平成19年6月22日信託に関する法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)

 昭和44年5月1日付直審(法)25「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか3件の法令解釈通達の一部について、平成19年度税制改正のうち信託に関する事項を別紙のとおり改正したから、これによられたい。
 なお、別紙には、この通達により新たに取扱いを定めたもの及び既往通達につき表現を改めたものについてはその全文を掲げ、単に法令改正に伴う引用条文等を改めたもの及び通達番号を改めたものについてはその改正箇所のみを掲げることとした。

「信託に関する法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)

(平19.6.22 課法2-5他1課共同)

この法令解釈通達は、平成19年度の法人税関係法令等の改正に対応し、信託に関する法人税基本通達等につき所要の整備を図ったものです。

主な改正点は次のとおりです。 

第一 法人税基本通達関係

1 法人課税信託に係る所得の金額の計算等  

平成 19 年度の税制改正により、信託のうち、受益証券を発行する信託、受益 者等の存しない信託、法人が委託者となる一定の信託、投資信託及び特定目的 信託については、集団投資信託、退職年金等信託及び特定公益信託等に該当す るものを除き、受託者を納税義務者として法人税を課税することとされました。  

この法人課税信託にあっては、受託者は、その法人課税信託の信託資産等及 び受託者の固有資産等ごとにそれぞれ別の者とみなして、法人税を課税するこ ととされています(法4の6①)。

 ○ 法人の事業の全部又は重要な一部の信託(基通 12 の6-1-3 新設)     法人(公共法人及び公益法人等を除きます。)が委託者となる信託で、当該法人の事業の全部又は重要な一部を信託し、かつ、その信託の効力が生じた時において、当該法人の株主等が取得する受益権の保有割合が 50%を超えることが見込まれているものは、法人課税信託に該当することとされています。

この場合に、その信託した事業が「当該法人の事業の全部又は重要な一部」 に該当するかどうかは、その譲渡につき当該法人の会社法第 467 条第1項(第 1号又は第2号に係る部分に限ります。)の株主総会の決議(これに準ずる ものを含みます。)を要するものかどうかで判定することとされています(法 2二十九の二ハ⑴)。    

本通達においては、この株主総会の決議を要するものとは、法人の事業の全部又は重要な一部の譲渡を行う場合において、当該法人の株主総会の決議によって、当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないこととされる 行為をいいますから、現にその決議が行われたかどうかは問わないことを明らかにしています。 

○ 法人課税信託に係る受託法人の内外判定と納税地(基通 12 の6-1-5 新設)  

法人課税信託に係る受託法人(法人課税信託の受託者である法人又は個人 について、当該法人課税信託に係る信託資産等につき別の者とみなして法人 税が課税されるものをいいます。)は、当該法人課税信託の信託された営業 所が国内にある場合には内国法人とされ、当該営業所が国内にない場合には外国法人とされて、法人税法の規定を適用することとされています(法4の – 2 7一、二)。

 本通達においては、これによりその法人課税信託に係る受託法人が内国法 人、外国法人のいずれに該当するかにかかわらず、当該受託法人の納税地は 受託者の納税地であることを明らかにしています。

○ 法人課税信託に該当することとなった日の意義(基通 12 の6-1-7 新 設)  

法人課税信託の受託法人は、当該受託法人に係る法人課税信託の効力が生 ずる日に設立されたものとし、法人課税信託以外の信託が法人課税信託に該当することとなった場合にはその該当することとなった日に設立されたものとして、法人税法の規定を適用することとされています(法4の7七)。  

ところで、受益者段階でその信託収益の受領時に課税される信託である特定受益証券発行信託は、信託事務の実施につき所定の要件に該当することに ついて税務署長の承認を受けた法人(以下「承認受託者」といいます。)が 引き受けたものであることがその要件とされていますが、その計算期間の開 始の日の前日までに、 ① 当該承認受託者がその承認を取り消された場合 ② 当該特定受益証券発行信託の受託者に承認受託者以外の者が就任した場合 には、当該信託は、当該計算期間の開始の日から特定受益証券発行信託に該当しないこととされています(法2二十九ハ⑴)。   本通達においては、特定受益証券発行信託がその計算期間の中途において 承認受託者がその承認を取り消された場合又はその特定受益証券発行信託の 受託者に承認受託者以外の者が就任した場合における「法人課税信託に該当 することとなった日」とは、その取り消され又は就任した日をいうのではな く、これらの日を含む計算期間の翌計算期間の開始の日となることを明らか にしています。    ○ 公益法人等の法人課税信託に係る課税所得の範囲(基通 12 の6-2-1 新設)   法人課税信託の受託法人(会社でないものに限ります。)は、会社とみな して法人税法の規定を適用することとされています(法4の7三)。   本通達においては、公益法人等が法人課税信託の受託者となった場合には、 当該法人課税信託に係る受託法人は当該公益法人等とは別の会社とみなされ ることから、当該法人課税信託に係る法人税の課税所得の範囲は収益事業か ら生じた所得に限られないことを明らかにしています。

 – 3

○ 受益者等が存しない信託に係る清算所得に対する法人税の課税関係(基通 12 の6-2-2 新設)   法人課税信託のうち受益者等が存しない信託については、信託の終了があ った場合又は受益者等が存することとなった場合には、当該法人課税信託に 係る受託法人の解散があったものとして法人税法の規定を適用することと されています(法4の7八)。 一方、解散の場合の清算所得に対する法人税の課税については、受益者等 が存することとなったことに起因して解散したものとされる場合は、清算所 得に対する法人税を課さないこととされています(法 92①)。 本通達においては、これらの規定により、法人課税信託のうち受益者が存 しない信託に係る受託法人は、受益者が存することなく信託の終了があった 場合に限り、清算所得に対する法人税が課されることを明らかにしています。

2 受益者等課税信託による損益 平成 19 年度の税制改正により、信託のうち、集団投資信託、退職年金等信託、 特定公益信託等又は法人課税信託のいずれにも該当しないもの(以下「受益者等課税信託」といいます。)については、受益者(受益者としての権利を現に 有しているものに限ります。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、法人税法の規定を適用することとされました(法 12①)。

 ○ 信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費 用の帰属(基通 14-4-1 新設)

受益者等課税信託における受益者は、信託の受益者のうち受益者としての権利を現に有しているものに限られています。一方、信託行為においては、 一の受益者の有する権利が受益者としての権利の一部にとどまり、その余の権利を有する者が存しない又は特定されていない場合もあり得ます。

本通達においては、そのような場合であっても、当該受益者がその信託の 信託財産に属する資産及び負債の全部を有するものとみなされ、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用の全部が帰せられるものとみなされることを明らかにしています。 

○ 信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属の時期(基通 14-4-2 新 設)    受益者等課税信託においては、その信託財産に帰せられる収益及び費用は 受益者(受益者とみなされる者を含みます。以下「受益者等」といいます。)の収益及び費用とみなされることとされていますが、信託の計算期間の始期及び終期と受益者等である法人の事業年度の開始の日及び終了の日が一致しない場合もあり得ます。   

本通達においては、そのような場合の信託財産に帰せられる収益及び費用は、その信託行為に定める信託の計算期間にかかわらず、当該法人の各事業年度の期間に対応する収益及び費用となることを明らかにしています。 

○ 信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属額の総額法による計算(基通 14 -4-3 新設)

   受益者等課税信託においては、その信託財産に帰せられる収益及び費用は 受益者等の収益及び費用とみなして当該受益者等である法人の各事業年度の 所得の金額が計算されることとなります。    

本通達においては、受益者等課税信託の受益者等である法人は、(純額法に より)当該受益者等課税信託の信託財産から生ずる利益又は損失を当該法人 の収益又は費用とするのではなく、(総額法により)当該法人に係る当該信託 財産に属する資産及び負債並びに当該信託財産に帰せられる収益及び費用を 当該法人のこれらの金額として各事業年度の所得の金額の計算を行うことを 明らかにしています。 

○ 受益者等課税信託に係る受益者の範囲(基通 14-4-7 新設)   

受益者等課税信託における受益者とは、信託の受益者(受益者としての権 利を現に有するものに限ります。)及び信託の変更をする権限を有している など受益者とみなされる者をいうこととされています(法 12①、②)。   

本通達においては、この「信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)」には、信託の帰属権利者、委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者及び委託者の死亡の時以後に信託財産に係る給付を受ける受益者は含まれないことを、例示的に明らかにしています。 

○ 受益者とみなされる委託者(基通 14-4-8 新設)  

 受益者等課税信託において、信託の受益者以外の者で当該信託の変更をする権限を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者は、受益者とみなされることとされています(法 12②)。

   本通達においては、この「みなし受益者」には、信託の変更の権限を現に有している委託者について、 ① 当該委託者が信託行為の定めにより帰属権利者として指定されている 場合

② 信託行為に残余財産受益者若しくは帰属権利者の指定に関する定めがな い場合又は信託行為の定めに残余財産受益者等として指定を受けた者のす べてがその権利を放棄した場合 の当該委託者が含まれることを、例示的に明らかにしています。 

第二 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係

1 措置法第 42 条の5~第 48 条関係 ○ 信託財産に属する減価償却資産の特別償却等に係る証明書類等の添付(措 通 42 の5~48(共)-6 新設)     措置法に定める特別償却等の適用に当たっては、その減価償却資産が特別 償却等の適用対象資産であることの所定の証明書類等の確定申告書等への添 付を要件としているものが少なくありません。 ところで、受益者等課税信託の受益者等である法人は、当該信託の信託財 産に属する減価償却資産についても、これらの特別償却等の規定の適用を受 けることができますが、信託財産に属する資産は名義上は受託者の所有する ところであるので、証明書類等についても受託者名で発行されることとなり ます。 本通達においては、このような場合における証明書類等の添付に当たって は、これらの書類が当該法人の有する信託財産に属する減価償却資産に係る ものである旨の受託者の証明を受ける必要があることを明らかにしています。    (土地譲渡益重課制度における適用除外に係る証明書類の添付及び資産の譲 渡の場合の課税の特例制度における証明書類の添付についても、上記と同様 の通達を新設しました。) 

2 措置法第 65 条の2関係

 ○ 信託財産に属する資産の譲渡への適用(措通 65 の2-11 新設)   法人の有する資産につき土地収用法等の規定により収用換地等による譲渡 があった場合には、措置法第 65 条の2((収用換地等の場合の所得の特別控 除)) の規定の適用を受けることができることとされています。 ところで、同条の規定は、法人が受益者等となっている受益者等課税信託 の信託財産に属する資産について収用換地等による譲渡があった場合にも適 用を受けることができますが、その適用に当たっては、当該譲渡が公共事業 施行者から最初に買取り等の申出のあった日から原則として6か月を経過し た日までに行われること等の同条に規定する一定の要件を満たす必要があり ます。 本通達においては、受益者等課税信託の信託財産に属する資産について収

用換地等による譲渡があった場合の同条の規定の適用に当たっては、「公共 事業施行者から当該資産につき最初に買取り等の当該申出のあった日」とは、 当該受益者等課税信託の受託者が公共事業施行者から当該資産につき最初に 買取り等の申出を受けた日をいうなどの留意点を明らかにしています。 

(注)平成 19 年度税制改正における信託法(平成 18 年法律第 108 号)(以下「新信託法」といいます。)

の制定に伴う法人税法の改正後の規定は、原則として、新信託法の施行の日以後に効力が生ずる信託(遺言によってされた信託にあっては同日以後に遺言がされたものに限り、新法信託を含みます。)につい

て適用し、同日前に効力が生じた信託(遺言によってされた信託にあっては同日前に遺言がされたもの

を含み、新法信託を除きます。)については従前どおりとされています(改正法附則 34①、改正令附則

8)。

  (新法信託とは、信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成 18 年法律第 109 号)第3条

第1項、第6条第1項、第 11 条第2項、第 15 条第2項、第 26 条第1項、第 30 条第2項又は第 56 条第 2項(新法の適用等)の規定により同法第3条第1項に規定する新法信託とされた信託をいいます。)

(出典:国税庁HP)

平成19622日付課法25ほか1課共同「信託に関する法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明

【解説】信託法の一部改正

平成二十九年六月二日公布

法律第四十五号

民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

(信託法の一部改正)

第五十一条

信託法(平成十八年法律第百八号)の一部を次のように改正する。

第十一条第一項中「害すべき事実を知って」を「害することを知って」に、「第四百二十四条第一項の規定による取消しを裁判所に請求する」を「第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をする」に改め、ただし書を次のように改める。

ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

第十一条第二項中「請求」を「詐害行為取消請求」に、「害すべき事実」を「害すること」に改め、同項ただし書中「取消し」を「詐害行為取消請求」に改め、同条第四項中「第四百二十四条第一項の規定による取消しを裁判所に請求する」を「第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をする」に改め、ただし書を次のように改める。

ただし、当該受益者(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)が、受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

第十一条第七項中「害すべき事実」を「害すること」に改める。

【改正後】

(詐害信託の取消し等)

第十一条  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。

ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。

2  前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。

3 前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。

4  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。

ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)において債権者を害することを知っていたときに限る。

5 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用する。

7 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。

8   前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。

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第11条

1項

委託者が債権者からの返済を逃れようと信託を設定した場合、債権者は詐害行為取消請求で、信託の設定を取り消すことができるようになります。請求の際、債権者は受託者が委託者の意図を知っていたかは、証明する必要がありません。

 ただし、債権者は信託設定時から請求をするまでの全ての受益者が、受益者として指定されたときに、委託者の意図を知っていたことを証明しなければなりません。

 上の場合において、受益者が受益しているときは、債権者は受益者を被告として詐害行為取消請求を行い、信託の取消しを請求することができます。

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第十二条第一項中「受けた者」の下に「が、その行為の当時」を加え、

「、「これによって利益を受けた受益者の全部又は一部」を

「「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、

「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは

「知っていたときに限る」に改め、

同条第三項中「受けた者」の下に「が、その行為の当時」を加え、

「、「これによって利益を受けた受益者の全部又は一部」を

「「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」と、

「知らなかったときは、この限りでない」とあるのは「知っていたときに限る」に改める。

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【改正後】

(詐害信託の否認等)

第十二条   破産者が委託者としてした信託における破産法 (平成十六年法律第七十五号)第百六十条第一項の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)においてこれによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。

2   破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。

3   再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 の規定の適用については、同項 各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」とする。

4   再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。

5   前二項の規定は、更生会社(会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第二条第七項 に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第百六十九条第七項 に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第四条第七項 に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第三項中「民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 」とあるのは「会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第八十六条第一項 並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第五十七条第一項 及び第二百二十三条第一項 」と、「同項 各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第二条第十四項 に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第百六十九条第十四項 に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第四条第十四項 に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。

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破産手続き中の人が委託者として信託した場合、信託の効力発生時から全ての受益者が受益したものの全部または一部を否認されることがあります。

民事再生手続きに入っている人も同様です。

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第二十三条第二項ただし書を削り、同条第三項中「第十一条第七項」を「第十一条第一項ただし書、第七項」に改める。

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【改正後】

(信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)

第二十三条   信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。

2   第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。

3  第十一条第一項ただし書、第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。

4   前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。

5   第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第三十八条 及び民事保全法 (平成元年法律第九十一号)第四十五条 の規定を準用する。

6   第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。

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第四十三条の見出し中「損失てん補責任等」を「損失塡補責任等」に改め、同条第二項を次のように改める。

2 第四十一条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一受益者が当該債権を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二当該債権を行使することができる時から十年間行使しないとき。

第五十四条第四項中「第三項」の下に「並びに第六百四十八条の二」を加える。

第九十三条第二項を次のように改める。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

第九十六条第二項を次のように改める。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の質入れを禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「質入制限の定め」という。)は、その質入制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。

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【改正後】

(損失塡補責任等に係る債権の期間の制限)

第四十三条   第四十条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。

2第四十一条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一受益者が当該債権を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二当該債権を行使することができる時から十年間行使しないとき。  

3 第四十条又は第四十一条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。

4 前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。

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受託者が個人の場合、任務を怠って信託財産に損が出たら、受益者は損を回復する措置を受託者に請求することができます。期間は受益者が損を知ってから5年間です。 また損が出たときから10年間請求しなかったときは請求できなくなります。

受託者が法人の場合も同様です。

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第五十四条第四項中「第三項」の下に「並びに第六百四十八条の二」を加える。

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【改正後】

(受託者の信託報酬)

第五十四条   受託者は、信託の引受けについて商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十二条 の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。

2   前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。

3   前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。

4   第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)、第五十一条並びに第五十二条並びに民法第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、受託者の信託報酬について準用する。

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受託者の信託報酬に関しては、やった分の報酬がもらえる、途中で信託が終わった場合に終わるまでの分はもらえる、と特約することができます。

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第九十三条第二項を次のように改める。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

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【改正後】

(受益権の譲渡性)

第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

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受益権の譲渡について信託行為で制限をすることができる。制限があるのに譲り受けた人に対しては、

(1)その人が制限を知っていたか、

(2)ちゃんと調べることなく制限を知らなかった場合、

受益権の譲渡はなかったことにすることができる。

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(信託法の一部改正に伴う経過措置)

第五十二条

施行日前にされた信託の詐害行為取消請求、否認並びに受益権の譲渡し及び返還の請求については、なお従前の例による。

2 施行日前にされた信託に係る信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等については、前条の規定による改正後の信託法(第四項において「新信託法」という。)第二十三条第二項及び第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

3施行日前に前条の規定による改正前の信託法(以下この条において「旧信託法」という。)第四十一条又は第二百五十四条第一項の規定による責任に係る債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。

4 施行日前にされた信託に係る受託者の信託報酬については、新信託法第五十四条第四項において 準用する新民法第六百四十八条第三項及び第六百四十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。

5 施行日前に旧信託法第九十三条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の譲渡 については、なお従前の例による。

6 施行日前に旧信託法第九十六条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の質入れについては、なお従前の例による。

新旧対照表

(詐害信託の取消し等) 第十一条  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害することを知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。 ただし、受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において債権者を害することを知っていたときに限る。       2  前項の規定による詐害行為取消請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害することを知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。   3 前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。     4  委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる。 ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時(当該受益者が受益権を譲り受けた者である場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)において債権者を害することを知っていたときに限る。     5 委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。   6 民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用する。   7 受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害することを知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。   8   前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。     (詐害信託の否認等)        第十二条   破産者が委託者としてした信託における破産法 (平成十六年法律第七十五号)第百六十条第一項 の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)においてこれによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。   2   破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   3   再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 の規定の適用については、同項 各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」とする。   4   再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   5   前二項の規定は、更生会社(会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第二条第七項 に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第百六十九条第七項 に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第四条第七項 に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第三項中「民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 」とあるのは「会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第八十六条第一項 並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第五十七条第一項 及び第二百二十三条第一項 」と、「同項 各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第二条第十四項 に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第百六十九条第十四項 に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第四条第十四項 に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。     (信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)   第二十三条   信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。   2   第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。               3   第十一条第一項ただし書、第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。   4   前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。   5   第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第三十八条 及び民事保全法 (平成元年法律第九十一号)第四十五条 の規定を準用する。   6   第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。         (損失塡補責任等に係る債権の期間の制限)   第四十三条   第四十条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。   2第四十一条の規定による責任に係る債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一受益者が当該債権を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二当該債権を行使することができる時から十年間行使しないとき。     3 第四十条又は第四十一条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。   4 前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。     (受託者の信託報酬) 第五十四条   受託者は、信託の引受けについて商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十二条 の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。   2   前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。   3   前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。   4   第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)、第五十一条並びに第五十二条並びに民法第六百四十八条第二項及び第三項並びに第六百四十八条の二の規定は、受託者の信託報酬について準用する。     (受益権の譲渡性) 第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。   2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。     (信託法の一部改正に伴う経過措置) 第五十二条 施行日前にされた信託の詐害行為取消請求、否認並びに受益権の譲渡し及び返還の請求については、なお従前の例による。 2 施行日前にされた信託に係る信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等については、前条の規定による改正後の信託法(第四項において「新信託法」という。)第二十三条第二項及び第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。   3施行日前に前条の規定による改正前の信託法(以下この条において「旧信託法」という。)第四十一条又は第二百五十四条第一項の規定による責任に係る債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。     4 施行日前にされた信託に係る受託者の信託報酬については、新信託法第五十四条第四項において 準用する新民法第六百四十八条第三項及び第六百四十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。     5 施行日前に旧信託法第九十三条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の譲渡 については、なお従前の例による。     6 施行日前に旧信託法第九十六条第二項に規定する別段の定めがされた場合における受益権の質入れについては、なお従前の例による。       (詐害信託の取消し等) 第十一条   委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、受託者が債権者を害すべき事実を知っていたか否かにかかわらず、債権者は、受託者を被告として、民法 (明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第一項 の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定(信託行為の定めにより又は第八十九条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定されることをいう。以下同じ。)を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。             2   前項の規定による請求を認容する判決が確定した場合において、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者(委託者であるものを除く。)が当該債権を取得した時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、委託者は、当該債権を有する債権者に対し、当該信託財産責任負担債務について弁済の責任を負う。ただし、同項の規定による取消しにより受託者から委託者に移転する財産の価額を限度とする。   3   前項の規定の適用については、第四十九条第一項(第五十三条第二項及び第五十四条第四項において準用する場合を含む。)の規定により受託者が有する権利は、金銭債権とみなす。   4   委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合において、受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、民法第四百二十四条第一項 の規定による取消しを裁判所に請求することができる。ただし、当該受益者が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。         5   委託者がその債権者を害することを知って信託をした場合には、債権者は、受益者を被告として、その受益権を委託者に譲り渡すことを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。   6   民法第四百二十六条 の規定は、前項の規定による請求権について準用する。   7   受益者の指定又は受益権の譲渡に当たっては、第一項本文、第四項本文又は第五項前段の規定の適用を不当に免れる目的で、債権者を害すべき事実を知らない者(以下この項において「善意者」という。)を無償(無償と同視すべき有償を含む。以下この項において同じ。)で受益者として指定し、又は善意者に対し無償で受益権を譲り渡してはならない。   8   前項の規定に違反する受益者の指定又は受益権の譲渡により受益者となった者については、第一項ただし書及び第四項ただし書(第五項後段において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。     (詐害信託の否認等)        第十二条   破産者が委託者としてした信託における破産法 (平成十六年法律第七十五号)第百六十条第一項 の規定の適用については、同項各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)においてこれによって利益を受けた受益者の全部又は一部」とする。   2   破産者が破産債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、破産管財人は、受益者を被告として、その受益権を破産財団に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   3   再生債務者が委託者としてした信託における民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 の規定の適用については、同項 各号中「これによって利益を受けた者が、その行為の当時」とあるのは、「受益者が現に存する場合においては、当該受益者(当該受益者の中に受益権を譲り受けた者がある場合にあっては、当該受益者及びその前に受益権を譲り渡した全ての者)の全部が信託法(平成十八年法律第百八号)第十一条第一項に規定する受益者としての指定を受けたことを知った時(受益権を譲り受けた者にあっては、受益権を譲り受けた時)において」とする。   4   再生債務者が再生債権者を害することを知って委託者として信託をした場合には、否認権限を有する監督委員又は管財人は、受益者を被告として、その受益権を再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)に返還することを訴えをもって請求することができる。この場合においては、前条第四項ただし書の規定を準用する。   5   前二項の規定は、更生会社(会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第二条第七項 に規定する更生会社又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第百六十九条第七項 に規定する更生会社をいう。)又は更生協同組織金融機関(同法第四条第七項 に規定する更生協同組織金融機関をいう。)について準用する。この場合において、第三項中「民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第百二十七条第一項 」とあるのは「会社更生法 (平成十四年法律第百五十四号)第八十六条第一項 並びに金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 (平成八年法律第九十五号)第五十七条第一項 及び第二百二十三条第一項 」と、「同項 各号」とあるのは「これらの規定」と、前項中「再生債権者」とあるのは「更生債権者又は更生担保権者」と、「否認権限を有する監督委員又は管財人」とあるのは「管財人」と、「再生債務者財産(民事再生法第十二条第一項第一号 に規定する再生債務者財産をいう。第二十五条第四項において同じ。)」とあるのは「更生会社財産(会社更生法第二条第十四項 に規定する更生会社財産又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第百六十九条第十四項 に規定する更生会社財産をいう。)又は更生協同組織金融機関財産(同法第四条第十四項 に規定する更生協同組織金融機関財産をいう。)」と読み替えるものとする。     (信託財産に属する財産に対する強制執行等の制限等)   第二十三条   信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない。   2   第三条第三号に掲げる方法によって信託がされた場合において、委託者がその債権者を害することを知って当該信託をしたときは、前項の規定にかかわらず、信託財産責任負担債務に係る債権を有する債権者のほか、当該委託者(受託者であるものに限る。)に対する債権で信託前に生じたものを有する者は、信託財産に属する財産に対し、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることができる。ただし、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。   3   第十一条第七項及び第八項の規定は、前項の規定の適用について準用する。   4   前二項の規定は、第二項の信託がされた時から二年間を経過したときは、適用しない。   5   第一項又は第二項の規定に違反してされた強制執行、仮差押え、仮処分又は担保権の実行若しくは競売に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第三十八条 及び民事保全法 (平成元年法律第九十一号)第四十五条 の規定を準用する。   6   第一項又は第二項の規定に違反してされた国税滞納処分に対しては、受託者又は受益者は、異議を主張することができる。この場合においては、当該異議の主張は、当該国税滞納処分について不服の申立てをする方法でする。         (損失てん補責任等に係る債権の期間の制限)   第四十三条   第四十条の規定による責任に係る債権の消滅時効は、債務の不履行によって生じた責任に係る債権の消滅時効の例による。   2   第四十一条の規定による責任に係る債権は、十年間行使しないときは、時効によって消滅する。             3   第四十条又は第四十一条の規定による責任に係る受益者の債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。   4   前項に規定する債権は、受託者がその任務を怠ったことによって信託財産に損失又は変更が生じた時から二十年を経過したときは、消滅する。   (受託者の信託報酬) 第五十四条   受託者は、信託の引受けについて商法 (明治三十二年法律第四十八号)第五百十二条 の規定の適用がある場合のほか、信託行為に受託者が信託財産から信託報酬(信託事務の処理の対価として受託者の受ける財産上の利益をいう。以下同じ。)を受ける旨の定めがある場合に限り、信託財産から信託報酬を受けることができる。   2   前項の場合には、信託報酬の額は、信託行為に信託報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。   3   前項の定めがないときは、受託者は、信託財産から信託報酬を受けるには、受益者に対し、信託報酬の額及びその算定の根拠を通知しなければならない。   4   第四十八条第四項及び第五項、第四十九条(第六項及び第七項を除く。)、第五十一条並びに第五十二条並びに民法第六百四十八条第二項 及び第三項 の規定は、受託者の信託報酬について準用する。       (受益権の譲渡性) 第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。   2  前項の規定は、信託行為に別段の定めがあるときは、適用しない。ただし、その定めは、善意の第三者に対抗することができない。

(出典:官報2017年6月2日)

執行役員社長

上場会社では、「執行役員社長」という役職が登場しているようです[1]

取締役に決まる予定だが、株主総会の時期の関係でまだ取締役ではない。

でも会社の代表である社長に就くという会社の事情がある。

取締役という名前が使えないので執行役員社長。

沖縄の会社で「代表取締役会長」と「取締役社長」という肩書きが一社にあるのをみたことがあるのですが、これも外からだと少し分かりにくい印象をもちました。会社の代表は「取締役社長」です。

「執行役員社長」の記事を読んで思ったのは、取締役になってからでも遅くないのに、取締役にもなっていないのに社長を任せて大丈夫なんだな、色んな会社があるんだな、この人は取締役会にも出るんだろうな、ということでした。

 またこの肩書は合同会社でも使えると思うのですが、紹介したら使う人はいるかな、など。以前、有限会社を経営している方が新しく合同会社を設立したとき、「取締役」という肩書きを使えないことを少し残念がっていたのを思い出します。その時は、代表社員を「社長」または「代表執行者」、業務執行社員を「執行役員」と呼ぶのはどうですかと聞いてみました。

 「執行役員社長」は聞き慣れないからか、何か言いづらいような、覚えにくいような。現在の取扱いとしては、(1)臨時の処置に留めること、(2)会社との関係を雇用契約から委任契約に変更すること(3)任期や仕事の内容を具体的に決めておくこと、などで対応していくようです。


[1] 倉橋雄作「執行役員社長の登場と実務対応」商事法務Number.2132

家族信託の融資について、受託者(債務者)が亡くなって変更になった場合、後任の受託者が就任を承諾すると、債務はその時点で自動的に後継受託者に移るのか。

(1)信託行為後の融資(金3000万円)

(2)受託者は信託財産のためにする意思で融資を受けた

(3)連帯保証人は受益者

(3)融資は受託者の権限内の行為

(4)融資された金銭は信託財産責任負担債務となる

(5)信託口口座へ入金がされている

(6)限定責任信託ではなく、責任財産限定特約もされていない

(7)亡くなった受託者の相続人はA,B,Cの3名、そのうちのAが新受託者

(1)から(7)の事実を前提とします。

1、受託者(債務者)が死亡した場合、後任の受託者が就任を承諾すると、債務はその時点で自動的に後継受託者には移らないと考えることができます。後継受託者は、自らが債務者となって債務を負ったわけではないからです。

2、債務は死亡した受託者の相続人に及びます(信託法76条、民法896条)。

3、債権者は、死亡した受託者の相続人A,B,Cに対して金1000万円ずつ債務の履行を請求することができます。

4、B,Cが自身の財産から債権者に対して債務の履行を行った場合、後任の受託者Aや信託財産法人管理人に、信託財産からの償還を請求することができます(信託法75条6項)。

後任の受託者Aが、自身の財産から債権者に対して債務の履行を行った場合、Aは履行した金額について信託財産から自身の財産へ移すことが可能です。信託財産が足りない場合、(1)受益者へ通知して返してもらう(返してもらえなければ受益権の停止、信託の終了)、(2)不動産などがある場合は売却(信託行為に別段の定めがない場合)、などの措置を取ることができます(信託法49条、50条)。

・ただし、受益債権など、信託財産に属する財産のみを持って履行する責任を負う債務については、前受託者は履行責任を負いません。

5、新受託者は、信託財産の帰属主体となり、責任財産を信託財産に限定しながらも、重畳的な債務引受をして、債務者となったことになると考えることができます(信託法75条8項)[1]

したがって、債務金3000万円のうち、金1000万円については、債務者A(責任財産は信託財産とAの財産)、金1000万円については、債務者B(責任財産は信託財産とBの財産)、金1000万円については、債務者C(責任財産は信託財産とCの財産)ということになります。

6、連帯保証人は受益者のままであり、債権者は請求・執行が可能です。

受益者が自身の財産から信託財産を通さないで直接、債権者に対して債務を履行した場合、債務は消滅し受益者とA、B、Cの関係は民法上の保証人の求償関係になると考えられます。


[1] 道垣内弘人『信託法』P287~

信託フォーラムVol.7「信託口口座をめぐる実務と課題」の整理

 

1、信託口預金口座と預金口座と信託口座がある[1]

(1)預金口座・・・金銭消費寄託契約により開設される。信託財産の独立性が担保できない。

(2)信託口座・・・信託行為により開設される。信託財産の独立性が担保できる。委託者の判断能力の衰えや、死亡による主観的事情に左右されない。

(3)信託口預金口座・・・預金契約上の預金契約者と、信託行為上の受託者としての当事者の二面制を持つ。法的には預金契約。分別管理され、帳簿上も信託財産と明示され、受託者がコントロール権を持つ場合、信託としての機能を持つ。

2、(3)について、信託財産の独立性を担保するための要件

(ア)物理的に他の資金管理口座から分別管理されている。

(イ)預金債権が帳簿上も信託財産に帰属されることが明らかにされている。

(ウ)受託者が、預金をコントロールする権利を持っている。

(ア)、(イ)、(ウ)全てがそろえば、信託財産の独立性は担保される[2]

(ア)についてですが、名義が同じだと物理的に分けて管理されていても、差押えは執行されるのではないかと考えます。

(イ)についても同様で、帳簿は債権者から見えないので、支払いが滞って差押えができる状態であれば、とりあえず申し立てるのではないかと考えます。そして差押え申し立ては通り執行されるのではないかと考えます。

(ウ)についても受託者が本当にコントロール権を持っているのかは債権者から分かりません。

成年後見人就任に際して、「本人氏名成年後見人成年後見人氏名」と通帳の表紙に記載され、通帳の表紙をめくると本人氏名のみがカタカナ表記されている金融機関があります。キャッシュカードも同じです。

(3)の信託口預金口座という名称についての説明で私が疑問に思うのは、まず信託契約があり契約した後に金融機関で口座を開設します。信託契約をした後は、受託者として信託事務を処理するための義務の1つとして口座を開設するのであって、寄託者というのは銀行からみた場合ということになります。

そうすると、寄託者というのは金融機関からみた場合のある1面を指しているに過ぎず、当事者の二面制というよりは、受託者としての付随的な面と捉える(受託者であるが、金融機関からみると寄託者でもある。)方が、理解が進むのではないかと考えます。

3、管理口座の課題

(1)誰のための口座か

受益者のための口座となります。

(2)信託を構成するために、議論すべき事柄

(ア)対象となる受託者の範囲

(イ)信託契約上の位置付け

(ウ)書式の統一化

(エ)信託法上、信託財産の独立性が認められるための要件

   (オ)「信託口」口座のために最低限必要なとなる民事信託の仕組みや要件   

(カ)受託者の分別管理義務、善管注意義務の履行がどこまで必要か

   (キ)「信託口」口座を開設するための金融機関にとって確認すべき事項や確認の方法

   (ク)現実の信託事務処理に支障や中断等を生じさせないための予防的かつ手続き的な問題(金融機関に対する事務委託やその内部手続の問題)    (ケ)「信託口」口座が開設されて以後、金融機関はどのような方法で、どこまで民事信託のコンプライアンスを監視するか。

・他の方法

(1)預金契約に特約を付ける[3]

(2)信託監督人を付ける[4]


[1]澁谷彰久「信託口預金口座の法的性質と課題」『信託フォーラムvol.7』日本加除出版 P53―

[2] 前掲澁谷P54

[3] 吉原毅「家族信託の発展と金融機関の対応について」新井誠編『高齢社会における信託制度の理論と実務』2017日本加除出版 P131~

[4] 渋谷陽一郎「民事信託の実務における新局面」『信託フォーラムvol.7』日本加除出版 P31―

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