加工第22回弁護士業務改革シンポジウム第6分科会民事信託と後見制度

https://www.nichibenren.or.jp/document/symposium/gyoukaku_sympo.html

日本弁護士連合会2022.9.3(土)

基調講演 「民事信託・任意後見に関する公証実務」

金子 順一(元公証人・元裁判官)

パネルディスカッション前半 「民事信託・後見制度の比較、使い分け」

金子 順一 (元公証人・元裁判官)

伊庭 潔 (日弁連信託センターセンター長・東京弁護士会)

根本 雄司 (日弁連信託センター副センター長・神奈川県弁護士会)

八杖 友一 (日弁連高齢者・障害者権利支援センター 事務局長・第二東京弁護士会)

杉山 苑子 (日弁連信託センター副センター長・愛知県弁護士会)

清水 晃 (日弁連信託センター委員・東京弁護士会)

パネルディスカッション後半 「民事信託・後見制度の併用の実務的課題」

民事信託と任意後見に関する公証実務

金子 順一

1 高齢者の身上監護・財産管理・財産承継の方策

(生前の身上監護〈身上保護〉・財産管理)

・任意後見契約・・・・精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部の事務についての代理権付与

・委任契約を加えた移行型任意後見契約

委任契約は、任意後見監督人の選任により終了する。

・法定後見制度

後見・保佐・補助(生前の財産管理・財産承継)

・信託

財産管理と財産承継

民事信託

受託者が信託銀行、信託会社等の信託業法の適用を受ける商事信託以外のもの。

・・・上の定義だと、営業として信託の引受けにあたるが、信託業法に基づく免許・登録が不要な信託(信託業法2条1項かっこ書き、3条、7条)は、民事信託に当たらないということになります。

主に家族間の財産管理・財産承継のために用いられる。

(財産承継・死後事務)

・遺言

・死後事務委任契約

2 任意後見契約の締結

件数 平成30年から令和3年までの作成件数

別紙記載2のとおり、年間1 万2000件程度

日本公証人連合会法規委員会によるアンケート結果の概要(平成30年11月~12月) 公証192号掲載

※日本公証人連合会が、任意後見契約締結の実態把握のために、全公証人に対して実施したアンケート結果の抜粋である。

・利用形態

移行型 75.5%

将来型 23.7%

即効型 0.7%

・本人(委任者)の性別・年齢

〔性別〕

男性 36.1%

女性 63.9%

・・・・・・・・女性が多い。

〔年齢〕

60歳~70歳未満 11.0%

70歳~80歳未満 27.0%

80歳~90歳未満 42.9%

90歳以上 14.1%

・依頼者

本人 24.8%

近親者 24.9%

司法書士 18.2%

行政書士 11.3%

弁護士 10.8%

・・・・・・依頼者とは、嘱託人と代行者(使者)を併せた、公証人と事前打ち合わせを行う者のことを指していると考えられます。

・申立ての動機

預貯金等の管理・解約 37.7%

身上監護(医療契約、施設入所契約等) 36.4%

・受任者

近親者 69.4%(子55.5%)

行政書士 5.7%

司法書士 5.6%

弁護士 4.6%

・同時に他の公正証書の作成(併用) 59.0%

内訳

遺言 79.3%

信託 2.5%

任意後見受任者が帰属権利者 81.5%

死後事務委任 42.3%

尊厳死 11.3%

契約手続の実態と留意点(公証人として)

ア 契約締結の動機

将来、認知症に罹患して、身上監護や財産管理に支障が生ずることへの不安の解消が主なもの。

・ネット・セミナー等による情報

・地方自治体からの勧め

社会福祉協議会

・金融機関(銀行)からの勧め、JAバンクの担当者から公証役場への依頼

・老人介護施設入居に当たり、施設からの要請

イ 公証人としての作成手続上の留意点

・委任者の意思能力及び契約意思の確認の重要性

 公正証書の作成に当たっては、本人の事理を弁識する能力及び任意後見契約を締結する意思を確認するため、原則として本人と面接するものとする。(平成12年法務省民一第634号民事局長通達。『民事月報』55巻7号P175)

法務省民総第151号

令和3年3月1 日

・代理人による嘱託手続

 委任者本人とどうしても面会できない場合、代理方式による任意後見契約を締結することができる。(令和3年の日公連の方針)

・・・代理方式による任意後見契約を締結を認めていることは意外でした。

ウ 嘱託人への説明事項

・後見制度の全般的な説明

法定後見制度(成年後見)との対比

・後見人の職務内容

後見人は後見監督人の指導監督を受けて職務を行うこと

・後見監督人に監督報酬が生じること

エ 親族間紛争に配慮

・親の財産管理を巡る子(兄弟)間の争い。特に移行型の場合にうかがわれる。

(実際にかかわった事例)

親の預金通帳などを事実上管理(出金)する兄弟に対抗するためとして、他の兄弟が親と図って移行型任意後見契約を締結するケース。

・任意後見契約を締結した側の親族(子)が親の実印、通帳などを事実上管理下に置いているとして、これに対抗するために、他方の親族が親に働きかけて、任意後見契約の解除・新たな任意後見契約の締結を嘱託してくるケース。

(弁護士による)親の成年後見申立て準備中に、他の兄弟が任意後見契約を締結するケース(公証人には作成後に事情が判明)。

3 民事信託契約の締結

件数 平成30年から令和3年までの各年の作成総数と内訳

別紙記載3のとおり、年間3000件程度

信託契約、遺言信託、自己信託の内訳件数 95%が信託契約

契約手続の留意点(公証人として気をつけている点)

ア 嘱託人の意思能力と契約意思の確認の重要性

遺言代用信託の類型もあり、特に委託者について注意している。

・代理人による嘱託手続き

公証人が委託者本人に信託契約締結の意思と代理人への委任の事実を明確に確認できれば、代理方式による信託契約を締結することができる。(令和3年の日公連の方針)

信託契約の内容の審査の基本的立場

 公証人の信託契約の審査の基本姿勢としては、私的紛争の予防を図るという公証制度本来の役割から法的に整合性があり、多義的な解釈がされない明確な契約条項の作成を目指しつつも、違法無効ではないことの審査(リーガルチェック)がボーダーラインとなる。

日本公証人連合会の信託への取り組み

・公証人への実務研修会の開催

平成30年からの取り組み

弁護士・金融機関の担当者を招いて、講演・パネルディスカッションなどを行っている。

・新任公証人研修(年3回、各3日行われる)で、信託の講義を設けた。

(昨年秋から)・日弁連信託センターとの継続的な勉強会の実施

「信託契約のモデル条項例(1)~(5)」 判例タイムズ1483号~1487号

4 信託と任意後見の併用事例

・公証役場全体としての統計はない。

本公証人の在任6年間の個人的な経験では、信託契約数約140件のうち40件が他の公正証書との併用事例、内26件遺言、20件任意後見、委任契約を併用12件、死後事務委任契約0件。

信託と任意後見の併用事例の特徴

・信託の受託者が任意後見受任者となるケース、受託者が帰属権利者となるケースもある。

・信託の受益者代理人が任意後見受任者となるケース

作成上の問題点

任意後見契約の代理権目録の記載方法

・任意後見契約の代理権目録の「不動産、動産すべての財産の保存、管理及び処分に関する事項

「信託財産を除く」などと記載する例が多いがその趣旨は必ずしも明確ではない。

・・・個人的に、権限を分ける記載方法を任意後見契約の代理権目録、信託契約書に記載しているのですが、どのような記載方法なら、信託財産に属する財産と分けることが出来るのか、指針があるのであれば示して欲しいかなとは思います。それとも個別具体的に、裁判所の決定に任せるという運用方針なのかもしれません。

5 結語

・任意後見契約と信託契約の選択

・信託契約と任意後見契約を併用した場合の留意点

(参考)拙著「公証役場からみた民事信託」 家庭の法と裁判35号24頁

パネルディスカッション

【はじめに】

第1 各制度の⽐較

1.法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の⽐較

令和2年(新規)

令和3年(新規)

後⾒開始25,029件

26,470件

保佐開始7,076件

7,741件

補助開始2,415件

2,693件

任意後⾒監督⼈選任612件

678件

任意後⾒契約締結11,260件

12,871件

⺠事信託(公正証書) 2,924件

3,200件

【法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の利⽤件数(新規)】

令和2年(利⽤者) 令和3年(利⽤者)

後⾒開始174,680件

177,244件

保佐開始42,569件

46,200件

補助開始12,383件

13,826件

任意後⾒監督⼈選任2,655件

2,663件

【出典】最⾼裁判所事務総局家庭局「成年後⾒関係事件の概況-令和2年1⽉〜12⽉-」最⾼裁判所事務総局家庭局「成年後⾒関係事件の概況-令和3年1⽉〜12⽉-」

【法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の利⽤件数(利⽤者)】

Q任意後⾒に関する相談を受けたことがありますか。

(愛知)

ある194件(60.6%)ない126件(39.4%)

Q⺠事信託に関する相談を受けたことがありますか。

(京都)ある126 件(39%)ない195 件(61%)

(愛知)ある130件(40.6%)ない190件(59.4%)

Q作成された任意後⾒契約書の委任者の年齢層はどれに当てはまりますか。

(愛知)

40歳未満0件(0.0%)

40歳以上50歳未満3件(1.3%)

50歳以上60歳未満7件(3.1%)

60歳以上70歳未満43件(19.0%)

70歳以上80歳未満96件(42.5%)

80歳以上77件(34.1%)

Q作成された信託契約書等の委託者の年齢層はどれに当てはまりますか。

(京都)

40 歳未満6件(2.5%)

40 歳以上50 歳未満6件(2.5%)

50 歳以上60 歳未満20件(8%)

60 歳以上70 歳未満54件(22%)

70 歳以上80 歳未満105件(43%)

81 歳以上53件(22%)

(愛知)

40歳未満6件(1.9%)

40歳以上50歳未満8件(2.6%)

50歳以上60歳未満9件(2.9%)

60歳以上70歳未満34件(10.9%)

70歳以上80歳未満126件(40.3%)

80歳以上130件(41.5%)

Q受任した案件において設定された任意後⾒受任者となったのはどれに当てはまりますか。

(愛知)

家族83件(39.0%)

友⼈5件(2.4%)

弁護⼠112件(52.6%)

NPO法⼈・社会福祉法⼈1件(0.5%)

その他12件(5.6%)

交際相⼿(1件)、内縁の夫婦(1件)、家族以外の親族(3件)⾎縁関係にないが親⼦同然に⽣活してきた者(1件)、弁護⼠法⼈(1件))

・任意後⾒の典型例・利⽤動機

Q受任した案件において設定された⺠事信託の受託者となったのはどれに当てはまりますか。

(京都)

 委託者の家族219 件(91%)

 委託者の家族以外21 件(9%)

(⼀般社団法⼈・法⼈(8件)、友⼈等(2件)、信託会社(1件)信託銀⾏(1件)、弁護⼠(1件)、税理⼠法⼈(1件))

(愛知)

家族421件(97.5%)

⼀般社団法⼈6件(1.4%)

株式会社等1件(0.2%)

信託銀⾏・信託会社2件(0.5%)

その他2件(0.5%)(会社代表者(1件)、友⼈等(1件)

・⺠事信託の典型例・利⽤動機

1.法定後⾒・任意後⾒・⺠事信託の⽐較

2.⺠事信託と任意後⾒

本⼈の判断能⼒なし→ 法定後⾒

財産管理、財産承継のいずれに関⼼があるか

財産管理のみ→ ⺠事信託、任意後⾒

財産承継のみ→ ⺠事信託、遺⾔

⾝上保護の要否

⾝上保護の必要性があり、家族等の⽀援なし→ 任意後⾒

⾝上保護の必要性がないか、あっても家族の⽀援あり→⺠事信託、任意後⾒

・・・身上監護(身上保護)の必要性がない人、というのがいるのか分かりませんでした。

信託財産に農地、年⾦受給権などが含まれるか含まれる→ 任意後⾒

含まれない→ ⺠事信託、任意後⾒

・・・問いの立て方が少し違うのかなと感じました。信託財産に、は委託者所有の財産に、でも良かったように思います。

【使い分けの指標】

2.⺠事信託と任意後⾒

借り⼊れ予定あり→ ⺠事信託

なし→ ⺠事信託、任意後⾒

裁判所の監督

希望する→ 任意後⾒希望

しない→ ⺠事信託。但し、監督の必要はあり

次世代以降への財産承継の希望あり→ ⺠事信託

なし→ ⺠事信託、任意後⾒、遺⾔

受託者候補の有無

あり→ ⺠事信託

なし→ 任意後⾒

・要求される意思能⼒の相違

・信託契約を作成する際の留意点

Q受任した案件において任意後⾒を設定した理由(動機)は何だったでしょうか。

(愛知)

⾼齢者の財産管理への不安178件(48.6%)

⾝上保護の必要性86件(23.5%)

法定後⾒のデメリットを回避するため87件(23.8%)

その他15件(4.1%)(信頼できる親族・⾝寄りがいない(5件)、特定の受任者を指定したい(2件)、親族関の紛争が⽣じている(2件)、交際相⼿に財産管理・⾝の回りのことを⾏ってもらうため(1件)

Q受任した案件において信託を設定した主な理由(動機)は何だったでしょうか。

(京都)

⾼齢者の財産管理への不安164 件(45.7%)

資産活⽤54 件(15.0%)

財産承継122 件(34.0%)

その他19 件( 5.3%)(「親亡き後」の問題への対応、未成熟⼦のための信託、養育費のための信託、株式の議決権の確保するため)

(愛知)

⾼齢者の財産管理への不安254件(46.4%)

資産活⽤24件(4.4%)

財産承継204件(37.2%)

法定後⾒のデメリットを回避するため59件(10.8%)

その他7件(1.3%)(「親亡き後」の問題への対応(4件)、事業承継(1件)

・使い分けのポイント

1.⾝上保護の必要性

2.財産の種類

3.借⼊れや運⽤

4.受託者の確保

5.後継ぎ遺贈

4.⼀時的な利⽤・裁判所の関与回避

【事例1】施設⼊所費⽤の⼯⾯

・A(80歳)

・財産としては⾃宅と預貯⾦(数百万)

・いずれ施設に⼊ることになった場合は⾃宅売却して施設費⽤に充てたい。

【事例2】収益不動産の管理

・A(70歳)

・年⾦収⼊が⽉に20万円ある。

・⾃宅のほか、アパート⼀棟(築30年)を所有し、管理会社を通じて8部屋賃貸している。

・アパートローンが数千万残っている。

・今後、⼤規模修繕に際し新たな借り⼊れも必要になるかもしれない。

【事例3】親亡き後への対応

・A(75歳)

・障害のある息⼦(45歳・後⾒相当)の将来に不安を感じている。

・A名義の⾃宅のほか、貸駐⾞場があり、管理会社に管理を委ねている。

・息⼦は⾃宅でAと同居しており、簡単な会話は可能だが、⼀⼈暮らしは難しい。

・息⼦の⾯倒は、娘(38歳)に看てもらいたい。

・資産は潤沢にあるので息⼦が困らないようにしてほしい。財産が残った場合は、最終的には娘に渡したい。

第2.⺠事信託と任意後⾒の併⽤

Q受任した案件において⺠事信託と任意後⾒を併⽤したことがありますか。ある場合、受託者と任意後⾒受任者との関係は、どれに当てはまりますか。

(愛知)

受託者と任意後⾒受任者は別⼈である15件(68.2%)

受託者と任意後⾒受任者は同⼀⼈である7件(31.8%)

・・・この設問に限らずですが、このようなアンケートを取り、答える弁護士が多数いて公表している弁護士会は凄いなと思います。

Q⺠事信託と任意後⾒を受任した案件において、⺠事信託と任意後⾒を併⽤した場合、その理由は何だったでしょうか。

(愛知)

信託財産以外に第三者による管理が必要な財産がある15件(46.9%)

⾝上保護が必要である10件(31.3%)

法定後⾒のデメリットを回避するため7件(21.9%)

その他0件(0.0%)

・・・信託財産以外に第三者による管理が必要な財産がある、とは受託者による第三者委託などでもない、年金受給権などを指しているのか、分かりませんでした。

Q⺠事信託と任意後⾒を併⽤しなかった場合、その理由は何だったでしょうか。

(愛知)

費⽤がかかる13件(3.2%)

適切な受託者が⾒つからなかった23件(5.6%)

併⽤する必要がなかった170件(41.7%)

併⽤を考えたことがなかった50件(12.3%)

その他4件(1.0%)(依頼者に理解させるのが難しそうだった(1件)、相談や依頼がない(2件)

⺠事信託・任意後⾒ともに受任していない148件(36.3%)

・・・回答を読んでいる限りでは、任意後見契約を締結して民事信託契約は締結しなかった場合と、民事信託契約は締結して、任意後見契約は締結しなかった場合の二つがあるのかなと思いました。

・併⽤が有効な事例

【事例1】

・⺟A

・⻑年有価証券の投資を⾏ってきたが、⼿続きが⾯倒になってきたので⻑男に任せたい

・⾝の回りの世話は⻑⼥が⾏っており、今後も⻑⼥にお願いしたい

【事例2】

・⽗A

・賃貸マンション経営

・Aの判断能⼒低下後も積極的な借り⼊れが必要

・メインバンクは、既存の借⼊⾦債務についてAと受託者の併存的債務引受を要求

2.併⽤を巡る問題1(代理権⽬録の記載など)

【モデル1】

・Aの財産

⾃宅、収益不動産、預貯⾦数千万円

・Aの債務

収益不動産購⼊時の債務が数千万円

・Aの希望

収益不動産の経営が煩わしく感じてきた。銀⾏員でしっかり者の⼦Bに管理をお願いしたい。⾝の回りの世話は同居している⼦Cにお願いしたい。

・受託者の事務内容・任意後⾒⼈の事務内容

任意後⾒契約-代理権⽬録の記載事項

・財産管理に関する法律⾏為

預貯⾦の管理・払い戻し、不動産その他重要な財産の処分、遺産分割、賃貸借契約の締結・解除など

・⽣活療養看護(⾝上監護)に関する法律⾏為

介護契約、施設⼊所契約、医療契約など

これらの法律⾏為に関連する登記・供託の申請、要介護認定の申請等の公法上の⾏為

・(弁護⼠の場合)これらの事務に関して⽣ずる紛争についての訴訟⾏為の授権

参考

任意後⾒契約に関する法律3条

任意後⾒契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令附録第1号様式、⽇本公証⼈連合会編著『新版証書の作成と⽂例-家事関係編〔改訂版〕第3刷123ページ「記載例Ⅱ」』

・受益権に関する代理権

受益権

・受益権とは

信託法2条7項

信託⾏為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し⼀定の⾏為を求めることができる権利

受託者から給付を受ける権利(受益債権)

その権利を確保するための監督権

・既存⽂例の検討

「不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項」

・受益権に関する代理権

条項例

「信託契約に基づく受益権に関する事項」

・信託の変更や終了に関する代理権

・「不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項(信託財産を除く)」との条項

委託者の権利⾏使の可否

・既存⽂例の検討

「不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項」

3.併⽤を巡る問題2(受託者=任意後⾒⼈など)

・受託者と任意後⾒⼈の兼任の可否

信託法

第124条次に掲げる者は、信託管理⼈となることができない。

⼆当該信託の受託者である者

第144条

第124条の規定は、受益者代理⼈について準⽤する。

受託者は受益者代理⼈を兼ねられない。受託者は任意後⾒⼈を兼ねられるか。

3.併⽤を巡る問題2(受託者=任意後⾒⼈など)

【事例】

Bは受託者としての⽴場を濫⽤し、受益者であるAのために管理すべき信託財産のうち500万円をB⾃らのために使い込んでしまった。受託者Bによる使い込みが⾏われた場合、どのような対応を取るべきか。

・・・前提として、任意後見契約の未発効、信託監督人、受益者代理人は選任されていない場合で考えてみます。受益者による権限違反行為の取消し(信託法27条)・行為の差止め(信託法44条)、検査役の選任(信託法45条)、報告請求(信託法36条)による事実確認と、受益者の判断による信託の終了(信託法163条から166じょうまで。)や受託者の解任(信託法58条)その他の民事上の損害賠償請求など(民法709条。)。

1.受託者の義務違反⾏為

2.受託者への責任追及

3.任意後⾒監督⼈の対応

4.信託監督⼈の対応

3.併⽤を巡る問題2(受託者=任意後⾒⼈など)

・弁護⼠としての留意点

【事例】

信託終了時の残余財産の取得について、次の定めがあった。

A死亡による終了、帰属権利者B

A死亡以外の事由による終了、残余財産受益者A

Bは、信託を変更して、A死亡以外の事由による終了の場合も、帰属権利者をBとした上で、信託を終了させた。

・信託の変更・信託の終了ができる根拠

信託法

第149条

1 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託⾏為の内容を明らかにしてしなければならない。

第164条

1 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

・任意後⾒⼈であるBの⾏為の問題

・利益相反⾏為

利益相反の効果

最判昭和45年5⽉22⽇「右無償譲渡については、後⾒⼈である訴外⼈は被上告⼈を代理することができないのであるから、未成年者たる被上告⼈の後⾒⼈である訴外⼈が被上告⼈を代理して訴外⼈の内縁の夫である上告⼈に対してした本件⼟地の無償譲渡⾏為は、無権代理⾏為である、とした原判決の判断は、正当」

⺠法

(利益相反⾏為)第826条

1 親権を⾏う⽗⼜は⺟とその⼦との利益が相反する⾏為については、親権を⾏う者は、その⼦のために特別代理⼈を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(利益相反⾏為)第860条

第826条の規定は、後⾒⼈について準⽤する。

任意後⾒契約に関する法律

(任意後⾒監督⼈の職務等)第7条

任意後⾒監督⼈の職務は、次のとおりとする。

四 任意後⾒⼈⼜はその代表する者と本⼈との利益が相反する⾏為について本⼈を代表すること。

外形標準説

最判昭和42年4⽉18⽇「⺠法826条にいう利益相反⾏為に該当するかどうかは、親権者が⼦を代理してなした⾏為⾃体を外形的客観的に考察して判定すべきであつて、当該代理⾏為をなすについての親権者の動機、意図をもつて判定すべきでない」

【事例】

受託者が受益者に適切な給付をしない場合

・任意後⾒契約に関する法律上の権限

報告徴求(7条2項)、解任(8条)、監督⼈による解任申し⽴て(8条)、審判前の保全処分として任意後⾒⼈の職務執⾏停⽌の申⽴て(家事事件⼿続法225条1項、127条)、職務執⾏停⽌中に急迫の事情がある場合は、任意後⾒監督⼈が必要な処分(7条1項3号)。

法定後⾒の開始審判の申⽴て(10条)

任意後⾒⼈の解任により任意後⾒契約は終了し、任意後⾒監督⼈は法定後⾒開始の審判を申し⽴てる資格を失うため、契約終了前に申し⽴てる必要あり。

利益相反⾏為についての代理権⾏使(7条1項4号)

5.任意後⾒監督⼈等による実効的な監督

・信託契約における⼯夫

【例】

信託法37条3項の別段の定め

報告対象者として任意後⾒監督⼈を加える。

信託法26条但書の信託⾏為

重要な財産の処分をする場合に「任意後⾒監督⼈の同意」を求める。

・任意後⾒監督⼈以外による監督

・信託監督⼈(受益者代理⼈)と任意後⾒監督⼈

1.併⽤を巡る問題

・アンケート結果について

・委託者の理解が不⾜しているまま信託が開始されている

・信託契約書の内容が不⼗分

・任意後⾒契約は締結されているのに監督⼈が選任されない

・成年後⾒⼈による調査

・信託終了時の帰属財産について、法定相続割合と異なる定めあり成年後⾒⼈Gは信託を終了させることができるか。

・・・成年後見人が信託を終了する根拠が分かりませんでした。

代理権⽬録(任意後⾒契約)

1 不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項

2 ⾦融機関、証券会社との全ての取引に関する事項

3 保険契約(類似の共済契約等を含む。)に関する事項

4 定期的な収⼊の受領、定期的な⽀出を要する費⽤の⽀払に関する事項

5 ⽣活費の送⾦、⽣活に必要な財産の取得に関する事項及び物品の購⼊その

他の⽇常関連取引(契約の変更、解除を含む。)に関する事項

6 医療契約、⼊院契約、介護契約その他の福祉サービス利⽤契約、福祉関係施

設⼊退所契約に関する事項

7 要介護認定の申請及び認定に関する承認⼜は審査請求並びに福祉関係の措

置(施設⼊所措置を含む。)の申請及び決定に対する審査請求に関する事項

8 シルバー資⾦融資制度、⻑期⽣活⽀援資⾦貸付⾦制度等の福祉関係融資制

度の利⽤に関する事項

9 登記済権利証・登記識別情報、印鑑、印鑑登録カード、住⺠基本台帳カード、

個⼈番号(マイナンバー)カード・個⼈番号(マイナンバー)通知カード、預

貯⾦通帳、キャッシュカード、有価証券・その預り証、年⾦関係書類、健康保

険証、介護保険証、⼟地・建物賃貸契約書等の重要な契約書類その他重要書

類の保管及び各事項の事務処理に必要な範囲内の使⽤に関する事項

出典:日本公証人連合会編著

    新版 証書の作成と文例-家事関係編〔改訂版〕第3刷

    123ページ「記載例Ⅱ」

10 居住⽤不動産の購⼊及び賃貸借契約並びに住居の新築・増改築に関する請

負契約に関する事項

11 登記及び供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する事項

12 遺産分割の協議、遺留分侵害額請求、相続放棄、限定承認に関する事項

13 配偶者、⼦の法定後⾒開始の審判の申⽴てに関する事項

14 新たな任意後⾒契約の締結に関する事項

15 以上の各事項に関する⾏政機関への申請、⾏政不服申⽴て、紛争の処理(弁

護⼠に対する⺠事訴訟法第55条第2項の特別授権事項の授権を含む訴訟⾏

為の委任、公正証書の作成嘱託を含む。)に関する事項

16 復代理⼈の選任、事務代⾏者の指定に関する事項

17 以上の各事項に関連する⼀切の事項

出典:日本公証人連合会編著

    新版 証書の作成と文例-家事関係編〔改訂版〕第3刷

    123ページ「記載例Ⅱ」

利益相反に関する裁判例

1 利益相反行為の判断基準(最判昭和42年4月18日)

民法八二六条にいう利益相反行為に該当するかどうかは、親権者が子を代

理してなした行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであつて、当該

代理行為をなすについての親権者の動機、意図をもつて判定すべきでないと

した原判決の判断は正当であつて、これに反する所論は採用できない(昭和

三六年(オ)第一〇一三号同三七年二月二七日第三小法廷判決、最高裁判所

裁判集民事五八号一〇二三頁参照)。

2 利益相反行為に関する裁判例

遺産分割協議(最判昭和48年4月24日)-複数の子の親権者

民法八二六条所定の利益相反する行為にあたるか否かは、当該行為の外形

で決すべきであつて、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とすべ

きではないので(最高裁昭和三四年(オ)第一一二八号同三七年一〇月二日

第三小法廷判決・民集一六巻一〇号二〇五九頁、同昭和四一年(オ)第七九

号同四二年四月二五日第三小法廷判決・裁判集民事八七号二五三頁参照。)、

親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすること

は、かりに親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がな

く、親権者の代理行為の結果数人の子の間に利害の対立が現実化されていな

かつたとしても、同条二項所定の利益相反する行為にあたるから、親権者が

共同相続人である数人の子を代理していた遺産分割の協議は、追認のないか

ぎり無効であると解すべきである。

遺産分割協議(東京高判昭和55年10月29日)-親権者と子

民法八二六条所定の利益相反行為に当たるか否かは、当該行為の客観的性

質で決すべきであって、親権者の意図やその行為の実質的な効果を問題とす

べきではない。したがって、共同相続人の一人である親権者が同じく共同相

続人である数人の未成年の子を代理して遺産分割の協議をすることは、仮に

親権者において数人の子のいずれに対しても衡平を欠く意図がなく、親権者

の代理行為の結果数人の子の間及び親権者と数人の子の間のいずれにも利

害の対立が現実化されていなかったとしても、その行為の客観的性質上相続

人相互間に利害の対立を生ずるおそれのある行為に当たるというべきであ

るから、右の場合には未成年者について各別に選任された特別代理人がその

各人を代理して遺産分割の協議に加わることを要するのであって、もし一人

の親権者が数人の未成年者の法定代理人として代理行為をしたときは、被代

理者全員につき民法八二六条に違反するものというべきであり、かかる代理

行為によって成立した遺産分割の協議は、被代理者全員による追認がないか

ぎり、無効であるといわなければならない。

相続放棄(最判昭和53年2月24日)

共同相続人の一人が他の共同相続人の全部又は一部の者を後見している

場合において、後見人が被後見人を代理してする相続の放棄は、必ずしも常

に利益相反行為にあたるとはいえず、後見人がまずみずからの相続の放棄を

したのちに被後見人全員を代理してその相続の放棄をしたときはもとより、

後見人みずからの相続の放棄と被後見人全員を代理してするその相続の放

棄が同時にされたと認められるときもまた、その行為の客観的性質からみて、

後見人と被後見人との間においても、被後見人相互間においても、利益相反

行為になるとはいえないものと解するのが相当である。

借入と抵当権設定(最判昭和37年10月2日)

親権者が子の法定代理人として、子の名において金員を借受け、その債務

につき子の所有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者

自身の用途に充当する意図であつても、かかる意図のあることのみでは、民

法八二六条所定の利益相反する行為とはいえないから、子に対して有効であ

り、これに反し、親権者自身が金員を借受けるに当り、右債務につき子の所

有不動産の上に抵当権を設定することは、仮に右借受金を子の養育費に充当

する意図であつたとしても、同法条所定の利益相反する行為に当るから、子

に対しては無効であると解すべきである。

親権者も子も連帯保証、抵当権設定(最判昭和43年10月8日)

(事案)

第三者の金銭債務について、親権者自ら連帯保証をするとともに、子を代

理して同一債務について連帯保証し、かつ、親権者と子の共有不動産につい

て抵当権を設定した。

(判旨)

債権者が抵当権の実行を選択するときは、本件不動産における子らの持分

の競売代金が弁済に充当される限度において親権者の責任が軽減され、その

意味で親権者が子らの不利益において利益を受け、また、債権者が親権者に

対する保証責任の追究を選択して、親権者から弁済を受けるときは、親権者

と子らとの間の求償関係および子の持分の上の抵当権について親権者によ

る代位の問題が生ずる等のことが、前記連帯保証ならびに抵当権設定行為自

体の外形からも当然予想されるとして、(親権者・子)の関係においてされ

た本件連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為が、民法八二六条にいう

利益相反行為に該当する。

後見人の内縁の夫に対する土地の無償譲渡(最判昭和45年5月22日)

当時上告人と訴外人とは内縁の夫婦であり、相互の利害関係は、特段の事

情のないかぎり、共通するものと解すべきであるから、被後見人である被上

告人に不利益な本件土地の右無償譲渡は、上告人と後見人である訴外人とに

共通する利益をもたらすものというべきであり、したがつて、右無償譲渡は、

旧民法九一五条四号にいう後見人と被後見人との利益相反行為にあたると

解するのが相当である。

信託法

(定義)第2条

7 この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。

9 この法律において「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。

(信託財産責任負担債務の範囲)

第21条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

(受託者の権限の範囲)

第26条 受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。

(受託者の注意義務)

第29条 受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならない。

2 受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする。

(忠実義務)

第30条 受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。

(利益相反行為の制限)

第31条 受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。

二 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。

三 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの

四 信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。

二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。

四 受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。

3 受託者は、第1項各号に掲げる行為をしたときは、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 第1項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされた場合には、これらの行為は、無効とする。

5 前項の行為は、受益者の追認により、当該行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。

6 第4項に規定する場合において、受託者が第三者との間において第1項第1号又は第2号の財産について処分その他の行為をしたときは、当該第三者が同項及び第2項の規定に違反して第1項第1号又は第2号に掲げる行為がされたことを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該処分その他の行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。

7 第1項及び第2項の規定に違反して第1項第3号又は第4号に掲げる行為がされた場合には、当該第三者がこれを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。この場合においては、第27条第3項及び第4項の規定を準用する。

第32条 受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。

2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができる。ただし、第2号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一 信託行為に当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることを許容する旨の定めがあるとき。

二 受託者が当該行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算ですることについて重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

3 受託者は、第1項に規定する行為を固有財産又は受託者の利害関係人の計算でした場合には、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 第1項及び第2項の規定に違反して受託者が第1項に規定する行為をした場合には、受益者は、当該行為は信託財産のためにされたものとみなすことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

5 前項の規定による権利は、当該行為の時から一年を経過したときは、消滅する。

(公平義務)

第33条 受益者が二人以上ある信託においては、受託者は、受益者のために公平にその職務を行わなければならない。

(信託事務の処理の状況についての報告義務)

第36条 委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。

(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務)

第37条 受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

2 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受託者は、第1項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から10年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第6項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

5 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から10年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 受託者は、第2項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から十年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

(帳簿等の閲覧等の請求)

第38条 受益者は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

一 前条第1項又は第5項の書類の閲覧又は謄写の請求

二 前条第1項又は第5項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

2 前項の請求があったときは、受託者は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。

一 当該請求を行う者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。

二 請求者が不適当な時に請求を行ったとき。

三 請求者が信託事務の処理を妨げ、又は受益者の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。

四 請求者が当該信託に係る業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。

五 請求者が前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。

六 請求者が、過去二年以内において、前項の規定による閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

3 前項(第1号及び第2号を除く。)の規定は、受益者が二人以上ある信託のすべての受益者から第1項の請求があったとき、又は受益者が一人である信託の当該受益者から同項の請求があったときは、適用しない。

4 信託行為において、次に掲げる情報以外の情報について、受益者が同意をしたときは第1項の規定による閲覧又は謄写の請求をすることができない旨の定めがある場合には、当該同意をした受益者(その承継人を含む。以下この条において同じ。)は、その同意を撤回することができない。

一 前条第2項の書類又は電磁的記録の作成に欠くことのできない情報その他の信託に関する重要な情報

二 当該受益者以外の者の利益を害するおそれのない情報

5 受託者は、前項の同意をした受益者から第1項の規定による閲覧又は謄写の請求があったときは、前項各号に掲げる情報に該当する部分を除き、これを拒むことができる。

6 利害関係人は、受託者に対し、次に掲げる請求をすることができる。

一 前条第2項の書類の閲覧又は謄写の請求

二 前条第2項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

(受託者の損失てん補責任等)

第40条 受託者がその任務を怠ったことによって次の各号に掲げる場合に該当するに至ったときは、受益者は、当該受託者に対し、当該各号に定める措置を請求することができる。ただし、第2号に定める措置にあっては、原状の回復が著しく困難であるとき、原状の回復をするのに過分の費用を要するとき、その他受託者に原状の回復をさせることを不適当とする特別の事情があるときは、この限りでない。

一 信託財産に損失が生じた場合 当該損失のてん補

二 信託財産に変更が生じた場合 原状の回復

2 受託者が第28条の規定に違反して信託事務の処理を第三者に委託した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、第三者に委託をしなかったとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、前項の責任を免れることができない。

3 受託者が第30条、第31条第1項及び第2項又は第32条第1項及び第2項の規定に違反する行為をした場合には、受託者は、当該行為によって受託者又はその利害関係人が得た利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定する。

4 受託者が第34条の規定に違反して信託財産に属する財産を管理した場合において、信託財産に損失又は変更を生じたときは、受託者は、同条の規定に従い分別して管理をしたとしても損失又は変更が生じたことを証明しなければ、第1項の責任を免れることができない。

(受益者による受託者の行為の差止め)

第44条 受託者が法令若しくは信託行為の定めに違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって信託財産に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2 受託者が第33条の規定に違反する行為をし、又はこれをするおそれがある場合において、当該行為によって一部の受益者に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該受益者は、当該受託者に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

(信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止)

第92条 受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。

一 この法律の規定による裁判所に対する申立権

二 第5条第1項の規定による催告権

三 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利

四 第24条第1項の規定による支払の請求権

五 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合を含む。)の規定による取消権

六 第31条第6項又は第7項の規定による取消権

七 第36条の規定による報告を求める権利

八 第38条第1項又は第6項の規定による閲覧又は謄写の請求権

九 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

十 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

十一 第44条の規定による差止めの請求権

十二 第45条第1項の規定による支払の請求権

十三 第59条第5項の規定による差止めの請求権

十四 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権

十五 第61条第1項の規定による支払の請求権

十六 第62条第2項の規定による催告権

十七 第99条第1項の規定による受益権を放棄する権利

十八 第103条第1項又は第2項の規定による受益権取得請求権

十九 第131条第2項の規定による催告権

二十 第138条第2項の規定による催告権

二十一 第187条第1項の規定による交付又は提供の請求権

二十二 第190条第2項の規定による閲覧又は謄写の請求権

二十三 第198条第2項の規定による記載又は記録の請求権

二十四 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十五 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

二十六 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権

(信託監督人の選任)

第131条 信託行為においては、受益者が現に存する場合に信託監督人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

2 信託行為に信託監督人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、信託監督人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。

3 前項の規定による催告があった場合において、信託監督人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。

4 受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託監督人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託監督人を選任することができる。

5 前項の規定による信託監督人の選任の裁判があったときは、当該信託監督人について信託行為に第1項の定めが設けられたものとみなす。

6 第4項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

7 第4項の規定による信託監督人の選任の裁判に対しては、委託者、受託者若しくは受益者又は既に存する信託監督人に限り、即時抗告をすることができる。

8 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。

(信託監督人の権限)

第132条 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第92条各号(第17号、第18号、第21号及び第23号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 二人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

(信託監督人の義務)

第133条 信託監督人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。

2 信託監督人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。

(受益者代理人の選任)

第138条 信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。

2 信託行為に受益者代理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受益者代理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。

3 前項の規定による催告があった場合において、受益者代理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。

(受益者代理人の権限等)

第139条 受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第42条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 受益者代理人がその代理する受益者のために裁判上又は裁判外の行為をするときは、その代理する受益者の範囲を示せば足りる。

3 一人の受益者につき二人以上の受益者代理人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受益者代理人があるときは、当該受益者代理人に代理される受益者は、第92条各号に掲げる権利及び信託行為において定めた権利を除き、その権利を行使することができない。

(受益者代理人の義務)

第140条 受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第1項の権限を行使しなければならない。

2 受益者代理人は、その代理する受益者のために、誠実かつ公平に前条第1項の権限を行使しなければならない。

(委託者の権利等)

第145条 信託行為においては、委託者がこの法律の規定によるその権利の全部又は一部を有しない旨を定めることができる。

2 信託行為においては、委託者も次に掲げる権利の全部又は一部を有する旨を定めることができる。

一 第23条第5項又は第6項の規定による異議を主張する権利

二 第27条第1項又は第2項(これらの規定を第75条第4項において準用する場合

を含む。)の規定による取消権

三 第31条第6項又は第7項の規定による取消権

四 第32条第4項の規定による権利

五 第38条第1項の規定による閲覧又は謄写の請求権

六 第39条第1項の規定による開示の請求権

七 第40条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

八 第41条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権

九 第44条の規定による差止めの請求権

十 第46条第1項の規定による検査役の選任の申立権

十一 第59条第5項の規定による差止めの請求権

十二 第60条第3項又は第5項の規定による差止めの請求権

十三 第226条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

十四 第228条第1項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権

十五 第254条第1項の規定による損失のてん補の請求権

3 前項第1号、第7号から第9号まで又は第11号から第15号までに掲げる権利について同項の信託行為の定めがされた場合における第24条、第45条(第226条第6項、第228条第6項及び第254条第3項において準用する場合を含む。)又は第61条の規定の適用については、これらの規定中「受益者」とあるのは、「委託者又は受益者」とする。

4 信託行為においては、受託者が次に掲げる義務を負う旨を定めることができる。

一 この法律の規定により受託者が受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人。次号において同じ。)に対し通知すべき事項を委託者に対しても通知する義務

二 この法律の規定により受託者が受益者に対し報告すべき事項を委託者に対しても報告する義務

三 第77条第1項又は第184条第1項の規定により受託者がする計算の承認を委託者に対しても求める義務

5 委託者が二人以上ある信託における第1項、第2項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「委託者」とあるのは、「委託者の全部又は一部」とする。

(関係当事者の合意等)

第149条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定めるものによりすることができる。この場合において、受託者は、第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。

一 信託の目的に反しないことが明らかであるとき 受託者及び受益者の合意

二 信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき

受託者の書面又は電磁的記録によってする意思表示

3 前2項の規定にかかわらず、信託の変更は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定

める者による受託者に対する意思表示によってすることができる。この場合において、第2号に掲げるときは、受託者は、委託者に対し、遅滞なく、変更後の信託行為の内容を通知しなければならない。

一 受託者の利益を害しないことが明らかであるとき 委託者及び受益者

二 信託の目的に反しないこと及び受託者の利益を害しないことが明らかであるとき

受益者

4 前3項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

5 委託者が現に存しない場合においては、第1項及び第3項第1号の規定は適用せず、第2項中「第1号に掲げるときは委託者に対し、第2号に掲げるときは委託者及び受益者に対し」とあるのは、「第2号に掲げるときは、受益者に対し」とする。

(信託の終了事由)

第163条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。

一 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき。

二 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が一年間継続したとき。

三 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が一年間継続したとき。

四 受託者が第52条(第53条第2項及び第54条第4項において準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。

五 信託の併合がされたとき。

六 第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる裁判があったとき。

七 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。

八 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、破産法第53条第1項、民事再生法第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項において準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。

九 信託行為において定めた事由が生じたとき。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)

第164条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

2 委託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは、委託者及び受益者は、受託者の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

3 前2項の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 委託者が現に存しない場合には、第1項及び第2項の規定は、適用しない。

民 法

(後見開始の審判)

第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

(利益相反行為)

第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

(成年後見人の選任)

第843条

4 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。

(後見監督人の職務)

第851条 後見監督人の職務は、次のとおりとする。

一 後見人の事務を監督すること。

二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。

三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。

四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。

(委任及び後見人の規定の準用)

第852条 第644条、第654条、第655条、第844条、第846条、第847条、第861条第2項及び第862条の規定は後見監督人について、第840条第3項及び第857条の2の規定は未成年後見監督人について、第843条第4項、第859条の2及び第859条の3の規定は成年後見監督人について準用する。

(利益相反行為)

第860条 第826条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

(後見の事務の監督)

第863条 後見監督人又は家庭裁判所は、いつでも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。

2 家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。

(後見監督人の同意を要する行為)

第864条 後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第1号に掲げる元本の領収については、この限りでない。

第865条 後見人が、前条の規定に違反してし又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人が取り消すことができる。この場合においては、第20条の規定を準用する。

2 前項の規定は、第121条から第126条までの規定の適用を妨げない。

任意後見契約に関する法律

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。

一 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。

二 本人 任意後見契約の委任者をいう。

三 任意後見受任者 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいう。

四 任意後見人 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の受任者をいう。

(任意後見契約の方式)

第3条 任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。

(任意後見監督人の選任)

第4条 任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 本人が未成年者であるとき。

二 本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人である場合において、当該本人に係る後見、保佐又は補助を継続することが本人の利益のため特に必要であると認めるとき。

三 任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。

イ 民法(明治29年法律第89号)第847条各号(第4号を除く。)に掲げる者

ロ 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族

ハ 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

2 前項の規定により任意後見監督人を選任する場合において、本人が成年被後見人、被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、当該本人に係る後見開始、保佐開始又は補助開始の審判(以下「後見開始の審判等」と総称する。)を取り消さなければならない。

3 第1項の規定により本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには、あらかじめ本人の同意がなければならない。ただし、本人がその意思を表示することができないときは、この限りでない。

4 任意後見監督人が欠けた場合には、家庭裁判所は、本人、その親族若しくは任意後見人の請求により、又は職権で、任意後見監督人を選任する。

5 任意後見監督人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者の請求により、又は職権で、更に任意後見監督人を選任することができる。

(任意後見監督人の職務等)

第7条 任意後見監督人の職務は、次のとおりとする。

一 任意後見人の事務を監督すること。

二 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。

三 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。

四 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

2 任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができる。

3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対し、任意後見人の事務に関する報告を求め、任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況の調査を命じ、その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができる。

4 民法第644条、第654条、第655条、第843条第4項、第844条、第846条、第847条、第859条の2、第861条第2項及び第862条の規定は、任意後見監督人について準用する。

(任意後見人の解任)

第8条 任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができる。

(後見、保佐及び補助との関係)

第10条 任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる。

2 前項の場合における後見開始の審判等の請求は、任意後見受任者、任意後見人又は任意後見監督人もすることができる。

3 第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後において本人が後見開始の審判等を受けたときは、任意後見契約は終了する。

民事信託及び任意後見に関する実態アンケートの最終集計結果

〇 2022年(令和4年)5月31日時点 回答総数320件

第1 民事信託についてお聞きします。

問1 直近10年間で,民事信託に関する相談を受けたことはありますか。当てはまる番号1つを回答してください。

ある 130 件(40.6%)  ない 190 件(59.4%)

問2 民事信託に関する相談を受けた際の相談者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。件数を御回答ください。(任意後見と同時に相談を受けた場合は,問2と問21でそれぞれ1件とカウントしてください。)。相談が0件の場合は,「0」と回答してください。

 委託者となる本人のみ 84 件(16.3%)

 委託者となる本人とその家族 259 件(50.1%)

 委託者の家族のみ 118 件(22.8%)

 委託者となる本人とその家族以外の第三者 20 件(3.9%)

 委託者の家族とその家族以外の第三者 36 件(7.0%)

問3 直近10年間で,民事信託の契約書,遺言(遺言による信託),信託宣言(信託契約書等)(以下,合わせて「信託契約書等」といいます。)の作成業務を受任したことはありますか。

 ある 45 件(34.9%)  ない 84 件(65.1%)

問4 直近10年間に,信託契約書等を何件作成しましたか。

287 件

(内訳)

0 – 9 件 43 人

10 – 19 件 2 人

20 – 29 件 2 人

30 – 39 件 1 人

40 – 49 件 0 人

50 – 59 件 0 人

60 件以上 1 人

66 / 83

問5 直近10年間で,作成された信託契約書等の委託者の年齢層は以下のどれに当てはまりますか。それぞれについて,件数を御回答ください。0件の場合は,0と回答してください。

 40歳未満 6 件(1.9%)

 40歳以上50歳未満 8 件(2.6%)

 50歳以上60歳未満 9 件(2.9%)

 60歳以上70歳未満 34 件(10.9%)

 70歳以上80歳未満 126 件(40.3%)

 80歳以上 130 件(41.5%)

問6 直近10年間で,受任した案件において設定された民事信託の受託者となったのは,以下のどれに当てはまりますか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 家族 421 件(97.5%)

 一般社団法人 6 件(1.4%)

 株式会社等 1 件(0.2%)

 信託銀行・信託会社 2 件(0.5%)

 その他 ( ) 2 件(0.5%)

・会社代表者(1 件)

・友人等(1 件)

問7 直近10年間で,受任した案件において民事信託を設定した理由(動機)は何だったでしょうか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 高齢者の財産管理への不安 254 件(46.4%)

 資産活用 24 件(4.4%)

 財産承継 204 件(37.2%)

 法定後見のデメリットを回避するため 59 件(10.8%)

 その他 ( ) 7 件(1.3%)

・「親亡き後」の問題への対応(4 件)

・事業承継(1 件)

問8 直近10年間で,受任した案件において設定された民事信託の信託財産の対象財産の経済的規模はどの程度だったでしょうか。当てはまる全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 3000万円未満 79 件(27.3%)

 3000万円以上1億円未満 113 件(39.1%)

1億円以上3億円未満 78 件(27.0%)

 3億円以上 19 件(6.6%)

 分からない 0 件(0.0%)

問9 直近10年間で,受任した案件において設定された民事信託の信託財産の種類はどのようなものだったでしょうか。当てはまる全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の選択肢に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 金銭 257 件(44.2%)

居住用不動産 123 件(21.1%)

 収益用不動産 139 件(23.9%)

 上場株式 5 件(0.9%)

 非上場株式 58 件(10.0%)

問10 直近10年間で,受任した民事信託案件において信託監督人を選任したことがある場合,誰を選任しましたか。①~⑤のうち当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 弁護士 23 件(42.6%)

 税理士 4 件(7.4%)

 司法書士 0 件(0.0%)

 家族 27 件(50.0%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問11 直近10年間で,受任した民事信託案件において受益者代理人を選任したことがある場合,誰を選任しましたか。①~⑤のうち当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 弁護士 1 件(7.1%)

 税理士 0 件(0.0%)

 司法書士 0 件(0.0%)

 家族 13 件(92.9%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問12 直近10年間で,受任した民事信託案件において信託監督人又は受益者代理人を選任したことがある場合,選任した主な理由(動機)は何だったでしょうか。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 受益者が高齢者・障害者であるため 45 件(79.0%)

 受託者が受益者の任意後見人を兼ねているため 3 件(5.3%)

 公証役場・金融機関等からの要望があったため 4 件(7.0%)

 その他( )5 件(8.8%)

・委託者に助言できる人が欲しかったため

・受託者が受益者の成年後見人に選任される可能性があるため

・不動産を処分するにあたり、委託者兼受益者の意向を第三者が確認するのが適切であったため

問13 直近10年間で,受任した民事信託案件において信託監督人を選任したことがある場合,信託監督人にかかる報酬の定め方について,当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。なお,選択肢はいずれも消費税抜き価格で月額報酬制,タイムチャージ制の報酬の定めとなります。

 月額0円~5000円 27 件(57.5%)

 月額5001円~1万円 0 件(0.0%)

 月額1万0001円~2万円 5 件(10.6%)

 月額2万0001円~3万円 3 件(6.4%)

 月額3万0001円~5万円 1 件(2.1%)

 月額5万0001円以上 0 件(0.0%)

 1時間あたり0円~5000円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5001円~1万円 9 件(19.2%)

 1時間あたり1万0001円~2万円 1 件(2.1%)

 1時間あたり2万0001円~3万円 1 件(2.1%)

 1時間あたり3万0001円~5万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5万0001円以上 0 件(0.0%)

問14 直近10年間で,受任した民事信託案件において受益者代理人を選任したことがある場合,受益者代理人にかかる報酬の定め方について,当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。なお,選択肢はいずれも消費税抜き価格で,①~⑥は月額報酬制,⑦~⑫はタイムチャージ制の報酬の定めとなります。

 月額0円~5000円 3 件(75.0%)

 月額5001円~1万円 0 件(0.0%)

 月額1万0001円~2万円 0 件(0.0%)

 月額2万0001円~3万円 1 件(25.0%)

 月額3万0001円~5万円 0 件(0.0%)

 月額5万0001円以上 0 件(0.0%)

 1時間あたり0円~5000円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5001円~1万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり1万0001円~2万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり2万0001円~3万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり3万0001円~5万円 0 件(0.0%)

 1時間あたり5万0001円以上 0 件(0.0%)

問15 直近10年間で,作成された信託契約書等は公正証書にしましたか。それぞれについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 公正証書にした信託契約書等 199 件(73.2%)

 公証証書にしなかった信託契約書等 73 件(26.8%)

 公正証書にしたか不明な信託契約書等 0 件(0.0%)

問16 直近10年間で,信託口口座の開設等,金融機関の対応で苦労したことはありますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 ある 9 件 (20.0%)② ない 36 件(80.0%)

問17 問16で「① ある」と回答した方にお聞きします。

金融機関の対応等で苦労した理由にはどのようなことがありますか。当てはまるもの全てついて,それぞれ件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,0と回答してください。

 信託口口座の開設ができない 8 件(34.8%)

 信託契約書の文言の修正を求められた 1 件(4.4%)

 特定の弁護士が作成した信託契約書しか取り扱わない 1 件(4.4%)

 金融機関の理解が不足していた 12 件(52.2%)

 その他( ) 1 件(4.4%)

・信託口口座の開設はできないと考えて代理人口座を開設した

問18 直近10年間で,民事信託に関する紛争・裁判案件を扱ったことはありますか。

当てはまる番号1つを回答してください。

 ある 12 件(9.5%) ② ない 114 件(90.5%)

問19 問18で「① ある」と回答した方にお聞きします。

紛争等の内容はどのようなものですか。当てはまるもの全てについて,それぞれ件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 委託者の判断能力 5 件(26.3%)

 信託の変更 1 件(5.3%)

 信託の終了 4 件(21.1%)

 受益権の行使 1 件(5.3%)

受託者の解任 3 件(15.8%)

 受託者・信託監督人の選任 1 件(5.3%)

 課税上の問題 0 件(0.0%)

 その他( ) 4 件(21.1%)

・遺留分侵害額請求

・遺留分潜脱目的

・受託者から、委託者と同居する親族に対する不動産の明渡請求

・非士業者による信託契約書の作成

第2 任意後見についてお聞きします。

問20 直近10年間で,任意後見に関する相談を受けたことはありますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 ある 194 件(60.6%)  ない 126 件(39.4%)

問21 直近10年間で,任意後見に関する相談を受けた際の相談者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。それぞれについて,件数を御回答ください。(民事信託と同時に相談を受けた場合は,問2と問21でそれぞれ1件とカウントしてください。)。相談が0件の場合は,「0」と回答してください。

 委任者となる本人のみ 206 件(39.3%)

 委任者となる本人とその家族 166 件(31.7%)

 委任者の家族のみ 78 件(14.9%)

 委任者となる本人とその家族以外の第三者 53 件(10.1%)

 委託者の家族とその家族以外の第三者 21 件(4.0%)

問22 直近10年間で,任意後見契約書の作成業務を受任したことはありますか。

 ある 99 件(52.4%)② ない 90 件(47.6%)

問23 直近10年間に,任意後見契約書を何件作成しましたか。

225 件

(内訳)

0 – 9 件 105 人

10 – 19 件 1 人

20 – 29 件 0 人

30 – 39 件 0 人

40 – 49 件 0 人

50 – 59 件 0 人

60 件以上 0 人

問24 問23の件数のうち,民事信託と任意後見を併用したのは何件ですか。0件の場合は,「0」と回答してください。

19 件

(内訳)

1 件 4 人

2 件 4 人

3 件以上 2 人

問25 直近10年間で,作成された任意後見契約書の委任者の年齢層は以下のどれに当てはまりますか。それぞれについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 40歳未満 0 件(0.0%)

 40歳以上50歳未満 3 件(1.3%)

50歳以上60歳未満 7 件(3.1%)

 60歳以上70歳未満 43 件(19.0%)

 70歳以上80歳未満 96 件(42.5%)

 80歳以上 77 件(34.1%)

問26 直近10年間で,受任した案件において設定された任意後見受任者となったのは,以下のどれに当てはまりますか。①~⑤のうち当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 家族 83 件(39.0%)

 友人 5 件(2.4%)

 弁護士 112 件(52.6%)

 NPO法人・社会福祉法人 1 件(0.5%)

 その他 ( )12 件(5.6%)

・交際相手(1 件)

・内縁の夫婦(1 件)

・家族以外の親族(3 件)

・血縁関係にないが親子同然に生活してきた者(1 件)

・弁護士法人(1 件)

問27 直近10年間で,受任した案件において任意後見を設定した理由(動機)は何だったでしょうか。当てはまる全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合はそれぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 高齢者の財産管理への不安 178 件(48.6%)

身上保護の必要性 86 件(23.5%)

 法定後見のデメリットを回避するため 87 件(23.8%)

 その他 ( )15 件(4.1%)

・信頼できる親族・身寄りがいない(5 件)

・特定の受任者を指定したい(2 件)

・親族間の紛争が生じている(2 件)

・交際相手に財産管理・身の回りのことを行ってもらうため(1 件)

問28 直近10年間で,受任した案件において設定された任意後見の対象財産の経済的規模はどの程度だったでしょうか。①~⑤のうち当てはまる全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 3000万円未満 50 件(22.7%)

 3000万円以上1億円未満 121 件(55.0%)

 1億円以上3億円未満 37 件(16.8%)

 3億円以上 9 件(4.1%)

 分からない 3 件(1.4%)

第3 民事信託と任意後見についてお聞きします。

問29 直近10年間で,受任した案件において民事信託と任意後見を併用したことがありますか。ある場合,受託者と任意後見受任者との関係は,以下のどれに当てはまりますか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。0件の場合は,「0」と回答してください。なお,併用したことがない場合は,問32へ進んでください。

 受託者と任意後見受任者は別人である 15 件(68.2%)

 受託者と任意後見受任者は同一人である 7 件(31.8%)

問30 問29で「 受託者と任意後見受任者は別人である」と回答した方にお聞きします。対応した案件のうち,受託者と任意後見受任者の組合せで,最も多い組合せ(問30-1及び問30-2の中から1つずつ)を回答してください。

問30-1 受託者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 家族 7件(100.0%)

一般社団法人 0 件(0.0%)

 株式会社等 0 件(0.0%)

 信託会社 0 件(0.0%)

 信託銀行 0 件(0.0%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問30-2 任意後見受任者の属性は,以下のどれに当てはまりますか。当てはまる番号1つを回答してください。

 受託者とは別の家族 7 件(63.6%)

 友人 0件(0.0%)

弁護士 4件(36.4%)

 NPO法人 0 件(0.0%)

 社会福祉法人 0 件(0.0%)

 その他( ) 0 件(0.0%)

問31 直近10年間で,民事信託と任意後見を受任した案件において,民事信託と任意後見を併用した場合,その理由は何だったでしょうか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 信託財産以外に第三者による管理が必要な財産がある 15 件(46.9%)

 身上保護が必要である 10 件(31.3%)

 法定後見のデメリットを回避するため 7 件(21.9%)

 その他 ( ) 0 件(0.0%)

問32 直近10年間で,民事信託と任意後見を併用しなかった場合,その理由は何だったでしょうか。当てはまるもの全てについて,件数を御回答ください。受任した1つの案件で,複数の理由に該当する場合は,それぞれ1件とカウントしてください。0件の場合は,「0」と回答してください。

 費用がかかる 13 件(3.2%)

 適切な受託者が見つからなかった 23 件(5.6%)

 併用する必要がなかった 170 件(41.7%)

 併用を考えたことがなかった 50 件(12.3%)

 その他 ( ) 4 件(1.0%)

・依頼者に理解させるのが難しそうだった(1件)

・相談や依頼がない(2件)

 民事信託・任意後見ともに受任していない 148 件(36.3%)

問33 民事信託・任意後見に業務として取り組む場合に,障害と思われることがあれば教えてください(自由記載)。

・弁護士の理解不足、経験不足(25 件)

・適切な受託者の確保、信託業法の規制(19 件)

・民事信託・任意後見にふさわしい事案がない(10 件)

・民事信託・任意後見が知られていない、分かりにくい(10 件)

・民事信託の見通しが立てづらい、リスクがある(6 件)

・信託登記、任意後見監督人等の費用負担が大きい(4 件)

・任意後見人は事務所住所・職務上氏名での登記ができない(4 件)

・弁護士の業務と理解されていない、他士業・他団体の進出(3 件)

・金融機関等の協力が得られない(3 件)

・本人の制度利用への不安(3 件)

・信託税制に対する理解不足、課税上の課題等(2 件)

・その他

問34 民事信託の実務に関し,これまで研鑽のために取り組んだことはありますか。当てはまるもの全てについて御回答ください。

日弁連のライブ実務研修,e-ラーニングの受講 147 件

 日弁連の弁護士業務改革シンポジウム,勉強会,講演会などの企画への参加 81 件

 弁護士会の研修の受講 147 件

 弁護士会の勉強会,講演会などの企画への参加 124 件

 その他( ) 41 件

・書籍、DVDなど(21 件)

・金融機関、他士業、他団体のセミナー・勉強会(14 件)

・委員会内、事務所内、弁護士有志の勉強会(7 件)

・関連委員会・PTへの所属(3 件)

 特に研鑽の機会を持ってない 70 件

問35 民事信託の実務に関し,研鑽のためのこれまでの取組で有益だったものはありますか(自由記載)。

・日弁連・日弁連委員の研修・勉強会等(21 件)

・弁護士会の研修・勉強会等(15 件)

・書籍・雑誌(8 件)

・実務経験に基づく講義・ケーススタディ(5 件)

・金融機関主催のセミナー(3 件)

・研修(3 件)

・すべて(2 件)

問36 任意後見の実務に関し,これまで研鑽のために取り組んだことはありますか。当てはまるもの全てについて御回答ください。

日弁連のライブ実務研修,e-ラーニングの受講 94 件

 日弁連の弁護士業務改革シンポジウム,勉強会,講演会などの企画への参加 38 件

 弁護士会の研修の受講 123 件

 弁護士会の勉強会,講演会などの企画への参加 68 件

 その他( ) 25 件

・書籍、DVDなど(21 件)

・弁護士会以外の研修会(4 件)

 特に研鑽の機会を持ってない 116 件

問37 任意後見の実務に関し,研鑽のためのこれまでの取組で有益だったものはありますか(自由記載)。

・日弁連・日弁連委員の研修・勉強会等(4 件)

・弁護士会の研修・勉強会等(7 件)

・書籍・雑誌(3 件)

・実務経験を積む(3 件)

・研修(2 件)

問38 民事信託・任意後見を弁護士業務の一つとするために,日弁連に要望することがあれば教えてください(自由記載)。

・会員(弁護士)に対する研修、ガイドライン・契約書式・事例等の提供(21 件)

・弁護士こそが民事信託・任意後見を扱うに相応しいこと等の広報活動(17 件)

・受託者規制に関する信託業法の改正(7 件)

・金融機関・関係団体等との連携(6 件)

・事務所住所・職務上氏名での任意後見登記(4 件)

・市民向け相談窓口・名簿の整備(3 件)

・任意後見の研究(2 件)

・不祥事対策(2 件)

・単位会へのバックアップ(2 件)

・実務経験を積むためのバックアップ(2 件)

以上

愛知県弁護士会シンポジウム報告書

「思いを託す~任意後見・民事信託の活用~」

2022年7月28日(木)参加人数約180人

第4 内容

講演 「思いを託す~任意後見の活用~」

講演者:種谷 有希子 会員(日弁連高齢者・障害者権利支援センター委員)

(報告内容)⑴ 概説

任意後見制度の活用について、法定後見制度、死後事務委任契約、見守り契約、遺言との対比から説明を行った。

⑵ おひとりさま世帯の増加

昭和61年では、親と未婚の子のみの世帯及び三世代世帯が、全体の半数を超えていた。しかし、令和元年では、単身世帯及び夫婦のみの世帯が全体の半数を超え、「おひとりさま」世帯が現実のものとなっている。その中で、老後について、対策を取らなかった事例と対策を取ることができた事例を紹介した。対策を取らなかった事例としては、高齢者が詐欺被害に遭い、成年後見人が介入した段階では奪われた財産の回復が不可能であったという事例があり、対策を取った事例としては、余命1年の依頼者が、自分の希望を伝えた上で、その希望を反映した財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約を締結して、遺言を作成し、自分の希望した終末期を迎えることができたという事例を紹介した。

⑶ ホームロイヤーの活用

ホームロイヤーの活用として、判断能力が十分なうちに、①見守り契約、②任意後見契約、③死後事務委任契約、④遺言を準備し、能力に問題がない時期には、見守り契約(①)、判断能力が低下したときは、任意後見契約の効力を生じさせ(②)、死亡の際には死後事務委任契約(③)と遺言(④)によって処理をしていくことを提案した。

⑷ 任意後見契約の利点

隣接制度である、法定後見制度と比較を行い、任意後見契約では、本人が十分な判断能力があるうちに、自分の希望を伝え、自分が信頼する人を後見人に選ぶことができるとの説明があった。

講演「思いを託す~人生の最終章を豊かに~」講演者:川名 紀美 氏(元朝日新聞社論説委員)

(報告内容)

⑴ 講演者の実体験

講演者は、もともと新聞記者として少子高齢化社会について、取材をしていた。自分の実経験として、高齢(90歳)を迎えた父が、付き合いのある保険会社から保険加入を不当に勧められて高額な保険料を支払ってしまったことや、叔母が、証券会社から投資信託の購入を勧められて購入してしまったことなどの経験があり、詐欺や悪徳商法でなくとも一人では適切な判断が出来なくなることを知って老後の問題について考えるようになった。講演者の子は、海外で暮らしており、現在は、おひとりさまに近い状態である。現在は問題ないとしても、今後、判断能力が衰えたときに、自分の生き方を尊重して自分を支えることができる専門家の必要性を考えるようになる。また、その後、父の死後に自宅の処分をしたり、叔母の死後に行政手続や各種の契約の解約などを行ったりしたことで、死後事務の煩雑さも知ることとなった。自分の死後に、これらの手続を海外で暮らす子に全て任せることは大きな負担となるため、死後事務委任契約を検討することとなった。

⑵ 人との交流

講演者は、人との関わり合いが重要だと考えている。平成20年から、仕事を持って働いてきたシングルの女性4人が同じマンションの1室をそれぞれ購入して住むようになり、相互に交流しながら生活を送っている。また、地域に根を下ろし、人との関わり合いの輪を外へ広げるため、「土曜サロン」を開催し、月1回、同じマンションの1室を利用して、ゲストを招いて、音楽会や後見制度の講習会などのイベントを開催している。ところで、上記の女性4人中3人は、同じ専門家に依頼をし、それぞれ任意後見契約、死後事務委任契約、遺言を作成している。うち1人について、令和2年にアルツハイマー型認知症と診断され、令和3年に任意後見を開始することとなった。このような知人に対する些細な変化は、近くで交流しながら一緒に暮らしているからこそ気付くことができた。

⑶ 孤独対策

近年、孤独対策は、大きな社会問題となっている。平成30年、イギリスでは、「孤独担当大臣」が任命され、昨年、日本でも「孤独・孤立対策担当大臣」が誕生し、孤独・孤立問題に取り組むNPOなどを支援する体制が構築され始めている。

講演 「思いを託す~民事信託の活用~」講演者:西片 和代 会員(日弁連信託センター副センター長)

(報告内容)

⑴ 民事信託の特徴

民事信託は、委託者(財産の所有者)の財産(預金や不動産)の名義を、受託者に移転して行う。民事信託は、財産を管理するという面で見ると後見制度と似ていて、誰かに財産を渡すという面から見ると遺言や遺贈と似ている。信託には、委託者と受益者が同一である「自益信託」と、委託者と受益者が異なる「他益信託」があり、自益信託では、贈与税(委託者から受託者への財産の移転の場面)は発生しない。

⑵ 信託の利用場面

信託の利用場面としては、不動産の売却の場面(将来、判断能力が低下して不動産を売却できなくなることを防ぐ)や、不動産の管理の場面(収益不動産の管理が煩わしいため、次世代に管理を任せたい)がある。

⑶ 他の制度との比較

後見と比較した民事信託の効用としては、財産の名義が受託者に移転するため、委託者が財産を詐取されることはない(守り)、また、受託者が委託者に代わって投資・運用できる(攻め)というものがある。また、信託では、委託者が死亡したあとも、財産の帰属先を指定し、数世代にわたって、財産を承継させることもできる。民事信託は、委任契約、後見制度、遺言と合わせて活用することができ、さらに、その先に発生する数次相続についてもカバーすることができる。

⑷ これからの民事信託

このような民事信託ではあるが、まだ発展途上の分野であり、税務面の検討も欠かせない。弁護士などの専門家と相談し、任意後見契約、死後事務委任契約などと組み合わせながら最適な選択をすべきである。

4 パネルディスカッション 「思いを託す~任意後見・民事信託の活用~」

パネリスト:種谷 有希子 会員(日弁連高齢者・障害者権利支援センター委員)

川名 紀美 氏(元朝日新聞社論説委員)

西片 和代 会員(日弁連信託センター副センター長)

コーディネーター:杉山 苑子 会員(高齢者・障害者総合支援センター運営委員会委員)

(報告内容)

⑴ なぜ今任意後見・民事信託なのか

任意後見の件数が増加している。おひとりさまが増え、子がいない世帯、子がいても頼れない世帯があり、老後の財産管理について不安に感じている人が多いことに起因すると思われる。民事信託については、平成19年9月に新信託法が施行され、それに先立つ信託業法改正と相まって信託銀行以外も信託の担い手になることができるようになり、また信託の自由度が高まった。超高齢者社会における信託活用への期待の高まりとともに、家族内での「民事信託」が身近な方法として注目されるようになった。

⑵任意後見

ア 法定後見制度と任意後見契約の比較

任意後見契約では、自ら後見人を選択することができる、つまり、自分の終末期の希望を直接伝えることができるという特徴がある。また、任意後見では依頼したい事項を選択できるが、法定後見では類型にもよるがそこまでの自由度はないという違いがある。一方、任意後見契約では、任意後見監督人が必ず選任される。また、任意後見人には、取消権がないので、取消権を行使する必要がある場合であれば、法定後見制度が適する場面もある。

イ 任意後見契約の流れ

任意後見契約は、裁判所が任意後見監督人を選任したときから効力が発生する、任意後見受任者が申立てをすることが多い。ここで、任意後見受任者と本人との交流が途絶えてしまうと、本人の状態を判断することができず、申立の時期を逸してしまう。

ウ 見守り契約の併用

任意後見受任者が本人の状態を適宜判断するために、見守り契約との併用が考えられる。任意後見受任者が、本人に、月1回面会をするなどの見守りを行う。

エ 費用

任意後見契約作成費用、任意後見人の報酬、任意後見監督人の報酬など。本人の身の回りの世話をする親族がいない場合には、任意後見契約が有効である。本人の判断能力が衰えた場合、後見人が施設と入所契約をすることもできる。

カ 川名氏の事例から見えること

法定後見制度の場合は、本人の判断能力が衰えてから後見人を選ぶことになるので自分の希望を伝えることができないが、任意後見契約の場合は、自分で任意後見人を選ぶことができ、自分の希望を伝えることができる。

キ 川名氏のご友人の事例から見えること

本人は、弁護士と見守り契約を締結していて、月1回、本人が、決まった日時に事務所に電話をするか事務所を訪問することになっていた。しかし、本人が電話をしないという事態が発生したり迷って事務所に来られないというようなことが発生して、本人の判断の能力の低下を確知された。任意後見契約の効力を発生させるためには、本人の同意が必要であるが、本人に説明するにあたっては、友人である川名氏の存在が大きかった。

ク 任意後見と親亡き後問題

障害がある子の面倒を誰が見るかという「親亡き後」の問題がある。この場合、親が弁護士と任意後見契約をして、代理権目録に子の法定後見の申立権を加えることで、将来、親の後見人が子の法定後見を申し立てるケースもありうるところであるが、ここまで備えをしているケースは非常に少ないだろう。

ケ まとめ

将来の不安がある場合には、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言の作成をすること、そして、任意後見契約が開始するまでの間、任意後見受任者と本人が良好な関係を保つことが重要である。

⑶ 信託

ア 後見との比較

民事信託が後見と大きく違うのは、民事信託は、本人に十分な判断能力があるうちにスタートするということである。判断能力が低下した後に、民事信託か後見かを選択するというのは間違いで、判断能力が無くなる前に備えておく必要がある。

また、民事信託の場合、委託者が受託者に託す財産を選ぶことができる。さらに、後見の場合は、本人が死亡すれば終了するが、民事信託の場合は、委託者が死亡した後も続けることができる。

イ 民事信託が適するケース

自宅売却を目的とした信託で、自宅を信託し、預貯金は委託者が引き続き管理をするという例がある。他には、アパートを経営してきた高齢者が、子に信託をする例がある。アパートの経営は、入居者の交代や修繕工事などの対応など煩雑な手続があるためである。アパートの賃料は、高齢者の収入となる。

ウ 弁護士が受託者になれるか

信託業法の規制から、現時点では、弁護士が受託者になることはできない。今後の議論が待たれる。

エ 費用

組成時のイニシャルコストと、組成後のランニングコストを検討することが重要。

⑷ まとめ

ア 川名氏

自分で各制度の内容を理解して、自分で選ぶことが大切である。

イ 種谷会員

信託は弁護士でも難しい制度である。家族の方や支援者は、後見や信託について細かい内容を知る必要がないが、今日のシンポを通じて簡単な仕組みをご理解いただき、本人のために後見や信託が使えるのではと思った時にはぜひ弁護士に相談をしていただきたいと思う。

ウ 西片会員

制度は利用する人のためにあり、法律も変わっていく。法律家が制度を押し付けることはなく、利用者が役立つ制度を使うようにするのが良い。

以上

信託契約書のチェックポイント―金融機関―

・信託口口座の開設にあたり、受託者と預金取引が可能かにつき、信託契約内容の事前チェック

 チェックにおいては、形式面でのチェックのみならず、受託者が正しく信託事務を遂行できるかという観点。

・受託者に関するチェック内容

信託法に定める受託者の義務の免除の有無

自己執行義務

善管注意義務・忠実義務の免除、義務を軽くする規定の有無

信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成の免除規定の有無

信託終了時の最終計算の承認を求める義務の免除規定の有無

受託者の辞任、解任規定

信託事務処理の第三者への委託

受託者が全ての信託事務処理を第三者に委託することは、信託の本質に反し信託の有効性に疑義が生じ得るとの見解があるため、信託事務の一部を委託する旨に修正すべき。

不可条文例(信託事務処理の第三者への委託)

受託者は、信託事務の全部を受託者の責任において選任する第三者に委託することができる。

信託法28 条

 「分業化・専門化が著しく進んだ現代社会においては、信託事務のすべてを受託者が自ら処理すべきことを前提とするのは現実的ではなく、むしろ、相当な場合には信託事務の処理を第三者に委託できることとした方が、より迅速に信託事務を処理できることになり、受益者の利益に資するもの。」と考えられる[1]。 2

善管注意義務

不可条文例(受託者の善管注意義務)

受託者の善管注意義務を全て免除する。

信託法29 条2 項ただし書

「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもってこれをするものとする。」

 受託者の善管注意義務の規定が任意規定であるといっても、信託が、委託者および受益者の受託者に対する信認義務を基礎とする財産管理制度であることに鑑みると信託行為の定めをもってしても、受託者の善管注意義務を完全に免除することは、信託の本質に反し許されない[2]。受託者の注意基準としては原則として、「自己の財産に対すると同一の注意」では足りないという判断。

 忠実義務

(受託者の忠実義務) 信託法30条

 「受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない。」と規定。信託の受託者が、受益者の利益のため行動すべき義務を負う。忠実義務は、受託者の最も基本的な行動指針であり「もっぱら受益者の利益を最大限に図るべし」[3]とされ、善管注意義務とともに受託者の義務の両輪であるとされる[4]。信託法31 条2 項、32 条2 項の規定は、忠実義務も善管注意義務と同様に任意規定として理解されている[5]

 分別管理義務

不可条項(公示義務の免除・省略)

受託者は、信託財産につき、信託の登記・登録または信託財産の表示・記載を省略する。

信託法34条2項は、信託財産と受託者の固有財産又は他の信託財産と分別して管理する義務を定めている。14 条の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。

信託事務や信託財産に関する帳簿等の作成等、報告及び保存義務の免除

 帳簿の作成等、報告及び保存の義務   

 信託法37 条1項、2項は、強行規定として受託者による書類の作成義務に関する規定を定めている(強行規定。)。3項は受託者の受益者に対する積極的情報提供義務に関する規定で任意規定。別段の定めを設けることによって、報告義務を軽減または免除することも可能。

清算受託者の職務の終了等

(受託者の職務の終了等) 信託法184条1項は、清算受託者は、その職務を終了したときは、遅滞なく、信託事務に関する最終の計算を行い、信託が終了した時における受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)及び帰属権利者のすべてに対し、その承認を求めなければならないと規定している。 信託終了時の最終計算の承認を求める義務が免除されていることがあるが、信託法184 条は任意規定とされていないため、有効性に疑義がある。

受託者の辞任

不可条文例

(受託者の辞任) 受託者の任務は、下記の事由に該当したときに終了する。

(1)信託法第56条1項各号に掲げる事由

(2)後継受託者の同意を得て辞任したとき

 信託法57条1項本文では、受託者は、委託者及び受益者の同意を得て辞任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、受託者は、委託者及び受益者の同意を得た場合には辞任できず、後継受託者の同意を得た場合にのみ辞任できるのか、それとも、委託者及び受益者の同意を得た場合だけでなく、後継受託者の同意を得た場合にも辞任できるのかが不明確。補足文言の追加を検討する必要あり。

参考:東京地裁平成30年10月23日判決

 委託者兼受益者の合意による信託の終了の主張が認められなかった事例。信託法164条3項により同条1項の適用は排除されたため、委託者兼受益者が任意の時期に同信託を終了させることができない。

受託者の解任

不可条文例

(受託者の解任) 受益者は、次の各号に定める事由に該当するときは受託者を解任することができる。

 (1)受託者が本契約に定める義務に違反し、受益者の是正勧告から30日を経過しても、相当の理由もなく是正されないとき。

 (2)受託者に破産手続又は民事再生手続その他これらと同種の手続の申立てがあったとき。

 (3)その他受託者として信託事務を継続しがたい重大な事由が発生したとき。

 信託法58条1項は、委託者及び受益者は合意によりいつでも受託者を解任できる旨規定されているが、信託契約にこれとは異なる規定がある場合、委託者及び受益者が合意した場合には受託者を解任できず、信託事務を継続しがたい重大事由が発生した場合にのみ受益者が解任できるのか、それとも、委託者及び受益者が合意した場合だけでなく、当該事由に該当した場合にも受益者が解任できるのかが不明確。補足文言の追加を検討する必要あり。

・受益者

チェック内容

受益者の特定・指定

不可条文例(受益者への給付)

 受託者は、受益者及びその被扶養者の生活に必要な資金として次のとおり実際の必要に応じて随時に、信託財産から受益者又は第三者に対し給付する。

 受益者との文言が用いられない場合でも、このような定めを前提にすると、その被扶養者も受益者と解釈される可能性が否定できない。給付の請求権限は受益者に限り有する必要がある。受託者は信託財産を受益者に給付するが、受益者の指示がある場合には、受託者は、受益者の親族等の第三者に直接信託財産の支払いを行うことができる等の規定であれば可。

 受益者連続型

チェック内容

 後継受益者の死亡の先後によって受益権の承継に不具合が生じないか(例:第三受益者が第二受益者より先に死亡していた場合の取扱いの規定がない)。→第三受益者が第二受益者より先に死亡していた場合の取扱いの規定がない場合、第二受益者死亡後、受益権がどのように承継されるかが不明確になる。

 信託契約に記載されている最終の受益者が死亡した後の受益権の承継について規定の有無

 終了事由の問題。受益者連続型の信託契約において、受益者死亡による信託終了の定めがない場合又は信託期間の定めがない場合に、半永続的に信託が継続することにならないか。受益権が相続され、受益者が数次にわたって登場し、権利関係が複雑化する恐れがある。

信託の終了事由

チェック内容

委託者の死亡が信託の終了事由

 法定の信託法163条に定める終了事由。民事信託では、受託者は一般の方であり明記することが望ましい。

帰属権利者

チェック内容

委託者死亡時に遺留分の侵害が生じないか[6]

例外的な取り扱い

残余財産の帰属

信託財産としての清算

信託不動産の取り扱い

 遺留分侵害

チェック内容

 遺留分を侵害していても信託契約は可能ではあるが、将来の紛争性が高いため、取り扱わない。ただし、信託財産以外の財産で遺留分が確保できている場合、遺留分被侵害者が当該信託の内容に明確に承諾していることを組成する士業が直接確認できている場合は、口座の提供を検討する。

 帰属権利者等

残余財産の帰属

不可条文例

(残余財産の帰属)委託者の死亡により本件信託が終了した場合、残余の信託財産については、委託者の一般財産たる遺産と同様に、委託者の遺言書が存在する場合は遺言書に委ね、委託者の遺言書が存在しない場合は法定相続人全員による遺産分割協議に委ねるものとする。

 信託財産は委託者の相続財産ではないため、遺言によって処分することができず、また遺産分割協議の対象にもならない。そのため、残余財産の帰属先は信託契約書上で明記することが望ましい。帰属割合等を信託契約書外の公正証書等で別途定めるような実務上の取り扱いを認めていない。

不可条文例

(残余財産の帰属)本信託が終了したときの残余財産の帰属権利者は、乙及び丙とし、本件信託金銭については、それぞれ2分の1ずつの割合にて取得する。本件信託不動産については、信託終了時に処分されずに残存していた場合、乙に取得させ、乙において信託不動産を売却換価の上、同換価金につき、処分に要する諸費用を控除した残余金を、帰属権利者にそれぞれ2分の1ずつの割合で取得させる。

 乙が一度取得した信託不動産の換価金を丙に交付することは贈与にあたると考えられるため、乙に帰属させることとするか、清算事務として信託不動産を換価処分した上で帰属させるなどの対応が必要となると考える。

・その他チェック内容

 残余財産の帰属についての定め

 残余財産の帰属について定めがない場合、信託法182条2項[7]が適用されることとなるが、不動産の移転登記等の問題もあることから、あらかじめ帰属を定めることが望ましい。

委託者兼受益者が存命中に信託が終了した場合の定め

委託者の意思に応じて、その場合の残余財産の取り扱いを明確にする。

・その他補足

チェック内容

停止条件付き信託契約(信託法4条4項)

 停止条件を手続上、明確にできれば、理論的には可能。しかし、例えば、判断能力低下を停止条件とする場合、不動産実務上、移転登記[8]・信託登記は困難である。また、銀行実務においても、長期での案件・顧客管理は困難。条件にもよるが、信託口口座開設は条件成就の時が現実的である。

信託内借入を伴う信託契約書(今回の範囲外、信託法21条)

東京地裁令和3年9月17日判決(家庭の法と裁判第35号(2021年12月)

 信託契約書内容の事前擦り合わせ(資格者専門職と金融機関) 。司法書士に対する損害賠償訴訟。

貸出実務について

• 自動送金関係

 最近、銀行において包括的な代理人による預金取引をするところもあるため、本人の意思能力喪失後も自動送金が継続される可能性がある。信託の追加は、新規の信託設定と信託の併合[9]。本人の意思能力喪失後の追加信託の設定は、問題あり。

自動送金取り扱い

 金融機関が、預金者が高齢等により意思能力を喪失したことを知った場合、預金口座は支払停止の措置をとるため、他行に自動送金しているもの、公共料金の引き落とし、クレジットカードの引き落とし等はできなくなる。ただし、一定の要件の下、預金者の生活に必須な公共料金等については、例外的な対応は可能。

 信託契約書は、委託者のご意向、関係者の想いに直接接している士業がサポートいただきたい。信託契約締結以降、金融機関への届出事項として、委託者の死亡、受益者の変更、受託者の任務終了、信託契約の変更、信託の終了等がある。信託契約の締結以降も、継続的なサポートが必要。

 手続きを行う主体としては、信託口口座を利用する受託者のみ。代理人による取引を希望される場合に、信託契約に第三者に信託事務を委託することができる旨の定めがあること、かつ金融機関の代理人取引ルール(委任状の提出、受託者本人への電話確認等)に則ってお手続きする必要がある。


[1] 寺本昌弘著 『逐条解説新しい信託法〔補訂版〕』(商事法務2008 年)P109

[2] 寺本昌弘著 『逐条解説新しい信託法〔補訂版〕』(商事法務2008 年)P113

[3] 新井誠 『信託法〔第4 版〕』P 256

[4] 井上聡編著『新しい信託30 講』(弘文堂、2007 年)P 59

[5]  「すべてが任意規定化されたからといって、完全に自由であるわけでなくて、…緩和の限界が存在するはずだ。」道垣内弘人「信託法改正と実務」『ジュリストNO.1322』2006 年 P 13

[6] 東京地裁平成30年9月12日判決。遺留分制度を潜脱する意図でされた信託の効力

[7] 委託者又はその相続人その他の一般承継人を帰属権利者とみなす。

[8] 不動産登記令16条2項、3項 3か月以内の印鑑証明書

[9] 道垣内弘人 『信託法(現代民法別巻)』(有斐閣,2017年)P398

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令案(仮称)に関する意見募集の結果について

 

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案件番号300080275

結果の公示日2022年9月29日

提出意見数59

所管省庁法務省

番号

御意見の概要

御意見に対する考え方

政令案第1条関係

・政令案第1条のとおり規定することに賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

・承認申請は、申請人の予測可能性が担保されるよう、限定的かつ明確に規定する必要があると考えるため、賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

3    

・承認申請ができない通路について、「現に」用途に供されている土地とすることに賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

4    

・通路と崖は国で引き取ることができるようにすべきである。

・通路に関する御意見については、法律の規定についての内容であり本意見照会の対象外ではありますが、御意見として承ります。崖に関する御意見については、法第5条第1項第1号(政令案第3条第1項)の要件に該当しない崖であれば、国庫への帰属が承認される場合もあります。

・原野・山林などの一部に、現に通路に使用されている部分があることだけで、承認申請ができないとされることがないようにしてほしい。

・原野・山林にある道には様々なものが想定されますが、法律の趣旨に従って個別の事案ごとに通路の該当性が判断されることが想定されます。

・「現に通路の用に供されている土地」について、町村道、県道、国道の相互を繋ぐ『公衆用道路』は、積極的に国庫への帰属ができるようにするべきである。

・「現に通路の用に供されている土地」は、当該土地が公衆用道路であっても、国の管理又は処分に当たって、土地の使用者との調整が必要となり、過分の費用又は労力を要する土地であることから承認申請ができない土地に該当します。いただいた御意見については、今後の参考とさせていただきます。

7    

・政令案第2条第1号及び第4号の通路、水道用地、用悪水路について、現に当該用途に供されている土地と定めることに賛成する。同条第2号及び第3号の墓地及び境内地について、各法令に規定する土地と定めることに賛成する。

・本政令案への賛同意見として承ります。

8    

・政令案第2条第2号及び第4号について、現にその用途に供されているか否かを判断基準としている点について賛成し、これに関連して法第5条第1項第2 号の不承認要件の適用判断においても、現に供されている用途に基づいて判断すべきである。

・本政令案への賛同意見として承ります。法第5条第1項第2号の不承認要件の適用判断については、本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の検討の参考とさせていただきます。

9     

・政令案第2条第1号、第4号の「現に」の判定はどのように行うのか。とりわけ通路やため池は現地調査をしても外観だけではわからないのではないか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・政令案第2条第1号及び第4号の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断を行うことを予定しています。

10    

・境内地についても、現に境内地として使用されているものに限定すべきである。

・境内地は、宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号から第7号までに掲げるような宗教法人の目的のために必要な固有の土地をいい、基本的には宗教上の儀式行事のため(同条第4号)や庭園(同条第5号)などとして用いられている土地が想定されています。

11    

・政令案第2条第4号のため池については、現に当該用途に供されている土地と定めることに賛成する。ただし、所有者以外の者による使用が予定されていないものは、本規律の対象外とすべきである。

・本政令案への賛同意見として承ります。なお、ため池については現に第三者がその土地を利用していない場合は、国庫帰属後も第三者による使用が予定されないため、政令案第2条第4号の要件に該当しないこととなります。

政令案第3条関係

12   

・政令案第3条第1項の崖の基準は、傾斜地法で急傾斜地崩壊危険区域の基準の一つとなるものであり、妥当なものと考える。

・本政令案への賛同意見として承ります。

13

・崖の要件該当性はどのように判断するのか。現地確認では正確な状況を確認できるのか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・崖の基準の該当性については、法第6条に規定する事実の調査によって、判断を行うことを予定しています。実際の審査における計測の方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

14

・崖の傾斜の具体的な計算方法を知りたい(崖が2筆以上にまたがる場合、階段となっている場合など)。

・崖の基準の該当性については、法第6条に規定する事実の調査によって、判断を行うことを予定しています。実際の審査における計測の方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

15

・崖地と併せて、平坦地を帰属させる場合には、 政令案は、崖の基準を明らかとするものであり、これに該当する一部に崖地を含んでいても、承認できるようにしてほしい。

・崖がある土地のうち、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要するものについて、承認することができないものとされています(法第5条第1項第 1 号)ので、同号の要件に該当しない崖であれば、国庫への帰属が承認される場合もあります。

16

・政令案第3条第2項各号の要件該当性はどのように判断するのか。公図を基礎に現地調査で判断するという理解でよいか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・政令案第3条第2項各号の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断を行うことを予定しています。また、地図や地図に準ずる図面も、審査における資料として活用することを予定しています。要件該当性の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

17

・政令案第3条第2項各号の要件該当性はどのように判断するのか。公図を基礎に現地調査で判断するという理解でよいか。具体的な想定があれば公開すべきである。

・「民法第210条第1項に規定する他の土地に囲まれて公道に通じない土地」であったとしても、現に同条の規定による通行が妨げられていない場合は、政令案第3条第2項第1号には該当しないことから、本規定は公道に通じない土地を一律に承認対象から除外するものではありません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

18

・政令案第3条第2項第2号の妨害の程度について、軽微であることはどのように判断されるのか。軽微なものを除くのではなく、本号本文において妨害の程度が重大であることを明示すべきではないか。

・所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている場合は、基本的には土地の通常の管理又は処分を阻害するものに該当すると考えられますが、妨害の程度が軽微なものについては、土地の通常の管理又は処分を阻害するものではないと考えられることから、軽微なものを除くこととしています。軽微であることの具体的な判断方法や例などについては、引き続き検討してまいります。

19

・政令案第3条第2項第2号について、相隣関係の規定の改正により、樹木の越境がある場合でも簡易迅速に問題が解消できることとなったことを踏まえ、ガイドライン等で「妨害」の中にこのように簡易に解消できる樹木の越境については含まないことを明確にしてほしい。

簡易に解消できるような樹木の越境といったケースについては、個別の事案にもよりますが、妨害の程度が軽微なものに該当し、政令案第3条第2項第2号に基づく不承認事由には該当しないと考えられます。

20

・政令案第3条第3項第1号の「その他の土地の状況に起因する災害」とある部分について、「その他周辺土地の状況に起因する災害」という表記が分かりやすいと思う。

・政令案第3条第3項第1号の「その他の土地の状況」とは、周辺土地のみならず、申請対象土地において土砂の崩壊等が発生している場合も含めた状況を指すことから、原案どおりとさせていただきます。

21

政令案第3条第2項第2号、第3項第1号及び同項第2号の各括弧書きにおいて、その程度が軽微なものを除く旨の規定がされることについて賛成する。

本政令案への賛同意見として承ります。

22    

・政令案第3条第3項1号及び2号の軽微性はどのように判断されるのか。具体的な判断方法を規定すべきである。軽微なものを除くのではなく、第1号本文において重大な変更を加える措置であることを、第2号本文においてその程度が重大であることを明示すべきではないか。

・政令案第3条第3項第1号及び第2号の要件に規定する土地については、基本的には通常の管理又は処分に当たり過分の費用又は労力を要する土地に該当すると考えられますが、その程度が軽微なものについては、通常の管理又は処分に当たり過分の費用又は労力を要するものではなくなると考えられることから、軽微なものを除くこととしています。

23    

・政令案第3条第3項各号の要件該当性をどのように判断するのか。とりわけ、申請者は申請時に各号への該当性をどのように確認すればよいか。審査手数料の無駄を避ける観点からも、判断基準・判断資料を通達等で明示するべきである。

・政令案第3条第3項各号の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断することを予定しています。要件該当性の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

24    

・政令案第3条第3項2号の被害については、被害の生ずるおそれがあるものまで含めてしまうと、ほとんど全ての山林や原野などが対象になる可能性があるため、現に被害が生じている土地に限定すべきである。

・政令案第3条第2項第2号の「被害が生ずるおそれ」とは、具体的な危険性があることをいい、抽象的な危険性があるにすぎないものは含まれません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

25    

・政令案第3条第3項2号の要件については、土地の通常の管理又は処分を阻害しないと認められるものを除くということはもちろん、相当程度重篤な被害の場合に適用するようにお願いしたい。

運用に関する御意見として承ります。

26

・政令案第3条第3項第3号について、個人が所有する森林の場合、適切な造林や間伐、保育ができていないことが通常である。そもそも自治体において、市町村森林整備計画の内容が所有者に広報されていたのか、その実施促進の取組がなされていたのかという疑問がある。この要件についても、相当に柔軟な適用をする必要があると考える。

運用に関する御意見として承ります。

27    

・政令案第3条第3項第3号の森林について、追加的に造林、間伐又は保育を実施する必要があると認められるものであっても、地域の森林組合等が主体となって造林、間伐又は保育を無償で実施している森林などで、国にその負担が生じないものは、国庫帰属の対象とするべきである。

・帰属後の土地については国が管理することになるため、追加的に造林、間伐又は保育を実施する場合の費用は国が負担することになることから、政令案第3条第3項第3号の要件に該当することになると考えます。その場合、そのような森林を国庫帰属の対象とすることは困難と考えます。

28    

・所有権を放棄したい森林とは、木材の搬出、製材の不採算性等による国内全体の林業の衰退により、管理が不十分または放棄された山林であることが多いものと想定され、このような状況で、政令案第3条第3項第3号をもって法第5条第1項第5号に該当することとしては、承認を過度に抑制しうるものであると考える。また、現状すでに十分な管理がされていない山林を民有林のままとすることは、さらなる放置により後年の土砂災害等を誘発する温床となりうる。したがって、政令案第3条第3項第3号を「市町村森林整備計画(中略)に掲げる事項に適合していないことにより、当該土地又は周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、農作物、樹木、又は施設に被害が(現に)生じており、これを防止するため(直ち)に追加的に造林、間伐、保育又は被害の防除施設の設置を実施する必要があるもの」など限定的な表現とし、法務大臣による承認を緩和し、国有林としての管理を促進するよう改められたい。

・管理が不十分又は放棄された山林などについては、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要することとなり、承認することは困難であるため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。なお、所有者による経営管理が行われていない森林については、森林経営管理法(平成30年法律第35号)に基づき、市町村が所有者の意向を確認した上で、経営管理を行うことが必要かつ適当な森林を市町村が公的に管理する又は林業経営者に繋ぐ仕組みが措置されているところです。

29    

・「適切な造林・間伐・保育」についての判断を明確にしてほしい。また、適切な造林・間伐・保育が実施されてこなかった山林においても、国庫帰属を行えるルールを新設してほしい。適切な造林・間伐・保育を行ってきた山林であれば、第三者への売却が可能であることから、特に今回の国庫帰属を検討すべき対象は「適切な造林・間伐・保育を行っていない山林」と考える。当該ケースを「帰属の承認ができない土地」とするのであれば、山林に関して結局のところ国庫帰属はほぼできない法律施行令案になっていると感じる。また、相続により山林を取得した場合、当該山林の場所すら分からないケースが多い。更に適切な造林・間伐・保育を過去に実施しているかなどは相続人が知りえない可能性が高い。相続人が地番以外の何も分からない場合、どういう事務処理となるのか、また、「適切な造林・間伐・保育」の実績を誰が確認・判断するのか、明確にしてほしい。

適切な造林・間伐・保育を行っていない山林は、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要することとなり、承認をすることは困難であるため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。なお、所有者による経営管理が行われていない森林については、森林経営管理法(平成30年法律第35号)に基づき、市町村が所有者の意向を確認した上で、経営管理を行うことが必要かつ適当な森林を市町村が公的に管理する又は林業経営者に繋ぐ仕組みが措置されているところです。

また、山林を取得した相続人が当該山林の場所を把握していないような場合については、法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地」に該当するものとして、承認申請ができない可能性があります。

・なお、要件の有無についての判断は、法務大臣において行いますが、政令案第3条第3項第3号の該当性を判断するに当たっては、法第6条に規定する事実の調査において林野庁に調査協力を依頼したり、法第7条に基づいて地方公共団体に資料の提供要求等をしたりすることを予定しています。

30    

・政令案第3条第3項1号から3号までのような危険な土地こそ、国の管理において、災害の発生や人の生命若しくは身体又は財産に生ずる被害等の拡大又は発生の防止に努めるべきである。

・いただいた御意見については、今後の検討の参考とさせていただきます。

31    

・政令案第3条第3項第4号は「国が通常の管理に要する費用以外の費用に係る金銭債務を負担することが確実と認められる土地」と定めているが、通常の管理に要する費用以外の費用があればわずかなものでも不承認事由になるとすれば、法第5条第5号が「過分」と規定していることから妥当とは言えないので、政令案第3条第3項第4号についても、過分な金銭債務を負担するものでないものは除くこととすべきではないか。「通常の管理に要する費用以外の費用(軽微なものを除く)」とするべきではないか。

・土地の管理については費用がかかるところ、通常の管理に要する費用以外の費用に係る金銭債務をさらに負担することは、それがわずかなものであっても、通常の管理に要する費用を上回る負担となり、過分な費用を要することとなると考えられるため、「(軽微なものを除く。)」といった適用除外規定を設けていません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

32    

・政令案第3条第3項第4号及び第5号の対象となる土地を例示的に列挙するなどして、国民が事前に予測できる程度に具体的に明示すべきである。

・要件該当性の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

33    

・別荘地等の民間の管理費等の金銭債務の負担のある土地については、その実際の管理状況を踏まえて判断すべきである。管理費等を要する別荘地等であることをもって直ちに政令案第3条第3項第4号や第5号の不承認事由になるわけではないという理解でよいか。

管理費等を要する別荘地であることをもって、直ちに政令案第3条第3項第4号や第5号の不承認事由に該当するものではないと考えます。その上で、法第2条第3項各号の却下事由又は法第5条第1項各号の不承認事由に照らして、承認の可否が判断されることとなります。

34    

・政令案第3条第3項第5号に「国が法令の規定により当該金銭債務を承継することとなるもの」とあるが、これは法第5条第5号の具体化と言えないのではないか。また、仮に具体化であるとした場合は、法律同号に「過分」とあることから、政令案第3条第3項第4号についても、過分な金銭債務を負担するものでないものは除くこととすべきではないか。「当該金銭債務(金銭債務の額が軽微なものを除く)」とするべきではないか。

・土地の管理については費用がかかるところ、国が法令の規定により承継した金銭債務をさらに負担することは、それがわずかなものであっても、通常の管理に要する費用を上回る負担となり、過分な費用を要することとなると考えられるため、「(軽微なものを除く。)」といった適用除外規定を設けていません。そのため、政令案については、原案どおりとさせていただきます。

35    

・土地改良区内の農地(賦課金がないもの)は、その点をもって直ちに政令案第3条第3項第4号の不承認事由にならないという理解でよいか。

・御理解のとおりです。

36

土地改良区内の農地で賦課金の支払が近い将来必要となる土地は政令案第3条第3項第4号に該当するという理解でよいか。土地改良区内の農地で賦課金の支払が現に必要な土地は政令案第3条第3項第5号に該当するという理解でよいか。

・御理解のとおりです。

37    

・土地改良区の賦課金がかかるとしても、弁済後は、本件制度が利用できるようにしてほしい。また、一時的債務があったとしても、弁済後は、本件制度が利用できるようにしてほしい。

・土地改良区の賦課金が発生する土地であっても、国庫への帰属申請前にこれらの金銭債務が弁済されている場合は、政令案第3条第3項第5号には該当しないものと判断されます。

38    

・仮差押、仮処分、仮登記、買戻特約、譲渡担保権設定登記等の甲区に特殊な登記がある土地を法第5条第1項第4号の対象とする必要はないか。

・御指摘のような土地については、法第2条第3項第2号や政令案第3条第2項第2号に該当し得るものと考えられます。

39    

・農用地土壌汚染防止法上の農用地土壌汚染対策地域内の農地を法第5条第1項第5号の対象とする必要はないか。

・農用地土壌汚染防止法上の農用地土壌汚染対策地域内の農地は、国による通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地ではないことから、特に必要はないと考えます。

40    

・「その他の通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」について、登記簿上の「原野」のうちどのような状態のものが該当するのか、判断基準を示していただきたい。

・「その他の通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」としてどのような土地が該当するかについては、政令案3条第3項各号に規定しています。この基準は、登記記録上の地目が「原野」であるか否かによって変わるものではありません。

政令案第4条関係

41    

・政令案第4条第1項第1号の「直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地」は、建築ができる土地(建築基準法上の道路に接し、間口が2m以上ある土地)をいうのか。宅地に建物がない場合は、「雑種地」となるのではないか。

・政令案第4条第1項第1号における宅地である「直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地」の該当性については、登記記録上の地目だけでなく、その現況及び従前の使用状況に照らして判断することを想定しています。

42    

・政令案第4条第1項第2号の「主に農地として利用されている土地」とは現に耕作されている農地を指すという理解でよいか。相続したが耕作や草刈り等の管理を行っていない農地はここに該当しないという理解でよいか。

・政令案第4条第1項第2号の「主に農地として利用されている土地」の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断することを予定していますが、必ずしも現に耕作されている農地に限定するものではありません。

43    

・政令案第4条第1項第3号の「主に森林として利用されている土地」とは地目にかかわらず、現況で判断するという理解でよいか。また、相続人が管理を行っておらず、森林として利用していない山林は含まれないという理解でよいか。

・政令案第4条第1項第3号の「主に森林として利用されている土地」の該当性については、法第6条に規定する事実の調査や、法第7条に規定する資料の提供要求等によって、判断することを予定しています。相続人が管理を行っていない山林についても、調査等の結果、政令案第4条第1項第3号の「主に森林として利用されている土地」に該当する可能性もあります。

44    

・1筆複数地目がある場合の地目区分はどうなるのか。また、面積について、登記面積と現況面積が異なる場合、どうするのか。地積測量図の作成時期により精度が異なるのであるが、現地復元性が乏しい地積測量図でも面積として認めるのか。

・具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

45    

・政令案の負担金算定表による負担金額は、相当であり、費用面では利用しやすいと評価できる。その一方で、必ずしも要件を充足しない申請案件が急増し、人員不足等により、真に国庫帰属されるべき土地の要件審査等の手続が遅延しないか懸念される。手続を担当する職員等の体制整備も急務であろう。

・本政令案への賛同意見として承ります。また、本意見照会の対象外ではありますが、土地の要件審査等の手続を担当する職員等の体制整備についても、引き続き検討してまいります。

46    

・負担金額をさらに減額すべきである。

・政令案における負担金額は、法律の規定に基づき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して規定したものであり、原案どおりとさせていただきます。

47    

・負担金については上限を設ける等の措置を講ずるべきである。

・政令案における負担金額は、法律の規定に基づき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して規定したものであり、上限を設けることは適当でないため、原案どおりとさせていただきます。

48    

・土地の評価額に応じた負担金額の設定とすべきではないか。

・負担金額の算定は、土地の種目や地域の性質に応じてそれぞれ管理に要する標準的費用を踏まえたものとなっており、当該管理に要する費用は土地の評価額に応じて上下するものではないため、原案どおりとさせていただきます。

49    

・政令案第4条第1項第4号も一律20万円ではなく、面積に応じた負担金額の設定とすべきではないか。

・政令案第4条第1項第4号に該当する粗放的管理行為で足りる土地の場合、標準的な管理行為は巡回であり、当該管理に要する費用は面積に応じて上下するものではないため、原案どおりとさせていただきます。

50    

・市街化区域や用途地域内、農用地区域内の土地がその他の土地より負担金を高く設定されていることに消極である。帰属後の土地の売却等を考えると指定区域内の土地の方が需要があり、売却しやすく、早めの処分が可能である。過疎地域の指定区域外の土地は、ほとんど利用価値がなく、その管理が半永久的に続き、管理費用が嵩むと考える。

・市街化区域や用途地域、農用地区域内に存する土地は、それらの指定区域の性質に鑑み、周辺住民の生活環境に支障を生じさせないようにする要請等が強いことから、これらの指定区域以外の土地と異なり、草刈りなどの管理行為が必要となります。そのため、これらの管理に要する費用として、国有地の管理に要する標準的な費用等を踏まえ、地積の区分に応じて負担金の額を算定しています。

51    

・農業振興地域の整備に関する法律第8条第2項第1号に規定する農用地区域内及び土地改良法第2条第2項に規定する土地改良事業などの区域内の農地の負担金については、政令案第4条第1項第3号又は第4号の負担金と同程度とするべきである。

・農用地区域内や土地改良事業の施行区域内に存する土地は、良好な営農条件を備えた優良農地が周辺に存するために病害虫の発生等による周辺農地の営農条件に支障が生じないよう細心の注意を払うことを要する区域であることから、これらの指定区域以外の土地と異なり、草刈りなどの管理行為が必要となります。そのため、これらの管理に要する費用として、国有地の管理に要する標準的な費用等を踏まえ、地積の区分に応じて負担金の額を算定しています。

52    

・管理費については仕方のない面はあるとは思うが、所有者不明土地問題の解決という問題の解決を考えるなら、申請人の資力や年齢、法定相続人の関係による負担の軽減や、そもそもの要件の緩和などが必要であると思う。

・負担金の納付については、賛同意見として承ります。その他の御意見については、今後の参考とさせていただきます。

53    

・国が行う管理内容の明示がないため、負担金の額の多寡については、判断できない。耕作放棄地や原野化した空き家除却後の跡地のような更地であれば、年2回程度の草刈りは最低限必要と思われるが、概ね10年の管理費用としては、不足を生ずるのではないか。土地評価額に着目せず管理費用を設定したことは、国民に分かりやすく評価できるが、一律費用を20万円よりも高額に設定したうえで、換価価値に応じ負担軽減を図る仕組みとした方が、利用者の納得性を得られるのではないか。この制度により国庫帰属する土地は、基本的に利用の需要が低く、国が永続的に管理しなければならないものが想定されています。他方、承認を受けた者は、国庫帰属がなければ負担すべきであった土地の管理費を免れることができることになります。このような構造に鑑みれば、負担金を求める年数については、数十年とすることも考えられますが、それでは制度自体が利用されない懸念があるため、国の負担を軽減させつつ、承認を受けた者の負担を適正な程度とする趣旨から、10年分とされたものです。

・負担金額の算定は、土地の種目や指定地域の性質に応じてそれぞれ管理に要する標準的費用を踏まえたものとなっており、当該管理に要する費用は土地の換価価値に応じて上下するものではないため、原案どおりとさせていただきます。

54    

・表示登記の変更は、所有者申請により簡易に変更可能なため、相続前に手続きし、負担金の軽減を図ることが推察される。宅地から雑種地へ、田・畑から原野への変更が容易なため、市街化区域又は農用地区域内の加算については、雑種地・原野についても適用すべきではないか。

・負担金算定に当たっての種目の判断は、登記記録上の地目のみで判断されるものではありません。市街化区域又は農用地区域内の雑種地・原野について、同区域内の宅地等と同様に草刈り等が必要な場合もあり得ますが、円滑な制度運営の観点から可能な限り定型的で簡明な算定方法とするため、一律20万円としたところです。

55    

・申請者が市街化区域に該当するか、土地改良区に該当するか等を調査することは相応に煩雑さが伴うことが予想されるため、一般的な照会方法やチェックリストを整理し、法務局にて公開・備置するべきである。

・いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

政令案第5条関係

56    

・隣接する2筆以上の土地については軽減のため申請金が軽減される仕組みとなっているが、隣接土地以外も同じ地名の地域であれば良いとするといったような柔軟な方法を検討してほしい。

・いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

57    

・隣接する二筆以上の承認申請において、土地の所有者が異なる場合も含め、二筆以上の承認申請に係る土地を一筆の承認申請に係る土地とみなして負担金を算定するべき旨の申出ができるとすることに賛成する。本規律の申出の終期については、法務大臣による承認又は不承認、若しくは却下の時とすべきである。また、撤回についても同様とすべきである。

・本政令案への賛同意見として承ります。なお、政令案第5条第1項の申出は、法務大臣による承認又は不承認、若しくは却下の時まで可能であり、申出の撤回についても同様と考えています。

58    

・政令案第5条第2項の共同申請の場合、審査手数料は1申請分になるのか。

・本意見照会の対象外ではありますが、共同申請の場合の審査手数料は、引き続き検討を行ってまいります。

その他

59    

・隣接する二筆以上の承認申請において、土地の主な利用状況が一団であると評価しうる場合には、法第2条第3項各号及び法第5条第1項各号の土地の該当性については、隣接する二筆以上の土地を、一筆の土地とみなして判断すべき旨の承認申請ができるようすべきである。

・一筆の土地とみなすことによって、本来であれば承認可能な土地が、他の土地に問題があるために承認できなくなることも考えられるため、御提案については慎重な検討が必要と考えます。

60    

・いわゆる原野商法により不自然に細分化された山林等については、その点をもって直ちに却下・不承認事由にならないという理解でよいか。

・御理解のとおりです。

61    

・土地の国庫帰属の申請権者は相続人に限る必要はなく、相続開始前であっても、被相続人が申請を行うことができるとすべきである。相続人が承継したがらない不動産を相続財産から除外できるようにすることにより、相続手続の予見性を高めることができる。遺留分侵害その他相続人の権利を害する事例への配慮は、推定相続人全員の同意を必要とする等の措置が考えられる。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、今後の参考とさせていただきます。

62    

・国庫に帰属された土地はどのように処理されていくのか。負担金は必要だと思うが、その土地の活用を十分に行えば負担以上に収益も見込めると思う。最低限の管理でなく、資産として活用できる体制の整備も求める。

・本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

63

・国庫に帰属した後、農地の管理管轄はどこになるのか。帰属後の農地が外国資本に渡ったり、太陽光パネルが立てられたりすることがないようにしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、国庫に帰属した農地の管理管轄は農林水産大臣となります。

64    

・法第2条第3項各号の承認申請ができない事由に該当するもの以外ならば、千差万別の土地形態や位置の土地の申請が予測される。この時をチャンスと捉え、多くの業者(中には悪徳業者と言われるものまで)が困った相続人達を目当てに営業をかけてくることが既にみられるところである。新たな被害者を出さない施策が必要と考える。対処案としては、かつて土地を先行取得した土地開発公社のような公的専門機関を国土交通省と協力して窓口、ないしは管理者とし、その仲介者はこの法律の国家資格のある専門業者に当たらせ、土地の管理をすべきとすることである。現在でも森林の価値が見直され、全国的に多くの業者が取得に走っている。この中で最も危惧されるのが外国人(当初は日本人が取得)投資家等の行動である。外国の所有者が多くなるのは時代の趨勢だが、所有者不明予備軍でもあり、国土保全、領土の安全保障問題にもなりかねず、既に地域的にはいわゆる風紀問題も起こっており、将来のために秩序ある土地管理が国の手で導かれるよう期待する。

・意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

65    

・要件さえ満たせば国は必ず引き取ってくれるのであるから、相続した土地の管理に手が回らず、土地を所有していることに負担を感じ、お金を払ってでも、その“いらない土地”を手放したいと考えている方にとって、いらない土地・希望した土地だけを国に引き取ってもらえることを含め、ニーズに応える制度だと思う。

・本制度への賛同意見として承ります。

66    

・要件審査・承認に先立ち、法務局による実地調査があると予測される。この調査費用を手数料名目で申請者に負担させるのは適切ではない。申請手数料は定額かつ低廉にしてほしい。利用者負担という面もあるとは思うが、この制度を利用するほとんどの人が、税金を払うのに困っている人たちであると思うので、そのあたりを十分考慮しなければ、国の制度としては欠陥ということになると思う。

・本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、申請手数料の検討に当たって参考とさせていただきます。

67

・国が申請を却下・不承認とできる期間を限定し、その期間内に当該処分がなされない場合は、自動的に承認されたものとみなされる(それ以前に承認することも可能)というものにすべきである。相続人が相続放棄・限定承認をしようとする場合、原則として相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所への申述をしなければならない。国庫帰属の申請が却下、不承認とされるリスクがいつまでも残ると、相続人が相続放棄・限定承認の判断をすることが難しくなるケースも考えられる。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、可能な限り早期に処理ができるよう、検討してまいります。

68    

・政令案第3条に規定されている土地はいわば売却が困難な土地である。売却不可能な土地にこそ、この制度を使えるようにすべきである。法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、いただいた御意見については、今後の検討の参考とさせていただきます。

69    

・法第2条第3項第1号の「建物の存する土地」について、空き家が存在する場合、一律に本制度の利用ができないこととするのではなく、空き家の規模・状態・解体費用の多寡によっては、費用を予納すること等により、本制度を利用できるようにしてほしい。

・建物があっても土地の利活用の余地が少しでもあるものであれば承認され得るように、例外規定又は建物が存する土地の中である範囲のものとの条件を付した規定を加えるべきと考える。法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、今後の検討の参考とさせていただきます。

70    

・法第2条第3項第2号の「担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地」について、相続した送電線下の土地の地役権については、権利や実物の撤去の難しさ、そのインフラとしての有用性、土地を国が所有・利用する際、現状変更や特段の金銭負担がないことなどを考慮して、実情に応じ、国庫帰属制度の申請を認める検討をお願いしたい。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

71    

・法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地」について、隣地所有者との境界確認書を必要とせず、境界について具体的争いがない場合には国庫帰属を可能としてほしい。政令案において具体的要件を明確にしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、「境界が明らかでない土地」の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

72    

・法第2条第3項各号及び法第5条第1項各号がどのようなものを指すのか、基準を明らかにするか、それが困難な場合には、事案の例を示すなどして、明確にしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

73    

・当該制度は、不動産の処分に困っている方には、大変ありがたい制度である。法第2条第3項第1号の「建物の存する土地」については、建物がある場合、全て解体し更地にすれば承認されるということで間違いないか。法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地」については、専門家を交え、境界線確定が完了していれば、承認されるということで間違いないか。

・本制度への賛同意見として承ります。なお、本意見照会の対象外ではありますが、法第2条第3項第1号の「建物の存する土地」については、当該建物が解体され更地になった場合、その他の法第2条第3項各号の却下事由又は法第5条第1項各号の不承認事由に該当しないと判断されれば、帰属が承認されることとなります。また、法第2条第3項第5号の「境界が明らかでない土地」の具体的な判断方法やその周知方法については、引き続き検討してまいります。

74    

・事前に国庫帰属ができるかどうかはっきりさせる仕組みにしてほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、個別の事案における法第2条第3項各号の却下事由又は法第5条第1項各号の不承認事由の有無について、可能な範囲で事前に確認することができるようにするための相談窓口を設置することを予定しています。

75    

・省令及び通達を定めるにあたっては、司法書士等の実務専門家の意見を取り入れた上で、早期にその内容を定めていただくよう求める。

・本意見照会の対象外ではありますが、具体的な運用の検討に当たっては、広く国民の皆様の意見を聞きながら検討を進めてまいります。

76    

・申請手続代理を行うことができる士業の範囲を示されたい。

・本意見照会の対象外ではありますが、申請代理に関する考え方とその周知方法については、引き続き検討してまいります。

77    

・本制度の利用の要件や手続について、国民に分かりやすく広報することは極めて重要であるから、要件や手続について法令の内容を具体化したガイドラインを作成するとともに、具体的事案や申請方法を例示したパンフレットなどを作成して広報してほしい。

加えて、自治体関係者の理解を深めるために、自治体が取得を希望した場合には負担金がかからない点なども含めて、本制度を利用するための要件や手続について、自治体関係者向けの説明資料を作成して公表してほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、本制度を国民に皆様に広く理解・活用していただけるよう、地方公共団体や関係団体も含めた効果的な周知・広報の対応について、引き続き検討してまいります。

78    

・相続人が複数存在し、その一部に行方不明者がいる場合、所在等不明共有者の持分取得制度を利用するなどして行方不明者の持分を取得することにより、共有者全員(所在等判明者全員)が共同して申請することにより、本制度を利用できることを広報してほしい。

・本意見照会の対象外ではありますが、本制度を国民に皆様に広く理解・活用していただけるよう、所在等不明共有者の持分取得制度を併せて利用できることも含め、効果的な周知・広報の対応について、引き続き検討してまいります。

80    

・相続放棄の方法がある以上、負担金を高くしたり、要件を厳しくしても意味がなく、かえって長期間にわたり不動産の効率的な利用を阻害したり、登記懈怠や事実上の所有権放棄の事例を生み出すおそれがある。不動産の国庫帰属へのハードルを低くしつつ、国庫に帰属した不動産に関する情報を公開し、それら不動産を集約して再開発することについて民間企業が提案、参画できる制度をつくることにより、新規ビジネスの創設や土地の効率利用を促すことができる。

・法律の規定についての御意見であり、本意見照会の対象外ではありますが、今後の運用の参考とさせていただきます。

81    

・申請された物件を民間の希望者が取得できるよう情報公開の仕組みを整備するべきである。

・本意見照会の対象外ではありますが、今後の運用の検討に当たって参考とさせていただきます。

民事信託契約の公証実務上の留意点

1 信託契約公正証書はどのようにして作られるか

・嘱託人または士業者からの依頼

・・・私人(個人又は会社その他の法人)で、公証人に公正証書作成をお願いする人。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji30.html

・まず信託契約書案を送信

PDFではなく、Wordか一太郎

・・・メールにファイル添付が前提。修正できるから。

・事前準備資料について

 この段階では写し(できればPDF)をお送りいただければよく、原本を送る必要なし。委託者・受託者の本人確認資料(公証人法28条2項)

・・・JPG、JPEG、PNG形式のファイルでも、私が提出する公証センター(公証人役場)では受け付けてくれます。

公証人法(明治四十一年法律第五十三号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=141AC0000000053

第二十八条 公証人証書ヲ作成スルニハ嘱託人ノ氏名ヲ知リ且之ト面識アルコトヲ要ス

2 公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス

3、4略

・発行後3か月以内の印鑑登録証明書、または顔写真付きの公的身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等)

・・・印鑑証明書について、最初に提出して公正証書を作成するまで3か月以上かかる場合もあるので、ここでは信託契約書案の提出時に3か月以内であることを想定しているものだと思われます。

・マイナンバーカードの裏側は送らない

・信託財産を特定する資料

不動産登記全部事項証明書など

・・・株式の場合、法人の履歴事項証明書など。

・信託財産の価格を裏付ける資料

不動産の場合は、固定資産税評価証明書または直近の固定資産税納付通知書

・代理人で作成する場合は稀

コロナで怖い、は不可能。

代理人についての本人確認資料

嘱託人本人の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内)

携帯電話で本人確認

・・・代理人による作成は、令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件の後は不可能だと考えていたので意外でした。信託契約書案の段階で、事前の意思能力確認をビデオ通話(zoomなど)で行う公証センター(公証人役場)はあります。

・嘱託人、関係者の職業情報を提供(公証人法36条2号)

第三十六条 公証人ノ作成スル証書ニハ其ノ本旨ノ外左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス

一 証書ノ番号

二 嘱託人ノ住所、職業、氏名及年齢若法人ナルトキハ其ノ名称及事務所

・ドラフトについての検討・修正について、よくある民事信託条項

目的条項と信託事務の矛盾

  目的条項において単に信託事務を羅列

・・・信託事務の詳細がどのようなものか分かりませんが、私も円滑な財産の承継、受益者の安定した生活、など具体的に記載していません。

後継ぎ遺贈型受益者連続信託(信託法91条)で、「当初受益者が死亡したときは、第二次受益者がその受益権を承継する」・・・消滅する

・あるペット信託のドラフト例

目的条項の記載

信託契約に死後事務委任契約が混在

ペットが受益者

 受益債権の構成:信託法2条6項「信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権」

・・・死後事務委任契約は別で作成。

・作成日程の調整

老人ホーム等への出張の場合、出張について(公証人法18条2項)

原則:公証役場で職務を行う

例外:事件の性質がこれを許さざる場合(健康上の理由で役場に来所できない等)

法令に別段の定め(遺言につき、公証人法57条)ある場合

公証人法17条

公証人は、所属する法務局の管轄区域内でのみ職務を行うことができる。

・・・沖縄から東京に来ても良い。

・手数料の算定・お知らせ

 主に信託財産の価額を基礎として算定する(公証人手数料令9条)→事前に価額の資料をお出しいただく

 公証人手数料令25条(枚数加算)

 書記(公証人法24条1項)による検算

 書記による案文の最終チェック・印刷(原本と謄本の準備)

作成当日

・当日の持ち物

 事前提出資料との関係

 証明書としての資料(本人確認資料)、当日原本

 案文の正確性チェックのための資料(登記現在事項証明書、車検証等)

 手数料算定のための資料(固定資産税納付通知書等)

  もし代理人によって作成する場合には、代理人の運転免許証等の確認資料、委任状、本人の印鑑登録証明書の各原本

  上記のほか、印鑑(公証人法39条3項)

 本人確認を印鑑登録証明書で行う場合は実印

 それ以外は認め印で可(スタンプ印は不可)

外国人の場合は印鑑不要

・・・日本に住所がある場合で印鑑証明書不要(其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法として、運転免許証で本人確認)、認印で公正証書作成が可能なことは初めて知りました。

・当日の流れ

本人確認

運転免許証等:コピーを取って返却

印鑑登録証明書:原本を提出、公証役場で綴って保存

原本還付について

・・・印鑑証明書について、事前申出すれば原本還付出来るとのことでしたが、根拠が分かりませんでした。

公正証書の読み上げ

高齢の方への確認のポイント

 署名・捺印

自署ができない場合には事前にお知らせいただく→公証人による代署(公証人法39条4項)。公正証書の当事者欄(本旨外要件)の書き方も異なる。

・・・代筆でも可能が原則

第三十九条 公証人ハ其ノ作成シタル証書ヲ列席者ニ読聞カセ又ハ閲覧セシメ嘱託人又ハ其ノ代理人ノ承認ヲ得且其ノ旨ヲ証書ニ記載スルコトヲ要ス

2、3省略

4 列席者ニシテ署名スルコト能ハサル者アルトキハ其ノ旨ヲ証書ニ記載シ公証人之ニ捺印スルコトヲ要ス

・謄本又は正本の交付

・手数料のお支払

・信託契約公正証書における特有の留意点

信託口口座との関係で、最初のドラフトの段階で、銀行(証券会社)と十分協議

後継受託者の定め

2 信託契約公正証書の構成

 登簿番号、日付、表題、「本公証人は、当事者の嘱託により、次の法律行為に関する当事者の陳述の趣旨を録取して、この証書を作成する。」

・本旨

 頭書

 条項

 信託の目的、信託財産、受託者(受託者の任務終了事由や後継受託者の定めを含む)、帳簿の作成を含む受託者の信託事務や義務(分別義務や善管注意義務など)、費用の負担や受託者の報酬、受益者(第二次受益者以降も含む)、受益権の内容、信託の終了事由と清算事務、信託終了後の財産の帰属(帰属権利者の定め等)

・本旨外要件

委託者及び受託者の住所、氏名、職業及び生年月日

・当事者及び公証人の署名

・公正証書のデジタル化について

 規制改革推進会議の令和4年5月27日答申「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化

・・・令和7年度上期の施行を目指す。公正証書の作成手続がデジタル化された場合の想定。公証センター(公証人役場)に、行くことなく公正証書を作成。それが良いかは分かりません。不動産登記申請における本人確認と比較(不動産登記法23条、24条、不動産登記規則72条。)。公正証書謄本は、公証人が電子署名を行いメールなどで受け取り、USBメモリなどに保存。銀行など提出先が紙での提出を求める場合は、印刷して提出。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/meeting.html#kaigi2

民事信託支援業務

・相談を受ける際の留意点

依頼者の意思確認・・・信託契約の締結に関する業務を受任した場合の依頼者。

  依頼者は委託者。民事信託に関する相談は、依頼者は委託者の推定相続人(多くの場合は,受託者兼帰属権利者)から受けることが多い背景。

 依頼者は委託者及び受託者と考えた場合の問題点・・・受託者も依頼者と考える場合には,受託者との間でも委任契約を締結しなければならず,受託者からも報酬を受領することになるか?・・・民法648条。

 遺言の一種である遺言による信託の場合には、受託者兼推定相続人から依頼を受けることがないことと対比可能か?・・・依頼は受けないが、受託者就任の可否は遺言による信託の場合でも設定時に聴く。聴かない場合があるのは遺言と同じ。

 受託者から依頼を受けて信託を設定して、受託者を監督する立場(信託監督人や受益者代理人)に就任することは、職務執行の公正を疑わせることになり、利益相反行為となるか?・・・外観上、職務執行の公正を保つのは難しいように思えます。

 委託者から依頼を受けた場合は良いのか?・・・民事信託に関する相談は、依頼者は委託者の推定相続人(多くの場合は,受託者兼帰属権利者)から受けることが多い背景から考えると、当然に可能とすることは難しいと感じます。例えば裁量型信託(受託者の裁量が広く認められている場合)について、信託監督人や受益者代理人の権限が弱い場合。個別具体的な判断になると感じます。

具体的な対応

 受託者の希望に応じて、委託者と受益者の合意による受託者の解任権(信託法58条1項)や委託者と受益者の合意による信託の終了権(信託法164条1項)を制限すべきではない。ただし,委託者との代理人として、受託者との間で、受託者の義務の程度や信託事務の内容を協議することは問題ないか?

・・・受託者の解任権を制限しない場合、当初委託者兼受益者は、(理由を問わず、1人の判断で)いつでも、その合意により、受託者を解任することができるので受託者は安心して職務を行うことが出来なくなる可能性があり、案件による。もし制限しない場合、受託者への損害賠償規定を詳しく定める必要があると考えます。委託者との代理人、というのはどのような地位で職務を指しているのか、分かりませんでした。

依頼者の意思確認の方法

  委託者と面談し、委託者の意思能力及び信託設定意思を確認する。予防措置として、委託者が親族等から不当な影響を受けたと疑われるような状況を排除するために配慮する。委託者が親族に伴われて相談に来た時には、親族の同席なしに個別に意思確認をする機会を設けることなどを工夫する。

民事信託以外の選択肢(併用も含む)の検討

・どのような心配事があるか。解決したい課題は何か。

・相談者の判断能力に問題はないか→問題があるケースでは法定後見の利用を検討。

・財産管理の問題か。財産承継の問題か。 財産管理は任意後見、民事信託。財産承継は遺言、民事信託。

・身上保護の必要性はあるか。 必要性がない場合は民事信託可。必要性がある場合は、家族の支援を受けられるか検討

・・・身上監護の必要性がない場合、というのがどのような場合なのか分かりませんでした。

家族の支援を受けられるか。

受けられる場合は民事信託可。受けられない場合は、任意後見。・・・受けられない場合は、任意後見受任者には、専門職が就任することを想定しているのかなと思いました。

信託を予定する財産に農地、年金受給権、地主が譲渡承諾をしない借地権

などがあるか。

ない場合は民事信託可。ある場合は任意後見。

・・・年金受給権がないという方のみが民事信託可とすると、ほとんど使われない制度になるのかなと思います。

・財産の積極的活用を望むか。

望む場合は民事信託。望まない場合は任意後見。

・・・任意後見でも、あらかじめ活用方法が決まっている場合は代理権目録に記録することにより、目的を達成することも可能なのかなと感じます。積極的活用、の個別具体的な状況によると思いました。

・借入れを予定しているか。

予定している場合は民事信託。予定していない場合は。任意後見。

・・・借入れについては金融機関の裁量に拠るところが大きいので、はっきり分かりませんが、任意後見でも代理権目録に記録されている場合、借入れは出来ないのか、任意後見監督人の監督があるので、金融機関も民事信託より貸しやすい、ということはないのか、気になりました。

裁判所の監督を希望するか。

希望する場合は任意後見。希望しない場合は民事信託。

途中で利用を止める希望はあるか。

ある場合は民事信託。ない場合は任意後見。

数世代に渡る財産の承継を希望するか。

希望する場合は民事信託。希望しない場合は任意後見。

・・・希望しない場合は、遺言になるのかなと思います。

依頼者らに説明すべき事項

・依頼者(委託者)に説明すべき事項

法律効果

 信託を設定することにより、いかなる財産が対象となるのか、その財産がいかなる目的で、誰によって、どのように管理又は処分されるのか、依頼者の推定相続人にどのように承継されるのかなど、いかなる法律効果が生じるのかについて説明。

・受託者に説明すべき事項

受託者の義務,信託事務

 受益者に対し,受託者は各種の義務(善管注意義務,忠実義務など)を負っていること,受託者として行わなければならない信託事務の内容を説明。

・信託契約書等の作成手数料

適正金額の手数料

 依頼者の無知に付け込み,過大な手数料を請求しない。非定型の契約書又は遺言の作成に準じるという基準。信託財産に属する財産の価額に対して〇%をかけていく。公正証書にする場合に加算。

・信託契約書作成の際の留意点

信託契約の条項検討

信託に関係する諸法令

 信託法、信託法施行令、信託法施行規則、信託計算規則、信託業法のほか民法,不動産登記法に加えて税法(所得税法、相続税法、財産評価基本通達など)の枠組みの理解。

東京地判平成30年10月23日(金融法務事情2122号85頁)

 委託者兼受益者である親と受託者である子との間の信託契約について、委託者兼受益者によって、詐欺取消、錯誤無効、債務不履行解除、信託目的の不達成又は委託者兼受益者の合意による信託終了の主張がなされたが、いずれも認められなかった事例。

 信託条項の、受益者は、受託者との合意により、本件信託の内容を変更し、若しくは本件信託を一部解除し、又は本件信託を終了することができる。の解釈(信託法164条3項の「別段の定め」に該当し,同条1項に優先するか。)。

信託条項間において矛盾のあるもの。

受益者の死亡により受益権が消滅すると規定し、その受益権を遺産分割の対象としているケースなど。

・文例の利用

 信託契約書を作成する際に、文例の利用は有用。参考資料として用いることは問題ない。事案の特徴を理解し文例を事案に当てはめる。

・遺留分への配慮

遺留分の規定適用

民法の遺留分に関する規定は強行規定であり,信託契約にも適用される。

・遺留分に配慮する必要性

 遺留分を侵害する内容の信託契約締結した場合、遺留分侵害額請求の対象や効果が確定しておらず、仮に裁判なった場合は解決まで相当の時間が掛かること予想される。・・・信託設定時だけではなく、信託期中、信託終了時に渡って遺留分を侵害しないことが必要だと感じます。

東京地判平成30 年 9月 12 日(金融法務事情2104 号 78 頁)

推定法相続人である兄弟間で信託設定の効力が争われ、一部の信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであるとされ、公序良俗に反して無効であるとされた事例。

継続的支援

不祥事を許容するなら不要。許容しないなら必要。

・・・バランスの問題ではないかと思います。ゼロか1かで考えると、民事信託は一切利用することは出来ない、という結論に流れやすいと感じます。

信託監督人は使いやすい?・・・私は利用したことがないので、分かりませんでした。

信託監督人は、受託者と身分関係がある者は不適切?・・・個別具体的な事案によると思います。

依頼者があえて遺留分を侵害する内容の信託契約を締結することを希望する場合には,希望を実現することはあり得る。

任意後見契約の代理権目録に、受益者に関する項目を記録。

・コーディネーターとしての役割

・信託契約の締結に関与する専門職の役割

 信託契約を締結する際には,公証人、金融機関、司法書士及び税理士などとの間で、コーディネーターとしての役割を果たすことが求められる。

・・・コーディネートとコンサルティングと支援業務に、違いがあるのか、分かりませんでした。

・信託契約書作成の手順

 公証人との打ち合わせ

 信託口口座開設予定の金融機関との打ち合わせ

東京地判令和3年9月17日(家庭の法と裁判35号135頁)

 専門職が信託契約書の案文の作成等を受任したが、作成した信託契約書では信託口口座の開設や民事信託融資を受けられなかったことから、依頼者(委託者)が当該専門職を訴えた事例。当該専門職には,情報提供義務及びリスク説明義務違反があるとして不法行為責任が認められた。事後的に評価すると,専門職の説明提供義務及びリスク説明義務違反ということになるが、重要なことは信託契約書作成の手順を守ること。

司法書士との打ち合わせ

  事前に、信託契約書のドラフトを送り,権利移転の登記及び信託の登記が可能か確認する。登録免許税、司法書士の手数料、本人確認等に必要な資料の確認を行う。

税理士との打合せ

  必要に応じて,信託税制に詳しい税理士に相談する。

公正証書の作成

 委託者及び受託者と共に公証役場へ赴き,公正証書の作成をサポートする。

・信託契約書の作成後の留意点

 信託口口座の開設

  受託者が信託財産に属する金銭を預金で管理する場合には,信託口口座を開設して管理するようにする(信託法34条1項2号ロに基づく「その計算を明らかにする方法」を,民事信託に適した分別管理方法に変更する)。受託者と共に金融機関に出向き,信託口口座の開設をサポートする。・・・信託契約書案の段階で関わることが必要だと思います。

・信託財産の対抗要件の具備等

財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分

 信託を設定するにあたり、委託者は、受託者に対し、財産の譲渡、担保権の設 定その他の財産の処分を行う(信託法3条。)。

・譲渡の対抗要件

  財産の譲渡を第三者に対抗するには,民法等に定められた一般的な物権変動の対抗要件を具備する必要がある(民法177条等。)。

・信託の対抗要件

  登記又は登録しなければ権利の得喪を第三者に対抗することができない財産 については,財産の譲渡の対抗要件に加え。譲渡された財産が信託財産に属することを公示するための対抗要件を具備する必要がある(信託法14条。)。不発行株式などは、登記又は登録しなければ権利の得喪を第三者に対抗することができない財産ではないが、信託を対抗するためには一定の公示を要求することが個別の法律で定められている(会社法154条の2第。)。

  その他の財産は,信託財産であることを証明できれば,当該財産が信託財産に属する財産であることを第三者に対抗できる。

・分別管理義務との関係

 会社法154の2

  株式については、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができない。

 社債、株式等の振替に関する法律142条

 振替株式については、第129条第3項第5号の規定により当該振替株式が信託財産に属する旨を振替口座簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。

 受託者は,信託財産に属する財産と固有財産とを分別して管理する義務を負っている(信託法34条1項本文)。そして,上記信託の登記または登録をすることができる財産については,分別管理の方法として信託の登記または登録によらなければならない(同項1号)。

いわゆる「登記留保」の問題

 登記又は登録しなければ権利の得喪を第三者に対抗することができない財産 については,信託法14条の信託の登記又は登録をする義務を免除することができない(信託法14条2項)。

 信託運営中の留意点

  専門職による継続的な関与の必要性

・基本的な考え方

  継続的な財産管理を行う場合,第三者による適切な監督が行わなければ、一定数の不祥事が発生する。 このような一定数不祥事発生を許容するかどうかの価値判断。

・民事信託では委託者及び受益者による受託者の監督は期待できない

 信託法では,受益者又は委託者が監督することを予定している。しかし、民事信託においては委託者や受益者は受託者の親族であることが一般的であり、また委託者や受益は高齢であることが多く、委託者や受益は高齢であることが多く、受託者に対する監督を期待できない。

・・・私は受託者を監督、という面と受益者が自身の権利を守ること両面を予定している、と読んでいます。

・民事信託で活用すべき監督機関

  信託法は,受託者に対する監督機関として,信託監督人(信託法131条以下)又は受益者代理人(信託法138 条以下)を用意している。 民事信託と任意後見を併用する場合には,任意後見人による監督もあり得る(ただし、任意後見人と受託者が別である場合に限る。)。 併用する際には, 任意後見契約の代理権目録記載事項には注意を要する。

・民事信託における監督機関の適任者

  民法850条は「後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹監督となることができない。」、任意後見法5条は、「任意後見受者又人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は任意後見監督人となるこができない。」と後見監督人及び任意後見監督人の欠格事由を定めている。

 民事信託でも,受託者と一定の身分関係がある者による実効性ある監督は期待できないのではないか。監督業務及び法律に精通している専門職が受託者の監督に当たることが望ましい。・・・個別具体的な案件ごとに決めることが望ましいのではないかと思います。

・信託監督人及び受益者代理人への就任

 受託者に対する監督の考え方

 信託契約の締結に関する業務を受任した場合の依頼者は委託者であることを前提に、信託監督人又は受益者代理人に就任した場合には、委託者(兼受益者)が望んでいる信託を適切に運営し、委託者(兼受益者)の利益を保護するために、受託者を監督すると考える。

・信託法への精通と信託契約に対する正しい理解

 受託者が信託法を遵守し、信託契約に従い適切に信託事務処理を行うことが必要であり、その受託者を監督する専門職も、信託法に精通し、信託契約の内容及び趣旨を十分に理解しておく必要がある。

・・・精通、というのがどの程度なのか分かりませんでしたが、信託の目的が達成できるくらい、と理解して良いのかなと思いました。

・民事信託における監督実務

 信託監督人は,信託契約に別段の定めがある場合を除き,受託者の監督のための権利(信託法92条各号(17号,18号,21号及び23号を除く。)に掲げる権利)を行使する権限を有する(信託法132条1項)。

 受益者代理人は,別段の定めがある場合を除き,受益者が有する信託法上の一切の権利(信託法42条に定める責任の免除に係るものを除く。)を行使する権限を有する(信託法139条1項)。善良な管理者の注意をもって,受益者のために誠実かつ公平に与えられた権限を行使しなければならない(信託法133条,140条)。民事信託実務において、受託者に対する監督方法に関して定まった考え方はないが、財産管理で共通する後見実務を参考に、適切な監督を実践していくことになる。・信託の変更

 信託の変更に関与した場合には、その信託の変更が信託法の規定や別段の定めを規定している信託契約の条項に合致しているかを確認する。

・信託税務等

税務に関する基本的な知識の習得

・依頼者(委託者)に説明すべき事項

法律効果

信託を設定することにより,いかなる財産が対象となるのか,その財産がいかなる目的で,誰によって,どのように管理又は処分されるのか,依頼者の推定相続人にどのように承継されるのかなど,いかなる法律効果が生じるのかについて説明する。

・届出や申告等への助言

 信託存続中の信託収益に関する所得税の申告や信託の終了時における相続税の申告など,受託者や受益者が適切に届出や申告等が行えるよう、助言することが望ましい。

・マネー・ロンダリング対策

FATF第4次対日相互審査報告書概要

 「国内外の信託、特に会社よって設立されていない信託の透明性に関しては、課題がある。

FATF第4次対日相互審査報告書を受けた行動計画

 信託会社に設定・管理されていない「民事信託」及び外国信託に関する実質的支配者情報を利用可能とし、その正確性を確保するための方策を検討し、実施する(時期:令和4年秋)。

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