「預金を信託財産とする受託者の死亡及び預金口座への差押に対する実務対応シミュレーション」

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2021年01月26日一般社団法人民事信託推進センター

第1回 テーマ別民事信託研究会 金森健一弁護士

研修の前に以下のメールが届きました。

2021年01月22日一般社団法人民事信託推進センター事務局

平素より当社団の活動にご協力いただきありがとうございます。

さて、標記研究会開催に際して、Zoomに、議論参加者として招待させていただきます。

2021年01月26日一般社団法人民事信託推進センター事務局

「第1回 テーマ別民事信託研究会」の参加登録ありがとうございました。

当日は聴講者として参加をお願いいたします。

 また、質問等はQ&Aではなく、当日のご発言にてお願いいたします。当会は約2時間の中で議論をすることにより理解を深めるための勉強会です。講演会ではありません。(このような趣旨から、当日の議論の動画はHP掲載をせず、公開することもありません。)?レコーディングされていましたが。。。

研修当日に講義参加者から聴講者に代わるのは良いのですが、チャットで講義参加者以外とやりとりする機会がなく、少し残念な印象です。オフライン研修・zoomの良いところだと思うのですが、使える機能は使った方が良いのではないかなと思います。雑談からの発見や事例共有もあると思います(講演会ではないからこそ。)。昨日も遠慮気味に2件コメントしましたが、誰からも返信がありませんでした。本稿は、未定稿であり、他に掲載する予定もございますため無断引用はご遠慮ください。研修資料に無断引用はご遠慮下さい、とありました。理由は、1、未定稿であること、2、他に掲載する予定があることです。1、に関しては、確定稿(決定稿・確定原稿)が紙の記事になるという意味だと思うのですが、確定稿に関して議論になる場面もあることからすると、引用は駄目という理由としては弱くないかな、というのが感想です。2、に関して、1と同じ理由です。加えるとすると、この勉強会を使って他に掲載する予定の記事が充実する可能性もあると思います。逆に記事の質が落ちる可能性があれば教えて下さい。そのような機会を設けて引用は駄目、という理由が私には分からなかかったので、知っている方がいらっしゃったら教えて下さい。論文の査読を受けて、査読者から指摘があった場合、草稿を他の人に見せて意見を聴く場面を設けたとします。他の人が引用を行った場合、何か問題があるのでしょうか。転載、加工、自分で考えたかのように表現するのは問題があると思いますが、引用に問題がある理由が分かりませんでした。

・引用についての備忘録

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・(一社)民事信託推進センターから著作権法違反の通知が届きました。

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・準第3者異議訴訟・・・第3者異議の訴えの準用(信託法23条による民事執行法38条の準用)。略語で法令用語ではない。信託法の範囲内で、第3者異議の訴えと同じように扱う、という意味。原則として受益者が異議を申し立てることを想定されているようです。実際に申し立てるのは受託者になると思います。

・請求異議訴訟を提起する場合の請求の趣旨は、第三者異議訴訟の場合と同じでは駄目なのか?・・・請求権の消滅原因事実も主張立証する必要があるので、同じではない。請求異議訴訟は、原告の請求権そのものを消滅させるために提訴する。第三者異議訴訟は、原告の請求権そのものは認めるけれど、その物は被告の物じゃないから取って行かないで下さい、と強制執行を止めるために提訴する。

請求異議訴訟の訴訟物

・債務名義の執行力の排除を求める形成権たる執行法上の異議権(大阪高判昭和55年5月28日)

請求異議訴訟の要件事実(債務名義が裁判の場合)

1.原告を債務者とする請求権につき確定判決の存在

2.1の請求権の口頭弁論終結後の消滅、阻止事由

第三者異議訴訟の訴訟物

・具体的執行又は執行処分に対する執行法上の異議権

第三者異議訴訟の要件事実

1.具体的執行行為が開始されたこと

2.1の執行の目的物について原告の所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利の発生原因事実

・請求異議の請求の趣旨において、固有財産限定債権であることを記載する必要があるか。固有財産限定債権とは何だろう?法令用語として探すことは出来ませんでした。固有財産等責任負担債務(信託法22条1項本文)を債権者からみた用語、限定責任信託(信託法216条)を参考にした用語なのかなと想像しました。

・信託財産の独立保全機能は、預金契約の特約がなされてはじめて生じることが確認されたのか?

・・・1、屋号口座、2、受託者名義で、信託契約公正証書に口座情報が記載されている口座、3、通常の信託口口座(名義が信託口口座であり、金融機関のシステム管理上も受託者の個人口座とは別人格の口座として管理されている口座の3つに大別してみます。全ての口座について、預金契約の特約がなされない限り、信託財産の独立保全機能は働かないのか。限定責任信託との取引では、登記事項証明書を確認して信託財産の独立保全機能を確保することが出来ます。登記事項証明書が法令にも明確に記載されていて、公的な証明書として一番の証拠力を持つと考えてみます。上に挙げた3つの口座は、法令への記載(あえて書くなら信託法34条)、公的な証明(間接的に信託行為に係る公正証書)について、若干弱い印象を受けます。私は、1、2、3の順で証拠力が高くなる(執行停止許可の決定が出るまでの時間が速くなる。)と考えます。2と3の違いである金融機関内部の情報については、提訴時には受託者(または受益者)が主張・立証することが難しくなります。金融機関としては、第三債務者の陳述書において説明して頂けると執行事務もスムーズに流れるのではないかと考えます。例えばオリックス銀行であれば、家族信託預金特約の説明書を第三債務者の陳述書に添付し裁判所に提出する方法を考えることが出来ます。

オリックス銀行「信託口口座「eダイレクト預金<家族信託預金特約」について>」

https://www.orixbank.co.jp/personal/trust/familytrust/pdf/edirect.pdf

本口座の預金は受託者個人名義の付保対象預金等と名寄せされます。

・信託口口座を開設することは、金融機関にとってコスト負担が高いのか。

・・・私の実感では顧客によるのだと思います。数億の借入れや預貯金があったり、取引期間が長かったりする顧客に対して信託口口座を作成するするということは、少なくとも依頼者(委託者)が認知症などを発症してから亡くなるまでは取引を継続することが出来て、信託終了後の所有者が引き続きその金融機関で取引を継続する可能性も高くなります。

・信託口口座を開設することは、依頼者にとってコスト負担が高いのか。

・・・現在、沖縄県内では、信託口口座を開設するために金融機関に費用を支払う必要はありません。ただし、信託行為を公正証書にすることが求められるので、その分の費用と、公証センターとのやり取りは多少高く感じる方もいらっしゃると思います。

・請求異議訴訟では、固有財産限定責任債務かどうかは既判力で排除される?

・・・私は、確定判決が債務名義となっている場合は既判力が働くのではないかと考えます。

・請求異議訴訟、第三者異議訴訟において、異議事由の限定はあるか。口頭弁論で受託者が信託財産かどうかを主張する義務がある?

・・・主張する義務はあると考えます。

・債務不履行(民法415条)ではなく、不法行為(民法709条)だから難しい?

・・・債務不履行による損害賠償の場合は、債務を履行したということを受託者が立証する必要があり、その中で信託事務として履行したのか否か主張することが出来ます。不法行為による損害賠償においては、損害を受けた側がどのような損害を受けたのか、主張立証する必要があります。その中で受託者は、「あの加害行為は信託事務として行ったものです。」「あの時は個人的な行為という認識でした。」と立証を行うのは難しいかもしれません。

・第三者に対する陳述書に対して、金融機関が「支払う」という回答をすることができるか。供託までいくか。

・・・金融機関が信託契約について、事前審査を行っている場合、「支払う」という回答を行うことは出来ないと考えます。「差し押さえるべき債権が不特定」という回答になるのではないでしょうか。また受託者個人の名義以外の名義には、差押えの効力が及ばないと考えることも出来ます。

権利供託は可能だと考えます。また、民事執行事務・供託手続について、電子申請が一連の流れの中で可能となれば、利用は進み金融機関の負担も軽くなるのではないかと感じます。

債権差押命令申立書の差押債権目録に、支店以上に細かく(信託口、受託者)など書けるか?

・・・可能だと考えます(民事執行規則133条2項、「民事執行の実務第3版債権執行編上」きんざい平成27年P100)。

 受託者の交代があった場合、旧受託者名義口座から払うのか、新しい名義に替えて支払うのか。

・・・信託行為の内容、受託者の交代の理由によりますが、原則として新しい名義に替えて支払うことになると考えます(信託法75条、76条)。

 受託者の交代は包括承継(相続か会社分割)か特定承継か。信託法に基づく包括承継であれば、金融機関は受託者の相続人に支払うと過失がないとはいえない?

信託法に基づく包括承継なら新受託者は屋号口座でも訴訟で勝てる?

・・・包括承継か特定承継かは信託行為の内容によって変わってくるのではないかと考えます。包括承継であれば、金融機関が受託者の相続人に支払うと過失があると判断される可能性があるかといえば、あり得ると考えます。特定承継と構成しても、金融機関が受託者の相続人に払い戻した場合、その審査方法によっては過失有りと認定される可能性はあると考えます。包括承継なら新受託者は屋号口座でも金融機関との訴訟に勝てるか、については勝てる可能性が高いと思いますが信託口口座より時間がかかると思います。

参考

 法令執務研究会編「新訂ワークブック法制執務」ぎょうせいP718

別冊NBL編集部編「信託法改正要綱試案と解説」商事法務P92

遠藤俊英ほか監修「金融機関の法務対策5000講1巻」(一社)金融財政事情研究会2018P1171 

道垣内弘人編「条解信託法」弘文堂2017P114

遠藤俊英ほか監修「金融機関の法務対策5000講1巻」(一社)金融財政事情研究会2018P1417

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