受益権

民事信託契約書のうち、受益権を取り上げる。

1     受益権
1―1            条項例

信託給付の内容[1]

第○条(受益権)

 受託者は、信託財産の管理運用を行い、信託不動産から生ずる賃料その他の収益及び金融資産をもって、公租公課、保険料、修繕積立金その他の必要経費を支払い又は積み立て、その上で、受益者の意見を聴き、各受益者へ交付する月額の上限を半年ごとに定め、かかる上限の範囲内で受託者が相当と認める額の金銭を受益者へ交付する。

チェック方式

第○条(受益権)

  • 次のものは、元本とする。
    • 信託不動産。
    • 信託金銭。
    • 遺留分推定額。
    • 【修繕積立金、運転資金留保金・敷金・保証金等返還準備金の当初積立額及び繰入額・信託不動産の換価代金・信託不動産に係る保険金その他信託不動産の実質的価値代替物・信託財産責任負担債務の支払留保金】。
    • 上記各号に準ずる資産及び債務。
    • 次のものは、収益とする。
      • 信託元本から発生した利益。
      • □【賃料・             】
    • 元本又は収益のいずれか不明なものは,受託者がこれを判断する。
    • 受益者は、信託財産から経済的利益を受けることができる。
    • 【受益者氏名】は、【医療、入院、介護その他の福祉サービス利用に必要な費用の給付・生活費の給付・教育資金・信託不動産への居住[2]      】を受けることができる。
    • 受益者は、□【受託者・信託監督人】の書面による同意を得て、受益権の全部または一部を□【譲渡・質入れ・担保設定・その他の処分】することができる[3]。ただし、信託財産または受益権に金融機関による担保権が設定されているときは、あらかじめ当該金融機関の承認を受ける[4]
    • 受益者は□【法律で定められた扶養親族以外の親族へ譲渡する場合・遺留分請求があった場合】、受託者に通知のうえ受益権(受益債権は金銭給付を目的とするものに限る。)を分割、併合および消滅させることができる[5]
    • 受益権は、受益権の額1円につき1個とする[6]
    • 【                  】
1―2            解説

 1項、2項では受益権の元本及び収益を記載する[7]。元本と収益を分けるのは、会計を可能な限り明確にするためであり、本稿では複層化信託を想定していない。4項、5項では受益者が、主に信託金銭をどのような目的で利用する権利を持っているのかを記載する。

 6項は受益権の譲渡に関する規定である。受益権に対する質入れ、担保設定は金融機関以外を想定していない。譲渡は親族への贈与・売買または第3者への売買を想定している。受益権は、原則として譲渡することができる(信託法93条)。例外は、(1)受益権の性質が譲渡を許さないとき(2)信託行為に譲渡制限の定めがあるときである。(1)の例として、特別障害者扶養信託がある[8]。受益者が特定されており、これを譲渡することは出来ない。(2)の例として、「受益権を譲渡することはできない。」などの定めが信託契約書に記載されているときがある。なお、定めがあるのに譲渡した場合、譲受人をどこまで保護するかに関して、下に改正民法を示す。

【改正後】

(受益権の譲渡性)

第九十三条   受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2 前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。

2項は1項全体の例外規定となっている。受益権の譲渡を第三者へ対抗するには、(1)受益者が受託者に通知書を送る又は渡す(2)受益者が受託者の承諾書を得る(1)、(2)のいずれかを文書にし、公証人が付与する確定日付が必要となる。方法例として、通知書を送る場合、通知書を内容証明郵便にして送る。承諾書を得る場合、受託者の署名押印がある承諾書に確定日付を得る。

登記との関係では、受益権が譲渡されると受益者が変更となる。信託目録に受益者の住所と氏名が登記されている場合、変更登記が必要である(不動産登記法97条、103条)。

株式会社の株式譲渡と比較すると、「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を受けなければならない[9]」という譲渡制限の定めがある場合に承認を受けないで譲渡した場合の効果はどうなるのか。譲渡そのものは有効であるが、会社が承認するかは会社の自由であり、承認する場合は譲受人を株主として扱い株主名簿の書き換えを行わなければならない。譲渡を承認しない場合は、今まで通り譲渡人を株主として扱うか、会社が株式を買い取る(会社法140条)ことになる。譲受人が譲渡制限を過失なく知らなかった場合でも保護されないという面では、会社法の方が譲受人にとっては厳しい処置を採って、その分株式の買取りで対応するという規律である。

7項は、受益権の譲渡に関して具体的な場面を想定する。法律で定められた扶養親族以外の親族へ譲渡する場合とは、民法[10]又はその他の法律[11][12]で定められた扶養親族以外の親族への生活費・教育費である。遺留分請求があった場合とは、遺留分の請求を受けた者[13]が一括で支払うことを選択せずに分割で支払うことを想定する。遺留分請求については、対象となる者およびその効果について解釈が分かれているが、本稿では不当な請求でない限り、支払うことを前提とする。また受益権のうち金銭給付のみを取り出して譲渡することができるのかは出来ないという解釈もあり得るが、受益権を信託設定当初から何個かに分けていれば妨げられないと考える。

8項は、受益権の数についての定めである。受益権の数は定めない限り1個である。従って受益権の割合を定めた場合は共有となる。受益者間の公平及び計算の容易さから受益権の額1円につき1個とする。


[1] 堀鉄平ほか『相続対策イノベーション!家族信託に強い弁護士になる本』2017日本法令P184

[2] 受託者と一般の賃貸借契約を締結する場合は、収益とする。

[3] 信託法94条2項。改正民法467条、

[4] 不動産所有権について、伊藤眞ほか『不動産担保 下』2010金融財政事情研究会P131~。改正民法466条から468条まで。

[5] 信託法96条から98条まで。債権・動産担保について、伊藤眞ほか『債権・動産担保』2020金融財政事情研究会P78~85。株式会社の株式について会社法180条から182条の6まで。183条、184条。信託法99条。

[6] 村松秀樹他『概説新信託法』2008金融財政事情研究会P255。道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P351。

[7] 国土交通省「地方における不動産証券化市場活性化事業」サンプル契約書

[8] 新井誠監修『コンメンタール信託法』P300

[9] 法務省HP 2017年6月22日閲覧

[10] 民法第4編第7章877条から881条まで。

[11] 国税庁タックスアンサーNo.1180「所得税法上の扶養親族」、国税庁資産課税課情報第26号「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」について(情報)(平成25年12月)

[12] 健康保険法第3条第7項及び関連通達

[13] 遺留分減殺請求の対象者と効果については、道垣内弘人『条解信託法』2017弘文堂P473~P480

受益者

民事信託契約書のうち、受益者を取り上げる。

1     受益者

1―1            条項例

1―1―a     受益者及び受益権の条項例

第○条[1](受益者)本信託の当初受益者は、委託者Sとする。

2 上記委託者兼当初受益者Sが死亡したときは、当初受益者が有する受益権は消滅し、第二次受益者として下記A,B,及びTが下記の内容の新たな受益権を取得する。

(1)【住所】【氏名】【生年月日】【続柄】

 受益権の内容 本受益権取得に伴い受益者Aが負担する相続税額に相当する金銭の給付を受けること、及び残りの○分の○の割合の受益権

(2)【住所】【氏名】【生年月日】【続柄】

 受益権の内容 本受益権取得に伴い受益者Bが負担する相続税額に相当する金銭の給付を受けること、及び残りの○分の○の割合の受益権

(3)【住所】【氏名】【生年月日】【続柄】

 受益権の内容 本受益権取得に伴い受益者Tが負担する相続税額に相当する金銭の給付を受けること、及び残りの○分の○の割合の受益権

3 委託者Sの死亡前にAまたはBが死亡したときは、AまたはBが取得する受益権はTが取得する。

4 委託者Sの死亡前にTが死亡したときは、Tが取得する受益権はTの相続人である直系卑属が取得する。

5 第二次受益者AまたはBが死亡したときは、死亡した受益者が有する受益権は消滅し、Tが新たな受益権を取得する。ただし、Tが先に死亡している場合は、Tの相続人である直系卑属が取得する。

6 第二次受益者Tが死亡したときは、Tが有する受益権は消滅し、Tの相続人である直系卑属が新たな受益権を取得する。

1―1―b     チェック方式

第○条  (受益者)

□1      本信託の第1順位の受益者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

□2      受益者の死亡により受益権が消滅した場合、信託法91条の規定により受益権を原始取得する者として、次の者を指定する[2]

  第2順位

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

 □ 第3順位

  【住所】【氏名】【生年月日】

 □【住所】【氏名】【生年月日】

□3      次の順位の者が既に亡くなっていたときは、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。

□4      受益権を原始取得した者は、委託者から移転を受けた権利義務について同意することができる[3]

□5      受益者に指定された者または受益権を原始取得した者が、受益権を放棄した場合には、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。

□6      受益者に指定された者が、指定を知ったとき又は受託者が通知を発してから1年以内に受益権を放棄しない場合には、受益権を原始取得したとみなす[4]

□7      【委託者氏名】は、【委託者以外の受益者氏名】が受益権を取得することを認める。

1―2            解説

 チェック方式の条項について解説する。1項における第1順位の受益者は通常委託者となる。受益者を複数にする場合はチェックを入れる。割合については信託期中に変動するので記載しない。

 2項には、新たな受益者が受益権を取得するには信託法90条1項1号、91条の要件に従うことを記載する。信託法91条の読み方[5]として、(1)受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定めと、(2)受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めの2つがあるのか[6][7]考える。(2)はかっこ書きであり、(1)に含まれる[8]。よって信託法91条による定めは、1つである。(1)は受益者が死亡した際に、次の受益者はどのように受益権を取得するのかを定めている。(2)は、(1)の形態による受益権の取得が何回か続く場合も含む、消滅した受益権を新たな者が取得するまでに時間的間隔があるものも含む(消滅しない受益権を定めることは、期間制限のない信託を認めることになり許容されない。)、などの見解[9]がある。契約条項に定める際は、信託法90条1項1号により委託者の死亡の時に受益者となるべきものとして指定されたものが受益権を取得すること、及び信託法91条の定めにより受益者の死亡により受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得することの2つの内容を記載する必要がある。

 信託法91条中、見出しの「新たに」と条文の「新たな」に違いはあるのか考える。見出しは、(受益者の死亡により他の者が「新たに」受益権を取得する旨の定めのある信託の特例―略―)、条文は、受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が「新たな」受益権を取得する旨の定め―略―となっている。見出しの「新たに」は、「他の者が」について、受益権を取得する者を限定する。条文中の「新たな」は、「受益権を取得する旨の定め」について、文をまとめ、(一旦)終える働きをする。結論として、「新たに」と「新たな」は助詞の使い方であって特別な意味はない。

 3項は、現在の受益者が死亡した場合において次順位の者が死亡していたとき、その次の順位の者が受益権を取得し受益者となるような設計をしている。3項は、受益者および次順位以降の受益者が1人であることを前提にしている。受益者が複数いる場合は、1-1-aの条項例3項以下のように記載が複雑になることから、チェック方式に向かないと考え採っていない。

 4項は、前の受益者が委託者から権利義務の移転を受けた場合、新たに受益権を取得した者はその権利義務を承継するのか否か、判断することができるという規定である。移転を受けた委託者の個人的な権利義務(特に義務)に関しては、当然に新たに受益権を取得する者に負担させるのは酷であり、別途同意が必要である。

 6項は受益者となるべき者として指定された者が、受益権の取得又は放棄を判断する期間について、信託法に定めがないことから期間制限を設けるものである。受益者となるべき者として指定された者に不利益を与えないようにすること及び信託の安定性のバランスが要請される。本稿では民法における遺贈の放棄を参考に1年としているが、その他の定め方はあり得る。

 7項は受益者(後順位の受益者、帰属権利者等を含む)に受託者が指定されている場合を想定している(信託法29条、31条)。受託者が受益者に指定されている場合、利益相反関係[10]となることから信託行為において委託者の許諾を求める。

2     受益者指定権者等(信託法89条)[11]

2―1            【条項例】

(受益者指定権等)

第○条 本信託において、受益者指定権等は次の者が有する。

住所

氏名○○(委託者)生年月日

条件 指定、変更後の受益者は、委託者の民法上の親族とする。

(受益者指定権等)

第○条 本信託において、受益者指定権等は次の者が有する。

住所

氏名○○(受託者)生年月日

条件 指定、変更後の受益者は、受託者の民法上の親族のうち疾病などにより働くことが出来なくなった者とする。

2―2            受益者指定権者等を定める方法

図 1受益者指定権者等の構成

受益者指定権者等 【新しい受益者を指定する権利を持つ者】 【決まっている受益者を、他の受益者へ変更する権利を持つ者】  
定める方法   信託行為
受益権の一部の指定、変更   可能
受託者が持つ場合   信託事務の執行
委託者が持つ場合   信託行為による創設
受益者が持つ場合  委託者の地位を、信託行為によって移転する場合(受益権の分割や譲渡によって事実上、受益者変更権は利用できる。)  
第三者が持つ場合  信託行為による創設(この時点で第三者の承諾を求める。) 承諾がなく、行使されなかった場合は信託終了の可能性。  
利用できる場面  指定権者等が、臨機応変に支援を必要としている人を受益者とする能力を持っている場合(家族の中でも疾病中の人を優先するなど)  
利用が制限されると思われる場合  受託者が受益者指定権等を持つ場合は、信託目的または他の書面において一定の基準が必要。  自由にできるとすると、受託者を受益者に変更して信託を終了することもできる。第三者が持つ場合も同様。  
権利の排除 遺言、遺言代用信託の場合は排除できる。
2―3            受益者を変更、指定した場合の効果

 受益者を指定、変更した場合は受益権が移転し、新たに取得した者が受益者となる。受託者は変更前の受益者に通知義務がある(信託法88条)。指定、変更できる範囲とその限界は、信託設定行為の定め次第となる。全部の受益者、一部の受益者の変更、最初に1人だけ定めておいて後に1人追加するような指定も可能である。しかし、信託目的に「受益者の生涯に渡る居住の確保」とあった場合に、何の支援処置も取らずに受益者の全部を変更することは出来ないと考えられる。

 受託者が受益権の内容を変更する場合はどうだろうか。例えば、受益者へ給付する金銭を「毎月の上限として30万円」として定めている場合に、これを50万円と変更する際の対応を考える。受益者指定権等を持つものが対応する[12]

条文通りに読めば、受益者を変更、指定する権利を持つのみで、受益権の内容を変更することが出来るとするのは妥当とはいえない。

受益者を新たに指定する場合など、結果的に他の受益者の受益権の内容が変更となることはあり得るが、その場合は受益者の指定と信託の変更などを併せて行うことになる。

 受益権の内容の変更は、信託の変更と考える。受益者を新たに指定する場合など、結果的に他の受益者の受益権の内容が変化する場合でも、先に信託の変更により受益権の個数を2つにするか、受益権の割合を50対50などで分けた後に、新受託者に受益権を割り当てることになる。

2―4            受益者指定権者等を利用する場合のリスク

 信託財産と受託者の財産を引き当てにしている債権者、受益者の債権者にとって、誰が受益者であるかは重要であるが、債権者の知らないところで受益者、受益権が変更されると結果として信託財産及び受益権を保全できない可能性がある。

 対応としては、(1)信託契約書へ「受益権の譲渡禁止・制限特約」の定めを置く、(2)「受益権の移転に伴い債務も移転する。」という定めを置く、(3)信託契約当初から、受益権への担保権(質権など)を設定する、などが考えられる。なお、本稿ではリスク対応として受益者指定権等の定め及び権利者を置かない。

 税についての詳細は、税理士の確認を要する。前の受益者が存命であれば、新たな受益者に課税される。対価がない場合は贈与税課税、適正な対価の負担がある場合は譲渡取得税の課税。受益者指定の遅れなどで、受益者がいなくなった場合は、受託者に法人税課税(法人税法2条29号の2)となる。税の考え方は、受益者指定権等の定めがある信託は、受益者連続型信託とされる(相続税法9条の3①、相続税法施行令1条の8)[13]


[1]遠藤英嗣『家族信託契約』2017日本加除出版P220~P221

[2]中田直茂「遺言代用信託の法務」金融法務事情2074P6~

[3]道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P385

[4]信託法99条。民法986条、987条

[5]期間については道垣内弘人『条解信託法』2017弘文堂P477~

[6]能見善久ほか『信託法セミナー3」2015有斐閣P89~

[7]斉藤竜『士業・専門家のためのゼロからはじめる「家族信託」活用術』2018税務研究会出版局P157~

[8]法制執務委員会『ワークブック法制執務』2007ぎょうせいP642

[9]道垣内弘人『詳細信託法』2017弘文堂P476~

[10] 西村志乃「民事信託と裁判上のリスク」『信託フォーラムvol.6』2016日本加除出版P33~では、利益相反状況という用語を使用している。

[11]道垣内弘人『信託法』2017有斐閣 P297~

[12]平川忠雄ほか『民事信託実務ハンドブック』2016日本法令P143

[13] 青木孝徳ほか『改正税法のすべて』2007大蔵財務協会P474~

受託者

民事信託契約書のうち、受託者を取り上げる。

1     受託者
1―1            条項例

(受託者)

第○条

1 本信託の受託者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】

2 受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】

(受託者)

第○条 

1 本信託の受託者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】

2 受託者の任務は、次の場合に終了する。

(1)受託者の死亡

(2)精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合

(3)精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である場合

(4)その他信託財産を管理できない状態になった場合

3 受託者の任務が終了した場合、受益者が新たな受託者を定める。

4 前項の規定により受託者に定められた者が、相当な期間を定めて催告しても受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。

チェック方式

(受託者)

第○条

1 当初受託者は、次の者とする。

  【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】

 □【本店】【商号】

2 受託者の任務は、次のいずれかの事由が生じた場合に終了する[1]

 □ただし、信託法58条1項は適用しない。

□(1)受託者の死亡[2]

□(2)受益者の同意を得て辞任したとき[3]

□(3)受託者に成年後見人または保佐人が就いたとき。

□(4)受託者が法人の場合、合併による場合を除いて解散したとき。

□(5)受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合。

□(6)受益者と各受託者が合意したとき[4]

□(7)【受託者が○○歳になったとき・                】

□(8)受託者が唯一の受益者となったとき。ただし、1年以内にその状態を変更したときを除く。

□(9)その他信託法で定める事由が生じたとき[5]

3 □受託者の任務が終了した場合、後任の受託者は次の者を予定する[6]

   【住所】【氏名】【生年月日】【委託者との関係】

 □(後任の)受託者の任務が終了した場合、新たな受託者を次の順位で予定する[7]

  第1順位:任務終了前の受託者が、あらかじめ書面により指名した者。

  第2順位:信託監督人が指定した者。

  第3順位:その他信託法に基づいて選任された者。

4 任務が終了した受託者(その相続人のほか、信託財産を管理すべき者を含む。)は、後任の受託者が信託事務の処理を行うことができるようになるまで、受益者への通知、信託財産の保管その他の必要な事務を行う[8]

5 受託者に指定された者が、本信託の利害関係人[9]による催告から1か月以内[10]に受託者に就任しない場合は、受益者は新たな受託者を定める。

6 後任受託者は、前任の受託者から受託者としての権利義務を承継[11]し、次の

 各号に掲げる必要な事務を行う。

(1)債務の弁済、費用の清算[12]

(2)前受託者の任務終了が辞任による場合を除いて、必要な場合の債務引受け。

(3)その他の信託財産の引継ぎおよび信託事務を処理するための受託者の変

  更に伴う必要な手続。

□【                       】

1―2            受託者の資格

 信託契約において、受託者として契約をすることができない者は、未成年者、成年被後見人、被保佐人である(信託法7条)。信託期中における受託者の任務終了事由は、信託法56条から58条に規定されている。信託管理人、信託監督人、受益者代理人に就任している者も受託者となることはできない(信託法124条、137条、144条。)。ただし、当事者の意図しないときに信託を終了させないために、辞任して受託者となることは妨げられない。なお清算受託者に関する任務終了事由も同様である[13]

 法人を受託者とすることは妨げられない。例えば共有不動産の名義を一つにする、親族内の財産管理を目的として一般社団法人を受託者にすることができる。個人が受託者となる場合との違いは、法人であることによるコスト及び統治が挙げられる[14]

 3名の共有不動産を信託するとして、受託者として一般社団法人を利用する場合、社員及び理事が共有者の3名であるときの違いは何か。実質3名の共有状態と変わらないと考えることもできるが、敢えて違いを探すなら定款において、意思決定方法を柔軟にすることが可能であることを挙げる。(1)社員や理事の数を○名以内と定款で定めること、(2)一定期間内に受託者法人又共有者のうちの1人による受益権の購入を検討し、共有状態の最終的な解消を目的とすることも必要と考える。受益権購入の際は自己取引の禁止・制限に留意する(信託法31条)。

1―3            受託者の任務終了事由及び後任受託者

本稿では、辞任及び解任も任務終了として扱う(信託法56条1項5号、6号)。

 信託法58条1項の規定を適用した場合、自益信託で受益者が1人のとき、委託者兼当初受益者が1人で受託者を自由に解任することができる。受託者から委託者及び受益者による損害賠償を請求することはできる場合がある[15]が、(1)受託者に不利な時期の判断、(2)賠償される損害の範囲及び(3)受託者を解任した者が損害賠償責任を免れるやむをえない事由の判断が明確でなく、民事信託の安定性確保の観点から選択肢に含める(信託法58条3項)。

 受託者が1年間唯一の受益者となったときを選択肢に挙げている。本来信託の終了事由(信託法163条1項2号)を定める条項であるが、専門家ではない受託者の注意を促すために任務終了事由にも記載する。

 受託者が受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合を、当然に任務が終了する事由としている。これは、信託法58条4号の受託者による任務違反、信託財産への著しい損害及びその他重要な事由があった場合の受託者解任の規定に対する例示列挙である(信託法29条、38条、56条1項7号。会社法433条、976条1項4号。)。受託者による情報開示がなければ、受益者は受託者の任務違反及び信託財産への損害など判断は不可能である。受益者の報告請求及び受託者の情報開示は、信託行為によって免除・軽減出来ないものである。民事信託においては、信託法38条2項の除外事由に該当することもほぼ無いと考えられ、明確な任務違反の1つとして選択肢に含める。

 後任受託者を特定する条項、後任受託者を選任する方法について定める条項について、受託者が自己で急死した場合及び信託監督人が就任していない場合は、その条項は空振り規定となり信託法の規定に沿って新受託者を選任する(信託法62条)。

1―4            受託者の変更

1、家族信託の融資について、受託者(債務者)が変更になった場合、後任の受託者が就任を承諾すると債務はその時点で自動的に後継受託者に移るのだろうか。(1)信託行為後の融資(2)受託者は信託財産のためにする意思で融資を受けた(3)融資は受託者の権限内の行為(4)融資された金銭は信託財産責任負担債務となる(5)信託専用口座へ入金がされている。(1)から(5)の事実を前提とした場合、債務は前受託者の任務が終了した時に自動的に移ると考える。なお受託者が辞任した場合は、新受託者が就任した時に債務は自動的に移ると構成する(信託法21条、56条、57条、75条)。

 受託者が死亡した場合、(ア)債務は受託者の相続人に及ぶのだろうか。債務は死亡した受託者の相続人に及ぶ(信託法76条、民法896条)。債権者は、死亡した受託者の相続人に対して債務の履行を請求することができる。

相続人が債務の履行を行った場合、新受託者や信託財産法人管理人に償還を請求することができる。ただし、受益債権など、信託財産に属する財産のみを持って履行する責任を負う債務については、前受託者は履行責任を負わない。

新受託者は就任する際、責任財産を信託財産に限定しながらも、重畳的な債務引受をして連帯債務者となるか否かを判断する必要がある。

2     追記 民事信託契約書の条項においてチェック方式を利用する際の留意点

 留意点として2点を挙げる。1点目は契約書中に「本信託契約第○条の場合(を除いて)」などと、契約書中の条項を援用することを可能な限り排除することが必要となる。援用する条項がチェックされていない場合は、空振り規定となり援用の効力のみが発生せず、意図しない条項を生み出す可能性がある。

 2点目として信託契約の一貫性の確保を挙げる。例えば、信託設定の当初財産として不動産にチェックを入れなかった場合、不動産を追加信託することは出来ない(信託金銭により不動産を購入することは可能である。)。

3     追記 受託者の表明保証

条項例

(受託者の表明保証)[16][17]

第〇条 受託者は委託者に対して、本日、次の各号が真実かつ正確であることを表明し、保証する。

(1)受託者は、信託契約を締結し、信託の事務の処理という義務を履行するために必要とされる実質的な能力、意欲、相当な時間、そして信用力を有している。

(2)受託者は、信託法並びに信託行為で定めた受託者の義務の内容及び信託財産の所有者となることの責任を理解しており、受託者責任を履行するための責任財産を有している。

(3)受託者においては、信託の事務の処理という義務を履行することに対して悪影響を及ぼすような訴訟、仲裁、調停、行政上の手続が係属していない。

(4)受託者には、信託の事務の処理という義務を履行するにあたり、悪影響を及ぼすような信用状況の悪化、重い負債の存在、支払不能や破産手続や民事再生手続の申立事由の存在のおそれなどは存在しない。

(5)受託者は、信託当事者あるいは信託関係者との間で利益相反関係は存在せず、かつ、信託当事者間における牽制関係を損なうような関係は存在しない。

 上記の受託者による表明保証条項の例は、民事信託において受託者となる者の(最低限の)資格と考えても良い内容である。よってこのような内容の条項例についてチェック方式は採らない。機能としてリスクの分担、効果として受託者の情報開示がある[18]。また民事信託においては、受託者が金融機関や法人と取引する際に、一定の信用を得るために必要となる可能性が出てくると考える。「経営者保証に関するガイドライン」(平成26年金融庁)においては、経営者保証を求めない又は保証を外す要件の1つが、法人と経営者との関係の明確な区分・分離(社会通念上許容できる範囲内であれば許容される)とされている。

 契約の内容及び当事者の関係は異なるがM&Aで株式譲渡契約を締結する際においても、売主だけでなく買主に表明保証条項を設ける例がある[19][20]


[1] 信託法56条1項各号。

[2] 信託法56条1項1号。

[3] 信託法57条1項本文から委託者の同意権を除外。

[4] 信託法57条1項7号。

[5] 受託者の破産手続開始の決定、解任などが入る。注意的に契約書に入れる際は、7号に記載。契約書に入れない場合は9号で手当てする。

[6] 信託法62条1項。

[7] 後任受託者を指定している場合は、(後任の)のかっこ書きを外す。

[8] 信託法76条1項、77条2項、78条。民法654条。

[9] 利害関係人には、法定後見人、保佐人、補助人、任意後見人を含む(信託法92条1項16号)。

[10] 参考として信託法77条3項、184条3項。

[11] 信託法75条1項2項、76条2項。

[12] 前受託者による費用請求について、山田誠一「受託者が費用の償還に関し信託財産に対して有する権利」『信託の理論的深化を求めて』2017(公財)トラスト未来フォーラム研究叢書)

[13]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P755

[14] 権利能力なき社団が委託者兼受益者になることについて、谷口毅「権利能力なき社団を当事者とする信託」『信託フォーラムvol.7』があるが、受託者を一般社団法人にするかは検討が必要である。

[15]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P377、民法651条2項

[16]渋谷陽一郎『民事信託における受託者支援の実務と書式』2016民事法研究会P82

[17] M&Aにおける改正民法後の表明保証について、『旬刊商事法務№2157』2018商事法務P27~。

[18] 藤原総一郎『M&Aの契約実務』2011中央経済社P147~

[19] 梅田亜由美『中小企業におけるM&A実務必携 法務編』2016きんざいP273、

[20] 主な判例として、東京地判平成18年1月17日

信託財産

民事信託契約書のうち、信託財産を取り上げる。

1     信託財産
1―1            【条項例】

(信託財産―預金)

第○条 

1 委託者は信託契約締結後、信託財産目録記載4の預金を払い戻し、受託者に引き渡す。

2 受託者は、前項の払戻金を信託財産に属する専用口座を開設する方法により受託者自身の財産と分別して管理する。

(信託財産―不動産)

第○条 

1 信託財産目録1,2及び3記載の信託不動産の所有権は、本信託開始日に、受託者に移転する。

2 委託者及び受託者は、本契約後、前項の不動産について所有権移転の登記申請を行う。

3 受託者は、前項の登記申請と同時に、信託の登記の申請を行う。

4 前2項の登記費用は、受託者が信託財産から支出する。

(農地)

第○条 信託不動産のうち、農地法の適用を受ける土地については、次のいずれかのときに、本信託の効力を生じる。

(1)農地法に基づく許可を受け、許可通知書を受け取ったとき

(2)農地法に基づく届け出を行い、受理通知書を受け取ったとき

(3)農地法の適用対象から外れた場合

図 1 農地と信託財産

チェック方式

(信託財産)

第○条

1 本信託における財産は、次の第【  】号から第【  】号までとする。本信託の翌日以降に生じた第【  】号から第【  】号までの財産も、その種類に応じた信託財産に帰属する[1]

  • 別紙記載の不動産(以下、「信託不動産」という。)。
    • 別紙記載の金銭(以下、「信託金銭」という。)。

□(3)信託財産に属する財産の管理、運用、処分、滅失、損傷その他の事由により受託者が得た財産。

  • 受益者が信託目的の達成のために行う、自己が所有する金銭、不動産、債権およびその他の財産を信託財産とする追加信託[2][3]
    • その他の信託財産より生じる全ての利益。
    • 委託者は、本信託について特別受益の持ち戻しを免除する[4][5][6][7][8]
    • 本信託設定日における信託財産責任負担債務は、別紙記載のとおりとする。
    • 【                  】
1―2            信託設定時の信託財産

 信託財産を構成するための要件は、(1)金銭に見積もり得ること、(2)第3者に移転することが出来ることの2つをいずれも満たすことである[9]。(1)は、誰にとって金銭的な価値があればいいのか。原則として受益者にとって(付随して信託目的のために)、と考える。課税対象となるかという観点からは、国税庁の判断が1つの目安となる。

要件を満たす例として、金銭、不動産、債権などが挙げられる[10][11]。満たさない例として生命、譲渡制限や禁止条項のついた預貯金債権などが挙げられる。改正民法においては、譲渡制限のある預貯金債権を信託財産とする信託契約は有効であるが、受託者が悪意又は重過失の場合、債務者に対抗することができない(改正民法466条の5)。

 信託財産は、①委託者の財産から分離可能②受託者による管理ができる③承継できる価値がある、の3つがあれば良いという見解がある[12]。例として価値のない紙幣や大事な系譜の一部が挙げられているが、委任契約や遺言、法人制度の利用でも目的は達成できる。条件付きの贈与契約でも目的を達成できる可能性がある。信託財産になるかと問われた場合、信託財産にすることもできる、という回答をすることになる。受益者連続型の信託利用を想定しているとしても、受益者は受益権を放棄できることから、敢えて信託財産にする必要性、受益者のためになるのか、受託者の財産と別扱いで管理する意味はあるのかを再考する必要がある。ただし、主たる信託財産が金銭や不動産であり、それと共に価値のない紙幣や大事な系譜を加えることは、契約当事者の意思であり問題はない。

なぜ、ある財産を信託財産にしなければならないのか。信託財産を構成した結果、現れる効果は①目的達成のために、委託者の財産から分けることが必要であり(委託者の破産や死亡など)、②管理処分行為を託された者については、利益を受ける受益者のために適切な義務を規定することができるとの結論に辿り付く。

2     債務
2―1            債務は信託財産となりうるか

 信託法36条は、「委託者又は受益者は、受託者に対し、信託事務の処理の状況並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況について報告を求めることができる。」として、信託財産に属する財産と信託財産責任負担債務を分けていることから[13]、債務は信託財産とはなりえない。

受託者が債務引受をして、その債務を信託財産責任負担債務とした場合は、受託者は信託財産としてではなく、信託の目的に沿って管理・処分していくことになる。

2―2            信託財産責任負担債務

 信託設定前の抵当権は、受託者が債務を負うわけではないので、負担のついた信託財産である[14]。抵当権が登記されているのみの段階では、債務を負うのは受託者および信託財産ではなく、債務者である。被担保債権に係る債務が履行遅滞に陥っている場合は抵当権実行の可能性が高まり、信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務となる。しかし履行遅滞に陥っている債務を負っている委託者が信託行為を行うことは、詐害信託の恐れがある。結果として信託設定前の抵当権を信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務として処理することは不可能である。抵当権の被担保債権に係る債務については、債権者の承諾を得て信託行為に記載し、信託法21条1項3号の信託財産責任負担債務とする。

 なお信託設定前の抵当権は、信託設定前に生じた権利であり当然に信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務を構成するという説もある[15][16][17]

図 2信託財産責任負担債務の構成(信託法21条)

2―3            信託財産責任限定債務

図 3 信託財産責任限定債務の構成

3     占有の承継
3―1            条項例

(信託財産に属する財産の占有の瑕疵の承継)

第○条 受託者は、信託財産に属する財産の占有について、委託者の占有の瑕疵を承継する。

不動産が信託された場合、自己信託を除いて、受託者は不動産の占有についての瑕疵を委託者から承継する。占有について瑕疵のある不動産を信託しても信託契約の当事者以外に対して、信託財産であることの対抗することができない。なお信託法15条は、信託設定時の信託財産に関する規定であり、信託設定後は受託者の信託事務処理に対する規律に従う。

4     信託財産に関するリスク

信託財産に関するリスクとして1点信託金銭に関して信託財産の独立性が担保される措置が可能かを挙げる。

5     リスクに対する対応

1点目に関しては、口座開設の要件として(1)受託者個人の口座が差押えを受けたとしても、信託専用の口座はその影響を受けないこと、(2)金融機関が受託者個人に対して有している債権を自働債権、信託財産を受働債権として総裁が行われないこと(3)受託者が亡くなった際、相続を証する書面を不要として、受託者の死亡が分かる書類と新受託者の就任承諾書の提出および身分証明書の提示で受託者の変更ができること(4)受益者が亡くなった際、相続を証する書面を不要として、受益者の死亡が分かる書類と受益者の身分証明書の掲示をもって受益者の変更又は残余財産の引き渡しが可能であることが求められる。口座名義は問わない。また受益者個人の通帳を管理する者が誰であるか、管理可能かを確認する必要がある。

6     信託財産目録・信託財産責任負担債務目録
6―1            信託財産目録の例(チェック方式)

別紙

信託財産目録

第1 不動産【自宅・貸地・貸家・墓地・         】

所在 地番 地目 地積       

所在 家屋番号 種類 構造 床面積[18] 

第2 金銭  

【金額】円

第3 その他

【仏壇・位牌・     】

以上

6―2            信託財産責任負担債務目録の例(チェック方式)

別紙

信託財産責任負担債務目録

□ 1  金銭債務

    (連帯)債務者 【住所氏名】

     債権者    【金融機関本店】【金融機関名】【取扱店】

    【契約年月日・契約の種類】に基づく残債務の全て

    【当初金額】万円

    【利息】【損害金】

□2 保証債務

   (連帯)保証人 【住所氏名】

   (連帯)債務者 【住所氏名】

    債権者     【本店】【商号】【取扱店】

   【契約年月日・契約の種類】に基づく残債務の全て

   【当初金額】万円【利息】【損害金】

□3 担保権

(1)担保権者 【本店】【商号】【取扱店】

(2)【年月日】設定の【担保権の名称】

(3)登記 【法務局の名称】【年月日】【受付年月日・受付番号】

(4)被担保債権及び請求債権

   【年月日】付【契約名】に基づく残債務の全て

   【当初金額】万円 【利息】【損害金】

(5)(連帯)債務者 

   【住所】【氏名】

(6)不動産                                                               

   所在 地番 地目 地積 共同担保目録第【番号】号

   所在 家屋番号 種類 構造 床面積 共同担保目録第【番号】号

□4 その他の債務

  不動産の賃貸借契約にかかる債務[19]

  【管轄法務局名・受付年月日・受付番号】登記済み[20]

  【賃料】

  □【存続期間・支払時期】

  □【賃借権の譲渡許可・賃貸物の転貸許可】

  □【敷金】

  □【賃貸人が財産の処分につき行為能力の制限を受けた者・財産の処分の権限を有しない者】

   □【土地の賃借権設定の目的が建物の所有】

   □【土地の賃借権設定の目的が事業用建物の所有】

   □【借地借家法22条前段・23条1項・38条1項前段・39条1項・高齢者の居住の安定確保に関する法律52条・大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法第7条1項】

 □地役権の目的となっている承役地[21]【所在 地番 地目 地積】

  【管轄法務局名・受付年月日・受付番号】登記済み

  【要役地】【地役権設定の目的】

   □【地役権の付従性の制限】

   □【工作物の設置義務等】

   □【図面確認】

 □地上権の目的となっている土地

 【管轄法務局名・受付年月日・受付番号】登記済み

  【地上権設定の目的】【地代又は支払い時期の定め】□【存続期間・借地借家法22条前段の定期借地権・借地借家法第23条第1項の事業用借地権・大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法第7条2項】の定め

  □【地上権設定の目的が事業用】[22]

  地下又は空間を目的とする地上権の場合[23]□【地下の上限の範囲・空間の上下の範囲】□【土地への制限】

□ 信託不動産の各賃貸借契約にかかる各敷金返還債務[24]

□ 信託不動産の各賃貸借契約にかかる各保証金等の預り金についての返還債務

□【                        】

以上

6―3            追記 不動産登記記録中の信託目録に共同担保目録のような一覧性を持たせるための信託契約書の条項例

信託財産

第○条

1 本信託における財産は、次の第1号から第3号までとする。

  • 所在 地番 地目 地積
    • 所在 地番 地目 地積
    • 所在 家屋番号 種類 構造 床面積

 信託目録中のその他の事項欄に、信託契約における全ての信託不動産を記録することができ、どの不動産が同一の信託なのか分かりやすくなる。信託不動産に変動がないには有効だが、売却や信託財産の変更などがあった場合は、全ての不動産の信託目録変更登記が必要となることに留意する必要がある。


[1] 信託法16条、民法89条。

[2] 追加信託の法的な構成は、新たな信託設定と信託の併合を同時に行うものとして道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P398。

[3]信託法16条1項1号の「その他の事由により受託者が得た財産」も追加信託に含まれるものとして、遠藤英嗣『家族信託契約』2017日本加除出版P123。

[4] 民法903条3項但し書。中田直茂「遺言代用信託の法務」『金融法務事情2074』2017金融財政事情研究会。

[5]道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P63は、死因贈与。

[6]能見喜久「財産承継的信託処分と遺留分減殺請求」『信託の理論的進化を求めて』2017トラスト未来フォーラム研究叢書P123は、遺贈と生前贈与の中間であり、死因贈与に近いので、死因贈与に類する扱いをすることになろう、とする。

[7][7]岩瀬美智子「遺言代用信託についての遺留分に関する規律のあり方」『信託法研究41号』2016信託法学会P37は、委託者の権利が制限されていない原則的な規律による遺言代用信託については、遺贈とする。

[8] 注4から注7までのどの見解を採っても、遺留分減殺請求の順序には影響を及ぼすが、特別受益となる。

[9]四宮和夫『信託法〔新版〕』1989有斐閣P133

[10] 情報についてトラスト未来フォーラム76 三枝健治「情報の信託「財産」性についての一考察」

[11] 人格権について米村慈人「人格権の譲渡性と信託」水野紀子ほか『信託の理論と現代的展開』

[12] 遠藤英嗣『新しい家族信託』2016日本加除出版P102

[13] 民法177条。道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P33

[14]道垣内弘人『信託法』2017有斐閣P120

[15]寺本昌広『逐条解説新しい信託法』2008商事法務P84

[16]村松秀樹他『概説新信託法』2008金融財政事情研究会P56

[17]伊庭潔『信託法からみた民事信託の実務と信託契約書例』2017日本加除出版P261

[18] 未登記建物の場合、固定資産評価証明書などから所在・構造・床面積を特定し、未登記である旨を付記する。表題、権利登記申請については、横山亘『信託に関する登記』2016テイハンP286~。

[19] 賃借人に使用収益させる(改正民法601条)、修繕義務(改正民法606条本文)、必要費の償還(民法608条)、

[20] 民法177条、借地借家法10条。

[21] 民法210条、280条。

[22] 不動産登記法78条1項4号、借地借家法23条1項、2項。

[23] 民法262条の2

[24] 改正民法605条の2第4項

前文及び信託の目的

民事信託契約書のうち、前文及び信託の目的を取り上げる。

1     前文
1―1            条項例

・委託者【氏名】と受託者【氏名】は、以下のとおり、信託契約を締結した[1][2]

・委託者【氏名】(以下「委託者」または「委託者【氏名】」という)は、受託者【氏名】(以下「受託者」または「受託者【氏名】」という)に対し、第1条記載の信託の目的達成のため、第2条記載の財産を信託財産として管理処分することを信託し、受託者【氏名】はこれを引き受けた(以下「本信託契約」という。また、本信託契約に基づいて設定された信託を「本信託」という。)[3]

・委託者【氏名】は、その所有する財産を信託財産とする信託契約を、受託者【氏名】と締結する(「以下、本信託」という)。本信託はこれにより効力を生じ、委託者は受託者に対して信託財産を引き渡す。

(前文+目的)

・第○条

委託者【氏名】(以下「甲」という)は、財産の管理・処分を目的として、本信託契約第○条記載の【氏名】の財産(以下「信託財産」という)を受託者【氏名】(以下「乙」という)へ信託し、乙はこれを受託し、次のとおり信託契約(以下「本信託契約」という)を締結した。

 本信託契約の締結により、甲の判断能力が低下したとしても、さらに甲が死亡した後においても、信託された不動産においては乙がその必要性を認識したときに確実に売却することを目的とする[4]

1―2            前文の意義

 日本国憲法における前文は、必ずしも具体的な法規を定めたものではないが、その法令の一部を構成し、各条項の解釈の基準を示す意味を持つ[5]

 法令に前文がある場合、各本条の前に置かれ、その法令の制定の趣旨、目的、基本原則を記載することが多い。ただし、近年は見出しを目的、基本原則などとして第1条に置くものが多い。

 前文の内容から直接に法的効果が生じるものではないが、その法令の一部を構成するものであり、各条項の解釈の基準を示す意義・効力を持つ。改正について憲法改正、法令改正の手続きを必要とする。

 契約書に前文を置く場合、契約の当事者及び法的性質を示すのが最低限の役割となる[6]。契約締結に至った経緯、契約の理念等を記載する際は、分けて考える必要がある。経緯・理念等が契約書本文の各条項を解釈適用する上で重要な意味を持つ場合は、その理由を付して契約書本文に条項として組み入れることを検討する必要がある。その他の場合は、和解契約における道義条項に類似するものとして、前文に記載するのが適当である[7]

図 1民事信託契約書における前文と信託の目的条項の位置付け

2     信託の目的
2―1            条項例

(信託の目的)

第○条

1          本信託の目的は、次のとおりとする。受託者は、信託の目的に従い信託財産を管理、運用、処分およびその他の目的達成のために必要な行為をする。

(1)受益者とその家族(扶養親族[8])の安定した暮らし。

(2)財産の円滑な管理および承継。

(目的)

第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用、処分する。なお、第1号を優先する。

(1)信託した不動産の賃貸による受益者の生活の安定。

(2)信託した不動産の売却による受益者の生活の安定。

2―2            一定の目的が、信託行為にどのようにして現れるか

 信託法2条における「一定の目的」は、受託者の従うべき行為基準となる。信託行為の中で、受託者がどのように行動することが求められているのかが記載されている部分が一定の目的である。

 受託者は、委託者がいなくなったとしても信託行為の際に作成された文書を理解し、受益者のために行動することが必要とされる。

 信託契約書に、受益者の安定した生活に資する、と抽象的な記載があり、その他に受託者の具体的行為の定めがない場合には、これが信託目的となり、受託者はその都度この信託目的を解釈しながら信託事務を執行していくことになる。

 受託者の具体的行為として、受益者への毎月○○万円を上限とする生活費の給付、預金として管理する、不動産は賃貸不動産の○○の管理のみ第三者へ委託する、などの定めがある場合はどうか。受益者の安定した生活に資する、という記載を大枠に考え、生活費の給付などを行うことが目的となる。

2―3            信託行為時の信託の目的条項の定め方

 信託の目的の複数記載、並列的記載、事情変更による信託の目的の変更は認められる。[9]

 信託の目的は、当該信託の指針であり行動基準[10]との考えがあるが、「受託者の」行動基準であり、信託財産の管理、運用、処分及びその他の信託目的達成のために必要な行為をするための定めのことを指していると考える。

 まとまりのない信託の目的は困る、願いと目的は明らかに違う、情緒的で重複気味なものは困る[11]という考えがある。しかしまとまりのない信託の目的も受託者が理解し受益者のために信託事務を行うことが可能であれば有効であり、信託行為時における願いと目的の違いは明らかではない。委託者が願いを記載することにより、受託者がそれに従い行動できるのであれば、その願いが信託の目的となる。ただし、後任受託者や次順位の受益者(指定がある場合)が読んで理解できるような記載が求められる。

 情緒的で重複気味の記載があっても同じである。他に受託者の信託事務に関する記載がなく、その中から受託者が具体的行動を起こすことが可能であれば、情緒的で重複気味の記載が信託の目的となる。

民事信託契約書の条項に、「信託の目的」がない場合はどうか。ないとしても、受託者の信託事務などで信託の目的が明らかであれば、その信託は一定の目的を持つ信託として有効となる。例えば、受託者の信託事務条項に「受託者は、その裁量により信託不動産を管理・運用・処分することができる。ただし、信託金銭が○○万円以下になり受益者の安定した生活が保てなくなる場合に限る。」との定めがあれば、受益者の安定した生活が信託の目的となり、受託者はそのために信託金銭および信託不動産を管理・運用・処分する。

 また「信託の目的」条項がない民事信託契約書において、信託財産に不動産が含まれれる場合、信託登記

 受益者が複数いる場合に、信託の目的条項の中に「特に高齢の受益者を支援する」など具体的に記載し、一方の受益者から受託者の公平義務違反が問われないようにする、との考えがあるが、[12]記載があれば公平義務違反に問われないとは限らない。

図 2同一の信託行為における公平義務の位置付け

 記載があっても「受益者らへの生活費などの給付は、受託者の裁量による」と定められている場合には、劣後する受益者からは、受託者の判断基準が明確ではないとして公平義務違反または善管注意義務違反を問われる可能性がある。

 そのような記載がなくとも、受益権が金銭給付の一種類であれば、一方に月10万円、一方に月20万円を給付すると信託行為で定めても公平義務には問われない。高齢の受益者に給付する金額を高くするのであれば、受託者に問われる可能性があるのは善管注意義務違反である。公平義務違反が問われる場合としては、信託金銭が1000万円、収支がプラスマイナスゼロにも関わらず高齢の受益者に対して20万円を超える不必要な金銭(例:新車の購入代金)を給付したときなどを想定することができる。

2―4            (専らその者の利益を図る目的を除く。)について

 かっこ書きが入ったのは、その者(受託者)が利益を長期間に渡って得ると、信託財産の独立を基礎づけることができず、信託が成立したとはいえないので改正によりそのことを明確にしたとされている[13]

 アパートを信託した場合、受託者が賃料の全てを実質的に取得することができるような信託行為は成立しないと考えることが出来る。受託者=所有者とほぼ同義になり、信託財産の独立が保てないからである。

 専らとはどの程度なのか、参考となるのは信託法163条2項である。受託者が受益権の全部を取得しても、1年以内でその状態の解消が、売却などによって予定されているならば有効だとされている[14]。これは実務上のニーズから生まれたものであるが、法律が期間の限度を示しているものと考えることができる[15]。 

 この点から、割合については信託目的との関係もあるが、2分の1を超える同一種類の受益権を1年以上取得し続けていると「専ら」と指摘される可能性があることを一つの基準と考える[16]。なお、信託設定後は信託法8条によって処理される。

2―5            信託の目的が信託行為の時とは違う基準として使われる場合

信託の存続可能性を判断する際の基準として、信託法149条(関係当事者間の合意等)2項1号、同項2号、同条3項2号、150条(特別の事情による信託の変更を命ずる裁判)1項、163条(信託の終了事由)1項。

3     信託の目的に関するリスク

 ここでは5点のリスクを挙げる。1点目は公序良俗による制限(民法90条)である。信託の目的に記載があるものとして、「信託財産の運用のため、受託者は麻薬の売買を行う」、「信託財産の運用益は、各賭博場の主催者に交付する」などが挙げられる。信託の目的に記載はなくとも、信託設定の動機が公序良俗に違反する場合として、委託者が受益者に賭博による借金を背負っていて、返済手段として信託の目的に「信託財産を株式に投資して毎年の利益を受益者に交付する」などが挙げられる[17]

2点目は脱法信託(信託法9条)である。反社会的勢力が、一般市民を委託者、受託者として自らは受益者となる場合などがある。受益者ではなく指図権者となっている場合も、所有しているのと同一の利益を享受しているのならば、本条の適用対象となる可能性がある。信託財産について特許権法25条など法律上の権利に関する資格制限がある場合に、信託を利用してその権利を持っている状態(受益者が25条に規定する「日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人」で受益権が特許権の利用の場合)にある場合も本条の適用対象となる。また、信託の目的条項に不動産流通税の節税、などと記載がある場合は、削除するか不動産の円滑な承継などと訂正する必要がある。なぜなら不動産取得税、譲渡取得税が非課税となるのは、信託の目的を定めた信託行為に対して、法律の定めにより非課税となる、という順序を辿る。節税を信託の目的として信託行為を行った結果、非課税となるわけではない。よって信託の目的として脱法と指摘される可能性がある。

 3点目は訴訟信託(信託法10条)である。信託行為時における主たる目的が訴訟行為[18][19]であった場合、その信託は無効となる。

 4点目は詐害信託(信託法11条)である[20]。信託法11条の適用対象は図3に示す。

図 3 信託法11条の構造

 5点目は信託の目的が、信託の変更及び終了(信託法149条、150条、163条)事由となり得ることである。ここでいう信託の目的は、信託法2条1項における「一定の目的」と同義であるのか明確ではない。明確ではない事由が起こった場合に信託の変更又は終了が信託行為の内部の者の間でなされると、外部関係者が予期しない不利益を受ける可能性がある。逆に信託の目的が「受益者が20歳になるまで月20万円の学費の助成」など明確な場合は、信託の目的に反するか反しないか、受益者又は受託者の利益を害さないか、目的達成か不達成かの判断を行いやすくなる。

4     対応
4―1            専門職及び金融機関の対応方法

 1点目の公序良俗による制限(民法90条)に対しては、公序良俗違反により無効となった場合に備えて、委託者、受託者及び受益者に表明保証条項および違反にかかる損害賠償条項、口座の閉鎖条項を定める。貸付けがある場合または貸付けの予定がある場合は、相殺条項を定める。信託口口座開設時に、相殺に関する受託者の事前承諾を求めるなどの対応を考える。

 2点目の脱法信託(信託法9条)に対しては、信託財産について特許権法25条などの所有の資格制限がないかの確認、受益者及び受益権の内容の確認が必要となる。

 3点目の訴訟信託(信託法10条)に対しては、信託設定の経緯、信託行為時における信託目的、他の信託条項との総合解釈、受託者の職業、委託者と受託者との関係などの確認[21][22]が求められる。

4点目の詐害信託に対しては、委託者の負債(保証を含む)及び責任財産の確認をする、表明保証条項を設ける、などにより対応する。

5点目の信託の目的が信託の変更及び終了事由となり得ることに対しては、(1)信託法149条4項による定めを設ける、(2)当事者間では重要な変更ができないように金融機関への事前または事後の報告義務を必要とすることを定める、(3)信託法150条の申立てをする前に、金融機関へ事前または事後の報告義務を課することを定める、(4)信託法163条1項1号による終了による場合は、金融機関への事後報告の義務を課することを定める、などの対応が考えられる。

4―2            追記・不動産登記における信託の目的

 信託の目的条項がない民事信託契約書において、信託財産に不動産が含まれているとき、信託目録中の信託の目的(不動産登記法97条1項8号)を登記申請できるか。民事信託契約書中に、受託者が信託財産(信託不動産)の管理又は処分をする旨が記載されている場合は、信託登記の申請情報において信託の目的を抽出し、記載して申請することが可能と考える(登記原因情報として民事信託契約書または別途登記原因証明情報を作成し添付する)。受託者が行うその他の信託目的の達成のために必要な行為についても同様と考える。

 また、受託者が信託不動産の処分(売却等)を行うためには、信託目録中の信託の目的欄に「処分」の記録を要するという考えがある[23][24]。しかし、信託登記は信託行為後に行われるのであり、信託の効力が発生しているということは、信託法2条1項における「前略―財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為―略―」を行う権限が受託者に付与されていることを意味する。

 よって、信託目録中の信託の目的欄に記載すべきは、「処分できること」ではなく(任意的記載事項となる。)、受託者による信託財産の管理又は処分その他の当該目的の達成のために必要な行為の「制限」であると考える。信託目録中の信託財産の管理方法(不動産登記法97条1項8号)についても原則として受託者は信託法26条の信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を持つ[25]。従って、記載すべきは受託者の権限に対する制限、受益者が受託者の行為によって権利を有することがないにも関わらず信託行為によって認められる権限、及び登記先例上必要な記載[26]となる。


[1] 新井誠編『高齢社会における信託制度の理論と実務』2017日本加除出版P179

[2]伊庭潔『信託法からみた民事信託の実務と信託契約書例』2017日本加除出版P117

[3]遠藤英嗣『家族信託契約』2017日本加除出版P204

[4]杉谷範子『空き家にさせない!「実家信託」』2017日本法令P221

[5] 参考として『法律学小事典』2016有斐閣

[6] 田中豊『法律文書作成の基本』2011日本評論社P342、『民事訴訟における事実認定』2008法曹会P210

[7] 『書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究』2002法曹会P38

[8]受益者に扶養親族である配偶者などを含めることなく、信託財産から(受益者の個人通帳を経由して)扶養に掛かる費用を支出するために記載。

[9] 「信託の目的の定め方の相談に答える」遠藤英嗣『信託フォーラムvol.7』2017日本加除出版

[10] 「信託の目的の定め方の相談に答える」遠藤英嗣『信託フォーラムvol.7』2017日本加除出版

[11]遠藤英嗣「信託の目的の定め方の相談に答える」『信託フォーラムvol.7』2017日本加除出版。河合保弘『家族信託活用マニュアル』2015日本法令P284を指していると思われる。

[12]遠藤英嗣「信託の目的の定め方の相談に答える」『信託フォーラムvol.7』2017日本加除出版

[13] 別冊NBL編集部『別冊NBL104号信託法改正要綱試案と解説』2005(株)商事法務P75

[14] 村松秀樹ほか『概説信託法』平成20年(株)きんざい P5

[15]『信託法改正要綱試案と解説』P208要綱試案の段階では、必要な期間とされている。

[16]参考として信託法113条。

[17]道垣内弘人「信託法入門」2007 株)日本経済新聞社P57~P58

[18] 破産手続開始、強制執行について最判昭和36年3月14日。

[19] 更生債権の届出について最判昭和42年5月23日。

[20] 委託者と受託者が共に悪意の場合について、道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P67。

[21] 寺本昌弘『逐条解説 新しい信託法』2007(株)商事法務P54~P55、前掲別冊NBL104号P22

[22]道垣内弘人編著『条解信託法』2017弘文堂P62

[23]杉谷範子『空き家にさせない!「実家信託」』2017日本法令P177、斉藤竜『ゼロからはじめる「家族信託」活用術』2018税務研究会出版局P138など。

[25] 七戸克彦監修『条解不動産登記法』2013弘文堂P604

[26] 登記研究604号121号、659号171号など。

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