民事信託手続準則案2

民事信託手続準則案[1]

(8)法令順守確認義務

司法書士は、信託登記代理委任およびその付随業務として民事信託支援を行う場合、支援する民事信託それ自体の法令遵守および司法書士業務としての法令遵守のために、当該民事信託および民事信託支援業務に関連する法令が遵守されていることの確認を行い、依頼者に助言する義務を負う。

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 当たり前のようで、現在のところ難しい問題だと感じます。

例としては、信託借入れの可能性とそれに伴う債務控除の可否が挙げられています。

信託法その他の法律に照らして可能であっても、金融機関独自の判断で信託口口座の開設が不可能になったことがあります。

信託借入れについても、金融機関が可能といって民事信託を行って、いざ債務控除が出来るのか、というのは、税務署が判断することなので税務署への事前確認が必要になります。

このような場合、依頼者としては直接お金を払った、相談を最初に受けた専門家に対して不満を持つのが感覚として妥当だと思います。

それが司法書士なら、借入れが出来なくても司法書士へ。

それが金融機関なら、顧問税理士が個別に判断していても税務署が債務控除できないとなったら、金融機関へ。

それが税理士なら、登記出来なかったとしても税理士へ。

弁護士なら、出来て当たり前と思われているので弁護士へ。

不満の矛先は向かうので、分からないことは分からない、最終判断を行うのは誰なのかを明確にして動きながら、依頼者にも説明する必要があると感じます。


[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務の手続準則試論(1)~(3)」『市民と法』№113~№115(株)民事法研究会

民事信託手続準則案2

民事信託手続準則案[1]

(7)信託登記代理委任契約

民事信託に関する信託登記代理委任を受けた場合、司法書士は、信託登記の真実性を確保するため、登記当事者の本人確認および意思確認並びに信託財産の確認を行うとともに、信託登記の原因関係である民事信託契約の成立要件および有効要件の充足を確認し、無効事由や取消原因などの存否を確認しなければならない。

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他の専門家と司法書士の違いが現れる場面です。

信託法上の成立・有効要件を考えるより先に、登記申請について考える。

考える順番が逆になります。

考えが逆になる結果、行動は制約的になります。

何故かというと、手続法に沿って行動する場合、厳密さが求められるからです。公開される情報と公開されない情報を依頼者から預かり、官公庁へ提出します。

提出して、「駄目でした。」というのが難しい場面が出てきます。

例として、大きな金額が既に動いているとき、依頼者が亡くなってしまって再提出が出来ない場合などを挙げることが出来ます。手続きが通ったとしてもそれが実態を反映していない場合も含まれます。

このように、まず制約的に考えてそこから安全圏を広げていくような仕事になるのが自然な形だと考えます。

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[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務の手続準則試論1~3」『市民と法』№113~№115(株)民事法研究会

民事信託手続準則案1

民事信託手続準則案[1]

(6)双方受任と利益相反の回避

司法書士が信託登記代理の登記原因証明情報として民事信託契約書の作成の受任を行う場合、司法書士は、双方受任の利益相反回避措置を行い、信託当事者に対して双方受任のリスクを説明し、信託当事者の双方から承諾を得なければならない。

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双方受任が可能な場合

・新たな権利義務を形成しない

・履行行為(登記であれば申請、契約書であれば作成)

・公的手続(書類を公正証書にする、法務局に書類を提出する)

利益相反を回避するために必要な措置

・信託当事者と関係者に対して、各々が不利益になる場合の説明

・一人一人に説明するのか。信託当事者と関係者を分けて説明するのか、みんなまとめて説明するのかは、個別具体的状況によるのかなと思います。

・信託法31条の別段の定めなど例外規定を信託契約書に反映させる(善管注意義務・忠実義務の縛りがあるため、万能ではない。)。


[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務の手続準則試論(1)~(3)」『市民と法』№113~№115(株)民事法研究会

民事信託手続準則案1

民事信託手続準則案[1]

(4)信託契約書の鑑定

他人が作成した信託契約書の内容に対する鑑定を報酬を得て行う業務を依頼された場合、依頼された司法書士の当該業務は、司法書士法上、正当業務として許容される範囲で行う。なお、当該司法書士が、その善管注意義務(法令実務精通義務)を怠り、当該業務の方法や内容等に過誤を生じることで、信託契約書を作成した他人その他の利害関係人に対して損害を与えた場合、当該司法書士は、同損害を回復するため誠実に対応しなければならない。

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信託契約書の内容に対する鑑定を報酬を得て行う業務を依頼された場合

不安な司法書士

「民事信託(家族信託)が専門の○○先生、信託契約書の「チェック」をしていただきたいのですが、宜しいでしょうか。」

○○先生

「はい。良いですよ。(業務委託?)契約書をメールします。「報酬」は見積書の通り(信託契約書の作成と同額)です。」

不安な司法書士

「分かりました。どうぞよろしくお願い致します。」

○○先生

「チェック終わりました。この通りに直して下さい。」

不安な司法書士

「チェックありがとうございます。分かりました。○○先生、ここの部分が分からないのですが、大丈夫ですか?」

○○先生

「100%大丈夫とはいえないけど、条文と私の書籍(やセミナー資料)を読んでください。」

不安な司法書士

「分かりました。お忙しい中ありがとうございます。」

例はたくさんありそうです。

「チェック」は、誤字脱字や形式チェックではありません。

準則案にあるように、信託法の理解を通した契約書の内容に踏み込みます。もしかしたら、全文書き直しというのがあるかもしれません。

○○先生は、教えてあげてチェックする時間も割いているのだから、報酬を貰うのは当然、という意識かもしれません。

また、司法書士間においても当然に単純な業務委託契約、または有償の委任契約を締結することが出来ると思っているでしょう。

個人的には損害が出た場合、不安な司法書士と○○先生が連帯責任を負うのが普通だろうと思います。訴訟になった場合もそのような判断が出ると思います。報酬を信託契約書作成と同じにしているからです。

「お願いされたから、仕方なくチェックしただけ。不安な司法書士から、○○の報告は受けていなかった。」などの理由は、利用者からみると通じないのではないかと思います。

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(5)報酬算定方法

委任を受けた信託登記代理の付随業務または簡裁訴訟代理等関係業務としての民事信託支援業務を行う場合、その業務の報酬算定方法は、司法書士法上の業務規定を法令遵守し、受任方法の法的性格に即した合理的なものであることを、依頼者に対して書面を交付して十分に説明したうえ、依頼者から承諾を得ることを要する。

(6)双方受任と利益相反の回避

司法書士が信託登記代理の登記原因証明情報として民事信託契約書の作成の受任を行う場合、司法書士は、双方受任の利益相反回避措置を行い、信託当事者に対して双方受任のリスクを説明し、信託当事者の双方から承諾を得なければならない。


[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務の手続準則試論(1)~(3)」『市民と法』№113~№115(株)民事法研究会

民事信託手続準則案1

民事信託手続準則案[1]

(3)組成コンサルティング

司法書士が民事信託組成コンサルティングを行う場合、当該司法書士は、司法書士法3条1項5号または7号の相談規定・規律に即して行うことを要し、関連法令の遵守に留意する必要がある。

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司法書士が「組成」という言葉を使うようになったのは、民事信託契約書を作成するようになってからだと思います。

私は組成ではなく、民事信託契約書の作成といっています。

「コンサルティング」は、会社法を専門とする一部の司法書士が使うことがありました。「登記は誰がやっても同じ。受託ではなく提案だ。今からはコンサルが出来ないと。セミナーだ。講演だ。」という方がいつの時代も一定数いるような気がします。

ただし、登記に非常に詳しい人ほど経営にも詳しいんじゃないかというのが私の肌感覚です。経営にも詳しいというのは、経営者として能力がある(司法書士事務所を大規模にする。)、ということではなく、登記をきっちり出来るから経営者から相談されやすい。その相談にも司法書士の立場から調べて答えていくから、経営にも自然と詳しくなっていく、という意味です。

 本記事にあるように、「内実は、法律相談と一般的情報提供が混在している。」というのが司法書士法と現在の地域の状況に照らして妥当なところだと感じます。

 一般的情報提供と提案の区別はそれぞれの判断だと考えます。

メルクマークを付けたいところですが、今のところ私には分かりません。

相手が法人の場合

・業種は何か、お金のやり取りの有無・頻度・金額、仕事の紹介があるか、

仕事の紹介先は、紹介された司法書士以外を選ぶことが可能な状態か。

相手が個人の場合

・前提知識の程度、だれからの紹介か・HP、書籍など、セミナーを受けた

などの積み上げで考えていくのかな、と考えています。

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(4)信託契約書の鑑定

他人が作成した信託契約書の内容に対する鑑定を報酬を得て行う業務を依頼された場合、依頼された司法書士の当該業務は、司法書士法上、正当業務として許容される範囲で行う。なお、当該司法書士が、その善管注意義務(法令実務精通義務)を怠り、当該業務の方法や内容等に過誤を生じることで、信託契約書を作成した他人その他の利害関係人に対して損害を与えた場合、当該司法書士は、同損害を回復するため誠実に対応しなければならない。

(5)報酬算定方法

委任を受けた信託登記代理の付随業務または簡裁訴訟代理等関係業務としての民事信託支援業務を行う場合、その業務の報酬算定方法は、司法書士法上の業務規定を法令遵守し、受任方法の法的性格に即した合理的なものであることを、依頼者に対して書面を交付して十分に説明したうえ、依頼者から承諾を得ることを要する。

(6)双方受任と利益相反の回避

司法書士が信託登記代理の登記原因証明情報として民事信託契約書の作成の受任を行う場合、司法書士は、双方受任の利益相反回避措置を行い、信託当事者に対して双方受任のリスクを説明し、信託当事者の双方から承諾を得なければならない。


[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務の手続準則試論(1)~(3)」『市民と法』№113~№115(株)民事法研究会

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