「家族信託ファクトブック2020―第3章 一般向けアンケート結果の報告)―」より

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

回答者300名

年齢・性別 40代を筆頭として50代、60代、70代、80代と続く。男性の割合が各年代において6~9割。

相続における立場 自身が親、自身が推定相続人(親が認知症など)、自身が推定相続人(親が認証などではない)が各約3分の1

住居形態 一戸建て約8割、マンション2割

地域 二桁の回答者は、北海道、関東の一部、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県。沖縄県は0件。

Q1.あなたは今後の相続について、検討を始めていますか。

Q2.検討していない理由は何ですか。

Q3-1.今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」

について家族と話す機会は。

Q3-2.今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」

にまつわる対策について、感じ方の変化は。

Q4.財産について、お考えに近いものをお答えください。

Q5.財産の分配についてもお答えください。

Q6.相続について、家族と話をしていますか。

Q7.主にどういう点について相談されましたか。

Q8.お話のきっかけは何でしたか。

Q9.お話(ご相談)をしていかがでしたか。

Q10-1.相続について話さない理由は何ですか。

Q10-2.親が認知症の場合の相談相手。

Q11.あなたは、ご自身の家族に対する感謝の気持ちや想いを、伝えたことがありますか。

Q12.あなたは自分の資産内容を把握していますか。

Q13.以下の項目の中であなたが行なっていることをお答えください。

遺言書の作成、エンディングノートの作成、専門家への相談、後見人の指定、書籍での学習、セミナー等への参加

Q14.遺言書を作成したタイミング、及び作成の理由は。

Q15.専門家に相談しない理由は。

Q16.相続について不安に感じることをあげてください。

Q17.あなたは相続に関する情報はどこから入手されましたか(する予定ですか)。

Q18.あなたは、平成27年から相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税を支払うべき対象が十全より拡大していることをご存じですか。

Q19-1.あなたは、令和元年より相続人ではない親族でも被相続人の介護などで財産の増加・維持に貢献している場合は相続税時、相続人へ金銭の請求権が発生することを知っていますか。

Q19-2.無償の介護・看病等を行った相続人以外の親族に対する財産の配分は。

Q20.あなたは、親が認知症になった場合、銀行口座などが凍結されて、後見人以外は配偶者や子供であっても、お金を引き出すことができなくなることをご存じですか。

Q21.あなたは、親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為が被相続人自身にできなくなることをご存じですか。

Q22.あなたは、親が認知症になった場合、「成年後見制度」を利用すると対象者が亡くなるまでやめられないことをご存じですか。

Q23.あなたは、親が認知症になった場合、「成年後見制度」を利用すると弁護士等、後見監督人へ報酬が発生することをご存じですか。

Q24.仮に親世代が認知症を発症した場合、成年後見制度を利用したい(してほしい)と思いますか。

Q25.成年後見制度を利用する場合、後見人にふさわしいのは誰ですか。

Q26.家族信託という制度をどの程度ご存じですか。

Q27.あなたは家族信託をどこで知りましたか。

Q28.家族信託を利用したいと思いますか。

Q29.家族信託のメリットは何だと思われますか。

まずは、29問あるアンケートに300名もの方々が答えて下さっているのが有難いなという感想を持ちました。協会主催のセミナーを受講した際にアンケート用紙が配られたのか、ウェブで行ったのか、期間はどのくらいだったのかは記載されていませんでした。

Q1.については、親、子世代とも約6割が何らかの検討を始めてとの結果です。何かしらしなくちゃいけないんだろうな、と考えているような時期かもしれません。

Q2.について、検討するほどの財産がないから、というのが1位を占めています。各家庭で検討すべきか、そうでないかは違って来るのだと思います。時間の経過とともに変化することもあると思います。定期的にチェック出来るようなアプリなどがあると良いのかな、と感じました。LINEでの簡単な相談が出来たりするのも良いのかもしれません。まず一歩踏み出すと結構意識が変わったりすることがあります。また、過去に専門家に相談して嫌な思いをした方もいるのかもしれません。費用がかかりそうだから、というの理由がなかったのが意外でした。

Q3―1.3-2.について、特徴的なのは認知症の親を持つ子世帯で、相談の機会が増えたという回答も、減ったという回答も、それぞれ平均を上回っています。また、コロナ禍の中で親や配偶者の認知症が進んでいるようにみえるので、作成した遺言書を書き直した方が良いのか、と相談にいらっしゃる方もいました。同居、別居でも違うのかなと感じます。

 今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」にまつわる対策についての感じ方の変化として、何らかの対策はしておくべきだと現実的に感じた方の割合が約2割います。私たちが経験したことのない状況で何らかの危機感、不安を感じるのは納得感があります。私も同様で、コロナ禍以前と以後では、業務に関する感じ方は変化しています。

Q4.について、できるだけ多くの資産を子に遺すのがよい、資産は親が適度に使い、残った分を子に相続させるのがよい、の2項目で約7割を占めます。どちらにしてもどのような形の資産を、誰に渡す(残す)のかについては、回答者の方はある程度具体的な意向があるのだなと感じます。

Q5.について、親は子供たちに対し、均等に配分するのが平等と考えているののが6割。子のほうは親への貢献(家業の承継や介護)を考慮してほしいとの回答が5割近くに達しています。親の意思が固く決まっている場合は良いと思います。生前贈与でも対応できる部分はあります。子の要求を親に求めると、親がどのように決めても子の不安が残る事案が少なくないような気がします。先に子ども同士で合意してから、親に聞いてみるのが親の負担が少ないような気がします。子どもといっても30代~60代だと思われるので、とても不平等だ、ということでもない限りは、譲歩し合うこともできるのではないでしょうか。

 債務がない(または資産より少ない)だけでも、話し合いはやりやすいものということを少しでも頭に入れても良いのかなと感じます。

Q6,Q7.Q8. Q9.について、4 人に1 人強が家族で相続に関する話をしるようです。相続だけに限らず、介護や認知症になった際の対応、万一の際の葬儀やお墓についてなど、広く親の老後について話されているようです。

 話のきっかけとなったのは「親の怪我や病気」が5割超でした。具体的な健康不安を感じた時や、親戚など身近な不幸に接した時などに、改めて先のことを話し合っておかなければと思われる方が多いのは、納得感があります。話をした結果、72%の方にとって、こうした親子のコミュニケーションが、具体的な相続対策を検討するよいきっかけとなっているようです、との記載がありますが、ここについては私は分かりませんでした。親と子供全員なのか、一部の子だけなのかで変わってくるのではないかと思います。

Q10-1. Q10-2.について、相談したいが話をするきっかけがない、何も検討していないので相談できないが5割超を占めています。親子ってそういうもんだよなぁ、と感じます。親が認知症の場合の相談相手に、自分の配偶者を挙げている方が回答100名のうち、9名いらっしゃいます。第三者的な方の意見を聴くのは有意義なことだと思います。ただし、他の兄弟姉妹からみるとあまり良い気持ちをしない方がいらっしゃる場合もあります。この辺は難しいところだな、と感じます。

Q11.については、質問の趣旨が分かりませんでした。

Q12.Q13. Q14. Q15.について、資産内容の把握をしている方は、預貯金など管理しやすいものは高く、老後の生活資金など不確定のものは低いです。普通の結果だと思います。

 遺言書・エンディングノートを作成した、または作成を検討している方と書籍での学習をされている方が2割を超えています。自分で決めておきたい、という方は一定数いるのが分かります。遺言書を作成したタイミングとして、還暦、古希など一定の年齢に達した際という項目が一番多く48パーセントでした。私の依頼者にそのような方はいなかったので、記念のようで良いなと感じました。

 専門家に相談しない理由として、信用できる専門家が身近にいないから、何を相談すればよいかわからないから、知人などの例を見ても、事前に相談しなくても特に問題はないと思われるから、で8割以上を占めます。ファクトブックでは、専門家への敷居の高さを原因としています。私は少し違うと思います。顔が見えない、人柄が分からない、費用がどのように計算されているのか分からない、など公開されている情報の中身があまりないことが原因ではないかなと感じます。

Q16. Q17. Q18. Q19-1. Q19-2.について、3割強が相続について家族間で相談しにくい、1割強が相続に関する知識がないと回答しています。人生で1度か2度くらいしか経験しないことなので、当然のことかなと感じます。相続という大きな括りではなく、1つ(例えば葬儀費用)などについてだけ決めておくだけでも違ったりするのではないか、と感じます。

 相続に関する情報については、雑誌や書籍、ホームページ、家族親戚など、様々なところから収集しているという結果です。今の時代だと訊いていないのに流れてくる状態だと思います。情報過多になっても疲れて結局何もしないで良いや、となってしまいがちなので、難しいなと感じます。

 相続税の基礎控除の引き下げについては、不動産を持っている方は知っている方が多いという印象です。令和元年の民法(相続関係)改正の寄与分については、知っている方が3割いるようです。意外と多いなぁという印象です。

Q20.からQ29.について、成年後見制度と家族信託制度に関する質問です。

 現在、一定限度で親が認知症になった場合でも、銀行口座から配偶者や子供であっても、お金を引き出すことができるようになっている金融機関もあるようです。今後もその流れは広がるのではないかと思います。

 親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為が親にできなくなることをご存じですか、の項目に6割の方は知らなかった、と回答しています。土地の売買、区画整理、銀行融資、保険金受取などがない限り、契約行為でも出来てしまう実態があるので、6割の方が知らないのも無理はないと思います。例えば200万円位のペンキの塗り替え工事を所有者である親のお金を使って子どもがサインする、ということは日常的に行われています。

 成年後見制度を利用すると対象者が亡くなるまでやめられない、というのは誤りです。後見事務の負担が大きく無理であれば辞任することが出来ます。その代わりに市民後見人か他の親族・士業などが就くという建てつけです。

成年後見制度を利用したい人は、約1割です。多くはないですが少なくもないと思います。

なお、家族信託を利用したい人の割合は1割超とあまり変わらないのが意外でした。

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