研修「相続法(令和3年改正も含む)の実務~近時の相続法改正と今後の改正の概要~」メモ

全国青年司法書士協議会民法・不動産登記等研究委員会委員長浅野知則

目次

1.自己紹介

2.近時の相続法改正の概要

3.令和3年の民法・不動産登記法改正の概要

4.成人年齢の引き下げ

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)1月13日施行

  • 自筆証書遺言の方式緩和(第968条)
    • 自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成可能。
    • あくまで方式の緩和は財産目録の部分だけで本文を記載する自筆証書は第968条第1項に定める方式を満たす必要がある。

⇒その全文、日付及び氏名を自書するとともに、押印する必要がある。

⇒自筆証書(財産目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して  特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならない。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)1月13日施行

  • 自筆証書遺言の方式緩和(第968条)

【実務のポイント】

・その全文、日付及び氏名を自書するとともに、押印する必要があるため、支援できるのは財産目録の作成と本文の内容の案文作成。

・自筆証書(財産目録を含む。)中の加除その他の変更は、改正されていないため、遺言者が文章を間違った場合、加除訂正方法に従って訂正することを遺言者に丁寧に説明する必要。

・この規定が適用されるのは施行日以後に作成された自筆証書遺言のみ。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示 推定規定)(第903条第4項)
    • 婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定し、被相続人の意 思を尊重した遺産分割ができるように。
  • 2.近時の相続法改正の概要
  • 2019年(平成31年)7月1日施行配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示 推定規定)(第903条第4項)

【実務のポイント】

・この制度が適用されるのは、施行日以後に夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与された場合。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産分割前の払戻し制度の創設等 (第909条の2)
    • 相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも裁判所の判断を経ることなく払戻しが受けられる制度を創設した。
    • 標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で
    • 定める額を限度は現在150万円
    • 上限額は金融機関ごとに定めることとなった。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産分割前の払戻し制度の創設等(第909条の2)

【実務のポイント】

・この制度を用いて金融機関の窓口で預貯金を払い戻した相続人がいる場合、その後の遺産分割協議の際にその清算を行う必要がありますので、遺産分割協議書の案文作成にあたって注意して下さい。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産分割前の払戻し制度の創設等(第909条の2)

【実務のポイント】

・共同相続人の1人が「被相続人名義のキャッシュカードを用いてATMから預貯金を払い戻した場合」や、「自らが被相続人であると偽って被相続人名義の払戻請求書を作成し、金融機関の窓口で払戻しを受けた場合」は、金融機関はこの制度を利用して払戻しをしたのか分からないためこの制度の適用されないものと考えれます。この場合は民法第906条の2の規定が適用されると考えれます。

・この制度は施行日前に開始した相続についても適用があります。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合 の遺産の範囲 (第906条の2)
    • 相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策を設けた。
    • 共同相続人は、その全員(財産を処分した共同相続人は除く。)の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるようになった。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲 (第906条の2)

【実務のポイント】

・この規定は、あくまでも遺産分割を行われる場合であることが前提として、処分された財産を遺産とみなすことができるという規定。遺産分割をすることができない場合(遺産分割前に遺産に属する財産が全て処分された場合)には、この規定は適用されない

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合 の遺産の範囲 (第906条の2)

【実務のポイント】

・この規定が適用されるのは、施行日以後に相続が開始した場合のみ

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、第1012条~第1015条)
  • 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することとなった。
    • 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
    • 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずることとなった。
  • 2019年(平成31年)7月1日施行
  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、 第1012条~第1015条)

【実務のポイント】

・就任承諾をした場合は速やかに法定相続人に通知すべきと考えます。第1007条の2項のより遺言執行者は法定相続人に対し遅滞なく遺言の内容を通知する義務が明記されたので、就任承諾の通知を長期間発送しなかった等の不作為が、遺言執行者の任務懈怠と評価されるリスクを避けるためです。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、 第1012条~第1015条)

【実務のポイント】

・就任承諾の通知には「相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」旨を記載すべきと考えます。相続人が遺言の内容に違反して行為は、判例上絶対的無効ですが、今回の改正で「善意の第三者に対抗することができない」という第三者保護規定が創設されましたので、このような違反行為を抑止する観点からです。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、 第1012条~第1015条)

【実務のポイント】

・相続の開始が施行日前であっても、遺言執行者になる時期が施行日以後である場合は適用になります(下記の場合を除きます。)。

・特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限(第1014条第2項~第4項)と遺言執行者の復任権(第1016条)は、遺言書の作成日が施行後以後の場合にのみ適用されます。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺留分制度に関する見直し(第1046条)
    • 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている改正前の規律を見直し、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ、受遺者等の請求により、金銭債務の全部又は一部の支払につき裁判所が期限を許与することができるようにした。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺留分制度に関する見直し(第1046条)

【実務のポイント】

・遺言の作成支援において遺留分権利者がいる場合には、遺留分対策はすべきと考えます。遺留分の金銭債権化により遺留分の権利行使がしやすくなったと考えられるから。

・相続の開始日が施行日以後の相続に関し適用されます。相続の開始日が施行日前の相続については従前のとおり遺留分減殺請求となり、不動産については物権変動が発生することに注意。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、第9 02条の2)
    • 相続させる旨の遺言等により承継された財産について は、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗すること ができるとされていた改正前の規律を見直し、法定相 続分を超える権利の承継については、対抗要件を備え なければ第三者に対抗することができないようにした。
    • 対抗要件主義が適用されるのは法定相続分を『超えた部分』
    • 「権利」には、不動産、動産に関する所有権等の物件や債権はもとより、株式や著作権など、その権利の譲渡等につき対抗要件主義を採用しているもの全般が含まれる。
  • 2019年(令和元年)7月1日施行
  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、 第902条の2)
    • 債務について相続分の指定がされた場合、相続債権者(被相続人の債権者)は、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができることを明確にした。
    • 相続債権者が共同相続人の1人に対して相続債権者が指定相続分に応じた債務の承継を承認した場合には、相続債権者は、その後は指定相続分に応じた権利行使したできないこととなった。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、 第902条の2)

【実務のポイント】

・相続登記の依頼を受けた場合には速やかに登記手続きが行うことをお薦め致します。遺産分割協議書が既にあ る場合や遺言執行者がなく遺言書の実現のために受遺 者から依頼を受けた場合には、手続きを遅延している 間に相続人の債権者による代位の相続登記が入れられ、差押えの持分登記や仮差押えの持分登記が入れられる と依頼の実現が難しくなり責任問題へと発展すること が想定されるからです。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、 第902条の2)

【実務のポイント】

・施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による『債権』の承継がされた場合において、施行日以後にその承継の通知がされるときにも第899条の2第2項の規定が適用されますが、それ以外の財産の場合は、施行日以後に相続が開始した場合にのみ適用。

・第902条の2の規定は、施行日以後に相続が開始した場合にのみ適用。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(第1050条)
    • 相続人以外の被相続人の親族(例えば、相続人の配偶 者)が、被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与)を創設した。
    • 特別の寄与の制度創設に伴い、家庭裁判所における手続規定(管轄等)を設けた。
  • 2020年(令和2年)4月 1日施行
  • 配偶者短期居住権の新設 (第1037条~第10 41条)
    • 配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住 していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用できるようにした。
    • 配偶者が「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた」ことを成立要件(保護要件)とした。
  • 配偶者は、法律上被相続人と婚姻をしていた配偶者をいい、内縁の配偶者は含まれない。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者短期居住権の新設 (第1037条~第10 41条)
    • 居住建物が「被相続人の財産に属した」とは、被相続人が居住建物の所有権又は共有持分を有していたことをいう。
    • 配偶者が「無償で」居住していたとは、居住建物について配偶者と被相続人との間に賃貸借等の契約関係があり、有償で使用していた場合は除かれた。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者短期居住権の新設 (第1037条~第10 41条)
    • 「居住していた」とは、生活の本拠として現に居住の用に供していたことをいう。

⇒配偶者が相続開始の時点で入院等のために一時的に被相続人の建物以外に滞在していたとしても、配偶者の家財道具がその建物に存在しており、退院後はそこに帰ることが予定されているなど、被相続人所有の建物が配偶者の生活の本拠としての実態を失っていないと認められる場合には、配偶者はなおその建物に居住していたということができる。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036 条)
    • 配偶者の居住建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用を認める法定の権利を創設し、遺産分割等における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようにした。
    • 配偶者居住権の成立要件

1 被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していたこと

2 その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨    の遺産分割、遺贈又は死因贈与がされたこと

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036条)
    • 特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)によって  配偶者居住権を取得することはできない。
    • 居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得したに対し、配偶 者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負うこととなった。
    • 配偶者居住権が設定された居住建物の固定資産税は配偶者居  住権を取得した配偶者が負担する。しかし、地方税法の規定  から居住建物の所有者が納税義務者となるため、居住建物の  所有者は当該配偶者に対して求償することになる。
  • 2020年(令和2年)4月 1日施行
  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036 条)

【実務のポイント】

・創設の目的(被相続人の配偶者が被相続人の死亡後にも長期間にわたり生活を継続することから、住み慣れた居住環境での生活を継続するため等)とは、異なる節税目的での活用がされていることを聞いております。制度趣旨を考えて活用するようにしましょう。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036 条)

【実務のポイント】

・配偶者居住権及び配偶者短期居住権とも、相続の開始日が施行日以後の場合にのみ適用されます。仮に施行日前に配偶者居住権又は配偶者短期居住権を目的とする遺贈がされた場合には適用されませんので注意して下さい。

2020年(令和2年)7月10日施行

  • 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
  • 遺言書保管所としてされた法務局は、本局及び支 局とされ、出張所は含まれない。
  • 申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言 者の所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保 管所の遺言書保管官に対して遺言者が自ら出頭し てする。
  • 遺言書保管法により遺言書保管所に保管された自 筆証書遺言は検認が不要となった。

2020年(令和2年)7月10日施行

【実務のポイント】

・自筆証書遺言であることは変わりないので、遺言者が本文を自筆で書けるかどうかは確認。

・保管の申請日にはできるだけ同行。遺言書保管官から質問された場合。

・保管の申請日には必ず遺言書に押印した印鑑は持っていくように。遺言書保管官による確認で誤字等が見つかり加除訂正が必要になる場合がある。

3.令和3年の民法・不動産登記法改正の概要

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 財産管理制度の見直し
    • 所有者不明土地・建物の管理制度の創設
      • 個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度を創設する。

※ 裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任(裁判所の許可があれば売却も可)

⇒ 所有者不明土地・建物の管理を効率化・合理化する。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 財産管理制度の見直し
    • 管理不全土地・建物の管理制度の創設
      • 所有者が土地・建物を管理せずこれを放置している ことで他人の権利が侵害されるおそれがある場合に、管理人の選任を可能にする制度を創設する。

⇒管理不全化した土地・建物の適切な管理が可能となる。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 共有制度の見直し
    • 共有物の利用の円滑化を図る仕組みの整備
      • 裁判所の関与の下で、不明共有者等に対して公告等をした上で、残りの共有者の同意で、共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設する。
      • 裁判所の関与の下で、不明共有者の持分の価額に相当する額の金銭の供託により、不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する仕組みを創設する。

⇒不明共有者がいても、共有物の利用・処分を円滑に進める  ことが可能になる。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 相隣関係規定の見直し
    • ライフラインの設備設置権等の規律の整備
      • ライフラインを自己の土地に引き込むための導管等 の設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣 地所有者不明状態にも対応できる仕組みも整備する。

⇒ライフラインの引込みを円滑化し、土地の利用を促進する。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 相続制度の見直し
    • 長期間経過後の遺産分割の見直し
      • 相続開始から10年を経過したときは、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みを創設する。

⇒遺産分割長期未了状態の解消を促進する。

2023年(令和5年)4月27日施行

  • 相続土地国庫帰属制度の創設
    • 相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設
    • 相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設する。
    • ただし、管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件(詳細は政省令で規定)を設定し、法務大臣が要件を審査する。
  • 2023年(令和5年)4月27日施行
  • 相続土地国庫帰属制度の創設
    • 相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設
    • 相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設する。
    • ただし、管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件(詳細は政省令で規定)を設定し、法務大臣が要件を審査する。

2023年(令和5年)4月27日施行

  • 相続土地国庫帰属制度の創設

【要件】

1  対象土地が建物の存していないこと

2 対象土地が担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されていないこと

3 対象土地が通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれていないこと

4 対象土地が土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)第2 条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を  超えるものに限る。)により汚染されていないこと

5  対象土地が境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがないこと

6 対象土地が一崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要しないこと

7 対象土地が土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存しないこと

8 対象土地が除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存しないこと

9  対象土地が隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの以外の土地であること

10 対象土地が⑥から⑨に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの以外の土地であること

2024年(令和6年) 4月1日施行

  • 相続登記の申請義務化
    • 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3  年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける(正当な理由のない申請漏れには過料の罰則あり)。
    • 相続登記の申請義務の実効性を確保するよう、次のような環  境整備策をパッケージで導入する。

    登記の手続的な負担(資料収集等)を軽減

相続人申告登記(仮称)の新設

  • 相続人が、登記名義人の法定相続人である旨を登記所に申し出る。申請義務の履行手段の一つとする。(単独で申告可・添付書面も簡略化)

⇒ 相続登記の申請義務を簡易に履行することが可能になる。

※ 登記官がその者の氏名及び住所等を職権で登記する(持分は登記されない報告的な登記)

  • 相続登記の申請義務化

 登記手続の費用負担を軽減

登録免許税の負担軽減策の導入などを要望

(参考)

R4年度税制改正の大綱において、①相続登記に対する登録  免許税の免税措置の延長・拡充、②改正不登法により創設された職権登記(相続人申告登記、住所等変更登記等)への非  課税措置の導入が決定

  • 相続登記の申請義務化

    登記漏れの防止

所有不動産記録証明制度の新設

・特定の者が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行⇒相続登記が必要な不動産の把握が容易になる。

※自己所有不動産の一般的確認方法としても利用可能

  • 相続登記の申請義務化

    地方公共団体との連携

死亡届の提出者に対する相続登記の必要性に関する周知・啓発を要請など

※地方公共団体の作成する相続発生時に必要な手続のチェックリストに相続登記の申請を追加するよう要請

公布後5年を超えない範囲内で政令で定める日に施行

  • 住所等の変更登記の申請義務化
    • 所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける(正当な理由のない申請漏れには過料の罰則あり)。
    • 他の公的機関から取得した情報に基づき、登記官が職権的に変更登記をする新たな方策も導入する。

⇒ 転居や本店移転等に伴う住所等の変更が簡便な手続で登記に反映される。

  • 住所等の変更登記の申請義務化

【自然人の場合】

登記申請の際には、氏名・住所のほか、生年月日等の「検索用情報」の申出を行う。

登記官が、検索用情報等を用いて住民基本台帳ネットワークシステムに対して照会し、所有権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得する。

登記官が、取得した情報に基づき、登記名義人に住所等の変更の登記をすることについて確認をとった上で、変更の登記をする(非課税)。

【法人の場合】

    法人が所有権の登記名義人となっている不動産について、会社法人等番号を登記事項に追加する。

    商業・法人登記システムから不動産登記システムに対し、名 称や住所を変更した法人の情報を通知する。

    取得した情報に基づき、登記官が変更の登記をする(非課税)。

  • 登記名義人の死亡等の事実の公示
    • 登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示する(符号で表示)。⇒ 登記で登記名義人の死亡の有無の確認が可能になる。
  • 4.成人年齢の引き下げ

2022年(令和4年)4月1日施行

  • 民法第4条

現       行:年齢20歳をもって、成年とする。

施行後:年齢18歳をもって、成年とする。

  • 成年に関する経過措置附則第2条
    • 施行日午前0時に18歳に達していない者(平成16年4月2日以後に生まれた者)

⇒18歳に達した時から成年となる。

  • 施行の際に18歳以上20歳未満の者のうち婚姻によって成年に達したとみなされた者以外の者(平成14年4月2日以降平成16年4月1日以前に生まれた者)

⇒施行日の午前0時に成年となる。

  • 成年に関する経過措置附則第2条
    • 施行の際に20歳に達していた者(平成14年4月1日までに生まれた者)

⇒成年に達した時についてはなお従前の例による

  • 施行日前に婚姻をし、成年に達したものとみなされた者

⇒改正法の施行後も、なお従前の例により当該婚姻の時に成年に達したものとみなす

相続の場面での主な注意点

  • 遺産分割協議における利益相反行為

第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2      親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を 行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭 裁判所に請求しなければならない。

⇒上記の条文は改正前後で変更なし。

⇒法定相続人に未成年の子がいる場合における遺産分割協議において  未成年の子ごとに特別代理人を選任する必要があり、改正法施行日以 後において未成年の子の判断が変わります。

相続の場面での主な注意点

  • 遺言執行者の欠格事由

第1009条                未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

⇒上記の条文は改正前後で変更なし。

⇒遺言の作成支援において遺言執行者の選任の場面で改正法施行日以  後において未成年者の判断が変わります。

参考文献

  • 一問一答 新しい相続法〔第2版〕

平成30年民法等(相続法)改正、遺言書保管法の解説堂園幹一郎・野口宣大 編著                   商事法務 出版

  • 概説 改正相続法(第2版)

平成30年民法等改正、遺言書保管法制定堂園幹一郎・神吉康二  編著

一般社団法人金融財政事情研究会 出版

  • 民法(相続関係)改正法の概要

潮見佳男 編著                 一般社団法人金融財政事情研究会 出版

  • 一問一答 成年年齢引下げ

笹井朋昭・木村太郎 編著                          商事法務 出版

Adobe Acrobatと、Adobe Acrobat Readerの違い

 今まで、Adobe AcrobatはPDFの作成や編集、電子署名の付与、Adobe Readerは、PDFファイルやPDF形式のwebページを読むためのソフトだとぼんやり考えていましたが、私の理解は違っていたようです。ちなみに、数年前まではアドべと読んでいましたが、アドビが正解のようです。

現在の環境

Windows10

Adobe Acrobat Standard DCのバージョン・・・2015.006.30527

Adobe Acrobat Reader DCのバージョン・・・2021.011.20039

Acrobatのバージョン確認方法

https://www.adobe.com/content/dam/acom/jp/promotions/acrobat/discount15/Acrobat_EOS_version_check_detail_L.pdf

Acrobat、Adobe Reader の違いは何ですか (Acrobat Family Ver.8/9 機能比較)

https://helpx.adobe.com/jp/acrobat/kb/cpsid_88092.html

Adobe Reader ・・・PDF ファイルの閲覧や印刷を行う。

Acrobat は、Adobe Reader に含まれる機能に加えて、PDFファイルの作成、電子フォームの作成、編集、注釈機能などが付いている。

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講演会「規制改革実施計画から見る司法書士業務の今後~デジタル化社会への対応とその課題~」メモ

「規制改革の取組について」

令和4年1月15日内閣府規制改革推進室  川村尚永参事官 

規制改革推進会議

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/meeting.html

内閣府本府組織令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412CO0000000245

(設置)

第三十一条 法律の規定により置かれる審議会等のほか、本府に、次の審議会等を置く。

規制改革推進会議

税制調査会

規制改革実施計画・・・毎年6月頃閣議決定。今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(骨太の方針)と一緒に。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizai/tousin/010626gaiyou.html

デジタル臨時行政調査会

https://www.digital.go.jp/meeting

「規制改革推進会議デジタルワーキンググループにおける議論」

日本大学法学部 杉本純子教授

規制改革推進会議デジタルワーキング・グループ

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/meeting.html

戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書(第4版)平成24年3月

法務省

https://www.moj.go.jp/content/000103919.pdf

戸籍情報システム標準仕様書 法務省民事局民事第一課

https://www.moj.go.jp/content/001357217.pdf

戸籍法施行規則

https://www.hitachi.co.jp/Div/jkk/press/040630.html

第四章の二 電子情報処理組織による届出又は申請等の特例

第七十九条の二 戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は別表第三に掲げる書面の交付の請求は、市町村長の使用に係る電子計算機と請求をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用してすることができる。

② 戸籍法第百十八条第一項の市町村長に対してする別表第四に掲げる届出又は申請(以下「届出等」という。)は、前項の電子情報処理組織を使用してすることができる。

第七十九条の三 前条第一項の交付の請求又は同条第二項の届出等をする者は、戸籍法又はこの省令の規定により交付の請求書又は届書若しくは申請書に記載すべきこととされている事項に係る情報を市町村長の使用に係る電子計算機に送信しなければならない。この場合において、戸籍法又はこの省令の規定により交付の請求又は届出等の際に添付し、又は提出すべきこととされている書面等(以下「添付書面等」という。)があるときは、当該添付書面等に代わるべき情報を併せて送信しなければならない。

② 前項に規定する者は、同項の規定により送信する情報に電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名をいう。以下同じ。)を行わなければならない。証人を必要とする事件の届出については、当該証人も、前項前段の情報に電子署名を行わなければならない。

③ 第一項後段に規定する添付書面等に代わるべき情報は、作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者)による電子署名が行われたものでなければならない。

④ 前三項の規定により電子署名が行われた情報を送信するときは、当該電子署名に係る電子証明書(当該電子署名を行った者を確認するために用いられる事項が当該者に係るものであることを証明するために作成された電磁的記録をいう。以下同じ。)であって次の各号のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。

一 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項の規定に基づき作成されたもの

二 商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第十二条の二第一項及び第三項(これらの規定を他の法律の規定において準用する場合を含む。)の規定に基づき作成されたもの

三 その他市町村長の使用に係る電子計算機から当該電子署名を行った者を確認することができるものであって、前二号に掲げるものに準ずるものとして市町村長が定めるもの

第七十九条の四 戸籍法第四十八条第二項の規定による前条第一項の情報の閲覧は、日本産業規格A列三番の用紙に出力したものを閲覧する方法により行う。

第七十九条の五 別表第五に掲げる書面の交付は、市町村長の使用に係る電子計算機と交付を受ける者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用してすることができる。

2 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号。以下「情報通信技術活用法」という。)第七条第一項ただし書に規定する主務省令で定める方式は、電子情報処理組織を使用する方法により前項の書面の交付を受けることを希望する旨の市町村長の定めによるところにより行う届出とする。

第七十九条の六 市町村長は、前条の規定による書面の交付をするときは、第六十六条第一項又は第七十三条第一項各号の証明書に記載すべきこととされている事項に係る情報(第七十三条第一項各号の証明書については、付録第二十九号書式に係る情報を含む。)を、これについて電子署名を行い、当該電子署名に係る電子証明書を併せて市町村の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録しなければならない。

第七十九条の七 情報通信技術活用法第六条第四項又は第七条第四項の氏名又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものは、当該署名等をすべき者による電子署名とする。

第七十九条の八 第七十九条の二第二項の届出等は、届出事件の本人の本籍地でしなければならない。ただし、戸籍法第六十一条及び第六十五条に規定する届出は母の本籍地で、同法第百二条の二、第百十条及び第百十一条に規定する届出は新本籍地で、外国人に関する届出は届出人の所在地でしなければならない。

第七十九条の九 第七十九条の二第二項の規定による届出等がされた場合には、第二十五条又は第二十六条の規定による他の市町村長への届書又は申請書の送付は、当該届書又は申請書に係る情報を電子情報処理組織を使用して送信する方法により行う。ただし、当該情報を出力することにより作成した書面を送付することを妨げない。

② 前項ただし書の書面を送付するときは、その記載に接続して付録第三十号書式による付記をし、職氏名を記して職印を押さなければならない。

第七十九条の十 戸籍法第百二十六条の法務省令で定める基準は、次のとおりとする。

一 大学その他の統計の作成又は学術研究を目的とする団体若しくはそれらに属する者の申出に係るものであること。

二 統計の作成又は学術研究が医学の発達その他の公益性が高いと認められる事項を目的とするものであつて、当該統計又は学術研究の内容が公表されること。

三 戸籍、除かれた戸籍又は届書その他市町村長の受理した書類(以下「戸籍等」という。)に記載した事項に係る情報を利用することが統計の作成又は学術研究のために必要不可欠であり、かつ、当該情報の範囲がその目的を達成するために必要な限度を超えないこと。

四 戸籍等に記載した事項に係る情報を提供することにより、戸籍等に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属その他の親族の権利利益が害されるおそれがないと認められること。

第七十九条の十一 戸籍法第百二十六条の規定により戸籍等に記載した事項に係る情報の提供の申出をしようとする者は、当該情報を市町村が保有している場合には、あらかじめ、当該市町村を管轄する法務局又は地方法務局の長(当該法務局又は地方法務局の長が二以上あるときは、その一の長)の承認を得なければならない。

第七十九条の十二 戸籍法第百二十六条の規定による戸籍等に記載した事項に係る情報の提供は、戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍等に記載した事項についての証明書を交付することによつて行うものとする。この場合において、戸籍等に記載した事項についての証明書は、付録第三十一号書式によつて作らなければならない。

② 戸籍法第百十九条の規定により戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもつて調製されているときは、これらの謄本、抄本又は証明書に代えて、磁気ディスクをもつて調製された戸籍又は除かれた戸籍に記録されている事項の全部若しくは一部を証明した書面を交付することによつて行うものとする。

③ 第七十三条(同条第一項第三号及び第六号、第二項並びに第三項を除く。)の規定は、前項の書面について準用する。この場合において、前項の書面には、次の各号の区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる事項を記載する。

一 戸籍の一部を証明した書面 戸籍に記録されている事項の一部

二 除かれた戸籍の一部を証明した書面 除かれた戸籍に記録されている事項の一部

④ 前項の場合において、第二項の書面は、付録第二十二号様式(第三及び第六を除く。)又は付録第三十二号様式によつて作らなければならない。

⑤ 第三項の場合において、第二項の書面には、市町村長が、その記載に接続して付録第二十三号書式(第三及び第六を除く。)又は付録第三十三号書式による付記をし、職氏名を記して職印を押さなければならない。

戸籍情報連携システム(仮称)のシステム構成(イメージ)

https://www.moj.go.jp/content/001249382.pdf

司法書士業務への影響~デジタル化社会への対応とその課題

隂山克典司法書士

GビズID クイックマニュアル gBizIDプライム編 ver1.6 2021年9月

オンラインで即日作成可能なアカウント

印鑑証明書(個人事業主は印鑑登録証明書)と登録印鑑で押印した申請書を運用センターに郵送し、審査(原則2週間以内)ののち作成される、法人代表者もしくは個人事業主のアカウント

https://gbiz-id.go.jp/top/manual/pdf/QuickManual_Prime.pdf

加工 デジタル臨時行政調査会(第2回)

https://www.digital.go.jp/meeting/posts/91qdfD4B

概要

日時:令和3年12月22日(水) 16時40分から17時25分まで

場所:総理大臣官邸2階大ホール

議事次第:

1.開会

2.議事

(1)牧島大臣プレゼン:デジタル時代の構造改革とデジタル原則の方向性について

(2)夏野委員プレゼン:規制改革推進会議の取組について

(3)総務大臣プレゼン:デジタル田園都市国家構想推進のための 総務省の取組(デジタル基盤の整備促進等) について

(4)経産大臣プレゼン: 経済産業省の取組について

(5)意見交換

3.閉会

資料

議事次第

資料1 デジタル時代の構造改革とデジタル原則の方向性について

資料2 規制改革推進会議の取組

資料3 デジタル田園都市国家構想推進のための総務省の取組 (デジタル基盤の整備促進等) について

資料4 経済産業省の取組について

資料5 宍戸構成員提出資料

資料6 髙島構成員提出資料

資料7 十倉構成員提出資料

資料8 村井構成員提出資料

参考資料

参考資料1 デジタル原則を踏まえたデジタル・規制・行政の一体改革

参考資料2 当面の規制改革の実施事項(令和3年 12 月 22 日規制改革推進会議)

参考資料2 当面の規制改革の実施事項(令和3年 12 月 22 日規制改革推進会議)より

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20211222_meeting_extraordinary_administrative_research_committee_10.pdf

P6

b:令和6年度措置

b 法務省は、法務局において支払う手数料等について、窓口でクレジットカードによる納付が可能となるよう措置する。

P9

令和3年度検討開始、結論を得次第速やかに措置

ケ サービス付き高齢者向け住宅における有資格者の常駐要件の見直し

 国土交通省及び厚生労働省は、原則として、夜間を除き、状況把握サービス及び生活相談サービスに従事する有資格者に課された常駐要件について、入居者の安全・安心及び居住の安定を十分確保することを前提としつつ、デジタル技術活用などを踏まえた見直しの検討を行い、必要な措置を講ずる。

P13

a:引き続き措置

産業廃棄物のマニフェスト制度(環境省)

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)及び小規模企業共済(経済産業省)

P15~

c:引き続き措置

遺失した旨の届出(警察庁)

軽自動車の保管場所の届出(警察庁)

免許の申請(警察庁)

運転経歴証明書の交付の申請(警察庁)

成年後見登記(法務省)

戸籍関連(法務省)

上陸申請手続(法務省)

在留届の各種届出(新規/変更/帰国、出国)(外務省)

国民年金・厚生年金保険等関連手続 (個人からの提出手続)(厚生労働省)

公営住宅の入居申請等(国土交通省)

長期優良住宅建築等計画の認定(国土交通省)

h:(利用状況等の分析)令和3年度措置、(オンライン利用率を大胆に引き上げる取組)令和4年度から速やかに措置

h 法務省は、供託の申請及び供託物の払渡請求、動産譲渡登記事項概要証明書等の交付請求について、令和3年度中にオンライン利用率の引上げに向けた利用状況等の分析を完了し、令和4年度から速やかにオンライン利用率を大胆に引き上げる取組を着実に推進する。

i:令和3年度末まで実施されている調査研究の結果を踏まえ、可能な限り前倒しを図りつつ、可能なものから順次措置

i 法務省及び厚生労働省は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成 28 年法律第 89 号)に基づく監査報告書の提出及び技能実習計画の認定申請について、令和3年度末まで実施されている調査研究の結果を踏まえ、可能な限り前倒しを図りつつ、オンライン化及びオンライン利用率の引上げについて、可能なものから順次必要な措置を講ずる。

j:速やかに検討を開始し、可能なものから順次措置

j 外務省は、一般旅券の発給申請等の手続について、デジタル化の推進により国民の利便性向上及び事務の効率化等を図る観点から、速やかに基本計画を策定の上、オンライン化及びオンライン利用率を大胆に引き上げる取組を推進する。

 また、希望者に対して出頭を求めることなく配送によって旅券を交付することを可能とすることについて、電子申請及び令和6年度の次世代旅券・集中作成方式の導入を踏まえ、マイナンバーカードを活用した本人確認等による安全かつ確実な交付のためのシステム構築・制度設計に向け、速やかに検討を開始し、必要な措置を講ずる。

r:可能な限り前倒しを図りつつ、可能なものから順次措置

r 法務省は、デジタル庁を始めとする関係府省と連携し、戸籍謄抄本の添付を求める全ての行政手続において、原則として添付を不要とすることができるよう、必要な取組を行う。民民間手続を含め将来的な戸籍情報の利用の在り方について検討を行う等国民目線に立った利便性向上及び行政事務の効率化を目指す。

 あわせて、オンラインによる士業者からの職務上請求を導入することができるよう、市区町村、関係府省、士業団体等の関係者の意見を聴き、できるだけ速やかに結論を出す。職務上請求以外の代理請求・第三者請求については、オンライン申請の仕組みの構築や普及促進に向けて、請求者が権限を有していること等を確認する必要がある等の課題に対して、速やかに対応策を講ずる。

k 外務省は、在外公館における査証の発給申請について、国際的な人の往来の再開状況を踏まえつつ、オンライン化及びオンライン利用率を大胆に引き上げる取組を着実に推進する。

a:次期通常国会に法案提出

a 法務省は、民事訴訟手続のデジタル化に向け、次期通常国会に必要な法案を提出する。その際、デジタルを標準とするため、インターネットを用いてする申立て等の在り方について検討し、少なくとも訴訟代理人があるときはインターネットを用いてする申立て等によらなければならないこととする。また、民事訴訟手続における審理終結までの予測可能性を高めるため、審理期間や口頭弁論の時期等についてあらかじめ定める新たな訴訟手続を導入するとともに、当該手続が実際に活用されるよう、利便性が十分に高いものとする。

b:令和4年度以降可能なものから速やかに措置

b 法務省は、民事訴訟手続のデジタル化について、遅くとも令和7年度に本格的な運用を円滑に開始するため、司法府における自律的判断を尊重しつつ、令和5年度中にウェブ会議を用いた口頭弁論の運用を開始するなど、申立て、書面提出、記録の閲覧、口頭弁論といった個別の手続ごとに区分した上で、国民にとってデジタル化のメリットが大きく、かつ、早期に実現可能なものから試行や先行運用を開始できるように環境整備に取り組む。

c:令和4年度以降継続的に措置

c 法務省は、デジタル化された民事訴訟手続を利用して本人訴訟を行う者に対するサポートを充実させるとともに、デジタル化による事務処理コストの低減を踏まえ、書面による申立て等に比べてインターネットを用いてする申立て等の手数料を引き下げることにより、インターネットを用いてする申立て等が標準となるよう取り組む。

d:速やかに検討を開始

d 法務省は、民事訴訟手続のデジタル化に当たって、司法府における自律的判断を尊重しつつ、デジタル庁とも連携の上、最高裁判所が整備するシステムについて、①個別の手続ごとのシステム整備が容易となるようシステム間の疎結合を意識した設計を行うこと、②個別の手続だけでなく一連の手続を通してデジタル化されること、③必要な場合に行政との情報連携が可能なものとなること、④外部ベンダーと連携することができるようAPIを開放すること、⑤リスクベースアプローチに基づき、クラウドサービス特有の問題点やインシデント発生時の対応も念頭に置いた適切なセキュリティを確保すること、⑥利用状況を把握するための客観的指標を設け、PDCAサイクルを回しながら、国民目線で利用しやすいものとすることについての環境整備に取り組む。

a:令和4年度結論

a 法務省は、倒産手続における債権届出等、デジタル化の効果が大きいと考えられる手続について、民事訴訟手続のデジタル化に関する規律にかかわらず、手続の特性に応じた更なるデジタル化を検討する。

b:令和5年の通常国会に法案提出、試行や先行運用については令和5年度以降可能なものから速やかに措置、本格的な運用については令和7年度以降速やかに措置

b 法務省は、家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等のデジタル化に向け、令和5年の通常国会に必要な法案を提出した上で、司法府における自律的判断を尊重しつつ、申立て、書面提出、記録の閲覧、口頭弁論といった個別の手続ごとに区分した上で、国民にとってデジタル化のメリットが大きく、かつ、早期に実現可能なものから試行や先行運用を開始し、民事訴訟手続のデジタル化に大きく遅れることのないよう、本格的な運用を開始できるように環境整備に取り組む。

c:速やかに検討を開始

c 法務省は、家事事件手続及び民事保全、執行、倒産手続等のデジタル化に当たって、司法府における自律的判断を尊重しつつ、デジタル庁とも連携の上、最高裁判所が整備するシステムについて、①個別の手続ごとのシステム整備が容易となるようシステム間の疎結合を意識した設計を行うこと、②個別の手続だけでなく一連の手続を通してデジタル化されること、③必要な場合に行政との情報連携が可能なものとなること、④外部ベンダーと連携することができるようAPI(Application Programming Interface)を開放すること、⑤リスクベースアプローチに基づき、クラウドサービス特有の問題点やインシデント発生時の対応も念頭に置いた適切なセキュリティを確保すること、⑥利用状況を把握するための客観的指標を設け、PDCAサイクルを回しながら、国民目線で利用しやすいものとすることについての環境整備に取り組む。

P22

テ 株主総会資料のオンライン提供の拡大

a:措置済み、b:速やかに検討に着手し、必要に応じ令和4年措置

a 法務省は、株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大する措置について、速やかに再度措置を講ずる。同措置は、株主総会資料の電子提供制度の運用が開始されるまで継続するものとする。

b 法務省は、ウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大する措置の運用状況を検証しつつ、株主総会資料の電子提供制度に基づく書面交付請求において書面に記載することを要しない事項の拡大について、有識者を構成員とする研究会において検討し、その結果を踏まえ、必要な措置を講ずる。

a:令和3年度措置

a 経済産業省は、クレジットカード決済サービスと会計ソフト等のAPI連携の実施が中小企業等の会計事務の効率化に資することを踏まえ、API連携の実施状況について速やかに把握するとともに、社会のデジタル化を促進する観点から目指すべき民間サービスによるデータ連携の目標を定め、民間主導による取組で十分な進展が図られるか検証する。

b:令和3年検討開始、結論を得次第速やかに措置

b ラストワンマイル配送において、上記通達でもカバーできない具体的なニーズの調査結果を踏まえ、ラストワンマイル配送の課題を整理するとともに、対応を検討し、結論を得る。

a:令和4年度措置

a 文化庁は、著作物の利用円滑化と権利者への適切な対価還元の両立を図るため、過去コンテンツ、UGC(User generated content:いわゆる「アマチュア」のクリエイターによる創作物)、権利者不明著作物を始め、著作権等管理事業者が集中管理していないものを含めた、膨大かつ多種多様な著作物等について、拡大集中許諾制度等を基に、様々な利用場面を想定した、簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度を実現する。その際、内閣府(知的財産戦略推進事務局)、経済産業省、総務省、デジタル庁の協力を得ながら、デジタル時代のスピードの要請に対応した、デジタルで一元的に完結する手続を目指して、①いわゆる拡大集中許諾制度等を基にした、分野を横断する一元的な窓口組織による新しい権利処理の仕組みの実現、②分野横断権利情報データベースの構築、③集中管理の促進、④現行の著作権者不明等の著作物に係る裁定制度の改善(手続の迅速化・簡素化)、⑤UGC等のデジタルコンテンツの利用促進を実現すべく、具体的な措置を検討し、所要の措置を講ずる。

P31

a:令和4年度中に検討・結論、結論を得次第速やかに措置

a 厚生労働省は、働き手がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境整備を促進するため、「これからの労働時間制度に関する検討会」における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる。

a:令和3年度措置

a 厚生労働省は、職業安定法(昭和 22 年法律第 141 号)における「募集情報等提供」に該当しない雇用仲介サービスについて、法的位置づけを明確にする。この際、IT技術を活用したサービスの進化が早いことを踏まえ、過剰な規制とならず有益なイノベーションを阻害しないよう留意しつつ、求人者・求職者が安心してサービスを利用できる制度となるよう見直しを行う。

d:令和3年度措置

d 今年度内に、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」(昭和 36 年厚生省令第1号)及び関連通知の改正により、オンライン服薬指導についての新型コロナウイルス感染症を受けた特例措置(「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月 10 日厚生労働省事務連絡))の恒久化を実現する。具体的には、現在、原則は対面による服薬指導となっているが、患者の求めに応じて、オンライン服薬指導の実施を困難とする事情の有無に関する薬剤師の判断と責任に基づき、対面・オンラインの手段のいずれによっても行うことができることとする。また、処方箋については、医療機関から薬局へのFAX等による処方箋情報の送付及び原本の郵送が徹底されることを前提に、薬局に原本を持参することが不要であることを明確化する。さらに、服薬指導計画と題する書面の作成は求めず、服薬に関する必要最低限の情報等の記載でも差し支えないこととする。加えて、薬局開設者が薬剤師に対しオンライン服薬指導に特有の知識等を身に付けさせるための研修材料等を充実させることとし、オンライン服薬指導を行うに当たって研修の受講は義務付けない。

P37

b:令和3年度内に検討・結論

b 電子処方箋の発行に必要な資格確認・本人認証の手段として、HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure:保健医療福祉分野の公開基盤)以外にどのような方法があり得るか、医療機関による本人確認の活用やクラウド電子署名など幅広く、現場のニーズを踏まえて検討し、年度内に結論を得る。

 なお、検討に当たっては、現行の紙処方箋の実務においてその都度明示的な医師の資格確認が行われていない実情を踏まえつつ、紙に比べ電子処方箋が実務的に使い勝手が良いものとなるよう、医療機関・電子署名サービス提供事業者による医師の資格確認に際して、医師登録原簿を都度照会する必要はないこととし、円滑な運用ができることとする。

法案提出は令和3年度措置、手続負担の軽減に係る措置は令和4年度中に措置

 農林水産省は、農業用施設及び農畜産物の加工・販売施設の設置について、農業経営改善計画の認定制度を活用した農地転用許可手続のワンストップ化の措置を講ずるため、次期通常国会に関連法案を提出するとともに、農地転用許可手続の負担を軽減するため、認定農業者が農地転用許可を受けずに設置できる農業用施設の面積(現行2a未満)の拡大や農畜産物の加工・販売施設への拡大について検討を行い、農地転用許可手続のワンストップ化の措置の施行に併せて必要な措置を講ずる。

P41

b,c:令和4年度措置

b 農林水産省は、所有者不明森林について、探索や公告等により経営管理権を設定する特例措置を行う市町村の実施に向けた障害要因を取り除くため、法律の専門家を交え、特例措置活用の考え方や留意点等を整理したガイドラインの作成、探索のノウハウや工程等の知見の調査・整理を実施し、市町村に対して丁寧に説明や周知を行う。

c 農林水産省は、森林所有者を特定するための固定資産課税台帳等の公的書類の内部利用について、適切かつ有効に運用されるため、市町村における活用状況を調査し、現場目線の課題を把握した上で、優良事例の横展開や助言・指導を行う。

日本登記法学会第6 回研究大会note

令和3 年1 1 月2 7 日( 土)日本登記法学会、日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会 後援: 法務省

小塚荘一郎氏( 学習院大学教授)「登記のD X とD X 時代の登記」

早川将和( 司法書士)テーマ「デジタル社会と登記- 商業登記」

総括 北村雅史( 京都大学大学院法学研究科教授)

研究報告1 小西飛鳥( 平成国際大学法学部教授)https://researchmap.jp/read0190967/misc

研究報告2 陰山克典( 司法書士)「デジタル社会と登記- 不動産登記」

研究報告3 今瀬勉( 土地家屋調査士)「リモートセンシングデータの登記利用について」土地家屋調査士 今瀬勉

コーディネーター 石田剛( 一橋大学大学院法学研究科教授)

総括 日本登記法学会顧問 道垣内弘人( 専修大学法科大学院教授)

閉会挨拶 日本登記法学会理事長 七戸克彦( 九州大学大学院法学研究院教授)

「登記のD X とD X 時代の登記」小塚荘一郎氏( 学習院大学教授)

1.登記システムのデジタル化

国際的な担保法改革と登記制度• ユニドロワ(私法統一国際協会)

• ケープタウン条約:可動物件(高額の動産。航空機物件、鉄道車両、宇宙資産、鉱業物件、農業物件及び建設業物件)に対する担保法ルール)

参考:小塚荘一郎「ケープタウン条約宇宙資産議定書の意義と残された課題」

• 物件ごとに、国際登録簿(担保権の登記簿)を設立。国際登録簿は電子的なシステム(本体条約17条2項(i))。

Aircraft RegistrationThe Cape Town Treaty

https://www.faa.gov/licenses_certificates/aircraft_certification/aircraft_registry/cape_town_treaty/

• 航空機物件に関する国際登録簿(Aviareto)および鉄道車両に関する国際登録簿(Regulis)が設立済み

• UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)国際連合センター 国際商取引法

https://www.unic.or.jp/activities/international_law/intl_trade_law/

• 「担保取引立法ガイド」(2007):コンピュータ化され、オンラインでアクセス可能な登記簿の設立を推奨(Ch. VI, para.41)

UNCITRAL Legislative Guide on Secured Transactions (2007)

https://uncitral.un.org/en/texts/securityinterests/legislativeguides/secured_transactions

• 「担保権登記簿実施ガイド」(2013):コンピュータ化された登記簿(「立法ガイド」の確認) (Ch. I, paras. 82-89):運用者(Registrar)の任命(Ch.I, para.74)=民間主体による運営を前提

UNCITRAL Guide on the Implementation of a Security Rights Registry (2013)

https://uncitral.un.org/en/texts/securityinterests/legislativeguides/security_rights_registry

私法統一(国際的な私法改革)の主体

• ユニドロワ(UNIDROIT: International Institute for the Unification of Private Law)

• 日本も加盟する国際機関:歴史的には国際連盟の付属機関

• 民商事法に関する統一法の策定が任務• UNCITRAL• 国連総会(第6委員会)の下に置かれた委員会:60か国を構成国として選出、日本は設立以来継続的に構成国に選出• 国際取引に関する法制度の調和化・現代化が任務

• 登記制度に対する信頼――情報の改竄、過誤登記等の排除:過誤登記の場合、担保=金融取引の当事者の損害大

• ただし、ケープタウン条約、UNCITRAL立法ガイドとも、通知登録(noticefiling)システム(Guide, Ch. IV, para.12):大陸法の不動産登記(権原登記簿)とはコンセプトが異なる:登記システムは申請された内容の真正性・正確性を担保しない(Guide, Ch. IV, para.59)

• 登記制度運用者の責任:UNCITRAL立法ガイド「システムの責任は誤作動の場合に限定」(Ch. IV, Pec.56):ケープタウン条約:厳格責任。ただし、best practicesに従っていても防止できなかった誤作動を除く(本体条約28条)

ユニドロワ財団『電子的担保登記制度のbest practices』

BEST PRACTICES IN THE FIELD OF ELECTRONIC REGISTRY DESIGN AND OPERATION

https://unidroitfoundation.org/e-registry-best-practice/

• 17の重要な運用指標(CPF: Critical Performance Factors):ケープタウン条約28条にもとづく免責条件の明確化Article 28 — Liability and financial assurances

https://www.unidroit.org/instruments/security-interests/cape-town-convention/

• ユニドロワ財団::ユニドロワの活動を支援するため設立された財団:資金拠出者:AWG, Aviareto, Sir Roy Goode

アクセスコントロール、利用可能性、利用者の認証、登記簿の可用性、データの機密性、サービスの継続性、データ処理の適正性、データの完全性、相互運用可能性、登記簿の法的根拠、運用者による処分の法的根拠、システムの信頼性、データ保存、登記の即時性、システムの信用性、ユーザー中心のデザイン、データの認証。

• 日本での文脈• 動産抵当登記の電子化• 動産抵当登記(航空機抵当、船舶抵当、農業用動産抵当、建設機械抵当など)を権原登記簿とする必要性。• 電子化した登記の運営主体(民間委託の可否)• Best practicesに照らした実務の改善• 国際的な文脈• ユニドロワ財団では、best practicesの法人登記簿への展開を検討中• UNCITRAL立法ガイド、それに準拠した担保法改革との連動?

2.スマートコントラクトと登記

• ブロックチェーン(分散型台帳)をプラットフォームとして,その上に記録され,そのコード(アルゴリズム)を用いて自動執行される取引:If …, then … という命題(プログラム)による記述:広義のスマートコントラクト:システムによって自動的に執行される契約(高頻度証券取引、自動販売機?)

• 事例:暗号資産(ブロックチェーン上で完結=自生的なデジタル資産):現実資産に対する権利(不動産の利用権、高級ワインの持分権など):保険契約(航空機の遅延データにより旅客に対して自動的に補償金支払い(Fizzy)):スマート冷蔵庫:センサーが不足している商品を検知して自動発注

• 取引当事者の認証:ブロックチェーン上における認証――公開鍵暗号等の利用:匿名・仮名による取引=現実の法的主体との紐づけが欠如:対価の支払いもブロックチェーン上で行われる場合(暗号資産を対価とする場合)、現実との紐づけは不要。

• 現実との紐づけの欠如が持つ意味

紛争の発生:相手方の住所地・所在地不詳=(国際)裁判管轄が定まらず、送達も不能:システム内でのオンライン紛争解決(Computer ADR = CDR)のみが現実的?

トークンの善意取得:取得者の注意義務(cf. 民法520条の5):入手経路の不自然さ――現実との紐づけがなければ想定できない?

◇2018 マルタ• 「バーチャル金融資産法(VFA Act)」

https://www.grantthornton.com.mt/industry/fintech-and-innovation/The-Malta-Virtual-Financial-Asset-Act/

• 「マルタデジタル革新当局法(MDIA Act)」

https://mdia.gov.mt/legislation/

• 「革新的技術アレンジメント・サービス法(ITAS Act)」:マルタデジタル革新技術当局(MDIA)によるブロックチェーンの確認(recognition)(ITAS Act 5条):確認を受けたブロックチェーンの登録(ITAS Act 6条)

https://gonzi.com.mt/investment-services-fintech-capital-markets/blockchain-icos/itas-act/

◇2019 リヒテンシュタイン• 「トークン及び信頼技術提供者に関する法律」(TVTG)」:信頼技術を用いたトークンの私法的規律(有価証券法に準拠):信頼技術サービス提供者の監督(金融市場監督庁(FMA)への届出)

「Liechtenstein: Parliament Adopts Blockchain Act」

https://www.loc.gov/item/global-legal-monitor/2019-10-30/liechtenstein-parliament-adopts-blockchain-act/

◇2020 スイス

• 「分散型台帳証券」(DLT-Effekten)の規定(金融市場インフラ法2条b bis)

• 「分散型台帳取引施設」(DLT-Hendelssysteme)の規制(金融市場インフラ法73a条~ 73f条)

The new Swiss blockchain/DLT laws have been finalized and presumably, enter into force in early 2021

https://www.cms-lawnow.com/ealerts/2020/10/the-new-swiss-blockchain-laws-have-been-finalised-and-presumably-enter-into-force-early-2021

• 台帳証券の私法的規律(債務法973e条~ 973i条)DIGITAL ASSETS AND PRIVATE LAW

https://www.unidroit.org/work-in-progress/digital-assets-and-private-law/

• M2M (machine to machine)のコントラクト――法的な「契約」か?:スマート冷蔵庫の事例:機械による自動発注=契約当事者となる「人」の不在:スマート書棚(電子書籍の自動発注)の場合、物理的な配送もない:発注者としての機械の認証?

• UNCITRAL「アイデンティティ管理及びトラストサービスの使用及び国際的承認」プロジェクト:「物のアイデンティティ管理」を対象とすることの可否を議論:現時点までに対象としない方向が決定。

John Gregory「Identity Management and Trust Services at UNCITRAL」

http://www.slaw.ca/2019/03/20/identity-management-and-trust-services-at-uncitral/

• 「プラットフォームサービスに関する研究会・トラストサービス検討ワーキンググループ」(総務省):「IoT機器等のモノの正当性を確認できる仕組み」に言及

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/platform_service/index.html

3.データ取引と法人登記

• 信頼性のある自由なデータ流通(DFFT: Data free flow with trust):2019年1月、安倍首相(当時)が世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で提唱:同年6月、G20大阪サミットの首脳共同宣言。

• 信頼=処分権者の意思にもとづく流通:データの処分権の所在は?:EUのGDPR(一般データ保護規則):「データ主体」=データを収集された対象者:データ利用の実態:データの保有者――データを収集したデバイスの管理者など一種の「二面市場」、主体の拒否権・同意権、主体の対価請求権、保有者の契約(契約しない自由)、保有者の知的財産権、データの収集・利用の自由、(DFFT)データ主体によるコントロール、データ保有者によるコントロール。

情報法の基本構造

データの内容に対する信頼• データのバイアス――データの品質の問題:データ収集プロセスの信頼性:個人情報の保護(データ主体の同意)とは別の問題。

• AI利活用原則「適正学習の原則」:機械学習は「教師データ」が前提―→教師データに偏りがある場合、学習の結果にも偏りが発生。※例:米国テック企業の顔認証:白人男性以外の認識精度が低いという課題。

• 偏りの有無を確認するためには「データの出所」の記録(トレーサビリティ)が必要:機械の認証が必要とされる第二の局面。

プラットフォームの役割• ビッグデータの解析はプラットフォーム上で行うことが主流:解析ツールを提供:データの取引市場としても機能。

• データの信頼性における役割は?⇔プラットフォームはデータ内容の信頼性を保証しない(「場」としての役割):データ主体の同意の有無:データのバイアス(データ内容の真正性)おそらく、利用規約の免責条項等により規律• データ収集・加工過程のトレーサビリティを表示する機能を実装できないか?

登記制度の将来展望

• 登記システム自体の電子化・デジタル化・DX:デジタル・システムとしてのベンチマークが重要(公営である必要はない)。• 取引のDX(とくにブロックチェーンの利用拡大):新しい取引形態を法的に規律するための認証・登記。• データ取引の特殊性(「二面市場」性):データのトレーサビリティの必要性。• いずれの問題についても、法律家とエンジニアの対話の重要性:放置しておくと、「法の領域」が次第に縮小。

司法書士 早川将和「IT 社会において商業登記が担うべき役割とその課題」

1.商業登記制度が担うべき役割

(1)エンフォースメント機能 商業登記の公示機能が相対的に低下しているとの指摘⇒ 現実には商業・法人登記事項証明書等の取得件数は顕著に増加(法務省登記統計「種類別 登記事項証明書の交付等の件数」より抜粋)。企業情報が増えた現在においても、登記事項証明書等がみられている⇒ 背景にあるのは、確かな情報(エンフォースメント機能)への期待では。

(2)基礎的な法人情報の連携元としての機能

IT 行政の進展(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律/官民データ活用推進基本法)情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=414AC0000000151

2016年:行政機関内での登記情報の連携による添付省略が決定(2016年10月31日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議第68 回会合決定)。

2021 年:本年度中に地方自治体における事務についての登記情報連携の仕組みを検討(2020年12月25日閣議決定「デジタル・ガバメント実行計画」)⇒照会に対して自動で連携されるような利用を想定。商業登記に基づく電子認証制度による電子署名・証明書の利用拡大…登記情報はIT 社会に不可欠なデジタル企業情報基盤へ。

2.現在の課題

(1)登記期間 システム上の相互連携≒「今」の情報の連携⇒「発行から3か月内の登記事項証明書」が通用することを前提とした運用は困難に(登記記録が閉鎖される前に、登記事項証明書を取得しておく)Cf.商業登記電子証明書(登記中は有効性確認に「保留」の回答がなされる。)…実体法上の効力発生から登記への反映までのスピードアップが肝要。130年間変わらない2週間という「登記期間」、登記記録に現時点の情報を反映する時間を短縮すべきニーズの増大。会社法第九百十五条等

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

(2)審査期間と審査期間中の登記記録の取り扱い等

審査期間(地域や時期による差がある)≒1週間から繁忙期には2週間程度⇒ 審査期間中の登記記録の閉鎖(登記情報の取得が不可能)により、参照不可。閉鎖する区の限定が必要…登記の事由(商業登記法17 条2 項3 号)に対応した登記記録上の区のみを閉鎖などの対応(ただし、補正の運用も変更が必要)、補正がある場合の却下の取り扱い。

本来:・申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人が補正したときに限り却下されない(商業登記法24 条)・登記官から申請人に補正期限と当該期限までに補正がなされなければ却下する旨が通知されなければならず、補正がなされないまま期間を経過した場合には却下される(商業登記手続準則50 条1 項・3 項)。

現状:現実には期日の設定があいまいで、申請人が補正の意思を表示している限り却下がなされない。⇒ 結果として1 か月以上にわたり登記情報が閉鎖される事例も散見される…適正な運用が必要。

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私が認識している現状と反対でした。東京都など他の都道府県の現状はそうなのでしょうか。

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(3)登記がなされない事例・休眠会社のみなし解散⇒ 活動実体がない会社が大半、法人悪用の懸念。⇒ 登記懈怠は、単に情報開示がなされていないのではなく、法執行の観点からも問題。。

(4)エンフォースメントの向上・登記官の添付書面により事実認定し、法律要件を満たしているかを審査する形式⇒ 形式的法的要件の審査が中心であったことから、人の実在や意思確認が課題に。

主な改正の変遷

昭和42年商業登記規則改正:取締役会議事録の偽造による虚偽の代表取締役の変更登記を防ぐために取締役会議事録の押印についての印鑑証明書の添付を要するとする改正。

昭和47年商業登記規則改正:架空の人物が取締役となっていることが社会問題となったことによる代表取締役の就任承諾書の押印についての印鑑証明書の添付を要するとする改正。

平成27 年商業登記規則改正:虚無人が平取締役等として登記され悪用される恐れが内閣府消費者委員会により取り上げられ、取締役および監査役等についての本人確認証明書の添付を要するとする改正、代表取締役の辞任届の押印についての印鑑証明書の添付を要するとする改正。

エンフォースメントに関する課題-各種無効や取消の訴えなどにより、登記された事項についての無効が争われる事例。インターネットの発達により、「書式」としての記載例を探すことが容易に。AI商業登記サービスの出現⇒作成した“だけ”の書類を添付した登記申請につながる恐れ。

3.課題に対する現状と今後の方向性

IT技術を利用した登記期間および審査期間の短縮、オンライン申請の促進と完全オンライン化(法務省「オンライン利用率引上げに係る基本計画(令和3年9 月24日)」https://www.moj.go.jp/content/001357344.pdf (2021.11.1)、法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html (2021.11.1)・メリット・・・XML形式のファイルを送信=入力作業が不要に。

・課題・・・いわゆる別送方式(商業登記規則102 条2 項但書)が大半⇒オンラインで申請された申請情報と後日郵送されてきた書面の仕分け作業が必要。

電子署名の普及、商業登記手続に利用することができる電子署名(商業登記規則102 条3~5 項)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339M50000010023_20210301_503M60000010002

課題 ⅰ)普及している電子署名と登記において利用できる電子署名の違いなど・会社法上の要件:電子署名に要件はない(上記A~E いずれでも可、会社規225条)。

会社法施行規則 

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010012

・普及している電子署名:立会人型電子署名・商業登記手続において利用できる電子署名:上記表のとおり⇒ このような違いがわかりづらいこと、複数の電子署名をする場合の前後関係などの技術的な知識が必要になることもあり、登記添付書面の電子署名にはハードル。

ⅱ)電子署名の運用 代行押印が一般的な会社実印をベースにした実務運用が、本人操作が大前提の電子署名に対応していない。(代表取締役が操作しなければいけない運用に、実務部門が躊躇)。Cf.契約実務においても、代表取締役名義の契約について、立会人型電子署名を代表取締役以外の操作により行うのが一般的。

③ 役所間のデータ連携・商業登記申請において必要となる代表的な官公署作成書面。官庁の許可書 商業登記法19 条 不可、戸籍謄本 商業登記法54条4項不可、登記事項証明書 商業登記法47条2項等 可(平成27 年改正)、裁判所の許可書等 商業登記法73条、商業登記規則61 条1項等不可、印鑑証明書 商業登記規則61条6項 書面の場合不可、一定の電子署名の利用の場合、添付不要(平成27 年改正)、本人確認証明書(住民票等) 商業登記規則61条7項。

・データ形式が定式化していないと確認作業の自動化を図ることは困難⇒「ワンスオンリー」の達成は難しいCf.マイナンバー制度(一元的なデータベースではない)

(2)代理人の活用・登記官のみが登記審査を受け持つシステムでは、審査期間の短縮に限界⇒全国に存在する司法書士の活用。

・司法書士が本来担う役割:「登記に関する手続を代理し、法務局に提出する書類を作成する」(司法書士法3 条)⇒現実には、商業登記手続において代理人司法書士の名で作成する書類は申請書のみ(依頼者が作成した書類に基づいた申請書だけを作成したような外観)、AI登記サービスと司法書士が関与した登記申請との違いはどこに?Ex.辞任届の内容はどの程度確かなのか。議事録に記載された株主総会は確かに行われたのか。・司法書士倫理⇒ 実際に行っていることと、申請書類に現れる外観に差異。・現に資格者代理人が行っている実体法上の確認を、制度化して登記手続に活かす⇒ 方法は様々。・資格者代理人が申請した登記については、登記官の実体法に関する審査を省略。・資格者代理人が認証する旨を表示した申請については、添付書類を一切不要とする。

以上

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「・資格者代理人が申請した登記については、登記官の実体法に関する審査を省略。・資格者代理人が認証する旨を表示した申請については、添付書類を一切不要とする。」私は1番目に関しては賛成ですが、2番目に関しては、分かりませんでした。

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「デジタル社会における不動産登記簿の公開」小西飛鳥氏(平成国際大学法学部教授)

1 はじめに  

 不動産登記簿には、個人情報やプライバシーにかかわる情報が含まれているが、公開の原則が採られ、誰もがその情報を手に入れることができる。これに対して、戸籍については、当初は公開の原則が採られていたものの、現在では非公開が原則となっている(個人情報保護の観点から、戸籍制度は公開の原則から大幅な見直しが行われ、他人の戸籍謄本等の請求は制限されている。しかし、それでもなお不正取得の問題が指摘されている。二宮周平「個人情報の保護と戸籍公開原則の検討」立命館法学 304 号 238 頁-266頁、同「2007 年改正戸籍法の検討課題と本人通知制度の展望」部落解放研究 199号77頁-84頁参照。)。不動産登記簿は個人の氏名、住所、担保権の設定などから資産状況も把握できプライバシーとして保護される必要性の高い情報を有するデータであり、戸籍における個人情報と同様にその保護の必要性は高いが、そのデータにアクセスするについては何ら制限が設けられていない。さらに、不動産登記簿が紙の登記簿・窓口申請から、電子化・オンライン化に変わることにより、以前よりデータへのアクセスが容易となっており、世界中から誰もが我が国の不動産登記簿の情報を取得することが可能となっている。

 今回の民法・不動産登記法改正においても、不動産登記簿の公開に関し、DV 被害者等の保護のための対策が取られたが、それ以上に踏み込んだ対策は取られなかった。しかし、DV 被害者等の保護だけで十分と言えるのであろうか。デジタル化が進んでいない時代においては、わざわざ法務局に行くなどしない限り他人の資産状況を知る(閲覧する)ことはできなかったが、現在ではオンラインでの閲覧が可能になり、誰もが容易にアクセスできてしまうため、プライバシーの侵害となり得る(吉田克己「不動産登記と個人情報・プライバシー」ジュリスト 1502 号 40 頁-45 頁において、DV 被害者等の保護の観点から出された 2013 年 12 月 12 日付け法務省民事局第二課長からの通知が出されたことをきっかけに不動産登記簿の情報開示の制限についての正当性及び制限の程度について論じている。)。

本稿では、不動産登記簿の公開について再検討し、公開すべき情報及び公開方法について以下で検討する。

2 不動産登記簿の公開

不動産登記簿の公開の原則

 不動産登記制度の目的は、不動産登記法第 1 条に「この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するため」でありこれにより「国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資すること」であると定められている。同条は平成16年の不動産登記法の全面改正の際に新設された規定であるが、新設される以前から「実体的権利変動を正確かつ迅速に公示することにより不動産取引の安全と円滑とに奉仕すること」(幾代通『不動産登記法[第 4 版]』(有斐閣、1994年)13 頁。)。にあるとされてきた。

 このように不動産登記制度は、不動産の表示および権利を公示することにより、不動産取引の安全と円滑化のための制度であることから、第1条に定める目的に従い、登記簿は、不動産取引に関与する者に対してこれを公開しなければならないが、さらに誰に対してでも無制限に公開しなければならないかについては検討の余地がある。なぜなら、公開されることにより、登記されている者のプライバシーを侵害する可能性があるからである。

 不動産とその物権関係を登記するかどうかが、まったく当事者の任意にゆだねられている制度のもとであるならば、当事者は自らの意思に基づき、自己の財産関係および権利関係について公開されることをあらかじめ想定して登記をすべきといえるが、公法上・私法上の公示強制(七戸克彦『不動産登記法案内』(勁草書房、2014 年)15 頁-16 頁。)。がはたらく不動産登記制度の下では、当事者の想定外またはその意思に反して、みだりに第三者から、財産関係および権利関係が「のぞき見」されることは、当事者にとって事実上だけでなく法的にも不利益を被るといえるからである。隣の家に住む者の財布の中身や銀行の預金高を知ることがないのは当然であるのと同様に、隣人の不動産登記簿上の乙区の抵当権から銀行からの借金を知ることがあってはならないのではないだろうか。

2.不動産登記簿の公開の方法、範囲及び請求権者(閲覧権者)

(1)公開の方法 1)    登記事項証明書の交付

 現行の不動産登記法では、誰でも手数料を納付することにより登記記録に記録されている事項の全部または一部を証明した書面(登記事項証明書)の交付を請求することができる(現不登法119条1項)。今回の改正でも同項の変更はない。 証明力のある登記事項証明書の交付については、書面請求、証明書発行機による請求、オンライン請求が認められている 。

2)  登記簿の閲覧

  登記事項証明書の交付と同様に、誰でも手数料を納付することにより、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面(登記事項要約書)を交付する方式で行われている(現不登法規則 27 条 1 項 2 号)。登記事項要約書については、閲覧制度の代替的制度であるという理由から、登記所に直接出向いて請求書を提出し、その場で交付を受ける方法しか認められていない(七戸・前掲注 4)270 頁-271 頁6。)。

旭川地方法務局 【証明書関係】登記事項証明書(登記簿謄本)と登記事項要約書の違いはなんですか。

https://houmukyoku.moj.go.jp/asahikawa/page000001_00091.html

3)登記情報提供サービス

 登記情報提供サービスは、オンラインで電子化された地図・図面情報を含む不動産登記情報を取得できるサービスであり、平成12年4月1日に開始され現在に至っている(七戸・前掲注 4)271 頁-272 頁。「登記情報提供サービス」https://www1.touki.or.jp/ 7。)。登記事項証明書と同じ内容であるが、登記所ではなく、一般社団法人が行っているものであり、証明力はない。平成 27 年からは、地番と住居表示の対応地図の利用も可能となった(小柳春一郎「土地の公示制度の課題-取引安全円滑と情報基盤」ジュリスト 2015 年秋号(No.15)91 頁。)。

(2)公開される範囲

 不動産登記簿の公開の範囲は、明治32年旧不動産登記法の規定では謄抄本の交付については登記簿のみ、閲覧については登記簿と付属書類に限られていた。 戦後、昭和35年の「登記・台帳一元化」改正の際に、交付・閲覧の両方について地図・建物所在図が加わり、平成 5 年の改正では、同改正によって法定化された地図に準ずる図面も加わった(旧不登法 24 条の 3第 3 項)。さらに平成 11年旧法改正の際に、交付については登記簿の付属書類のうち地籍測量図・建物図面・その他の図面(土地所在図・地役権図面・各階平面図など)の全部または一部の写しの交付も認められることになった(七戸・前掲注 4)263 頁。)。

  閲覧については、登記簿・付属書類の利害関係のある部分に限り認められていた(明治 32 年旧不登法 21 条 1 項)。昭和 63 年磁気ディスク登記簿導入の際に、登記簿の閲覧に関して登記事項要約書の制度に置き換えられたが、登記事項要約書で閲覧できない地積測量図等以外の登記簿の付属書類については、従来通り、利害関係のある部分に限るとされた。

 さらに現行不動産登記法第 121 条 2 項ただし書においても、登記簿の付属書類のうち土地所在図等以外のものについては利害関係者のみが閲覧できるとされている。これは改ざん防止が主な目的であるとされる(七戸・前掲注 4)263 頁-264 頁。)。

(3)請求権者(閲覧権者)

  登記簿の謄抄本の交付に関しては、明治32年旧不動産登記法の原始規定において、誰でも請求できると定められていたのに対し、閲覧については利害関係のある部分に限りとされていた。これは、紙の帳簿・図面に関しては、原本それ自体を閲覧させることになるため、原本が閲覧者によって破損・改ざんされる危険があったからとされる(七戸・前掲注 4)263 頁-264 頁。)。

Ⅲ 不動産登記簿の公開に関する不動産登記法の立法過程及び改正の経緯

1.不動産登記法の制定及び改正

  現行の不動産登記法は、明治19年旧不動産登記法までさかのぼることができる。その後、明治32年旧不動産登記法が制定され、何度かの改正を経て現在に至っている。 以下では、不動産登記簿の公開に関する改正をたどることにする。

2.明治 19 年旧不動産登記法(明治 19 年 8 月 13 日公布 明治 20 年 2 月 1 日施行)

  明治 19年旧不動産登記法は、不動産の権利関係を表すために法律第 1号としてドイツ法及びフランス法を参考に制定された(七戸克彦「日本における登記制度と公証制度(の機能不全)」法学研究(慶応義塾大学)72 巻 12 号(1999 年)255 頁-256 頁。)。不動産登記簿の公開に関して、同法第 11 条は「登記ノ謄本又ハ抜書又ハ一覧ヲ要スル者ハ其登記所ニ出頭シテ之ヲ請求スルコトヲ得」と定め、登記簿の公開の範囲及び閲覧権者について特に制限は設けていない。

 明治 23 年には司法省令で「登記法取扱規則」(明治 23 年 10 月 29 日公布)により詳しく手続きが定められた。登記簿の公開に関し、同取扱規則38条は「登記簿ノ閲覧ヲ請フ者アルトキハ官吏ノ職務ヲ以テ閲覧スルノ外吏員ノ面前ニ於テ之ヲ閲覧セシム可シ」、同 39 条は「登記簿ノ謄本若クハ抜書ヲ請フ者アルトキハ其用紙ニ謄寫シ謄本下付帳ト割印シテ之ヲ下付ス可シ但手數料ヲ領収セサル前ニ謄本又ハ抜書ヲ下付スルコトヲ得ス」、同 40 条は「謄本ハ登記簿用紙ノ全部ヲ遺漏ナク謄寫シテ之ヲ作ル可シ抜書ハ請求アル部分ノミ登記簿ヨリ摘寫シテ之ヲ作ル可シ」同41条では、郵送料を別に納めれば登記所に出頭せずとも送付することが定められている。同取扱規則の下でも特に制限は設けられていない。

3.明治 32 年旧不動産登記法

  当初の草案では、ドイツ土地登記法草案 15 条の規定を参考にして第 9 条、「登記所ハ何人ト雖モ法律上ノ利害関係ヲ説明シテ申請ヲナシタルトキハ其関係アル部分ニ限リ登記簿若クハ其附属書類ノ一覧ヲ許シ又ハ登記簿ノ謄本若クハ抜書ヲ交付スへシ」として、法律上の利害関係を疎明することを要件としていた。これに対して修正案では、第 9 条「登記所ハ何人ニモ登記簿若クハ其附属書類ノ一覧ヲ許シ又ハ其請求ニ應シ登記簿ノ謄本若クハ抄本ヲ交付スルコトヲ要ス」が示された。原案については、梅謙次郎がフランス法では誰でも抄本を取得できること、利害関係人である書面を要求することは実際には容易ではないといったことを理由に反対した。これに対し、磯部四郎は、原案に賛成の立場を示した。

 その理由として、登記法は公示方法であるとは言うものの利害関係を有する者が初めて登記書類を見る必要があるのであり、商業帳簿のように秘密にするべきものと述べている。そして、フランス法の規定はフランス法の制度によってのみ妥当するのであり、公証人制度が関係しているのであり、日本も将来制度が整えば、公示に制限をする必要はなくなるかもしれないが、現状においては疎明を要件とすべきと主張した。続いて田部芳は、何人に対しても制限なく認めると、登記管理は非常に煩わしくなり、他の登記業務に差し支えることを理由に反対した。井上正一は利害関係人である書面を要求し、最終的には抗告の手続きをもって対応できるのであり、真の利害関係人が閲覧できない事態には至らないと主張した。長谷川喬が抗告をもって利害関係人であるか否かを判断するという制度については弊害が生ずる可能性があることを理由に折衷案を示し、閲覧のみは利害関係人に許し、謄抄本は誰にでも認めるとの案が、賛成多数で可決された(不動産登記法第 4 回議事速記(明治 29 年 2 月 24 日)『日本近代立法資料叢書26法典調査会不動産登記法案議事速記 他収録』(商事法務昭和61年)31頁-33頁13。)。

  その後、明治 32 年 1 月 21 日の衆議院(第13回帝国議会)(https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=001313242X02118990125&spkNum=63#s63)に提出された条文では、第21条「何人ト雖モ手数料ヲ納付シテ登記簿ノ謄本又ハ抄本ノ交付ヲ請求シ又利害ノ関係アル部分ニ限リ登記簿又ハ其附属書類ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得但登記簿又ハ其附属書類ノ閲覧ヲ請求スルニハ利害ノ関係ヲ疎明スルコトヲ要ス」とされていた。

  ところが、その後に開催された衆議院不動産登記法審査特別委員会において同条ただし書の閲覧については利害関係者の疎明を要するか否かについて議論された 。明治 32 年 1 月27日の会議では、平岡萬次郎が閲覧について利害関係者の疎明を要するとすると役所の取り扱いが不便であるとの不満が生じるであろうとの意見が述べられた。これに対し政府委員の田部芳から、「随分餘リ必要ノナイモノガ、唯物好キニ見ルト云フヨウナ者モ餘リ餘計ハ無イカモ知レマセヌケレドモ、無イトモ限ラヌ」とし、さらに閲覧については登記所の人間が見張っていなければならず、制限がないとむやみに見たいといってこられても事務の取り扱い上も問題があるとの説明がなされた。これに対して、平岡萬次郎が中には悪いことを企んで閲覧する者がいるかもしれないが、それは本当にわずかであり大方は必要があって閲覧しに来るのであり、疎明を聞くほうがかえって難儀であるから事務方の取り扱いとして閲覧時間に制限をするなどすれば十分であろうと述べている。政府委員の倉富勇三郎が事務手続きの煩雑さを理由に閲覧制限を行う旨を述べたところ、小山久之助から公務員の仕事として当然のことであり制限を設ける理由としては間違っているとの指摘がされた。これに対し田部芳からは、決して手数という意味ではなく、登記申請手続きに差支えが生じないようにするためとの釈明があった。さらに西原清東から利害関係について、取引を開始するか検討中の相手方についてその財産状況を知るために閲覧請求をする場合は、現在は利害関係は生じていないが、この場合も広く利害関係ありとするのかについての疑問が示された。これに対し、倉富勇三郎からは、西原清東が示した事例は当然に利害関係ありと解釈できる場合であり、また購入を検討している者が真の所有者が誰であるかを確認する場合に閲覧請求する場合も利害関係ありと判断されるとしたうえで、結局のところ、利害関係がないのに閲覧しようとする人はあまりおらず、その様な規定をおいても実際は不都合は生じないのではとの意見が述べられた。そして、田部芳から、利害関係者に限るとの規定をおいても、緩やかな制限であり不都合は生じないであろうとして閲覧については制限ありとの意見でまとめられた。

  翌日の明治 32 年 1 月 28 日の委員会で一通り条文ごとの検討が終了したとのことで、条文の修正案の決議を行われることになった。ここで平岡萬次郎から修正案が示された。すなわち、「何人ト雖モ手數料ヲ納付シテ登記簿ノ謄本又ハ抄本ノ交付ヲ請求シ又登記簿又ハ其附属書類ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得」として、いずれの場合も利害関係を要しないとされた。これに対し、倉富勇三郎からは利害関係者に限るとの規定をおいても閲覧に不便は生じない、裁判における疎明とは異なり、登記官吏が尤もであると感ずればそれで済む話であり原案通りにすべきと反対した。関直彦は、一般市民は簡便なほうがよく、利害関係者に限るとの文言を加えると困難を感じるようになるので反対と述べた。さらに平岡萬次郎から、登記官の判断で利害関係のあるなしが決まることになると登記事務の多さや登記官の疲れ具合により、ある日は認めたりある日は認めないといった弊害が生ずるのではないかといったことも付け加えられた。このような議論を経て最終的には原案から但し書きを削除するという修正案でまとめられ可決された。

  明治 32 年2月3日に開催された第 13 回帝国議会衆議院本会議において、利害関係の疎明を要しないとする修正案が不動産登記法案特別委員会の経過報告として提案され可決した 。その後、明治 32 年 2 月 7 日 及び 2 月 14 日 に開催された貴族院(第 13 回帝国議会)においても同様に可決し不動産登記法が成立した。

  明治 32年旧不動産登記法 21条第1項は、「何人ト雖モ手数料ヲ納付シテ登記簿ノ謄本又ハ抄本ノ交付ヲ請求シ又利害ノ関係アル部分ニ限リ登記簿又ハ其附属書類ノ閲覧ヲ請求スルコトヲ得」とされ、登記簿の謄抄本の交付については何ら制限を設けず、閲覧については申請人の範囲については制限を設けず、利害関係ある部分に限って認められることとなった。

  ところがその後、明治 32年 5月 12日司法省令第 11号として「不動産登記法施行細則」が定められ、同第30条の但書において「閲覧ヲ請求スル申請書ニハ利害ノ関係アル事由ヲ記載シ又ハ其事由ヲ記載シタル書面ヲ添付スヘシ」とされ、法律の規定を裏面から覆してしまったことを吉野衛は明らかにしている。とはいっても、この利害関係の事由は疎明ではなく、登記実務上も単に申請書に「賃借権登記の取調」などと書くだけで足りるとされ、第30条但書も弊害はなく、それならば、このような無意味な制限規定は削除するのが相当であるとの見解を述べている。登記実務上も、この運用はルーズに行われており、必ずしも利害関係の記載を要しないとされていたとの指摘がある。

4.平成 16 年までの改正

  明治 32 年旧不動産登記法はその後、明治 38 年の改正を皮切りに数度の改正を経て平成 16 年に全部改正されるにいたるが、その間に、磁気ディスク登記簿導入というコンピュータ化に伴い謄抄本の交付及び閲覧に関し昭和63年に不動産登記法の一部改正が行われた。昭和63年の改正により、磁気ディスク登記簿の公開方法として、従来の謄抄本の交付・閲覧に代えて、登記事項証明書と登記事項要約書の交付の制度が設けられた(旧不登法第 151 条の 3 第 1 項及び第 5 項)。登記事項証明書は、従来の謄抄本に相当するものである。登記事項要約書は、磁気ディスク登記簿に記録されている事項を記載した書面であり、登記簿の閲覧に代わる制度である。従来と同様に磁気ディスク登記簿について閲覧の制度を認めようとすると、閲覧のための端末機を用意しなければならず、その整備のための予算、場所の確保の問題を考えると現実的ではないことから、その代替手段として設けられた(房村精一「登記情報の公開」鎌田薫ほか編『新不動産登記講座①総論Ⅰ』(日本評論社、1997 年)所収 188 頁。)。

5.平成 16 年不動産登記法

  不動産登記簿の公開について、旧不動産登記法第 119 条は、旧不動産登記法第 151 条の 3 における登記事項証明書および登記事項の概要を記載した書面の交付に一本化し、登記簿謄本および抄本の交付および閲覧(旧不登法 21 条)は廃止された。登記簿の付属書類の閲覧については、旧不動産登記法第21条の趣旨に基づいて、電子化されている場合にはその写しの交付、電子化されていない場合についてはその閲覧を請求することができる旨が定められている(旧不登法121条 1項及び2項)。付属書類の閲覧については、誰でも登記官に請求することができるが、旧不動産登記法第 121 条第 1 項に定める土地所在図等の図面以外の付属書類の閲覧については、利害関係を有する者のみが請求人となることができ、利害関係を有する部分のみを閲覧することができる(旧不登法 121 条 2 項ただし書)。閲覧請求の手続きについて、利害関係を有する理由及び閲覧する部分を情報として提供し(不動産登記規則 193条 2項 4号)、利害関係がある理由を証する書面を提供しなければならず(不動産登記規則193条3項)、その具体例として訴状の写し等が該当するとされる(七戸克彦監修『条解不動産登記法』(弘文堂、2013 年)717 頁(武川幸嗣)。)。

  平成16年の改正においては、不動産登記簿の公開の是非については、特に議論されなかったようである(登記研究編集室編『平成 16 年改正不動産登記法と登記実務(資料編)』(テイハン、平成 17 年)295 頁。平成 16 年 6 月 3 日開催の参議院法務委員会で木庭委員から公開に関して若干の懸念が示されたのに対し、房村政府参考人からは登記情報の公開に関して、オンライン化されることで、将来的にはオンラインで証明書の発給を請求できる仕組みを導入することを検討しているとの答弁がなされている。)。

6.令和 3 年民法・不動産登記法

 各条文ごとの立法の経緯については七戸克彦『新旧対照解説 改正民法・不動産登記法』(ぎょうせい、2021 年)を参照した。今回の民法・不動産登記法の改正においては、不動産登記簿の公開についても検討された。平成 31年 2月に「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」の報告書「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究報告書~所有者不明土地問題の解決に向けて~」の中で、登記名義人等が DV 被害者であり、登記名義人等の現住所を公開することが相当でない場合にその現住所を公開しないものとする方向で,引き続き検討すべきであるとの提案がなされた 。

(1)不動産登記簿の公開

1)    法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料 9

 登記名義人等が DV 被害者等である場合の現住所の非公開の場合を除き、部会資料 9 では、より一般的に住所情報を非公開とすることの是非について,広く登記名義人等本人から自己の住所情報を秘匿したい旨の申出があった場合には,住所情報を公開しないものとし,利害関係を有する場合に限って当該住所情報を閲覧することができる考え方もあり得るが、例外的に住所情報の閲覧を許容する要件をどのように定めるべきかについて慎重な検討が必要になるものと考えられるとされた。例えば,「利害関係を有する者」に住所情報の閲覧を認めるという制度とすることが考えられるが,「不動産の買受けを検討している」という程度でも利害関係があるとすると,原則として住所情報を公開するものとすることと変わりがないことにもなりかねない。他方で,これをより厳格に解釈した場合には,閲覧を過度に制約し,不動産登記による公示制度の目的が達成されない事態を生み出しかねないとの指摘が考えられる。また,利害関係の有無について,登記官による判断が困難なものとなった場合には,迅速な公開が妨げられるといった弊害も問題となり得るとして、

住所情報についてより広く公開を制限することについては,慎重に検討をする必要があると考えられると説明されている 。

2)    法制審議会民法・不動産登記法部会第6回会議(令和元年7月30日開催) 

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

 第 6 回会議において、部会資料 9 に基づき、各委員から登記簿の公開に関し様々な意見が出された。道垣内委員からは不動産登記法の目的に関して「民間の取引をアクセスしやすくするため」なのかという部会資料 9 の記載についての指摘から始まり、松尾幹事からは利害関係の線引きについて取引に入ろうとする者について「こういう人たちも使えるように、不動産登記簿には住所が載っているんだというふうに考えるべきなのか、ぎりぎりのところはどこかを明確にする必要がある」、「この土地を誰が所有しているか、その者の住所を知りたい、その者にアクセスしたいということが、どういう範囲の人たちに許されていて、情報提供すべきなのか、登記所自体はマーケットそのものではありませんが、登記が取引を促進するというときに、登記がどういう機能を果たすべきなのかということは、しっかり考えるべきである」との発言があった。

 これを受けて蓑毛幹事からは、住所情報の公開を維持したほうがよいとの立場に立ちつつ、「登記所が土地所有者の現住所をバックデータとして持つのか、あるいは登記事項とするけれども公開でないという類型を作るのか、いずれにせよ、登記所が土地所有者個人の特定に資する情報は持ち続けるけれども、公開する範囲は何らかの形で限定するという方法で、土地の適切な管理を図ることはできるのではないか、という議論もあり得」るとの発言があった。

 また、山本幹事からは、個人情報の取り扱いには3段階あり、「ここでいう不動産の買い受けを検討している事業者等について、アクセスしやすいようにするという目的を立てるのかどうかということがあり、さらに、目的を実現するために、一体どういった情報が必要なのか、あるいは、どこまでの情報を出すのが相当なのかという問題があろうと思います」との発言があった。会議ではこの論点については、DV 被害者等のケースについては、提案する方向で進めるが、一般的な登記簿の公開に関しては、引き続き、検討を続けるということにせざるを得ないとして山野目部会長がまとめて終わった 。

3)    法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料12

  第 6 回会議での論点は部会資料12にまとめられた 。すなわち、登記名義人等の住所が明らかとなることにより当該登記名義人等に対して加害行為がされるおそれがあるものとして法務省令で定める場合には,当該登記名義人等の申出により,その住所を公開しないことができるものとする規律を設けることについて,現住所を非公開とする方法が検討されたことがまとめられている。

4)法制審議会民法・不動産登記法部会第 7 回会議(令和元年 9 月 24 日開催)

 第 7回会議では、部会資料 12をもとに、被害者の住所を非公開にするという点について詳細な検討がなされたが、登記簿の公開についての一般的な議論はなされなかった 。これ以降の会議において、登記簿の公開をめぐる一般的な議論はなされず要綱案、要綱とまとめられ、法律案(閣法第 55 号)として提出された。その後、第 204 回国会衆議院法務委員会、参議院法務委員会においての質疑があり、参議院法務委員会(令和 3 年 4 月 15 日開催)において、参考人の阿部健太郎(全国青年司法書士協議会会長)から、インターネットを使った技術の革新から、自宅から誰でも、全国どこの情報も閲覧できることについての問題についての指摘があるにとどまった。

(2)附属書類の閲覧制度の見直し

1)法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料 9

  附属書類の閲覧制度の見直しについては、登記簿の附属書類のうち,図面以外のものについては,請求人が利害関係を有する部分に限って閲覧することが認められている現行の規律(不登法第 121 条第 2 項)について,見直すべき点はないかも検討事項としてとりあげられた。附属書類のうち図面以外のものの閲覧の請求をするときは,利害関係を有する理由及び閲覧する部分を請求情報の内容とした上で,利害関係がある理由を証する書面を提示しなければならないこととされている(不動産登記規則第193条第2項第4号,第3項)。登記簿の附属書類の閲覧については,他の書類とは異なり,利害関係のあることが要求されているが,この「利害関係」が具体的にどのような範囲のものを指すのかについては,法律の趣旨目的を踏まえた解釈に委ねられており,実務においては,事例ごとに登記官が個別に判断することとなっている。このことを所有者不明土地問題との関係で考えると,登記記録を見ても直ちに所有者又はその所在が判明しない場合等には,附属書類を閲覧して所有者探索のための端緒を見つけることが考えられるものの,この「利害関係」が過度に厳格なものと解釈されるとすれば,簡単には附属書類の閲覧をすることができなくなり,所有者探索が更に難航することが想定される。そこで,近時,上記のような観点からの考慮も必要になってきていると考えられることも踏まえ,利害関係を有する部分について閲覧が認められている現行の規律について,見直すべき点がないか,検討する必要がある。加えて,近時の所有者不明土地問題を背景とした社会的要請としては,附属書類から所有者探索の端緒を見つけるというものがあると考えられる。閲覧の範囲を画する基準として,「利害関係を有する部分」との規律を維持することが相当であるかどうか,又は,例えば,「閲覧する正当な理由がある部分」などの規律とすることの方がむしろこれまでの解釈や近時の社会的要請にも応えられるものとなるのかどうかなどについて,検討する余地があるものと考えられるとされた(前掲注 26)30 頁-35 頁。)。

2)法制審議会民法・不動産登記法部会第 7 回会議(令和元年 9 月 24 日開催)

  第 7 回会議において、部会資料 9 に基づき、各委員から附属書類の閲覧に関し様々な意見が出された。 表示の登記に関しては、例えば隣地の分筆の際の土地の境界の立ち会いについての経緯などが附属書類に含まれているため閲覧をする必要があるといった指摘が國吉委員から、権利の登記に関しては、委任の有無について委任状を見て確認する、原因証明情報について正当に作成されたかどうかの確認をする要請があるといった指摘が今川委員からなされた。 これを受けて、山野目部会長より、現行法の法文の文言を利害関係がある部分に限るから、正当な理由がある部分に限りするという意見があったこと、附属書類のうち戸籍謄本は個人情報が多く含まれており、戸籍法の現行の規律や個人情報保護に関する規制を実質的に潜脱する結果とならないよう慎重な取り扱いがあってよいとの発言があった。道垣内委員からは、一般的に附属書類を見ることができるということになった場合には、附属書類を見なかった場合には過失があると評価され、高い注意義務水準が求められるといった可能性もあるのではとの発言があった 。

3)法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料19

  第 7 回会議での議論を受けて、部会資料19に以下のようにまとめられた 。「登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第2項に規定する政令で定める図面を除く。以下同じ。)の閲覧制度に関し,閲覧の可否の基準を明確化する観点等から,次のような規律を設けることにつき,引き続き検討する。・何人も,登記官に対し,手数料を納付して,自己を申請人とする登記に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。

・特定の不動産の登記簿の附属書類を利用する正当な理由がある者は,登記官に対し,手数料を納付して,当該附属書類のうち必要であると認められる部分に限り,閲覧を請求することができる。(注)登記簿の附属書類のうち,不動産登記法第121条第2項に規定する政令で定める図面(土地所在図,地積測量図等)については,何人も閲覧の請求をすることができるとする現行法の規律を維持するものとする。」 さらに、「附属書類には,例えば,申請書,嘱託書,委任状,印鑑証明書,戸籍謄本,住民票の写し,資格者代理人作成の本人確認情報,法人の登記事項証明書,相続関係説明図,法定相続情報一覧図,遺言書,遺産分割協議書,相続放棄申述受理証明書,売買契約書等の各種契約書,裁判書,和解・調停調書,不動産登記規則第93条ただし書に規定されている不動産の調査に関する報告書,立会証明書,固定資産評価証明書等の様々なものが含まれている。」「特定の不動産の登記簿の附属書類を利用する正当な理由がある者であったとしても,他人の個人情報も含まれた様々な附属書類を全て限定なく閲覧することができるとすることには問題があると考えられ,請求人の属性や利用目的等により,閲覧を認める必要性があり,かつ,閲覧が相当である附属書類は個別の書類ごとに分けて検討すべきものと考えられる。」

・法制審議会民法・不動産登記法部会第10回会議(令和元年11月19日開催)

 第 10 回会議では、部会資料 19 について、必要であると認められる部分に限りという点について平成27年の民事第二課長通知に基づいて、行われている厳重な取り扱いが今後も基本的に維持されるということで了承された 。・法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料 26  部会資料 19 からの変更はない 。・法制審議会民法・不動産登記法部会第 11 回会議(令和元年 12 月 3 日開催)] 平川委員から住民基本台帳法や戸籍法のように、かつて原則公開であったのが閲覧の制限をかけるという内容で法改正がされていることとの整合性について、整合性が取れるように何らかの形で記載すべきとの発言があった 。

・民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案「試案第 10 の3「附属書類の閲覧制度の見直し」

 登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項に規定する政令で定める図面を除く。以下同じ。)の閲覧制度に関し、閲覧の可否の基準を合理化する観点等から、次のような規律を設けることにつき、引き続き検討する。・何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自己を申請人とする登記に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる。・特定の不動産の登記簿の附属書類を利用する正当な理由がある者は、登記官に対し、手数料を納付して、当該附属書類のうち必要であると認められる部分に限り、閲覧を請求することができる。(注)登記簿の附属書類のうち、不動産登記法第121条第1項に規定する政令で定める図面(土地所在図、地積測量図等)については、何人も閲覧の請求をすることができるとする現行法の規律を維持するものとする。」 

・法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料 35

  パブリック・コメントの結果、試案①については賛成する意見が多数であったことが報告されている。②については「個人情報保護の要請を踏まえると、附属書類の閲覧が認められる基準を明確化する必要があること」は指摘されたものの、賛成する意見が多数であったことが報告された。

・法制審議会民法・不動産登記法部会第15回会議(令和2年7月14日開催]

  特に反対意見はなく、今川委員より「正当な理由について、法務省のほうで通達や通知等で運用上の指針を示していただくということですので、是非これは期待をして」いる旨の発言があった 。

・法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料 53

 要綱案のたたき台として、以下の案が示された。「3 附属書類の閲覧制度の見直し登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)の閲覧制度に関し、閲覧の可否の基準を合理化する観点等から、次のような規律を設けるものとする。・何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。後記②において同じ。)の閲覧を請求することができる。・登記簿の附属書類(不動産登記法第121条第1項の図面及び前記①に規定する登記簿の附属書類を除く。)(電磁的記録にあっては、記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧につき正当な理由があると認められる者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、その全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる。」この案については、部会資料35と基本的に同じとする補足説明がなされている(https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00040.html[法制審議会民法・不動産登記法部会第23回会議(令和2年12月15日開催)]部会資料 53(21頁-22 頁)。)。

・法制審議会民法・不動産登記法部会第23回会議(令和2年12月15日開催)  賛成とする意見以外は出されなかった(https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00040.html[法制審議会民法・不動産登記法部会第23回会議(令和2年12月15日開催)]議事録 39 頁-46 頁。)。

・法制審議会民法・不動産登記法部会第24回会議(令和3年1月12日開催) 部会資料 53 と同じ案のもと、部会資料 57 に基づいて審議されたが、橋本幹事から「閲覧についての正当理由の判断について、現状で認められている閲覧よりも過度な制限がされるのは少し困るという意見がある一方で、本人確認手続は厳格にやるべきだという意見」があったことが紹介された(https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00044.html[法制審議会民法・不動産登記法部会第24回会議(令和3年1月12日開催)]議事録 35-38 頁。)。 これ以降の部会資料及び部会の会議録では特にコメントはなされていない。部会資料 53 から変更されず、要綱案、要綱とまとめられ、法律案(閣法第55号)として提出された。その後、第 204 回国会衆議院法務委員会第 6 号(令和 3 年 3 月 23 日開催)において、附属書類の閲覧について大口委員と池田(真)委員から、DV 被害者等の保護に関して、正当な理由の運用及びその運用の適切さについての質疑がなされた。これに対して、小出政府参考人から、DV 被害者等の保護の観点から、法務省として、正当な理由の内容について、できる限りこれを具体化、類型化して、通達等において明確化することを予定しており、これにより、適切な実務運用、これが安定的に行われるものと考えているとの回答がなされた(https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000420420210323006.htm[第 204 回国会 法務委員会 第 6 号]。)。参議院法務委員会においては特に指摘はされなかったようである。

  以上のように、不動産登記簿の公開については、第 6 回の会議において不動産登記簿の公開についてのそもそもの制度趣旨、また公開の範囲及び方法についての意見が各委員から出されたものの、その後の会議においては議論されることなく終わっている。そして、DV 被害者等の保護の観点から今回の改正では、不動産登記上の住所情報を非公開とする措置がとられることとされた。すなわち、登記記録に記録されている自然人の住所が明らかにされることにより、その人の生命若しくは身体に危害を及ぼす恐れがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合、その者からの申し出があったときは、法務省令で定めるところより、登記事項証明書等に当該住所に変わる事項を記載するという規定が設けられた(改正後不登法 119 条 6 項)(荒井達也『Q&A 令和 3 年民法・不動産登記法 改正の要点と実務への影響』(日本加除出版、2021 年)273 頁。)。

  しかし、これはあくまでも DV 被害者等に対処するためだけの限定的な対応であり、本来は記載されることが予定されている自然人を特定するための情報が欠けることになる。このような対応ではなく、もっと普遍的な対応を検討すべきではないかと思われる。 附属書類の閲覧については、「利害関係を有する部分」から「正当な理由があると認められる部分」へと文言上は広げられたが、その詳細は法務省令で定めるが、平成27年の民事第二課長通知に基づいて行われている厳重な取り扱いが今後も基本的に維持されるとのことで、閲覧をするについてはその対象者は広がる可能性はあるが、概ね現行法が維持された。

Ⅲ ドイツにおける土地登記簿の公開Internet-Grundbucheinsicht

http://www.grundbuch-portal.de/

1.土地登記簿の公開の原則

  ドイツ土地登記法(GBO)12 条 1 項において、「登記簿の閲覧は、正当な利益を申述する者には、だれにでも許される。登記を補完するために登記簿において引用されている証書ならびに未処理の登記申請書についても同様とする」とし、さらに第 2 項において「登記簿、第 1 項に規定されている証書および未処理の登記申請書の閲覧が許される場合にはその写しを請求することができる。この写しは請求により認証される」と規定し、登記簿の公開は無制限ではないことが明らかにされている(石川清/小西飛鳥『ドイツ土地登記法』(三省堂、2011 年)34 頁。)。

2.土地登記簿閲覧の要件

  登記簿の閲覧について正当な利益を有する者は、登記簿のみならず、登記簿の記載の煩雑化を避けるために、登記簿において引用されている、登記の根拠となる証書(登記許諾証書、アウフラッスング公正証書等)および未処理の登記申請書を閲覧することができる。また、登記簿の閲覧が認められる限り、これらの謄本または抄本の交付を請求することができる。したがって、不動産登記簿は、商業登記簿のように一般に誰にでも、閲覧および謄抄本の交付が許されているわけではない。登記簿の閲覧についての正当な利益は、これを証明しなければならないのではなく、単にこれを申述すれば足りる(石川清/小西飛鳥『ドイツ土地登記法』(三省堂、2011 年)34 頁―35頁。)。

3.正当な利益

(1)正当な利益の意義

  ドイツにおいて登記簿を公開することに制限が認められるのは、不当な目的による第三者からの、登記されている権利者の財産関係および権利関係ののぞき見から登記されている者の個人的な秘密を保護するためのものであるから、正当な利益の範囲についてもこの観点から判断されなければならない。 正当な利益とは、「法律上の利害関係」よりも包括的な概念であるとされる。登記簿閲覧の申請人がその者の立場から、登記簿の閲覧によって求めるものが社会的通念に照らして是認しうるものであればそれで足りる、と解されている。また、正当な利益があることの証明を要するのではなく、不当な目的または単なる好奇心から閲覧をするものではないことをうかがわせる程度の事実をわかりやすく、登記官が納得できるように申述することで十分である。しかし、申請者の正当な利益の申述について合理的な疑念が生じる場合には、登記所は必要な書類の提出、事情によっては疎明あるいはそれどころか証明を要求することができる44。

(2)正当な利益を有するとみなされる者

1)    法律上当然に正当な利益を有するとみなされる者 登記簿を閲覧することについて、法律上当然に正当な利益を有するものとみなされる者は、閲覧についての正当な利益を申述することなく、関係する土地の登記簿の閲覧をすることができる。土地所有者、不動産物権者および不動産物権上に設定されている権利の権利者はすべてこれに該当するほか、土地所有権移転請求権、不動産物権の設定請求権を有する者もこれに含まれる。これらの権利が登記されているか否かは問われない。例えば、未登記の相続人、証券抵当債権者または未だ仮登記されていない所有権移転請求権者である。これらの者は、第三者というよりもむしろ当事者として、関係する土地の登記簿を閲覧して、不動産の状況及び権利関係をいつでも調査、確認する利益があるからである。

2)    公証人、官公署の職員または公務員たる身分を有する測量士 公証人、官公署の職員または公務員たる身分を有する測量士も、登記簿の閲覧について法律上正当な利益を有する者とみなされ、閲覧についての正当な利益を申述することなく、閲覧することができる(ドイツ土地施行規則 GBV43 条)。これらの者は職務執行に関連して閲覧をするものであるからである。とくに公証人は、登記に必要な意思表示の証書を作成する場合には、当事者に登記簿の内容を告知する義務がある(証書作成法 BeurkG21 条)。したがって、これらの者が公務上の理由により、登記簿を閲覧する場合には、登記簿の閲覧の手続きの軽減と簡素化のために、正当な利益の申述の義務を免除している。しかし、この場合にも官公署等は正当な利益を有していなければならないのであって、ただ、登記所によってそれが審査されないだけである。したがって、登記所が、具体的事件において、正当な利益が存在しない、ということを確実な根拠に基づき、知っている場合には、登記簿の閲覧または謄抄本の交付を拒否すべきである。弁護士が職務上登記簿を閲覧する場合には、その正当な利益について申述すべきであるが、ただ、弁護士が、公証人から登記簿の閲覧について委託された場合には、その閲覧についての正当な利益の申述の義務が免除される。公証人からの委託については、これを証明することは要せず、委託があった旨の、当番弁護士の確約で足りる。

(3)正当な利益を申述した者(GBO12 条 1 項)  不動産の取引をする者に、登記簿の閲覧権が認められるかは争いがある。売買契約の交渉に入っている者は、土地所有者の代理人として登記簿を閲覧し得るから、それで十分であるとする。隣地の所有者に閲覧権が認められるかは、具体的でありかつ、距離的に理由づけられる状況において正当な理由が導かれる場合にのみ、認められるとされる46。土地所有者に対する与信者または与信をもくろむ者、また、登記簿の閲覧についての正当な利益は、もちろん取引関係だけに限られるわけではなく、土地所有者または登記されている権利者の債権者、それもすでに執行名義を取得しているか否かを問わずすべての債権者にも、それぞれの立場において正当な利益を有していると解されるから、それぞれの立場からの事実関係を申述して、登記簿を閲覧することができる。また、公益は登記簿の閲覧を正当化することができる。しかし、それでも登記簿の閲覧を要求する者は、公共の利害関係を代表することの権限を有していることを申述すべきである。とくにジャーナリストについては、基本法上(GG5 条)保護されている新聞雑誌の情報伝達とチェック機能は、また別な観点から考慮されるべきである。新聞雑誌の登記簿閲覧については公共的な利害関係が成立すると考えられるから、これと登記されている者の私的秘密保持との均衡(比例)法の原則に照らして個別的に判断されるべきであろう。したがって、ジャーナリストも、少なくとも、公共利害関係からの正当な利益について申述すべきである47。

(4)  正当な利益を有しない者  閲覧が単なる好奇心または不当な目的のためになされるべきときには、登記所はその閲覧を拒否すべきである(GBO12 条 1 項)。また、興信所及び不動産業者も一般的には固有の閲覧権を有していないと解せられるから、不動産業者は土地所有者の代理人として閲覧をすることができるだけである48。

(5)  その他の利害関係  学術上若しくは研究を目的とする登記簿の閲覧は、GBO12 条において法的請求権が与えられていない。しかし、これは司法行政上の方法で認められることが可能である。研究を目的とする登記簿(附属基本書類を含めて)の閲覧については地方裁判所または区裁判所の所長が決定をする49。

4.閲覧の対象

  閲覧権を有する者は、登記簿及び閉鎖登記簿の他、登記において引用されている、登記のために必要な意思表示を公証または認証した証書および未処理の登記申請書を閲覧することができる(GBO12 条 1 項)。未処理の登記申請書の閲覧は、たしかに登記所の登記事件の処理について支障をきたすものであるが、一方、不動産取引をする者にとってはその閲覧は欠かすことのできないものである。というのは、登記事件は、登記申請書の受理の順番に従って処理されるものであり(GBO17 条)、それは権利の順位について重要であるばかりでなく、ときには受理された登記申請が実行されないことがあるからである。たとえば、抵当権設定登記申請は、先に受理されたアウフラッスングに基づき土地が新所有者に移転された場合には、もはや実行することができないからである。したがって、登記所側の業務処理の迅速性よりも、取引当事者の権利保護の利益を優先させるべきである、という考えに基づき、未処理の登記申請書の閲覧が認められた理由がある。

  登記所の登記簿の管理上調製された、所有者目録および土地目録は GBO12 条 1 項には含まれないから、原則として、それらの目録の閲覧、謄抄本の交付またはそれらの目録からの情報の交付を請求することはできない。 閲覧権は、正当な利益の申述の範囲において与えられるから、登記簿(閉鎖登記簿)、証書および未処理の登記申請書も関係する部分についてだけに限られる。 したがって、登記所は閲覧権者の正当な利益の申述の内容によっては、登記簿の一部、たとえば、ある区欄用紙の特定の登記または表題部用紙と第 1 区欄用紙、または附属基本書類を除外して、登記簿だけを、または閉鎖登記簿だけを閲覧させることもでき、その逆も同様である。

5.閲覧に関する権限

  登記簿の閲覧の請求があった場合、登記所は正当な利益の存否についての審査によって閲覧の可否を決定すべきである。登記簿(必要な場合には、登記所で調製した目録を含めて)の閲覧、謄抄本の交付の認容については登記課の書記官が決定をする(GBO12c 条 1 項)。したがって、正当な利益の存否についても登記課の書記官が決定をすることになる。登記所は、登記簿の閲覧、謄抄本の交付の前に、あらかじめ土地所有者からその可否についての聴聞をする必要はない。 登記課の書記官の決定に対する不服申し立てについては、登記判事が決定をする。登記判事の決定に対してさらに不服がある場合に、初めて抗告が許される(GBO12c 条 4 項および司法補助官法 4 条 2 項 3 号)。

6.閲覧の実行

  閲覧権は申述された範囲内において、本人または代理人によって行使されることができる。代理人による閲覧の場合には、その代理権の証明は GBO29 条 1 項の証書によることを要しないが、委任状の提出が必要である。委任状の署名の真正について合理的な疑問がある場合には、登記所は署名の認証を要求することができる(FamFG1 条)。閲覧の正当な利益については、もちろん本人のそれが基準となる。しかし、代理人が本人の正当な利益に代えて、代理人自身の不当な利益または第三者の利益のために閲覧をするものである、

 ・ドイツの場合

登記課の書記官は、次の各号につき決定する。

1.登記簿の閲覧または第 12 条に規定する書類および申請書の閲覧の許可ならびにそれらの写しの交付。ただし、学術的または研究上の目的のためのものを除く。

2.第 12a 条による情報の提供または同条に規定する目録の閲覧の許可

3.その他法律上規定されている場合における情報の提供

4.証書の返還および付属基本書類の送付についての国内の裁判所または官庁に対する申請という合理的な根拠のある疑念が生じる場合には、登記所はその代理人の閲覧を拒否すべきである。合理的な根拠のない、たんなる疑念だけでは、登記所は閲覧を拒否すべきではない。閲覧は、登記所の執務室において、勤務時間内に、かつ登記所の職員の面前でなすべきである。

  なお、コンピュータ式登記簿においては、当該登記簿を管轄する登記所以外の登記所からも閲覧することができる(GBO132 条(閲覧) コンピュータ管理の登記簿の閲覧は、当該登記所以外の登記所においても認めることができる。閲覧の許可に関しては、閲覧が請求された登記所が、決定する。)。さらには、インターネットを通して登記所外部からアクセスすることも可能である(http://www.grundbuch-portal.de/stufe1-ni.htm )。GBO133 条 1 項に、あらかじめ許可を得た後は個別に許可を得る必要のない者として、裁判所、官庁、公証人、公に任命された測量技術者等が示されている(GBO133 条(自動化された手続の開設の要件、許可)。

7.謄抄本

  閲覧権を有する限り、登記簿および付属基本書類の謄本、それも認証された謄本または認証のされない写しの交付を要求することができる(GBV43 条、46 条 3 項)。また、登記簿の一部、たとえば一部の区欄用紙だけの、または一定の登記だけの認証された抄本の交付を請求することもできる(GBV45 条 1 項、2 項。)。 コンピュータ式登記簿については、公式の出力された印刷物が、認証された謄本または認証されない写しといった区別をすることなく、認証された写し(謄本)と同一の効力を有する(GBO131 条、139 条、GBV78 条、99 条)56。

Ⅴ おわりに

  以上のように、我が国の不動産登記法は、ドイツ土地登記法を参照して規定されたものの、その公開に関しては制定当初から特に運用面においては隔たりが大きいことは明らかであった。そして、その後の改正においても、特に不動産登記制度の公開の理念から特に制限する必要性については、論じられてこなかったことがわかる。 今回の法改正においても DV 被害者等の保護の観点及び戸籍や住民票などの附属書類についての公開についての議論はあったが、一般論として不動産登記簿の公開に関して踏み込んだ議論はなされずに終わってしまっている。

・ 第1 項の規定による自動化された請求手続の開設には、ラントの司法行政当局による許可を要する。この許可は裁判所、官庁、公証人、公に任命された測量技術者、その土地について物権を有する者、物権者から委任を受けた者、官公署またはベルリン国立銀行のほか、情報請求の機械処理(第 4 項)の目的のために限ってする公法上の金融機関に対してのみ、与えることができる。(以下略)。 不動産登記法第 1 条に定めるように権利の保全及び取引の安全のための制度であるならば、権利の保全及び取引の安全のために必要な範囲に限定して公開すれば足りると思われる。また、今回の民法・不動産登記法改正のきっかけとなった登記が土地情報の基盤としての役割を果たすことを求めるのであれば、そのための情報公開の範囲を検討すればよいのではないだろうか。

・請求権者の範: 第1の目的である権利の保全及び取引の安全の観点からの公示については、閲覧を望む者の範囲は取引に必要な範囲に限られることになる。この場合、登記簿の附属書類の閲覧において一定の基準がすでに作られていることから、同様の基準で「正当な理由」がある者にのみ公開されていれば足りると思われる。不動産登記簿の登記事項証明書の交付及び閲覧に関し、正当な理由を有するか否かについて、すべての申請に対し登記官が判断するのは量的にも困難であることが予想される。また、現行のオンライン情報システムへの対応についても検討する必要が生じる。一つの考え方として、ドイツのように不動産取引に関して閲覧する必要のある専門職等からの申請はあらかじめ正当な理由があるものとして許可しておき、そうでない場合には登記官がその正当性について個別に判断するという方法もあるのではないだろうか。さらに、ある不動産の購入や与信を望む者については、権利者から代理権を授与してもらい、閲覧する方法もあり得よう。

 第2の目的である土地情報の基盤の観点からの公示については、所有権の登記がない不動産(現不登法27条3号)を除き、個人情報に関わる部分はほぼないと言えることから、権利の登記がなされている不動産については、公開を制限する必要はないであろう。 本稿では、我が国の不動産登記簿の公開の現状と改正の経緯及びドイツ法における登記簿の公開について述べてきた。最後に、不動産登記簿の公開すべき範囲及び請求権者の範囲について若干の検討を試みたがまだまだ不十分な検討であり、次の機会にはドイツ法とも比較してさらに具体的な検討を試みたい。

研究報告2陰山克典( 司法書士)「デジタル社会と登記- 不動産登記」

 法令上は、完全オンライン申請が可能。登記原因証明情報(公的個人認証による電子署名)登記識別情報印鑑証明書(公的個人認証による電子署名)住所証明情報(公的個人認証による電子署名)代理権限情報(公的個人認証による電子署名)、登記義務者    登記権利者、法令上は、完全オンライン申請が可能。登記原因証明情報(公的個人認証による電子署名)登記識別情報印鑑証明書(公的個人認証による電子署名)住所証明情報(公的個人認証による電子署名)代理権限情報(公的個人認証による電子署名)、登記義務者    登記権利者。

 公的個人認証による電子署名が今後も維持されるか、法令の改正や法務大臣の指定等も考えられる※ 資格者代理人による実体確認がなされたのち、当該資格者代理人の電子署名を付与することで、オンライン申請における登記原因証明情報としての適格性を満たす等公的個人認証(マイナンバーカード)の普及や使用が隘路にマイナンバーカードの普及とともに、マイナンバーカードによる電子署名を行うことができる環境が不可欠。

 現状、マイナンバーカードによる電子署名を行い、それを登記申請の際の添付情報とするためには、有料のソフトやICカードリーダーが必要。電子署名を行う環境を整えることが、依頼者の負担になっているのではないか・・・マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載の実現

・マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載については、令和3年度(2021年度)末までに技術検証・システム設計を行い、令和4年度(2022年度)中の実現を目指す。公的個人認証だけでなく、券面入力補助機能など、マイナンバーカードの持つ他の機能についても、優れたUI・UXを目指し、スマートフォンへの搭載方法を検討する。デジタル社会の実現に向けた重点計画(令和3年6月18日閣議決定)。司法や行政が発行する証明書等のデジタル化が不可欠。民間のみではなく、司法や行政のデジタル化が実現しなければ、完全オンライン申請は困難。

➢     相続登記の際の戸籍・除籍・改製原戸籍

➢     農地法の許可書

➢     相続放棄を行った者がいる際の相続放棄申述受理証明書

➢     判決等に基づく登記の際の判決正本、和解調書、調停調書など

cf 成年後見人であることを証するための後見登記事項証明書はデジタル化されている。

相続登記の義務化を前に、何ができるのか

➢     現時点では、戸籍・除籍・改製原戸籍のデジタル交付は想定されていないものと思われる。 

不動産登記令(電子署名)

第十二条 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請するときは、申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請情報に電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名をいう。以下同じ。)を行わなければならない。

2 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合における添付情報は、作成者による電子署名が行われているものでなければならない。

(電子証明書の送信)第十四条 電子情報処理組織を使用する方法により登記を申請する場合において、電子署名が行われている情報を送信するときは、電子証明書(電子署名を行った者を確認するために用いられる事項が当該者に係るものであることを証明するために作成された電磁的記録をいう。)であって法務省令で定めるものを併せて送信しなければならない。

不動産登記規則

(電子証明書)第四十三条 電子証明書は、第四十七条第三号イからニまでに掲げる者に該当する申請人又はその代表者若しくは代理人が申請情報又は委任による代理人の権限を証する情報に電子署名を行った場合にあっては、次に掲げる電子証明書とする。ただし、第三号に掲げる電子証明書については、第一号及び第二号に掲げる電子証明書を取得することができない場合に限る。

一 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項の規定に基づき作成された署名用電子証明書(マイナンバーカードによる電子署名、電子証明書)二 電子署名を行った者が商業登記法第十二条の二(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する印鑑提出者であるときは、商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第三十三条の八第二項(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書(商業登記に基づく電子署名、電子証明書)三 電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第八条に規定する認定認証事業者が作成した電子証明書その他の電子証明書であって、氏名、住所、出生の年月日その他の事項により電子署名を行った者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの四 官庁又は公署が嘱託する場合にあっては、官庁又は公署が作成した電子証明書であって、登記官が電子署名を行った者を確認することができるもの

2 前項本文に規定する場合以外の場合にあっては、令第十四条の法務省令で定める電子証明書は、同項各号に掲げる電子証明書又はこれに準ずる電子証明書として法務大臣の定めるものとする。

➢一定の要件を満たせば、犯罪収益移転防止法上の本人確認と認められる。

➢不動産登記規則72条「面談した日時、場所及びその状況」の解釈によっては、司法書士事務所を場所とするウェブ面談の実施でも良いという結論も導き得る。→ 面談・・・狭義の面談は「対面」、広義の面談は「ウェブ等」も含むという解釈(cf 日司連「債務整理に関する指針」第5「依頼者又はその法定代理人と直接面談」)。

→場所・・・経済産業省・法務省「株主総会運営に係るQ&A」https://www.meti.go.jp/covid-19/kabunushi_sokai_qa.html

Q2「設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能」第14回投資等ワーキンググループ(令和3年4月13日開催https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20210413/agenda.html)の議論は引き続き注視が必要・新経済連盟(小木曽政策部長)「意思を確認することは別にオンラインでもできると思いますので、ここは答えになっていないなと思います。要するに、定款認証やほかのこともオンラインでやっているということがありますので、ここのところについて、ほかのところに同席している方に何か影響を与えてしまうかもしれない、影響を受けてしまうかもしれないというところについては、別にいろいろな防止処置があると思いますし、意思の確認の仕方だと思うのです。なので、その手段を限る必要は全くないと思います。」・法務省(堂薗審議官)「平成12年の電子公証制度の創設時には公正証書についても電子化が議論されておりますが、私署証書などと比較すると、公正証書は法律行為などの私人間の権利関係について作成されるものであり、本人の意思の確認がより重要になるものでございます。そのため、当時のIT技術では、当事者の意思確認が必ずしも容易ではないのではないかといった意見がございます。」・法務省(堂薗審議官)「嘱託人の意思確認を十分に確認することができるよう、現在、面前で行われている手続を電子の世界でどのように実現していくのかといった点も検討していくことが必要になると思われます。」・新経済連盟(小木曽政策部長)「意思表示が電子だとできないということはなく、その手段の在り方の問題にすぎないと思っていまして、意思表示がちゃんとされているかどうか、どのように確認するかということは、リアルでも、ネットでも別に差異があるわけではなくて、公証人の専門的な能力として、それぞれの手段を活用しながらやっていくということだろうと思っております。なので、丁寧な議論をすることで、リアルしかできないということは何一つ存在しないと思います。」髙橋委員「意思確認の話ですが、丁寧にやれば、多分、テレビ電話と対面の意思確認の精度はほとんど変わらないと思います。端末の先で何らかの影響力があるかどうかを確認できるかどうかの話だと思うのですけれども、これは例えば弁護士とか司法書士が同席して、自由に2人でやっていますと宣言させて、もしそれが虚偽であれば、弁護士や司法書士を刑罰にかける。」法務省(堂薗審議官)「意思確認の点につきましても、確かに御指摘のように、こちらとしても、特に例えば保証意思の宣明公正証書とかそういったものについて、どのような形で第三者の影響力を排除するかという辺りが課題になろうとは思っておりますけれども、その点につきましても、先生から御指摘いただいたように、様々な方策が考えられると思いますので、この点についても検討してまいりたいと考えております。」高橋座長「ここは電子化と関係ないお話かと思いますので、検討していただければ、答えはすぐに出せるのだと思うのですけれども、いつでしょうか。検討を進めるではなくて、いつまでにということを伺いたいのです。」・新経済連盟(小木曽政策部長)「意思確認のところですが、例えば不動産のIT重説が始まっていますけれども、不動産は極めて重要な財産ですが、要するに、これについてもテレビ電話を解禁して、意思表示を確認していると思います。このような事例を考えますと、別にデジタルの方法について非常に違うものとして理解する必要はないと思っております。」売買における完全オンライン申請 、規制改革実施計画(令和3年6月18日閣議決定https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html)18頁。

・犯罪収益移転防止法との関係

日司連公的個人認証有効性確認システムは、犯罪収益移転防止法施行規則https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a0016条1項1号ワ 当該顧客等から、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号。以下この号において「公的個人認証法」という。)第三条第六項の規定に基づき地方公共団体情報システム機構が発行した署名用電子証明書及び当該署名用電子証明書により確認される公的個人認証法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法(特定事業者が公的個人認証法第十七条第四項に規定する署名検証者である場合に限る。)。)に定める方法と同様の方法を採用している。特定取引の際の本人確認について、法令に適合した体制を構築。デジタル・ガバメント実行計画(令和2年12月25日閣議決定)19頁。不動産の引渡し及び登記手続、代金の支払い。完全オンラインの世界で、いかにして同時履行を確保するか。実務上、どのようにして的確な意思確認を行うか。登記義務者が登記識別情報(権利証)を有していない場合、本人確認情報を提供することが通例であるが、不動産登記規則72条の解釈が変更される余地はあるか。

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・法定相続証明情報・遺産分割協議情報・誰がログインているのか、どのようにデータを保存するのか。・本人の特定(マイナンバーカードの偽造と暗証番号の取得に対する対応。)。・リモート署名などの解釈の変化の可能性。・eKYCで本人確認は可能、とするのか。

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「リモートセンシングデータの登記利用について」土地家屋調査士 今瀬勉

第1章 要約

 日本の地籍は,筆界によって囲まれた土地区画(一筆)を空間基盤単位としている。しかし,現状では,土地区画(一筆)の位置情報は不明確なものが未だ存在し,特に山林においては,土地所有者の高齢化により,土地筆界の明確化が困難となっている。日本の不動産登記制度において, 土地区画(一筆) を構成する筆界は,「 当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。」(不動産登記法第 123 条第 1 号)と定義されている。すなわち,一筆は,新たに創設をされるものではなく,すでに過去において登記により区画された一筆を調査,探索することになる。そのため,その土地区画を含めた地域の過去の情報が極めて重要となるが,それらの情報は,未整理,散逸,不明なものが少なくない。

 一方で,デジタル庁の発足にみられるように,オープンデータ化の潮流はここにきて加速の状況と見受けられる。後でも述べるように,利用できるデータは多く存在していて,これらのいわゆる公共財データを利活用して,様々な合理的な組合せとその後の解析を行うことで充分に目的を達成できると考えられる。

 そこで,特に山林地域におけるリモートセンシングデータを利用した登記を前提とした効率的かつ合理的な手法による筆界調査を提言することにより,少子高齢化による山林の放置(物理的かつ登記も含む),荒廃問題,土地所有者不明問題の解決につなげると共に,森林経営管理法による森林資源の適切な管理及び山林資源の有効活用につながるベース・レジストリを構築して,持続可能な社会の実現に貢献したいと考えている。

 具体的には,リモートセンシングデータである航空レーザーデータを基に,3D 地形モデルを生成し,その地形モデルを様々な視点から解析をして,そこに,これもリモートセンシングデータである空中写真(過去のものも含む),登記所備付の「地図に準ずる図面」,明治期作成「更正図」(例として岐阜県の場合)

明治前期福島県作成の更正地図

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/35/suzuki/hajimeni.htm

官公署管理の「林班図」https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/kokuyu_rin_map.html

を重ねて表示させ,現地筆界状況精通者の証言を参考に,推定される土地の筆界線を表現する。そして,いわば物証と書証を融合して作成したといえる 3D 推定筆界線により,土地所有者及び関係者への土地境界調査検討結果による合理的な根拠,説明により,実際に危険な山林地域に入ることなく,また,時には遠隔地の人証を得る事が出来得ると考えられる。ただし,実際に現地にて確認することは,人証を得るための基本的な事項であるから,これを安易に省略することが本研究の目的ではない。この手法を用いるにしても,当然に,必要に応じて現地立会いを行わなければならない。

第2章 序論  本研究の目的

 本研究では,既に世に存在しているリモートセンシングデータを利活用して,登記の筆界の調査に合理的に利用するため,登記所備付け地図,官公署作成の地形図,空中写真などの空間情報を公共座標系で表現し,特に山林地域の原始筆界調査の方法を研究するとともに,日本における地籍に関する空間情報を取り巻く問題を見いだすことである。

リモートセンシング基礎知識・学習

https://www.restec.or.jp/knowledge/

第3章 本論

第1節 資料収集についてリモートセンシングデータ航空レーザーデータ(グラウンドデータ,オリジナルデータ等),基盤地図情報 5mDEM(10mDEM),自治体備付 DEM,微小地形図

DEM(数値標高モデル)

https://www.gsi.go.jp/KIDS/KIDS16.html

(2) 空中写真,衛星画像

古い年代の空中写真から収集していくことになるが,森林境界の観点からは,1940 年代から 1950 年代など,森林需要が高まった時期で植樹も少なかった時期のものは,森林が伐採された裸地の状態であり,山の地表面が直接撮影されている。

(3) 登記所備付地図:公図,閉鎖地図(和紙公図),地積測量図,地図 XML データ等

(4) 森林基本図デジタルデータ,林班図,林相図等

第2節 地図資料の画像データ化

 スキャニングした画像データの合成,集合図の作成を行う。ここでは,画像編集ソフト,CAD を使用して,基盤地図を基に世界測地系座標位置で合成を行った。ここでは,概算の位置で配置しながら,不整合に配慮してデータの連続性を重視して作業を行った。

第3節  既撮の空中写真の画像データ化 

 空中写真は,最新のものはオルソ画像を入手して行ったが,オルソ画像のデータはデジタルデータで入手すれば配置作業も容易である。基盤地図との整合性を確認した。過去の空中写真については,オルソ化の作業も試みたが,この点については,別に考察を試みたい。ここでは,精度レベルも考慮してスキャニングした空中写真画像データの位置合わせを試みた。

第4節  3D モデル作成  点群データ,標高メッシュデータにより,3DCAD を用いて地形 surface 作成した。

サーフェスとは

https://www.esrij.com/gis-guide/spatial/surface-analysis/

第5節  3D データの評価 

 ここで,3D データの評価のため,0.5mDEM ,2.0mDEM, 5.0mDEM を例に見てみた。 0.5mDEM ,2.0mDEM, 5.0mDEM で同位置の画像で比較する。 5.0mDEM については,全体的にのっぺりとした感じで,概ねの尾根・谷線は判別できる。 2.0mDEM になると,やや複雑な地形となり,尾根・谷線の中の起伏が判別できるようになる。 0.5mDEM では,尾根谷線は明確になり,山道のような道路も判別ができるようになり,極めて詳細な地形まで把握することが可能になっている。 このように,より詳細なデータのほうが有意なのは明らかである。しかし,例えば 0.5m と 5.0m では,データ量に約 100 倍の違いがあることになり,解析をする PC にも負荷がかかるので,スペックの対応が必要となり,ストレージも大容量が必要となるなど追加的な投資が必要となる。

第6節 数値化閉鎖地図(和紙公図)の 3D モデル化

  3DCAD で閉鎖地図(和紙公図)を公共座標系で配置する。尾根・谷線と公図筆界との整合性が確認できる。世界測地系で配置することにより,任意の点で X,Y,H を表示することができるので,再現性があり,現地での検証も可能となる。ここで,従来の 2D での復元と異なることは,高さ(標高)データが 1 次元加わったということである。これは,現地においての作業性及び正確度の検証に大きなプラス効果を与えると考えられる。

第7節 地形解析及び評価

    高度解析は高度に応じて識別するもので,最も一般的でよく見受けられ   る解析画像である。 傾斜度に応じて識別するもので,平地の部分では赤に着色されているの   が良くわかる。ただし,尾根山頂部は平地に解析されている。また傾斜方   向をベクトルで表示することで,より視覚的に受け入れやすいものになる   のではないか。一部の専門家が理解できるものでは無く,一般の方が容   易に受け入れやすいものを表現していかなければならない。そこで,傾斜   度の識別像度は 6 段により,東西南北,方角により斜面を解析した。   また,同じく方向解析であるが,識別解像度を 20 段階として解析したが, 山の地形に合わせてより有効な識別解像度で解析する必要がある。

第8節 地形解析による筆界調査

https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/koufukin/attach/pdf/index-72.pdf

  地形 surface モデルから,地形解析することにより,視覚的に地形を把握することを補完する。たとえば,傾斜解析で,青色に着色してより視覚的に捉え易いものができないか試みて,地形の傾斜解析により独自にブレンドした地形解析を行った。 このような地図の彩色には様々な独自様式があり,特許申請されているものもある。

   地形 surface と森林 surface を組み合わせることにより,地形と主に林相  を判断する情報として利用することができる。一般的に密な針葉樹のエリアでは,レーザーが地上まで届き難いため,断面図では縦の線が少ない疎の状態である。また,樹木の高さを計測できるため,現地での整合性を確 認することができる。

 次に DSM モデルに空中写真(オルソ画像)をドレープすることで,より視覚的にリアリティの効果を増すことができる。また,実際にこのモデルをプレビューして判明したことは,林相の把握に役立つことである。樹木の高さ,種類などが空中写真と surface モデルと組み合わされることにより,誰にでもより一層その区域界を認識し易くなる。

  このことから,視覚的にとらえる展開が考えられ,地形 surface に 1960 年代の空中写真をドレープしたものに,さらに,3次元公図をドレープする。ここからは,当時の山の樹木の状態,例えば,伐採をされた区域,植林を始めた区域,そのまま放置されている状態,あるいは,伐採途中の作業状態などが,地形データ,境界データとの一致からその整合性を確認できる。

  そこで,さらに傾斜解析したものを透過して重ねることにより,尾根・谷など地形状態をより強調した視覚効果が得られるため,先の地形 surface に 1960 年代の空中写真をドレープして,さらに3次元公図をドレープしたものを補完したものとなり得ると考えられる。ただし,ここから情報を解析的に読み取るには,読み取り側の技術的なトレーニングが必要と考えられる。情報量が多くなればなるほど,一般的に読み取る能力も高次元になるのは否めないのである。したがって,地権者・関係者など一般の方にプレゼンテーションとして使用するにはややハードルは高いのではないだろうか。プレゼンテーター自身が解析に使用するのが適当と考えられる。

第9節 プレゼンテーションの手法について

   土地所有者など関係者は,高齢者が多く実際に山に入ることが非常に困難な状況が多い。その場合,立会いに先立って事前に現地調査・解析の状況を説明するためのツールとして使用することができる。3Dであるため,平面的な位置はもちろんのこと,標高情報をもっているので,情報がより多いといえる。 また,一番の特徴は,どの位置,視点からも任意で閲覧可能である。さらに,時の次元情報(過去の空中写真)も重ねているので,時代別の情報でさらに記憶,人証を得ることができるのではないだろうか。その点では,四次元調査図といえる。

第4章 結論

 山林の土地区画(1 筆)の境界を調査するのに本手法は,人口減少・高齢化社会において,山林地域での土地の表示の登記のための境界の調査に,合理的な資料(書証+物証)と現地立会(人証)の負担軽減化において,非常に有益であると考えられる。日本における地籍に関する空間情報の課題は,今回使用した空間データの一つ一つが,異なる場所に保存されており,ほとんどが紙による情報であり,統一された空間座標系ではなかった。また,官公署においては,デジタル化されたデータを分割した上,紙による提供を行っていることも多く見受けられた。そのため,再度デジタル化して合成する作業が必要になり,そこでは,歪みによる精度の劣化など課題も多く,このような制度上の問題により,極めて非効率な作業が強いられるという不合理な現状がある。

 また,「埋もれた情報」をアーカイブとして構築し,オープンデータ化して,さらに,これらの空間情報基盤(ベース・レジストリ)に登記情報を横断的にリンクして,公開することにより,国民全体の英知を活用して(クラウドソーシング),3D シュミレーションによる都市計画,公共サービスの高度化,合理化を実現できれば,効果的に日本の少子高齢化,災害に強い街づくりが可能となり,持続可能な社会の実現に寄与できるのではないだろうか。

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