令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)11035号損害賠償請求事件/論点と私見や疑問

参考文献

『家庭の法と裁判』 2021年12月号<特集:実務家のための民事信託入門>vol.35 P134~日本加除出版

遠藤英嗣『家族信託の実務 信託の変更と実務裁判例 家族信託をめぐる争訟を知り、信託行為と信託の変更を考える』2021年11月日本加除出版

論点

・信託契約書の案文を作成する段階で、信託内融資を取り扱っている金融機関を調査した上、あらかじめ、当該金融機関との間で、案文のチェックを受け、内容等の調整を行うべきか。

・・・信託契約書の案文を作成した後、公正証書にする前の段階で、信託内融資を取り扱っている金融機関を調査し、案文のチェックを受け、内容等の調整を行う必要があるか。・・・あると考えます。ただし、チェックを受けて信託内融資が可能であるという回答を記録に残る情報で行う金融機関は、2022年現在も限られていると思います。私の場合は、信託専用口座の作成や信託内融資に関する問い合わせはFAX、メールなどで送信します。回答は電話など口頭で返って来ることが多いですが、送信履歴は残しておきます。

・信託契約を公正証書にする場合、代理人を嘱託人とすることはすべきではないか・・・2022年現在の状況では、公証人と嘱託人によるFaceHubなどを利用した本人確認が認められており、代理はなじまないと考えます。

テレビ電話による認証制度

https://www.koshonin.gr.jp/business/b07_4#tvphone

FaceHub

導入事例 日本公証人連合会

https://www.face-peer.com/casestudy/index.html

利用規約

https://www.face-peer.com/term/index.html

パートナーは、本システムの利用に関して、ユーザーまたは第三者に損害を与えた場合、その一切の責任を負うものとし、当社は一切その責任を負わないものとします。

当社は、 本システムによって提供される情報の正確性を保証するものではありません。

 別途、日本公証人連合会とFacePeer株式会社との間で契約があるのか分かりませんが、利用規約を読む限りなりすまし等による責任は公証人が負うではないかと思います。

嘱託代理の積極について・・・どのような運用なのか分かりませんが、代理というより使者という取扱いに読めます。民法99条、102条。

金子順一藤沢公証役場公証人「公証役場からみた民事信託」P24~『家庭の法と裁判』 2021年12月号vol.35日本加除出版

「最近、日本公証人連合会は積極説を採用し、公証人が委託者本人に信託契約締結の意思と代理人への事実を明確に確認できた場合には、委託者について代理方式で公正証書を作成することを許容するという見解を採用した」

・信託契約に係る公正証書の作成手続の補助を行うことに関する委任を受けた者において、当該公正証書について、委託者本人に作成の嘱託をさせるべき注意義務を一般的に負っている場面としては、どのような場面が考えられるか。

・・・判決における注意義務を負わない理由

  • 2018(平成30)年当時、民事信託の活用事例は多くはなかったこと
  • 2018(平成30)年当時、民事信託の活用を円滑に行うための知識や知見が必ずしも十分には普及していなかったと考えられること

主に2つを理由にしています。この状況を2022年に当てはめてみると、信託契約の公正証書の作成件数は、2018年(平成30年)2,223件、2020(令和2)年2,924件[1]と年々増えており、2つの理由は払拭されていると判断される可能性が高いと考えられます。

・信託契約無効確認公正証書の作成手数料と専門家報酬について、不法行為と相当因果関係が認められる場合があるとすれば、どのような場面が考えられるか。

・・・今回の事案においては、信託契約無効確認書の中で、事実の経緯として公正証書の作成手数料と専門家報酬の額について記載されていることが必要だと考えらえます。

民法(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

疑問

・何故、和解で終らずに判決まで至ったのか。・・・訴訟外を含めた和解で終らず、約4年に及ぶ訴訟手続きを経て判決まで至ったのか、分かりませんでした。Y司法書士の民事信託に関する名刺の記載が○○○○、と記載されていないことを考えると、O弁護士とY司法書士は、面識があるか民事信託に関する同じ組織に属している可能性があると思います。

・判決文中、Y司法書士が信託契約書案を公正証書化する前に、J信用金庫に信託専用口座開設について照会した際、J信用金庫は信託専用口座を作成するには、J信用金庫が指定する弁護士又は司法書士が作成した信託契約書に限定している、と記載されています。

 その後、受託者Aは、平成31年1月30日に、J信用金庫から弁護士を紹介されたとの記載があります。J信用金庫は、Y司法書士が作成した信託契約書(案か公正証書)を読む機会があったのか。

 判決文を読む限り、AがJ信用金庫に相談したのではなく、J信用金庫がAに接触しています。なぜJ信用金庫はAにO弁護士を紹介したのか。

 J信用金庫とO弁護士との関係について、無関係なのか。

・J信用金庫の民事信託口座開設に関する指定弁護士なのか。

・実はこの判決の一番すごいところは、司法書士が信託の専門家であると認定した上で、専門家責任を負うと判断したところなのか。その背景として日司連や民事信託推進センターの活動を挙げており、司法書士の制度史に残る判決か。

・・・なぜ、判決までいったのかという疑問を持っている私には、よく分かりませんでした。判決文で、司法書士が信託の専門家であると認定しているのか、私にはどこに記載されているのか見つけることが出来ませんでした。

 判決が、日司連や民事信託センターの活動を挙げているのは、原告が弁論を行い証拠を提出していて、Y司法書士の説明義務を判断するのに必要な事実だからだと思います。

・この判決が言っているのは、「間違った説明をしたら責任を負う」という、当たり前のことに過ぎないのか。

・・・分かりませんでした。

・民事信託の分野は最近になって生まれたため、倫理も確立されておらず、なんでも言った者勝ちの風潮があったのか。ようやく、地に足のついた実務に向かうのではないかと期待できるのか。

・・・匿名で批判し合って同業者間のビジネスになっていることを、地に足のついた実務だと考えると、そうなのかもしれません。

・司法書士業界でいうところの「規則31条業務」なる概念は誤っていて、この判決は、その考えをさらに強くするか。

・・・規則31号業務については、司法書士法に縛られた上で、信託監督人、法人の顧問など等の根拠規定とされるのかなと思います。規則というのは、そのような性質で作成されています。


[1] 金子順一藤沢公証役場公証人「公証役場からみた民事信託」P24~、八谷博喜「金融機関における民事信託―各種信託商品、信託口口座の設計―」P30~『家庭の法と裁判』 2021年12月号vol.35日本加除出版

参考

『信託フォーラム 2022年10月号』vol.18、2022年10月号、日本加除出版、福田智子茨城大学講師「判例紹介民事信託組成における専門家責任が問われた事例─ 東京地判令和3・9・17(家庭の法と裁判35号134頁)」

令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件、裁判所の判断

裁判所の判断

参考文献

『家庭の法と裁判』 2021年12月号<特集:実務家のための民事信託入門>vol.35 P134~日本加除出版

遠藤英嗣『家族信託の実務 信託の変更と実務裁判例 家族信託をめぐる争訟を知り、信託行為と信託の変更を考える』2021年11月日本加除出版

・平成18年信託法の制定(平成19年施行)及びこれを受けた平成30年までの司法書士の活動等

・平成30年当時の信託に関する金融機関の対応状況

・XとA、Y司法書士とのやり取り(Aのメモ、各当事者の電子メール、提案書・スケジュールなどの添付ファイル、Y司法書士の見積書。

・A、C、Y司法書士、E税理士との信託契約書案の内容に関する面談。

・XとY司法書士との信託に関する委任契約締結日は、平成30年7月12日。委任契約書は作成していない。

・平成30年7月12日締結の委任契約でY司法書士が負う債務の内容は、A名義の信託専用口座の開設と、開設出来ない可能性があることや信託内融資についての金融機関の対応状況の説明。

令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件の事実関係

事実関係

参考文献

『家庭の法と裁判』 2021年12月号<特集:実務家のための民事信託入門>vol.35 P134~日本加除出版

遠藤英嗣『家族信託の実務 信託の変更と実務裁判例 家族信託をめぐる争訟を知り、信託行為と信託の変更を考える』2021年11月日本加除出版

X 昭和12年生、B 平成16年死亡、C 昭和52年生、D 昭和54年生、A 昭和56年生。

平成30年当時のX所有名義の主な財産

・不動産10

・借地権1

・複数金融機関の預金債権

平成30年当時のX所有名義の財産の使用状況

4階建て建物の3,4階部分に、D、Aと同居。1,2階部分は第三者に店舗として賃していた。賃借人との折衝(管理)は主にAが行っていた。

平成30年4月頃

Xから、E税理士に対して信託に関する問い合わせ。

平成30年5月1日

E税理士は、Xに対してY司法書士を紹介。X,C、AとY司法書士は、信託に関する打合せを何度か行う。

平成30年5月20日

XはY司法書士から、実費と家族信託組成サポートに係る報酬の見積書を受け取る(総額159万3,300円)。

平成30年〇月〇日

✕とY司法書士が家族信託に関する委任契約締結。

内容

・信託契約書の案文の作成

・信託契約書を公正証書にする手続きの補助

・信託財産に属する不動産に係る信託の登記の申請手続の代理

・信託財産に属する金銭を預け入れる受託者名義の預金口座の開設の支援「等?」

平成30年8月30日

公証人Fが信託契約書の公正証書作成。

嘱託人は、Xの代理人Y司法書士とAの二人。

・預金債権等?

Y司法書士からXに対して、委任契約に関する請求書(137万9,392円)を受け取る。

平成30年8月30日

Y司法書士の代理により、所有権移転及び信託登記申請。

第十二 信託に関する登記

一 信託の登記

1 法第98条第1項の権利の移転(仮訳)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

委託者の所有する土地を、信託財産とする家族信託契約により、不動産の所有権を受託者に移転するとともに、信託の登記をする場合。

参考

「不動産登記記録例集」(株)テイハン

「信託目録の理論と実務」渋谷陽一郎 (株)民事法研究会

「改訂版 信託登記の実務」信託登記実務研究会 日本加除出版(株) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●登記記録(登記簿):●The registration record (The registry)

表題部:The heading section. (土地の表示):The description of the land.調整 : The prepared.平成〇〇年〇月〇日 : The prepared date.不動産番号 : The real property number.12345567890123 
地図番号 : The map number.A11―1筆界特定 : The parcel boundary demarcation.       余白:The blank. 
【所在】 : The location.〇〇県〇〇市〇〇町〇〇 余白: The blank
①地 番 : The parcel number.  ②地 目 :The land category  (current state of the Land)③地  積 ㎡ :The parcel area (area of the Land)原因及びその日付 : The cause for recording and date thereof. 【登記の日付】:The recording date. 
9999番3宅地 : The presidential land.100 00                 :100.00㎡①9999番1から分筆 : Subdivision of the Parcel Number.9999-1. 【平成〇〇年〇月〇日 
所有者: The owner.  〇〇市〇〇丁目〇番〇号    〇〇 〇〇: The name and address of Owner.   
 権 利 部(甲区): The rights section (The section A).        (所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号 : The rank number.登記の目的 : The purpose of recording.受付年月日・受付番号 : The recording date and number.【権利者その他の事項】 : The holder of rights and other particulars.
1  所有権保存 : The preservation of ownership.  平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号所有者: The name and address of Owner. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号: 〇〇 〇〇
所有権移転 : Transfer of ownership.平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号原因: When and for what cause ownership was acquired.  平成〇〇年〇月〇日信託: The trust date.   〇〇市〇〇丁目〇番〇号: 〇〇 〇〇 : The name and address of owner.
信託 :The trust.余白: The blank.信託目録第何号 : The inventory of trust number.

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。

The underlines indicate delated matters.        The filing Number:00000000000 (1/1)                  

〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇             全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地):The land.  信託目録:The inventory of trust. 調整: The prepared.  余白:The blank. 番号 : The number. 受付年月日・受付番号 : The recording date and number. 予備:The preparation. 第1号 : The number 1. 平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号 余白:The blank. 1 委託者に関する事項  : 1 Matters concerning the settlor. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the settlor. 2 受託者に関する事項 :2 Matters concerning the trustee. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the trustee. 3 受益者に関する事項等 : 3 Matters concerning the beneficiary. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the beneficiary. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the beneficiary’s agent. 4 信託条項 : 4 Trust clause. 1、信託の目的: The purpose of trust    信託不動産の管理、運用及び処分。 : maintain the real property of the trust use the real property of the trust dispose the real property of the trust   2、信託財産の管理、運用及び処分の方法 :the procedure to maintain the real property of the trust the procedure to use the real property of the trust the procedure to dispose the real property of the trust      (1)受託者は、受益者又は受益者代理人からの同意を得て、信託不動産を処分することができる。また、受託者自らが必要かつ合理的と認める場合、受託者の裁量にて行うことができる。   : (1) The trustee may dispose the real property of the trust when he beneficiary or the beneficiary’s agent agree to disposition. Also, the trustee may choose dispose the real property of the trust when he/she accept dispose the real property of the trust.   (2)受託者は、受益者又は受益者代理人の同意を得て、下記の事項に関して信託不動産に抵当権を設定し、抵当権設定登記手続を行うことができる。   : The trustee may set mortgage and registry of the mortgage in the real property of the trust in the following case (ア、イ、ウ) when the beneficiary or the beneficiary’s agent agree to it.    ア 信託不動産のためにする金銭の借入れのために、受益者または受託者を債務者とする場合 : The obligor, who is the beneficiary or trustee, loan money the real property of the trust.   イ 受益者が本信託設定以前において、信託不動産のために負担していた債務を担保するため、受益者を債務者とする場合。   : The obligor , who is the beneficiary, secure the obligation for the real property of the trust   ウ 信託費用が欠ける場合、信託費用等を補填するためにする金銭の借入のため、受託者を債務者とする場合。    :  The obligor, who is trustee, loan for the cost of the trust.     4、信託の変更 : Modification of the trust.    本信託は、受託者および受益者又は受益者代理人との合意により、変更することができる。      : The trust may modify when the trustee and the beneficiary (or the beneficiary’s agent) agree to the modification.   5、信託の終了 : Termination of the trust.      本信託の終了事由は、下記の通りである。 : The grounds for termination of the trust are the following.   (1)受託者および受益者又は受益者代理人が合意した時。 : (1) If the trustee and the beneficiary (or the beneficiary’s agent) agree to termination of the trust, the trust terminates.   (2)信託法に定める事由が生じた時。 : (2) If the grounds in the trust act occur, the trust terminates.   6、残余財産の帰属権利者 : The holder of vested right of the residual asset      本信託の残余財産の帰属権利者は、最終の受益者とする。       : The holder of vested right of the residual asset in the trust is the last beneficiary.   7、清算手続の終了 : Termination of liquidation procedure of the trust.      受託者による信託の清算手続は、信託財産の全てを、これに関する一切の債権債務関係と共に、残余財産の帰属権利者に引き渡したときに終了する。      : The liquidation procedure in the trust by the trustee terminates when the trustee deliver over the all asset of the trust with all claim and obligation to the holder of vested right of the residual asset.                           これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。 : This document evidences all of the entries made in the registry.   四角形: 角を丸くする: Official Seal★(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau.   〇〇年〇〇月〇〇日 Date 〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇   ※下線のあるものは抹消事項であることを示す。 Underlines indicate delated matters.        Filing Number:00000000000 (1/1)                   
表題部:The heading section. (土地の表示):The description of the land.調整 : The prepared.平成〇〇年〇月〇日 : The prepared date.不動産番号 : The real property number.12345567890123 
地図番号 : The map number.A11―1筆界特定 : The parcel boundary demarcation.       余白:The blank. 
【所在】 : The location.〇〇県〇〇市〇〇町〇〇 余白: The blank
①地 番 : The parcel number.  ②地 目 :The land category  (current state of the Land)③地  積 ㎡ :The parcel area (area of the Land)原因及びその日付 : The cause for recording and date thereof. 【登記の日付】:The recording date. 
9999番3宅地 : The presidential land.100 00                 :100.00㎡①9999番1から分筆 : Subdivision of the Parcel Number.9999-1. 【平成〇〇年〇月〇日 
所有者: The owner.  〇〇市〇〇丁目〇番〇号    〇〇 〇〇: The name and address of Owner.   
 権 利 部(甲区): The rights section (The section A).        (所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号 : The rank number.登記の目的 : The purpose of recording.受付年月日・受付番号 : The recording date and number.【権利者その他の事項】 : The holder of rights and other particulars.
1  所有権保存 : The preservation of ownership.  平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号所有者: The name and address of Owner. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号: 〇〇 〇〇
所有権移転 : Transfer of ownership.平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号原因: When and for what cause ownership was acquired.  平成〇〇年〇月〇日信託: The trust date.   〇〇市〇〇丁目〇番〇号: 〇〇 〇〇 : The name and address of owner.
信託 :The trust.余白: The blank.信託目録第何号 : The inventory of trust number.

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。

The underlines indicate delated matters.        The filing Number:00000000000 (1/1)                  

〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇             全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地):The land.  信託目録:The inventory of trust. 調整: The prepared.  余白:The blank. 番号 : The number. 受付年月日・受付番号 : The recording date and number. 予備:The preparation. 第1号 : The number 1. 平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号 余白:The blank. 1 委託者に関する事項  : 1 Matters concerning the settlor. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the settlor. 2 受託者に関する事項 :2 Matters concerning the trustee. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the trustee. 3 受益者に関する事項等 : 3 Matters concerning the beneficiary. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the beneficiary. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the beneficiary’s agent. 4 信託条項 : 4 Trust clause. 1、信託の目的: The purpose of trust    信託不動産の管理、運用及び処分。 : maintain the real property of the trust use the real property of the trust dispose the real property of the trust   2、信託財産の管理、運用及び処分の方法 :the procedure to maintain the real property of the trust the procedure to use the real property of the trust the procedure to dispose the real property of the trust      (1)受託者は、受益者又は受益者代理人からの同意を得て、信託不動産を処分することができる。また、受託者自らが必要かつ合理的と認める場合、受託者の裁量にて行うことができる。   : (1) The trustee may dispose the real property of the trust when he beneficiary or the beneficiary’s agent agree to disposition. Also, the trustee may choose dispose the real property of the trust when he/she accept dispose the real property of the trust.   (2)受託者は、受益者又は受益者代理人の同意を得て、下記の事項に関して信託不動産に抵当権を設定し、抵当権設定登記手続を行うことができる。   : The trustee may set mortgage and registry of the mortgage in the real property of the trust in the following case (ア、イ、ウ) when the beneficiary or the beneficiary’s agent agree to it.    ア 信託不動産のためにする金銭の借入れのために、受益者または受託者を債務者とする場合 : The obligor, who is the beneficiary or trustee, loan money the real property of the trust.   イ 受益者が本信託設定以前において、信託不動産のために負担していた債務を担保するため、受益者を債務者とする場合。   : The obligor , who is the beneficiary, secure the obligation for the real property of the trust   ウ 信託費用が欠ける場合、信託費用等を補填するためにする金銭の借入のため、受託者を債務者とする場合。    :  The obligor, who is trustee, loan for the cost of the trust.     4、信託の変更 : Modification of the trust.    本信託は、受託者および受益者又は受益者代理人との合意により、変更することができる。      : The trust may modify when the trustee and the beneficiary (or the beneficiary’s agent) agree to the modification.   5、信託の終了 : Termination of the trust.      本信託の終了事由は、下記の通りである。 : The grounds for termination of the trust are the following.   (1)受託者および受益者又は受益者代理人が合意した時。 : (1) If the trustee and the beneficiary (or the beneficiary’s agent) agree to termination of the trust, the trust terminates.   (2)信託法に定める事由が生じた時。 : (2) If the grounds in the trust act occur, the trust terminates.   6、残余財産の帰属権利者 : The holder of vested right of the residual asset      本信託の残余財産の帰属権利者は、最終の受益者とする。       : The holder of vested right of the residual asset in the trust is the last beneficiary.   7、清算手続の終了 : Termination of liquidation procedure of the trust.      受託者による信託の清算手続は、信託財産の全てを、これに関する一切の債権債務関係と共に、残余財産の帰属権利者に引き渡したときに終了する。      : The liquidation procedure in the trust by the trustee terminates when the trustee deliver over the all asset of the trust with all claim and obligation to the holder of vested right of the residual asset.                           これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。 : This document evidences all of the entries made in the registry.   四角形: 角を丸くする: Official Seal★(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau.   〇〇年〇〇月〇〇日 Date 〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇   ※下線のあるものは抹消事項であることを示す。 Underlines indicate delated matters.        Filing Number:00000000000 (1/1)                   

平成30年8月31日

Xは、Y司法書士名義の預金口座に振り込みによって支払い。

平成30年9月21日

受託者AとY司法書士がI銀行○○支店で、A信託口名義口座開設。

平成30年9月16日

J信用金庫からAに対して、信託用口座開設は出来ないことの通知。理由は、J信用金庫が指定する弁護士や司法書士以外が作成した信託契約書であるから。

平成30年9月以降

株式会社K銀行○○支店、株式会社M銀行○○支店は、Aが求めるの信託専用口座開設を拒絶。

平成31年1月9日頃

Aは、H信用金庫に信託専用口座の開設を照会(審査料3万2,400円)。

平成31年1月30日付け書面

H信用金庫からAに対して、信託専用口座開設の拒絶通知。理由は、信託契約公正証書作成の嘱託人に代理人がなっていること。

平成31年1月30日

J信用金庫から、Aに対して弁護士の紹介を受ける。

平成31年2月

J信用金庫弁護士からAに対して、信託契約公正証書作成の嘱託人に代理人がなっていることが問題であり、信託契約が無効であることを指摘。

J信用金庫弁護士とAとの間で、信託契約に係る公正証書の作成手続などの委任契約を締結。

平成31年2月28日

公証人役場(公証センター)

J信用金庫弁護士とAの嘱託。信託契約無効確認書の公正証書作成。

XとAの嘱託。信託契約公正証書作成。

平成31年3月7日

J信用金庫弁護士がY司法書士が代理申請した、平成30年8月30日付けの所有権移転及び信託登記を、錯誤を原因として抹消登記代理申請。続いて、平成31年2月28日所有権移転及び信託登記を代理申請。

第十二 信託に関する登記

一 信託の登記

1 法第104条第1項の権利の抹消(仮訳)

参考

「不動産登記記録例集」(株)テイハン

「信託目録の理論と実務」渋谷陽一郎 (株)民事法研究会

「改訂版 信託登記の実務」信託登記実務研究会 日本加除出版(株)

●登記記録(登記簿):●The registration record (The registry)

表題部:The heading section. (土地の表示):The description of the land.調整 : The prepared.平成〇〇年〇月〇日 : The prepared date.不動産番号 : The real property number.12345567890123 
地図番号 : The map number.A11―1筆界特定 : The parcel boundary demarcation.       余白:The blank. 
【所在】 : The location.〇〇県〇〇市〇〇町〇〇 余白: The blank.
①地 番 : The parcel number.  ②地 目 :The land category  (Current state of the Land).③地  積 ㎡ : The parcel area (area of the Land).原因及びその日付 : The cause for recording and date thereof. 【登記の日付】:The recording date.   
9999番3宅地 : The presidential land.100 00                 :100.00㎡①9999番1から分筆 : Subdivision of the Parcel Number.9999-1. 【平成〇〇年〇月〇日 
所有者 : The owner.〇〇市〇〇丁目〇番〇号    〇〇 〇〇: The name and address of owner.   
 権 利 部(甲区): The rights section (The section A).        (所有権に関する事項): Matters concerning the owner.
順位番号 : The rank number.登記の目的 : The purpose of recording.受付年月日・受付番号 : The recording date and number.【権利者その他の事項】 : The holder of rights and other particulars.
1  所有権保存 : The preservation of ownership.  平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号所有者: The name and address of owner. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号: 〇〇 〇〇
所有権移転 : Transfer of ownership.平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号原因: When and for what cause ownership was acquired.  平成〇〇年〇月〇日信託: The trust date.   受託者 〇〇市〇〇丁目〇番〇号: 〇〇 〇〇 : The name and address of the trustee.
信託 :The trust.余白抹消: The blank cancellation.信託目録第何号 : The inventory of trust number.
所有権移転 : Transfer of ownership.平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号原因: When and for what cause ownership was acquired.  平成〇〇年〇月〇日信託財産引継: The property of the trust inheritance date.
2番信託登記抹消 : The second registration of the trust cancellation.余白: The blank.原因: When and for what cause ownership was acquired. 錯誤

※下線のあるものは抹消事項であることを示す。

The underlines indicate delated matters.        The filing Number:00000000000 (1/1)                  

〇〇県〇〇市〇〇町〇〇〇〇―〇             全部事項証明書: The certification of all recording matters. (土地):The land.  信託目録:The inventory of trust. 調整: The prepared.  余白:The blank. 番号 : The number. 受付年月日・受付番号 : The recording date and number. 予備:The preparation 第1号 : The number 1. 平成〇〇年〇月〇日 第〇〇〇〇号 信託抹消 平成〇〇年〇月〇日受付第〇〇〇〇号抹消 1 委託者に関する事項  : 1 Matters concerning the settlor. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the settlor. 2 受託者に関する事項 :2 Matters concerning The trustee. 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the trustee.      3 受益者に関する事項等 : 3 Matters concerning the beneficiary 〇〇市〇〇丁目〇番〇号 〇〇 〇〇 : The name and address of the beneficiary’s agent. 4 信託条項 : 4 Trust clause. 1、信託の目的: The purpose of trust.    信託不動産の管理、運用及び処分。 : maintain the real property of the trust use the real property of the trust dispose the real property of the trust   2、信託財産の管理、運用及び処分の方法 :the procedure to maintain the real property of the trust the procedure to use the real property of the trust the procedure to dispose the real property of the trust      (1)受託者は、受益者又は受益者代理人からの同意を得て、信託不動産を処分することができる。また、受託者自らが必要かつ合理的と認める場合、受託者の裁量にて行うことができる。   : (1) The trustee may dispose the real property of the trust when he the beneficiary’s agent agree to disposition. Also, the trustee may choose dispose the real property of the trust when he/she accept dispose the real property of the trust.   (2)受託者は、受益者又は受益者代理人の同意を得て、下記の事項に関して信託不動産に抵当権を設定し、抵当権設定登記手続を行うことができる。   : The trustee may set mortgage and registry of the mortgage in the real property of the trust in the following case (ア、イ) when the beneficiary’s agent agree to it.    ア 信託不動産のためにする金銭の借入れのために、受益者または受託者を債務者とする場合 : The obligor, who is the trustee, loan money the real property of the trust.   イ 信託費用が欠ける場合、信託費用等を補填するためにする金銭の借入のため、受託者を債務者とする場合。    :  The obligor, who is trustee, loan for the cost of the trust.   3、信託の終了 : Termination of the trust.      本信託の終了事由は、下記の通りである。 : The grounds for termination of the trust are the following.   (1)受託者および受益者又は受益者代理人が合意した時。 : (1) If the trustee and the beneficiary’s agent agree to termination of the trust, the trust terminates.   (2)信託法に定める事由が生じた時。 : (2) If the grounds in the trust act occur, the trust terminates.   4、信託の変更 : Modification of the trust.    本信託は、受託者および受益者又は受益者代理人との合意により、変更することができる。      : The trust may modify when the trustee and the beneficiary’s agent agree to the modification.   5、清算手続の終了 : Termination of liquidation procedure of the trust.      受託者による信託の清算手続は、信託財産の全てを、これに関する一切の債権債務関係と共に、残余財産の帰属権利者に引き渡したときに終了する。      : The liquidation procedure in the trust by the trustee terminates when the trustee deliver over the all asset of the trust with all claim and obligation to the holder of vested right of the residual asset.   6、残余財産の帰属権利者 : The holder of vested right of the residual asset.      本信託の残余財産の帰属権利者は、最終の受益者とする。       : The holder of vested right of the residual asset in the trust is the last beneficiary.                                         これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。 : This document evidences all of the entries made in the registry.   四角形: 角を丸くする: Official Seal★(〇〇地方法務局管轄)〇〇Legal Affairs Bureau   〇〇年〇〇月〇〇日 Date 〇〇Legal Affairs Bureau   登記官 〇〇  Registrar’s name: 〇〇   ※下線のあるものは抹消事項であることを示す。 Underlines indicate delated matters.        Filing Number:00000000000 (1/1)                  

落ちる研究助成申請書の書き方

受付年月日番   号
 個人研究21-
共同研究21-

      2021(令和3)年度 研 究 助 成 申 請 書

                     2021(令和3)年9月24日

一般財団法人 司法協会 御中

             住        所 沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地

             所  属  機  関 司法書士宮城事務所

             申請者氏名 【            】  印

             連絡先電話番号 (098)945-9268

 貴一般財団法人の研究助成の給付を受けたいので下記のとおり申請いたします。

               記

1 研究助成の種類    個人研究

             共同研究

2 研究課題

【所有者不明土地等対策関連法令の施行前における課題検証】

3 研究組織

 (個人研究)

氏  名(フリガナ)年   齢所 属 機 関・地 位
宮城直(ミヤギスナオ)  41司法書士宮城事務所・代表司法書士

4 研究課題に関する過去の業績

2018年7月

「チェック方式の民事信託契約書とその留意点(1)、」民事法研究会『市民と法』112号

「民事信託はなぜ利用されるのか:土地建物の円滑な権利移動に資することの検証」(公社)不動産学会一般発表論文

2018年9月

「チェック方式の民事信託契約書とその留意点(2)」民事法研究会『市民と法』113号

2020年2月

「民事信託に関するアンケート調査―沖縄の市町村等担当者と講座受講者に聴く―」民事法研究会『市民と法』121号

5 研究目的・意義

(1)研究目的

・相続登記及び住所変更登記義務化等の、所有者不明土地等対策関連法令の施行前における課題検証。

(2)研究の意義

・平成30年度研究助成事業において採択していただき、2019年の1年間、自治体及び民事信託の講座受講者に対してアンケート調査を行い、民事信託の利用件数の把握を試みました。自治体担当者、民事信託の講座受講者の関心は高く、実際に区画整理などで困っている現状を知ることができ、その後の支援に繋げることが出来ました。

 また家庭裁判所から、沖縄県における成年後見制度利用の概況を提供していただきました。都道府県単位で成年後見制度の利用概況を公表出来たことは全国でも初であり、全国平均と沖縄県の比較が出来たことは成果だと考えます。

・前回の研究を踏まえて、相続登記及び住所変更登記義務化等の、所有者不明土地等対策関連法令の施行前における課題検証を行い、対策案まで提出したいと考えています。

参考

不動産登記法の施行・・・公布から2年以内(主に民法部分の改正等)、公布から3年以内(相続登記義務化等)、公布から5年以内(所有不動産記録証明制度等)。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律・・・公布から2年以内。

 以上を踏まえて、2022年段階での現状と課題を把握し、対策案を提出する。

前回、沖縄県の成年後見制度の利用概況が得られたことから、予防法務としての任意後見についても研究対象に追加します。

6 研究計画・方法

  • 研究計画

2022年1月~2022年12月

・自治体担当者、地域包括支援センター、市町村議会議員に対して、法令改正に関するアンケート調査。

・那覇家庭裁判所に対して、2021年の成年後見制度の利用概況の開示協力を依頼。

・那覇公証センター、沖縄公証人役場に対して、2021年における任意後見契約の締結件

数の開示協力を依頼。

2022年4月~2021年12月

・開示に協力していただいた資料について、結果をまとめる。

2022年6月~2022年12月

・まとめた結果の分析、課題の把握、対策案の提示、論文作成。

2023年1月

・一般財団法人司法協会に送付する研究報告書及び会計報告作成。

2022年2月

・一般財団法人司法協会に対して、研究報告及び会計報告の提出。

  • 研究方法等

ア アンケート調査等及び分析

アンケート調査を基に、グラフ・表を作成し、現状分析を行う。現状分析を行った上で、改正法令の把握状況から課題を抽出し、2023年から行うことが実施可能な対策について言語化を行う。

イ 実践

 改正法令の施行がスムーズに行われるように、対策案を提案・または実施する。

7 研究実施期間

2022年1月~2022年12月

8 研究成果発表計画

・(公財)不動産学会などの所属学会への論文、市民と法、登記情報、金融法務事情など法令雑誌への投稿。

・沖縄県司法書士会及びアンケート回答者で、希望する者にアンケート調査の結果、動画の提供。

9 研究経費及び内訳

  総額 (内訳)

項     目予  算  額積 算 内 訳
郵送費72,000円・切手@120円×600=円(自治体担当者、地域包括支援センター、市町村議会議員)
消耗品費30,000円・A4用紙@2000円/2500枚 ・インク8000円(@4000円/インクジェットプリンター4色分セット2個) ・交通費など。
書籍、複写費100,000円法務、統計に関する文献購入、論文など複写。
調査報告書の提供10,000円アンケートに答えて下さった方で希望する機関に対して調査報告書・動画を提供する際の切手費用。
合計212,000円 

10  助成希望金額

212,000円

11  他の機関からの助成 (機関名・助成金額)

なし。

12 研究期間終了後の研究報告及び会計報告の提出予定日

2023年2月末日

13 連絡先

フリガナ ミヤギスナオ

氏 名  宮城直

住 所  〒903-0114  

     沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地

電  話  (098)945-9268

FAX  (098)96309775

Eメール shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

民事信託支援業務のための執務指針案100条(10)

『市民と法[1]』の記事、渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(10)―法3条業務としての民事信託支援の確立に向けて―」からです。

まずは、日司連が「執務ガイドライン」を策定し、全国共通の規範を作る。そして各単位司法書士会が、その規範の実行性を確保するため、地域の実情に即した規律と監督体制を構築する。日司連と単位司法書士会の役割分担である。

 私は、なぜ日司連が執務ガイドラインを策定するのか、各単位司法書士会が地域の実情に即した規律と監督体制を構築する必要があるのか、分かりませんでした。日司連の民事信託推進ワーキングチームから、ガイドラインが発行されましたが、法律上違うのではないかというメールは無視されました。司法書士会員相手に有料講座を提供する会員が所属する民事信託推進ワーキンググループから執務指針を出せるのか、申し訳ないのですが疑問です。

 単位司法書士会(支部)は、地域の信託センターとして、信託支援者に対する監督体制のしくみのための基本インフラとしても、うってつけなのだ。

 なぜ、私が分からないのかというと、監督、という言葉に引っかかるからです。監督されるということは、違反した場合の罰則を伴います。使うとすれば、相談・照会が良いような気がします。それでも、監督体制を構築するということは、司法書士会員が単位司法書士会の業務として従事することになります。司法書士会員の負担は確実に増えます。監督業務に従事する司法書士会員が確実に監督出来る可能性があるか、分かりません。小規模地域だと、明らかな違法行為の場合を除いて、仲の良い悪いで監督の方法が違ってきたりするからです。成年後見業務のチェックが、どれほど負担になるか、会員に拠って感じ方は違うと思いますが、少し考慮して慎重になることが必要かなと思います。監督体制を一度整備すると、外部に向かっても発信することになるので途中で止める、ということは難しくなるのではないかと思います。

しかし、ここは本誌読者と共に冷静に峻別して、司法書士制度の未来のための民事信託支援業務の法的根拠論・防御論を、理性的に考えたい。

 私は、1番目に必要なのは、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令第8条3項9号の改正、改正されるまでは依頼者等の本人確認等に関する規程基準を先に改正して対応することだと思います。現行規定は、条文上手当てがされていません。私の読み違えでなければ、司法書士が民事信託に関する業務行う根拠規定になっていません。犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令については、個人的に官公庁にコメントを出しました。

司法書士の民事信託支援業務は、報酬などに欲張らなければ、本人訴訟支援業務と同じように、儲からないかもしれないが、司法書士業務の適法範囲(3条1項各号)で行うことが充分可能である。

 欲張らない報酬というものが、どの位なのか分かりませんでした。欲張らない、儲からないかもしれないのが問題なのか、私には分かりませんでした。司法書士業務の適法範囲(3条1項各号)で行うことが充分可能であるというためには、金森健一弁護士からの「司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論について~(続)民事信託業務の覚書~―「民事信託」―実務の諸問題(5)」に1つ1つ回答することが必要だと感じます。回答が、今の時点では出来ないかもしれない、分からない、でも実務の求められている実情から、直ぐに司法書士は民事信託に関する業務を止めるということにはならないのではないかと思います。

民事信託分野では、議論の結論が分かれる論点も多く、いまだ信託契約書の標準化にまで至っていないのが現状である。

 標準化、がどのようなものを指しているのか、分かりませんでした。三井住友信託銀行などが取り組んでいる民事信託をもって標準化と呼ぶことも出来るかもしれません。

従来業務で、信託契約書起案業務に最も類似するのが、任意後見契約書の起案業務であるが、同業務の背景には後見登記の存在があり、法3条業務として位置づけられる。なお、法技術的にも信託契約書起案の方が難解である。

 任意後見契約書の起案業務が、後見登記の存在により、司法書士法3条業務として位置づけられるのか、私には分かりませんでした。

後見登記等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000152_20191216_501AC0000000016

(任意後見契約の登記)

第五条 任意後見契約の登記は、嘱託又は申請により、後見登記等ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。

一 任意後見契約に係る公正証書を作成した公証人の氏名及び所属並びにその証書の番号及び作成の年月日

二 任意後見契約の委任者(以下「任意後見契約の本人」という。)の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)

三 任意後見受任者又は任意後見人の氏名又は名称及び住所

四 任意後見受任者又は任意後見人の代理権の範囲

五 数人の任意後見人が共同して代理権を行使すべきことを定めたときは、その定め

六 任意後見監督人が選任されたときは、その氏名又は名称及び住所並びにその選任の審判の確定の年月日

七 数人の任意後見監督人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことが定められたときは、その定め

八 任意後見契約が終了したときは、その事由及び年月日

九 家事事件手続法第二百二十五条において準用する同法第百二十七条第一項の規定により任意後見人又は任意後見監督人の職務の執行を停止する審判前の保全処分がされたときは、その旨

十 前号に規定する規定により任意後見監督人の職務代行者を選任する審判前の保全処分がされたときは、その氏名又は名称及び住所

十一 登記番号

第94条 法律整序書面としての信託契約書の確認(信託の終了事由の確認)

―中略―自らの単独の意思で信託を撤回することができる余地を残すことを望むか否か、その真意は奈辺にあるのか、受託者はどのように考えているのかなどを聞き取り、信託当事者の真意及び成立済みの合意に合致した法律整序書面の作成を支援するものとする。―略―

 東京地裁平成30年10月23日判決を踏まえての指針なのかなと思いました。第95条は、信託の変更規律の確認と似た文章の構成となっています。選択肢をすべて示し、という部分はチェック方式にすることで可能なのかなと感じつつ、信託行為の全てについて、選択肢を示すということを行うと、委託者と受託者は理解出来るのか、分かりませんでした。

第96条 法律整序書面としての信託契約書の確認

―略―信託当事者の真意及び成立済みの合意に合致し、利用者が主体としての法律整序書面の起案を支援するものとする。―略―

成立済みの合意、という場面を作るための、選択肢をすべて示し、なのかなと思いました。


[1] №132/2021年12月P3~民事法研究会

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