司法書士白書 2020 年版 会社登記事件数・法人登記等の登記事件数(総数)の推移等

資料:法務省「民事・訟務・人権統計年報」、国税庁「国税庁統計年報書」 2010年以降の会社数は、確定申告のあった事業年度数を指す。 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet…

司法書士白書 2020 年版 会社登記事件数・法人登記等の登記事件数(総数)の推移 https://www.shiho-shoshi.or.jp/galler…

法制審議会担保法制部会   第1回会議 議事録

法制審議会担保法制部会   第1回会議 議事録

http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003008.html

部会資料1 担保法制の見直しにおける検討事項の例

http://www.moj.go.jp/content/001346936.pdf

参考資料1-1は動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会の報告書

http://www.moj.go.jp/content/001346939.pdf

参考資料1-2「中小企業が使いやすい譲渡担保制度の実現に向けた提案」

http://www.moj.go.jp/content/001346940.pdf

参考資料1-3 事業者を支える融資・ 再生実務のあり方に関する研究会論点整理

http://www.moj.go.jp/content/001346941.pdf

委員等提出資料1-1 メモ(金融庁)

http://www.moj.go.jp/content/001346943.pdf

第1 日 時  令和3年4月13日(火) 自 午後1時29分

                     至 午後4時33分

第2 場 所  法務省第一会議室

第3 議 題  1 部会長の選出等について

        2 担保法制の見直しについて

第4 議 事  (次のとおり)

議        事

○笹井幹事 それでは,予定した時刻まで少しございますけれども,既に皆様おそろいのようでございますので,法制審議会担保法制部会の第1回会議を開会いたします。

  本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

  私は,法務省民事局の笹井と申します。本日は,この部会の第1回会議ですので,後ほど部会長の選出をしていただきますが,それまでの間,私が議事の進行役を務めさせていただきます。

  最初に,資料について御確認いただきたいと思います。まず,部会資料1「担保法制の見直しについての検討事項の例」がございます。こちらにつきましては,後ほど審議の中で事務当局からご説明いたします。次に,参考資料がございます。参考資料1-1は動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会の報告書です。参考資料1-2「中小企業が使いやすい譲渡担保制度の実現に向けた提案」は,中小企業庁から御提供いただいたものです。参考資料1-3「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会論点整理」は,金融庁から御提供いただいたものです。このほか,委員等提出資料として,金融庁から御発言メモをいただいております。以上,御確認いただければと思います。

  次に,部会設置決定の報告でございます。まず,この部会で審議される諮問事項と部会の設置決定につきまして,簡単に御報告いたします。

  本年2月10日に開催されました法制審議会第189回会議におきまして,法務大臣から担保法制の見直しに関する諮問がされました。お手元の資料のうち,右肩に「諮問第百十四号」と記載されたものを御覧ください。

諮問事項はここに記載されておりますように,「動産や債権等を担保の目的として行う資金調達の利用の拡大など,不動産以外の財産を担保の目的とする取引の実情等に鑑み,その法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,担保に関する法制の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものであります。この諮問を受けまして,法制審議会総会では,その日の会議において,専門の部会を設置して調査審議を行うのが適当であるとして,この担保法制部会を設置することを決定したものであります。まず,以上のことを御報告いたします。

  続きまして,審議に先立ちまして,本来であれば民事局長の小出から御挨拶申し上げるところですが,所用のため不在としておりますので,代わりまして担当の大臣官房審議官である堂薗委員より挨拶があります。

○堂薗委員 法務省で民事局担当の審議官をしております堂薗でございます。民事局長の小出が所用により不在にしておりますので,事務当局を代表いたしまして,私の方から一言御挨拶を申し上げます。

  皆様にはそれぞれ御多用の中,法制審議会担保法制部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。

  従来,金銭の貸付け等による債務の担保としては,不動産や個人保証が多用されてきました。他方で,特に中小企業の中には,高い収益性がありながら不動産を有しないものもあることや,個人保証の問題,特に企業の債務を個人で保証した者が過大な責任を負う場合があることが問題視されたことなどを背景といたしまして,不動産や個人保証に過度に依存しない担保取引の必要性が指摘されているところでございます。このような担保取引につきましては,平成30年6月に閣議決定された骨太の方針2018において,「経営支援を強化するため,金融機関による担保・保証に依存しない融資の促進を通じて金融仲介機能を一層発揮させる」とされ,また,令和元年6月の未来投資戦略の成長戦略フォローアップにおきましても,「企業や金融機関からのニーズを踏まえて,動産担保に関する法的枠組みや登記制度の整備について,将来的な法改正も視野に入れて検討する」との取りまとめがされるなど,制度整備の必要性に言及されてございます。

  しかし,民法には担保設定者が所有する動産について,その占有を維持したままこれを担保の目的とすることを内容とする規定は設けられておりません。

そのため,在庫などの動産に担保を設定するための手法といたしましては,明文の規定のない譲渡担保などが用いられております。また,在庫や売掛債権等を担保の目的とするためには,複数の動産や債権を一体として担保の目的とする必要がありますが,設定者が将来取得するものを含む財産の集合体を目的とする担保の取扱いについても民法には規定がありません。

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譲渡担保、集合動産・集合債権譲渡担保に関する条文が民法に組み込まれるのかもしれません。

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 このため,動産や債権等を目的とする担保取引に関する法律関係は,専ら判例法理に委ねられてまいりました。判例は一定程度蓄積されておりますが,なおルールが不明確な場面も残されております。

  このように判例法理に委ねられてきた担保取引に関するルールについて,必要に応じて見直しをした上で明文の規定を設けるとともに,判例によって解決されていない問題について規律を設けることが,担保取引に関する法律関係の明確化,安定性の確保のために必要であると考えられるところでございます。

 そこで,法制審議会において,法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,動産を目的とする担保や債権を目的とする担保を中心として,担保法制の見直しに向けた検討をお願いしたく,今回の諮問がされたものでございます。

  私ども事務当局といたしましても,本部会における調査審議が充実したものとなりますよう努めてまいりますので,委員,幹事の皆様方におかれましては,明確かつ安定した担保法制の構築のために御協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。

○笹井幹事 ありがとうございました。

  それでは,続きまして,委員,幹事及び関係官の方々に自己紹介をお願いいたします。

 (委員等の自己紹介につき省略)

○笹井幹事 どうもありがとうございました。

  なお,本日は小出委員が御欠席,倉部委員は途中,中座されると伺っております。また,横山委員,岩井幹事,森山関係官においては途中で御退席予定と伺っております。

  この機会に,関係官につきまして補足して説明いたします。法制審議会議事規則によりますと,審議会がその調査審議に関係があると認めた者は会議に出席し,意見等を述べることができるとされております。この部会でも従前どおり,関係省庁に対して審議への参加を求めていこうと思っております。そのため,当省の事務当局のほか,最高裁判所事務総局民事局の森山局付に関係官として御参加いただいております。

  続きまして,部会長の選任を行っていただきます。法制審議会令によりますと,部会長は,当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき会長が指名することとされております。この部会は本日が第1回会議ですので,まず,部会長を互選していただく必要がございます。

  それでは,ただいまから部会長の互選をしていただきますが,自薦又は他薦の御意見などはございますでしょうか。

  それでは,井上聡委員から手が挙がっておりますので,井上聡委員から御発言をお願いできますでしょうか。

○井上委員 ありがとうございます。僭越ながら道垣内委員を部会長に推薦したいと思います。道垣内委員は,皆様御存じのとおり,民法について幅広く,かつ深い識見を持っておられます。複雑で多面的な視点を要する担保法の研究においても深い洞察に満ちた成果を数多く発表されておりまして,私自身も日頃より御指導いただいております。そのような次第ですので,道垣内委員には是非本部会での議論の中心となっていただきたく,部会長に推薦したいと存じます。

○笹井幹事 ありがとうございます。

  もう一方,山本和彦委員からも挙手がございますので,山本和彦委員からも御発言をお願いできますでしょうか。

○山本委員 私も井上委員と同じく,道垣内委員にお願いするのが適当ではないかと考えております。今回の問題は担保法制に関するかなり包括的な諮問事項であって,理論的にも実務的にも多々難しい問題を含むものだと思っております。その意味で,今,井上委員から御指摘がありました,担保法自体に対する道垣内委員の識見はもちろんのこと,広い視野から周到な目配りをして,困難な課題について議論を取りまとめていただけるという点で,やはり私も道垣内委員にお願いするのが適当であると考えている次第であります。

○笹井幹事 ありがとうございました。

  ただいま,井上委員,山本委員から,部会長として道垣内弘人委員を推薦するとの御発言がございましたが,ほかに御発言ございますでしょうか。

  よろしいでしょうか。ほかに御意見がないようでしたら,部会長には道垣内委員が互選されたということになろうかと思いますが,いかがでしょうか。

  ありがとうございます。

  異議なしという御意見がございました。ほかにも御意見ないようですので,部会長には道垣内弘人委員が互選されたものと認めます。

  その上で,本日は法制審議会の内田貴会長にも御出席いただいておりますが,内田会長におかれては,いかがでございましょうか。

○内田会長 法制審議会の会長をしております内田でございます。ただいま道垣内弘人委員が互選されましたけれども,担保法の分野における御業績等に照らしましても,私も道垣内弘人委員が適任であると思います。互選の結果に基づき,道垣内委員を部会長に指名したいと思います。

○笹井幹事 ありがとうございました。

  ただいま内田会長から道垣内弘人委員を部会長に指名していただき,これをもちまして道垣内委員が部会長に選任されました。

  道垣内委員におかれては,部会長席への御移動をお願いいたします。

○道垣内部会長 ただいま部会長に指名されました道垣内弘人と申します。井上さん,山本さんから御推薦いただいたのですが,そこにおける推薦の理由に必ずしも納得しているわけではありません。力は及ばないとは思いますけれども,議論を取りまとめるために,微力を尽くしたいと思います。

  先ほど堂薗さんからもお話がありましたように,担保法制の見直しの必要性が高まっているわけですけれども,他方でやはりいろいろなところ,倒産法制にせよ,民法の中にせよ,商法にせよ,いろいろなところに跳ね返りのあるテーマでございますので,かなり丁寧に検討していかなければいけないと思っております。皆さんの御知見をいただいて,何とか取りまとめができるようにしていきたいと思います。

  なお,私はこれまでも法制審議会の部会において委員とか幹事とかをさせていただいておりましたけれども,大体,中間に1回と要綱案が取りまとめられた段階で,昔の言葉でいうとコンパというのですが,懇親会をやっていたのですけれども,最近できないという状況になっております。ちなみに会費制でございますけれども。この取りまとめが終わる頃にはコロナも収束して,要綱案の取りまとめができましたときには心置きなく懇親会ができるという状況であればよいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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コンパ、時代を感じます。

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  さて,法制審議会令というのがございまして,法制審議会令の6条5項というのがあります。そこでは,部会長に事故があるときには部会長代理が職務を代行するのですが,それをあらかじめ部会長が委員及び臨時委員のうちから指名しておくという仕組みになっております。今後,部会長であります私が会議に出席することがかなわないという場合に備えまして,私としてはこの6条5項に従いまして,部会長代理を指名させていただければと思います。沖野眞巳委員にお願いをするということで指名させていただきたいと思いますけれども,沖野委員におかれましては,お引き受けいただけますでしょうか。

○沖野委員 はい,ありがとうございます。微力でございますが,努めさせていただきます。くれぐれも事故のないようにお気を付けていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○道垣内部会長 それはお互いかもしれませんけれども。では,沖野委員に部会長代理を引き受けていただきましたが,そこで審議に入るわけなのですが,審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについてお諮りをしておきたいと思います。

  まず,現在の法制審議会部会における議事録の作成方法につきまして,事務当局から御説明いただきます。

○笹井幹事 法制審議会の部会の議事録における発言者名の取扱いにつきましては,かつては発言者名を明らかにしない形で逐語的な議事録を作成していた時期もありましたが,平成20年3月に開催された法制審議会の総会におきまして,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,部会長において部会委員の意見を聴いた上で,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという取扱いに改められております。

 御参考までに申し上げますと,この総会の決定後に設置されました民事法関係の部会では,いずれも発言者名を明らかにする議事録を作成するものとされております。したがいまして,この部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものとするかどうかを御検討いただく必要があるのではないかと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  それでは,笹井幹事からの御説明につきまして御質問,御意見がございましたらお願いいたします。

  特段,御意見はないと考えてよろしいでしょうか。といたしますと,部会長の私といたしましても,当部会における審議事項の内容等に鑑みて,発言者名を明らかにした議事録を作成するということにしたいと思いますが,いかがでございましょうか。

  よろしゅうございますでしょうか。では,そういうことで,当部会につきましては発言者名を明らかにした議事録を作成することとしたいと思います。

  それでは,本日の審議に入りたいと思います。

  本日はまず,皆様に今回の担保法制の見直しにつきまして,幅広いテーマになりますので,それぞれの問題意識やこの部会の進め方について自由に御発言をいただくフリートークをお願いしたいと思います。個々的な論点に関して,こう在るべきだというふうな話はこれからどんどん詰めていくわけですが,全体としての,こういうふうな形で進めていくべきである,こんなことを考えるべきである,あるいは,これから笹井幹事から部会資料1について御説明いただきますけれども,そこに書いてあること以外にこういうことも必要だとか,あるいは,こういうふうな方向が必要なのではないかとか,そういうふうなことにつきましていろいろな御意見をいただければと思います。

  そこに先立ちましてというか,前提といたしまして,事務当局から部会資料1に基づいて説明をしていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○笹井幹事 それでは,部会資料1につきましてご説明いたします。部会資料1を御覧ください。

  まず,第1,基本的な視点についてです。先ほど堂薗委員からの挨拶にもございましたように,これまで大きな役割を果たしてきた不動産担保や個人保証に過度に依存しないように,多様な資金調達手法を整備する必要があるということが指摘されておりまして,在庫などの動産や売掛債権などの債権が担保の目的として活用できるのではないかと言われてまいりました。

  しかし,民法には,設定者が所有する動産の占有を維持したまま,これを担保の目的とすることを予定した規定はなく,設定者が将来取得するものを含む複数の動産を一体として担保の目的とすることを予定した規定もございません。

 このため,実務では,所有者が引き続き占有する必要がある動産を担保とするためには,譲渡担保や所有権留保などのいわゆる非典型担保が用いられてきました。また,債権,さらにそれ以外の財産を担保とするための手法としても,実務上は譲渡担保が利用されてきたところです。これらの手法につきまして,現在は専ら判例によってルールが形成されておりますけれども,その射程がどこまで及ぶかが必ずしも明確でないことも多く,また,判例がルールを示していない論点も残されているという状況でございます。このため,法律関係の明確化,安定性の確保等の観点から,動産,債権を目的とする担保を中心として,担保に関する法制の見直しが必要であるという認識から,今回,諮問に至ったものでございまして,こういったことが今後の検討に当たっての基本的な視点になるのではないかと考えております。

  こういった問題意識に基づきまして,担保法制についてこれから御議論をお願いしていくわけでございますけれども,議論する必要があるのではないかと考えた具体的な論点を第2以下に記載しております。

  まず第2,総論―担保法制全体の構成ですけれども,これは第3以下とも少し異なっておりまして,個別の論点というよりは,担保法制全体をどのように構成していくのか,どのようにその全体を設計していくのかということに関わる点でございます。この担保法制全体をどのように構成していくかを考えるに当たりまして,幾つかのポイントがあるのではないかと考えまして,そのポイントを差し当たり三つ挙げたものでございます。

  一つ目は,どのような財産を目的とする担保制度を設けるかということでありまして,先ほど申し上げましたように,動産,債権が中心になってくると考えておりますけれども,それ以外の財産を取り込む必要があるのか,取り込むとして,どのような財産を対象としていくのかという,その対象の範囲の問題でございます。

  二つ目は,今申し上げました一つ目とも関係しますけれども,担保制度の種類や形式についてでございます。財産の種類などに着目して,例えば動産や債権といった財産の種類に着目して別々の担保制度を作るのか,あるいは,担保という機能を有する取引について広範に適用される統一的な適用範囲の広い担保制度を一つ作るのかといった問題ですとか,あるいは,少し違った視点ですけれども,抵当権や質権と並ぶ新しい担保物権を典型担保物権として作るのか,あるいは現行法の譲渡担保などの形式を残しまして,担保目的で財産権を移転する,あるいは留保する場合にこういう規定が適用されるというような形で規定を設けていくのか,そういった形式もあるかと思います。こういった二つの問題を取り上げてございます。

  三つ目は,対抗要件制度,それから登録制度の在り方でございます。先ほど二つ目のポイントについて御説明申し上げましたけれども,担保目的で財産権を移転する,あるいは留保する場合に適用される規定を設けた場合,所有権の移転についての対抗要件が必要になってくるわけですが,それに加えて,担保目的の取引であることを示す何らかの登記等の制度を設けるべきか,また,そういったものを設けた場合に,その登記・登録制度をどのような効力と結び付けるのかといった問題があろうかと思います。

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こういうものも考えられているようです。

ETH、Solidity、Remixを利用した譲渡担保プログラムの解説

https://github.com/gurunbox-contracts/contracts/tree/main/youtube

  ほかにも担保法制全体を検討するに当たって大きな視点があるかもしれませんので,そういったものがございましたら,後ほど御指摘いただければと思っております。

  続きまして,部会資料1の第3以下は,より個別具体的な論点を挙げたものでございます。今,部会長からもございましたように,それぞれの論点につきましては次回以降,もう少し詳しい資料を作成いたしまして,一つ一つ御議論いただければと思っておりますので,今回は簡潔な説明にとどめさせていただきたいと思っておりますけれども,大きく言いまして,担保の実体的な効力,それから,第三者への対抗やこれに関連して担保権が競合した場合の優劣関係の定め方,第3に,担保の実行方法,第4に,担保の倒産法上の扱い,その他といった,大きく言えば五つくらいの領域に分類できるのではないかと思っております。

  まず,第1の実体的な効力につきましては,例えば,目的物の使用収益権限がどちらにあるのかということですとか,物上代位の可否,物上代位を認める場合にどのような代替物に対して物上代位をすることができるのかということですとか,あるいは,いわゆる集合動産ですとか集合債権が担保の目的となった場合にどういった規律が妥当するのか,そういったものを予定した場合にどのような規律が必要になるのかといったところが,実体的な効力に関しては問題になるのかなと思っております。

  また,第2の対抗要件制度や担保権の優劣関係につきましては,現在の動産譲渡担保の対抗要件である引渡しのうち,特に占有改定につきましては公示性が乏しいという指摘がございまして,対抗要件制度を全体としてどのように設計していくのかということが問題になってこようかと思います。また,同一の財産権について,例えば同一の動産について,複数の担保権が競合するという場合が考えられるのではないか,これは同種の担保が競合するだけではなくて,先取特権,質権あるいは現在の譲渡担保などをいろいろな形で組み合せることが考えられるかと思いますが,複数の担保が同一の財産について設定されたといった場合に,競合した担保の優劣関係をどういう基準で判断していくのかということが問題になってこようかと思います。

  この点につきまして,現在は対抗要件の具備の先後によって優劣関係を決めるということになっているのだと思いますけれども,こういった対抗要件具備の先後によるという考え方を維持するのか,あるいは,第三者対抗要件とは区別された基準を設けて,それによると,第三者対抗と担保同士の優劣関係については別の考え方によって定めていくという考え方もあり得るところかと思っております。

  なお,資料では担保所有権という言葉を用いておりまして,これは講学上,特に確立した概念というわけではございませんけれども,現在の譲渡担保や所有権留保がされた場合に,担保の目的の範囲で債権者が取得したり留保したりといった所有権を指す言葉として用いました。これは,私どもも参加しておりました動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会の中で用いられている概念ですけれども,ここでは譲渡担保や所有権留保を包摂する概念として表現として便利であったために,使わせていただきました。ただ,事務当局として,立法に当たってこの概念を使うという方針が決まっているというわけではございません。

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所有権留保も含む担保所有権。

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  それから,冒頭に五つほど大きな領域があると申し上げましたけれども,三つ目の担保の実行についてでございます。実行につきましては,私的実行の可否,これに加えて,裁判所の手続を利用することの可否などが問題になってくるかと思いますが,そのほか,いわゆる後順位の譲渡担保などが許容される場合に,後順位の担保を有する債権者が実行することがそもそもできるのか,あるいは,実行できるとしてどのような要件で実行することができるのか,また,動産が目的となっている場合には,短期間に価値が大きく下落する場合があるというような特質もございますので,こういった特殊性を考慮して,引渡しなどの実効性を確保するための方法を設計する必要があるかといったところが問題になるかと思います。

  さらに,集合動産や集合債権といった財産の集合体が目的である場合に,その担保をどのように実行していくのかということも問題になってくるかと思います。

  第4の大きな領域として,担保の倒産手続における取扱いがございます。ここに属するものといたしましては,担保権実行手続中止命令に関する論点として,例えば,実行着手前に発令することができるのかといったことですとか,発令前の審尋が必要的であるのかというような問題,あるいは流動的な集合物,集合債権が目的である場合に,倒産手続後にその範囲内に加入してきた新たな動産や債権といったものに担保の効力が及ぶのかといった問題を検討する必要があるかと思います。

  最後に,その他ですけれども,問題となり得るものとして,預金担保,ファイナンス・リース,包括担保制度を掲げました。これらにつきましても,またおいおい詳細に御検討いただく機会を設けたいと思いますが,包括担保につきまして,後ほど金融庁からも御説明があるかと思いますけれども,どういった場面を想定しながら,どういった効果を期待することができるのか,また,その具体的な制度設計につきましては,他の特定の担保の扱いや他の取引との関係等,細かく制度設計をしていく必要があろうかと思いますので,そういった点につきまして今後,議論をお願いするということになろうかと思います。

  最後に,担保法制につきまして以上のような論点を一例として挙げさせていただきましたけれども,ほかに検討すべき事項がありましたら,今日の機会に御指摘いただければ,事務当局において検討させていただきまして,部会に資料として提出させていただくということになろうかと思います。

  簡単ですけれども,部会資料1につきましては以上でございます。

○道垣内部会長 どうもありがとうございました。

  これから御意見いただくわけですが,少しその前に一言だけお話をしておきたいと思います。1時半から5時半という形で時間が設定されておりますが,4時間連続して行うというふうな非人道的な行動をとるということは一般的にはありませんで,4時間ですので,やはり2時間見当で1回お休みを取るということにしたいと思います。そこで,3時半までをまず第1回のセッションとして考えたいと思うのですが,それは一応でありまして,3時15分からお休みに入っても,3時45分からお休みに入っても,それは適宜やります。ともかく,ずっと続くわけではないということだけは最初に申し上げておきたいと思います。

  そこで,ただいまの笹井幹事の御説明につきまして,御質問や御意見ないしは補足点等がございましたら,お伺いしたいと思います。どなたからでも,どの観点からでも結構でございますので,御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いします。

  金融庁からお手が挙がっているようですが,尾﨑さんですか。よろしくお願いします。

○尾﨑幹事 ありがとうございます。少々お時間をいただきまして,発言させていただきたいと思います。

  金融庁は,金融機能の発揮を通じて経済の成長に貢献することを仕事としています。この部会においては,特に事業者の成長のために融資実務がどう在るべきか,融資実務を形作る重要な要素である担保法制はどうあってほしいかという立場から発言させていただきたいと思います。金融庁ではこうした観点から,昨年末に事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会を設置し,論点整理を公表しています。お手元の参考資料1-3を御覧ください。

  本日はこの論点整理を踏まえつつ,3点,求められる融資実務,担保法制への提案,論点整理後にいただいた御意見について御紹介したいと思っております。お手元にあります「メモ(金融庁)」とあります1枚の紙を御覧いただけますでしょうか。

  まず,1番目の求められる融資実務というところですけれども,この融資実務はどう在るべきかという点から議論したいと考えています。以前より金融機関は不動産担保や経営者等の個人保証に依存し,事業者の事業そのものをよく理解していないのではないか,また,過去の財務データを重視し,事業の将来性を十分に評価していないのではないかという指摘がされてきました。その結果,担保が十分でなく過去の実績がない借手,例えばベンチャー企業や新規分野などに思い切って事業を拡大したい企業,経営の悪化した企業などに対してリスクマネーが行き渡らない,資金以外の支援が行われにくい,あるいは再生局面で再生支援の着手までに時間が掛かっている上に,貸手の利害が錯綜するため調整に更に手間取り,その間に事業価値が毀損してしまい,かえって再生が困難になることもあるといった課題が存在し,企業の生産性向上や経済の成長を必ずしも後押しできていないのではないかと言われています。

  こうした課題を克服するために求められるのは,事業者の事業の実態と将来性を深く理解し,事業の将来のために必要な資金を出すとともに,資金を出した後も事業が成功するよう継続的に支援を行う金融機関の職員です。そして,そうした融資や支援が可能となるノウハウ蓄積と体制整備を行う金融機関です。こうした取組を進める金融機関,そして金融機関の職員が増えれば,ベンチャーを含めた成長企業にリスクマネーが供与されやすくなります。事業価値の維持・向上という方向性で一致した債権者間の調整が容易になり,早期の再生が可能となります。その結果,我が国の企業の生産性の向上,経済の成長を後押しすることになります。

  次に,2の担保法制への提案を御覧ください。まず,※の注にありますように,金融機関においては近年,事業者の事業の実態や将来性を理解し,事業者のニーズに沿った支援を行うよう努力されています。事業性評価とか伴走型支援と呼ばれているものです。金融庁も,90年代の金融危機の時代などには厳格な資産査定や資本規制を通じた健全性確保に重点を置いていましたが,その後,検査マニュアルを廃止するなど,今申し上げたような金融機関の多様な創意工夫を後押しすることにも重点を置いています。金融庁としては,金融機関が事業の実態や将来性を理解し,事業者のニーズに沿った支援を行えるよう,環境の整備という方向性を更に追求していきたいと考えています。

  その上で,こうした取組を進めるためには制度的な裏付けも必要であると考えています。特に担保法制は融資実務を形作る重要なインセンティブであり,金融機関及び金融庁の取組が成功するか否かにも大きな影響を与えるものと考えています。現在の担保法制は,個別資産に対する担保を中心としていると理解しています。こうした法制の下,金融機関は融資の担保として個別の不動産を利用することが多いのが実情です。このほか,経営者の生活住居の担保や個人保証も使われています。不動産や個人資産は事業そのものとは独立した価値を持っているので,清算したときの債権の保全としての効果を期待しているわけです。そのため,清算したときにも貸し倒れないようにという観点から,融資の実行時から担保価値の範囲内の融資額かどうかといったことが重要視されてきたと理解しています。

  しかしながら,こうした側面が強く出すぎると,事業の価値を向上させるために必要な資金を出す,事業の価値を向上させるために資金以外の支援も行うという金融機関の動機が弱くなってしまいます。極論すれば,事業者が必要としているかどうかに関わらず,担保や保証の価値に見合った資金を出す,あるいは,事業者が苦しいときでも担保や保証で回収できるので,事業者を支援する必要はないということになりかねません。また,再生局面でも,場合によっては事業の継続よりも不動産抵当権を実行するインセンティブが働く可能性もあります。また,担保価値の範囲内の融資額かどうかが重要であれば,動産や債権を担保とする融資も,その資産の価値が乏しい場合には少額しか融資できないことになります。特に中小企業の場合には少額になりやすく,そうすると,評価のコストや手間の方が大きくなることから,活用も限定的になっていると言われています。

  このように,担保法制の在り方は融資の実務,考え方に大きな影響を与えます。そこで,事業を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会では,新たな選択肢として,事業そのものを担保とすることを可能とする担保権を提案し,この担保権をその目的を踏まえて事業成長担保権と呼んでいます。動産,債権のほか,契約上の地位,知的財産権,のれん等を含み,将来発生するものも含まれるものと考えています。事業が継続していれば,事業から将来生ずるキャッシュフロー全てを担保の目的とすることになり,冒頭で申し上げた,事業の実態と将来性を理解し事業の将来のために必要な資金を出すという金融本来の在り方と担保の在り方が一致し,金融機関に対して事業価値の向上という事業者と同じ方向を向いて支援をする強力なインセンティブを与えることになります。経営が困難に直面した場合も,不動産担保や個人保証の場合と比較して,金融機関には早期に支援を行い,事業価値を回復するインセンティブが強くなります。また,そうならないように日頃から事業者をしっかりと支援することにより,健全な経営が促され,経営難に陥りにくくなることが期待できます。

  担保法制というとデフォルトに陥った場面に目が向きがちですが,事業成長担保権の最大の意義は,デフォルトに陥らないような支援が行われることにあるともいえます。

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事業成長担保権。初めて聴きました。

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再生局面でも,事業者が事業全体に担保を設定すれば,個別の不動産,動産にばらばらに担保が設定された場合と比較して,事業者と債権者の利害が一致しやすく,また,事業価値が毀損する前に経営改善,事業再生を支援することが,事業者だけでなく担保権者にとっても利益になるため,早期の事業再生が促されると考えられます。

  このように,事業の将来性を評価して資金を出し,事業の成長のための支援を行う融資実務が実現すれば,デフォルトの可能性を抑えることができます。また,仮にデフォルトに至ったとしても,早めの支援を通じて事業をいかすことにより,貸倒れを抑えることも可能になります。そのため,金融機関が事業者の成長や再生のためにより積極的にリスクを取ることが可能となり,そのための目利き力を養うことも合理的になります。

  海外においてはこのような実務が見られます。ベンチャー企業が全資産を担保にリスクの高い融資を調達する例があります。中小企業融資では,全資産を担保に融資し,密度の濃いモニタリングを行い,経営が悪化すると素早く支援を行うようです。単純な比較はできませんが,担保法制について参考にすべき点があるように思います。海外だけでなく日本でも,内田会長の御論文ですとか,今般の中小企業庁における提案にも見られるように,議論も蓄積されております。日本の事業者,金融機関に十分な選択肢を確保するためにも,是非取り上げて御検討いただきたいと考えております。

  最後に,研究会の論点整理の公表後に有識者や実務家からいただいた御意見を幾つか紹介したいと思います。3.の論点整理公表後に有識者や実務家からいただいた御意見のところを御覧ください。

  前向きな御意見としては,事業者を中心に,まず,メインバンクが明確になるというものがありました。中小企業は安定的な資金供給等の支援を行うメインバンクを求めている,事業成長担保権により金融機関を順位付けすることでメインバンクが明確化できるとよい,金融機関の職員は一人で多くの事業者を担当しているが,事業成長担保権を設定することで,金融機関にとっても自社の優先順位が決まり,自社の実情を理解した対応がされるようになるとよい,また,経営者としての挑戦や再チャレンジの後押しが期待されるというものもありました。不動産等の資産を持たない事業者が融資を受けるためには,現在でも経営者保証を求められるところ,家族との生活を危うくさせるようなリスクまでは負えないという経営者は多い,事業成長担保権を通じて経営者保証の負担を負わずに融資を受けられるようになれば,起業や事業承継も前向きに考えやすくなるという御意見もありました。

  他方,再生実務家や金融機関の方を中心に,慎重な御意見もありました。その一つは,まだ見ぬ世界であり,時間が必要というものです。例えば,事業成長担保権を活用した融資実務は日本の金融機関にとってまだ見ぬもの,例えば業務分担や人事評価制度,人事ローテーションなどを含め,人材育成や組織体制の整備のために相応の時間が必要になる,といった御意見がありました。また,既存の制度・実務との整理が必要というものもありました。例えば,民法典ではなく,財団抵当法や企業担保法などの特別法によることを考えるべき,あるいは,活用したいと思う金融機関から使い始めて,顧客に金融機関を選んでいただくというのが望ましい,実務の混乱を避けるためにも不動産担保や経営者保証の融資といった現状の実務は否定すべきではない。こうした御意見がございました。

  金融庁といたしましても,頂戴した御意見も踏まえつつ検討が進められれば有り難いと考えております。

  最後に,事業成長担保権を立法するとなれば,実務上の運用を含め,乗り越えるべき点が多いことは理解しております。しかし,海外でできていて日本でできないということはないのではないかと考えています。当然ですが,担保法制だけで全てが解決できるわけではありません。しかし,海外の例を見ても,担保法制が重要なインセンティブの一つとして機能していることは確かです。また,現状の実務とはかなりの距離があることも理解しています。しかし,現状を維持すべきことは常に正しいわけではないとも考えています。10年,20年先を見据えて,是非この部会でも取り上げていただいて,前向きに御検討いただければと存じております。

  長くなりましたが,ありがとうございます。

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やっぱり担保というと金融機関と事業者の関係になるのですね。

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○道垣内部会長 どうもありがとうございました。非常に説得的なプレゼンテーションだと思います。今後どのような形でそのお話を位置付けていくのかということについては,皆さんの御意見を伺いながら整理をしていきたいと思います。

○尾﨑幹事 ありがとうございます。

○道垣内部会長 では,ほかに何か御意見はございませんでしょうか。

○鈴木委員 地方銀行協会の鈴木でございます。いきなり金融の実務の話になりましたので,せっかくですので発言させていただきます。

  私,先ほど申しましたけれども,銀行員生活の3分の2が営業の現場におりまして,融資実務に携わってまいりました。正しくアフターコロナにおいては,政府の支援策が順次終了することが想定されますので,今まで以上に金融機関が創意工夫とか目利き力を発揮しながら取引先を支える必要に迫られていると認識しております。私もABLなどの融資形態に時に触れてまいりましたけれども,やはり法律が定まっていないところもありまして,オーダーメードの契約書を多数作成する必要があるなど,決して使い勝手がよいものではなかったと認識しております。今回は現場の代表でございますので,私自身がより積極的に活用する気になるかとか,腹落ちできるかといったところを気にしながら臨んでいきたいと思っております。

  新たな枠組みとしての包括的な担保制度,包括担保については,取引先企業の事業成長について金融機関が利害を共にするというものでございますので,そういった枠組みと捉えております。やはりここ何十年,失われた時代ともいわれていますけれども,活力ある企業が次々と育つアメリカのような状況,そうなっていくためには一つの選択肢になるかもしれないと思っております。

  私ども地銀協は全国64行から,いわゆる第一地方銀行といわれているところになりますけれども,その中に融資部会というのがありまして,そこの21行で機動的に意見集約をしながらこの会に臨んでいきたいと思っております。包括担保については,どのような場面で活用が考えられるかといったところを意見集約しましたところ,ベンチャー企業とか事業承継,それから再生支援,そういった局面で活用できるのではないか,そういった声が多く上がりました。議論すべき点は非常に多いと考えておりますけれども,リレーションシップバンキングを担う地域金融機関においては想像以上に関心が高い,そういうテーマであることを御紹介しておきます。

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金融機関については、まずは自行が利益を出す、その後に事業者の中で成長する企業が出てきたら良い、という考え方についてブレないと思います。

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○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかに御意見,御質問いただければと思います。

○大西委員 包括担保の話が出ましたので,少し発言させていただきます。

  私は元々弁護士時代に会社更生などの法的整理,その後,産業再生機構時代以降は私的整理の方でずっとやってまいりました。その中でやはり感じるのは,担保も明確になっているものと,不明確なものが結構あって,もちろん動産担保もそうですが,例えば代表的には,ここに書かれているファイナンスリースは,会社更生では更生担保権で扱いますが,私的整理では全くらち外となっています。金融機関の方が融資をする際には,予測可能性がある担保制度というのは非常に大事であり,今回の主題である譲渡担保も,これまでは判例の中で勉強してきたのですが,そこを明確化するというのは非常に意義が深いことかなと思っております。

  それから,もう一つ,包括担保の件で申し上げますと,やはりかつてのように製造業のように,いわゆる工場等の施設を持った産業が主流の時代ですと,従来の不動産担保というのがなじみやすかったと思うのですが,今主流となって増えているのはサービス業ですよ。しかもITとかそういう企業になりますと,不動産もないし,場合によっては動産もなく,権利若しくは事業ということが重要となり,企業によって何に価値があるかというのが多様化していると思います。そうすると,やはり担保制度もそれに合わせていろいろな選択肢が必要であり,その一つが事業の担保だと思うのです。そういうことが,ひいては金融機関も担保を付けて融資をしやすくなるし,例えば事業再生に至った企業であれば,そういう担保を入れることで,先ほどのお話もあるように,個人保証によらない融資が主流となり,経営者も安心して事業に専念できることになります。そういう意味で事業の担保というのは意義深いと思います。先ほど申し上げたように,どういう業種の企業が最近増えてきているのか,そして何に対して担保価値を見いだすべきなのかを踏まえて,担保制度を考えることが,本質的な考え方だと思います。私どもは実務家ではありますが,そのような考え方に即した議論がなされれば有り難いと思っております。

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IT企業はその分初期投資などが製造業などに比べて少額で済み、担保を付けるほどの借り入れを必要としない場合もあると思います。

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○道垣内部会長 どうもありがとうございます。

  ほかに,御自由に御発言いただければと思いますが。

○井上委員 ありがとうございます。今の御発言と重なるところがあるかもしれないのですけれども,3点ほど申し上げたいと思います。

  一つ目は,バランスを考える必要があるということです。担保権というのは設定者が持っている様々な財産,あるいはそこから生ずるキャッシュフローの一定の範囲を排他的・優先的に確保する権利だと思うのですけれども,それが今までは不動産に偏りすぎていたところ。今,大西委員がおっしゃったように事業が多様化する中で,より広いといいますか,在庫のような流動性のある動産ですとか売掛債権のようなもの,さらには事業そのものをつかまえることが必要になってくるという問題意識は,私もそのとおりだと思います。

  ただ,そういう形で,資金調達のために担保権者に対して排他的・優先的に提供できる範囲を広げていくという観点ばかりですと,それは,一般債権者,あるいは取引債権者に何が引当財産として残るかということの裏返しでもありますので,そういう意味では,事業再生フェーズになったときに何も残らないということでは,これまた困るというわけでして,その意味では,不動産から動産・債権に対象を広げていく,あるいは事業性のある資産に広げていくという発想とともに,むしろ何を残すのかという視点も併せて考える必要があり,そういう点で,冒頭申し上げたバランスというのが1点,申し上げたい点ということになります。

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  2点目は,担保というのは優れて実務的な道具ですので,そういう意味では融資実務をどうしていくかに関わる問題ですが,その際に制度としての簡易,迅速,廉価というのは非常に重要なポイントになると思います。ですので,取り分け,対抗要件制度ないし公示制度といった制度を議論する際,それ以外には実行段階もそうかもしれませんが,手続的に重くなりすぎないようにして,簡易であり,迅速であり,かつコストが安いということも,この担保法の改正が成功するためには非常に重要なポイントになるのではないかと思うので,議論のときに,そういったことを念頭に置くことも忘れてはいけないと思います。

  あと,もう1点申し上げたかったのが,大西委員が先ほどおっしゃった予測可能性でして,先ほど申し上げた,排他的・優先的に担保権者が確保できる範囲を広げるか,狭めるかという問題とともに,どう明確化するかという視点がないと,どちらからも萎縮してしまって無駄になってしまう部分が出てきてしまうと思います。ですから,設定者の財産,あるいはそこからのキャッシュフローのどこまでが担保権者のもので,どこまでが一般債権者,あるいは取引債権者,あるいは設定者自身に残されるべきかということについての予測可能性があること,フェーズが変わって事業再生あるいは倒産に至ったときも,担保権者がどこまで取れて,どこからは取れないことが分かるという明確さ,あるいは予測可能性も非常に重要だと思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  それでは,何人かから更に手を挙げていただいておりますので,大澤さん,お願いいたします。

○大澤委員 大澤でございます。今の井上先生の1と3に対する補足になろうかと思いますが,私は実務においては倒産実務家の側面が強いものですから,事業成長というための包括担保というアイデアそのものについて大きな異論があるというわけではなくて,どちらかというと,やはりバランス,特に事業再生前に包括担保が設定されたものについて,破産は少し話が違うかもしれませんが,事業再生,民事再生,ADR,あるいは会社更生等で事業再生に至ったときに,担保権者がどこまで手を伸ばせるのかと。もちろん先ほどお話のあった,今回の担保法の中でも第6でしたか,その辺りで確か出てきていたと思いますけれども,固定化というような概念等も含めて種々議論がなされているところだと思っております。もちろん一般取引債権者,あるいは再生債務者そのものの再生という観点から,倒産法のフェーズにおいてどこまで制限されるべきなのか,きちんと線引きをしておかないと,都度,都度,倒産実務家としては交渉という話になってしまうと,予測可能性ももちろん担保できませんし,取引債権者等が被害を被るというようなことにもなりかねないとも思っておりますので,そういった倒産の場面における担保法制とのバランスというものについては,今後も議論を是非させていただきたいと思っております。

  簡単ではございますが,以上です。

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弁護士の先生は、最後の執行の部分。執行が出来ないと担保を設定する意味がなくなります。不動産担保が普及する要因でもあります。

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○道垣内部会長 ありがとうございます。

○本多委員 先ほど,井上委員,それから大澤委員からもバランスというお話がございましたが,これについて金融実務に照らして補足させていただければと存じます。間接金融を担っている銀行の立場において,ファイナンスを提供させていただく場面というのは貸付けの場面だけに限られなくて,例えば,保証やLCという信用補完を提供させていただく場面とか,デリバティブ等のリスクヘッジ商品等を提供させていただく場面においても,与信をさせていただくことになります。そういう与信者サイドにおける様々な金融商品間における,それから与信者同士の間における競争関係や,競争環境にも配慮して,バランスというものを考慮する必要があると考えています。一方で,受信者サイド,ファイナンスを受ける事業会社サイドにおいても,受信をする方法は金融機関からの借入れに限られるわけではなくて,社債の発行だったり,株式の発行だったり,商取引におけるファイナンス,それから,リース等を活用してファイナンスを得るということもあるわけでございまして,こうした様々なファイナンスの局面を想定しながら,ある一定のファイナンサーに対して強力な排他的な権利を与えた場合の影響について,全体のバランスを考慮しながら検討しなければならないと考えております。

  もう一つ,補足をさせていただきますと,特に事業会社の成長のライフサイクルを考えた場合に,当初,シードから発生し,それからだんだん大きくなっていくという過程において,アーリーステージにおけるファイナンスのための強力な担保権が必要になることがあるかもしれないのですが,成長の過程において,強力すぎる担保権があることによって資金調達をかえって害してしまうということにも配慮しないといけないことがあるかもしれません。その後,更に成長していって,健全なファイナンスに関する競争の中で,そういう強力な担保権が外れるということもシナリオとして想定されると思われるのですが,その後,今度は逆方向に衰退していくという状況が生じた場合に,また強力な担保権が必要になってくるということがあるかもしれません。その局面において,例えば複数の金融機関からファイナンスを得ていた場合,窮境にある会社に対するファイナンスが強力な担保権を付与された者によりロールアップされていく過程というものがどうやって生じるのかということも慎重に議論する必要がありそうなのかなと思っております。そうしたファイナンスにまつわる与信者,それから,受信者における実務面にも配慮しながら,強力な担保権が生まれるということの影響がどうなっていくのかということについては,慎重に考慮しなければならないと考えております。

  一方で,尾﨑幹事からも御指摘のありました,事業の実態や将来性を深く理解した上で事業者のニーズに沿ったファイナンスの支援ができるという命題自体はとても大切なことですし,金融機関として引き続き真剣に考えていかなければいけない課題であると思っています。それから,10年,20年の将来を見据えた,よりフォワードルッキングな担保法制というものを金融機関としてもしっかり考えていかないといけないというところは深く共感しておりますし,そういう方向感で議論に参画できればとも考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに御発言はございませんでしょうか。最初の回でございますので,なるべく多くの方にそれぞれのお考えないしは気になっているところ等のお話をしていただければと思うのですけれども,いかがでしょうか。

○山崎委員 私,改めて申しますけれども,中小企業の立場で参加させていただいて,多分この中で行くと,ほとんど数少ない借手,債務者になる可能性のある企業でございます。また,商工会議所からの推薦で今回,来ているのですけれども,商工会議所って全国で122万社の会員様がいて,そのうちの95%の116万の会員様が中小企業基本法の範囲に当たる,いわゆる中小企業でございます。大体,身近でそういう方々と話していると,現状でもある規模以上の企業でしたら現状の法制を使いながら,こういった譲渡担保のなどの技術を使いながら,いわゆる不動産担保以外の資金調達ができるかと思うのですけれども,全くそんなものにほとんど,ファクタリングとか商手割引ぐらいしか知らないのが大体,実情だと思います。

  それで,先ほど井上先生がおっしゃられたように,今度こういうものが動産担保等に,そういう法制が作られるとすると,やはり簡素で迅速で廉価というのは非常に大事だと思います。特に廉価というところが,先ほどのABLとかそういうものというのは割とコストが掛かるかと思いますので,いわゆる貸金が小さい,銀行さんから見てですね,そういうところにそれだけのコストを掛けられないので,その辺を法律で簡素,迅速,廉価というものを何とか担保していただけると有り難いと思います。

  簡単ですけれども,以上です。

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分かりやすさと実感が伴うもの、費用、大切だと思います。

  • 000万円以内。

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○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに御意見等はございませんでしょうか。

○伊見委員 日本司法書士会連合会の伊見でございます。まず,動産と債権担保に関しましては,皆様御発言いただいておりますとおり,特に不動産を保有しない企業にとって,本来有益な資金調達手段であるということではありますが,今一つその利用というのが十分になされていないと承知をしております。その要因の一つとしまして,動産譲渡担保におきましては隠れた占有改定の問題であったり,その他,法的効果が不明瞭である点など,制度上の課題があるということを認識しております。今般この部会におきましてこれらの課題が検討されるということは,とても有意義なことであると考えております。

  司法書士は日常的に,融資実行に際しまして担保の実務に関わっておりますし,融資後の途上与信におけます担保内容の変更であったり,担保の解除の局面においても役割を担っているところでございます。今回検討されます新しい制度が融資実務の中でスムーズに機能するものとなるよう,ひいては多くの企業にとって動産や債権の担保を活用した資金調達がこれまでのように特別なものではなく,資金調達を考える際の普通の選択肢の一つとなるように,実務の立場から議論に参加をしてまいりたいと考えているところでございます。

  一方で,このたびの担保法制に関する見直しの検討の範囲につきまして1点,申し上げたい部分がございまして,それは工場抵当や各種財団抵当,そして各種動産抵当の制度につきましても,一定の範囲で,できましたら今回の見直しの検討の範囲に含めていくべきではないかと考えている点でございます。

  その理由といたしましては,例えば設備等の個別動産を担保の設定をし,融資をしようとする場合に,当初から譲渡担保を用いるということを決め打ちをするということは必ずしも行われていなく,実際には譲渡担保や工場抵当,財団抵当,動産抵当制度といった様々な選択肢を想定し,これらのメリット,デメリットを比較した上で,最終的にどの手続を採用するかを判断するということが行われているかと思われます。したがって,個別動産についての非占有型の担保を議論するに当たりましては,譲渡担保や所有権留保だけではなく,先ほど申し上げたような隣接する制度についても,例えば競合した場合の法的効果やそれらの制度の制度自体の内容についても,可能な限り今回の議論の対象に含めていただきますと,動産債権譲渡の担保もより取り組みやすい環境につながっていくのではないかと考えているところでございます。

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個人的には、可能であれば一本化して欲しいと思います。

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○道垣内部会長 ありがとうございました。

  工場抵当の話が出ましたので,一言だけ申しますと,諮問第百十四号というものに基づいて本部会が行われるわけですが,この文章においても,不動産に関連することについては一切扱わないというふうになっているわけではないと思います。しかし,それでは抵当権等も全面的にこの部会で見直すのかといいますと,それは恐らく,一度にやるのには難しい,今回は動産や債権等を担保の目的として行うというところに重点を置いて審議をするということになろうかと思います。

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  ただ,伊見さんがおっしゃいましたように,例えば工場抵当になりますと,財団目録に記載されている動産の工場抵当権の効力の問題と,当該動産なら動産,ないしはのれんとかも含まれるわけですが,動産なら動産を1個担保に取ったときとの効力の衝突という問題について明確な基準を提示する必要があるというのはごもっともだろうと思いますので,一番小さく諮問を考えましても,そういったものは十分に議論していかなければならないのだろうと私自身は理解しているところでございます。

○松下委員 ありがとうございます。松下です。諮問にもありましたとおり,本部会の一つのポイントは,法律関係の明確化や安定性の確保ということかと思います。その意味では,ルールをなるべく明文化する,見える化するということを意識する必要があるというのは余り御異論のないところではないかと思います。そういう意味では,判例が固まっていて学説上も異論が少ないルールについては明文化していくということになるのだろうと思いますが,しばしば隣接する問題についてはまだ議論が固まっていないというようなこともあるわけです。その場合に,審議の結果,隣接する問題については明文の規定を設けないという結論になることもあろうかと思います。そのような場合には,その問題についてはまだブランクである,議論が固まっていないので明文の規定を設けないまま残してあるのだということを審議の過程で明らかにしていく必要があるのだろうと思います。

  逆から申し上げますと,隣接問題についてはまだ議論が固まっていないときに,ある問題について明文の規律を置くと,ブランクの部分では反対解釈をされるおそれがあるのではないかと,だとすれば固まった部分の明文化も断念しようと,そういうような思考経路はなるべく避けるべきではないかと考えているところです。

  以上でございます。ありがとうございました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  亀井さんから御発言もあるということでございますので,よろしくお願いします。

○亀井幹事 

  今日,お手元の資料にも,参考資料1-2ということで,中小企業庁においても取引法制研究会を開催してこの問題を取り扱ってまいりました。資金調達をする中小企業,ユーザーの立場から,この問題についてどういった制度が望ましいのかということを,学者や弁護士といった専門家の先生方,中小企業や金融の実務をよく御存じの方々の御意見をいただきながら,一つの制度提案をさせていただきました。先ほど金融庁から御紹介のありました研究会とほぼ同内容のものと理解をしておりまして,是非こういった意見も踏まえて,この審議に御活用していただけると有り難いと思っております。その上で,何点か申し上げたいと思います。

  まず一つは,何人かの委員,幹事の方がおっしゃっていましたけれども,各資産それぞれを個別に担保に取るという制度ではなく,資産というのは事業の中で動産が売掛債権になり,売掛債権が預金となるというように形を変えて動いていくものですから,事業全体を担保に取れるような新しい担保制度を是非御検討いただきたいと思います。

  もう一つは,インフラとしての問題です。実体法の整備だけでなく,担保法制を支えるインフラについても,それが登記制度なのか登録制度なのか,いろいろ制度の仕組み方はあると思いますけれども,是非ユーザー,特に中小企業の皆さんにとって低コストで使いやすい制度となるよう,議論する必要があると思います。他の制度との平仄を重視するような議論,例えば,不動産がこうなっているから,こちらの制度もこうしなければならないのだ,というような検討ではなく,ユーザーの立場から簡易迅速で使いやすいというような制度についても併せて検討する必要があると思います。他方で,中小企業は非常に法律の弱者でもございます。

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とは限らないと思います。

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そういう意味では,この担保制度が濫用的に運用されるのではないかといった御懸念もありますので,これはもしかすると,それぞれの所管省庁でガイドラインのようなものを作っていくということかもしれませんけれども,そういった検討も含めた制度の御検討をしていただきたいと思います。

  あと1点,本日の担保法制部会資料1についてコメントをさせていただきたいと思います。3ページですが,2,担保制度の種類の(1)と(2),特に(2)なのですけれども,私も資料がいわんとしている中身を十分理解しているわけではございませんが,担保目的取引規律型というものと,新しい担保を作る担保物権創設型という二つのオプションが提示された上で,現行実務との連続性などから,担保目的取引規律型の規定を設けることとしてはどうかという事務局からの御提案がされています。ここでこれから議論されるのは,既存の法律を前提とした解釈論ではなく,そもそもどういった制度がよいのかという立法の議論であり,検討の範囲を最初から狭めるということを意図するのであれば,それは少しもったいないのではないかと思います。新しい担保制度を作るということも含めて,是非いろいろな観点から検討を行っていくことが必要ではないかと思います。

  以上です。ありがとうございます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。本日の担保法制部会資料1におきましては,設けることとしてはどうかという形になっておりますけれども,真意として,新たな担保物権を創設するという形の全面的に新しい法制度ということが最初の段階で排除されているということはないと思います。今後の皆さん方の御議論次第であろうと考えております。

  ほかに何か御意見,御発言,ございませんでしょうか。

○冨高委員 まず総論として,企業継続,事業継続の観点で多様な資金調達手段を整備することは,結果的に労働者の雇用の安定につながるものと考えますが, 労働者保護の立場から,企業が倒産する際に労働債権の確保が図れるのかが課題になると考えております。現行でも資金繰りに行き詰まって倒産する場合は,既に動産,在庫等に担保権が設定されていれば,その支払が滞っていることも考えられます。賃金等の労働債権は,一般先取特権があるといえども債権確保がままならない場合もあり得ることですので,その後の労働者の生活に大きな影響を与えることから,民法においては労働債権が先取特権の対象になっているという趣旨が損なわれないような見直しが必要ではないか。先ほどから出ております包括的な担保制度についても,労働者保護の視点が必要ではないかと考えております。

  また,平成15年の改正で,民法第306条の一般先取特権については,2号の文言について,雇人の給与から,雇用関係と範囲を拡大した改正がされております。今後の話になりますが,昨年来,コロナ禍においてセーフティネットの脆弱性が明らかとなったフリーランス等の労働債権の確保も重要な課題だと考えております。

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ここは興味があります。

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○道垣内部会長 どうもありがとうございました。その話も正に,先取特権全般を今回扱えるかというと,それは分かりませんけれども,ある制度を作ることによって,例えば給与債権といいますか報酬,いろいろなフリーランスも含めた報酬債権というものの取り分というのが減るというときには,それでは,その保護のために何をしなければならないのかという問題は常に表裏の問題として存在していると思います。先取特権の話だから今回の話とは無関係であるということにはならないと私も思いますので,御自由に広い範囲で御議論いただければと思います。

  それでは,ほかの方,何かございますでしょうか。

○阪口幹事 阪口です。現在の集合動産などの担保がうまく使えない大きな要因の一つとして,実行段階,執行段階の問題があると私は理解しています。現在の実務ではなかなかそこがうまくいかないものだから,貸す段階でも安心して貸せない。したがって,執行段階,実行段階について,皆様からお話の出ている簡易,迅速,低廉に手続ができるような制度を,整備する,執行制度の整備というのは,大きな論点で,そこは十分検討したいと思っています。

  他方,先ほどからも出ているとおり,バランスのとれた制度というのが当然必要ですので,執行がもう一歩進んだ倒産という局面になると,少しまたステージが変わるというか,執行の延長だけでは多分済まないのだろうと思っています。この種の議論をするときに,執行局面と倒産局面を一元的に捉えるのか,少し角度を変えて考えるのかという議論が常に僕はあると思っていますけれども,今回の立法では,場合によれば,そこはもうある程度切り離した議論もあり得るのかなということです。例えばアメリカであれば,UCCは州法の問題であり,他方,倒産法は連邦法で規定されていて,全然別次元で物事を決めていると私は理解しています。我が国では執行と倒産を連続的に捉えているけれども,場合によれば少し切り離した議論も必要なのかなと,それがバランスのある結論につながるのではないのかとも思っています。

  バランスの延長でもう一つ申し上げると,包括担保については,非常に有用な,うまくいけば実用性の高い担保であると理解しておりますけれども,他方,弁護士はいろいろなところから相談を受ける立場です。先ほども出ていた労働者からも相談を受けたり,買う側からも相談を受けたり,そういう立場でもある。そのため,やはり危惧を覚える点もあるわけです。

従業員のモチベーションというものを考えたときに,仮に参考資料1-2,1-3の実行の段階で,さあ,従業員から見たときにどう見えるのか,活力のある企業になるのかということであったり,また,例えば担保権者が選任する管理者というのを考えたときに,それは取引先なりから信用してもらえるのかという,例えばそういう問題もあるのだろうと。つまり,今であれば裁判所が選んだ更生管財人が入れば,公正中立な人だろうと皆思って,一応物事は動いていくと思うのですけれども,担保権者が選んだ人なのかと見られる中で物事が動いていくということが,心理的な問題で,法律的な問題ではないのかも分かりませんけれども,どこまでうまくいくのかということも考えながらバランスある制度を作っていかなければいけないのかなと思っています。

○道垣内部会長 ありがとうございました。いや,正に心理的な問題も含めて制度設計をしていかなければならないと思いますので,貴重な御発言かと思います。

  ほかに,もちろん2回目の御発言であっても全然構いませんし,御発言いただいていない方でいらっしゃれば,お願いいたします。

○片山委員 片山でございます。貴重な時間をお与えいただいてありがとうございます。これまで実務家の委員の方々からの御発言が多かったですので,民法研究者の視点から,今回の部会資料1の第2の総論の担保法制全体の構成に関連してという部分について,3点ほど申し上げたいと思っています。

  まず第1は,集合動産という概念をどのように定義して規律していくかということであります。部会資料1では,個別動産と集合動産を対比して,集合動産については集合動産譲渡担保に関する判例法理,これを前提に,構成部分が変動する動産の集合体として,主として在庫担保を念頭に置いているということかと思います。しかし,この点は,先ほどから御意見が出ている事業担保権とか事業成長担保権,これは恐らく部会資料1ですと10ページの第9のその他,3の包括的な担保制度という位置付けになってしまうということになるのかもしれませんが,比較法的に見ますと,UCCとかUNCITRALだけではなく,大陸法系での立法例でも,そもそも民法における集合動産というのは,在庫のような流動資産だけではなく,事業資産や営業財産,知財とかのれんも含んだような,収益を生み出す固定資産の集合体も含めた広い概念として立法化を行うのが一般的のようであります。

  仮に今回の法改正の中で,集合動産概念を判例が用いるような集合物概念を前提として立法するということになりますと,今の判例法理を追認するというだけで,その域を出ない立法となってしまいますし,資金調達のニーズに十分に応えることができないという面もあるかと思います。また,諸外国の立法例と比較すると極端に矮小化した立法を行うことになってしまうのではないかという点も懸念されます。これは,もちろんその他の包括的な担保制度という形で議論をして立法化していくということであれば,それはそれで問題がないということなのかもしれませんが,むしろ一歩踏み込んで積極的に広義の集合動産概念を民法の中にビルトインしていくという選択肢も十分に検討に値するのではないかと考えている次第でございます。そういう意味で,集合動産という概念をどのように規律していくかということをお考えいただきたいというのが第1点です。

  それから,第2点は,動産担保と債権担保を区別して二元的に構成するということの意義でございます。この集合動産と集合債権を区別していくということに関しましては,近時の諸外国の担保法制の動向にも合致しているという印象を持っております。いわゆる帰納的なアプローチで担保を一元的に把握するという議論が随分行われてきましたけれども,近時はむしろ金融担保,すなわち債権とか有価証券を目的とするような担保につきましては,例えばコントロールのような概念で占有担保化構成をするなどして,公示とか実行といった点において,他の動産担保とか事業資産担保とは区別した二元的な取扱いを推進していく傾向が非常に強いと思っております。

  その点からは,今回の諮問にある動産や債権等の担保を目的として行う資金調達の利用の拡大という点からの担保法制の見直しとしましては,大別して2つの視点があって,一つは,不動産を除く事業資産の集合的な担保価値をいかに把握するかという点と,もう一つは,債権の担保化の新しいルールの設定を模索するという点とを分けて,二元的に考察していくということは賛成できる点かと思っています。

  そのことを前提とした上で,集合動産については在庫,いわゆる狭義の集合物に限定せずに,広く企業資産を担保化する,そういう制度設計をしていくということ,それから,債権担保につきましては,債権譲渡法制との関係で難しい点はあるかと思いますが,登記等の公示の緩和まで踏み込んだ議論ができればと期待しております。

  3番目ですが,所有権担保という概念です。これは先ほど事務局の方から,取りあえず便宜的に使っているという御説明であったわけですけれども,部会資料1の3ページの2の担保制度の種類のところで,担保目的取引規律型の規定を設けるという点ですけれども,帰納的アプローチに基づく動産非占有担保の規律については,諸外国の例を見ますと,やはり動産抵当であるとか,非占有動産質というような制限物権型の担保をデフォルトルールとして設定し,当事者の法的性質決定の如何を問わず,動産抵当とか非占有動産質を擬制する,そういう法制になっているのではないかと思われます。

  そこで,デフォルトルールとしまして所有権担保のカードをここで切ってしまうのは,確かに判例法理,担保実務との連続性ということで受け入れやすいという面はあるかとは思いますけれども,やや担保法制としては世界に例を見ない立法になってしまうのではないかとも思っております。

  他方,諸外国でも近時は債権担保や金融担保といった領域では,所有権移転型の担保,すなわち譲渡担保を脱法的な位置付けではなく,正面から排他的担保として認めていこうという傾向が看取されます。例えばフランスでは,新しい担保法改正草案の担保の定義の中で,優先権付与型の担保と排他権付与型の担保の二元的な把握を行うという提案がなされているところでございます。そういう意味では,動産一般については優先権付与型としつつ,他方,必要な場合に切り札としての所有権担保を用いていくというような制度設計を目指すことも一つの選択肢ではないかとは思っております。

  そういう意味で,所有権担保という概念をどういう場面でどう使っていくかということも慎重に御検討いただければと思っております。

  長くなりましたが,3点申し上げさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○道垣内部会長 ありがとうございました。一つ一つについてコメントすべき立場にはないのですが,最初のお話は,どちらかといえば集合動産概念をビルトインするというよりは,事業財産という概念に変えた方がいいと,そういう感じの御発言だったように理解したのですが,そうではないですか。

○片山委員 事業という概念を持ち込むということも1つの方向性かと思いますけれども,必ずしも事業概念で把握できない固定資産の集合体もあるでしょうから,事業概念と集合動産概念とをどう結び付けていくかという点を御検討いただければということかと思います。

○道垣内部会長 すみません,ありがとうございました。

  ほかに御発言ございませんでしょうか。

○藤澤幹事 資料の第2の点について,3点ほどコメントさせていただきます。

  まず,担保の目的財産についてなのですけれども,これまでも先生方のお話にも出ていましたように,動産債権以外にも企業が保有する経済的価値を有する財産というのはいろいろあります。このうち既に物権化しているもの,特許権とか著作権とかそういったものについては,既存の登記制度などを一元化するかどうかといった議論はあるとは思うのですけれども,それを担保化できないという問題は生じていないと思うのです。

  これに対して,例えば契約上の地位,例えばライセンス契約におけるライセンシーの地位ですとか,ビッグデータのような不競法によって保護されている地位といったものは,どんなふうに担保化することができるのかといったこと,それから,実行をどのようにすればいいのかといったことが現時点でも不明確なのではないかと思います。もしこのことが実務上,不便を生じさせていたり,金融の可能性を狭めていたりするとすれば,こういったテーマについても検討の対象とする必要はないでしょうか。

  次に,二つ目のコメントなのですけれども,今,片山先生がコメントしていらした担保制度の種類のところについてです。資料では,担保目的取引規律型を採用するのはどうかという御提案がされていますけれども,今次の担保法改正の背景には,世界銀行によるDoing Businessのランキングにおいて,日本のGetting Creditの項目の評価が低くて,動産等の財産についてルールの明文化が要請されているということがあるようです。その評価の指標の中には,統一的なlegal frameworkがあるかという項目がありますが,担保目的取引規律型のルールを採った場合には,民法に動産質の制度もありますし,特別法上の自動車抵当,航空機抵当といった制度もありますし,それと並んで譲渡担保制度が明文化されることになり,改正によってこの指標をクリアすることができるのかといったことについて,少し問題意識を持っています。

  それから,3点目に,対抗要件制度・登録制度の在り方についてです。これまでの御議論を伺っていると,包括担保についての議論がすごく盛り上がっていましたが,例えばアメリカのUCC第9編を見れば,そこに「包括担保」という名前の付いた制度があるわけではありません。設定契約や登録に際して担保目的物の包括的な記載が許容されていることや,登録制度において広く優先順位を確保できる担保オプションが存在することによって,事実上の包括担保が可能になっている状態だと評価することができると思います。このような観点からすると,今次の立法に当たって,担保権設定契約や対抗要件における特定性の要件を緩和することはできるのかとか,緩和するべきなのかとか,そういったことを考える必要はないかなと思いました。

  以上です。ありがとうございました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。これも1点だけ申しますと,藤澤さんがおっしゃった2番目の話で,担保目的取引規律型の場合には,自動車抵当とかとの関係という話なのですが,それは恐らく担保物権創設型を採っても同じ話で,いずれにせよ,その整理をしないとごちゃごちゃになるよという御指摘かなと理解いたしました。

  本日はせっかくの最初の機会ですので,なるべく多くの方にお話をいただきたいと思います。少し休憩を置きますと,またむくむくとしゃべりたい事柄が湧き起こる方がいらっしゃるかもしれませんので,今,3時18分でございますけれども,これから15分ということで,3時35分まで一旦,休憩を置きまして,それから再開をして,更にいろいろなお話を伺えればと思いますが,それでよろしいですか。

  それでは,3時35分まで一旦休憩を致します。

          (休     憩)

○道垣内部会長 それでは,15時35分に再開をするということにしておりましたので,議論を再開したいと思います。

  もちろん今まで御発言された方でも結構でございますし,そうでない方ももちろん結構なのですが,今後の議論の在り方等々につきまして,御自由に御発言いただければと思います。

○青木(則)幹事 ありがとうございます。私は公示制度ないし対抗要件制度に関心を持っておりますけれども,特に,先ほど藤澤先生がおっしゃったような世界銀行の指標でありますとか,あるいはUNCITRALのような国際水準との関係をどう考えていくのかというのがなかなか難しい問題だなと思っております。

 判例にみられるルールを明文化すること自体がそういった国際水準へのアピールになることは確かだと思いますけれども,その中身が国内のニーズを満たすものであれば何でもいいのかというと,そういうわけにもいかないのではないか,国内のニーズと国際水準が必ずしも一致していないようなところもあるかと思いますので,それをどう考えていくのかが難しい問題になるのではないかと思っております。

 例えば,占有改定の方法による対抗要件の具備を引き続き認めるべきかというような論点がありますけれども,国内のニーズだけを考えると認めてもよいが,国際水準を考えるとできるだけ排除すべきではないかということになるのかと思います。ただ,従来,占有改定によって対抗要件を具備してきた最先順位の譲渡担保のようなものについては,公示制度を入れることによって担保権をほかの第三者との関係で弱めていくというような側面もございますので,それがどこまで認められるのかといったようなことが問題になるのかと思っております。

  また,もう1点ですが,先ほどから事業包括担保のニーズのような御指摘がありましたけれども,そのニーズを素直に取り入れられそうな制度としては,ネガティブプレッジのような制度も検討の余地があるのではないかと思います。ただ,これもネガティブプレッジを対抗要件を具備できるようなものにしていくというのは,恐らく国際水準に反するということになってしまうのだと思います。

 こういうような形で,幾つかニーズとのずれがあるようなところがあるかと思っておりますので,なお検討していきたいと思っております。

  以上でございます。ありがとうございます。

○道垣内部会長 ありがとうございました。ネガティブプレッジについて対抗要件を設けるというのが,という話は余りお分かりにならなかった方もいらっしゃると思いますので,私の方で少し付言をしますと,ネガティブプレッジというのはほかの担保を付けては駄目だよという約定のことですが,それについて,ほかの担保を付けては駄目だよという約定があるということを何らかの形で公示するというシステムというのは普通は考えにくくて,ネガティブプレッジ違反があったら,例えば弁済期が到来するだとか,そういう話になるだろうという話なのだろうと思います。もちろんネガティブプレッジ自体がある一定の物権を設定する効力を持つという議論もありますので,そうなると,そこで公示という話も出てくるのかもしれませんが,そういうふうな問題があるというお話かと思いますが,私の付言で正しいでしょうか。青木さんからもオーケーをいただきましたので,そういうことで。

  ほかに御意見いただければと思います。

○沖野委員 ありがとうございます。既にいろいろ御指摘のあった点について,共感するところも多いのですが,そういう点を繰り返すことはせずに,総論的な話について少し申し上げたいと思います。

  一つは,判例の扱いについてです。判例が確立している,また,これまで動産や債権を用いた実質的な担保には判例が非常に大きな役割を果たしてきたということがあります。ただ,一方で,たとえそれが確立しているところも,解釈論ゆえの制約の下で展開された議論であるということは十分念頭に置いた方がいいのではないかと考えているところです。集合物の概念などは,そういうものかと思います。ですので,立法論としてあるときには,判例から離れるということも十分考えられるところだと思っております。

  2点目としまして,登記制度についてです。今回の部会資料におきましては,対抗要件制度のところで言及されており,そもそも対抗要件制度あるいは公示や優先関係の決定基準の,その在り方自体も,言わば既存のものを当然の前提にせず,制度を考えていくことも十分あり得べしということなので,必ずしも書かれていないのですけれども,そういう新しいファイリングなどの可能性もあるところですが,現行法の制度を用いるときも,登記制度についてはかなり見直しの要望ですとか,理論的にも見直しの可能性というのがあるのではないかと考えているところです。

  ファイリング制度について言及しましたので,また対抗要件についても言及しましたので,あわせて申し上げますと,現在の担保の一般的な考え方というのは,対抗要件の具備の順序による優先関係の決定というのが基本であって,当然優先ですとか,さらにはその調整ということもあるかと思いますけれども,ただ,その原則というのをどこまで重視すべきかということについては,少し考える余地があるのではないかと思っております。対抗要件の具備方法による強弱というのがあり得てよいように思いますし,対抗要件と部分的に切り離して優先関係を決定していくという方策も十分考えられるべきではないかと思っているところです。これ自体は資料の3ページの3のところですとか,他のところでも書かれているところでありますけれども,その点を改めて申し上げておきたいと思います。

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時間の順序以外に優劣を付けられるのでしょうか。

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  最後は,立法の形式についてということですけれども,今回は担保法制の見直しということですので,どの立法というようなことではなく,担保に関する法制の見直しということですから,必ずしも民法に限られないのだろうと考えております。そのことは,何らかの制度を作っていくときに,必ず民法に置くということが想定されるわけではなく,逆に言うと,立法の形式自体は最後の出口のところなので,それに制約されることなく検討していくということなのだろうと理解しております。そのような理解でよろしいかというのを確認させていただければと思います。

○道垣内部会長 最後は質問になっていたのですが,その質問の内容が少し私は理解できなかったのですが。

○沖野委員 申し上げたかったのは,例えば,特定の包括的な担保制度というのは,むしろこれは特別法でやるべきではないかと,民法から見てということですが,そういった立法の形態というのはいろいろあるという前提でいろいろな制度を考えていくということなのかなと思っておりますけれども,そういう理解でよろしいかということです。

○道垣内部会長 本日の部会資料1を作られた方には,その作られた方の御意見があろうかと思いますけれども,例えば事業担保とかそういうものについて,特別法にするのか,あるいは特別法にするとしても,この部会で十分に議論するのか,中に埋め込むのか,そういったことは正に議論によって決めていけばよい問題だろうと思います。特別法にするということを前提としながら,さらにこういうものを特別法として作るべきだというふうな御意見を今後,議論の中で出していただくことは一切差し支えないのだろうと思いますし,また,民法の中にそういった制度を埋め込むべきだ,あるいは埋め込むべきでないという議論も当然に可能だろうと思っておりますが。それでよろしいでしょうか。何かそれについて,沖野さんの方で,こういう方向ではないかという御意見があるのならば,続けてお願いできればと思いますが。

○沖野委員 今おまとめいただいたような形でお願いできればと私自身は思っております。

○道垣内部会長 ありがとうございます。

  ほかに御意見ございませんでしょうか。佐久間さん。お願いします。

○佐久間委員 2点発言をさせていただきます。

  1点は,包括担保というか,特に事業担保権,あるいは事業成長担保権ということに関連してです。それぞれの御提案は,なるほどもっともだなと思っておりまして,大きな基になるところは今回の担保法制の改革全体を通しても共通していて,結局のところ,融資がされるべきところにきちんと行き渡るようにしましょうねというところにあるのだろうと思っております。

  その観点で少し心配なところがございまして,例えば包括的な担保を誰かに取らせたということになりますと,それに見合った融資が十分にされないと全くもって意味がないということになるわけですね。そうだといたしますと,包括的な担保,どういう仕組み方でもいいのですけれども,それを仕組むときには,きちんと担保に見合う融資が,一旦されるだけではなくて,場合によっては,継続的にある程度はされていくというような措置を,法的なものなのかどうかは分かりませんけれども,きちんと講じておかないと,ひどい事態になるのではないか。誰かに包括的に担保を与えたために,個別の担保を別の者に与えることがなお可能であったとしても後順位でしかないとなると,包括的な担保によって融資が十分に受けられない場合,個別の担保を出したくても応じてくれる人もみつからず,包括的な担保の設定のためにかえって受けられる融資の総額が少なくなるというようなことが,場合によっては心配されるかなと。

  そういう観点からは,包括的な担保を,例えば特別法を作って,あるいは,今ある特別法を改正して設ける場合には,それに即して融資が十分にされるように,あるいは債務者が困った状態にならないようにする措置を付加することが必要ではないかと思っています。

  それに対して,先ほど少しどなたか,お二人ぐらいおっしゃったのだと思うのですが,民法の制度というか,一般的な制度として,広く担保を取ろうと思ったら取ることができて,その公示も,ファイリングでもいいのですけれども,何らかの形でできるというようにすることが考えられる。確かに考えられるとは思うのですけれども,そのようにしますと,それに見合う十分な融資が行われないというときには,過剰担保になるかもしれませんし,もう一つ心配なのが,公示はされている,調べてみれば実際には担保の範囲は限られているということになっていたとしても,見掛け上はものすごく広く担保が取られていて,制度の理解が非常に進んだ段階ではいいのかもしれませんが,そうでない段階では,個別の融資になかなか応じにくいという,見掛け上の過剰担保というと,いい言い方ではないのかもしれませんが,そういったことが起こり得ないのかな,そういうことが起こっては困るな,という心配を致しました。議論する際には,そういう点にも留意した方がいいのではないかと思ったのが1点です。

  もう1点は,それと少し関連するような関連しないようなことなのですが,Doing Businessの世界ランキングとの関係なのです。欧米では常識化していることが我が国では常識ではない,それはきっとそうなのだろうと思うのです。ただ,我が国においても,取引社会は当然のことながら進展してきたわけで,取引慣行という定着しているものがある。その中で融資をより多く引き出せるような法制はどういうものだろうかと考えたときに,必ずしもDoing Businessの世界ランキングを上げることにつながらないような方策の方が,我が国の実情に照らせば,いいのではないかということだってあり得ると思うのです。

  そのときに,これは質問になってしまうのかもしれませんが,どの程度世界ランキングを,ぶっちゃけた話,意識しておく必要があるのでしょうか。私は,個人的には,まあランキングの順位を上げることも大事だけれども,それよりは融資がきちんとできるようになった方が,とは思うのですけれども。でもまあ,そういうことではないのだということもあるかもしれませんので,2点目として,世界ランキングをどの程度意識した方がよろしいのかということを,笹井さんに答えてくれと言っても,答えにくいのかもしれませんけれども,取りあえず笹井さんぐらいしか答えてもらう人がいないので,可能であればお願いいたします。

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担保とビジネスランキングの関係が大きいとは思えません。

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○道垣内部会長 ありがとうございました。笹井さんに御指名がありましたが。

○笹井幹事 確かに答えにくい問題ではあるのですけれども,御承知のようにDoing Businessにつきましては,2030年までにG20で1位を目指すという政府目標が示されているところでございます。したがいまして,私どもといたしましては,行政府の一員としてこの政府目標も意識しながら取り組んでいくことになります。

  ただ,この部会がどういう形で議論がおまとめになるのかというのは,それはこの部会における意思決定の問題ですので,そこはそれぞれの委員,幹事のお考えがあろうかと思います。例えば今,佐久間先生は世界ランキングを上げることにつながらないような結果の方が我が国の実情に照らせばよいこともあり得るとおっしゃいましたが,それはそれでもちろん一つの御見識であろうと思います。

  したがいまして,それぞれのお立場から担保法制の在り方について議論を尽くしていただきたい,その中でどういう形で取りまとめていくのかということにつきましては,部会での議論を見ながら,相談させていただきたいと思っているところでございます。

○道垣内部会長 よろしいでしょうか,差し当たっては。

  ほかに何か,最初の段階での御発言ございませんでしょうか。

○加藤幹事 加藤です。よろしくお願いします。私から3点コメントさせていただきます。

  1点目は,株式や投資信託受益権など,ペーパーレス化した有価証券の担保制度については改善の余地があるのかなという気がしています。これらの有価証券,元有価証券につきましては,社債株式等振替法に基づき,振替口座簿の記録によって権利関係が定まるとされているわけですけれども,実際にはそれほど多くの権利関係が振替口座簿によって定まっているわけではない気がいたします。ですから,仮に新しい担保制度を検討する際には,可能であれば,振替口座簿に記録できる情報を拡充して,担保権者間の優先劣後関係なども明確に定めることができるようにしてはどうかという気がしております。ただ,これは振替機関のシステムの更新の時期と合わないと改正できないという問題もあるのですけれども,検討はやはり,してはどうかと思っております。

  2点目は,部会資料1で,普通預金口座を目的とする担保について検討してはどうかということが御提案されていました。この点について,私は全く異存ありません。むしろ,普通預金口座を目的とする担保を検討するのであれば,証券口座を目的とする担保というものについても,つまり,証券口座に記録された有価証券を包括的に担保に取るということも検討に値するのではないかと思います。ただ,これも証券会社及び振替機関のシステム対応の問題はありますけれども,やはり重要な問題ではないかと思います。

  最後は,暗号資産のように法的性質が必ずしも明らかではない財産というものが今後,増えてくる可能性があります。そうしますと,こういったものを担保化できた方が,やはり資金調達の便宜というものには資する気がします。これも流動的な面がありますけれども,こういった,これまで法的性質が債権,物権というふうになかなか区切ることができないような財産というものが出てきているということも意識しながら,担保制度の検討などを進めていければよいのではないかと個人的には考えております。

  私からは以上です。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

○亀井幹事 2回目,申し訳ございません。

  今,佐久間先生の御指摘について,私のほうからも若干,コメントさせていただきたいと思います。

  聞こえますか。

○道垣内部会長 聞こえますよ。

○亀井幹事 ありがとうございます。今,佐久間先生の御指摘されたDoing Businessの点について,私から一言御発言させていただきたいと思います。特定の書物のランキングを上げる,下げるということはさて置いても,日本の事業環境を世界に比べても遜色ないものに高めていくという観点で,この制度を議論する必要があると思います。例えば,他の国ではできることが日本ではできない,ということのないように,また,他の国と比べても資金調達がしやすい事業環境の整備,そういった制度設計を是非お願いしたいと思います。そのときに諸外国でどういった取引ができているのかというのは当然,参考にすべきだろうと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。ただし,アメリカ以外も視野に入れて,世界というものを考えていくべきだし,いきたいと思います。

  ほかにございませんでしょうか。

○水津幹事 1点申し上げます。例えば,部会資料で挙げられている物上代位を例に取りますと,差押えや債権譲渡等との関係も明確にした方が望ましいのであれば,現行の民法304条の規定やこれを準用する規定を前提として,そのような明確化を最初から断念するのではなく,むしろ,この機会に現行の民法304条の規定やこれを準用する規定を併せて改めることを検討した方がよい気がいたします。このように,新たなルールを定める場合において必要があるときは,関連する現行の規定の見直しも含めて検討していただければと思います。

○道垣内部会長 ありがとうございました。全てのことですね,新しい担保物権を創設するという話も含めて,余り最初から議論の幅を狭めるのではなくて,いろいろなことを考えながら全体をバランスよく作っていかなければならないということだろうと思います。

  ほかに御意見ございませんでしょうか。

○尾﨑幹事 すみません,まだ話しておられない方がおられますが,少し時間が空いたように思われましたので発言させていただきます。

  何点か,我々が申し上げた事業そのものを担保にする制度について,例えば,バランスをとった制度整備が必要ではないかといったような御意見がありました。金融庁の研究会でも,そのバランスをどうやってとるかということは非常に重要な問題だと議論されてきました。例えば,労働者の賃金債権や取引先との関係での商取引債権を優先させる必要があるのではないかといった御議論もありまして,それは結局のところ事業継続の観点から,そういったものを保護しないと望ましくないからだといったような御意見もありました。引き続き,この制度について議論する際には,バランスをとった制度整備というものを考えていきたいと考えています。

  それから,もう一つ,事業成長担保権を使う際の与信者間の競争についても言及がありましたし,さらに,事業成長担保を取ったときに,十分な融資がされない可能性がないのかといった御議論がありました。我々は,そもそも金融機関が事業を理解し支援をするような競争,そういったものを促すことが重要であると考えておりまして,結局のところ事業成長担保権の担保権者の地位をめぐっての競争がなされると,つまり,事業成長担保権を取っておきながら十分な融資を行わない金融機関があれば,その事業者の方は別の金融機関を選ぶことができるわけで,そのためのスイッチングコストなどを十分に低減しておくということが重要なのではないかといった議論を行ってきたところであります。適切な融資が供給されるような,競争が促されるような制度設計というものを検討することが重要であると考えています。

  いずれにしましても,まだ見ぬ制度でありまして,実務も共に立ち上がっていくべきものと考えておりますので,早期に具体的な制度について議論ができますと幸いでございます。10年,20年先の実務を見据えてお知恵をいただければと,是非この部会で議論していただければ有り難いと考えております。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかに,いかがでしょうか。御発言いただいていない方もいらっしゃいますが,特に発言をしなければならないというオブリゲーションがあるわけではございません。よろしいでしょうか。

  私これから少しお話をしますが,別段私が話をするというのを,これでもうやめるということと結び付いているわけではございませんので,私が話をしても,その後幾らでも続けていただいて結構なのですが,少し話の流れを整理しておきたいと思います。

 皆さんの御意見としては,最初,事業担保の話から出まして,金融庁の方のプレゼンテーションというのがあったわけですが,これはどちらかといえばモニタリングを中心として,企業価値を高め,倒産しないようにコントロールしていくために事業全体を押さえるという発想なのではないかと思います。それに対して,同じく事業担保とか,包括的に担保を取ると申しましても,実行を前提とする,実行の中には,ばらばらに売るということも含めた実行も念頭に置きながら発言をされた方もいらっしゃったと思います。

  そうなりますと,事業の担保化といっても,どういうふうな,これは金融庁のレポートに正に書いてあることですが,担保の機能というものの中のどれに着目した形の事業の担保というものを考えるのかということが若干まだ――それは片方に決め打ちをしなければならないわけではないのですけれども――分かれている状態にあるのかなと思います。

  その際には,しかし,いずれにせよ事業全体を担保に取るということになりますと,融資がきちんとされるようにしないと,全部を担保に取った上で貸してくれないということになっては困るという話があったのに対して,それ自体が金融機関の競争と位置付けるというふうな形で何とかできないかという話もあったかと思います。

  さらには,包括的に担保に取るという際に,集合動産というふうな,第一倉庫内にある在庫商品という形の概念だけではなくて,事業用の財産全体を,事業用とは限らないですが,一つの集合物というか,一つの包括的な何か財産体として担保化するというふうな,そういう概念設計といいますか,そういうふうな概念をより,彫琢していくということも必要なのではないかという話も出たかと思います。

  他方で,事業全体の担保化の話と別個に,やはり区分して担保化するということのメリット及び簡易性というのを強調する御意見もあったかと思います。そうなると,あるものについて非常に簡易で安価な方法によって担保設定というのができるということが制度設計として求められると,こういう御意見もあったかと思います。さらに両方に関係する問題として,取り分け事業全体の担保化かもしれませんが,倒産の局面で他の債権者等との関係をどういうふうに考えるのかという,倒産だけではありませんけれども,重要な問題として提起されていたかと思います。

  それはある種,いろいろな絡み合った一つの問題点なのですが,もう一つ,本日の部会資料1との関係では,新しい担保物権というものを創設する形で立法論というのを考えていくのか,それとも,現在の譲渡担保のように所有権の移転という形を取った取引が担保目的であるという際に,その内容を規律するという方法で考えていくのかという論点があり,本日は,その新たな担保物権,物権として新たな物権を創設するという形の立法というものを最初から排除すべきではないという見解が強かったかのように理解しております。

  ただ,これは大変微妙な問題がございまして,と申しますのは,現在,仮登記担保法というものについて,仮登記担保というのは物権を創設したものであると書いてある教科書が多いのですが,これは,少なくとも立法当時の議論ないしは法文上の文言とは反した議論なのですね。代物弁済予約とか売買予約をするときに,それが担保目的であったときに,その契約の効力は以下のようになりますというのが「仮登記担保契約に関する法律」でありまして,仮登記担保権という物権を創設したものではないというのが立法当時の議論だったわけなのですけれども,現在では仮登記担保権という物権があると見た方がいいという見解は結構強い。

  そうなると,仮に所有権移転の契約を規律するという法制度というのを作っても,新たな担保物権が創設されたのだというふうに議論されて運用されていくということは十分にあり得るわけであって,そう考えると,2つの見解が明確に対立するものかどうかは分かりません。ただ,そこと絡んでくるのが,先ほどの国際的に分かりやすい基準という問題で,クリアに新たな担保物権を作るのだと書いていた方が分かりやすくていいのではないかという問題はあろうかと思います。

  さらに,3番目のクラスターとして,クラスターというのは最近は特定の意味で使われますが,まとまりとして,振替証券とか,暗号資産とか,さらには普通預金口座を担保化するというのだったら,口座の担保化概念との関係で,証券振替の口座の担保化というふうなこともあり得るので,いろいろそこら辺の不安定といいますか,分かりにくいところもきちんと調整すべきではないかという意見もあったかと思います。

  もちろん今私が申し上げたのに尽きるわけではありませんで,工場抵当との関係とか,いろいろな御意見があったところですし,さらには動産と債権を目的物ごとに区別して考えるのか,それとも包括性を重んじるのかというふうな議論もあったところですが,大体そういうふうな話がされたのかなと私は理解をしたところであります。勝手な私のまとめかもしれませんけれども,それが正しいわけでもないと思いますし,何か更に御意見がありましたら,お聞かせいただければと思います。

○横山委員 まず,規定の仕方に関して,担保権の設定として規定するのか,それとも取引型でするのかという点については,海外に対してのみならず,国内的にも分かりやすいかどうかも考えるべきではないかと思いました。

  この点,細かいことかもしれませんが,用語法について,今回,留保所有権とか担保所有権という言い方がされています。所有権と表現しつつ実質は担保ですよねということであれば,譲渡担保または留保担保という言葉を用いてもよいのではないかと思います。

 また,内容に関しては,債権譲渡も含め,様々な財産権について適用が予定される担保が想定されているようですが,帰属移転型,帰属留保型の担保と構成すれば,あらゆる財について適用されることが可能ですので,動産と,債権を主眼としつつ,適用範囲をより広げることを念頭に検討するという視点もあってもいいのかなと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。

  ほかには何かございますでしょうか。阿部さん,お願いします。

○阿部幹事 すみません,私が思いましたのは,結局この担保法制に関する検討というのは,どういう金融の在り方が望ましいかという検討の表裏なのかなと思いました。例えば,今日の部会資料1の各論のところで,同一の不動産に複数の担保所有権を設定された場合の取扱いといった話もされていましたけれども,これは,いろいろな債権者が同一の債務者の同じ目的物を担保として,いろいろな人が少しずつ金融をする,そういう在り方を前提とするものだと思うのです。劣後担保権の効力も,設計次第ではそういうものを促進していくということにもなると思うのですけれども,これに対して,最後の方で扱われていた包括的な担保制度というのは,どちらかというと,そこに二重,三重にいろいろな金融機関が担保を設定して,少しずつ金融して,というものではなくて,一つの金融機関が包括的に担保を取ったら,その金融機関がその事業者の資金需要を全面的に面倒を見る,そういう金融の在り方というのを望ましいと,そういう前提があるのではないかなと思うのです。なので,そういう各種の担保制度が前提にしているというか,念頭に置いている金融の在り方を考えて,どういう金融の在り方が望ましいのかというところを視野に入れながら,この担保制度を設計していくということが必要なのかなと思いました。その先,どちらが望ましいと私が今考えているかというのは,必ずしも定見がないのですけれども,そういうところまで意識する必要はあるのかなと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。非常に重要なポイントだろうと思います。

  一言だけ,私の意見になってしまいますけれども,申しますと,UCCで包括性のある担保権が取れることになったからアメリカで包括的な担保制度が発展したということよりも,やはり鉄道金融とかにおいて,包括的にある一つの金融機関が全部を取るという融資慣行があって,その上にUCCが存在している,その後にUCCが存在しているのではないかと思うのです。担保法制度を何か仕組むことによって融資慣行というのを変えるというふうにもくろむのかというのは非常に難しい問題で,少なくとも他国が担保制度を変えたことによって融資慣行が変わったという因果関係にあるとは言い切れないのだろうと思います。もちろんそれがあってはいけないということではございませんし,そういう萌芽があるのだったらば,その萌芽を後押しするように担保制度を整えるというのはあるのかもしれませんが,そんな気もいたします。すみません,要らない話をしてしまいました。

  ほかに御発言,今日の段階では,これくらいでよろしいでしょうか。特にやめたいわけではないですよ。

○藤澤幹事 ありがとうございます。先ほどは第2の全体的な部分についてお話しさせていただいて,今の阿部先生の御発言,道垣内先生のお取りまとめも全体像に関わるところだったかと思うのですけれども,もう少し個別の部分についてコメントさせていただくということも可能でしょうか。

○道垣内部会長 もちろん御自由にお願いします。

○藤澤幹事 ありがとうございます。第3の個別動産を目的とする担保権の効力についてなのですけれども,ここでは主に設定者の使用収益権限と物上代位について挙げられているのですけれども,個別動産担保の担保権設定者が担保目的物を無権限で処分したという場合の処理について,項目を立てて検討する必要はないかというようなことを思いました。

  具体的には,無権限処分があった場合,第三者が目的物についての設定者留保権を承継取得すると考えるのか,それとも,そもそも何の権利も取得しないと考えるのか,この辺りについて意見の対立があったように記憶しておりますので,この点について検討の必要があるのではないかと思いました。

  それから,第5の集合動産のところについても同じように,担保権設定者による処分について関心を持っております。こちらには設定者が通常の営業の範囲内で個別動産を処分し得るというようなルールが提案されていますけれども,これは強行規定的なものと考えるべきなのでしょうか。集合動産に含まれる個別動産の処分に際して,例えば担保権者の許可を必要とするといった合意とか,処分の性質にかかわらず一定数量をキープすることを求める合意といったものも考えられますけれども,このような合意は有効なのかとか,このような合意に反して行われた処分は無権限処分ということになるのかとか,そういうようなことを考えていく必要があるのではないかと思いました。

  それと併せて,こういった合意との関係で,第三者をどのように保護するのかということが問題になります。第三者保護については民法192条の解釈で行くのか,それとも集合動産担保に関して192条の特則となるような第三者保護ルールを用意するのか,この辺りについて検討する必要があるのではないかと思いました。

○道垣内部会長 ありがとうございました。設定とか実行,倒産というふうな話を書きますと,真ん中のところといいますか,設定後,最終的な実行に至るまでの間の法律関係の検討が不十分になりがちになるので,そこを気を付けるべきであるということかなと思いました。ありがとうございました。

  ほかに何か,いかがでしょうか。

○尾﨑幹事 融資実務につきましては,我々も最初に申し上げたように,担保制度を設けると,実務があしたからころっと変わってしまうということではないのだろうと思っております。そんな単純なものではないし,また,強引に変えるようなやり方は弊害もあり望ましくないとも思います。一方で,今の融資実務が必ずしも全く改善の余地がないものであるとも思っていません。その改善のために,金融機関におかれても,金融庁においても,やはり事業者の事業の内容や将来性をよく見た上で成長資金を融資するという方向性,そういったものに今,取り組んでいるところであります。そうした中で,成長資金の融資に取り組む上で,制度上の後押しも必要だと考えております。制度というものは当然のことながら,慣行に対して一定の影響力,一定の動機付けを与えるものですので,いま日本に求められている融資実務を進める上で,制度もより望ましく,それをより後押しできるものになることが,成長資金の融資に取り組むため,日本の企業や経済の成長にも資するような環境を整備するためには必要ではないかと思う次第です。

○道垣内部会長 ありがとうございました。制度で変えるというのではなくて,変えることの足を引っ張らないように制度的な受皿を用意しておくと,そういう話かなとも思いました。

  ほかに何か今の段階で,ございますでしょうか。

○亀井幹事 今後の審議の進め方やスケジュールについてお聞かせください。この部会の取りまとめを行う時期について目処というものがあれば,教えていただきたいということと,審議の過程で,例えば金融機関の皆さんだとか事業者の皆さんのヒアリングだとか,そういうことを行う予定があるのかどうか,こういった点も教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○道垣内部会長 まず,取りまとめの時期のめどみたいなものにつきまして何かお考えがございましたら,笹井さんの方からお願いいたします。

○笹井幹事 取りまとめの時期でございますけれども,この点につきまして事務当局として何か特段の,いつまでを目標とするというような時期を定めているわけではございません。そこは飽くまで,議論が成熟したときに取りまとめを行うということでございます。

○道垣内部会長 はい。もう一つのヒアリングの問題につきましては,もちろん事務局がどのように考えるのかという問題もございますけれども,委員,幹事の皆様から,こういうふうなところの実務というものをここできちんと伺うべきだと,意見をこういう立場の方から伺うべきだということがございましたら,積極的に,事務局でも結構ですし,私でも結構ですので,言っていただければ,それを踏まえて準備をするなりしたいと思います。今の段階で,ヒアリングを一切しないということは普通考えられないかと思いますが,誰のヒアリングをする予定であるとかそういうことはなく,皆さんの御意見によって決まってくるものだと考えております。

○亀井幹事 ありがとうございます。

○道垣内部会長 なぜ中小企業庁との間では,ネット上,大きくタイムラグが生じるのでしょうね。それと,亀井さん,次回でいいけれども,スピーカーとの関係でハウリングするので,何とか調整してください。

○大西委員 フロンティア・マネジメント,大西です。2回目の発言をします。

  先ほど事業担保という話が幾つか出て,多少各論にも入るのですが,私がこの件で一つ重要だと思っているのは,担保設定をするときに,いろいろな資産に担保を付けて融資ができるという融資のしやすさという点と,最後の担保実行時にどのようにスムーズに実行を行うのかという論点です。私も再生の仕事においては,金融機関による強制執行や倒産に至る前の,私的整理というのが主流なのですが,そのときには,事業担保制度の導入が実はM&Aを促進する,こういう要素もあるかと思っているのです。そういう意味からすると,少し気になる論点というのが,この金融庁さんのレポートの27ページにもある,いわゆる会社法上の株主総会特別決議事項に当たるのか,当たらないのか,若しくは当たるとしてどの時点なのかという論点です。これがハードルが高くなると,実際はこういう制度ができてもなかなか会社によっては設定ができないようなことになるといけないので,本件をどこまで視野に入れて議論するのかは別として,少し論点としてあるのかなと思いました。

○道垣内部会長 事業財産が複数あったときに,その複数の塊であるという話だけではなくて,それが企業になるということになりますと,企業そのものの譲渡の話になってまいりますので,会社法との関係でいろいろな,また問題も生じてくるということだろうと思います。それをどういうふうに考えていくのかというのも,一応は考えていかなければならないと思います。なかなか難しい問題も多々ありますが。

  いかがでしょうか。

  次回からは個別具体的な,といいましても徐々にということでございますが,論点に入っていくわけですが,本日お話しになりたかったのに結局お話しにならなかったとか,あるいは,次回からの部会の資料と直接関係しない問題だけれども,将来の資料を作る際にこういう観点というのも重要であるとお考えになる点も,個々的にもいろいろ今後出てくるのではないかと思います。その際は御遠慮なく事務局なら事務局,私なら私に御連絡いただきましたら,今後の議論において反映をさせていただくというふうにしたいと思いますので,ジェネラルな御発言は今回にとどまるということにはならないと御理解いただければと思います。

  本日の御議論はこの辺りでよろしいでしょうか。

  それでは,次回の議事日程等につきまして,事務局から説明をしていただきます。

○笹井幹事 次回第2回は令和3年5月11日火曜日,午後1時30分から午後5時30分までを予定しております。

○道垣内部会長 これで今回の法制審議会担保法制部会の第1回会議を閉会にさせていただきます。

  本日,私,部会長に指名していただきまして,それ自体慣れていないというのと,慣れていても結構難しいのですよね,ウェブ上の挙手と会場の挙手を見ながらやるというのは結構難しくて,いろいろ皆さんに御迷惑をお掛けいたしましたけれども,だんだん慣れていきたいと思います。本日はそのような不手際な司会にもかかわらず,熱心な御審議をいただきましてありがとうございました。それでは次回,またよろしくお願いいたします。

-了-

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

住宅ローンに伴う担保設定が出てこなかったのが少し残念です。

株式会社の役員変更登記申請(試訳)

現在 取締役A 取締役B 代表取締役A 株主AとB

5月1日から 取締役A 取締役B 取締役C(就任) 代表取締役A(辞任)

代表取締役C(就任) 株主AとB

株式会社変更登記申請書

 1.会社法人等番号  ジービズインフォ ttps://info.gbiz.go.jp/

   フリガナ     マルマル

 1.商 号             ○○株式会社

 1.本 店              沖縄県

 1.登記の事由         取締役、代表取締役の変更

  • 登記すべき事項  

「役員に関する事項」

「資格」取締役

「氏名」C

「原因年月日」令和○年5月1日就任

「役員に関する事項」

「資格」代表取締役

「住所」○県○市○町○丁目○番○号

「氏名」A

「原因年月日」令和○年4月30日辞任

「役員に関する事項」

「資格」代表取締役

「住所」○県○市○町○丁目○番○号

「氏名」C

「原因年月日」令和○年5月1日就任

1.登録免許税         金10,000円     (     )印紙

 1.添付書類

辞任届                             1通

株主総会議事録                         1通

株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)1通

就任承諾書                               1通

印鑑証明書                           1通

本人確認証明書                             1通

上記のとおり登記の申請をします。      

      【令和  年  月  日】

                申請人    沖縄県【               】

○○株式会社  

                 代表取締役  C       (    )会社印

                 連絡先の電話番号 【            】

         那覇地方法務局御中

(    )会社印

pplication for Registration of Change of Directors of a Stock Company (Trial Translation)

Present

Director A

Director B

Representative Director A

Shareholders A and B

From May 1

Director A

Director B

Director C (appointment)

Representative Director A (resignation)

Representative Director C (assumed office)

Shareholders A and B

Application for registration of change of stock company

 1. Company No. G-Biz Info ttps://info.gbiz.go.jp/

1. Company name

 1. Business name ○○ Corporation

 1. Head office: Okinawa Prefecture

 Reason for registration Change of director and representative director

1. Matters to be registered  

Matters concerning officers

Qualification” Director

Name: C

Date of Cause: Assumed office on May 1,

“Matters Relating to Officers” “Qualification” Representative Director

Qualification: Representative Director

Address: ○○-Cho, ○○-Chome, ○○-City, ○○-Prefecture

Name: A

Date of Cause” Resignation on April 30,

Matters Relating to Officers

Qualification: Representative Director

Address: ○○-Cho, ○○-Chome, ○○-Chome, ○○-City, ○○-Prefecture

Name: C

Date of cause” Appointed on May 1,

Registration and license tax: 10,000 yen (stamp paper) 1.

 1. Attached documents

Notification of resignation 1 copy

Minutes of the General Meeting of Shareholders 1 copy

A document certifying the name, address, and number of voting rights of shareholders (list of shareholders)

Letter of acceptance of appointment 1 copy

Certificate of seal impression (1 copy)

Certificate of identification (1 copy)

I hereby apply for registration as described above.      

      March 31,

        Applicant Okinawa Prefecture

Company Name  

                 Representative Director C ( ) Company seal

                 Contact telephone number [ ].

         To: Naha District Legal Affairs Bureau

Company seal

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

                              臨時株主総会議事録

 令和○年5月1日,当会社の本店において株主総会を開催した。

    株主の総数                      2名

  発行済株式の総数                ○○○○株

   議決権を行使することができる株主の数         2名

   議決権を行使することができる株主の議決権の数     2個

    出席株主数(委任状による者を含む。)          2名

    出席株主の議決権の数                                      2個

   出席取締役 A(議長兼議事録作成者)B

   以上のとおり株主の出席があったので,定款の定めにより取締役Bは議長席につき,本臨時総会は適法に成立したので,開会する旨を宣し,直ちに議事に入った。

     第1号議案 取締役の選任及び代表取締役の選定に関する件

  議長は,代表取締役Aから辞任の申出があったため,取締役及び代表取締役の選任の必要がある旨を述べ,その選任方法を諮ったところ,出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり,一同これを承認した。議長は,下記の者を後任者に指名し,この者につきその可否を諮ったところ,満場異議なくこれに賛成したので,下記のとおり就任することに可決確定した。

   取締役 C

  代表取締役 住所 氏名

   なお,被選任者は,その就任を承諾した。

 議長は,以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ,閉会し以上の決議を明確にするため,この議事録を作り,議長及び出席役員がこれに記名する。

     令和○年○月○日                       ○○株式会社株主総会

                              取締役    A (    )会社印

(    )実印

                                   取締役    B (    )認印

                               代表取締役    C (    )実印

              ・印鑑に代えて電子署名と電子証明書も可能

(    )(    )(    )(    )

Minutes of the Extraordinary General Meeting of Shareholders

 A general meeting of shareholders was held at the head office of the Company on May 1, 2040.

    Total number of shareholders: 2

  Total number of issued shares: ○○○○

  Number of shareholders entitled to exercise voting rights: 2

 Number of voting rights of shareholders entitled to exercise voting rights: 2

    Number of shareholders in attendance (including those by proxy)      2 persons

    Number of voting rights of shareholders present at the meeting: 2

   Attending Director A (Chairman and minutes preparer) B

   Since the shareholders were present as stated above, Director B took the chair pursuant to the Articles of Incorporation, declared that this Extraordinary General Meeting of Shareholders had been duly convened and that the meeting would be opened, and immediately proceeded with the proceedings.

 Proposal No. 1: Election of Directors and Selection of Representative Director

  The Chairperson stated that it was necessary to elect Directors and Representative Directors due to the resignation of Representative Director A, and asked how to elect them. The Chairman nominated the following person as his successor and asked him whether he would accept or reject the nomination. All the shareholders present voted in favor of the nomination without objection, and the nomination was approved and confirmed as follows

   Director C

  Representative Director Address Name

   The appointee consented to his appointment.

 The Chairperson of the Meeting stated that the proceedings of today’s meeting were concluded with the above, and in order to close the meeting and clarify the above resolutions, the Minutes of the Meeting were prepared, and the Chairperson of the Meeting and the attending officers shall write their names thereon.

     General Meeting of Shareholders of XXX Corporation on March XX,

                              Director A ( ) Company seal

(Company seal) (Personal seal)

                                   Director B ( ) seal of approval

                               Representative Director C ( ) Personal seal

     Digital signature and digital certificate can be used in place of seal.

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)

 (http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html)A document certifying the name, address, and number of voting rights of the shareholder (shareholder list)

 (http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html)

証 明 書Letter of attestation

 次の対象に関する商業登記規則61条2項又は3項の株主は次のとおりであることを証明する。I hereby certify that the shareholders set forth in Article 61, Paragraph 2 or 3 of the Commercial Registration Rules for the following subjects are as follows

対象 株主総会等又は総株主の同意等の別 株主総会  Subject General meeting of shareholders, etc. or by consent of all shareholders, etc.   Agenda Item of the above All Agenda Items         

上記の年月日 令和○年5月1日Date of the above May 1,

上記のうち議案 全議案

氏名又は名称 A B  Name or Designation A B

住所 Aの住所 Bの住所 Address A’s address B’s address

株式数(株)   A1株 B1株Number of shares (shares) A 1 share B 1 share

議決権数     A1個 B1個Number of shares (shares) A 1 share B 1 share

議決権数の割合  A50% B50%

Number of voting rights A 1 voting right B 1 voting right.Ratio of voting rights A50% B50

合計 2個 100% Total 2 units 100   

総議決権数 2個 Total number of voting rights 2

 令和○年5月1日 May 1

 ○○株式会社   代表取締役C (      )会社印(Company seal)

Representative Director C

(      )会社印(Company seal)

2021年6月4日内閣官房IT総合戦略本部「行政サービス・データ連携モデル(全体編)(β版)」

行政サービス・データ連携モデル
標準ガイドライン群ID:1016

行政サービス・データ連携モデル(全体編)(β版)

2021年6月4日内閣官房IT総合戦略本部

https://cio.go.jp/guides

〔キーワード〕 個人、法人、基本情報、決算情報、財務情報、申請、届出、報告、連絡、通知証明、事例、行政サービス、制度、行政サービス拠点、支援機関、事例、イベント、報告書、会議資料、サービスカタログ、調達、デジタル手続法、ワンスオンリー、ベース・レジストリ   〔概要〕 行政機関で個人や法人に関するマスターデータや各種手続に関するシステムを作るときに参照すべき実践的データ連携モデルの全体編。このガイドに従いデータ設計を行うことで、ワンスオンリー、ワンストップ、ベース・レジストリの活用等、他機関とのデータ交換が容易かつ正確に行えるようになり、データ設計に関するコストも削減することができる。

目次

2021年6月2日. 1

1 はじめに. 4

1.1 背景. 4

1.2 全体像. 4

1) 個人データの活用場面とサービス分類. 5

2) 法人データの活用場面とサービス分類. 6

3) その他のデータ. 7

4) サービスイメージと体系. 7

5) データの基本構造. 12

6) データの入力から再利用までの流れ. 13

7) ワンスオンリーの実現. 14

8) ワンストップの実現. 14

9) ベース・レジストリとの連携. 14

1.3 導入方式. 15

1) 新規にシステムを開発する場合. 16

2) 既にシステムを保有している場合. 17

1.4 データやデータ項目名の表記に関する留意点. 17

2 基本データ. 18

2.1 文字. 18

1) 漢字. 18

2) ヨミガナ. 18

3) ローマ字. 18

4) 数字. 18

2.2 日付時刻. 19

1) 日付. 19

2) 時刻. 19

3) 日時. 19

4) 利用可能日. 19

5) 時期. 20

6) 日時備考. 20

2.3 所在地(住所). 20

1) 住所都道府県、住所町名、住所丁目以下. 20

2) 建物名等(方書). 20

3) 郵便番号. 20

2.4 電話番号. 21

3 基本ブロック. 22

3.1 個人基本情報(3情報). 22

3.2 連絡先(個人). 23

3.3 法人基本情報(3情報). 23

3.4 事業所情報. 23

3.5 連絡先(法人). 24

3.6 宛先、申請元、発行元. 24

3.7 表題等の概要. 25

4 留意事項. 26

4.1 氏名、法人名の漢字表記の扱い. 26

4.2 氏名、法人名のヨミガナの扱い. 26

4.3 本社住所の扱い. 26

4.4 外字の扱い. 26

4.5 申請者などによる押印の扱い. 27

4.6 公印の扱い. 27

1 はじめに

1.1 背景

行政機関では多くのデータを管理していますが、そのデータは独自の形式である場合が多く、データの再利用が困難であったり、外部とのデータ連携においても大きな障害になっていたりします。また、データ形式が標準化されていないと、データ連携ができないだけでなく、データの整形に多くのリソースを割くことになり、分析にも支障をきたします。AIやビッグデータの活用が注目されていますが、そのインプットとなるデータが十分に整備されていなければ、目的の結果にたどり着くのが困難になります。

欧州や米国では、行政データの標準化を進めることで、社会全体のデータ標準化につながっていくものと考え、欧州委員会(EC)は、各国の個人、法人、場所情報等が活用できるようにSEMIC[1]という行政データ標準化のプロジェクトを推進しています。米国では同様にNIEM[2]というプロジェクトが進められています。

行政においては、これまでEDINET[3]を通じて上場企業に対してデータの標準化を推進し、法人番号制度の開始と同時に開始した法人情報を収集、公開するgBizINFO[4]は、政府の推進するデータのフレームワークである共通語彙基盤[5]に準拠して開発されています。

デジタル手続法が制定されたこともあり、今後はワンスオンリー、ワンストップの実現が求められてきます。また、社会の基本データとしてのベース・レジストリの整備も進められており、個人、法人、土地の基本データだけでなく、申請情報、資格情報等の社会活動に関連したデータ全体の標準化も必要となっています。

データの標準化は、個人や法人が活動しやすい社会環境を実現するために必須の要素であり、早急な環境整備と普及が望まれています。

1.2 全体像

個人や法人が活動しやすい社会環境を考える上で、行政機関と社会の間で交換される情報を明確化し体系を整理していきます。

1)個人データの活用場面とサービス分類

個人に関するデータは、例えば下記のような場面において活用されます。

  • 転居、妊娠や出産などの申請について知りたい
  • 利用できるイベントや施設について知りたい
  • 利用できる支援制度の情報が欲しい
  • 相談に行く先が知りたい

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私が知っている現在の民間サービス

株式会社グラファー

・転出届、税証明書等の各種行政手続きのオンライン化。自治体向け。

https://graffer.jp

Civichat

・助成金以外の奨学金・給付金・支援金などの情報提供と申請代行をLINEで受取る。申請代行報酬は給付額の15%。個人向け。

https://civichat.jp/

特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやい

2021.05.28生活保護申請書作成システム PASSリリース

全国の生活保護申請窓口に提出することが出来る書式をオンラインで提供。スマートフォンで作成し、コンビニで印刷することが出来る。

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このような各場面で利用者が情報を探すためには、各組織からデータを独自の形式で提供するのではなく、比較検討しやすくするために一定の規約に沿った形式でのデータ提供が必要となります。

個人の活動を支えるデータとしては以下のようなものが挙げられます。

・個人基本データ

氏名、住所、世帯等の基本情報

・申請データ

補助金、届出等の各種手続の情報

・証明書データ

許認可、証明書、通知等の情報

・行政サービス・データ

支援制度、行政サービス案内等の情報

・事例データ

事例集等の事例の情報

・イベントデータ

展示会やセミナー等のイベントの情報

・行政サービス拠点・支援機関等データ

学校、税務署、保健所等の支援機関の情報

・報告書・会議資料等データ

調査報告書、レポート等の報告書の情報

また、行政サービスの分類体系でありメニュー体系であるサービスカタログが必要になります。サービスカタログとは、デパートでの「食品」「紳士服」「生活雑貨」のように、行政サービスを整理するときの分類の標準モデルです。欧州では各国横断で行政サービスを検索可能とするように、サービスカタログの開発が積極的に行われています。

2)法人データの活用場面とサービス分類

企業はライフサイクルの段階に応じて、様々な情報を必要とします。

例えば新しい事業を始めるなら、以下のような情報を集めるでしょう。

  • 事業のヒントを得るためのイベント情報や事例情報、報告書情報
  • 競合他社や協力企業の候補
  • 事業の立ち上げにかかわる手続に関する情報
  • 事業の立ち上げにかかわる支援情報
  • 相談窓口

また、既存事業を拡大若しくは効率化したいと考える企業も同じような情報を集めるでしょう。

  • 事業の着想を得るためのイベントや事例、報告書情報等
  • 競合他社や協力企業の候補
  • 既存事業の拡大に関する支援情報
  • 相談窓口

事業を承継、清算したい企業は、それに関連する以下のような情報を集めるでしょう。

  • 譲渡先候補
  • 事業承継、清算にかかわる支援情報
  • 相談窓口

こうした情報につながる、法人の活動を支えるデータには以下のようなものがあります。

・法人基本データ

法人名、本社所在地等の基本情報

・申請データ

補助金、届出等の各種申請の情報

・財務データ

会計年度ごとの決算の情報

・証明書データ

許認可、証明書、通知、表彰等の情報

・行政サービス・データ

支援制度、行政サービス案内等の情報

・事例データ

事例集等の事例の情報

・イベントデータ

展示会やセミナー等のイベントの情報

・報告書・会議資料等データ

調査報告書、レポート等の報告書の情報

・行政サービス拠点・支援機関等データ

税務署、商工会議所等の支援機関の情報

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・財務データ「会計年度ごとの決算の情報」は全ての法人で公開するという方針なのでしょうか。

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法人にも、業務の各場面で利用者が情報を探すために、「設備投資」「販路拡大」「雇用・人材」のように、行政サービスを整理するときの分類体系でありメニュー体系であるサービスカタログが必要になります。

3)その他のデータ

個人や法人に関する情報ではありませんが、行政機関の重要な活動として調達があります。調達データの標準は、「行政サービス・データ連携モデル 解説」(標準ガイドライン群ID:1016(2019年(平成31年)3月28日))として公表していましたが、本ガイドの改定に合わせ調達標準も本ガイドに含むこととします。

4)サービスイメージと体系

本データモデルを適用した場合の個人や法人の活動と行政内の活動のイメージは以下の通りです。

図 1 個人の活動のイメージ

図 2 法人の活動のイメージ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

情報を探しに行く、検索するのではなくて、情報が入ってくるという図になっています。

どのようなタイミングで情報を送るのか、仕組みが気になります。

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このサービスを実現するため、本データモデルは、以下のデータモデル体系で構成します。

図 3 データモデルの全体像

この全体像を効率的に実現するために、共通語彙基盤という政府で推進するデータ連携のための体系をもとに構造化したデータモデルを考えています。

例えば、連絡先を1つのデータ項目で自由記述にしていると、連絡先一覧を作成するようなデータの再利用が難しくなります。部署名、住所、メール等を別々のデータ項目にして、ブロックのように組み合わせることでデータの活用が容易になり、目的に応じた並べ替えや精度の高い検索ができるようになります。

具体的には以下のようにブロックを組み合わせるイメージです。様々な申請・届出データも、あらかじめ準備された基本部品を組み合わせてデータモデルを作っていくことができます。

図 4 データブロックの組み合わせによるデータモデルイメージ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サービスカタログモデルを採用する場合、スマートフォンでは縦表示でスクロールする形になると思いますが、見づらいと思います。パソコン、大きめの画面サイズのタブレットが必要になってくるんじゃないかなと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方、型化されたデータモデルは目的に合わないデータ項目が多くて使いにくいことや、独自データ項目を付け加えたい場合があります。

そこで、実際に導入する際には、目的に合わせて、データモデルをそのまま使ったり、必要な項目だけ部分的に利用(サブセット化)したり、独自ブロックや項目を追加(エクステンション)する等のカスタマイズをすることも可能です。

図 5 データモデルの部分利用や項目追加等のカスタマイズイメージ

カスタマイズで独自のデータ項目を付加した場合には、そのデータ項目は他組織では扱えない可能性があります。データ連携を検討する際には独自のデータ項目を定義している旨、情報提供することが重要です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

絶対に関係のない情報以外は、切り捨てるのが難しそうです。スマートフォンのアプリのように、必要に応じてではなく、画面の大きさに合わせることになるような気がします。

5)データの基本構造

個人に関する情報は、住所などを示す基本情報、法人に関する情報は、法人そのものを表す法人基本情報、それに付随する財務情報が基本となります。

関連情報は類型化することが可能で、「申請・証明系」「ドキュメント系」「施設・イベント系」に分類することができます。

申請、証明系

申請や証明等のデータは、宛先に続き、申請内容や証明事項等の内容のブロックがあり、その後に連絡先と発行者情報のブロックが付く場合が多いです。また、各ブロックの中に個人や法人の情報を含む構造になっています。

ドキュメント系

制度や事例などのドキュメントは、表題等の概要の後に内容が続き、法人情報を含む連絡先のブロックで構成されることが多いです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どちらかというと、登記申請や裁判手続きはドキュメント系に入りそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

施設・イベント系

施設やイベントも、表題等の概要の後に内容が続き、法人情報を含む連絡先のブロックで構成される場合が多いです。

6)データの入力から再利用までの流れ

申請書で入力した内容が、行政手続や内部分析で再利用され、証明書等でさらにデータが再利用される仕組みを目指します。

さらに、公開可能データは、データカタログサイト等で公開をしていきます。

図6 データのライフサイクル

7)ワンスオンリーの実現

ワンスオンリーサービスの実現のため、既に登録されている情報があれば、そのデータの活用を検討する必要があります。特に、ベース・レジストリが整備されている分野では、ベース・レジストリのデータを使うことが求められます。

ただし、再利用対象のデータの正確性や最新性に問題があったり、データの取得が困難であったり等の理由で再利用できない場合、クレンジングしたデータを活用する等、別途対応が必要になります。

8)ワンストップの実現

複数の申請先に提出する必要のある申請をワンストップで行うためには、受付組織から他組織への照会、転送、確認等の処理が必要になります。各機関が独自のデータ形式で照会や転送等を行うと、受け取った側でデータ形式の変換が必要になるため、確認元、確認先の双方の負担になります。また、自動照合等の機械的処理の妨げにもなります。

このような組織間の申請情報や証明情報の連携や交換を円滑に実施できるように標準的なデータモデルを使っていくことが重要になります。

9)ベース・レジストリとの連携

今後、行政機関でベース・レジストリの整備が進んでいきます。ベース・レジストリのデータの基になるのが申請や届出のデータです。

一度登録されたデータは2回目以降の手続では入力不要になるワンスオンリーにより、ベース・レジストリに登録された情報が自動的に申請に転記されます。また、証明データは申請内容との照合が行われます。

ワンスオンリーの実現のために、ベース・レジストリの提供者は、本データモデルに沿ってベース・レジストリを整備するか、本データモデルに合わせたインタフェースを整備することが重要になります。ベース・レジストリ利用者に利便性を提供するのはもちろんのこと、ベース・レジストリ提供者にとっても、データ管理が効率的にすることができます。

また、既存のデータベース等、本データモデルを採用していないベース・レジストリと連携する場合には、コンバータを介してデータ形式を連携可能な形式に変換する場合もあります。

図 7 ベース・レジストリ活用の例

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コンバータ・・・データの変換器。

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1.3 導入方式

データの設計は、以下の流れになります。

図 8 導入の流れ

1.ニーズ分析

何の目的で、何のためにデータが必要かを精査する。

2.現状データ分析

複数部門の類似データを比較したり、既存データが目的に対して妥当かを確認したりする。

3.テンプレートと比較

本ガイドが提供するデータモデルと比較することでデータの過不足を確認する。役職と氏名を1つのデータ項目にしている等の再利用が困難なデータ項目は、役職と氏名を別のデータ項目に分割することを検討する。

4.不要データの削除、不足データの追加

データ項目の過不足の評価を踏まえ、必要なデータ項目を追加し、不要なデータ項目を削除する。

5.新データモデルで実装

データ定義書を作り、システムを実装する。

1)新規にシステムを開発する場合

新規にシステムを設計する場合には、本ガイドのデータモデルをベースに考えていくことで効率的かつ拡張性、メンテナンス性が高くシステム連携が容易なシステムを構築していくことができます。

図 9 新規システム構築時のイメージ

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私のイメージは、現在利用している民間ベンダーの登記申請ソフトです。

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入力、出力含め、システム全体をデータモデルに沿って構築します。独自データを持つ外部システムと連携する場合には、接続先にデータモデルに沿った形式でのデータの提供を求めますが、自システム若しくは接続先のインタフェース部分の前処理として、データ形式の変換を行うようにし、連携に影響のない仕組みにする必要があります。

メリット

・設計済みのデータモデルを利用するため、データ設計コストを抑えられる

・データモデルによりインタフェースが標準化されるため他のサービスと連携しやすい

・データがモジュール化、標準化されるため、メンテナンス性が高い

・将来のデータ移行も容易である

デメリット

・なし

ただし、超高速処理が必要なシステム等においては、日付の年月を省略し日情報だけで管理する等、システムの目的によっては標準ではないデータを使う場合もある(その場合には、外部との連携処理をする場合にデータを年月日にする等の変換処理をインタフェース部で行う)。

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デメリットがないシステムいうのは初めて聞きました。

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2)既にシステムを保有している場合

既にシステムがあり、独自データ項目で運用している場合、現在のシステムのデータを本データモデルのデータ形式に置き換えるのはコスト的にも業務的にも負担が大きくなります。現在のシステムの持つインタフェースの外側にデータ形式を変換するインタフェースを整備し、データ形式を整えてシステム連携できるようにしておき、内部システムの標準化はシステム更改等のタイミングで実施するなど中長期で検討を行う必要があります。

図10 既存のシステムへの適用イメージ

メリット

・既存システム自体には手を加えないため、コストや業務面の負担が抑えられる

・インタフェースを介して、連携先に合ったデータ形式に変換されるため他のサービスと連携しやすい

デメリット

・データ形式を変換するインタフェースの整備にコストがかかる

1.4 データやデータ項目名の表記に関する留意点

本ガイドでは、システム連携のためのデータモデルを示しています。画面や帳票等ではデータ形式を変換して表示することがあります。

例えば、日付データはシステムには「2019-04-01」で格納し、入出力画面や帳票上では「2019年4月1日」に変換して表示する等、様式や手続等の要件に応じて対応します。

データ項目名も必要に応じて異なる表示をすることがあります。例えば、データ項目名としては「氏名」がよく使われますが、入出力画面や帳票等では「お名前」と表示するなどです。

2 基本データ

システムで各種データを扱う前に、文字、日付時刻、住所等の基本データの定義が必要になります。基本的には、文字環境導入実践ガイドブック、行政基本情報データ連携モデル[6]を基にした表記にすることで、様々なシステムとの相互運用性を確保することとなります。

2.1 文字

データモデルで使用する文字は、システム間の連携を容易にするため文字環境導入実践ガイドブック[7]に準拠することが重要です。

1)漢字

一般的な情報機器で使用できるJIS X 0213(いわゆるJIS第4水準)の範囲内を使用します。この範囲外の外字については、文字情報技術促進協議会が提供する文字情報基盤縮退マップ[8]で、JIS X 0213の文字に縮退した文字を使います。可読性を高めるために、文字をさらに限定して教員免状のように常用漢字を使用する場合もあります。その場合はその行政手続の規則に従います。

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MJ縮退マップ(文字情報基盤縮退マップ)

氏名、法人名や地名にはヨミガナを付与します。

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(一社)金融財政事情研究会

氏名の読み仮名の法制化に関する研究会

https://www.kinzai.or.jp/legalization_kana.html

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3)ローマ字

氏名、法人名や地名をローマ字表記する場合は、基本的にヘボン式ローマ字を使用します。ただし、従前から慣用的に使われているローマ字などはそのまま使用する場合があります。

4)数字

数字は基本的に半角数字を使います。

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登記記録の表記も半角数字になると考えていた方が良いと思います。

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2.2 日付時刻

1)日付

西暦年と月日とします。半角の数字とハイフンのデータとします。曜日はコンピュータが持つカレンダーデータから自動取得できるため省略します。

例: 2019-04-01

画面への表示、印刷で他の形式にしたい場合にはデータを変換して表示、印字します。また曜日を記載したい場合には、データをカレンダーから呼出し、(水)のように日付の後に表示します。

例: 2019年4月1日(月)

期間を表現する場合には1つのデータ項目に「2019-04-01から2019-04-08まで」とするのではなく、開始日「2019-04-01」終了日「2019-04-08」とデータ項目を分けて管理します。

2) 時刻

時刻は24時間表記のデータとします。行政データ連携標準を基本とし、半角数字と半角コロンのデータとします。

例: 13:00

時刻に期間がある場合には、日付同様に開始時間「13:00」、終了時間「16:00」とデータ項目を分けて記入します。

3) 日時

コンピュータ処理の中で日付と時刻を1つのデータ項目で扱う場合があります。その場合には、ISOの標準に従い「T」をセパレータとして接続した表記を行います。

例: 2019-06-01T10:00

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和暦は出力側で変換することになるのでしょうね。

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4) 利用可能日

施設、イベント等では利用可能日を使用します。国際的に、利用可能日を情報提供するのが主流であり、利用日検索の効率化を図るため、休館日等の利用不可日のデータ項目は使わないようにします。

例: 月火木金土日

5) 時期

時期が未定の場合は、該当しそうな月を前広に扱います。例えば桜まつりの場合は、3月、4月が該当するので「3,4」と記入します。季節や旬を表現したい場合には、「行政データ連携モデル(日付及び時刻)」[9]を参照してください。

6) 日時備考

「金曜日は終了時間が変更」のような特記事項がある場合には、日時備考の項目を設けます。

2.3 所在地(住所)

個人や法人が存在する建物の位置を示すのに「所在地」と「住所」がデータ項目名として使用されますが、所在地は「東京」等のエリアを示す場合があり定義が明確でないため、行政データにおいては「住所」をデータ項目名として使用します。行政データ連携標準(住所)[10]の「3個のデータ項目で管理する場合に準拠します。

1) 住所都道府県、住所町名、住所丁目以下

住所は、制度上は町名と丁目が一体ですが、丁目以下は漢数字や半角数字などが混在するため、町名までの住所と丁目以下の住所に分割し別々のデータ項目にします。「住所都道府県」は記入又は選択肢で入力し、「住所町名」では郡・市区町村から記入し、丁目以降は省略します。また「住所丁目以下」では半角数字ハイフンつなぎで表記します。

例: 住所   「東京都」「千代田区霞が関」「3-3-1」

ただし、入力時に都道府県を選択した上で市区町村を入力するなどの方法や市区町村コードを利用するなどの工夫は自由にできます。

2) 建物名等(方書)

ビル名等は上記項目とは別途「建物名等」のデータの項目を作り管理します。

例: 建物名等   〇〇ビル9階

3) 郵便番号

郵便番号は、7桁のデータとします。ハイフンは省略します。表示や印字する時には頭に〒を付加して表示します。

例: 郵便番号 1000013

2.4 電話番号

半角で、省略可能な市外局番に()をつけ、その後の番号はハイフン接続のデータとします。内線、代表等は、電話番号のデータに連続して記入するのではなく、電話番号とは別のデータ項目として管理します。

例: (03)3501-****

3 基本ブロック

基本情報を組み合わせて定型的に使う基本ブロックの例を示します。

法人情報の基本ブロックは以下の通りになります。

図11 情報の基本ブロック

「氏名」が「氏」と「名」と分離するなどデータ項目は従来に比べて増加していますが、登録済み情報を自動入力したり、審査を自動化したりするための工夫が図られています。

こうすることで、利用者、行政機関の双方の利便性が増し、業務を効率化します。

3.1 個人基本情報(3情報)

個人番号個人に割り当てられた一意の番号(12桁)
個人の氏
個人の名
氏(カナ)個人の氏のカナ表記
名(カナ)個人の名のカナ表記
氏(英字)個人の氏の英字表記
名(英字)個人の名の英字表記
住所都道府県個人の住所の表記(都道府県)
住所町名個人の住所の表記(郡・市区町村から記入し、丁目以下省略)
住所丁目以下個人の住所の表記(丁目以下を半角数字とハイフンで記入)
建物名等個人の住所に建物名等の情報がある場合に使用

3.2 連絡先(個人)

役割代理の場合の、委任先、保護者等の関係性
個人の氏
個人の名
氏(カナ)個人の氏のカナ表記
名(カナ)個人の名のカナ表記
電話番号個人の電話番号(市外局番にカッコをつけ、以降の番号はハイフンで接続。半角)
メールアドレス連絡先のメールアドレス
住所都道府県個人の住所の表記(都道府県)
住所町名個人の住所の表記(郡・市区町村から記入し、丁目以下省略)
住所丁目以下個人の住所の表記(丁目以下を半角数字とハイフンで記入)
建物名等個人の住所に建物名等の情報がある場合に使用
郵便番号個人の住所の郵便番号(ハイフンなしの7桁(半角))

3.3 法人基本情報(3情報)

法人番号法人に割り当てられた一意の番号(13桁)
商号又は名称法人の商号又は名称
商号又は名称(カナ)法人の商号又は名称のカナ表記。 株式会社、一般社団法人等の組織種別のカナは省略
商号又は名称(英字)法人の商号又は名称の英字表記
登記住所都道府県法人登記の所在地の表記(都道府県)
登記住所町名法人登記の所在地の表記(郡・市区町村から記入し、丁目以下省略)
登記住所丁目以下法人登記の所在地の表記(丁目以下を半角数字とハイフンで記入)
登記建物名等法人登記の所在地に建物名等の情報がある場合に使用

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登記住所都道府県、登記住所町名、登記住所丁目以下、登記建物名等は、直接業務に関係があります。

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 事業所情報

事業所名法人に関する、支店などの名称。本社の場合は、本社とする
事業所住所都道府県法人に関連する、支店などの住所の表記(都道府県)
事業所住所町名法人に関連する、支店などの住所の表記(郡・市区町村から記入し、丁目以下省略)
事業所住所丁目以下法人に関連する、支店などの住所の表記(丁目以下を半角数字とハイフンで記入)
事業所建物名等法人に関連する、支店などの建物名
事業所郵便番号法人に関連する、支店などの郵便番号(ハイフンなしの7桁(半角))

3.4 連絡先(法人)

役割連絡先の役割
担当部署担当部署名
担当者役職担当者の役職
担当者名の氏担当者の氏
担当者名の名担当者の名
担当者名の氏(カナ)担当者の氏のカナ表記
担当者名の名(カナ)担当者の名のカナ表記
電話番号担当部署の電話番号(市外局番にカッコをつけ、以降の番号はハイフンで接続。半角)
内線担当部署の電話番号の内線番号 電話番号に「直通」「代表」と記載したい場合は、この欄に記入
メールアドレス連絡先のメールアドレス
住所都道府県連絡先の住所の表記(都道府県)
住所町名連絡先の住所の表記(郡・市区町村から記入し、丁目以下省略)
住所丁目以下連絡先の住所の表記(丁目以下は半角数字とハイフンで記入)
建物名等連絡先の住所に建物名等の情報がある場合に使用
郵便番号連絡先の郵便番号(ハイフンなしの7桁(半角))
Webフォーム連絡先のWebフォームURL

3.5 宛先、申請元、発行元

商号又は名称法人の商号又は名称
商号又は名称(カナ)法人の商号又は名称のカナ表記 株式会社、一般社団法人等の組織種別のカナは省略
商号又は名称(英字)法人の商号又は名称の英字表記
事業所名法人に関する、支店などの名称。本社の場合は、本社とする
事業所住所都道府県法人に関連する、支店などの住所の表記(都道府県)
事業所住所町名法人に関連する、支店などの住所の表記(郡・市区町村から記入し、丁目以下省略)
事業所住所丁目以下法人に関連する、支店などの住所の表記(丁目以下を半角数字とハイフンで記入)
事業所建物名等法人に関連する、支店などの建物名
事業所郵便番号法人に関連する、支店などの郵便番号(ハイフンなしの7桁(半角))
担当者部署担当者の部署名
担当者役職担当者の役職
担当者名の氏担当者の氏
担当者名の名担当者の名

3.6 表題等の概要

タイトルタイトル
サブタイトルサブタイトル
概要概要(70文字以内)
最終更新日最終更新日(西暦年月日とし、半角数字をハイフンでつなぐ)
産業分類産業分類大分類、可能な場合は中分類

留意事項

4.1 氏名、法人名の漢字表記の扱い

氏名、法人名は、一般の情報機器では扱うことができないJIS X 0213で定められた範囲外の文字(いわゆる外字)で戸籍や登記に登録されていることがあります。政府に登録された正規の表記ですが、既に社会保障・税番号制度の導入に伴い、マイナンバーカードに個人氏名の代替文字が導入され、法人番号公表サイトで法人名の代替文字が提供されています。また、マイナンバーカードには券面入力補助アプリにも代替文字が記録されています。従来の手続と同等の利便性を確保するために、行政サービスや他システム連携データでは、氏名、法人名に代替文字が活用されることがあります。

戸籍や商業登記に基づき登録された文字が法令等に基づき必要な場合には、データ項目に一般の手続に使われる「氏名」の項目と別項目の「戸籍氏名」を設け、商業登記名が必要なときには「法人名」と別項目の「登記名」を設けることで円滑な連携ができるようにするなどの工夫が必要です。

4.2 氏名、法人名のヨミガナの扱い

氏名や法人名については、法的にはヨミガナが存在しません。しかし、名簿等でのデータのソートは名称の五十音順に行われることが多く、ヨミガナがないと、データのソートや検索に不都合が生じます。

よって、手続では、固有名詞のデータにヨミガナを付与することを基本とします。ヨミガナを付与することでローマ字表記化することも容易になります。

4.3 本社住所の扱い

本社住所は、商業登記した住所が正式なものです。一方で、変更登記が行われていない法人も多く、住居表示変更等も反映されていない場合もあります。

ワンスオンリー実現の観点から、商業登記した住所を、その後の申請などで使うことが求められていますが、正確な連絡先として使用できない場合があるため、「登記住所」というデータ項目とは別に事業所名「本社」事業所住所「本社住所」と記録できるようにするなどの工夫が必要です。登記変更を促すため申請のデータ項目に追加することで、「登記住所」と「本社住所」が異なる場合に注意を促す運用も可能になります。

4.4 外字の扱い

氏名、法人名、地名等で外字の表示が必須である場合には、コンピュータで処理するデータ項目以外に、外字をイメージで保有する場合があります。その場合にも、データ項目は、JIS X 0213の範囲で運用することが望ましいです。範囲外の文字を使う場合には、連携システムや再利用時の影響評価を実施した上で判断する必要があります。

4.5 申請者などによる押印の扱い

規制改革推進会議が整理した押印手続の見直しの方針[11]に基づき、押印の必要性を見直します。またデータの真正性証明は、データの場合は電子証明書、サーバーに保存している情報を参照する場合には認証などでのアクセスコントロールで行うことができます。

4.6 公印の扱い

公印に法的な拘束力はありませんが、多くの書類に押印されてきました。書面に印影イメージや「公印省略」を印刷する場合がありますが、証明としての効力は有しないため省略が可能です。BPRの観点から不要な業務プロセスや様式を洗い出し、内部規則などの見直しを図る必要があります。またデータの真正性証明は、データの場合は電子証明書、サーバーに保存している情報を参照する場合には認証などでのアクセスコントロールで行うことができます。

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「戸籍氏名」、「登記名(商号)」、「登記住所」、は、氏名、会社名、住所の意味が変わったので、新しく出来た用語ですね。


[1] https://joinup.ec.europa.eu/collection/semantic-interoperability-community-semic

[2] https://www.niem.gov/

[3] https://www.fsa.go.jp/search/20130917.html

[4] https://info.gbiz.go.jp/

[5] https://imi.go.jp/goi/

[6] https://cio.go.jp/guides

[7] https://cio.go.jp/guides

[8] https://moji.or.jp/mojikiban/map

[9] https://cio.go.jp/guides

[10] https://cio.go.jp/guides

[11] https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/imprint/i_index.html

令和3年度沖縄県司法書⼠会 不動産登記委員会研修会「民法改正概論(債権・相続)」

令和3年6⽉19⽇

令和3年度沖縄県司法書⼠会 不動産登記委員会 研修会

・条文内の「」は私です。

民法466条から民法469条

(債権の譲渡性)

第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。

(譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託)

第四百六十六条の二 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。

2 前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければならない。

3 第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。

第四百六十六条の三 前条第一項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。この場合においては、同条第二項及び第三項の規定を準用する。

(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)

第四百六十六条の四 第四百六十六条第三項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

2 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。

(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)

第四百六十六条の五 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第四百六十六条第二項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

(将来債権の譲渡性)

第四百六十六条の六 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。

3 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第四百六十六条第三項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第一項)の規定を適用する。

(債権の譲渡の対抗要件)

第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

(債権の譲渡における債務者の抗弁)

第四百六十八条 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

2 第四百六十六条第四項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

(債権の譲渡における相殺権)

第四百六十九条 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。

2 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権

二 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権

3 第四百六十六条第四項の場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

譲渡制限の意思表示に反する債権譲渡と抵当権の移転

改正法◇譲渡制限の意思表示に反する債権譲渡も有効→「債権譲渡」を原因とする抵当権移転登記申請手続を⾏うことが可能となる(民法466条2項)。

◇抗弁を放棄する意思がある場合を除き、移転登記を⾏うべきでない(民法466条3項)。

民法

第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

(錯誤)

第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

登記の原因及び年月日・・・錯誤 年月日(※意志表示の到達⽇)

登記原因証明情報に記載すべき事項例

1,錯誤が、本件の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであると認められる。

2,本件を基礎とした1,の事情が本件の基礎となることを表示。

3,錯誤の意思表示到達日。

4,錯誤取消しの意思表示により、本件は無効となり不動産の所有権は義務者に帰属。

5、よって、年月日受付番号の登記は、年月日取消により抹消する。

・連帯債務

民法

(相対的効力の原則)第四百四十一条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

原則・・・1⼈に対する請求は、他の連帯債務者に対して効⼒を⽣じない。

例外・・・ただし書き。契約書等に記載。

・債務引き受け

(併存的債務引受の要件及び効果)

第四百七十条 併存的債務引受の引受人は、債務者と「連帯して」、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。

2 併存的債務引受は、「債権者と引受人となる者との契約」によってすることができる。

3 併存的債務引受は、「債務者と引受人となる者との契約」によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、「債権者が引受人となる者に対して承諾をした時」に、その効力を生ずる。

4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

(併存的債務引受における引受人の抗弁等)

第四百七十一条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受の要件及び効果)

第四百七十二条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。

2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、「債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時」に、その効力を生ずる。

3 免責的債務引受は、「債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾」をすることによってもすることができる。

(免責的債務引受における引受人の抗弁等)

第四百七十二条の二 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(免責的債務引受における引受人の求償権)

第四百七十二条の三 免責的債務引受の「引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。」

(免責的債務引受による担保の移転)

第四百七十二条の四 債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

2 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。

3 前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。

4 前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。

5 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

・弁済

(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)

第四百七十七条 債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。

・返済期日の特定基準。

(第三者の弁済)

第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。

2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。

3 前項に規定する第三者は、「債権者の意思に反して」弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。

4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。

正当な利益を有する・・・保証⼈など。

(賃貸借の存続期間)

第六百四条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。

2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

敷金

第六百二十二条の二 賃貸人は、敷金(「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」・・・たとえ保証金、礼金という名目であっても。

(賃借人の原状回復義務)

第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷「(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)」以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

参考

国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

(消費貸借)

第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(書面でする消費貸借等)

第五百八十七条の二 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを「約することによって、その効力を生ずる」。

2 書面でする消費貸借の借主は、「貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる」。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。

3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。

4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。

(返還の時期)

第五百九十一条 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。

2 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、「いつでも返還をすることができる。」

3 当事者が返還の時期を定めた場合において、「貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、」借主に対し、その賠償を請求することができる。

(第三者のためにする契約)

第五百三十七条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。

2 前項の契約は、「その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。」

3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

(第三者の権利の確定)

第五百三十八条 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。

2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。

(連帯保証人について生じた事由の効力)

第四百五十八条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

・434条の準用なし。

(連帯債権者の一人との間の相殺)

第四百三十四条 債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。

(個人根保証契約の保証人の責任等)

第四百六十五条の二 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、「前項に規定する極度額を定めなければ、」その効力を生じない。

3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則

(公正証書の作成と保証の効力)

第四百六十五条の六 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された「公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」

2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。

イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

ロ 根保証契約 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日又は第四百六十五条の四第一項各号若しくは第二項各号に掲げる事由その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

二 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。

三 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

四 公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。

(契約締結時の情報の提供義務)

第四百六十五条の十 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

「一 財産及び収支の状況」

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)

第四百五十八条の二 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、「保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。」

(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)

第四百五十八条の三 「主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知」しなければならない。

2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。

3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。

(配偶者居住権)

第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

一 「遺産の分割によって配偶者居住権を取得」するものとされたとき。

二 「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。」

2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

(審判による配偶者居住権の取得)

第千二十九条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。

一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。

二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

(配偶者居住権の登記等)

第千三十一条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の「登記を備えさせる義務を負う。」

2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。

(配偶者「短期」居住権)

第千三十七条 配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に「無償で」居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。

一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合 「遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日」

二 前号に掲げる場合以外の場合 「第三項の申入れの日から六箇月を経過する日」

2 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。

3 居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも「配偶者短期居住権の消滅の申入れ」をすることができる。

(使用貸借等の規定の準用)

第千四十一条 第五百九十七条第三項、第六百条、第六百十六条の二、第千三十二条第二項、第千三十三条及び第千三十四条の規定は、配偶者短期居住権について準用する。

令和2年3月30日民事局長通達

https://shihoshoshi.com/touki2030/wp-content/uploads/2020/03/r20330m2_318_Redacted.pdf

(特別受益者の相続分)

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

4 「婚姻期間が二十年以上」の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その「居住の用に供する建物又はその敷地」について「遺贈又は贈与」をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)

第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の「三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額」(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

平成三十年法務省令第二十九号

民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令

民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百九条の二の規定に基づき、同条に規定する法務省令で定める額を定める省令を次のように定める。

民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。

附 則

この省令は、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成三十年法律第七十二号)の施行の日から施行する。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=430M60000010029

(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)

第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その「全員の同意」により、当該処分された財産が遺産の分割時に「遺産として存在するものとみなす」ことができる。

2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の「同意を得ることを要しない」。

(遺産の分割の協議又は審判等)

第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は「一部」の分割をすることができる。

2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は「一部」の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の「目録」を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(遺言執行者の任務の開始)

第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を「相続人に通知」しなければならない。

(特定財産に関する遺言の執行)

第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。

2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、「遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。」

3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

(遺留分侵害額の請求)

第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する「金銭の支払」を請求することができる。

2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額

二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

(遺留分侵害額請求権の期間の制限)

第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から「一年間」行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から「十年を経過」したときも、同様とする。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)

第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した「相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。」

2 前項の権利が「債権」である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の「通知」をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

(遺言執行者の権利義務)

第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者「のみ」が行うことができる。

3 第六百四十四条、第六百四十五条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

(寄与分)

第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する「労務の提供」又は財産上の給付、被相続人の「療養看護」その他の方法により被相続人の「財産の維持又は増加」について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。