照会事例から見る信託の登記実務(18)

『登記情報[1]』の記事、横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(18)」からです。

本件被担保債権を担保するのは、普通抵当権か根抵当権か。

 分かりませんでした。Xは、自己信託を設定して信託受益権を販売する形では駄目なのかなと思いました。

国土交通省「不動産特定共同事業等について」

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000263.html

「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」令和3年7月

国土交通省不動産・建設経済局 不動産市場整備課


P11不動産特定共同事業(FTK)においては、対象不動産の追加取得により、対象不動産を変更することも可能。

主に個人からクラウドファンディング、金融機関からノンリコースローンでの資金調達を想定している感じを受けます。

不動産特定共同事業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=406AC0000000077

「小規模不動産特定共同事業を行うための実務手引書~実務編~」

平成 30 年3月株式会社価値総合研究所

https://www.mlit.go.jp/common/001233902.pdf

モデル約款における記載

(出資)第2条

5 本事業者は、本出資者に本出資額の返還を保証する義務を負わない。本出資者及び本事業者は、本出資額の返還について保証されたものではないことをここに確認する。

6 本事業に係る損失は、第8条第4項に基づき、本出資者に帰属する。但し、本出資者の損失の分担額は、本出資額を限度とする。

・「任意組合契約型(不特法第2条第3項第1号)」と「匿名組合契約型(不特法 第2条第3項第2号)」がある。

私は、不動産特定共同事業においては、記事のような出資金返還請求権を担保することは、予定されていないように読めました。

セキュリティトラストの普通抵当権の被担保債権を途中で変更することができるのか、あるいはセキュリティトラストの根抵当権の債権の範囲をどう定めるかという問題になります。

抵当権の被担保債権を途中で変更することは、出来ないのではないかと思います(同一債権に関する利息債権に関しては可能。昭和41年12月1日付け民事甲第3323号民事局長回答・登記研究230号P55。)。

根抵当権の債権の範囲については、特定の継続的取引契約として、年月日不動産特定共同事業法に基づく○○組合取引、となるのかなと考えます(登記研究306号P48類推)。

また、この場合の債権額は、限度額である出資金総額ということになりそうですが、複数の債権者が有する債権の合算額と被担保債権額が一致しないことになってしまい、セキュリティトラストとはいえ、極めて不可解な登記がされる結果となってしまいます。

抵当権を設定する場合は、記事記載の通りになると考えます。

[1] 721号、2021年12月、(一社)金融財事情研究会、P44~

12月相談会のご案内ー家族信託の相談会その39ー

お気軽にどうぞ。

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家族信託の相談会その38
2021年12月264日(金)14時~17時
□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え
1組様 5000円

場所 司法書士宮城事務所(西原町)
要予約   司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp
後援  (株)ラジオ沖縄

民事信託の登記の諸問題(3)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(3)」からです。

信託条項後半の前段「居住の維持費、医療費、看護療養費、施設利用費など各種費用」、そして、その後段「生活状況に応じた生活費等」を分けて記載しているのは、別の項目であるからだろうか。あるいは両者は重複するのか。また、「受託者の裁量に基づき」の対象範囲は、その文言が直接的に係っている後段「生活状況に応じた生活費等」に対してだけなのか。

 「生活状況に応じた生活費等」を分けて記載しているのは、別の項目であるからだろうか。・・・私も読み取れているか分かりませんが、その他の生活状況に応じた生活費等全て、という意味ではないかなと思います。

 「受託者の裁量に基づき」の対象範囲は、その文言が直接的に係っている後段「生活状況に応じた生活費等」に対してだけなのか。・・・私なら、文言の通り、「生活状況に応じた生活費等」に対してだけだと読みます。前段は必ず出費する、後段は受託者が受益者の状況をみながら柔軟に、という意味なのかなと思います。

「各種支払いに充てる・・・生活費等を給付・・・これら以外に一時的な多額な給付はしない」という部分は、信託登記の登記事項に該当するのか。仮に、該当するとすれば「信託の目的」(8号)なのか、「信託財産の管理方法」(9号)なのか。あるいは「その他の信託の条項」の内容なのか(受益権や受益債権の内容である場合には、そもそも登記事項となるのか否か)。

 「各種支払いに充てる・・・生活費等を給付・・・これら以外に一時的な多額な給付はしない」という部分は、信託登記の登記事項に該当するのか。・・・相対的記載事項だと思います。ただし、厳密に抵当権に関する登記の「債権額」や「債務者」の登記事項かというと、違うと考えます。信託金銭に関する事項であること、後続登記に影響を及ぼすとは思えないこと、生活費等、一時的、多額など、抽象的な表現であることが理由です。登記事項かどうか、という判断基準に関しての私の考えは以下に関しても同じです。

 仮に、該当するとすれば「信託の目的」(8号)なのか、「信託財産の管理方法」(9号)なのか。あるいは「その他の信託の条項」の内容なのか・・・私なら信託目録に記録申請をしません。この記事全体に対して同じ方針です。記録するのであれば、「信託の目的」(8号)、「信託財産の管理方法」(9号)、「その他の信託の条項」のどの項目においても記録が可能だと考えます。

「受託者の裁量に基づき」給付する旨は、信託登記の登記事項に該当するのか。該当するとして、「信託の目的」の事項なのか、または「信託財産の管理方法」の事項なのか。あるいは「その他の信託の条項」における「受益権」または「受益債権」の内容なのか(受益権の内容である場合には登記事項となるのか否か)。

 「受託者の裁量に基づき」給付する旨は、信託登記の登記事項に該当するのか。・・・相対的な記録事項だと思います。

該当するとして、「信託の目的」の事項なのか、または「信託財産の管理方法」の事項なのか。あるいは「その他の信託の条項」における「受益権」または「受益債権」の内容なのか(受益権の内容である場合には登記事項となるのか否か)。・・・私なら信託目録に記録申請をしませんが、記録するのであれば、「信託の目的」(8号)、「信託財産の管理方法」(9号)、「その他の信託の条項」のどの項目においても記録が可能だと考えます。受益権または受益債権の内容とする場合は、生活費等の受取。ただし受託者の裁量に基づく。など受益者からみた表現に変える必要があると思います。

不動産登記法97条1項8号の「信託の目的」は、不動産登記の範疇として、信託不動産に関わる範囲内に限定されるのか否か。

不動産登記法97条1項8号の「信託の目的」は、不動産登記の範疇として、信託不動産に関わる範囲内に限定されるのか否か。・・・不動産登記法1条を読む限り、信託不動産に関わる範囲内に限定されるのではないかなと思います。

不動産登記法(目的)

第1条 この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

要約する場合、公示の作法に従い、どこまで要約すべきなのか。「受益者のため」や「最善の」、「適正な」などの形容詞は、登記事項として必要なのか。登記上、その意味と機能は何か。

 要約する場合、公示の作法に従い、どこまで要約すべきなのか。・・・登記原因証明情報として信託行為の情報を利用する場合、要約を行って良いのか、私は分かりませんでした。信託行為の条項を、信託目録にそのまま転記可能なように作成すればいいのかなと思います。

 「受益者のため」や「最善の」、「適正な」などの形容詞は、登記事項として必要なのか。登記上、その意味と機能は何か。・・・「受益者のため」に関しては、信託法2条に記載されているので、不要ではないかなと感じます。「最善の」、「適正な」などの用語は機能するのか分かりませんでした。

目的条項中、認知症対策との明示はなく、受益者の具体名もないが、仮に認知症対策の信託が想定されている場合、認知症対策である旨の公示は不要なのか。

 目的条項中、認知症対策との明示はなく、受益者の具体名もないが、仮に認知症対策の信託が想定されている場合、認知症対策である旨の公示は不要なのか。・・・信託行為に記録がある場合、不動産登記において認知症対策である旨の公示が必要とは思いませんでした。

不動産登記手続にとって、賃貸物件であるか否か、賃貸物件の収益を配当すること、その配当の使用使途として医療費等であること、これらまでを公示する必要があるのか否か、という論点がある。

 不動産登記手続にとって、賃貸物件であるか否か、賃貸物件の収益を配当すること、その配当の使用使途として医療費等であること、これらまでを公示する必要があるのか否か・・・信託目録に記録することは可能であると考えますが、公示する必要があるかというと不要だと思います。不動産登記法97条の、絶対的記載事項に該当するとは思えないからです。


[1] 885号、令和3年11月、テイハン、P55~

照会事例から見る信託の登記実務(17)

登記情報[1]の記事、横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(17)」からです。セキュリティトラストのうち、根抵当権に関する事例を扱っています。

登記原因証明情報が報告式・差入れ方式になっていますが、このような方法で申請してもよいのだなと思いました。登記官が登記情報で掲載しているということは、受託者が信託銀行・信託会社ではない場合の信託契約書を作成した司法書士に向けての見本として示しているのだと思います。実例があるかは分かりません[2]

参考:(一社)信託協会 担保権の信託(セキュリティ・トラスト)

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/corporation/security_trust.html

受益者の氏名・住所は、原則としてそれぞれ登記しなければならず、この場合において、受益者の氏名・住所に変更が生じたときは、その都度、登記をしなければなりませんが、受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法などが登記されていれば、個別の登記が不要とされています(不動産登記法97条1項2号、2項)。

不動産登記法97条1項2号、2項によって受益者の表示を行う方法が良いのか、分かりませんでした。[3]


[1] P53~、720号2021年11月金融財政事情研究会

[2] P600~七戸克彦監修「条解不動産登記法」2013弘文堂

[3] 財団法人トラスト60「セキュリティトラスト研究会報告書」平成19年1月P9~p13など。

マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議

財務省 マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議 令和3年8月19日開催

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/index.html

・マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(令和3年8月30日)

P2、4.法人、信託の悪用防止

(1) 法人・信託の悪用防止

 法人及び信託がマネロン・テロ資金供与に悪用されることを防ぐため、法人及び信託に関する適切なリスク評価を実施し、リスクの理解を向上させる。

期限・令和 4 年春 担当府庁等 法務省、警察庁

(2) 実質的支配者情報の透明性向上

全ての特定事業者が、期限を設定して、既存顧客の実質的支配者情報を確認するなど、実質的支配者に関する情報源を強化する。

期限・令和 6 年春 担当府庁等 法務省、警察庁、特定事業者、所管行政庁

・株式会社の申出により、商業登記所が実質的支配者情報を保管し、その旨を証明する制度を今年度中に開始するとともに、実質的支配者情報を一元的に管理する仕組みの構築に向け、関係省庁が連携して利用の促進等の取組みを進める。

期限・令和 4 年秋 担当府庁等 法務省、警察庁、特定事業者、所管行政庁

実質的支配者リストについて

実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html

(3) 民事信託・外国信託に関する実質的支配者情報の利用・正確性確保

信託会社に設定・管理されていない民事信託及び外国信託に関する実質的支配者情報を利用可能とし、その正確性を確保するための方策を検討し、実施する。

期限・令和 4 年秋 担当府庁等 法務省、その他関係省庁

 実質的支配者リストの対象法人は、株式会社(特例有限会社を含む。)となっています。民事信託における実質的支配者とは誰なのでしょうか。対策を読む限り、信託会社に設定管理されていない、とあるので一般社団法人が受託者の場合の民事信託について、受益者が一般社団法人の場合で指図権を持っている場合、などが思い浮かびましたが、実質的に信託を支配する者の判断は、信託行為により変わり得るのかなと思います。

(4) 法人・信託に関するガイダンス作成

道府県警や国税庁等の法執行機関向けに、法人及び信託の実質的支配者情報に適時にアクセスするためのガイダンスを作成する。

期限・令和 4 年秋 担当府庁等 警察庁、財務省及びその他関係省庁

FATF(金融活動作業部会)対日相互審査報告書令和3年8月30日財務省

概要部分の日本語版

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/fatf/fatfhoudou_20210830_1.html

P3

日本は、リスクのある非営利団体(以下、NPO 等)についての理解が十分ではなく、そのため、NPO 等の テロ資金供与対策のための予防的措置を強化するために、当局がターゲットを絞ったアウトリーチを行うことができない。このため、日本の NPO 等は、知らず知らずのうちに、テロ資金供与の活動に巻き込まれる危険性がある。

P8 大規模銀行(より高いリスクを有するとされている GSIB 等)を含む一定数の金融機関及び資金移動業者は、マネロン・テロ資金供与リスクについて適切な理解を有している。その他の金融機関は、自らのマネロン・テロ資金供与リスクの理解がまだ限定的である。一定数の金融機関は、自らのリスク評価を開始しているが、その他の金融機関はリスクに基づいた低減措置を適用していない。これらの金融機関は、継続的顧客管理、取引モニタリング、実質的支配者の確認・検証等の、最近導入・変更された義務について、十分な理解を有していない。

P10

日本は、法人が悪用される可能性についてある程度理解しているが、この理解は深度を欠いており、様々な種類の法人に関連する脆弱性についての十分な理解が示されていない。法的取極めの悪用に関連するリスクについての理解はない。法執行機関の間では、捜査に役立つ基本情報や実質的支配者情報の情報源について、ある程度の理解が不足しているようである。

司法書士として

駿河台法学第34巻2号 司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論について : (続)民事信託業務の覚書 : 「民事信託」実務の諸問題⑸

https://surugadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2275&item_no=1&page_id=13&block_id=21

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