平成31年(受)第427号,第428号 遺言無効確認請求本訴,死因贈与契約存在確認等請求反訴事件令和3年1月18日 第一小法廷判決

 

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事件番号 平成31(受)427号

事件名  遺言無効確認請求本訴,死因贈与契約存在確認等請求反訴事件

裁判年月日 令和3年1月18日 法廷名  最高裁判所第一小法廷

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小法廷と大法廷の違い 裁判所HP

[blogcard url=”https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20915005.pdf”]

Q 最高裁判所の大法廷と小法廷とは,どう違うのですか?

A 最高裁判所には,最高裁判所長官を含む15人の裁判官全員で構成する大法廷(定足数9人)と5人の裁判官で構成する三つの小法廷(定足数3人)があります。すべての事件は,まず小法廷で審理して,ほとんどの事件がこの審理及び裁判で終了します。小法廷で審理した事件の中で,法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するときなどに限って,事件を大法廷に移して審理及び裁判をすることになります。

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裁判種別 判決

結果 破棄差戻

原審裁判所名     名古屋高等裁判所

原審事件番号     平成30(ネ)464号

原審裁判年月日 平成30年10月26日

判示事項           

 自筆遺言証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって同証書による遺言が無効となるものではないとされた事例

平成31年(受)第427号,第428号 遺言無効確認請求本訴,死因贈与契

約存在確認等請求反訴事件

令和3年1月18日 第一小法廷判決

主 文

 原判決を破棄する。

 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

 理 由

平成31年(受)第427号上告代理人菊地隆太ほかの上告受理申立て理由及び同第428号上告代理人後藤武夫ほかの上告受理申立て理由(ただし,いずれも排除された部分を除く。)について

1 本件の本訴請求は,亡Aが作成した平成27年4月13日付け自筆証書(以下「本件遺言書」という。)による遺言(以下「本件遺言」という。)について,被上告人らが,本件遺言書に本件遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているなどと主張して,上告人らに対し,本件遺言が無効であることの確認等を求めるものである。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人らはAの妻であるX1及び同人とAとの間の子らであり,平成31年(受)第428号上告人ら(以下「上告人Y2ら」という。)はAの内縁の妻であるY2及び同人とAとの間の子らである。

(2) Aは,平成27年4月13日,入院先の病院において,本件遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後の同年5月10日,弁護士の立会いの下,押印した。本件遺言の内容は,第1審判決別紙遺産目録記載の財産を上告人Y2らに遺贈し,又は相続させるなどというものであった。

(3) Aは,平成27年5月13日,死亡した。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人らの本

訴請求を認容すべきものとした。

自筆証書によって遺言をするには,真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならず,本件遺言書には押印がされた平成27年5月10日の日付を記載すべきであった。自筆証書である遺言書に記載された日付が真実遺言が成立した日の日付と相違しても,その記載された日付が誤記であること及び真実遺言が成立した日が上記遺言書の記載その他から容易に判明する場合には,上記の日付の誤りは遺言を無効とするものではないと解されるが,Aが本件遺言書に「平成27年5月10日」と記載する積もりで誤って「平成27年4月13日」と記載したとは認められず,また,真実遺言が成立した日が本件遺言書の記載その他から容易に判明するともいえない。よって,本件遺言は,本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているから無効である。

 

4 しかしながら,本件遺言を無効とした原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

自筆証書によって遺言をするには,真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならないと解されるところ(最高裁昭和51年(オ)第978号同52年4月19日第三小法廷判決・裁判集民事120号531頁参照),前記事実関係の下においては,本件遺言が成立した日は,押印がされて本件遺言が完成した平成27年5月10日というべきであり,本件遺言書には,同日の日付を記載しなければならなかったにもかかわらず,これと相違する日付が記載されていることになる。

しかしながら,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書並びに押印を要するとした趣旨は,遺言者の真意を確保すること等にあるところ,必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは,かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある。

したがって,Aが,入院中の平成27年4月13日に本件遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後の同年5月10日に押印したなどの本件の事実関係の下では,本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではないというべきである。

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最高裁昭和51年(オ)第978号同52年4月19日第三小法廷判決

[blogcard url=”https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/525/074525_hanrei.pdf”]

抜粋

・民法九六八条によれば、自筆証書によつて遺言をするには、遺言者がその全文、日附及び氏名を自書し印をおさなければならず、右の日附の記載は遺言の成立の時期を明確にするために必要とされるのであるから、真実遺言が成立した日の日附を記載しなければならない。

民法968条1項

[blogcard url=”https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089″]

(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

5 以上によれば,本件遺言を無効とした原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この点に関する論旨は理由があり,原判決中本訴請求に関する部分は破棄を免れず,本件遺言のその余の無効事由について更に審理を尽くさせるために,これを原審に差し戻すのが相当である。そして,本件の反訴請求は,上告人Y2らが,被上告人らに対し,本訴請求において本件遺言が無効であると判断された場合に,予備的に,死因贈与契約の成立の確認等を求めるものであるところ,本訴請求について原判決が破棄差戻しを免れない以上,反訴請求についても当然に原判決は破棄差戻しを免れない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 深山卓也 裁判官 池上政幸 裁判官 小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 山口 厚)

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・上告って

 高等裁判所がした判決に対して,判決宣告があった日の翌日から起算して14日以内に最高裁判所に不服申立てをすることです。

裁判所HP

https://www.courts.go.jp/hiroshima-h/vc-files/hiroshima-h/file/202017.pdf

・破棄差戻しって

 憲法解釈の誤りがあるか、法律に定められた重大な訴訟手続の違反事由があるから、もう一回元の裁判所で審理してもらう。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_01_02_04/index.html

「家族信託ファクトブック2020―第3章 一般向けアンケート結果の報告)―」より

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

回答者300名

年齢・性別 40代を筆頭として50代、60代、70代、80代と続く。男性の割合が各年代において6~9割。

相続における立場 自身が親、自身が推定相続人(親が認知症など)、自身が推定相続人(親が認証などではない)が各約3分の1

住居形態 一戸建て約8割、マンション2割

地域 二桁の回答者は、北海道、関東の一部、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県。沖縄県は0件。

Q1.あなたは今後の相続について、検討を始めていますか。

Q2.検討していない理由は何ですか。

Q3-1.今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」

について家族と話す機会は。

Q3-2.今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」

にまつわる対策について、感じ方の変化は。

Q4.財産について、お考えに近いものをお答えください。

Q5.財産の分配についてもお答えください。

Q6.相続について、家族と話をしていますか。

Q7.主にどういう点について相談されましたか。

Q8.お話のきっかけは何でしたか。

Q9.お話(ご相談)をしていかがでしたか。

Q10-1.相続について話さない理由は何ですか。

Q10-2.親が認知症の場合の相談相手。

Q11.あなたは、ご自身の家族に対する感謝の気持ちや想いを、伝えたことがありますか。

Q12.あなたは自分の資産内容を把握していますか。

Q13.以下の項目の中であなたが行なっていることをお答えください。

遺言書の作成、エンディングノートの作成、専門家への相談、後見人の指定、書籍での学習、セミナー等への参加

Q14.遺言書を作成したタイミング、及び作成の理由は。

Q15.専門家に相談しない理由は。

Q16.相続について不安に感じることをあげてください。

Q17.あなたは相続に関する情報はどこから入手されましたか(する予定ですか)。

Q18.あなたは、平成27年から相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税を支払うべき対象が十全より拡大していることをご存じですか。

Q19-1.あなたは、令和元年より相続人ではない親族でも被相続人の介護などで財産の増加・維持に貢献している場合は相続税時、相続人へ金銭の請求権が発生することを知っていますか。

Q19-2.無償の介護・看病等を行った相続人以外の親族に対する財産の配分は。

Q20.あなたは、親が認知症になった場合、銀行口座などが凍結されて、後見人以外は配偶者や子供であっても、お金を引き出すことができなくなることをご存じですか。

Q21.あなたは、親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為が被相続人自身にできなくなることをご存じですか。

Q22.あなたは、親が認知症になった場合、「成年後見制度」を利用すると対象者が亡くなるまでやめられないことをご存じですか。

Q23.あなたは、親が認知症になった場合、「成年後見制度」を利用すると弁護士等、後見監督人へ報酬が発生することをご存じですか。

Q24.仮に親世代が認知症を発症した場合、成年後見制度を利用したい(してほしい)と思いますか。

Q25.成年後見制度を利用する場合、後見人にふさわしいのは誰ですか。

Q26.家族信託という制度をどの程度ご存じですか。

Q27.あなたは家族信託をどこで知りましたか。

Q28.家族信託を利用したいと思いますか。

Q29.家族信託のメリットは何だと思われますか。

まずは、29問あるアンケートに300名もの方々が答えて下さっているのが有難いなという感想を持ちました。協会主催のセミナーを受講した際にアンケート用紙が配られたのか、ウェブで行ったのか、期間はどのくらいだったのかは記載されていませんでした。

Q1.については、親、子世代とも約6割が何らかの検討を始めてとの結果です。何かしらしなくちゃいけないんだろうな、と考えているような時期かもしれません。

Q2.について、検討するほどの財産がないから、というのが1位を占めています。各家庭で検討すべきか、そうでないかは違って来るのだと思います。時間の経過とともに変化することもあると思います。定期的にチェック出来るようなアプリなどがあると良いのかな、と感じました。LINEでの簡単な相談が出来たりするのも良いのかもしれません。まず一歩踏み出すと結構意識が変わったりすることがあります。また、過去に専門家に相談して嫌な思いをした方もいるのかもしれません。費用がかかりそうだから、というの理由がなかったのが意外でした。

Q3―1.3-2.について、特徴的なのは認知症の親を持つ子世帯で、相談の機会が増えたという回答も、減ったという回答も、それぞれ平均を上回っています。また、コロナ禍の中で親や配偶者の認知症が進んでいるようにみえるので、作成した遺言書を書き直した方が良いのか、と相談にいらっしゃる方もいました。同居、別居でも違うのかなと感じます。

 今回のコロナ禍を受けて、「相続」や「親が認知症になった際の財産管理」にまつわる対策についての感じ方の変化として、何らかの対策はしておくべきだと現実的に感じた方の割合が約2割います。私たちが経験したことのない状況で何らかの危機感、不安を感じるのは納得感があります。私も同様で、コロナ禍以前と以後では、業務に関する感じ方は変化しています。

Q4.について、できるだけ多くの資産を子に遺すのがよい、資産は親が適度に使い、残った分を子に相続させるのがよい、の2項目で約7割を占めます。どちらにしてもどのような形の資産を、誰に渡す(残す)のかについては、回答者の方はある程度具体的な意向があるのだなと感じます。

Q5.について、親は子供たちに対し、均等に配分するのが平等と考えているののが6割。子のほうは親への貢献(家業の承継や介護)を考慮してほしいとの回答が5割近くに達しています。親の意思が固く決まっている場合は良いと思います。生前贈与でも対応できる部分はあります。子の要求を親に求めると、親がどのように決めても子の不安が残る事案が少なくないような気がします。先に子ども同士で合意してから、親に聞いてみるのが親の負担が少ないような気がします。子どもといっても30代~60代だと思われるので、とても不平等だ、ということでもない限りは、譲歩し合うこともできるのではないでしょうか。

 債務がない(または資産より少ない)だけでも、話し合いはやりやすいものということを少しでも頭に入れても良いのかなと感じます。

Q6,Q7.Q8. Q9.について、4 人に1 人強が家族で相続に関する話をしるようです。相続だけに限らず、介護や認知症になった際の対応、万一の際の葬儀やお墓についてなど、広く親の老後について話されているようです。

 話のきっかけとなったのは「親の怪我や病気」が5割超でした。具体的な健康不安を感じた時や、親戚など身近な不幸に接した時などに、改めて先のことを話し合っておかなければと思われる方が多いのは、納得感があります。話をした結果、72%の方にとって、こうした親子のコミュニケーションが、具体的な相続対策を検討するよいきっかけとなっているようです、との記載がありますが、ここについては私は分かりませんでした。親と子供全員なのか、一部の子だけなのかで変わってくるのではないかと思います。

Q10-1. Q10-2.について、相談したいが話をするきっかけがない、何も検討していないので相談できないが5割超を占めています。親子ってそういうもんだよなぁ、と感じます。親が認知症の場合の相談相手に、自分の配偶者を挙げている方が回答100名のうち、9名いらっしゃいます。第三者的な方の意見を聴くのは有意義なことだと思います。ただし、他の兄弟姉妹からみるとあまり良い気持ちをしない方がいらっしゃる場合もあります。この辺は難しいところだな、と感じます。

Q11.については、質問の趣旨が分かりませんでした。

Q12.Q13. Q14. Q15.について、資産内容の把握をしている方は、預貯金など管理しやすいものは高く、老後の生活資金など不確定のものは低いです。普通の結果だと思います。

 遺言書・エンディングノートを作成した、または作成を検討している方と書籍での学習をされている方が2割を超えています。自分で決めておきたい、という方は一定数いるのが分かります。遺言書を作成したタイミングとして、還暦、古希など一定の年齢に達した際という項目が一番多く48パーセントでした。私の依頼者にそのような方はいなかったので、記念のようで良いなと感じました。

 専門家に相談しない理由として、信用できる専門家が身近にいないから、何を相談すればよいかわからないから、知人などの例を見ても、事前に相談しなくても特に問題はないと思われるから、で8割以上を占めます。ファクトブックでは、専門家への敷居の高さを原因としています。私は少し違うと思います。顔が見えない、人柄が分からない、費用がどのように計算されているのか分からない、など公開されている情報の中身があまりないことが原因ではないかなと感じます。

Q16. Q17. Q18. Q19-1. Q19-2.について、3割強が相続について家族間で相談しにくい、1割強が相続に関する知識がないと回答しています。人生で1度か2度くらいしか経験しないことなので、当然のことかなと感じます。相続という大きな括りではなく、1つ(例えば葬儀費用)などについてだけ決めておくだけでも違ったりするのではないか、と感じます。

 相続に関する情報については、雑誌や書籍、ホームページ、家族親戚など、様々なところから収集しているという結果です。今の時代だと訊いていないのに流れてくる状態だと思います。情報過多になっても疲れて結局何もしないで良いや、となってしまいがちなので、難しいなと感じます。

 相続税の基礎控除の引き下げについては、不動産を持っている方は知っている方が多いという印象です。令和元年の民法(相続関係)改正の寄与分については、知っている方が3割いるようです。意外と多いなぁという印象です。

Q20.からQ29.について、成年後見制度と家族信託制度に関する質問です。

 現在、一定限度で親が認知症になった場合でも、銀行口座から配偶者や子供であっても、お金を引き出すことができるようになっている金融機関もあるようです。今後もその流れは広がるのではないかと思います。

 親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為が親にできなくなることをご存じですか、の項目に6割の方は知らなかった、と回答しています。土地の売買、区画整理、銀行融資、保険金受取などがない限り、契約行為でも出来てしまう実態があるので、6割の方が知らないのも無理はないと思います。例えば200万円位のペンキの塗り替え工事を所有者である親のお金を使って子どもがサインする、ということは日常的に行われています。

 成年後見制度を利用すると対象者が亡くなるまでやめられない、というのは誤りです。後見事務の負担が大きく無理であれば辞任することが出来ます。その代わりに市民後見人か他の親族・士業などが就くという建てつけです。

成年後見制度を利用したい人は、約1割です。多くはないですが少なくもないと思います。

なお、家族信託を利用したい人の割合は1割超とあまり変わらないのが意外でした。

「家族信託ファクトブック2020―第3章 アンケートデータでみる家族信託(2020)―」より

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

Q1 これまでに家族信託に関連したご相談はどれくらいありますか

Q2 その中で信託組成に至った件数は何件ですか

Q3 家族会議を開催する割合をお教えください

Q4 家族信託に関するご相談はどういうルートで受けられることが多いですか

Q5 家族信託の組成や相談を進めるうえで、困ったこと、阻害要因となったことはありましたか

Q6 家族信託の相談ではどのような内容のものが多いですか

Q7 組成の継続フォローは確実に行われていますか

Q8 信託口口座を開設できた金融機関をお答えください

Q9 口座開設におけるお困りごとを教えてください

Q10 口座が開設できなかった場合はどうされましたか

また、抵当付不動産について債権者の承諾は得られましたか

承諾を得られなかった場合の対処法をお答えください

Q11 協会にどのようなサポートを期待されているかをお答えください

(回答総数300 件)

Q1、Q2、については、多いのか少ないのか、自主申告であることなどからよく分からない部分があるので、感想はありません。グラフを観ていると年々増えている、年に1人一件くらい新規で信託行為を設定している、というようなことが何となく分かります。Q3の家族会議については、年に一度は専門家同席のもと、話し合いの場を持ちましょう、という顧問契約のようなものだと思います。どのような内容で行うかは記載されていないので、特別に思うところはありませんでした。約3分の1(約100名)の方は必ず実施している、と回答されています。

Q4の相談が寄せらせるルートについて

 ここは、結構散らばりがあって興味深くみていました。大まかに5つに分かれるようです。自社チラシ、HP、既存顧客への提案、取引先からの提案、セミナーなどの参加者、その他(協会からの紹介、金融機関からの紹介、新規先への提案など)。

取引先からの提案、セミナーなどの参加者という枠の中に、おそらく士業、不動産会社などからの紹介も入っているのだと思いました。「提案」という中には、制度の紹介や遺言などの相続関係の相談を受けた際に提案してみた、というものも含まれれるのではないかと想像します。家族信託・民事信託のみをいきなり提案しても説明が大変だと思いますし、相談した方も理解が難しいのではないかと考えるからです。

アンケート調査については、大体納得できる印象です。

 抜けている、というか私が関心を持っているのは、共同受任、業務提携、リーガルチェック、同業向けセミナー、学校という名前がついたサービスについてです。情報が入ってくる限りでは1,000件/年くらいあるように思います。色々なことを考える発想力は凄いなと思いますが、少なくないお金を払う同業者にとって本当に利益になっているのか、私には分かりません。特に去年の合格者に対して営業をかけている場面を観てからは、おいおいおいと感じてしまいました。司法書士会主催の研修と書籍、出来れば自分の名前で発信するメディアを持つこと(紙、各種ブログサービス、ホームページ、SNSなど)で充分足ります。

Q5について、本人の理解、家族の理解、抵当付き不動産、公正証書の作成実務、農地の信託財産化、税理士弁護士の理解、組成コスト、金融機関による受託者への融資、信託登記手続き、信託契約書の作成実務、金融機関での口座作成実務、本人の判断能力の低下、受託者のなり手などが挙げられています。

この中で私が重要だと考えるのは、本人の判断能力の低下と家族の理解です。本人の判断能力が低下している場合、信託行為自体の有効性が疑われてしまいます。信託行為の内容でどれだけ考えても無駄になってしまいます。また本人の判断能力の判断能力の低下は、家族の理解(意向)との齟齬を招く可能性があります。

Q6については、認知症対策が50%を超えています。大きな括りで考えると、将来への不安を一定限度ではありますが軽減するため、と考えてよいと思います(保険と近い)。

Q7について、6~7割以上が適切なフォローを実施している、と記載されています。これは質問するとしたら依頼者だと思います。

Q8について、口座が開設できない場合は受託者の個人口座や屋号の口座を適用するなど、柔軟にご対応されており、信託口口座ができないことを理由に組成をあきらめるケースは6%、と記載があります。受託者の個人口座や屋号口座について、私は否定的です。沖縄県内の金融機関のほとんどが信託口口座を作成可能なことは、恵まれているかもしれません。また最近はインターネットで信託口通帳を作成可能な金融機関も出てきているようなので、場所を問わなくなってくるのだと思います。抵当付不動産で債権者の承諾を得られなかった場合が3割近くあるということは、少し驚きを持ちました。金融機関にとって不利なことは少ないと思います。受託者の特性や遺留分など、何かしらの要因が重なっているのではないかと考えます。

Q11についての記載を探すことは出来ませんでした。

合同会社の定款

 合同会社を設立したい方が、パソコン上で項目を入力していくだけで定款作成、資格者代理人の電子署名、必要書類の集め方、設立登記の申請方法、登記完了後の各種届出が可能なサービスが出ています。

このサービスを利用して合同会社を設立された方の定款を、みせていただく機会がありました。

 第1条が会社の名前で登記事項です。同じ本店所在地でなければ、既にある会社の名前であっても原則として許されます。ただし、商業登記法8条や不正競争防止法違反は避ける必要があります(例えば、合同会社グーグルなど。)。

 第2条の事業目的も登記事項となります。4~5個で納める法人、25~30個定める法人まで様々です。どれが良い、ということはありませんが、他の人(例えば取引先)が数百円を出せば観ることが出来ることを頭に入れて、読みやすくどんな会社なのか分かるような記載を心掛けたいと感じます(例えば、○○事業、○○事業、○○事業及びこれに関する機器の輸出入、コンサルティング、などの長い文は分けてみる。将来行う可能性があるから、という理由で貸金業を入れて、金融機関から削除依頼された事例があります。)。また、許認可が必要な事業(建設業関係、宿泊業関係など)では、予め定款の事業目的に入れる必要がある文言が決まっている場合があるので、許認可を扱う官公庁に事前確認が必要となります。最近は官庁HPにも掲載されている場合も多くなっています。目的を1つだけ追加する、1つだけ削除する、といった場合も印紙代が3万円かかります。一部上場企業でも中小企業でも同じです。私は金額が違っても良いのではないかなと思います。3万円が25~30の事業目的を持っている法人を生み出している側面があるからです。

 第3条の本店所在地は、最小行政区画まで記載します。登記事項であり、登記記録には〇丁目〇番〇号、などと全て記録されます。例えば同じ市内での本店移転などで定款変更の決議を行わないで会社内部の意思決定処理を迅速に行うためです(変更登記申請は行います。)。

参考:大13.12.17民事1194号回答、登記関係先例集上1034号

 第4条の公告方法は、広告とは違います。公告とは、ある事項を広く一般の人に知らせること。その目的、方法、効力等は一定ではなく、それぞれの法律に定めるところによります。広告との違いは、通常営利目的ではなく法令で義務付けられていることです。広告についてはその範囲や表現が法令によって義務付けられている場合がありますが(景品表示法や屋外広告物法など)、公告は、どの媒体によってどのような内容を公表するのかが予め法令によって決められています。なお、合同会社では株式会社と違って年一回の決算公告が義務付けられいません。

参考:「法律用語辞典第4版」有斐閣

 第5条では、定款の変更方法を定めています。参考にしている定款では、社員全員の同意としていて、人数が少ない場合は適切だと考えます。2項については退社の原因になるのではないか、3項については他に法令の定めがあれば、それ従って読み替えるという意味だと思いますが、良く分かりませんでした。

 第6条は、各社員の氏名住所、出資金額、責任(合同会社は全員有限責任)を定めています。合同会社の社員と株式会社の株主との違いは何でしょうか。社員は出資額に関係なく1個の議決権を持ちます。株主は原則として、持っている株式の数だけ議決権を持ちます。株主は原則として株式の所有者に留まりますが、社員は原則として業務執行も行う前提で所有と経営が分離していません。

参考:松井信憲「商業登記ハンドブック」商事法務、立花宏「商業登記実務から見た合同会社の運営と理論」

 第7条は、持分の譲渡制限に関する定めです。参考とする定款では、代表社員の承諾と定めて、迅速な方法を採っています(会社法585条1項、4項)。他に追加するとしたら、社員間での持分の譲渡があった場合は、当該譲渡に関する社員についての定款規定の変更があったものとみなす。なお、持分の譲渡を行った各社員は、譲渡契約後2週間以内に会社に通知する。などでしょうか。

参考:会社法585条2項、3項

 第8条、第9条では業務執行社員と代表社員を定めています。社員は、原則として業務執行社員となりますが(会社法590条1項)、ならない、株主的な地位でいたい、という場合は業務執行社員とならないことも出来ます。参考としている定款では、代表社員の定め方は業務執行社員の互選となっています。互選とは、構成員の過半数の同意を得る、という意味です。他に全社員の同意などの定め方があります(会社法599条)。

 第10条は、利益相反取引に関する定めです。取引に関わる社員以外の全員の同意が原則ですが、定款で代表社員の承諾と変更しています(会社法595条)。

 

 第11条で、業務執行社員の報酬などは、社員全員の同意で決めると定めています。

[blogcard url=”https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/houji302.htm”]

 第12条、13条、14条では、社員の加入、退社について定められています(会社法604条~613条)。新しく合同会社に入りたい人は、社員全員の同意を得る必要がある。3か月前に会社に伝えて辞めることができる。緊急な事情がある場合はすぐにやめることが出来る。社員は、他の社員全員が同意したときは、辞めなければならない。社員が亡くなった場合、その相続人が持分を引き継ぎます。相続人が同意して持分を引き継いだ時に社員となります。なお、社員の加入について、資本金の増加・持分譲渡、社員の退社について、持分譲渡、出資の払い戻しが行われます。

 第15条で事業年度、第16条で損益分配について定めています(会社法622条1項)。

 第17条では、合同会社が解散する場合について定めています(会社法641条)。

他に入れるとすれば、定款の備置き、競業取引に関する制限、計算書類の作成、出資の払戻しの制限、利益配当に関して決定する事項、などでしょうか。

 

「家族信託ファクトブック2020」第2章 家族信託が必要とされる背景

「家族信託ファクトブック2020」(2020年11月、一般社団法人家族信託普及協会)からです。

少子高齢化の現在、確かに現役世代の支えるべき高齢者の数は増大していますが、その分、未成年者の数は大きく減少しているために、トータルでの社会コストとしてみると、実は1965 年の時点と現代、そして近い将来を考えても、就業者1 人が支えるべき非就業者の人数には、大きな変化は見られないのです。

 

 何か違う感覚を持つのは私だけでしょうか。国民年金保険料、国民健康保険料の額が、最初に払い始めた20歳の時より、5,000円/月位高くなっていると思うのですが。高齢者の医療費と年金を合わせた額と、未成年者の医療費と教育費などを合わせた額の比較で決まるのかなと感じました。

ただ、「就業者が非就業者を支える」という視点に環境適応の緒を見出そうという動きが起こっていることも確かです。加えて新たに現役世代の負担感を減じるような施策が打たれ、たとえば「高齢者の保有する金銭的、人的リソースがうまく社会で活用され、循環させられる制度」がありさえすれば、未来は変えていけるかも知れません。

 「高齢者の保有する金銭的リソースが上手く社会で活用され、循環させられる制度」の選択肢の1つとして家族信託がある、ということだと思います。このような書かれ方の場合、金銭的リソースを保有しない高齢者には、家族信託を利用する選択肢は(ほとんど)ない、ということも出来ます。

世帯主の年代別に、平均してどの程度の資産を保有しているかをみたものが以下のグラフです。

現役世代、たとえば40 歳代が平均で2,909 万円(金融資産588 万円、不動産等実物資産2,321 万円)程度であるのに対し、60 歳代は4,649 万円(金融資産1,509 万円、不動産等実物資産3,140 万円)と、とくに金融資産では3 倍近く差が開いていることがわかります。

この25 年間で60 歳代以上の資産はほぼ倍増、個人資産全体の約6~7 割を占めるに至り、個人金融資産約1,700 兆円中1,000 兆円あまりが高齢者層の保有、個人宅地資産も、約900 兆円中520 兆円が同じく高齢者層の保有となっています。

 私の個人的な感触は、簡単に高齢者が自身の所有する財産を次世代に引き継ぐとは思えません。何かしらの安心が必要だと感じます。私が所有していても子供に管理してもらうか、といったら自分で出来る間は自分で管理したいと思います。おそらく、自身に大きな疾患が見つかった場合(ステージ3の癌など。)は、今のうちに動いておこう、となるかもしれません。その次に、身近な親戚、友人知人の病気や死、相続で争った(財産の所有に拘って争った)ことを経験した・聞いた場合には、ちょっと考えないといけないのかな、と思うかもしれません。

認知症発症により“塩漬け”とされる高齢者の金融資産額は年々上昇しており、2030 年度時点で215兆円に達するとの試算が、2018 年8 月に、第一生命経済研究所より発表されています。

 塩漬け、というのは全く使われないという意味ではなく、原則として高齢者自身のためにしか使えなくなる、というような意味合いだと思います。

・企業の後継者不在は3 社に2 社という結果が出ており、この傾向は企業規模が小さいほど顕著です。また、経営者の年齢別では、とくに緊急性の高い60 歳代でも59.6%がなお「後継者不在」と回答しています(東京商工リサーチ発表)。

これは非常に憂慮すべき問題であり、2020 年1 月から10 月までの「後継者難」倒産は301 件(同期比47.5%増)に達しました。今年はこれに加え、コロナ禍の影響による休廃業・解散件数も大幅に増加しています。同じく2020 年8 月に発表された東京商工リサーチの第7 回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査によれば中小企業の廃業検討率は8.5%に上り、かつ「コロナの影響が継続している」と回答した企業のうち4.3%がその具体例として国内取引先企業の廃業を挙げています。最終的には30 万社を超える中小企業が廃業する恐れがあると言われています。

こうした点から、今後は少子高齢化による生産人口の減少とともに企業そのものの急激な減少による地域経済の落ち込みが心配されます。

 事業承継が進まない、というのは私が司法書士になったときからずっと聞いているような気がします。ただ、経営者の中には様々な理由で廃業する人がいることも分かり、法人設立に比べて悪い印象を持たれているんじゃないかな、と感じるようになってきました。私は、自分の仕事の範囲で起業、廃業の意思は尊重していきたいと思います。その間に法人の箱だけ誰か使うかな、法人の中身(機器)だけ事業を新しくやる人が使うかな、後継者に早めにバトンタッチしたいな、といった場合に必要な人に繋げられるようにはしたいと思います。

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