から女性名への名の変更許可を申し立てた事案において、正当な事由があると認められると判断し、原審を取り消して名の変更を許可した事例(大阪高裁令和元年9月18日決定(判例時報2448号3頁))もある。

さらに、名の変更については、出生届出の際の錯誤あるいは命名が無効であることを理由として認められる場合がある(戸籍610号75頁)。

エ  以上の例と氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの特性に鑑みれば、氏を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、著しく珍奇なもの、甚だしく難解なもの、永年使用しているものによるものなどを理由とした場合が、名を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、珍奇なもの、難解なもの、永年使用しているもの、いわゆる性自認と一致しないものなどを理由とした場合などが考えられる。

 さらに、これらの届出のうち、実際に氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更の届出が想定される場面は、極めて限定されるが、例えば、氏を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、①濁点の有無や音訓の読みが変化したものを永年使用していることのほか、②本人以外が届け出たものについて、著しく珍奇なもの又は甚だしく難解なものなどが考えられる。また、名を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、同様に、①濁点の有無や音訓の読みが変化したものを永年使用していることのほか、②本人以外が届け出たものについて、珍奇なもの又は難解なもの、③いわゆる性自認と一致しないものなどが考えられる。

(2) 【乙案】

 【乙案】は、【甲案】を前提としつつ、法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を不要とし、届け出ることのみで変更することができるとするものであり、届出のみによる場合には、戸籍窓口において氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性を審査することとなる。なお、民法第791条第4項において、子の氏の変更につき、「前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。」と規定されていることから、これを参考としているが、部会では、民法第791条第4項に規定する子の氏の変更の場合には、復する氏が従前の氏に制限されているところ、【乙案】においてはそのような制限がないことを考慮する必要があるとの意見があった。

 また、部会では、氏名は、社会において個人を識別する機能を有するものであり、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものもまた、同様の機能を有するものであるとの指摘があり、こうした観点から、家庭裁判所による審査を経ることなく、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更を認めることには否定的であるとの意見が複数あった。

 【乙案】の「法務省令で定める場合」としては、(補足説明)2(1)エの届出が想定される場面、具体的には、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第1項の規定による性別の取扱いの変更の審判を受けたときなどを法務省令に規定することが考えられる。

3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更における届出人

 戸籍法第107条第1項において、氏の変更の届出人は、「戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者」とされていることから、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更においても、これと同様にしている(【甲案】①)。

 なお、筆頭者及びその配偶者以外の者が戸籍法第107条第1項による氏の変更の届出をすることは許されず、筆頭者及びその配偶者以外の同籍者については、分籍の上、氏の変更の届出をする必要があるとされていることから、これと同様の取扱いとすることが考えられる。

4 その他

 部会では、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更については、自分自身が手続に参加する形で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが登録された場合には、その変更はより慎重であるべきであるとの意見があった。

 この点、【甲案】については、変更の要件を、やむを得ない事由又は正当な事由よりも厳しくすることが考えられるのではないかとの意見があったほか、自分自身が手続に参加する形で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが登録されたという事実を、家庭裁判所におけるやむを得ない事由又は正当な事由に関する審査の際に、一つの事情として考慮することも考えられる。

2 氏又は名の変更に伴う場合の規律

戸籍法第107条第1項又は第107条の2の規定により氏又は名を変更しようとするときは、その平仮名(片仮名)で表記したものとともに、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないこととする。

(補足説明)

1 試案の概要

 試案は、氏又は名の変更に伴う氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する規律であり、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについても、氏名とともに家庭裁判所の許可を要することとするものである。

 なお、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、家庭裁判所の許可を不要とし、氏又は名の変更の許可を得た後、氏又は名の変更の届出時にこれらを平仮名(片仮名)で表記したものの届出をすれば足りるとすることも考えられる。この場合には、戸籍窓口において、第1の2により氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏又は名との関連性が審査され、相当でないものであれば、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの届出は受理されないこととなる。

 この点、部会では、戸籍窓口において、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの届出が受理されない場合には、再度、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更について、家庭裁判所の許可を得る必要があることなどを理由に、氏又は名とこれらを平仮名(片仮名)で表記したものについて、併せて家庭裁判所の許可を得ることとするのが相当であるとされた。

2 試案の内容

 試案の規律によると、氏名とともにこれらを平仮名(片仮名)で表記したものについても家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出る必要があり、家庭裁判所において、第1の2により氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性が審査される。

 この場合、家庭裁判所において、①氏又は名について、やむを得ない事由又は正当な事由が認められるものの、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、第1の2により相当でないものと認定された場合には、氏又は名の変更を含めて、変更の許可がされず、申立てが却下されることになるものと考えられる。

 また、②氏又は名について、やむを得ない事由又は正当な事由が認められない場合には、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものについての許容性を判断するまでもなく、変更の許可がされず、申立てが却下されることになるものと考えられる。

 なお、部会では、家庭裁判所において、字義との関連性を審査することは困難であることから、家庭裁判所から市区町村に対し、当該審査の運用状況に関する調査嘱託等がなされた場合には、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの審査に関する資料を提供することなどの手続的な手当についても、検討する必要があるとの意見があった。

3 氏又は名を変更し氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しない場合

 部会では、氏又は名を変更しつつ、これらを平仮名(片仮名)で表記したものを変更しないとするニーズもあるのではないかとの意見があった。

 この場合、試案の規律によれば、氏又は名の変更と併せて、従前の氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、家庭裁判所の許可を得て届け出ることとなるところ、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しない場合であっても、家庭裁判所の許可を必要とする理由について整理する必要があるが、氏又は名を変更する場合には、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものもそれに伴うものであるから、結果として同じ読み方(読み仮名)であっても、潜在的には変更を伴うものであり、許容性及び氏名との関連性を審査するものと考えられる。

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