研修「相続法(令和3年改正も含む)の実務~近時の相続法改正と今後の改正の概要~」メモ

全国青年司法書士協議会民法・不動産登記等研究委員会委員長浅野知則

目次

1.自己紹介

2.近時の相続法改正の概要

3.令和3年の民法・不動産登記法改正の概要

4.成人年齢の引き下げ

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)1月13日施行

  • 自筆証書遺言の方式緩和(第968条)
    • 自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成可能。
    • あくまで方式の緩和は財産目録の部分だけで本文を記載する自筆証書は第968条第1項に定める方式を満たす必要がある。

⇒その全文、日付及び氏名を自書するとともに、押印する必要がある。

⇒自筆証書(財産目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して  特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならない。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)1月13日施行

  • 自筆証書遺言の方式緩和(第968条)

【実務のポイント】

・その全文、日付及び氏名を自書するとともに、押印する必要があるため、支援できるのは財産目録の作成と本文の内容の案文作成。

・自筆証書(財産目録を含む。)中の加除その他の変更は、改正されていないため、遺言者が文章を間違った場合、加除訂正方法に従って訂正することを遺言者に丁寧に説明する必要。

・この規定が適用されるのは施行日以後に作成された自筆証書遺言のみ。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示 推定規定)(第903条第4項)
    • 婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定し、被相続人の意 思を尊重した遺産分割ができるように。
  • 2.近時の相続法改正の概要
  • 2019年(平成31年)7月1日施行配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示 推定規定)(第903条第4項)

【実務のポイント】

・この制度が適用されるのは、施行日以後に夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与された場合。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産分割前の払戻し制度の創設等 (第909条の2)
    • 相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも裁判所の判断を経ることなく払戻しが受けられる制度を創設した。
    • 標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で
    • 定める額を限度は現在150万円
    • 上限額は金融機関ごとに定めることとなった。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産分割前の払戻し制度の創設等(第909条の2)

【実務のポイント】

・この制度を用いて金融機関の窓口で預貯金を払い戻した相続人がいる場合、その後の遺産分割協議の際にその清算を行う必要がありますので、遺産分割協議書の案文作成にあたって注意して下さい。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産分割前の払戻し制度の創設等(第909条の2)

【実務のポイント】

・共同相続人の1人が「被相続人名義のキャッシュカードを用いてATMから預貯金を払い戻した場合」や、「自らが被相続人であると偽って被相続人名義の払戻請求書を作成し、金融機関の窓口で払戻しを受けた場合」は、金融機関はこの制度を利用して払戻しをしたのか分からないためこの制度の適用されないものと考えれます。この場合は民法第906条の2の規定が適用されると考えれます。

・この制度は施行日前に開始した相続についても適用があります。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合 の遺産の範囲 (第906条の2)
    • 相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策を設けた。
    • 共同相続人は、その全員(財産を処分した共同相続人は除く。)の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができるようになった。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲 (第906条の2)

【実務のポイント】

・この規定は、あくまでも遺産分割を行われる場合であることが前提として、処分された財産を遺産とみなすことができるという規定。遺産分割をすることができない場合(遺産分割前に遺産に属する財産が全て処分された場合)には、この規定は適用されない

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合 の遺産の範囲 (第906条の2)

【実務のポイント】

・この規定が適用されるのは、施行日以後に相続が開始した場合のみ

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、第1012条~第1015条)
  • 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することとなった。
    • 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
    • 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずることとなった。
  • 2019年(平成31年)7月1日施行
  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、 第1012条~第1015条)

【実務のポイント】

・就任承諾をした場合は速やかに法定相続人に通知すべきと考えます。第1007条の2項のより遺言執行者は法定相続人に対し遅滞なく遺言の内容を通知する義務が明記されたので、就任承諾の通知を長期間発送しなかった等の不作為が、遺言執行者の任務懈怠と評価されるリスクを避けるためです。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、 第1012条~第1015条)

【実務のポイント】

・就任承諾の通知には「相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」旨を記載すべきと考えます。相続人が遺言の内容に違反して行為は、判例上絶対的無効ですが、今回の改正で「善意の第三者に対抗することができない」という第三者保護規定が創設されましたので、このような違反行為を抑止する観点からです。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺言執行者の権限の明確化(第1007条第2項、 第1012条~第1015条)

【実務のポイント】

・相続の開始が施行日前であっても、遺言執行者になる時期が施行日以後である場合は適用になります(下記の場合を除きます。)。

・特定財産承継遺言がされた場合における遺言執行者の権限(第1014条第2項~第4項)と遺言執行者の復任権(第1016条)は、遺言書の作成日が施行後以後の場合にのみ適用されます。

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺留分制度に関する見直し(第1046条)
    • 遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている改正前の規律を見直し、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ、受遺者等の請求により、金銭債務の全部又は一部の支払につき裁判所が期限を許与することができるようにした。

2.近時の相続法改正の概要

2019年(平成31年)7月1日施行

  • 遺留分制度に関する見直し(第1046条)

【実務のポイント】

・遺言の作成支援において遺留分権利者がいる場合には、遺留分対策はすべきと考えます。遺留分の金銭債権化により遺留分の権利行使がしやすくなったと考えられるから。

・相続の開始日が施行日以後の相続に関し適用されます。相続の開始日が施行日前の相続については従前のとおり遺留分減殺請求となり、不動産については物権変動が発生することに注意。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、第9 02条の2)
    • 相続させる旨の遺言等により承継された財産について は、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗すること ができるとされていた改正前の規律を見直し、法定相 続分を超える権利の承継については、対抗要件を備え なければ第三者に対抗することができないようにした。
    • 対抗要件主義が適用されるのは法定相続分を『超えた部分』
    • 「権利」には、不動産、動産に関する所有権等の物件や債権はもとより、株式や著作権など、その権利の譲渡等につき対抗要件主義を採用しているもの全般が含まれる。
  • 2019年(令和元年)7月1日施行
  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、 第902条の2)
    • 債務について相続分の指定がされた場合、相続債権者(被相続人の債権者)は、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができることを明確にした。
    • 相続債権者が共同相続人の1人に対して相続債権者が指定相続分に応じた債務の承継を承認した場合には、相続債権者は、その後は指定相続分に応じた権利行使したできないこととなった。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、 第902条の2)

【実務のポイント】

・相続登記の依頼を受けた場合には速やかに登記手続きが行うことをお薦め致します。遺産分割協議書が既にあ る場合や遺言執行者がなく遺言書の実現のために受遺 者から依頼を受けた場合には、手続きを遅延している 間に相続人の債権者による代位の相続登記が入れられ、差押えの持分登記や仮差押えの持分登記が入れられる と依頼の実現が難しくなり責任問題へと発展すること が想定されるからです。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続の効力等に関する見直し(第899条の2、 第902条の2)

【実務のポイント】

・施行日前に開始した相続に関し遺産の分割による『債権』の承継がされた場合において、施行日以後にその承継の通知がされるときにも第899条の2第2項の規定が適用されますが、それ以外の財産の場合は、施行日以後に相続が開始した場合にのみ適用。

・第902条の2の規定は、施行日以後に相続が開始した場合にのみ適用。

2019年(令和元年)7月1日施行

  • 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策(第1050条)
    • 相続人以外の被相続人の親族(例えば、相続人の配偶 者)が、被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与)を創設した。
    • 特別の寄与の制度創設に伴い、家庭裁判所における手続規定(管轄等)を設けた。
  • 2020年(令和2年)4月 1日施行
  • 配偶者短期居住権の新設 (第1037条~第10 41条)
    • 配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住 していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用できるようにした。
    • 配偶者が「被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた」ことを成立要件(保護要件)とした。
  • 配偶者は、法律上被相続人と婚姻をしていた配偶者をいい、内縁の配偶者は含まれない。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者短期居住権の新設 (第1037条~第10 41条)
    • 居住建物が「被相続人の財産に属した」とは、被相続人が居住建物の所有権又は共有持分を有していたことをいう。
    • 配偶者が「無償で」居住していたとは、居住建物について配偶者と被相続人との間に賃貸借等の契約関係があり、有償で使用していた場合は除かれた。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者短期居住権の新設 (第1037条~第10 41条)
    • 「居住していた」とは、生活の本拠として現に居住の用に供していたことをいう。

⇒配偶者が相続開始の時点で入院等のために一時的に被相続人の建物以外に滞在していたとしても、配偶者の家財道具がその建物に存在しており、退院後はそこに帰ることが予定されているなど、被相続人所有の建物が配偶者の生活の本拠としての実態を失っていないと認められる場合には、配偶者はなおその建物に居住していたということができる。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036 条)
    • 配偶者の居住建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用を認める法定の権利を創設し、遺産分割等における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようにした。
    • 配偶者居住権の成立要件

1 被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していたこと

2 その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨    の遺産分割、遺贈又は死因贈与がされたこと

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036条)
    • 特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)によって  配偶者居住権を取得することはできない。
    • 居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得したに対し、配偶 者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負うこととなった。
    • 配偶者居住権が設定された居住建物の固定資産税は配偶者居  住権を取得した配偶者が負担する。しかし、地方税法の規定  から居住建物の所有者が納税義務者となるため、居住建物の  所有者は当該配偶者に対して求償することになる。
  • 2020年(令和2年)4月 1日施行
  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036 条)

【実務のポイント】

・創設の目的(被相続人の配偶者が被相続人の死亡後にも長期間にわたり生活を継続することから、住み慣れた居住環境での生活を継続するため等)とは、異なる節税目的での活用がされていることを聞いております。制度趣旨を考えて活用するようにしましょう。

2020年(令和2年)4月 1日施行

  • 配偶者居住権の新設(第1028条~第1036 条)

【実務のポイント】

・配偶者居住権及び配偶者短期居住権とも、相続の開始日が施行日以後の場合にのみ適用されます。仮に施行日前に配偶者居住権又は配偶者短期居住権を目的とする遺贈がされた場合には適用されませんので注意して下さい。

2020年(令和2年)7月10日施行

  • 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
  • 遺言書保管所としてされた法務局は、本局及び支 局とされ、出張所は含まれない。
  • 申請は、遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言 者の所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保 管所の遺言書保管官に対して遺言者が自ら出頭し てする。
  • 遺言書保管法により遺言書保管所に保管された自 筆証書遺言は検認が不要となった。

2020年(令和2年)7月10日施行

【実務のポイント】

・自筆証書遺言であることは変わりないので、遺言者が本文を自筆で書けるかどうかは確認。

・保管の申請日にはできるだけ同行。遺言書保管官から質問された場合。

・保管の申請日には必ず遺言書に押印した印鑑は持っていくように。遺言書保管官による確認で誤字等が見つかり加除訂正が必要になる場合がある。

3.令和3年の民法・不動産登記法改正の概要

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 財産管理制度の見直し
    • 所有者不明土地・建物の管理制度の創設
      • 個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度を創設する。

※ 裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任(裁判所の許可があれば売却も可)

⇒ 所有者不明土地・建物の管理を効率化・合理化する。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 財産管理制度の見直し
    • 管理不全土地・建物の管理制度の創設
      • 所有者が土地・建物を管理せずこれを放置している ことで他人の権利が侵害されるおそれがある場合に、管理人の選任を可能にする制度を創設する。

⇒管理不全化した土地・建物の適切な管理が可能となる。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 共有制度の見直し
    • 共有物の利用の円滑化を図る仕組みの整備
      • 裁判所の関与の下で、不明共有者等に対して公告等をした上で、残りの共有者の同意で、共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設する。
      • 裁判所の関与の下で、不明共有者の持分の価額に相当する額の金銭の供託により、不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する仕組みを創設する。

⇒不明共有者がいても、共有物の利用・処分を円滑に進める  ことが可能になる。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 相隣関係規定の見直し
    • ライフラインの設備設置権等の規律の整備
      • ライフラインを自己の土地に引き込むための導管等 の設備を他人の土地に設置する権利を明確化し、隣 地所有者不明状態にも対応できる仕組みも整備する。

⇒ライフラインの引込みを円滑化し、土地の利用を促進する。

2023年(令和5年)4月1日施行

  • 相続制度の見直し
    • 長期間経過後の遺産分割の見直し
      • 相続開始から10年を経過したときは、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みを創設する。

⇒遺産分割長期未了状態の解消を促進する。

2023年(令和5年)4月27日施行

  • 相続土地国庫帰属制度の創設
    • 相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設
    • 相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設する。
    • ただし、管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件(詳細は政省令で規定)を設定し、法務大臣が要件を審査する。
  • 2023年(令和5年)4月27日施行
  • 相続土地国庫帰属制度の創設
    • 相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設
    • 相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設する。
    • ただし、管理コストの国への転嫁や土地の管理をおろそかにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件(詳細は政省令で規定)を設定し、法務大臣が要件を審査する。

2023年(令和5年)4月27日施行

  • 相続土地国庫帰属制度の創設

【要件】

1  対象土地が建物の存していないこと

2 対象土地が担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されていないこと

3 対象土地が通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれていないこと

4 対象土地が土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)第2 条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を  超えるものに限る。)により汚染されていないこと

5  対象土地が境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがないこと

6 対象土地が一崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要しないこと

7 対象土地が土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存しないこと

8 対象土地が除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存しないこと

9  対象土地が隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの以外の土地であること

10 対象土地が⑥から⑨に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの以外の土地であること

2024年(令和6年) 4月1日施行

  • 相続登記の申請義務化
    • 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3  年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける(正当な理由のない申請漏れには過料の罰則あり)。
    • 相続登記の申請義務の実効性を確保するよう、次のような環  境整備策をパッケージで導入する。

    登記の手続的な負担(資料収集等)を軽減

相続人申告登記(仮称)の新設

  • 相続人が、登記名義人の法定相続人である旨を登記所に申し出る。申請義務の履行手段の一つとする。(単独で申告可・添付書面も簡略化)

⇒ 相続登記の申請義務を簡易に履行することが可能になる。

※ 登記官がその者の氏名及び住所等を職権で登記する(持分は登記されない報告的な登記)

  • 相続登記の申請義務化

 登記手続の費用負担を軽減

登録免許税の負担軽減策の導入などを要望

(参考)

R4年度税制改正の大綱において、①相続登記に対する登録  免許税の免税措置の延長・拡充、②改正不登法により創設された職権登記(相続人申告登記、住所等変更登記等)への非  課税措置の導入が決定

  • 相続登記の申請義務化

    登記漏れの防止

所有不動産記録証明制度の新設

・特定の者が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行⇒相続登記が必要な不動産の把握が容易になる。

※自己所有不動産の一般的確認方法としても利用可能

  • 相続登記の申請義務化

    地方公共団体との連携

死亡届の提出者に対する相続登記の必要性に関する周知・啓発を要請など

※地方公共団体の作成する相続発生時に必要な手続のチェックリストに相続登記の申請を追加するよう要請

公布後5年を超えない範囲内で政令で定める日に施行

  • 住所等の変更登記の申請義務化
    • 所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける(正当な理由のない申請漏れには過料の罰則あり)。
    • 他の公的機関から取得した情報に基づき、登記官が職権的に変更登記をする新たな方策も導入する。

⇒ 転居や本店移転等に伴う住所等の変更が簡便な手続で登記に反映される。

  • 住所等の変更登記の申請義務化

【自然人の場合】

登記申請の際には、氏名・住所のほか、生年月日等の「検索用情報」の申出を行う。

登記官が、検索用情報等を用いて住民基本台帳ネットワークシステムに対して照会し、所有権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得する。

登記官が、取得した情報に基づき、登記名義人に住所等の変更の登記をすることについて確認をとった上で、変更の登記をする(非課税)。

【法人の場合】

    法人が所有権の登記名義人となっている不動産について、会社法人等番号を登記事項に追加する。

    商業・法人登記システムから不動産登記システムに対し、名 称や住所を変更した法人の情報を通知する。

    取得した情報に基づき、登記官が変更の登記をする(非課税)。

  • 登記名義人の死亡等の事実の公示
    • 登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡等の情報を取得し、職権で登記に表示する(符号で表示)。⇒ 登記で登記名義人の死亡の有無の確認が可能になる。
  • 4.成人年齢の引き下げ

2022年(令和4年)4月1日施行

  • 民法第4条

現       行:年齢20歳をもって、成年とする。

施行後:年齢18歳をもって、成年とする。

  • 成年に関する経過措置附則第2条
    • 施行日午前0時に18歳に達していない者(平成16年4月2日以後に生まれた者)

⇒18歳に達した時から成年となる。

  • 施行の際に18歳以上20歳未満の者のうち婚姻によって成年に達したとみなされた者以外の者(平成14年4月2日以降平成16年4月1日以前に生まれた者)

⇒施行日の午前0時に成年となる。

  • 成年に関する経過措置附則第2条
    • 施行の際に20歳に達していた者(平成14年4月1日までに生まれた者)

⇒成年に達した時についてはなお従前の例による

  • 施行日前に婚姻をし、成年に達したものとみなされた者

⇒改正法の施行後も、なお従前の例により当該婚姻の時に成年に達したものとみなす

相続の場面での主な注意点

  • 遺産分割協議における利益相反行為

第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2      親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を 行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭 裁判所に請求しなければならない。

⇒上記の条文は改正前後で変更なし。

⇒法定相続人に未成年の子がいる場合における遺産分割協議において  未成年の子ごとに特別代理人を選任する必要があり、改正法施行日以 後において未成年の子の判断が変わります。

相続の場面での主な注意点

  • 遺言執行者の欠格事由

第1009条                未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

⇒上記の条文は改正前後で変更なし。

⇒遺言の作成支援において遺言執行者の選任の場面で改正法施行日以  後において未成年者の判断が変わります。

参考文献

  • 一問一答 新しい相続法〔第2版〕

平成30年民法等(相続法)改正、遺言書保管法の解説堂園幹一郎・野口宣大 編著                   商事法務 出版

  • 概説 改正相続法(第2版)

平成30年民法等改正、遺言書保管法制定堂園幹一郎・神吉康二  編著

一般社団法人金融財政事情研究会 出版

  • 民法(相続関係)改正法の概要

潮見佳男 編著                 一般社団法人金融財政事情研究会 出版

  • 一問一答 成年年齢引下げ

笹井朋昭・木村太郎 編著                          商事法務 出版

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