横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(8)」

登記情報[1]の記事からです。

現在の登記実務では、信託行為中に受託者の権限として明確に定められる必要があると考えるのが一般的です。信託条項に反する登記の申請は、受理されない(昭和43年4月12日民事甲第664号民事局長回答)とする先例があるように、登記官としては、かかる登記が信託目的等に違反するものではないことを審査した上で後続の登記の申請の受否を決することになります。

 「現在の登記実務では、信託行為中に受託者の権限として明確に定められる必要があると考えるのが一般的です。」という部分に関して、文言をそのまま受け取ると、信託条項中のその他の事項、信託財産の管理方法に登記の目的を全て(信託時の所有権移転及び信託などを除きます。)記録申請し、登記の原因及び日付となり得る事実に関しては、法令上の任意規定を全て記録申請しなければならない、となってしまうように考えられます。また、先例の考え方を採ると信託条項に反する登記申請が受理されないのであれば、信託条項には保存・管理・処分と記録申請し、その他に何も記録申請しない方が良い、とも考えることができます。前半の文と後半の先例がどのように繋がっているのか、私には分かりませんでした。

問2 信託契約書に信託の終了事由として「1、信託目的に反しないことが明らかである場合で、受託者及び受益者が合意したとき」と記載されているにもかかわらず、信託目録には、「1、受託者及び受益者が合意したとき」と記録され、「信託目的に反しないことが明らかである場合で、」の文言が胃婁している場合に、これを更生することは認められると考えますがいかがでしょうか(照会者B)―中略―登記の更生が認められれるものと考えられます。―中略―登記申請人である受託者の作成に係る報告的な登記原因証明情報で十分と考えます。

 1つ、登記の更生が認められる、という明確な考え方を示していただいているので、実務を行う側からするとやりやすくなります。ただ、報告的な登記原因証明情報で足りるのか、私には分かりませんでした。

問3信託目録に記録すべき「その他の信託の条項」(不動産登記法97条1項11号)は、契約書等に記載された文言をそのまま記録しなければならないのでしょうか。(照会者C)―略―照会者の具体的な照会内容は明らかではありませんが、契約書等の条項の趣旨を逸脱しない範囲でのアレンジは、当然に必要とされるものと考えます。近時、信託契約の内容を延々と信託目録に転記する傾向にありますが、その要因として、信託目録に記録すべき情報が体系的に整理されておらず、公示のルールが存在していないことが考えられます。

 「契約書等の条項の趣旨を逸脱しない範囲」と書いてしまうと、その基準を作る必要が出てきてしまうのかなと感じ、かえって煩雑になってしまわないか気になります。

信託契約書を法令文のように記載しておけば、信託目録に記録申請するときにも、契約書そのままの文言を利用することが出来ます。「信託目録に記録すべき情報が体系的に整理されておらず、公示のルールが存在していないことが考えられます。」については、同意です。不動産登記法、規則、準則などで定めだ法が良いのではないかと思います。


[1] 711号 2021.2きんざいP14~

民事信託・家族信託の共同受任など

・共同受任:受任した際の報酬額の30%~70% 

お客様との打合せに最低1回は参加します。(交通費は別途必要)

参考となる信託契約書、信託目録を提供します。(信託契約書等は作成していただきます)

Zoom等を用いて、契約書の内容や信託目録を一条ずつ読み合わせをします。

依頼者との業務委任契約書に当法人も押印しますので、何かあったときは当法人も責任を持って対応します。

契約書のチェック:1契約書につき10万円~

ご自分で作成された契約書を、こちらもチェックします。

Zoom等を用いて、契約書の内容や信託目録を一条ずつ読み合わせをします。

依頼者との業務委任契約書には、当法人は押印しません。

・業務サポート

家族信託設計コンサルティング・・・共同受任(各々の司法書士が依頼者に請求)

バックアップ・・・受任司法書士に対して、各案件ごとに完全なる≪スポット報酬≫とするか、受任専門職との顧問契約に基づき≪月額顧問料+各案件に関する付加報酬≫

リーガルチェック・・・受任した専門職との顧問契約に基づく月額顧問料が基本

・費用(報酬)基準を出していない事務所・・・ホームページがあり、民事信託、家族信託を専門としているけれど費用(報酬基準)がないところに関しては、何か考えがあってのことなのかなと感じます。

 例えば、既に紹介をしてくれる方が複数いるので、費用を掲載する必要がない。民事信託は複雑・高度なので見積書は依頼者毎にしか出せない。財産の内容や希望によって変わってきますので、 相談後に見積書を作成。など。以前まで報酬表を載せていたのに、今回久し振りに覗いてみると掲載されていないという司法書士法人もありました。

・費用(報酬)シミュレーションがホームページに付いている事務所があって、利用者にとっては便利な感じがしました。

 司法書士が「リーガルチェック」という言葉を利用する場合、当然に司法書士法と判例の範囲内と考えて良いのか、それとも何か注釈を付けないといけないのか、ホームページに載せる場合には考える必要があるんじゃないかなと感じます。

・最近印象的だったのは、司法書士その他の士業に教えることで対価を得ている民事信託・家族信託の団体が、令和2年度の司法書士合格者に対してSNSで積極的にコミュニケーションを取っていることです。

船橋幹男「AI社会における司法書士業務はどうあるべきか」

市民と法[1]の記事からです。

AI(人工知能を実装した機械)を操作する単なるオペレーターとしてなら一定の報酬は得られるかもしれない。

消極的な書き方に感じられましたが、有力な事業になり得ると思います。AIを操作するのは、簡単ではないと考えられるからです。建設業のロボット建機を適切にオペレーションするには、相応の知識と技術が求められるはずです。人の命に直接関わる場合があるため、緊張感も現在業務と同じかそれ以上になる可能性もあると思います。

土木研究所 技術推進本部 岩見吉輝「建設現場が無人化する日に向けて」

 


AI時代にも司法書士が法律専門職として存続するか否かの判定の一つとして、テクノロジーによる代替行為が、依頼された業務の本質部分にまで及ぶのか、それとも業務の本質ではない部分での代替、言い換えれば本質的業務を効率化するためのものにすぎないのか、という見方もできるのではないだろうか。

おそらくそうだと思います。私には、各業務の何が本質部分なのか、分かりません。登記情報を取得することや、メールに対して適切な対応をすること、サムポローニアの使い方を覚えることなど、ほとんど全て本質部分に入ると思っています。私の認識がずれているのかもしれません。

たとえば、相続登記の多くは遺産分割など相続人間の法律行為を前提とするが、相続人の単独申請なので争いのない単純なケースでは、本人申請が増加するものと推測される。

本人申請のシステムを、日本司法書士会連合会で自前で作ってはどうなんだろう、というのが私の認識です。本職のエンジニアと法務局OBで司法書士登録をしている方の力も借りて取り組めば、出来ないことはないと思います。

既に大きめの事務所では開発が始まっているので、下のシステムが法務省などに認定されると、他の司法書士への影響は少なくないと思います。

 

これに対し、司法書士は職域とその業務内容においても法律で厳格に制限されていて、自ら業務開発できる分野にも限界がある。

現在の職域と業務内容の中でも、自ら業務開発できる分野(計算機分野を含めて)で限界まではやり切れていないんじゃないか、というのが私の認識です。

[1] 126号、2020年12月、P3~

横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(6)」

登記情報[1]の記事からです。

筆者は、委託者の変更の箇所でも述べたとおり、登記原因証明情報を提供すれば足り、印鑑証明書を提供する必要はないと考えています。(根拠として「弁護士法第23条の2に基づく照会(質権の実行による信託受益権の移転に伴う受益者の変更の登記手続)について」平22.11.24民二第2949号民事第二課長回答)。

登記申請を行うに際して、印鑑証明書の添付は原則として不要だと思います。根拠としている通達は、質権の実行による信託受益権の移転であり、旧受益者から印鑑証明書の提供を受けることが容易ではないこと、登記原因証明情報が報告式ではなく、質権設定契約書及び質権実行通知書などを提供すること(質権設定契約締結時、既に実印の押印及び印鑑証明書が提供されている可能性が高く、質権実行通知書は、旧受益者に到達していることまで証明している可能性が高い)ことから、全ての受益者変更の登記申請には当てはまらないと考えます。

本記事が実務上、どこまでの効力を持つのか分かりませんが、受託者が登記申請する前の実務として、旧受託者の実印の押印及び印鑑証明書を求めて受益者変更の信憑性を確認することはあっても良いと考えます。

しかし、筆者は、信託受益権の売買とそれに伴う担保権の得喪は、不動産登記制度の対象外の事柄であり、これを「受益者の変更」の登記の中で実現させようとすることには、それが別制度であるがゆえに、根本的に無理があると考えており、「受益者の変更」の登記の中に新たなニーズを盛り込もうとする動きを危惧しています。

受益権に設定された質権の抹消まで法務局が審査することは要求されていないし、登記申請の代理を行う専門職も期待していないと思います。

ただ、質権者、受託者にとっては必要な書類を集めて確認することで、安心感を得るという意味では必要な場面もあるのかなと感じます。質権実行と抹消に関しては、別途公証センターで何らかの手続きを行うような説明も必要になってくるのかなと感じます。

報告的な内容の登記原因証明情報であれば、例えば、登記申請人である受託者と、新たな受益者となる乙が共同で登記原因証明情報を作成すれば十分であり、必ずしも甲が作成人となることまでは要しないと考えます。なお、本件の登記原因は、「年月日質権実行」が相当と考えます。

私も上の記載に賛成です。質権実行による受益者変更登記はそうなると思うのですが、売買契約による場合、例えば5年前に受益権売買契約を行ったが、旧受益者は契約した覚えはない、受益権の買主が受益権売買契約書を紛失している場合、対価のやり取りが現金だった場合、旧受益者の関与なしに、どのような報告式の登記原因証明情報を作成するのか気になります。


[1] 709号2020年12月号きんざいP40~。

「民事信託における指図権~理論と実務」

「民事信託における指図権~理論と実務」

(一社)民事信託推進センター実務入門講座

民亊信託士 弁護士 青井芳夫

「指図権を民事信託の中でどう位置付けるか」

・・・私は受託者の権利を一部制限すると位置付けと捉えています。

「指図権者、受託者がどのような責任を負うのか」

・・・私は、日本の法令、信託行為、具体的事実の順で違反があった場合に違反の程度に応じて責任を負うのだと理解しています。

アメリカ

松元暢子「2017年指図型信託に関する統一州法―Uniform Directed Trust Act」

「指図権者は信認義務を負うか。」

信認義務って何だろう、と思いました。

参考

今川嘉文「継続的取引関係と信認義務」

 

「信認義務とは、「他人の財産の管理運用を委託された受託者が、委任者または受益者の最大利益を図るために、合理的かつ思慮ある行動をとらなければならない義務」

のようです。善管注意義務、忠実義務(信託法29条2項、30条)の他に、受託者の義務等(信託法29条から39まで)全般を負う場合があるんじゃないかなと思います(信託業法65条、66条、信託業法施行規則68条)。

「信託行為の定めにより、信託財産の分配に関する指図権を有する者の義務を完全に免除することも可能と解すべき」

・・・信託行為で完全に免除することを定めることは可能だと思いますが、免除されるかどうかは、信託期中の指図の内容によるのではないかと考えます。

「指図権を付与された指図権者の注意義務は、善管注意義務、一般的注意義務を負うが、公平義務は負わないと解される」

・・・指図権の範囲内で公平義務を負うのが原則だと思うのですが、何故負わないと解されるのか分かりませんでした。

「指図に従った結果、信託財産に損害が生じた場合に受託者は免責されるか否か」

・・・信託法35条は受託者が委託し、指図権者は信託行為で定めるか、信託の変更を行い指図権者の就任承諾を得て就任するものだと思います。私は、信託業法66条、信託業法施行規則68条について指図権者が違反していない場合は受託者が責任を負う、という理解です。

「指図者の指示に従った場合の受託者の免責条項を置くか否か」

・・・実際に免責されるかは措いて、免責条項を置くか禁止条項を置くかだと思いました。

「指図者の義務・義務違反の効果(利益相反的な行為にかかる規律を含む)」

・・・アメリカ法の議論も参考になると思いますが、信託法31条、信託業法施行規則68条に準じた解釈が妥当なのかなと感じました。

「レジュメの複製、転用、引用、第三者への提供及び発表内容の録音、録画、掲載等を固く禁じます。」

とありますが、引用を禁じることは出来ないのではないかと思います。

文化庁HP

 

大学共同利用機関法人情報・システム研究機構

国立情報学研究所先端ソフトウェア工学・国際研究センター

「著作権法ガイドライン2009/11/16 ver.1.1」

 

h

指図権について

(一社)民事信託推進センター実務入門講座

今回からzoom研修のチャットが無効に設定されていました。何か目的があるのでしょうか。

「中小企業の事業承継支援における民事信託の活用―指図権付・自社株信託契約を活用した事業承継対策とオーナー株主の認知症対策の活用―」

民事信託士・事業承継マネージャー 栃木県事業引継ぎ支援センター所属

司法書士 川俣洋一

 種類株式、属人的株式、特例事業承継税制との比較から、自社株信託を選んだ、というケースでした。他の制度と比べた場合の自益型自社株信託契約の特徴は、柔軟な設計が可能である(指図権の設定の有無・信託の終了など。)こと、とありました。解約による信託の終了を最初から視野に入れている場合、私なら信託設定はしないかなと思います。

 「自益型自社株信託契約のメリットとして、手続が簡単」、ということが挙げられていましたが、私は他の手続きと同じという感覚です。他のメリットとして、「指図権の内容が会社の登記に記録されない、信託は解約が可能」、と挙げられていますが、私はメリットというより特徴だと理解しました。

 「「合意終了」により信託契約を終了させ、父の生存中に自社株式の株価評価増減が整った段階で、後継者への生前贈与・売却、第三者への株式売却が可能となるようにしておく」、の部分は、何故このような設計を行う必要があるのか分かりませんでした。

 「自己信託は認知症対策にならない」、とありましたが、第2次受託者を定めて認知症対策を行うことは可能じゃないかなと感じました。

「自益信託後に信託契約を一部解約し、暦年贈与を段階的に実行することは可能か?」という疑問がありましたが、信託の変更要件、暦年贈与の要件を各々満たしている場合は可能だと考えました。

指図権の条項について

「相当の期間を定めて」とあるところは、具体的期間を入れた方が良いのではないかと感じました。

指図権の拒絶事由として、「本信託の目的に照らし著しく不当である場合」に関しては、判断が少し難しいなと思いました。ただ、他にどのような条項を入れたらいいのか、私には分かりませんでした。

「通常の取引と異なる条件で、かつ、当該条件での取引が同会社に損害を与えることとなるもの」の判断も長期的にみると変わる場合があるのかなと感じます。

「本信託の目的や同会社の状況に照らして不必要なもの」も株主によって変わるような気がします。「他人からの不当な制限または拘束を受けて行われることとなるもの」に関しては、長男、次男、コンサルタント、士業その他の色々な意見を聴いていいのか、聴いて良いとすればどこまで聴いて良いのか、それとも最後は自分で決めました、という署名みたいなものをもらって担保するんだろうか、などと考えてみましたが、良く分かりませんでした。

指図権の消滅について、「判断能力を欠く状況にあると診断書をもって専門的な医師の判断が示されたときは、」とありますが、これは法定後見申立ての際の診断書の基準なのか、それとも別の基準でやるのかなと感じました。

「成年後見制度は、議決権の代理行使が中小企業の経営において適切な判断に基づくものであることを期待しうるか否かは別問題」、ということでした。後継者がほぼ決まっているケースのようでしたので、後継者が任意後見人になるのであれば、任意後見制度の代理結目録を活用して事業承継を行える可能性もあるのかなと感じました。

「任意後見制度※「本人のための制度」のため自由に財産が動かず凍結する。」は誤りではないかと思います。任意後見人にある程度の裁量を持たせることも可能です(任意後見契約に関する法律2条。5条4項、任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令2条)。