家族信託実務ガイド編集部「地域金融機関と家族信託の専門家との提携の現状分析・今後の展望―信託会社、士業者、団体との提携―」

家族信託実務ガイド[1]の記事からです。

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※VIP先は「直接型」、そうでない先は「間接型」のような「折衝型」もある。

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金融機関から提案されている人をVIP型と捉えれば良いのかなと思いましたが、よく分かりませんでした。

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「信託会社は『受託者のプロであるから家族信託のプロでもある』」と考えるのは早計です。

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誰がそのように考えているのか分かりませんでした。

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なお信託口口座開設の審査における士業者との提携に関しては、金融機関で対応できない個別案件への対処を委託する場合、あるいは信託契約書の審査のみを委託する場合になどに大別されます。士業者への委託コストを顧客から審査費用を徴収する場合もありますし、金融機関が負担する場合もあるようです。

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金融機関が負担する場合があるのは初めて知りました。私は金融機関が負担した分は、何らかの形で顧客に返ってくると思っています。もし最終的に顧客負担が生じるなら、このような書き方は事実と違うのではないかと感じます。

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一方で、金融機関の担当者の方の話によると、士業者が作成して金融機関に持ち込まれる信託契約書の中には不完全なものが事実多いようです。

 書籍やネットに掲載されている信託契約書の条文を寄せ集めて作成した結果、条文ごとの内容が矛盾していたり、ひどいものになると、「一代限りで終了の信託」であるのに、第二受益者が記載されていたりといったレベルの契約書しか作成できない士業者も存在するとのことです。

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一代限りで終了の信託」であるのに、第二受益者が記載されている信託契約書も、契約書の構成次第では(例えば、残余財産の帰属権利者が信託終了事由の発生時の次順位の受益者とされている場合。)、矛盾していないと思います。

下はアンケートの感想です。

・信託口口座の付帯サービスで、インターネットバンキングが利用可能またはサービス準備中としている金融機関が56.6%あることが、意外でした。良い方向だと感じます。

・信託口口座開設手数料の要否では、不要が23.5%となっていることが意外でした。原則手数料は不要だと思っていたからです。信託契約書の審査について、専門家の関与や公正証書を求める段階で金融機関の負担は減っているので、有料にするにしても、その後の金融機関の利益(委託者死亡時の預貯金通帳の名義変更や受託者と取引出来ること)を勘案して決めて欲しいと考えます。

・信託口口座開設の条件に委託者(受託者)が既存取引先であること、を挙げている金融機関が7.5%あるのが意外でした。何かしら理念があれば、そのような金融機関があっても良いのかなと思います。

・取扱い後(準備中)に感じる課題として、信託行為の変更状況のチェック、担保を付けている不動産のチェックがなかったのが意外でした。


[1] 2020年11月第19号P24~

渋谷陽一郎「民事信託における「信託の登記」の作法―信託登記の共生主義に見る実体法(信託法)と手続法(不動産登記法)の交錯」

信託フォーラム[1]の記事からです。

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権利移転の登記及び信託の登記申請の留保について

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誌面で取り上げられていないのですが、私が気になったのは、登記申請の留保目的や受託者の権利義務とその法的効果などではなく、留保期間です。

私の場合ですが、信託契約公正証書を作成時に公証センターに同席し、その場で公正証書を預かり、登記申請に必要な書類に署名押印してもらいます。公証センターから帰ってその日に登記申請、間に合わなければ翌日ということになります。当日の朝に登記情報も取るので、不動産売買契約における決済の場面と少し似たような感覚で業務を行っています。

 今まではこの方法でやってきましたが、今後、直ぐに登記申請を行うことが出来ない場合があるかもしれません。

・委託者や受託者が印鑑を忘れた。

・建物が登記されておらず、土地家屋調査士に依頼しているが、信託契約公正証書の作成時点では表示の登記が完了していない(公証センターの予約が、この日しか取れなかった場合)。

その他にも、意図しないイレギュラーな場面が出てくると思います。そして、留保した(登記申請出来なかった)期間が長いと(例えば1か月)、その理由に関わらず、信託の成立・効力・対抗要件に関して受託者または専門家を含めた関係者の責任が問われる場合があるんだろうなと感じます。

ここは個別具体的に判断されると思います。現状で分かりやすいのは、対抗要件でしょうか。

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第10 信託の登記を留保することの法的リスク

―略―第一は、受託者は、信託法上の強行法規である分別管理義務に違反することになり、信託違反、つまり、強行法規違反である信託の違法状態を生じ得る。このような受託者の登記申請義務の履行懈怠の場合、不動産登記法99条の受益者による信託の登記の申請券の代位権行使も可能となろう。

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 この部分を読んで私が思ったのは、場合によっては受託者の支援を行う司法書士(司法書士法3条1項1号に基づきます。)と受益者(委託者まで含むかは信託行為の内容によります。)の支援を行う司法書士を受任段階から分けることで上手くいく場合もあるのかなと感じました。受益者代理人に司法書士が就くということではありません。

 イメージに少し近いのは、不動産売買における買主と売主にそれぞれ登記申請代理人が就く京都方式です。

 信託行為時は、1人でも大丈夫なのかもしれませんが、期中に受益者の利益と受託者の事務がぶつかる場合があるかもしれません。任意後見人、成年後見人などが就いていて、代理権の内容がどのようになっているのかにもよると思いますが、原則はこれらの法定されている人が受益者を支援する方が自然に思われます。

原則に当てはまらない場合、本来受託者を代理して登記申請する予定の司法書士が、受益者を代理して登記申請すると、何かしっくりと来ない感じがするのですが、私だけでしょうか。信託監督人に司法書士が就任(就任予定を含みます。)している場合、その司法書士が司法書士法3条1項1号を根拠として、受益者による代位登記申請を代理する事例はあって良いのかなと感じます。

この方式を採用すると、共同受任(アドバイスをする人と、実際に動く人で受任して、アドバイスする人がお金を多くもらうやつ)や相談料・チェック料をもらって責任0よりも良い形に収まるような気がします。信託契約書は専門家2人が受託者側、委託者(兼受益者?)側の立場で読み合わせ、信託期中は受託者側、受益者側でそれぞれ個別に支援します。揉めそうな場面でクッションが2つあることで紛争に発展する可能性が低くなるような気がします。信託法上の利益相反は別に考えなければいけませんが、司法書士法上の利益相反に該当する事例は少なくなるように思えます。使えそうなケースがあれば、やってみようと思います。


[1] Vol.14 2020年10月日本加除出版P39~

「信託口口座に対する強制執行(試論)」

信託フォーラム[1]の記事から、気になった部分です。

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そうすると、B銀行としては、執行債権の性質を調査することなく、第三債務者の陳述(民執147条)においては、固有口及び信託口の各預金の存否及び支払の可否を回答することになる。―略―そうすると、B銀行としては、甲信託口及び固有口の双方預金に差押えが及ぶことを前提に、支払にも応ずるほかない。

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私は、債務者乙に対する債務名義なので、信託口預金の存否について回答する必要はないと思いました(存否について回答しないので、支払いの可否も回答しないことになります。)[2]。回答を求める場合には、当事者目録に「乙こと委託者甲、受益者丙の受託者乙」、差押債権目録に「債務者が第三債務者に対し甲信託口名義で有する下記の債権」の記載を追加する必要があると思います。

私は、甲信託口に差押えは及ばないと思います(信託法23条)。その結果B銀行が支払に応じることはないと考えます。

なお執行裁判所と債権者に過度な負担を求めないという運用について全面的に賛成です。

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[1] Vol.14 2020年10月 日本加除出版P71~

[2] 「金融機関の法務対策5000講1巻」2018きんざいP1417

宣誓供述書(併記)

私、氏名は、年月日設立予定の商号会社について、下記の内容が真実であることを表明し宣誓します。

我本人全名計劃在日期成立字號有限公司我發誓表示以下事實是正確的。

商号・○○会社

字號・○○有限公司

本店・日本○○

總店・日本○○

公告の方法・官報

公告的方法・政府公報

目的

1、○○

2、前各号に付帯する一切の事業

目的

1 .○○

2 .前在各號上腰帶附的一切的業務總店

資本金の額 金○○万円

資金的金額・○○萬日圓

事業年度  〇月〇日から〇月〇日まで

營業年度從・〇月〇日至明年〇月底

社員・業務執行社員・代表社員

住所 氏名 

出資金額○○万円(全部履行) 社員の責任 有限責任

社員・業務執行社員・代表社員

住所 氏名

捐款金額○○萬日元(全部實現) 員工責任 有限責任

社員・業務執行社員

住所 氏名 

出資金額○○万円(全部履行)社員の責任 有限責任

社員・業務執行社員

住所 氏名

捐款金額○○萬日元(全部實現) 員工責任 有限責任

署名押印・○○会社の設立に関して真実である。

簽名章・關於若○○有限公司的成立是正確的。

     年  月  日

社員 署名 【             】(      )印

参考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

法務省民商第16号

平成29年2月10日

法務局民事行政部長殿

地方法務局長殿

                         法務省民事局商事課長(公印省略)

「登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて」の一部改正について(依命通知)

標記について,本日付け法務省民商第15号民事局長通達が発出され,平成28年6月28日付け法務省民商第100号民事局長通達(以下「通達」という。)が一部改正されたところですが,通達の運用に当たっては,下記の点に留意するよう,貴管下登記官に周知方取り計らい願います。

1 通達第3に定める外国人の本国の法制上の理由等のやむを得ない事情があるとして,登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書及び日本の公証人又は当該外国人が現に居住している国の官憲の作成した署名が本人のものであることの証明書をもって,市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる具体例は,次のとおりである。

  • 当該外国人の本国に署名が本人のものであることを証明する制度自体がなく,当該国の本国官憲(当該国の領事及び日本における権限がある官憲を含む。以下同じ。)において署名が本人のものであることの証明書を取得することができない場合。

この場合における登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書には,当該国の本国官憲に確認したところ,署名が本人のものであることの証明書を発行していない旨の回答があった旨が記載されていれば足りる。

  • 当該外国人の本国においては署名が本人のものであることの証明書の取得が可能であるが,当該外国人が居住している本国以外の国等に所在する当該外国人の本国官憲では署名が本人のものであることの証明書を取得することができない場合

この場合における登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書には,当該外国人が居住している本国以外の国等に所在する当該外国人の本国官憲に確認したところ,署名が本人のものであることの証明書を発行していない旨の回答があった旨が記載されていれば足りる。

  • 当該外国人が居住している本国以外の国等に当該外国人の本国官憲がない場合(第三国に存在する当該外国人の本国官憲が兼轄している場合を含む)。
  • この場合における登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書には,当該外国人が居住している本国以外の国等に当該外国人の本国官憲がない旨が記載されていれば足りる。

2 署名が本人のものであることの証明書を当該外国人の本国の日本における領事若しくは日本における権限がある官憲が発行していないため当該証明書を取得することができない場合又は日本に当該外国人の本国官憲がない場合(第三国に存在する当該外国人の本国官憲が兼轄している場合を含む。)には,日本以外の国における本国官憲において当該証明書を取得することが可能であっても,外国人の本国の法制上の理由等のやむを得ない事情があるものされた。この場合には,登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書及び署名が本人のものであることの日本の公証人の作成した証明書をもって,市町村長の作成した印鑑証明書の添付に代えることができる。

この場合における登記の申請書に押印すべき者の作成した上申書には,当該外国人の本国の日本における領事又は日本における権限がある官憲に確認したところ,署名が本人のものであることの証明書を発行していない旨の回答があった旨又は日本に当該外国人の本国官憲がない旨が記載されていれば足りる。

「有価証券の信託―法律関係の基礎」

信託フォーラムの記事[1]から、気になった部分です。

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本稿では、今後の議論の前提となる有価証券を信託する場合の法律関係について、株券不発行の非公開会社の株式(以下「非上場株式」という。)を例に取り上げた上で、他の有価証券についても検討を加える。

2 有価証券の信託

  • 譲渡の効力要件等

ア効力発生要件

 信託は、例えば、委託差ýと受託者の信託契約の締結によって効力が発生する(信託法4条1項)。これに対して、有価証券の種類によっては、法律に特別の効力発生要件を付加されている場合があるが、非上場株式では、当事者の合意により譲渡の効力が生じる。

イ株式譲渡の対抗要件

 非上場株式は、前述のとおり、当事者の合意により譲渡の効力が生じるが、会社に対する株式譲渡の対抗要件、会社以外の第三者に対する対抗要件はともに、株主名簿への記載又は記録である。

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株主名簿への記載又は記録、を行うということで省略されているのだと思いますが、譲渡承認機関の承認(株主総会の決議など)が会社に対する株式譲渡の対抗要件として必要だと感じました。


[1] Vol.14 2020年10月日本加除出版P13~

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