「預金を信託財産とする受託者の死亡及び預金口座への差押に対する実務対応シミュレーション」

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2021年01月26日一般社団法人民事信託推進センター

第1回 テーマ別民事信託研究会 金森健一弁護士

研修の前に以下のメールが届きました。

2021年01月22日一般社団法人民事信託推進センター事務局

平素より当社団の活動にご協力いただきありがとうございます。

さて、標記研究会開催に際して、Zoomに、議論参加者として招待させていただきます。

2021年01月26日一般社団法人民事信託推進センター事務局

「第1回 テーマ別民事信託研究会」の参加登録ありがとうございました。

当日は聴講者として参加をお願いいたします。

 また、質問等はQ&Aではなく、当日のご発言にてお願いいたします。当会は約2時間の中で議論をすることにより理解を深めるための勉強会です。講演会ではありません。(このような趣旨から、当日の議論の動画はHP掲載をせず、公開することもありません。)?レコーディングされていましたが。。。

研修当日に講義参加者から聴講者に代わるのは良いのですが、チャットで講義参加者以外とやりとりする機会がなく、少し残念な印象です。オフライン研修・zoomの良いところだと思うのですが、使える機能は使った方が良いのではないかなと思います。雑談からの発見や事例共有もあると思います(講演会ではないからこそ。)。昨日も遠慮気味に2件コメントしましたが、誰からも返信がありませんでした。本稿は、未定稿であり、他に掲載する予定もございますため無断引用はご遠慮ください。研修資料に無断引用はご遠慮下さい、とありました。理由は、1、未定稿であること、2、他に掲載する予定があることです。1、に関しては、確定稿(決定稿・確定原稿)が紙の記事になるという意味だと思うのですが、確定稿に関して議論になる場面もあることからすると、引用は駄目という理由としては弱くないかな、というのが感想です。2、に関して、1と同じ理由です。加えるとすると、この勉強会を使って他に掲載する予定の記事が充実する可能性もあると思います。逆に記事の質が落ちる可能性があれば教えて下さい。そのような機会を設けて引用は駄目、という理由が私には分からなかかったので、知っている方がいらっしゃったら教えて下さい。論文の査読を受けて、査読者から指摘があった場合、草稿を他の人に見せて意見を聴く場面を設けたとします。他の人が引用を行った場合、何か問題があるのでしょうか。転載、加工、自分で考えたかのように表現するのは問題があると思いますが、引用に問題がある理由が分かりませんでした。

・引用についての備忘録

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・(一社)民事信託推進センターから著作権法違反の通知が届きました。

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・準第3者異議訴訟・・・第3者異議の訴えの準用(信託法23条による民事執行法38条の準用)。略語で法令用語ではない。信託法の範囲内で、第3者異議の訴えと同じように扱う、という意味。原則として受益者が異議を申し立てることを想定されているようです。実際に申し立てるのは受託者になると思います。

・請求異議訴訟を提起する場合の請求の趣旨は、第三者異議訴訟の場合と同じでは駄目なのか?・・・請求権の消滅原因事実も主張立証する必要があるので、同じではない。請求異議訴訟は、原告の請求権そのものを消滅させるために提訴する。第三者異議訴訟は、原告の請求権そのものは認めるけれど、その物は被告の物じゃないから取って行かないで下さい、と強制執行を止めるために提訴する。

請求異議訴訟の訴訟物

・債務名義の執行力の排除を求める形成権たる執行法上の異議権(大阪高判昭和55年5月28日)

請求異議訴訟の要件事実(債務名義が裁判の場合)

1.原告を債務者とする請求権につき確定判決の存在

2.1の請求権の口頭弁論終結後の消滅、阻止事由

第三者異議訴訟の訴訟物

・具体的執行又は執行処分に対する執行法上の異議権

第三者異議訴訟の要件事実

1.具体的執行行為が開始されたこと

2.1の執行の目的物について原告の所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利の発生原因事実

・請求異議の請求の趣旨において、固有財産限定債権であることを記載する必要があるか。固有財産限定債権とは何だろう?法令用語として探すことは出来ませんでした。固有財産等責任負担債務(信託法22条1項本文)を債権者からみた用語、限定責任信託(信託法216条)を参考にした用語なのかなと想像しました。

・信託財産の独立保全機能は、預金契約の特約がなされてはじめて生じることが確認されたのか?

・・・1、屋号口座、2、受託者名義で、信託契約公正証書に口座情報が記載されている口座、3、通常の信託口口座(名義が信託口口座であり、金融機関のシステム管理上も受託者の個人口座とは別人格の口座として管理されている口座の3つに大別してみます。全ての口座について、預金契約の特約がなされない限り、信託財産の独立保全機能は働かないのか。限定責任信託との取引では、登記事項証明書を確認して信託財産の独立保全機能を確保することが出来ます。登記事項証明書が法令にも明確に記載されていて、公的な証明書として一番の証拠力を持つと考えてみます。上に挙げた3つの口座は、法令への記載(あえて書くなら信託法34条)、公的な証明(間接的に信託行為に係る公正証書)について、若干弱い印象を受けます。私は、1、2、3の順で証拠力が高くなる(執行停止許可の決定が出るまでの時間が速くなる。)と考えます。2と3の違いである金融機関内部の情報については、提訴時には受託者(または受益者)が主張・立証することが難しくなります。金融機関としては、第三債務者の陳述書において説明して頂けると執行事務もスムーズに流れるのではないかと考えます。例えばオリックス銀行であれば、家族信託預金特約の説明書を第三債務者の陳述書に添付し裁判所に提出する方法を考えることが出来ます。

オリックス銀行「信託口口座「eダイレクト預金<家族信託預金特約」について>」

https://www.orixbank.co.jp/personal/trust/familytrust/pdf/edirect.pdf

本口座の預金は受託者個人名義の付保対象預金等と名寄せされます。

・信託口口座を開設することは、金融機関にとってコスト負担が高いのか。

・・・私の実感では顧客によるのだと思います。数億の借入れや預貯金があったり、取引期間が長かったりする顧客に対して信託口口座を作成するするということは、少なくとも依頼者(委託者)が認知症などを発症してから亡くなるまでは取引を継続することが出来て、信託終了後の所有者が引き続きその金融機関で取引を継続する可能性も高くなります。

・信託口口座を開設することは、依頼者にとってコスト負担が高いのか。

・・・現在、沖縄県内では、信託口口座を開設するために金融機関に費用を支払う必要はありません。ただし、信託行為を公正証書にすることが求められるので、その分の費用と、公証センターとのやり取りは多少高く感じる方もいらっしゃると思います。

・請求異議訴訟では、固有財産限定責任債務かどうかは既判力で排除される?

・・・私は、確定判決が債務名義となっている場合は既判力が働くのではないかと考えます。

・請求異議訴訟、第三者異議訴訟において、異議事由の限定はあるか。口頭弁論で受託者が信託財産かどうかを主張する義務がある?

・・・主張する義務はあると考えます。

・債務不履行(民法415条)ではなく、不法行為(民法709条)だから難しい?

・・・債務不履行による損害賠償の場合は、債務を履行したということを受託者が立証する必要があり、その中で信託事務として履行したのか否か主張することが出来ます。不法行為による損害賠償においては、損害を受けた側がどのような損害を受けたのか、主張立証する必要があります。その中で受託者は、「あの加害行為は信託事務として行ったものです。」「あの時は個人的な行為という認識でした。」と立証を行うのは難しいかもしれません。

・第三者に対する陳述書に対して、金融機関が「支払う」という回答をすることができるか。供託までいくか。

・・・金融機関が信託契約について、事前審査を行っている場合、「支払う」という回答を行うことは出来ないと考えます。「差し押さえるべき債権が不特定」という回答になるのではないでしょうか。また受託者個人の名義以外の名義には、差押えの効力が及ばないと考えることも出来ます。

権利供託は可能だと考えます。また、民事執行事務・供託手続について、電子申請が一連の流れの中で可能となれば、利用は進み金融機関の負担も軽くなるのではないかと感じます。

債権差押命令申立書の差押債権目録に、支店以上に細かく(信託口、受託者)など書けるか?

・・・可能だと考えます(民事執行規則133条2項、「民事執行の実務第3版債権執行編上」きんざい平成27年P100)。

 受託者の交代があった場合、旧受託者名義口座から払うのか、新しい名義に替えて支払うのか。

・・・信託行為の内容、受託者の交代の理由によりますが、原則として新しい名義に替えて支払うことになると考えます(信託法75条、76条)。

 受託者の交代は包括承継(相続か会社分割)か特定承継か。信託法に基づく包括承継であれば、金融機関は受託者の相続人に支払うと過失がないとはいえない?

信託法に基づく包括承継なら新受託者は屋号口座でも訴訟で勝てる?

・・・包括承継か特定承継かは信託行為の内容によって変わってくるのではないかと考えます。包括承継であれば、金融機関が受託者の相続人に支払うと過失があると判断される可能性があるかといえば、あり得ると考えます。特定承継と構成しても、金融機関が受託者の相続人に払い戻した場合、その審査方法によっては過失有りと認定される可能性はあると考えます。包括承継なら新受託者は屋号口座でも金融機関との訴訟に勝てるか、については勝てる可能性が高いと思いますが信託口口座より時間がかかると思います。

参考

 法令執務研究会編「新訂ワークブック法制執務」ぎょうせいP718

別冊NBL編集部編「信託法改正要綱試案と解説」商事法務P92

遠藤俊英ほか監修「金融機関の法務対策5000講1巻」(一社)金融財政事情研究会2018P1171 

道垣内弘人編「条解信託法」弘文堂2017P114

遠藤俊英ほか監修「金融機関の法務対策5000講1巻」(一社)金融財政事情研究会2018P1417

「家族信託ファクトブック2020―第3章 一般向けアンケート結果の報告)―」より

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

回答者300名

年齢・性別 40代を筆頭として50代、60代、70代、80代と続く。男性の割合が各年代において6~9割。

相続における立場 自身が親、自身が推定相続人(親が認知症など)、自身が推定相続人(親が認証などではない)が各約3分の1

住居形態 一戸建て約8割、マンション2割

地域 二桁の回答者は、北海道、関東の一部、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県。沖縄県は0件。

Q1.あなたは今後の相続について、検討を始めていますか。

Q2.検討していない理由は何ですか。

Q3-1.今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」

について家族と話す機会は。

Q3-2.今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」

にまつわる対策について、感じ方の変化は。

Q4.財産について、お考えに近いものをお答えください。

Q5.財産の分配についてもお答えください。

Q6.相続について、家族と話をしていますか。

Q7.主にどういう点について相談されましたか。

Q8.お話のきっかけは何でしたか。

Q9.お話(ご相談)をしていかがでしたか。

Q10-1.相続について話さない理由は何ですか。

Q10-2.親が認知症の場合の相談相手。

Q11.あなたは、ご自身の家族に対する感謝の気持ちや想いを、伝えたことがありますか。

Q12.あなたは自分の資産内容を把握していますか。

Q13.以下の項目の中であなたが行なっていることをお答えください。

遺言書の作成、エンディングノートの作成、専門家への相談、後見人の指定、書籍での学習、セミナー等への参加

Q14.遺言書を作成したタイミング、及び作成の理由は。

Q15.専門家に相談しない理由は。

Q16.相続について不安に感じることをあげてください。

Q17.あなたは相続に関する情報はどこから入手されましたか(する予定ですか)。

Q18.あなたは、平成27年から相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税を支払うべき対象が十全より拡大していることをご存じですか。

Q19-1.あなたは、令和元年より相続人ではない親族でも被相続人の介護などで財産の増加・維持に貢献している場合は相続税時、相続人へ金銭の請求権が発生することを知っていますか。

Q19-2.無償の介護・看病等を行った相続人以外の親族に対する財産の配分は。

Q20.あなたは、親が認知症になった場合、銀行口座などが凍結されて、後見人以外は配偶者や子供であっても、お金を引き出すことができなくなることをご存じですか。

Q21.あなたは、親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為が被相続人自身にできなくなることをご存じですか。

Q22.あなたは、親が認知症になった場合、「成年後見制度」を利用すると対象者が亡くなるまでやめられないことをご存じですか。

Q23.あなたは、親が認知症になった場合、「成年後見制度」を利用すると弁護士等、後見監督人へ報酬が発生することをご存じですか。

Q24.仮に親世代が認知症を発症した場合、成年後見制度を利用したい(してほしい)と思いますか。

Q25.成年後見制度を利用する場合、後見人にふさわしいのは誰ですか。

Q26.家族信託という制度をどの程度ご存じですか。

Q27.あなたは家族信託をどこで知りましたか。

Q28.家族信託を利用したいと思いますか。

Q29.家族信託のメリットは何だと思われますか。

まずは、29問あるアンケートに300名もの方々が答えて下さっているのが有難いなという感想を持ちました。協会主催のセミナーを受講した際にアンケート用紙が配られたのか、ウェブで行ったのか、期間はどのくらいだったのかは記載されていませんでした。

Q1.については、親、子世代とも約6割が何らかの検討を始めてとの結果です。何かしらしなくちゃいけないんだろうな、と考えているような時期かもしれません。

Q2.について、検討するほどの財産がないから、というのが1位を占めています。各家庭で検討すべきか、そうでないかは違って来るのだと思います。時間の経過とともに変化することもあると思います。定期的にチェック出来るようなアプリなどがあると良いのかな、と感じました。LINEでの簡単な相談が出来たりするのも良いのかもしれません。まず一歩踏み出すと結構意識が変わったりすることがあります。また、過去に専門家に相談して嫌な思いをした方もいるのかもしれません。費用がかかりそうだから、というの理由がなかったのが意外でした。

Q3―1.3-2.について、特徴的なのは認知症の親を持つ子世帯で、相談の機会が増えたという回答も、減ったという回答も、それぞれ平均を上回っています。また、コロナ禍の中で親や配偶者の認知症が進んでいるようにみえるので、作成した遺言書を書き直した方が良いのか、と相談にいらっしゃる方もいました。同居、別居でも違うのかなと感じます。

 今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」にまつわる対策についての感じ方の変化として、何らかの対策はしておくべきだと現実的に感じた方の割合が約2割います。私たちが経験したことのない状況で何らかの危機感、不安を感じるのは納得感があります。私も同様で、コロナ禍以前と以後では、業務に関する感じ方は変化しています。

Q4.について、できるだけ多くの資産を子に遺すのがよい、資産は親が適度に使い、残った分を子に相続させるのがよい、の2項目で約7割を占めます。どちらにしてもどのような形の資産を、誰に渡す(残す)のかについては、回答者の方はある程度具体的な意向があるのだなと感じます。

Q5.について、親は子供たちに対し、均等に配分するのが平等と考えているののが6割。子のほうは親への貢献(家業の承継や介護)を考慮してほしいとの回答が5割近くに達しています。親の意思が固く決まっている場合は良いと思います。生前贈与でも対応できる部分はあります。子の要求を親に求めると、親がどのように決めても子の不安が残る事案が少なくないような気がします。先に子ども同士で合意してから、親に聞いてみるのが親の負担が少ないような気がします。子どもといっても30代~60代だと思われるので、とても不平等だ、ということでもない限りは、譲歩し合うこともできるのではないでしょうか。

 債務がない(または資産より少ない)だけでも、話し合いはやりやすいものということを少しでも頭に入れても良いのかなと感じます。

Q6,Q7.Q8. Q9.について、4 人に1 人強が家族で相続に関する話をしるようです。相続だけに限らず、介護や認知症になった際の対応、万一の際の葬儀やお墓についてなど、広く親の老後について話されているようです。

 話のきっかけとなったのは「親の怪我や病気」が5割超でした。具体的な健康不安を感じた時や、親戚など身近な不幸に接した時などに、改めて先のことを話し合っておかなければと思われる方が多いのは、納得感があります。話をした結果、72%の方にとって、こうした親子のコミュニケーションが、具体的な相続対策を検討するよいきっかけとなっているようです、との記載がありますが、ここについては私は分かりませんでした。親と子供全員なのか、一部の子だけなのかで変わってくるのではないかと思います。

Q10-1. Q10-2.について、相談したいが話をするきっかけがない、何も検討していないので相談できないが5割超を占めています。親子ってそういうもんだよなぁ、と感じます。親が認知症の場合の相談相手に、自分の配偶者を挙げている方が回答100名のうち、9名いらっしゃいます。第三者的な方の意見を聴くのは有意義なことだと思います。ただし、他の兄弟姉妹からみるとあまり良い気持ちをしない方がいらっしゃる場合もあります。この辺は難しいところだな、と感じます。

Q11.については、質問の趣旨が分かりませんでした。

Q12.Q13. Q14. Q15.について、資産内容の把握をしている方は、預貯金など管理しやすいものは高く、老後の生活資金など不確定のものは低いです。普通の結果だと思います。

 遺言書・エンディングノートを作成した、または作成を検討している方と書籍での学習をされている方が2割を超えています。自分で決めておきたい、という方は一定数いるのが分かります。遺言書を作成したタイミングとして、還暦、古希など一定の年齢に達した際という項目が一番多く48パーセントでした。私の依頼者にそのような方はいなかったので、記念のようで良いなと感じました。

 専門家に相談しない理由として、信用できる専門家が身近にいないから、何を相談すればよいかわからないから、知人などの例を見ても、事前に相談しなくても特に問題はないと思われるから、で8割以上を占めます。ファクトブックでは、専門家への敷居の高さを原因としています。私は少し違うと思います。顔が見えない、人柄が分からない、費用がどのように計算されているのか分からない、など公開されている情報の中身があまりないことが原因ではないかなと感じます。

Q16. Q17. Q18. Q19-1. Q19-2.について、3割強が相続について家族間で相談しにくい、1割強が相続に関する知識がないと回答しています。人生で1度か2度くらいしか経験しないことなので、当然のことかなと感じます。相続という大きな括りではなく、1つ(例えば葬儀費用)などについてだけ決めておくだけでも違ったりするのではないか、と感じます。

 相続に関する情報については、雑誌や書籍、ホームページ、家族親戚など、様々なところから収集しているという結果です。今の時代だと訊いていないのに流れてくる状態だと思います。情報過多になっても疲れて結局何もしないで良いや、となってしまいがちなので、難しいなと感じます。

 相続税の基礎控除の引き下げについては、不動産を持っている方は知っている方が多いという印象です。令和元年の民法(相続関係)改正の寄与分については、知っている方が3割いるようです。意外と多いなぁという印象です。

Q20.からQ29.について、成年後見制度と家族信託制度に関する質問です。

 現在、一定限度で親が認知症になった場合でも、銀行口座から配偶者や子供であっても、お金を引き出すことができるようになっている金融機関もあるようです。今後もその流れは広がるのではないかと思います。

 親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為が親にできなくなることをご存じですか、の項目に6割の方は知らなかった、と回答しています。土地の売買、区画整理、銀行融資、保険金受取などがない限り、契約行為でも出来てしまう実態があるので、6割の方が知らないのも無理はないと思います。例えば200万円位のペンキの塗り替え工事を所有者である親のお金を使って子どもがサインする、ということは日常的に行われています。

 成年後見制度を利用すると対象者が亡くなるまでやめられない、というのは誤りです。後見事務の負担が大きく無理であれば辞任することが出来ます。その代わりに市民後見人か他の親族・士業などが就くという建てつけです。

成年後見制度を利用したい人は、約1割です。多くはないですが少なくもないと思います。

なお、家族信託を利用したい人の割合は1割超とあまり変わらないのが意外でした。

「家族信託ファクトブック2020―第3章 アンケートデータでみる家族信託(2020)―」より

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

Q1 これまでに家族信託に関連したご相談はどれくらいありますか

Q2 その中で信託組成に至った件数は何件ですか

Q3 家族会議を開催する割合をお教えください

Q4 家族信託に関するご相談はどういうルートで受けられることが多いですか

Q5 家族信託の組成や相談を進めるうえで、困ったこと、阻害要因となったことはありましたか

Q6 家族信託の相談ではどのような内容のものが多いですか

Q7 組成の継続フォローは確実に行われていますか

Q8 信託口口座を開設できた金融機関をお答えください

Q9 口座開設におけるお困りごとを教えてください

Q10 口座が開設できなかった場合はどうされましたか

また、抵当付不動産について債権者の承諾は得られましたか

承諾を得られなかった場合の対処法をお答えください

Q11 協会にどのようなサポートを期待されているかをお答えください

(回答総数300 件)

Q1、Q2、については、多いのか少ないのか、自主申告であることなどからよく分からない部分があるので、感想はありません。グラフを観ていると年々増えている、年に1人一件くらい新規で信託行為を設定している、というようなことが何となく分かります。Q3の家族会議については、年に一度は専門家同席のもと、話し合いの場を持ちましょう、という顧問契約のようなものだと思います。どのような内容で行うかは記載されていないので、特別に思うところはありませんでした。約3分の1(約100名)の方は必ず実施している、と回答されています。

Q4の相談が寄せらせるルートについて

 ここは、結構散らばりがあって興味深くみていました。大まかに5つに分かれるようです。自社チラシ、HP、既存顧客への提案、取引先からの提案、セミナーなどの参加者、その他(協会からの紹介、金融機関からの紹介、新規先への提案など)。

取引先からの提案、セミナーなどの参加者という枠の中に、おそらく士業、不動産会社などからの紹介も入っているのだと思いました。「提案」という中には、制度の紹介や遺言などの相続関係の相談を受けた際に提案してみた、というものも含まれれるのではないかと想像します。家族信託・民事信託のみをいきなり提案しても説明が大変だと思いますし、相談した方も理解が難しいのではないかと考えるからです。

アンケート調査については、大体納得できる印象です。

 抜けている、というか私が関心を持っているのは、共同受任、業務提携、リーガルチェック、同業向けセミナー、学校という名前がついたサービスについてです。情報が入ってくる限りでは1,000件/年くらいあるように思います。色々なことを考える発想力は凄いなと思いますが、少なくないお金を払う同業者にとって本当に利益になっているのか、私には分かりません。特に去年の合格者に対して営業をかけている場面を観てからは、おいおいおいと感じてしまいました。司法書士会主催の研修と書籍、出来れば自分の名前で発信するメディアを持つこと(紙、各種ブログサービス、ホームページ、SNSなど)で充分足ります。

Q5について、本人の理解、家族の理解、抵当付き不動産、公正証書の作成実務、農地の信託財産化、税理士弁護士の理解、組成コスト、金融機関による受託者への融資、信託登記手続き、信託契約書の作成実務、金融機関での口座作成実務、本人の判断能力の低下、受託者のなり手などが挙げられています。

この中で私が重要だと考えるのは、本人の判断能力の低下と家族の理解です。本人の判断能力が低下している場合、信託行為自体の有効性が疑われてしまいます。信託行為の内容でどれだけ考えても無駄になってしまいます。また本人の判断能力の判断能力の低下は、家族の理解(意向)との齟齬を招く可能性があります。

Q6については、認知症対策が50%を超えています。大きな括りで考えると、将来への不安を一定限度ではありますが軽減するため、と考えてよいと思います(保険と近い)。

Q7について、6~7割以上が適切なフォローを実施している、と記載されています。これは質問するとしたら依頼者だと思います。

Q8について、口座が開設できない場合は受託者の個人口座や屋号の口座を適用するなど、柔軟にご対応されており、信託口口座ができないことを理由に組成をあきらめるケースは6%、と記載があります。受託者の個人口座や屋号口座について、私は否定的です。沖縄県内の金融機関のほとんどが信託口口座を作成可能なことは、恵まれているかもしれません。また最近はインターネットで信託口通帳を作成可能な金融機関も出てきているようなので、場所を問わなくなってくるのだと思います。抵当付不動産で債権者の承諾を得られなかった場合が3割近くあるということは、少し驚きを持ちました。金融機関にとって不利なことは少ないと思います。受託者の特性や遺留分など、何かしらの要因が重なっているのではないかと考えます。

Q11についての記載を探すことは出来ませんでした。

「家族信託ファクトブック2020」第2章 家族信託が必要とされる背景

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

少子高齢化の現在、確かに現役世代の支えるべき高齢者の数は増大していますが、その分、未成年者の数は大きく減少しているために、トータルでの社会コストとしてみると、実は1965 年の時点と現代、そして近い将来を考えても、就業者1 人が支えるべき非就業者の人数には、大きな変化は見られないのです。

 

 何か違う感覚を持つのは私だけでしょうか。国民年金保険料、国民健康保険料の額が、最初に払い始めた20歳の時より、5,000円/月位高くなっていると思うのですが。高齢者の医療費と年金を合わせた額と、未成年者の医療費と教育費などを合わせた額の比較で決まるのかなと感じました。

ただ、「就業者が非就業者を支える」という視点に環境適応の緒を見出そうという動きが起こっていることも確かです。加えて新たに現役世代の負担感を減じるような施策が打たれ、たとえば「高齢者の保有する金銭的、人的リソースがうまく社会で活用され、循環させられる制度」がありさえすれば、未来は変えていけるかも知れません。

 「高齢者の保有する金銭的リソースが上手く社会で活用され、循環させられる制度」の選択肢の1つとして家族信託がある、ということだと思います。このような書かれ方の場合、金銭的リソースを保有しない高齢者には、家族信託を利用する選択肢は(ほとんど)ない、ということも出来ます。

世帯主の年代別に、平均してどの程度の資産を保有しているかをみたものが以下のグラフです。

現役世代、たとえば40 歳代が平均で2,909 万円(金融資産588 万円、不動産等実物資産2,321 万円)程度であるのに対し、60 歳代は4,649 万円(金融資産1,509 万円、不動産等実物資産3,140 万円)と、とくに金融資産では3 倍近く差が開いていることがわかります。

この25 年間で60 歳代以上の資産はほぼ倍増、個人資産全体の約6~7 割を占めるに至り、個人金融資産約1,700 兆円中1,000 兆円あまりが高齢者層の保有、個人宅地資産も、約900 兆円中520 兆円が同じく高齢者層の保有となっています。

 私の個人的な感触は、簡単に高齢者が自身の所有する財産を次世代に引き継ぐとは思えません。何かしらの安心が必要だと感じます。私が所有していても子供に管理してもらうか、といったら自分で出来る間は自分で管理したいと思います。おそらく、自身に大きな疾患が見つかった場合(ステージ3の癌など。)は、今のうちに動いておこう、となるかもしれません。その次に、身近な親戚、友人知人の病気や死、相続で争った(財産の所有に拘って争った)ことを経験した・聞いた場合には、ちょっと考えないといけないのかな、と思うかもしれません。

認知症発症により“塩漬け”とされる高齢者の金融資産額は年々上昇しており、2030 年度時点で215兆円に達するとの試算が、2018 年8 月に、第一生命経済研究所より発表されています。

 塩漬け、というのは全く使われないという意味ではなく、原則として高齢者自身のためにしか使えなくなる、というような意味合いだと思います。

・企業の後継者不在は3 社に2 社という結果が出ており、この傾向は企業規模が小さいほど顕著です。また、経営者の年齢別では、とくに緊急性の高い60 歳代でも59.6%がなお「後継者不在」と回答しています(東京商工リサーチ発表)。

これは非常に憂慮すべき問題であり、2020 年1 月から10 月までの「後継者難」倒産は301 件(同期比47.5%増)に達しました。今年はこれに加え、コロナ禍の影響による休廃業・解散件数も大幅に増加しています。同じく2020 年8 月に発表された東京商工リサーチの第7 回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査によれば中小企業の廃業検討率は8.5%に上り、かつ「コロナの影響が継続している」と回答した企業のうち4.3%がその具体例として国内取引先企業の廃業を挙げています。最終的には30 万社を超える中小企業が廃業する恐れがあると言われています。

こうした点から、今後は少子高齢化による生産人口の減少とともに企業そのものの急激な減少による地域経済の落ち込みが心配されます。

 事業承継が進まない、というのは私が司法書士になったときからずっと聞いているような気がします。ただ、経営者の中には様々な理由で廃業する人がいることも分かり、法人設立に比べて悪い印象を持たれているんじゃないかな、と感じるようになってきました。私は、自分の仕事の範囲で起業、廃業の意思は尊重していきたいと思います。その間に法人の箱だけ誰か使うかな、法人の中身(機器)だけ事業を新しくやる人が使うかな、後継者に早めにバトンタッチしたいな、といった場合に必要な人に繋げられるようにはしたいと思います。

民事信託・家族信託の共同受任など

・共同受任:受任した際の報酬額の30%~70% 

お客様との打合せに最低1回は参加します。(交通費は別途必要)

参考となる信託契約書、信託目録を提供します。(信託契約書等は作成していただきます)

Zoom等を用いて、契約書の内容や信託目録を一条ずつ読み合わせをします。

依頼者との業務委任契約書に当法人も押印しますので、何かあったときは当法人も責任を持って対応します。

契約書のチェック:1契約書につき10万円~

ご自分で作成された契約書を、こちらもチェックします。

Zoom等を用いて、契約書の内容や信託目録を一条ずつ読み合わせをします。

依頼者との業務委任契約書には、当法人は押印しません。

・業務サポート

家族信託設計コンサルティング・・・共同受任(各々の司法書士が依頼者に請求)

バックアップ・・・受任司法書士に対して、各案件ごとに完全なる≪スポット報酬≫とするか、受任専門職との顧問契約に基づき≪月額顧問料+各案件に関する付加報酬≫

リーガルチェック・・・受任した専門職との顧問契約に基づく月額顧問料が基本

・費用(報酬)基準を出していない事務所・・・ホームページがあり、民事信託、家族信託を専門としているけれど費用(報酬基準)がないところに関しては、何か考えがあってのことなのかなと感じます。

 例えば、既に紹介をしてくれる方が複数いるので、費用を掲載する必要がない。民事信託は複雑・高度なので見積書は依頼者毎にしか出せない。財産の内容や希望によって変わってきますので、 相談後に見積書を作成。など。以前まで報酬表を載せていたのに、今回久し振りに覗いてみると掲載されていないという司法書士法人もありました。

・費用(報酬)シミュレーションがホームページに付いている事務所があって、利用者にとっては便利な感じがしました。

 司法書士が「リーガルチェック」という言葉を利用する場合、当然に司法書士法と判例の範囲内と考えて良いのか、それとも何か注釈を付けないといけないのか、ホームページに載せる場合には考える必要があるんじゃないかなと感じます。

・最近印象的だったのは、司法書士その他の士業に教えることで対価を得ている民事信託・家族信託の団体が、令和2年度の司法書士合格者に対してSNSで積極的にコミュニケーションを取っていることです。

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