「疑わしい取引」と司法書士38

登記情報[1]の末光祐一司法書士「疑わしい取引」と司法書士(38)からです。

司法書士にとってのリスクベース・アプローチ(RBA)においては、依頼の類型を取引類型といい、取引モニタリングのためには重要な要素となる。ここで、「依頼」とは、例えば、不動産登記業務において、売買を登記原因とする所有権移転登記手続の依頼の場合は、当該登記手続の委任契約と、当該登記の原因となった売買契約の両者を含むものであり、当該委任の内容、状況、携帯及び経緯等を勘案して依頼の類型を判断すべきであると考える。


トラストを確保したDX 推進サブワーキンググループ報告書https://www.digital.go.jp/councils/0567fe93-b7d8-4c25-8a6c-46312c687f88/

加工トラストを確保したDX 推進サブワーキンググループ報告書

・P62の高リスクの類型の例、低リスクの類型の例のいくつかを、IALで分けてみます。

・P62の高リスクの類型の例、低リスクの類型の例のいくつかを、AALで分けてみます。

・P62の高リスクの類型の例、低リスクの類型の例のいくつかを、渡部友一郎弁護士の5×5のリスクマトリクスで分けてみます。

リスクベース・アプローチにおいて行うべき厳格な措置は、犯罪収益移転防止法において厳格に本人特定事項の確認を行わなければならないハイリスク取引の場合の措置(犯罪収益移転防止法4条2項)とは異なる概念であり、両者が適用となる場面や範囲は必ずしも一致しない。ハイリスク取引の場合とは取引時確認、つまり、依頼を受けた際の措置のことであるが、リスクベース・アプローチにおける厳格な措置は依頼の場面も含めて、以後、継続的顧客管理において求められる措置である。

 今まで、業務の場面毎によって、知識(司法書士業務関連法令・会則、個人情報保護法等、犯罪による収益の移転防止に関する法律等)や経験によって対応していたことを、記録に残しやすいように、リスクベース・アプローチというフィルターをかけよう、という考えなのかなと感じます。

 特に、継続的・長期間の業務において要請されているように思います。業務が面倒くさくなる面もあるかもしれませんが、何度も不動産登記の依頼を受けている個人の場合など、リスクが少ないと思われる方の場合は、リスク許容度を下げたりするなど可能であれば、業務に割く時間を減らせることもあり得るように感じます。

[1] 728号、2022年7月、(一社)金融財政事情研究会P60~

20220719連発0541号 司法書士倫理の一部改正

新旧が見つからない。私が参照した会員必携の司法書士倫理が 古いかもしれません。

○司法書士行為規範

司法書士の使命は、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することにある。

その使命を自覚し、自らの行動を規律する規範を明らかにするため、司法書士行為規範を制定する。

我々は、これを実践し、社会の信頼と期待に応えることをここに宣言する。

第1章基本倫理

(使命の自覚)

第1条司法書士は、使命を自覚し、その達成に努める。

(基本姿勢)

第2条司法書士は、その職責を自覚し、自由かつ独立の立場を保持して、司法書士としての良心に従い行動する。

(信義誠実)

第3条司法書士は、信義に基づき、公正かつ誠実に職務を行う。

(品位の保持)

第4条司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持する。

(法令等の精通)

第5条司法書士は、法令及び実務に精通する。

(資質の向上)

第6条司法書士は、自ら研鑚するとともに、その所属する司法書士会及び日本司法書士会連合会(以下「司法書士会等」という。)が実施する研修に参加し、資質の向上に努める。

(自治の維持及び発展)

第7条司法書士は、司法書士自治の維持及び発展に努める。

(法制度への寄与)

第8条司法書士は、法制度が国民に信頼され、国民が利用しやすいものとなるようにその改善及び発展に寄与する。

(公益的活動)

第9条司法書士は、その使命にふさわしい公益的な活動に取り組み、実践するように努める。

第2章一般的な規律

意思の尊重)

第10条司法書士は、依頼者の意思を尊重し、依頼の趣旨に沿って、その業務を行わなければならない。

2司法書士は、意思の表明に困難を抱える依頼者に対して、適切な方法を用いて意思の表明を支援するように努めなければならない。

(秘密保持等の義務)

第11条司法書士は、業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。司法書士でなくなった後も同様とする。

2前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合は、その必要の限度において、秘密を開示することができる。

(1)本人の承諾がある場合

(2)法令に基づく場合

(3)司法書士が自己の権利を防御する必要がある場合

(4)前3号に掲げる場合のほか、正当な事由がある場合

(不当誘致等)

第12条司法書士は、不当な方法によって事件の依頼を誘致し、又は事件を誘発してはならない。

2司法書士は、依頼者の紹介を受けたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を支払ってはならない。

3司法書士は、依頼者の紹介をしたことについて、いかなる名目によるかを問わず、その対価を受け取ってはならない。

(非司法書士との提携禁止等)

第13条司法書士は、司法書士法その他の法令の規定に違反して業務を行う者と提携して業務を行ってはならず、またこれらの者から事件のあっせんを受けてはならない。

2司法書士は、第三者に自己の名義で司法書士業務を行わせてはならない。

3司法書士は、正当な事由がある場合を除き、その業務に関する報酬を司法書士又は司法書士法人でない者との間で分配してはならない。

(違法行為の助長等)

第14条司法書士は、違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

(品位を損なう事業への関与)

第15条司法書士は、品位を損なう事業を営み、若しくはこれに加わり、又はこれに自己の名義を使用させてはならない。

(相手方等からの利益授受等)

第16条司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等から利益の供与若しくは供応を受け、又はこれを要求し、若しくはその約束をしてはならない。

2司法書士は、取り扱っている事件に関し、相手方又は相手方代理人等に対し、利益の供与若しくは供応をし、又はその約束をしてはならない。

(広告又は宣伝)

第17条司法書士は、虚偽の事実を含み、又は誤認を生じさせるおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

2司法書士は、品位又は信用を損なうおそれがある広告又は宣伝をしてはならない。

(記録の作成等)

第18条司法書士は、受任した事件の概要、金品の授受に関する事項その他重要と考えられる事項に関する記録を作成し、保管しなければならない。

2司法書士は、前項の記録を保管するに際しては、業務上知り得た秘密及びプライバシーに関する情報が漏洩しないように注意しなければならない。廃棄するに際しても同様とする。

補助者に対する指導及び監督)

第19条司法書士は、常に、補助者の指導及び監督を行わなければならない。

2司法書士は、補助者をしてその業務を包括的に処理させてはならない。

3司法書士は、補助者に対し、その者が業務上知り得た秘密を漏洩し、又は利用しないように指導及び監督しなければならない。

第3章依頼者との関係における規律

(依頼の趣旨の実現)

第20条司法書士は、依頼の趣旨を実現するために、的確な法律判断に基づいて業務を行わなければならない。

(受任の際の説明)

第21条司法書士は、事件を受任するにあたり、その処理の方法その他依頼の趣旨を実現するために必要な事項について説明しなければならない。

(報酬の明示)

第22条司法書士は、事件を受任するにあたり、報酬及び費用の金額又はその算定方法を明示し、かつ、十分に説明しなければならない。

2司法書士は、その報酬については、依頼者の受ける経済的利益、事案の難易、その処理に要した時間及び労力その他の個別具体的事情に照らして、適正かつ妥当なものとしなければならない。

契約書の作成)

第23条司法書士は、事件を受任するにあたり、依頼の趣旨並びに報酬及び費用に関する事項を記載した契約書を作成するように努めなければならない。

(事件の処理)

第24条司法書士は、事件を受任した場合には、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。

2司法書士は、依頼者に対し、事件の経過及び重要な事項を必要に応じて報告し、事件が終了したときは、その経過及び結果を遅滞なく報告しなければならない。

(公正を保ち得ない事件)

第25条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由がある事件については、業務を行ってはならない。

(公務等との関係)

第26条司法書士は、公務員又は法令により公務に従事する者として取り扱った事件については、業務を行ってはならない。

2司法書士は、仲裁人として取り扱った事件又は裁判外紛争解決手続において手続実施者その他これに準ずる者として関与した事件については、業務を行ってはならない。

(公正を保ち得ないおそれ)

第27条司法書士は、業務の公正を保ち得ない事由が発生するおそれがある場合には、事件を受任するにあたり、依頼者に対し、その事由の内容及び辞任の可能性があることについて説明しなければならない。

(不正の疑いがある事件)

第28条司法書士は、依頼の目的又はその手段若しくは方法に不正の疑いがある場合において、合理的な方法により調査を行ってもなおその疑いが払拭できないときは、その事件を受任してはならない。

(特別関係の告知)

第29条司法書士は、事件の受任に際して、依頼者の相手方と特別の関係があるために、依頼者との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を告げなければならない。

(受任後の措置)

第30条司法書士は、事件を受任した後に前5条に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し速やかにその事情を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(利益相反の顕在化)

第31条司法書士は、同一の事件で依頼者が複数ある場合において、その相互間に利益相反が生じたときは、各依頼者に対してその旨を告げ、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(他の司法書士の参加)

第32条司法書士は、受任している事件について、依頼者が他の司法書士又は司法書士法人に、相談又は依頼をしようとするときは、正当な理由なくこれを妨げてはならない。

(受任司法書士間の意見の不一致)

第33条司法書士は、同一の事件を受任している他の司法書士又は司法書士法人がある場合において、その処理に関して意見の不一致により依頼者に不利益を及ぼすおそれがあるときは、依頼者に対しその事情を説明しなければならない。

(依頼者との信頼関係の喪失)

第34条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者との信頼関係が失われ、かつ、その回復が困難である場合には、辞任する等適切な措置をとらなければならない。

(預り書類等の管理)

第35条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から預かった書類等を、善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。

(預り金の管理等)

第36条司法書士は、受任している事件に関し、依頼者から又は依頼者のために金員を受領した場合には、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にして管理しなければならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、依頼者のために金品を受領した場合には、速やかにその事実を依頼者に報告しなければならない。

(受任の継続不能)

第37条司法書士は、受任している事件の処理を継続することができなくなった場合には、依頼者が損害を被ることがないように、事案に応じた適切な措置をとらなければならない。

(係争目的物の譲受け)

第38条司法書士は、係争事件の目的物を譲り受けてはならない。

(依頼者との金銭貸借等)

第39条司法書士は、特別の事情がない限り、依頼者と金銭の貸借をし、又は自己の債務について保証をさせ、若しくは依頼者の債務について保証をしてはならない。

(賠償保険)

第40条司法書士は、依頼者を保護するために、業務上の責任について賠償責任保険に加入するように努めなければならない。

(事件の終了後の措置

第41条司法書士は、受任した事件が終了したときは、遅滞なく、金銭の精算、物品の引渡し及び預かった書類等の返還をしなければならない。

(依頼者との紛議等)

第42条司法書士は、依頼者との信頼関係を保持し紛議が生じないように努め、紛議が生じた場合には、協議により円満に解決するように努めなければならない。

第4章不動産登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第43条司法書士は、不動産登記業務を行うにあたり、登記の原因となる事実又は法律行為について調査及び確認をすることにより登記の真正を担保し、もって紛争の発生を予防する。

(実体上の権利関係の把握等)

第44条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、依頼者及びその代理人等が本人であること及びその意思の確認並びに目的物の確認等を通じて、実体上の権利関係を的確に把握しなければならない。

2司法書士は、前項の確認を行った旨の記録を作成し、保管しなければならない。

(公平の確保)

第45条司法書士は、不動産登記業務を受任した場合には、当事者間の情報の質及び量の格差に配慮するなどして、当事者間の公平を確保するように努めなければならない。

(登記手続の中止又は登記申請の取下げ)

第46条司法書士は、当事者の一部から、不動産登記手続の中止又は不動産登記申請の取下げの申出を受けた場合においては、他の当事者の利益が害されることのないように当事者全員の意思を確認し、適切な措置をとらなければならない。

(補助者による立会の禁止)

第47条司法書士は、不動産取引における立会を、補助者に行わせてはならない。

(複数の代理人が関与する登記手続)

第48条司法書士は、複数の代理人が関与する不動産登記業務を受任した場合には、依頼者の依頼の趣旨を実現するために必要な範囲において他の代理人と連携するように努めなければならない。

第5章商業・法人登記業務に関する規律

(基本姿勢)

第49条司法書士は、商業・法人登記業務を行うにあたり、登記原因及び添付書面等の調査及び確認をすることにより真正な登記の実現に努め、もって取引の安全と商業・法人登記制度の信頼の確保に寄与する。

(実体関係の把握)

第50条司法書士は、商業・法人登記業務を受任した場合には、会社若しくは法人の代表者又はこれに代わり依頼の任に当たっている者(以下「代表者等」という。)が本人であること、依頼の内容及び意思の確認をするとともに、議事録等の関係書類の確認をするなどして、実体関係を把握するように努めなければならない。

2司法書士は、議事録等の書類作成を受任した場合には、代表者等にその事実及び経過等を確認して作成しなければならない。

(法令遵守の助言)

第51条司法書士は、商業・法人登記業務を受任し、又はその相談に応じる場合には、会社及び法人の社会的責任の重要性を踏まえ、依頼者に対して、法令を遵守するように助言しなければならない。

第6章供託業務に関する規律

(基本姿勢)

第52条司法書士は、供託業務を行うにあたり、実体上の権利関係を的確に把握し、登記手続、裁判手続その他の関連する手続を踏まえて供託の目的を達成させる。

(供託が関係する相談)

第53条司法書士は、供託が関係する相談に応じる場合には、相談者が置かれている状況を的確に把握したうえで、供託手続の役割、内容及び方法について説明及び助言をしなければならない。

第7章裁判業務等に関する規律

(基本姿勢)

第54条司法書士は、裁判の公正及び適正手続の実現に寄与する。

(紛争解決における司法書士の役割)

第55条司法書士は、依頼者が抱える紛争について、正確な知識及び情報を提供し、最善の方法をもって業務を遂行することにより、依頼者の正当な権利の擁護及びその利益の実現に努めなければならない。

(裁判書類作成関係業務)

第56条司法書士は、裁判書類作成関係業務を受任した場合には、依頼者との意思の疎通を十分に図り、事案の全容を把握するように努め、依頼者にその解決方法を説明するなどして、依頼者自らが訴訟等を追行できるように支援しなければならない。

(簡裁訴訟代理等関係業務)

第57条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務を受任した場合には、代理人としての責務に基づき、依頼者の自己決定権を尊重して、業務を行わなければならない。

(業務を行い得ない事件)

第58条司法書士は、裁判業務(裁判書類作成関係業務及び簡裁訴訟代理等関係業務をいう。以下同じ。)に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は相手方から受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

2司法書士は、かつて司法書士法人の社員等(社員又は使用人司法書士をいう。以下同じ。)であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)社員等として業務に従事していた期間内に、当該司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(受任の諾否の通知)

第59条司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務の依頼に対し、その諾否を速やかに通知しなければならない。

(法律扶助制度等の教示)

第60条司法書士は、依頼者に対し、事案に応じて法律扶助制度又は訴訟救助制度を教示するなどして、依頼者の裁判を受ける権利が実現されるように努めなければならない。

(見込みがない事件の受任の禁止)

第61条司法書士は、依頼者が期待するような結果を得る見込みがないことが明らかであるのに、あたかもその見込みがあるかのように装って事件を誘発し、受任してはならない。

(有利な結果の請け合い等の禁止)

第62条司法書士は、受任した事件について、依頼者に有利な結果を請け合い、又は保証してはならない。

(偽証等のそそのかし等)

第63条司法書士は、偽証又は虚偽の陳述をそそのかしてはならない。

2司法書士は、虚偽と知りながらその証拠を提出し、又は提出させてはならない。

(裁判手続の遅延)

第64条司法書士は、不当な目的のために又は職務上の怠慢により、裁判手続を遅延させてはならない。

(相手方本人との直接交渉等)

第65条司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいる場合は、特別の事情がない限り、その代理人の了承を得ないで相手方本人と直接交渉してはならない。

2司法書士は、受任している事件に関し、相手方に法令上の資格がある代理人がいない場合において、相手方が代理人の役割について誤解しているときは、その誤解に乗じて相手方を不当に不利益に陥れてはならない。

第8章司法書士法第3条に定めるその他の業務に関する規律

(審査請求手続)

第66条司法書士は、審査請求手続を受任した場合には、審査請求の意義を依頼者に説明し、依頼者の権利が実現されるように努めなければならない。

(国籍に関する書類の作成)

第67条司法書士は、国籍に関する書類の作成を受任した場合には、その要件等を依頼者に説明及び助言をし、依頼者や関係者のプライバシー等の人権に配慮して、業務を行うように努めなければならない。

(検察庁に提出する書類の作成)

第68条司法書士は、検察庁に提出する書類の作成を受任した場合には、関係者の人権に配慮して、正義の実現に努めなければならない。

第9章成年後見業務等に関する規律

基本姿勢)

第69条司法書士は、成年後見業務等を行う場合には、本人の意思を尊重し、その心身の状態並びに生活及び財産の状況(以下「心身の状態等」という。)に配慮する。

法定後見等に関する相談)

第70条司法書士は、法定後見又は任意後見に関する相談に応じる場合には、本人のほか、親族、福祉、医療及び地域の関係者等の支援者(以下「支援者」という。)から、その意見、本人の心身の状態等を聴取するなどしたうえで、適切な助言をしなければならない。

(後見等開始申立書類の作成)

第71条司法書士は、後見等開始申立書類を作成する場合には、本人、申立人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した内容になるよう配慮しなければならない。

(任意後見契約の締結等)

第72条司法書士は、自己を受任者とする任意後見契約の締結を依頼された場合には、見守り契約等の任意後見契約に関連する契約の必要性を検討したうえで、本人の権利を擁護し、心身の状態等に適した契約になるように配慮しなければならない。

2司法書士は、前項の任意後見契約及びこれに関連する契約を締結する場合には、本人の心身の状態等に配慮し、本人が理解できるように適切な方法及び表現を用いて契約内容を説明しなければならない。

3司法書士は、第1項の任意後見契約を締結した場合において、精神上の障害により本人の事理弁識能力が不十分になったときは、本人及び支援者の意見を聴取するなどしたうえで、任意後見契約の効力を生じさせるなど、遅滞なく適切な措置をとらなければならない。

(支援者との連携)

第73条司法書士は、成年後見人等に就任した場合には、支援者と連携を図るように努めなければならない。

2前項の場合において、司法書士は、本人のプライバシーに配慮しなければならない。

第10章財産管理業務に関する規律

(基本姿勢)

第74条司法書士は、他人の財産を管理する場合には、自己の財産又は管理する他者の財産と判然区別することが可能な方法で各別に保管するなど、善良な管理者の注意をもって行う。

(委任による財産管理)

第75条司法書士は、委任により他人の財産を管理する場合には、委任者が適切な手続を選択することができるように説明しなければならない。

2司法書士は、前項の場合には、委任者と利益相反する行為をしてはならない。

3司法書士は、財産管理の状況について、定期的に委任者に報告しなければならない。委任者から報告を求められたときも、同様とする。

(法律の定めによる財産管理)

第76条司法書士は、法律の定めにより他人の財産を管理する者に選任された場合には、その目的を達するため誠実に財産管理を行わなければならない。

(遺言執行)

第77条司法書士は、遺言執行者に就任した場合には、遺言の内容を実現するため直ちに遺言執行事務に着手し、善良な管理者の注意をもってその事務を遂行しなければならない。

2司法書士は、遺言執行者に就任している場合において、遺言者の相続財産(遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産に限る。)に係る事件であって、相続人又は受遺者の依頼により、他の相続人又は受遺者を相手方とする裁判業務を行ってはならない。遺言執行者でなくなった後も、同様とする。

(遺産承継業務)

第78条司法書士は、遺産承継業務を受任する場合には、委任契約書を作成するなどして、依頼者に対し、受任事務の内容及び範囲を明らかにしなければならない。

2司法書士は、前項の場合においては、事案に応じて、依頼者に対し、業務の中断又は終了に関する事由を明らかにしなければならない。

(事件の終了)

第79条司法書士は、他人の財産の管理を終了したときは、遅滞なく、その管理する財産を委任者など受領権限がある者に引き渡さなければならない。

第11章民事信託支援業務に関する規律

(基本姿勢)

第80条司法書士は、民事信託支援業務を受任したときは、信託目的の達成に向けて、委託者、受託者、受益者その他信託関係人の知識、経験、財産の状況等に配慮して業務を行う。

(適正な民事信託の支援)

第81条司法書士は、民事信託の設定を支援するにあたっては、委託者の意思を尊重し、かつ、信託法上の権利及び義務に関する正確な情報を提供するように努めなければならない。

2司法書士は、民事信託の設定後においては、受託者の義務が適正に履行され、かつ、受益者の利益が図られるよう、必要に応じて、継続的な支援に努めなければならない。

第12章共同事務所における規律

(遵守のための措置)

第82条複数の司法書士が事務所を共にする場合(以下「共同事務所」という。)において、その共同事務所を監督する立場にある司法書士があるときは、当該司法書士は、共同事務所に所属する全ての司法書士(以下「所属司法書士」という。)が、法令、会則等を遵守するために必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第83条所属司法書士は、正当な事由がある場合を除き、他の所属司法書士が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。所属司法書士でなくなった後も同様とする。

(共同事務所における業務を行い得ない事件)

第84条所属司法書士は、他の所属司法書士(所属司法書士であった者を含む。)が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(所属司法書士であった者が裁判業務を行い得ない事件)

第85条所属司法書士であった司法書士は、所属司法書士であった期間内に、他の所属司法書士が取り扱った裁判業務に係る事件で、自らこれに関与していた事件については、その事件の相手方の依頼を受けて裁判業務を行ってはならない。

(受任後の措置)

第86条所属司法書士は、事件を受任した後に第84条本文に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第87条所属司法書士は、共同事務所として、当事者情報の確認その他必要な措置をとるなどをして、業務を行い得ない事件の受任を防止するように努めなければならない。

第13章司法書士法人における規律

(遵守のための措置)

第88条司法書士法人は、その社員等が法令、会則等を遵守するための必要な措置をとらなければならない。

(秘密保持の義務)

第89条社員等は、正当な事由がある場合を除き、司法書士法人、他の社員等が業務上知り得た秘密を保持しなければならず、又は利用してはならない。社員でなくなった後も同様とする。

(司法書士法人が業務を行い得ない事件)

第90条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第4号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合はこの限りでない。

(1)相手方の依頼を受けて行った事件又は受任している事件

(2)相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

(3)相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(4)受任している事件の相手方からの依頼による他の事件

(5)受任している事件の依頼者を相手方とする他の事件

(6)その他受任している事件の依頼者と利益相反する事件

(司法書士法人が社員等の関係で業務を行い得ない事件)

第91条司法書士法人は、裁判業務に係る次の事件については裁判業務を行ってはならない。

(1)社員等が相手方から受任している事件

(2)第25条、第26条若しくは第58条第1号から第6号まで又は第92条第2項第1号から第3号までに掲げる事件として社員の半数以上(簡裁訴訟代理等関係業務に係る事件については特定社員の半数以上)の者が裁判業務を行ってはならないこととされる事件

(社員等が司法書士法人との関係で業務を行い得ない事件)

第92条社員等は、裁判業務に係る次の事件については、裁判業務を行ってはならない。ただし、第2号に掲げる事件については、司法書士法人が受任している事件の依頼者の同意がある場合は、この限りでない。

(1)司法書士法人が相手方から受任している事件

(2)司法書士法人が受任している事件の相手方の依頼による他の事件

2社員等は、かつて別の司法書士法人(以下「その司法書士法人」という。)の社員等であった場合は、裁判業務に係る次の事件(自ら関与したものに限る。)については、裁判業務を行ってはならない。

(1)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の依頼を受けて行った事件

(2)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又は依頼を承諾した事件

(3)その司法書士法人の社員等として業務に従事していた期間内に、その司法書士法人が相手方の協議を受けた事件で、協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの

(社員等が他の社員等との関係で業務を行い得ない事件)

第93条社員等は、他の社員等が業務を行い得ない事件については、業務を行ってはならない。ただし、業務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

(受任後の措置)

第94条司法書士法人は、事件を受任した後に、第90条又は第91条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

2社員等は、事件を受任した後に、前2条の規定に該当する事由があることを知ったときは、依頼者に対し、速やかにその事情を告げ、事案に応じて適切な措置をとらなければならない。

(業務を行い得ない事件の受任防止

第95条司法書士法人は、業務を行い得ない事件の受任を防止するために、当事者情報の確認その他必要な措置をとるように努めなければならない。

(準用)

第96条第1章から第11章まで(第4条、第5条、第6条、第11条第1項、第26条第2項及び第58条を除く。)、第14章及び第15章の規定は、司法書士法人について準用する。

第14章他の司法書士との関係における規律

(名誉の尊重)

第97条司法書士は、他の司法書士(司法書士法人を含む。以下、本章において同じ。)との関係において、相互に名誉と信義を重んじる。

(他の事件への介入)

第98条司法書士は、他の司法書士が受任している事件に関して、不当に介入してはならない。

(相互協力)

第99条司法書士は、他の司法書士と共同して業務を行う場合には、依頼者とそれぞれの司法書士との間の委任関係を明確にして、依頼の趣旨の実現に向け、相互に協力しなければならない。

2司法書士は、事件処理のために復代理人を選任する場合には、依頼の趣旨の実現に向け、復代理人と十分な意思疎通を図らなければならない。

第15章司法書士会等との関係における規律

(規律の遵守)

第100条司法書士は、自治の精神に基づき、司法書士会等が定める規律を遵守する。

(組織運営への協力)

第101条司法書士は、司法書士会等の組織運営に積極的に協力する。

(事業への参加)

第102条司法書士は、司法書士会等が行う事業に積極的に参加する。また、司法書士会等から委嘱された事項を誠実に遂行する。

附則(令和4年6月23日・24日第87回定時総会承認)

この規範は、令和5年4月1日から施行する。

Tsuyoshi Taniguchi

これ見てる人全員アウトー!!

司法書士行為規範 (品位の保持) 第4条 司法書士は、常に、人格の陶冶を図り、教養を高め、司法書士としての品位を保持 する。

Tsuyoshi Taniguchi

非弁と言われる可能性は数年前まではかなり悩んでましたが、今はほとんど意識しなくなりましたかね。 「信託は魔法のツール」ってやりたい放題やってた時期はいつ誰が刺されるかとドキドキしてました。 司法書士行為規範に民事信託を盛り込んで、「目指すべき適正な形」を明文化したのは大きかった。

https://x.com/Hamuuuuuuuuuuu/status/1714521896757407774?s=20

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加工戸籍法等の改正に関する中間試案メモ

戸籍法部会第6回会議(令和4年5月17日開催)

https://www.moj.go.jp/shingi1/koseki20220517_00002.html

第1 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍の記載事項化に関する事項

1 戸籍の記載事項への追加

戸籍の記載事項として、戸籍法第13条に次のいずれかの規定を設けるもの

とする。

【甲案】氏名を平仮名で表記したもの

【乙案】氏名を片仮名で表記したもの

(注)氏名を平仮名(片仮名)で表記したものとして戸籍に記載することができる平仮名又は片仮名の範囲は、平仮名についての表記の方法を定める現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)本文第1(直音、拗音、撥音、促音)又はこれを片仮名に変換したもののほか、小書き(「ぁ」、「ァ」など)及び長音(「ー」)など、戸籍の氏名に用いることができる文字及び記号も範囲に含めることが考えられる。

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性に関する審査について、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法には規定を設けず、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による(注1)。

【乙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものとする。

【丙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、次のいずれかとする。

① 国字の音訓又は慣用により表音されるもの

② 国字の音訓又は慣用により表音されるものでなくても、字義との関連性が認められるものその他法務省令で定めるものを届け出た(申し出た)場合における当該表記

(注1)【甲案】について法令に規定することも考えられる。

(注2)【乙案】又は【丙案】における「慣用」は、社会的にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されているという社会的慣用を意味するものである。

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224#:~:text=%E7%AC%AC%E5%8D%81%E4%B8%89%E6%9D%A1%20%E6%88%B8%E7%B1%8D,%E8%A8%98%E8%BC%89%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%91%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%82&text=%E7%AC%AC%E5%8D%81%E5%9B%9B%E6%9D%A1%20%E6%B0%8F%E5%90%8D,%E3%81%AF%E3%80%81%E5%B7%A6%E3%81%AE%E9%A0%86%E5%BA%8F%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%80%82&text=%E2%91%A1%20%E5%AD%90%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%A7%E3%81%AF,%E3%81%AB%E3%81%93%E3%82%8C%E3%82%92%E8%A8%98%E8%BC%89%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

第十三条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。

一 氏名

二 出生の年月日

三 戸籍に入つた原因及び年月日

四 実父母の氏名及び実父母との続柄

五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄

六 夫婦については、夫又は妻である旨

七 他の戸籍から入つた者については、その戸籍の表示

八 その他法務省令で定める事項

第2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集に関する事項

1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集

 戸籍法第13条第1号に定める氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係るものについては、氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書(出生、国籍取得、帰化、氏の変更、名の変更、就籍の届書等)の記載事項とし、これを戸籍に記載することとする(注)。

(注)例えば、「届出事件の本人の氏又は名を初めて戸籍に記載するときは、届書にその氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載しなければならない。」というような規定を戸籍法に設けることが考えられる。

2 既に戸籍に記載されている者に係る収集

 既に戸籍法第13条第1号に定める氏名が戸籍に記載されている者は、一定期間内に本籍地の市区町村長(注1)に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの申出をしなければならないものとし、一定期間内に当該申出があった場合には、当該市区町村長が当該申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする(注2)(注3)。

 一定期間内に当該申出がない場合には、本籍地の市区町村長が国字の音訓又は慣用その他法務省令で定める方法により職権で、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする。

(注1)ここでは当該戸籍を管掌する本籍地の市区町村長を想定しているが、所在地の市区町村長を加えることも考えられる。

(注2)申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが第1の2により許容されるものでないとして戸籍に記載されなかった場合、その不服申立てについては、戸籍法第122条の規定を準用するものとすることが考えられる。

(注3)市区町村長の職権による戸籍への記載を促すものとしての「申出」ではなく、戸籍法上の「届出」と整理した上で、届出義務を課し、正当な理由なく期間内に届出がない場合には、過料の制裁を科す(戸籍法第137条参照)方法も考えられる。

原則

申出・・・提出機関の承認等が必要。

届出・・・提出機関の承認等が不要。

第3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する事項

1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律

氏又は名の変更に伴わない場合の規律は、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注1)。

1 やむを得ない事由【正当な事由】(注2)によって氏を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

2 正当な事由によって名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

【乙案】【甲案】に加え、戸籍法に次のような内容の規律を設けるものとする(注3)。

氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、成年に達した時から1年以内に届け出る場合その他法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

(注1)成年に達した者が自ら氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを届け出た(申し出た)後、これを変更しようとする場合には、その変更の許否はより厳しく審査されるべきものとすることも考えられる。

(注2)変更の要件について、氏の変更(戸籍法第107条第1項)よりも緩和することとし、「やむを得ない事由」に代えて「正当な事由」とする案も考えられる。

(注3)【乙案】による変更は、一度に限ることとする。

2 氏又は名の変更に伴う場合の規律

戸籍法第107条第1項又は第107条の2の規定により氏又は名を変更しようとするときは、その平仮名(片仮名)で表記したものとともに、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないこととする。

戸籍法等の改正に関する中間試案の補足説明

令和4年5月

法務省民事局民事第一課

戸籍法等の改正に関する中間試案の補足説明

目 次

はじめに ……………………….. 1

第1 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍の記載事項化に関する事項 …. 3

1 戸籍の記載事項への追加 ………………. 3

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性 …. 5

第2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集に関する事項 ……. 9

1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集 …………… 9

2 既に戸籍に記載されている者に係る収集 …………………. 10

第3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する事項 …….. 13

1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律 ……………………. 13

2 氏又は名の変更に伴う場合の規律 ……………………… 17

はじめに

 我が国に全国統一の近代的身分登録制度が設けられたのは、明治4年太政官布告第170号の戸籍法によってであり、以後、昭和22年法律第224号による戸籍法の全面改正を含め、幾度の制度改正がされてきたが、これまで、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを付することに関して、戸籍法令に規定されたことはない。

 また、昭和50年、昭和56年及び平成29年に、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍の記載事項とすることが検討されたものの、いずれもその制度化は見送られてきた。

 こうした中、令和2年12月25日に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画において、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」報告のとおり、迅速に戸籍における読み仮名(カナ氏名)の法制化を図ることとされた。

 さらに、令和3年5月12日に成立し、同月19日に公布されたデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)附則第73条においても、「政府は、行政機関等に係る申請、届出、処分の通知その他の手続において、個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを利用して当該個人を識別できるようにするため、個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とすることを含め、この法律の公布後一年以内を目途としてその具体的な方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」との検討条項が設けられた。

 なお、上記デジタル・ガバメント実行計画は令和3年12月24日に廃止され、同日閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画の中で、「デジタル社会形成整備法附則第73条の規定を踏まえ、戸籍法制の見直しに関する法務大臣の諮問に対する法制審議会からの答申が得られ次第速やかに、戸籍における氏名の読み仮名の法制化に向けた作業を進め、令和5年(2023 年)の通常国会に関連する法案を提出した上で、令和6年度(2024 年度)を目途に実現を図る。」こととされた。

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを法制化する必要性が高まった背景として、①我が国における社会全体のデジタル化の推進、特にベース・レジストリの整備を推進する方針が定められたこと、②今般の新型コロナウイルス感染症対応を契機として、行政のデジタル化を更に推進し、デジタル社会における国民サービスを拡充する必要性が高まったこと、③難読な名の読み方(読み仮名)が増えていること、④我が国における国際化の進展に伴い、例えば、まず、外来語の名又は外国で出生したり、父若しくは母が外国人である子などについては音としての名を定め、次に、その意味又は類似する音に相当する文字を文字で表記された名とする場合など、文字で表記された名よりもその読み方(読み仮名)により強い愛着がある者も少なくないと考えられることなどが挙げられる。

 そして、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの登録・公証が必要な理由は、次のとおりであると考えられる。

(1) 正確に氏名を呼称することが可能となる場面が多くなることによって、他人から自己の氏名を正確に呼称される権利・利益の保護に資する。

(2) 社会生活において「なまえ」として認知されるものの中には、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものも含まれているとの理解が広がりつつあり、これを登録・公証することは、まさしく「なまえ」の登録・公証という点からも意義がある。

(3) 情報システムにおける検索及び管理の能率を向上させるとともに、行政手続等において、公証された氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの情報を利用することによって、手続をより円滑に進めることが可能となり、国民の利便性の向上に資する。また、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを本人確認事項の一つとすることを可能とすることにより、各種手続における不正防止を補完することが可能となる。

 以上のような状況を踏まえ、令和3年9月16日開催の法制審議会第191回会議において、上川陽子法務大臣(当時)から法制審議会に対し、「個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とする規定を整備するなど、戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられるので、その要綱を示されたい。」との諮問(諮問第116号)がされ、その調査審議のため、戸籍法部会(部会長・窪田充見神戸大学大学院教授)(以下「部会」という。)が設置された。

 部会では、上記の問題意識を踏まえ、令和3年11月から令和4年5月までの間、約1か月に1回のペースで審議を重ね、令和4年5月17日の第6回会議において、「戸籍法等の改正に関する中間試案」(以下「試案」という。)を取りまとめるとともに、事務当局においてこれを公表し、意見照会の手続を行うことが了承された。以上の経緯により、事務当局である法務省民事局民事第一課において試案を公表し、意見照会の手続を行うこととなった。

今後、部会においては、試案に対して寄せられた御意見を踏まえ、要綱案の取りまとめに向けて、引き続き審議が行われる予定である(要綱案の取りまとめの時期及びこれを受けた法案の提出時期は、現時点では未定である。)。なお、この補足説明は、試案を公表するに当たり、これまでの部会における審議を踏まえ、試案の内容の理解に資するため、試案に掲げられた各項目について、その趣旨等を補足的に説明するものであり、事務当局である法務省民事局民事第一課の責任において作成したものである。このように、この補足説明は、飽くまでも意見募集の対象である試案の内容について検討を加える際の参考資料として作成したものであって、それ以上の意味を持つものではない。

第1 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍の記載事項化に関する事項

1 戸籍の記載事項への追加

戸籍の記載事項として、戸籍法第13条に次のいずれかの規定を設けるものとする。

【甲案】氏名を平仮名で表記したもの

【乙案】氏名を片仮名で表記したもの

 (注)氏名を平仮名(片仮名)で表記したものとして戸籍に記載することができる平仮名又は片仮名の範囲は、平仮名についての表記の方法を定める現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)本文第1(直音、拗音、撥音、促音)又はこれを片仮名に変換したもののほか、小書き(「ぁ」、「ァ」など)及び長音(「ー」)など、戸籍の氏名に用いることができる文字及び記号も範囲に含めることが考えられる。

(補足説明)

1 試案の概要

試案は、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍法に定める戸籍の記載事項とするに当たり、戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものと位置付けた上、戸籍の記載事項としての表記を平仮名又は片仮名のいずれかに定めることとするものである。

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの法令上の位置付け氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの戸籍法上の位置付けとしては、戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」の一部と規定する方法又は戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものとして規定する方法が考えられる。

 戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」の一部と規定する場合には、戸籍法における「氏名」に関する他の規定及び戸籍法以外の各種法令の規定において、「氏名」に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが含まれるのか、疑義が生じないように手当てをする必要があるものと考えられるところ、部会では、データ項目としての取扱いの観点から戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものと位置付けるべきであるとの意見があったことや、各種法令の規定への影響をも考慮して、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍法第13条第1号に規定する「氏名」とは別個のものと位置付けることとされた。

3 戸籍の記載事項としての表記

 令和3年5月26日内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室決定において、戸籍の記載事項は、「今後ベース・レジストリとして整備のあり方を含め検討するもの」として指定されており、戸籍に記載する氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、いわゆるマスターデータとなることや、データの利用に当たっての利便性の観点などから、戸籍の記載事項としての表記については平仮名又は片仮名のいずれかに特定すべきものと考えられる。

 この点、平仮名と片仮名とでは、長音の場合に平仮名では母音を重ねるのに対し、片仮名では長音記号(「ー」)が用いられることが多いなど、表記の方法が異なる場合があるものの、令和4年1月7日文化審議会建議「公用文作成の考え方」の解説において、「片仮名で表記されている人名、地名、外来語の長音に平仮名で振り仮名を付ける必要があるような場合には、便宜的に長音符号をそのまま用いてよい。」とされている。

 なお、常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)においては、「字音は片仮名で、字訓は平仮名で」表記されているものの、前書きにおいて、「この表は、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。」とされている。

4 各案の内容

(1) 【甲案】

【甲案】は、戸籍の記載事項としての表記を平仮名と定めるものである。

 現行の戸籍事務において使用していないものの、法務省民事局長通達に定める出生届書等の標準様式には、氏名の「よみかた」欄が設けられているところ、法務省ホームページに掲載されている出生届書の記載例において、「よみかた」欄には、平仮名で記載されている。

 したがって、戸籍の届書の「よみかた」欄には、平仮名で記載されていることが多いと想定されるところ、【甲案】を採用すると、「よみかた」欄の表記と整合する場面が多くなると想定され、届書に記載された「よみかた」をそのまま戸籍に記載することが考えられる。

(2) 【乙案】

【乙案】は、戸籍の記載事項としての表記を片仮名と定めるものである。

 部会では、片仮名表記は、平仮名表記と比較して表音が容易であり、外来語の表記に違和感を覚えにくいという特徴があるとの指摘や、金融機関においては、データ通信量等の観点から、半角カナが用いられているとの指摘があった。

 また、我が国における国際化の進展に伴い、今後も増加することが想定される外国を起源とする名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、片仮名表記の方がなじみやすいとの見方もある。

5 戸籍に記載することができる平仮名又は片仮名の範囲(試案の注)

 現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころとして、現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)及び「現代仮名遣い」の実施について(昭和61年内閣訓令第1号)が定められている。「現代仮名遣い」は、平仮名による表記の方法を定めたものであることから、【甲案】を採用する場合には、戸籍に記載することができる平仮名の範囲は、「現代仮名遣い」本文第1に定められた直音、拗音、撥音、促音とすることとし、【乙案】を採用する場合には、戸籍に記載することができる片仮名の範囲は、「現代仮名遣い」本文第1に定められた直音、拗音、撥音、促音を片仮名に変換したものとすることが考えられる。

 また、戸籍先例上、小書き(「ぁ」、「ァ」など)及び長音「ー」なども戸籍に記載することができるとされていることから、これらも範囲に含めることが考えられる。

6 その他

 氏又は名の全部又は一部が平仮名又は片仮名の者も想定して、規定振りについては、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性に関する審査について、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法には規定を設けず、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による(注1)。

【乙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものとする。

【丙案】権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則によるほか、氏名との関連性について、戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注2)。

氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、次のいずれかとする。

① 国字の音訓又は慣用により表音されるもの

② 国字の音訓又は慣用により表音されるものでなくても、字義との関連性が認められるものその他法務省令で定めるものを届け出た(申し出た)場合における当該表記

(注1)【甲案】について法令に規定することも考えられる。

(注2)【乙案】又は【丙案】における「慣用」は、社会的にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されているという社会的慣用を意味するものである。

(補足説明)

1 試案の概要

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの審査においては、①氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの自体の許容性(氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを単独で見た際の許容性)と、②氏名との関連性(氏名とそれを平仮名(片仮名)で表記したものを照らし合わせた際の許容性)という2つの観点があるものと考えられる。

【甲案】は、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則により審査することとするものであるが、【甲案】だけでは、②の観点からの審査に支障を来すおそれがあるとの見方もある。

そこで、【乙案】及び【丙案】は、法の一般原則により①の観点から審査するのに加えて、②の観点からの審査基準を明記するものである。

また、【丙案】は、【乙案】を基本としつつ、名乗り訓(名前に特有の訓読み)や部分音訓(漢字の音訓の一部のみを用いた読み)などを想定し、②の観点から許容される範囲を広げるものである。

2 各案の内容

(1) 【甲案】

【甲案】は、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則により審査することとするものである。

【甲案】の権利濫用の法理における「権利」については、次のように考えることが可能である。試案の第2の1の氏又は名を初めて戸籍に記載される場合のうち、親権者が子に命名する場面においては、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについての命名権が考えられる。

【甲案】の公序良俗の法理による審査については、商標の例が参考となる。商標登録を受けることができない商標を定める商標法第4条第7号において、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」と規定されており、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標の例示として、特許庁ウェブサイトにおいて、「商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合。なお、非道徳的若しくは差別的又は他人に不快な印象を与えるものであるか否かは、特に、構成する文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断する。」と掲載されている。

上記の例によれば、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについても、それ自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるようなものである場合には、許容されないこととなるものと考えられる。

特許庁ウェブサイト商標審査基準

六 第4条第1項第7号(公序良俗違反)

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html

(2) 【乙案】

旅券法施行規則(平成元年外務省令第11号)第5条第2項においては、旅券に記載されるローマ字表記の氏名について、「法第6条第1項第2号の氏名は、戸籍に記載されている氏名(戸籍に記載される前の者にあっては、法律上の氏及び親権者が命名した名)について国字の音訓及び慣用により表音されるところによる。ただし、申請者がその氏名について国字の音訓又は慣用によらない表音を申し出た場合にあっては、公の機関が発行した書類により当該表音が当該申請者により通常使用されているものであることが確認され、かつ外務大臣又は領事官が特に必要であると認めるときはこの限りではない。」と規定されている。

旅券法施行規則(平成元年外務省令第十一号)

(旅券の記載事項)第五条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=401M50000020011

【乙案】は、これを参考として、氏名との関連性の観点による審査基準について、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものとするものである。

(3) 【丙案】

【丙案】は、【乙案】を基本としつつ、氏名との関連性の観点から、名乗り訓や部分音訓などが含まれることを明確にしようとするものであり、国字の音訓又は慣用によらない場合についても一定の範囲で許容できる場合を規定するものである。

部会では、「字義との関連性」について、字義との関連性の有無の判断には困難を伴うとの意見があったことなどを踏まえ、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、国字の音訓又は慣用により表音されるものでなくても、字義との関連性が認められるもののほか、法務省令で定めるものにつき、「届出(申出)」を要件として許容することとしている。

【丙案】の「法務省令で定めるもの」としては、既に戸籍に記載されている者については、旅券やその他の公簿等に氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの又はこれらを元にしたローマ字が登録され公証されている場合などが考えられる。また、名乗り訓や部分音訓によるものが考えられる。

3 各案の問題

(1) 【甲案】の問題

 【甲案】については、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの自体の許容性の観点から審査することは可能であるが、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による審査である以上、氏名との関連性の観点から審査することは困難であるとも考えられ、審査に支障を来すおそれがあるとの見方もある。

 他方で、部会では、権利濫用の法理、公序良俗の法理等の法の一般原則による場合であっても、氏名との関連性の観点からの審査も可能ではないかとの意見があった。

 この点、例えば、「鈴木」という氏について、それを平仮名(片仮名)で表記したものを「さとう(サトウ)」とするものなど、相手方に、当該氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが常に誤記されたものと受け取られるものについては、【甲案】の規律の下でも、氏名との関連性が乏しく、広く誤解を招くなどの弊害を生ずるとの観点から、これを排除することができるか否かについて、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

(2)【乙案】の問題

 【乙案】に関しては、①慣用については、その範囲や判断基準を明確に定めることは困難である、また、②氏にあっては、慣用にない氏を平仮名(片仮名)で表記したものや字義と一致しない氏を平仮名(片仮名)で表記したものが実際上使用されている、③名にあっては、命名文化として、最初に誰かが名を平仮名(片仮名)で表記したものとして考えた漢字の読みが広まって一般的な名乗り訓となるところ、仮に新たな名乗り訓となり得るものが認められないことになると、これまでの命名文化・習慣が継承されないこととなるなどの指摘があった。

 また、【乙案】における「国字の音訓若しくは慣用による表音」及び「字義との関連性」は、氏名が漢字で表記されていることを前提としているものとも考えられ、氏又は名の全部又は一部が平仮名又は片仮名の者も想定して、規定振りについては、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

 なお、部会では、漢字の中には、反訓読みといわれる反対の意味の読みが存在するものがあるとの指摘があったところ、反訓読みによるものについては、混乱が生じることを防止するため、これを認めるべきでないとの意見があった一方で、反訓読みは中国の訓詁学の中で育まれてきたものであり、その一部は漢和辞典にも掲載されているとの指摘があった。

(3) 【甲案】を法令に規定する場合の問題(試案の注1)

試案の(注1)のとおり、【甲案】については法令に規定することも考えられる。

東京家裁八王子支部平成6年1月31日審判(判例時報1486号56頁)において、「市町村長の命名についての審査権も形式的審査の範囲にとどまり、その形式のほか内容にも及び、実質的判断までも許容するものとは解されないが、例外的には、親権(命名権)の濫用に亙るような場合や社会通念上明らかに名として不適当と見られるとき、一般の常識から著しく逸脱しているとき、または、名の持つ本来の機能を著しく損なうような場合には、戸籍事務管掌者(当該市町村長)においてその審査権を発動し、ときには名前の受理を拒否することも許されると解される。」とされたとおり、名を初めて戸籍に記載する場合には、戸籍窓口において、許容性について法の一般原則による審査が行われているものの、現行法上、その審査に関する明文の規定はなく、戸籍法第50条第1項において、「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。」と規定されているに過ぎない。そこで、【甲案】を法令に規定する場合には、氏名についても同様に、その審査に関する明文の規定を設けることが考えられるものの、慎重な検討が必要であると考えられる。

(4) 【乙案】及び【丙案】における「慣用」(試案の注2)

 試案の(注2)のとおり、【乙案】又は【丙案】における「慣用」は、社会的にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されているという社会的慣用を意味するものである。具体的には、次のような考え方のいずれかが満たされていれば「慣用」があると解することが考えられる。すなわち、①不特定多数人において、氏又は名から当該氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを判読することが可能であること、②名を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、多数人において当該名を平仮名(片仮名)で表記したものが使用されていることなどが考えられる。

4 その他

 部会では、氏名及び氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが個人の権利・利益と密接に関わるものであることは明らかであるが、その一方で、氏名は、社会において個人を識別する機能を有するものであり、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものもまた、同様の機能を有するものであることから、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを定めるに当たっては、社会的な混乱を防止するため、一定の制約を受けると考えられるとの意見があった。

 また、字義との関連性などを戸籍窓口において審査することは困難であり、抽象的な規律とせざるを得ないとの意見や、戸籍窓口における混乱を防止するため、これまでの「よみかた」については審査をしないという取扱いを大幅に変更するのは相当でなく、一般的抽象的な規律を設け、個別に判断することとするのが適切であるとの意見があった。

 さらに、戸籍窓口の事務への影響や不受理件数の増大、ひいては家庭裁判所の実務への影響も懸念されるとの意見や、戸籍窓口や家庭裁判所において、どのような要件をどのようなスタンスで審理・判断することになるのかについて、議論を尽くすことが重要だとの意見、特に、【甲案】における権利濫用や公序良俗等の概念は抽象的なので、具体的基準として機能するよう、具体的に議論を尽くすべきであるとの意見もあった。

 これらの意見を踏まえると、戸籍窓口である市区町村に対し、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの審査に関する明確な資料を示す必要があるものと考えられ、また、家庭裁判所から市区町村に対し、当該審査の運用状況に関する調査嘱託等がなされた場合には、上記資料を提供することなどの手続的な手当についても、検討する必要があるものと考えられる。

第2 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集に関する事項

1 氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係る収集

 戸籍法第13条第1号に定める氏又は名が初めて戸籍に記載される者に係るものについては、氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書(出生、国籍取得、帰化、氏の変更、名の変更、就籍の届書等)の記載事項とし、これを戸籍に記載することとする(注)。

(注)例えば、「届出事件の本人の氏又は名を初めて戸籍に記載するときは、届書にその氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載しなければならない。」というような規定を戸籍法に設けることが考えられる。

(補足説明)

 戸籍の記載は、届出、報告、申請、請求若しくは嘱託、証書若しくは航海日誌の謄本又は裁判によってするとされているところ(戸籍法第15条)、実情として、届出による記載がほとんどである。

 そこで、試案のとおり、氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書の記載事項とすることにより、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを収集することを提案している。

2 既に戸籍に記載されている者に係る収集

 既に戸籍法第13条第1号に定める氏名が戸籍に記載されている者は、一定期間内に本籍地の市区町村長(注1)に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの申出をしなければならないものとし、一定期間内に当該申出があった場合には、当該市区町村長が当該申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする(注2)(注3)。

 一定期間内に当該申出がない場合には、本籍地の市区町村長が国字の音訓又は慣用その他法務省令で定める方法により職権で、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとする。

(注1)ここでは当該戸籍を管掌する本籍地の市区町村長を想定しているが、所在地の市区町村長を加えることも考えられる。

(注2)申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが第1の2により許容されるものでないとして戸籍に記載されなかった場合、その不服申立てについては、戸籍法第122条の規定を準用するものとすることが考えられる。

(注3)市区町村長の職権による戸籍への記載を促すものとしての「申出」ではなく、戸籍法上の「届出」と整理した上で、届出義務を課し、正当な理由なく期間内に届出がない場合には、過料の制裁を科す(戸籍法第137条参照)方法も考えられる。

(補足説明)

1 試案の概要

 既に戸籍法第13条第1号に定める氏名が戸籍に記載されている者に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの収集方法として、試案の(注3)のとおり、戸籍法上の「届出」と整理した上で、戸籍に記載されている者に届出義務を課すことにより、自ら届出をすることとし、法定の期間内に届出がない場合には本籍地の市区町村長が職権で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載することも考えられるが、部会では、このような整理の下では、法定の期間内に届出がされなかった場合に過料の対象となることを理由として、否定的な意見が多数であった。

 他方で、短期間にできるだけ多くの氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを収集するためには、過料の対象とならない市区町村長の職権による戸籍への記載を促すものとしての申出事項と整理しつつ、申出をしなければならないこととすべきであるとの意見もあった。

 以上の意見も踏まえ、効果的かつ国民にとって過度の負担にならない方法により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを収集することを目指し、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、職権での記載を促す申出事項と整理した上で、一定期間内に申出を容易にする方策を講じ、当該期間内に申出がない場合には本籍地の市区町村長が職権で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載する案を提示している。

 なお、氏名を平仮名又は片仮名で表記したものが試案第1の2により許容されるものでないとして戸籍に記載されなかった場合、その不服申立てについては、戸籍法第122条の規定を準用し、家庭裁判所に不服の申立てをすることができるとすることが考えられる((注2)参照)。

2 試案の内容

 試案は、戸籍に記載されている者に対し、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについての申出(職権記載の申出)の義務を課した上で、一定期間内に申出があった場合には、本籍地の市区町村長(なお、試案の(注1)のとおり、所在地の市区町村長を加えることも考えられる。)が当該申出に係る氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載することとし、他方、当該期間内に当該申出がない場合には、本籍地の市区町村長が法務省令で定める方法により職権で、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載するものとするものである。なお、職権記載の申出に義務を課すことについては、法制上、そのような仕組みとすることが可能かどうか、引き続き検討する必要があるものと考えられる。

 現在の運用として、例えば、出生や死亡があった場合、戸籍法に規定された届出人がいる場合には、届出人により出生や死亡の届出がされることになるところ、届出人がいない場合や既に亡くなっている場合であって、届出人以外の者から出生証明書や死亡診断書等の確実な資料が提出された場合には、職権記載の申出として取り扱い、本籍地の市区町村長は、戸籍法第24条第2項により出生事項や死亡事項を戸籍に記載することとなる。

 このようにして戸籍に記載する端緒となる職権記載の申出自体については特段の根拠規定がないものの、職権記載申出の義務を課すこととするのであれば、試案の第1文前半については、法令に規定する必要があり、第2文については、法令に規定する方法又は法令に規定しない方法が考えられる。

 試案の第2文を法令に規定しない方法については、以下のとおり整理することが可能である。すなわち、試案の第1の1により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが戸籍の記載事項として法令に規定されている以上、戸籍法第24条第1項の「戸籍の記載に遺漏がある」状態と評価することができ、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、試案の第1の2において【乙案】を採用する場合には、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものであり、【丙案】を採用する場合には、申出がない限り、国字の音訓又は慣用により表音されるものであることから、本籍地の市区町村長は、同条第2項の戸籍訂正により、戸籍の氏名の記載を元にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載することができると考えられる。

 なお、試案の第2文により、本籍地の市区町村長が職権により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載した場合には、戸籍法施行規則第47条の2に基づき、届出人又は届出事件の本人に戸籍訂正した旨を連絡することが考えられる。

3 申出期間

 試案の規律によると、一定期間内に氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの申出がされなかった場合、申出義務違反の状態になるため、当該期間が適切なものとなるよう検討する必要がある。当該期間について、法の施行日から長期間とすることは相当でないものの、具体的な期間については、収集方法を踏まえて引き続き検討することとされた。

4 申出を容易にする方策

 申出期間内に多くの申出がされるよう、効果的な収集方法を検討する必要があり、いわゆるプッシュ型の取組も効果的であると考えられるところ、申出を容易にする方策の一つとして、本籍地の市区町村や住所地の市区町村が氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの若しくはこれに準ずる情報を保有している場合には当該情報又は氏名に係る国字の音訓若しくは慣用により表音されるところにより、申出人となるべき者に戸籍に記載する氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、まず通知をすることが考えられる。

5 職権記載に当たっての指針

 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものは、試案の第1の2において【乙案】を採用する場合には、国字の音訓若しくは慣用により表音され、又は字義との関連性が認められるものであり、【丙案】を採用する場合には、申出がない限り、国字の音訓又は慣用により表音されるものであることから、本籍地の市区町村長は、戸籍法第24条第2項の戸籍訂正により、戸籍の氏名の記載を元にその氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載することができるが、氏名を平仮名(片仮名)で表記されるものが複数想定されることも考えられる。そこで、【甲案】はもとより、【乙案】・【丙案】のいずれを採用する場合であっても、本籍地の市区町村長が氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載するに当たっての指針となるべきものを定める必要があると考えられる。

 また、本籍地の市区町村長による職権記載に当たり、本籍地の市区町村や住所地の市区町村が氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの又はこれに準ずる情報を保有しており、当該情報を参照することが可能な場合には、「その他法務省令で定める方法」として法務省令に規定することが考えられる。もっとも、本籍地の市区町村と居住する市区町村が異なる者も存在することから、住所地の市区町村が保有する氏名を平仮名(片仮名)で表記したもの又はこれに準ずる情報を参照することが困難な場合についても想定する必要がある。そのような場合には、試案の第1の2においていずれの案を採用するかにかかわらず、本籍地の市区町村長が氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを記載するに当たっての指針となるべきものを定める必要があると考えられる。

 なお、氏を平仮名(片仮名)で表記したものについて、夫婦間で認識が異なる場合も想定されるところ、本籍地の市区町村長において、実際に使用されているものがいずれであるか判断することができない場合には、戸籍に記載しないこととすることが考えられるが、具体的な運用方法については、引き続き検討する必要がある。

6 申出期間の経過により職権記載した後の職権訂正の申出

 試案の第2文により、本籍地の市区町村長が職権により氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを戸籍に記載した場合において、実際の氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが戸籍に記載されたものと異なるときは、当該記載に係る者は、次の3つの方法のいずれかをとることが考えられる。

 1つ目に、本籍地の市区町村長に職権訂正の申出をすることが考えられ、この場合には、戸籍法第24条第2項の規定により、本籍地の市区町村長は管轄法務局長等の許可を得て、職権で当該申出による氏名を平仮名(片仮名)で表記したものに戸籍訂正することができるとすることが考えられる(管轄法務局長等の許可を得た戸籍訂正)。なお、管轄法務局長等の許可は、包括的に承認しておくことが考えられる。

 2つ目に、利用される場面は多くないと想定されるものの、戸籍法第113条の「その記載に錯誤があること」に該当するとして、家庭裁判所の許可を得た上で、戸籍訂正を申請することも当然可能である(家庭裁判所の許可を得た戸籍訂正)。

 また、3つ目に、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更手続によることも可能であると考えられる。

 この点、部会では、本籍地の市区町村長が職権により戸籍に記載した氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、戸籍に記載されている者等の申出によるものとは異なり、職権による記載であることが分かる形(戸籍記載例を区別する方法)で管理し、その変更については、試案の第3の1の規律の例外と位置付けるという方法も考えられるとの意見があった。

第3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する事項

1 氏又は名の変更に伴わない場合の規律

氏又は名の変更に伴わない場合の規律は、次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】戸籍法に次のような規律を設けるものとする(注1)。

① やむを得ない事由【正当な事由】(注2)によって氏を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

② 正当な事由によって名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

【乙案】【甲案】に加え、戸籍法に次のような内容の規律を設けるものとする(注3)。

氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しようとする者は、成年に達した時から1年以内に届け出る場合その他法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。

(注1)成年に達した者が自ら氏名を平仮名(片仮名)で表記したものを届け出た(申し出た)後、これを変更しようとする場合には、その変更の許否はより厳しく審査されるべきものとすることも考えられる。

(注2)変更の要件について、氏の変更(戸籍法第107条第1項)よりも緩和することとし、「やむを得ない事由」に代えて「正当な事由」とする案も考えられる。

(注3)【乙案】による変更は、一度に限ることとする。

(補足説明)

1 試案の概要

試案は、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更に関する規律である。

 【甲案】は、氏又は名の変更(戸籍法第107条又は第107条の2)と同様に、家庭裁判所の許可を得た上で、届け出ることとするものであり、【乙案】は、【甲案】を前提としつつ、法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を不要とし、届け出ることのみで変更することができるとするものである。

 部会では、家庭裁判所の許可を不要とすれば、戸籍窓口において変更の要件を審査することとなることを考えると、家庭裁判所の許可を要することとせざるを得ないとの意見を始めとして、家庭裁判所の許可を要することとすべきとの意見が複数あった。また、氏又は名の変更手続(戸籍法第107条又は第107条の2)と異なるものとすると混乱が生じることが懸念されることから、氏又は名の変更手続と同様の規律にすべきであるとの意見があった。

 他方で、家庭裁判所の許可を得るために申立てをすることは、一般的に敷居が高いと感じられることから、名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、幼少の頃から戸籍の記載とは異なるものを使用していたような場合には、家庭判所の許可を不要とすることも考えられるのではないかとの意見や、氏を平仮名(片仮名)で表記したものについて、成年に達したことを契機として、家庭裁判所の許可を得ずに変更を認めることも考えられるのではないかとの意見があった。

 こうした意見を踏まえ、【乙案】のとおり、成年に達した時から1年以内に届け出る場合など、法務省令で定める一定の場合に限り、家庭裁判所の許可を不要とし、届け出ることのみで変更することができることとする案を提案している。

2 各案における変更の要件

(1) 【甲案】

ア 【甲案】は、氏又は名の変更(戸籍法第107条又は第107条の2)と同様に、家庭裁判所の許可を得た上で、届け出ることとするものである。

【甲案】を採用する場合、その要件については、氏の変更(戸籍法第107条第1項)と同様に、「やむを得ない事由」とすることが考えられる一方で、これを緩和すべきとの意見もあることから、緩和した要件をブラケットを付して記載している。

イ 【甲案】を採用した場合において変更が想定される場面については、現在の氏又は名の変更の取扱いが参考となる。

 氏の変更については、戸籍法第107条第1項及び第4項(外国人である父又は母の称している氏に変更しようとするものなどの要件あり)等に規定されており、同条第1項において、「やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」とされている。

 このやむを得ない事由に該当する事例としては、著しく珍奇なもの、甚だしく難解難読のものなど、本人や社会一般に著しい不利不便を生じている場合はこれに当たるであろうし、その他その氏の継続を強制することが、社会観念上甚だしく不当と認めるものなども、これを認めてよいと考えられている(青木義人=大森政輔全訂戸籍法439頁)。

 また、やむを得ない事由に関して、婚姻により夫の氏になったものの、その後離婚し、婚氏続称の届出をして、離婚後15年以上婚氏を称してきた女性が、婚姻前の氏に変更することの許可を申し立てた事案において、婚氏が社会的に定着していることを認定しつつ、①離婚時に幼少だった子が既に成人し、申立人の氏の変更許可を求めることに同意していること、②申立人は、同居の実両親とともに、9年にわたり、婚姻前の氏を含む屋号で近所付き合いをしてきたこと等の諸事情を考慮して、やむを得ない事由があると認められると判断し、申立てを却下した原審判を変更して、氏の変更を許可した事例(東京高裁平成26年10月2日決定(判例時報2278号66頁))もある。

ウ 戸籍法第107条の2に規定する名の変更については、正当な事由があ

る場合に家庭裁判所の許可を得て、届け出ることができるとされている。

 この正当な事由の有無は一概に言い得ないが、営業上の目的から襲名の必要があること、同姓同名の者があって社会生活上支障があること、神官僧侶となり、又はこれをやめるため改名の必要があること、珍奇な名、異性と紛らわしい名、外国人に紛らわしい名又は難解難読の名で社会生活上の支障があること、帰化した者で日本風の名に改める必要があること等はこれに該当するであろうが、もとよりこれのみに限定するものではないと考えられており、また、戸籍上の名でないものを永年通名として使用していた場合に、その通名に改めることについては、個々の事案ごとに事情が異なるので、必ずしも取扱いは一定していないが、相当な事由があるものとして許可される場合が少なくないとされている(前掲全訂戸籍法442頁)。

 また、性同一性障害と診断された戸籍上の性別が男性である申立人が、男性名から女性名への名の変更許可を申し立てた事案において、正当な事由があると認められると判断し、原審を取り消して名の変更を許可した事例(大阪高裁令和元年9月18日決定(判例時報2448号3頁))もある。

さらに、名の変更については、出生届出の際の錯誤あるいは命名が無効であることを理由として認められる場合がある(戸籍610号75頁)。

エ  以上の例と氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの特性に鑑みれば、氏を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、著しく珍奇なもの、甚だしく難解なもの、永年使用しているものによるものなどを理由とした場合が、名を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、珍奇なもの、難解なもの、永年使用しているもの、いわゆる性自認と一致しないものなどを理由とした場合などが考えられる。

 さらに、これらの届出のうち、実際に氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更の届出が想定される場面は、極めて限定されるが、例えば、氏を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、①濁点の有無や音訓の読みが変化したものを永年使用していることのほか、②本人以外が届け出たものについて、著しく珍奇なもの又は甚だしく難解なものなどが考えられる。また、名を平仮名(片仮名)で表記したものにあっては、同様に、①濁点の有無や音訓の読みが変化したものを永年使用していることのほか、②本人以外が届け出たものについて、珍奇なもの又は難解なもの、③いわゆる性自認と一致しないものなどが考えられる。

(2) 【乙案】

 【乙案】は、【甲案】を前提としつつ、法務省令で定める場合に限り、家庭裁判所の許可を不要とし、届け出ることのみで変更することができるとするものであり、届出のみによる場合には、戸籍窓口において氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性を審査することとなる。なお、民法第791条第4項において、子の氏の変更につき、「前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。」と規定されていることから、これを参考としているが、部会では、民法第791条第4項に規定する子の氏の変更の場合には、復する氏が従前の氏に制限されているところ、【乙案】においてはそのような制限がないことを考慮する必要があるとの意見があった。

 また、部会では、氏名は、社会において個人を識別する機能を有するものであり、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものもまた、同様の機能を有するものであるとの指摘があり、こうした観点から、家庭裁判所による審査を経ることなく、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更を認めることには否定的であるとの意見が複数あった。

 【乙案】の「法務省令で定める場合」としては、(補足説明)2(1)エの届出が想定される場面、具体的には、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条第1項の規定による性別の取扱いの変更の審判を受けたときなどを法務省令に規定することが考えられる。

3 氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更における届出人

 戸籍法第107条第1項において、氏の変更の届出人は、「戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者」とされていることから、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更においても、これと同様にしている(【甲案】①)。

 なお、筆頭者及びその配偶者以外の者が戸籍法第107条第1項による氏の変更の届出をすることは許されず、筆頭者及びその配偶者以外の同籍者については、分籍の上、氏の変更の届出をする必要があるとされていることから、これと同様の取扱いとすることが考えられる。

4 その他

 部会では、氏名を平仮名(片仮名)で表記したもののみの変更については、自分自身が手続に参加する形で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが登録された場合には、その変更はより慎重であるべきであるとの意見があった。

 この点、【甲案】については、変更の要件を、やむを得ない事由又は正当な事由よりも厳しくすることが考えられるのではないかとの意見があったほか、自分自身が手続に参加する形で氏名を平仮名(片仮名)で表記したものが登録されたという事実を、家庭裁判所におけるやむを得ない事由又は正当な事由に関する審査の際に、一つの事情として考慮することも考えられる。

2 氏又は名の変更に伴う場合の規律

戸籍法第107条第1項又は第107条の2の規定により氏又は名を変更しようとするときは、その平仮名(片仮名)で表記したものとともに、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならないこととする。

(補足説明)

1 試案の概要

 試案は、氏又は名の変更に伴う氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更に関する規律であり、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについても、氏名とともに家庭裁判所の許可を要することとするものである。

 なお、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものについては、家庭裁判所の許可を不要とし、氏又は名の変更の許可を得た後、氏又は名の変更の届出時にこれらを平仮名(片仮名)で表記したものの届出をすれば足りるとすることも考えられる。この場合には、戸籍窓口において、第1の2により氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏又は名との関連性が審査され、相当でないものであれば、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの届出は受理されないこととなる。

 この点、部会では、戸籍窓口において、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの届出が受理されない場合には、再度、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの変更について、家庭裁判所の許可を得る必要があることなどを理由に、氏又は名とこれらを平仮名(片仮名)で表記したものについて、併せて家庭裁判所の許可を得ることとするのが相当であるとされた。

2 試案の内容

 試案の規律によると、氏名とともにこれらを平仮名(片仮名)で表記したものについても家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出る必要があり、家庭裁判所において、第1の2により氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものの許容性及び氏名との関連性が審査される。

 この場合、家庭裁判所において、①氏又は名について、やむを得ない事由又は正当な事由が認められるものの、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、第1の2により相当でないものと認定された場合には、氏又は名の変更を含めて、変更の許可がされず、申立てが却下されることになるものと考えられる。

 また、②氏又は名について、やむを得ない事由又は正当な事由が認められない場合には、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものについての許容性を判断するまでもなく、変更の許可がされず、申立てが却下されることになるものと考えられる。

 なお、部会では、家庭裁判所において、字義との関連性を審査することは困難であることから、家庭裁判所から市区町村に対し、当該審査の運用状況に関する調査嘱託等がなされた場合には、氏名を平仮名(片仮名)で表記したものの審査に関する資料を提供することなどの手続的な手当についても、検討する必要があるとの意見があった。

3 氏又は名を変更し氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しない場合

 部会では、氏又は名を変更しつつ、これらを平仮名(片仮名)で表記したものを変更しないとするニーズもあるのではないかとの意見があった。

 この場合、試案の規律によれば、氏又は名の変更と併せて、従前の氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものについて、家庭裁判所の許可を得て届け出ることとなるところ、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものを変更しない場合であっても、家庭裁判所の許可を必要とする理由について整理する必要があるが、氏又は名を変更する場合には、氏又は名を平仮名(片仮名)で表記したものもそれに伴うものであるから、結果として同じ読み方(読み仮名)であっても、潜在的には変更を伴うものであり、許容性及び氏名との関連性を審査するものと考えられる。

戸籍用語

認定、認定年月日

戸籍整備法(1953年11月16日立法86号)

第1条 今次大戦によって滅失した戸籍の整備については、戸籍法(大正三年法律第二十六号)第十五条の規定にかかわらず、この立法に定めるところによる。

第14条 行政主席は、前条の具申を適当と認めたときは、これを整備された戸籍として認定する。

2 前項の場合行政主席は、戸籍の名称、認定年月日その他必要な事項を告示しなければならない。

戸主(戸主権)

戸主の用語が表示される戸籍

・明治維新後の明治5年において全国統一の戸籍が作られてから現行戸籍書式になる直前まで、戸籍には戸主の表示がなされている。

・明治4年戸籍法に基づいて編成された明治5年式戸籍(法制施行の時点を基準にした呼称である。以下同じ)

・明治19年内務省令によって改正された明治19年式戸籍

・明治31年戸籍法に基づいて編成された明治31年式戸籍

・大正3年戸籍法に基づいて編製された大正4年式戸籍

目的

 明治31年の民法施行に至るまでは、戸籍が国民の動態把握を主な目的としていたこと、現実の生活共同体の主宰者である世帯主的意義を有していた。明治31年民法施行後の戸主は、1個の家を公示する方法として採用された一つの戸籍のうえに、その家長たる身分を戸主として表現させた。

戸主の交代原因

死亡、隠居、国籍喪失、戸主の縁組・婚姻の取消による去家、入夫婚姻により夫が戸主となる場合、入夫戸主が離婚した場合

戸主の表示の廃止

法務大臣の命令(昭和32年6月1日法務省令27号)によって改製されることになり、全国的には昭和36年~昭和37年頃までに、新法戸籍に書き換えられ廃止。

前戸主(主戸前)

前の戸主

再製

 戸籍が滅失した場合に、その滅失前の戸籍を回復すること、滅失の恐れがある戸籍について、新たな記録をする手続き。

 法務大臣が戸籍の再製について必要な処分を指示することになっている。

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224

第十一条 戸籍簿の全部又は一部が、滅失したとき、又は滅失のおそれがあるときは、法務大臣は、その再製又は補完について必要な処分を指示する。この場合において、滅失したものであるときは、その旨を告示しなければならない。

 

再製手続

戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322M40000010094

第九条 戸籍簿又は除籍簿の全部又は一部が滅失したときは、市町村長は、遅滞なく、その事由、年月日、帳簿の名称、冊数その他必要な事項を記載した書面により、管轄法務局若しくは地方法務局又はその支局に報告しなければならない。

2 管轄法務局若しくは地方法務局又はその支局が前項の報告を受けたときは、必要な調査をした後、その再製又は補完の方法を具し、これを法務大臣に具申しなければならない。

3 戸籍簿又は除籍簿の全部又は一部が滅失するおそれがあるときは、前二項の例に準じて報告及び具申をしなければならない。

滅失、滅失のおそれ

・火災、水害、虫害、その他の自然的・人為的の諸種の原因

・戸籍の全部・一部が、その原形を失ったときだけでなく、戸籍記載の一部の数字・文字の部分が墨汁の汚点で不明、謄本を複写機で作成中に原本が機械にまきつき、その一部分を破損して不明となったような場合を含む。

入籍

 一方の戸籍から他方の戸籍に入る場合

原因

・婚姻、縁組、離婚、離縁、婚姻の取消、縁組の取消

・生存配偶者の婚姻前の氏に戻ることにより、婚姻前の戸籍に入る場合

・子が父または母と氏を異にする場合に家庭裁判所の許可を得て、もしくは、この許可を得ないで、入籍届によりその父または母の戸籍に入る場合。その後、父または母の戸籍に入った子が、成年に達した後、1年以内に前の戸籍の氏に戻る入籍届により氏変更前の戸籍に入る場合

・出生

・国籍取得・帰化により父母の既存戸籍に入る場合

戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224

第十六条 婚姻の届出があつたときは、夫婦について新戸籍を編製する。但し、夫婦が、夫の氏を称する場合に夫、妻の氏を称する場合に妻が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。

2 前項但書の場合には、夫の氏を称する妻は、夫の戸籍に入り、妻の氏を称する夫は、妻の戸籍に入る。

3 日本人と外国人との婚姻の届出があつたときは、その日本人について新戸籍を編製する。ただし、その者が戸籍の筆頭に記載した者であるときは、この限りでない。

第十七条 戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者以外の者がこれと同一の氏を称する子又は養子を有するに至つたときは、その者について新戸籍を編製する。

第十八条 父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。

2 前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。

3 養子は、養親の戸籍に入る。

第十九条 婚姻又は養子縁組によって氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によって、婚姻又は縁組前の氏に復するときは、婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する。

2 前項の規定は、民法第七百五十一条第一項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び同法第七百九十一条第四項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する。

3 民法第七百六十七条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)又は同法第八百十六条第二項(同法第八百八条第二項において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚若しくは婚姻の取消し又は離縁若しくは縁組の取消しの際に称していた氏を称する旨の届出があつた場合において、その届出をした者を筆頭に記載した戸籍が編製されていないとき、又はその者を筆頭に記載した戸籍に在る者が他にあるときは、その届出をした者について新戸籍を編製する。

第百二条 国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)第三条第一項又は第十七条第一項若しくは第二項の規定によつて国籍を取得した場合の国籍取得の届出は、国籍を取得した者が、その取得の日から一箇月以内(その者がその日に国外に在るときは、三箇月以内)に、これをしなければならない。

改製

 戸籍の様式が法律または命令に基づき改められた場合に、それまでに前の規定による様式で編製された戸籍を改めるための編製替え。

再製との違い

 その時に在籍する者のみを編製後の戸籍に移記する。戸主制度のあった当時は、家督相続が開始したのに新戸主が所在不明または定まらないで、そのままとなっていた戸籍の改製は、除かれた戸主の事項はそのまま移記。

効力発生日

 各戸籍につき、市町村長が実際に改製をした時。

戸籍法第百二十二条第一項の戸籍の改製に関する規則

 1956年12月31日琉球政府立法第87号戸籍法

(旧法による戸籍の効力)

122条 旧法の規定による戸籍は、これを新法の規定による戸籍とみなす。但し、新法施行後十年を経過したときは、旧法の規定による戸籍は、規則の定めるところにより、新法によってこれを改製しなければならない。

2 旧法によって定められた本籍は、新法によって定められたものとみなす。

改製原戸籍(かいせいげんこせき・かいせいはらこせき)

 法改正などにより戸籍の様式が変わり、改製が行われた際の、改製される前の戸籍

あらたに戸籍を編製

 新しい戸籍が作られること

 原因

  一家創立、家督相続、家督相続回復、前戸主の失踪宣告の取消、隠居の取消などにより戸主に変更を生じたとき、分家、廃絶家再興、帰化、国籍取得、就籍、管外からの転籍、再製、改製

除籍

・戸籍から一部の者が除かれること。

・戸籍内の全員が除かれた場合、戸籍システムから除籍のシステムに移すこと。

 

参考

那覇地方法務局『発足二十周年記念沖縄関係戸籍先例集』平成4年那覇地方法務局

髙妻新『改訂体系・戸籍用語辞典』平成13年日本加除出版

髙妻新・荒木文明・後藤浩平『全訂第三版 相続における戸籍の見方と登記手続』2022年日本加除出版

日本不動産学会シンポジウム「リバースモーゲージの新展開」と国土交通省「リースバックガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について」

加工

「リバースモーゲージの新展開~現状と普及のための今後の課題~」(公社) 日本不動産学会シンポジウム2022年3月18日

http://www.jares.or.jp/

リバースモーゲージの動向と今後の展開

アーバンクロス技術士事務所 代表村林正次

技術士(建設部門地方及び都市計画、総合監理部門)

・一般社団法人 住宅金融普及協会 評議員

【関連所属組織】

・公益財団法人 横浜市建築助成公社 理事

・一般社団法人 スポーツと都市協議会 理事

・一般社団法人 団地再生支援協会 団地再生研究会

・もうひとつの住まい方推進協議会 幹事

1978年4月 (財)日本開発構想研究所 入社

【職歴】

1988年7月 ㈱住信基礎研究所(現三井住友トラスト基礎研究所) 入社

1999年8月 ㈱価値総合研究所(現日本政策投資銀行グループ)入社

2018年4月 (一社)不動産総合戦略協会 理事長就任

2021年6月 アーバンクロス技術士事務所 代表就任

【専門領域】

都市・国土・住宅政策、都市開発、シルバービジネス、都市機能マーケット(オフィス、住宅等)等の官民の調査・計画・政策立案・ 事業支援等。主に大都市圏政策(東京メガロポリス構想、臨海副都心計画等)、住宅政策(リバースモーゲージ、高齢者居住等)、 資金調達(証券化スキーム、公的ファンド等)等

【主な著書】

•「住宅が資産になる日」(プラチナ出版社)(2018.7)

•信託改革<金融ビジネスはこう変わる>(日本経済新聞社)(共著)(2005.5)

•日本版リバースモーゲージの実際知識(東洋経済)(共著)(1998.1)

•社会資本投資の費用・効果分析法(東洋経済)(共著)(1998.1)

•超高齢社会の常識-リバーシモーゲージー(日経BP社)(共著)(1997.12)

目次

【リバースモーゲージの現状と今後の展開】

Ⅰ.住宅の価値とリバースモーゲージ

Ⅱ.リバースモーゲージの意義とスキーム Ⅲ.我が国のリバースモーゲージ

Ⅳ.海外のリバースモーゲージ

Ⅴ.今後の課題と展開方向

Ⅰ.住宅の価値とリバースモーゲージ

Ⅰ-1 「住宅」に資産価値はあるのか?

Ⅰ-2 住宅の価値の構成要素

Ⅰ-3 クレジットローンとモーゲージローン

Ⅰ-4 リコースローンとノンリコースローン

Ⅰ-5 我が国の住宅ローン

Ⅰ-1 「住宅」に財産価値はあるのか?① ~リバースモーゲージ適用の前に~

・住宅が最大の資産として、フロー化が期待されるが、 財産価値は無く、担保価値は土地にしかない。 (今やその土地も危うい)

・住宅ローンは「モーゲージ・ローン」ではなく 「クレジット・ローン」であり、住宅自体に担保価値を期待していない。

Ⅰ-1 「住宅」に財産価値はあるのか?②

1.住宅は資産か?

・リバースモーゲージは資産化された住宅を活用する商品 (資金に流動化)であるが、現状では、多くの住宅は資産 としての価値は無い(既存住宅市場が未形成)。

• リバースモーゲージの議論は最終的には「住宅の資産価値」に帰着する。

2.住宅の資産形成

・住宅の使用価値としては「デザイン、機能、性能」である。 機能・性能は必要条件であり、デザインが根幹。

・その上で、価値ある住宅・住環境を一元的に管理することが肝要

Ⅰ-2 住宅の価値の構成要素①

<経年減価する住宅の資産価値>

■一戸建て住宅の価値

• 建物は中古なった時点から急速に価値が減価。

• 土地に対する建物価格の比率は、新築が3割程度から20年後には1割以下。

■マンションの価値

• 都心部の物件は性能・機能が向上し、ほぼ立地で決まる。戸建てよりまだまし。

<住宅の効用要素>

住宅の効用

デザイン(審美性)、機能 (利便性)、性能(安全性・環境性)

資産形成

クラシック/社会的定評 (スタイル/アイデンティティ) 、フレキシブル

世代を越えた住要求 、検証された材料・工法

負債形成

ポピュラー/趣味的 (個々の嗜好、流行) 、リジッド 固定的な「居住水準」

新しい材料・工法

性能(安全性・環境性)、検証された材料・工法があれば、担保価値を認めることが出来るのではないかと考えていましたが、難しいようです。

Ⅰ-2.住宅の価値の構成要素②

超長期優良住環境形成の3つの条件 Housing Owners Association

3.開発主体による優れた開発のための憲章

1.帰属意識が持てる優れたマスタープランとアーキテクチャラルガイドラインの作成とその遵守による住環境の経年的な熟成。

2.コミュニティー全体が民主的な統治意識を持ち、そのための住宅所有者による、住宅地経営協会: HOA)の存在。

Conditions and Restrictionss)の制定とこれに基づいた資産形成を目指した基本計画の策定及び全体管理のための住宅地経営協会との契約締結。

参考

齊藤広子「戸建て住宅地における居住地マネジメント組織としてのHOA導入のための課題」都市住宅学39号2002

住宅地経営協会、等の話となると、マンションの管理組合の改正と併せて議論が始まるように思います。

Ⅰ-3.クレジットローンとモーゲージローン

【クレジットローン】

債務者の信用に基づいたローン

・消費者ローン等であり、収入や所属組織等により利用者の信用が査定される。

・日本の住宅ローンは「クレジットローン」であり、住宅等を担保とするが、保証によりリスクヘッジしている。保証料が必要。

【モーゲージローン】

・担保の価値に基づいたローン

・米国の住宅ローンは「モーゲージローン」であり、住宅の資産価値を重視している。同時に、ローン社会であり、また、デフォルトも多いため、ローンの返済実績の視点からの審査も重視している(FICOスコア)。

結局、金融機関が担保実行の際に、土地のみ実行するということが無意味に近いからということで形式的に建物にも担保を付けている、ということなのかなと思いました。

Ⅰ-4.リコースローンとノンリコースローン

【リコースローン】 「遡及型融資」

ディフィシェンシー・ルール(Ant deficiency Rule):デフォルト時に融資金の返済財源が担保資産に限定されず、保証人や他の返済財源 からの返済を追求できる融資形態のことを指す。

【ノンリコースローン】「非遡及型融資」

特定の事業や資産から生ずる収益のみを返済原資とする非遡及型の融資を指す。 プロジェクトファイナンス等の特殊なローン形態。

Ⅰ-5 我が国の住宅ローン

<リスク回避>

保証会社による代位弁済 / 団体信用生命保険の加入】 ・住宅ローンには通常、土地・建物に第一順位の抵当権を設定し、さらに保証料と生命保険料が付加される。

<対金融機関>

・保証料を負担することにより、デフォルト(債務不履行)の際に融資機関が保証会社から代位弁済を受けることができる。しかし、債務者の債務の債権は保証会社に移るだけであり、抵当権行使後の残債は債務として残る。

・団信料を負担することにより、借り手が「死亡」した際にはローンの残債が支払われる。

最後は、保険(保険料)での清算となる。

Ⅱ リバースモーゲージの意義とスキーム

Ⅱ-1 リバースモーゲージは次世代高齢社会の象徴 Ⅱ-2 住宅資産の活用

Ⅱ-3 住宅資産の活用方策の比較

Ⅱ-4 リバースモーゲージの基本スキーム

Ⅱ-5 リバースモーゲージのリスク

Ⅱ-6 典型的なリバースモーゲージの商品内容

Ⅱ-7 資金需要の使途

Ⅱ-1 リバースモーゲージは次世代高齢社会の象徴

・リバースモーゲージは「自ら築いた居住用資産」を「自らの意思」 により「自らの生活を豊かにするため」「経済利益を得て」「死亡時に一括返済する」システムであり、金融商品では無い。

・キーワードは「高齢者」「住宅」「金融」「福祉」であり、それぞれが個々に、さらには相互連携的に制度や社会システムが整備される必要がある。

・ストック「リッチ」、フロー「プアー」(ハウスリッチ・キャッシュプ アー)(不動産はあるが、所得が無い)の高齢者に対してリッチな不動産を資金化する。

これが成就した社会こそ、「成熟した高齢社会」。

ここについては、よく分かりません。

Ⅱ-2住宅資産の活用①

・返済過程における「ホームエクイティ・ローン(HE)」、完済後は「リバース モーゲージ(RM)」あるいは「売却」「賃貸」としての活用。

住宅に資産としての価値が保持できれば、売却による住み替えの促進 (既存住宅マーケット)とともにさらに資産の活用が多様化される。 基本的には「居住継続しつつ経済的利益を得ること」

 ■融資タイプ:現役時代は「ホームエクイティ・ローン」 、老後は「リバー スモーゲージ」を利用するなどにより、住宅資産をフルに活用することが可能。

■売却タイプ:セール・アンドリースバック(S&LB)の可能性。

参考1:負担付き贈与(民法第553条)

相手に自宅を贈与する見返りに受贈者が贈与者を扶養する負担を請け負うもの 参考2:終身定期年金(民法689~694条)

フランスのビアジェ方式。

当事者の一方(定期金債務者)が、自己、相手方(定期金債権者)又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物(代替物)を相手方又は第三者に給付する契約。

Ⅱ-2 住宅資産の活用②

<リバースモーゲージ使途目的の多様化>

・本来は利用者が住宅に居住継続しながら、資金化することが目的であり、福祉サービス費用から次第に多様化している。

Ⅱ-3 住宅資産の活用方策の比較 居住継続しつつ経済価値を享受手法の比較

持分を受益権と考えると、信託で構成することも可能だと考えられます。

Ⅱ-5 リバースモーゲージのリスク①

■利用者(借手、相続人)サイドのリスク

1.支払いリスク

・幸いなことに日本では0と考えられる)

2.不動産下落リスク

・予想以上の下落が生じて限度額を越えると契約終了

■融資サイドのリスク

1.長命リスク

・生命表等で想定

2.金利上昇リスク

・変動金利などで対応

3.不動産下落リスク

・海外では見られないリスクであり、不動産評価の厳格化、利子の調整等。

4.相続リスク

複数の相続人、相続人の死亡等 想定相続人全員の同意、信託等

Ⅱ-6 典型的なリバースモーゲージの商品内容

利用対象者

・借入時の年齢が満60歳以上。

・判断能力を有する。

・自宅に一人あるいは配偶者と居住していること。

・50歳以上や上限(80歳等)もある。

・安定・継続的収入が必要な場合。

早めに子供に贈与して判断能力喪失に備えられないか、そのような必要がある場合もあると思います。

活用方法

・現居住用不動産(住宅)を担保にした融資。

・賃貸料を担保等他方法。

・取得物件を担保にする場合。

対象不動産/担保 ・利用者が居住している、土地付き一戸建て住宅、マンショ ン。

・第Ⅰ順位の抵当権設定登記。

資金使途 ・生活関連資金(医療費、介護費、リフォーム、転居費用等)

・投資や事業目的は除外。

・マンション対象外が多い。

・住宅購入費も含む場合。

・転居の場合はJTIと連携。

融資極度額

・対象不動産の評価額の50~70%及び1億円を上限。極度額に達するまで、適宜、融資。

・年金型払いに限定する場合。

・評価額は毎年1回見直し。

融資期間

 ・終身 融資額が極度額に到達した時期。

返済方法

・死亡後に元利一括返還。

・相続人が「現金返済」あるいは「担保の代物返済」

・利息を毎月払いの場合。

・債務免除益発生の可能性有り。

金利

・変動金利(基準金利+調整幅)及び固定金利

・東京スター銀は預金連動型。 保証

・借主訴求 ・保証料(保証料が不要な商品もある)、ノンリコース(リコースもある)

・保証会社の保証

ここでのノンリコースローンは、普通だと思います。

保証人

・不要(必要もある)

住宅金融支援機構の保険利用。

相続人の同意

 ・相続人全員の同意が必要。

 ・同意を不要とする場合。

Ⅲ リバースモーゲージの現状

Ⅲ-1 リバースモーゲージの経緯

Ⅲ-2 リバースモーゲージの類型

Ⅲ-3 官民の主要制度・商品

Ⅲ-4 従前の民間プラン

Ⅲ-5 従前の公的プラン

Ⅲ-6 現在の公的プラン

Ⅲ-7 官民の主要制度・商品:まとめ

Ⅲ-8 民間の取扱い金融機関の現状

Ⅲ-1 リバースモーゲージの経緯(概略)

1970年~

研究者や自治体で関連研究が実施。

1980年~

武蔵野市が1981年に最初に条例化・制度化。

1980年代中半~1990年~

バブル期を挟んで、自治体や民間金融機関や信託銀行等(8行: 1984~1989年)が次々と参入したが、バブル崩壊後、各行ともに撤退。

住宅政策や福祉政策の中で位置づけられる。 

2000年前半

2005年に東京スター銀行が開始、ハウスメーカー等も金融機関と提携して参入。 自民党・政府での検討が高まる等各分野からの提言が盛んになる。

自治体制度は社会福祉協議会と福祉公社の統合と金融機関の撤退等により、停滞し、国の制度に統合。 国土交通省・厚生労働省の制度が登場し、契約者は急増。

2010年~

中古住宅市場活性化等の中で資産活用方策としての議論が活発化。

住宅金融支援機構の保険付き移住・住替え機構と連携して、都市銀行・信用

金庫・信用組合等の多様な金融機関が参入。

2017年~

金融庁・厚生労働省・国土交通省がリバース・モーゲージの普及研究(自由民主党一億総活躍推 進本部提言の下)。リ・バース60等の融資機関が増大し、 2020年時点で108機関。

Ⅲ-2 リバースモーゲージの類型①

<公的プランと民間プランとに大別される>

■公的プラン:国及び自治体。

・自治体プランは嚆矢である武蔵野市等が直接融資型であり、世田谷区等の大半は間接融資型(窓口が自治体で融資は金融機関)。 現在はすべて停止。

・国の制度は不動産担保型生活資金貸付制度(厚生労働省:窓口は自治体の社会福祉協議会)に集約。

住宅金融支援機構が独自の商品(リフォーム、まちづくり融資等 住宅購入型)及び金融機関のリスクを保証する保険措置を供 与(「リ・バース60」)。

・特例的に震災対応の住宅再建のための措置。

Ⅲ-2 リバースモーゲージの類型②

■民間プラン:金融機関やハウスメーカー等。

・最初の参入は不動産の扱いに慣れており、また、高額資産者を顧客に有する信託銀行等8行であり、しばらくは順調に契約数を増加 させたが、参入後、バブル崩壊となり、急激な土地価格の下落等により、次第に撤退・縮小した。

・しばらくは新たな商品がでなかったが、1999年に殖産銀行(2007年に撤退)そして2005年に東京スター銀行が使いやすい商品を出した。これを契機に複数のハウスメーカー各社(現在は撤退)が参入した。信託提携タイプも登場。

・その後、新たな参入は無かったが、国の議論や金融機関新たな ローン商品の組成ニーズ等そして、「住宅購入を目的」とした住宅金 融支援機構の保険付与の「リ・バース60」及び「住替えを目的」とするJTI(移住・住替え機構)による賃料担保権設定商品等を背景に 2010年頃から、急増した。都市銀行及び信用金庫等も競って参入しつつあり、現在108機関が商品を有している。

Ⅲ-6 現在の公的プラン

■国の制度(福祉的対応)

【不動産担保型生活資金貸付制度(旧生活福祉資金貸付制度)】 (厚生労働省)(H20.9までは長期生活支援資金貸付制度)、 同:要保護世帯向け

• 全国ベースの制度導入(契約者は急増)

• 福祉政策の面からの施策:自立支援

• 融資対象:65歳以上高齢者(同居者は配偶者と両親)、住民税非課税世帯、 均等割課税世帯程度 • 使途:生活費

連帯保証人:推定相続人から一人

• 金額:評価額1000~1500万円、70%程度を限度額とし、30万円/月以内 • 金利:3%か長期プライムレートの低い利率

• 実施主体:都道府県社会福祉協議会

• 窓口:自治体の社会福祉協議会

• 実績:626件(累計契約件数681件)、124億30百万円(2008年3月末時点) 注)近年は実績未公表

資料:厚生労働省

Ⅲ-8 民間の取扱い金融機関の現状

<民間取扱金融機関数の推移実績>

 <現状と見込>

「【リ・バース60】の利用実績等の公表について」(平成30年5月 住宅金融支援機構)

出典:民間住宅ローンの実態に関する調査報告書」(各年度版)(国土交通省)

注)リバースモゲージ型住宅ローン【リ・バース60】(住宅金融支援機構)の取扱機関数は、2016年度以降は年度末、2015年度以前は不明。

Ⅳ-3 フランス <ビアジェ>①

• 「ビアジェ」は「債務者が特定の第三者が生存している間、一定金額の支払いをする、終身定期金契約(射倖契約)※1」。 <フランス民法典 第3編 所有権取得の種々の方法第12章 諸侯契約(第1968条~1983条)>

※1:不確かな事象に左右される相互契約(民法1964条)

補)フランス民法典に準じている日本の民法にも同様の規定がある。 終身定期金契約(民法 689条~694条)。但し、射倖性が強いことから、 これまで適用されていない。

・「ビアジェ」は不動産の所有権を移転するものであり、不動産活用手法としては 「売却」型である。

また、売却後に「売主が居住継続」するオキュペ方式と「売主が転居するリーブル方式がある。前者の場合が、居住継続しながら不動産を流動化可能とする意味で リバースモーゲージの類型として扱われている。

民法 1 9 64条~ 1 9 83条に定められている終身定期金 契約。

①ビアジェ・オキュペ

・高齢者(売手)が個人投資家(買手)に自宅を 売却し、高齢者はそのまま済み続け、投資家は頭 金と終身年金を給付する。両者の仲介や契約書作 成等は専門組織が介在するが、年金給付の保証は行わない。高齢者は売却金額の一部(頭金)を受け取り、残額はヴィアジェ年金となる。

・数十年前から約 4 0万件の実績があるが、個人間 の相対契約で取引が不安定。長生きリスクが回避できず、投資家の支払不履行リスクもある。

契約書は公証人が法的に登録する。高齢者は虚有権を売却し、用益権(居住権・利用権)を終身保有する。

契約時に転居し、所有権を完全に移転 して年金方式で代金を受け取るタイプ もある。

②ビアジェ・リーブル

・高齢者(売手)が個人投資家に自宅を売却し、 住宅は契約時に個人投資家(買手)に明け渡し。

ビアジェファンド

ビアジェは歴史のある制度であるが、射幸性が高く、一対一の相対取引であるため、近年では普及 が進まなかった。また、買手市場でもあったが、これらの問題を解消するためにファンドが組成された。 2 0 1 0年に民間ファンド(ヴィラージェ・ ヴィアジェ社)、 2 0 1 4年に公的ファンド(フラン ス預金供託金庫)。

多くの契約を束ねることにより、売手にとっては、民法典による法的規定に加えて、さらに安定性を拡充させ、買手にとっても利益を期待できる投資対象となる。

抵当権付終身貸付型( Le P re t Vi a g er H up to the c a ire e: P V H)

米国のHECMに類似した融資制度であり、 2006年の法改正により制度化された。フランス不動産銀行のみで取り扱っているが、2 016年から提携銀行との契約が可能となった、需要喚起が期待される。( 2007年 )

ノンリコースローン

保険制度や証券化などの仕組みは無い。

Ⅴ 今後の課題と展開方向

Ⅴ-1 リバースモーゲージを巡る環境変化 Ⅴ-2 リバースモーゲージの課題・展開 Ⅴ-3 リバースモーゲージ付住宅商品

Ⅴ-1 リバースモーゲージを巡る環境変化原点:「現居住用資産の価値を担保に継続居住したまま資金を得る」

①介護施設への転居等の確率が高く、「死ぬまで自宅に住み続けること」ができなくなっているケースが増加。

②相続人が居ない、相続放棄のケースが増加。

③住宅に資産価値の無い事が周知されてきたが、一方でリノベニーズ、 リノベによる資産化の可能性も出てきた。

④高齢からの住宅取得ニーズがある。

⑤住宅金融支援機構の保険付加により地域金融機関等新たなローン商品として取り組み始めてきた。

資産マネジメントへの関心の高まり(相続、空家対策、資産運用等)

⑦都市・市街地再生の困難化とマンション共同化や再開発需要増等

2022/3/12

リバースモーゲージ普及に向けた金融機関の担保査定技術の高度化

令和4年3月18日

東京大学大学院経済学研究科特任教授(不動産イノベーション研究センター(CREI))武藤祥郎

目次

1.問題意識

2.海外における資産大量評価と自動価値算定モデル(AVM)

3.CREIにおける不動産価格分析能力の向上について

まとめ:今後の展望 2

1.問題意識

「リバース・モーゲージ」の利用進展 リバース・モーゲージの利用は、公的・民間金融機関において急速な増加傾向

住宅金融支援機構【リ・バース60】の利用状況

民間金融機関貸出実績(年度末残高))

住宅金融支援機構【リ・バース60】

https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/yushihoken_revmo/index.html

なぜ「リバース・モーゲージ」が重要か

我が国の家計資産の状況を見ると、金融資産 (資産―債務)の約1500兆円に目が行きがちであるが、

土地: 約700兆円 の合計約1100兆円(正味保有資産の約4割)をどう生かすかについて、検討する必要

・超少子高齢化において高齢者等の一部家計が 金融資産不足に陥る中で、必要な世帯において住宅・土地を活かす道を作ることが極めて重要  

出典:内閣府「国民経済計算」(ストック編)

※「固定資産」の内訳は国民経済計算で示されていないが、家計資産においてはそのほとんどが「住宅」であると考えられる。

「リバースモーゲージの『3大リスク』」に関する素朴な疑問

これらは一定の規模がある金融機関にとって本当に「リスク」なのか?

⾧生きリスク・・・プールできる。「生命表」「生命保険」

金利上昇リスク ・・・ヘッジできる。「スワップ」「ALM」等

担保価値下落リスク

これは確かに、特に人口減少下の日本において重要ではないか。

我が国金融機関における中古住宅担保評価の現状(民間金融機関)

住宅ローン貸出動向調査((独)住宅金融支援機構):2016年

住宅ローン貸出動向調査((独)住宅金融支援機構):2021年

我が国金融機関における担保(土地・住宅)評価は、もっと高度化・標準化されるべきではないか。

「リースバック」の仕組み

〇リースバックとは、所有している資産を第三者に売却し、その後、第三者とリース契約を締結することで、それまでと同じ資産を利用し続けることを可能にする取引手法

〇住宅においては、住み替えの円滑化や老後の資金への対応、相続前の不動産処分など、住宅利活用の新たな選択として近年注目されつつあり、利用件数も増加傾向(出典:国土交通省記者発表資料(令和3年12月10日))

リバースモーゲージと比較した 「リースバック」のリスク特性

国土交通省記者発表資料(令和3年12月10日)より

消費者向け「リースバック」ガイドブックの策定に向けた検討を開始

○ 一方で、リースバック自体の認知度が低いことや、一連の手続が複雑であることから、契約内容等について消費者の理解が不十分なままで契約が締結されるなどのトラ ブルが発生している事例も見られます。 

リバモ「三大リスク」のうち、⾧生き、金利上昇 リスクは回避できているが、担保価値下落リスク」あるいは担保価値評価に関しては引き続き課題

 例えば、 多くの会社が「一括査定」あるいは「高額」の 査定を謳うが、 「リースバックでの買取額が適正額を大きく下 回っていた」ことで、トラブルになる例もある。

○ こうした状況を踏まえ、消費者がリースバックの活用を検討するにあたって参考となるリースバックの適切な活用 方法や留意点等をガイドブックとして取りまとめるべく、 「消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会」を開催。

2.海外における資産大量評価(Mass Evaluation)と自動価値算定モデル(Automated Valuation Model)

海外における住宅の大量評価(Mass Evaluation)と自動価値算定モデル(AVM)

大量評価(Mass Evaluation)

共通のデータ、標準化された方法、統計的なテストを用いて、一群の不動産を評価すること(一棟の不動産の鑑定評価と同様、直接比較法、原価法、収益還元法という伝統的な3つの価値評価アプローチをとる)

通常の物件評価との違いは、作業の範囲のほか、分析を実施するために使用されるツールである。

例えば、欧米において不動産の市場価値を課税基準としている自治体にとって、大量評価は、全ての不動産を公平、透明、かつ一貫した方法で評価する上で、効率的でコスト効率の良い方法である。

大量評価は、良質のデータと健全な市場分析に基づき、数学的モデリングによって不動産価値を推定する自動価値算定モデル(AVM)を必要とする。特に北米の多くの地域で、国内および非国内の不動産について、課税目的の価値を設定するためにAVMを使用している。Brian Guerin (FRICS) “Let me introduce: mass appraisal”英国RICS ウェブサイト を基に作成

https://www.rics.org/pt-br/news-insight/future-of-surveying/data-technology/mass-appraisal/

AVMの利用と留意点

公共部門では、AVMを一定の市場範囲内のすべての不動産に適用し、課税目的の価格を推定する。

民間企業では、AVMは住宅ローン融資の目的、不正行為の検出、または分析の一環として不動産鑑定士を支援するために使用されることがある。

ここで重要なことは、AVMは完璧ではないということである。経験豊富な分析者が信頼できる方法を用いて開発した良質のデータに基づくモデルは、多くの場合、健全な価値推定を行うことができる。

その一方、AVMが正確さを欠く可能性があるのは、特殊な属性を持つ不動産や、

データが限られた市場地域などである。AVM の利用者は、AVM が算出した価格を確認する際、常に専門的な判断を下す必要がある。

なぜ「完璧でない」AVMが民間金融機関の住宅ローン融資の際に有用なのか

金融機関: 個別の評価の妥当性もさることながら、金融機関の「ポートフォリオ」分析としては、

ポートフォリオ全体としての平均化されたパフォーマンスこそが重要。

常時モニターしていなければならないため、瞬時に安価で大量の資産を評価する必要

住宅ローンの融資側によるAVM利用の例

融資側は AVMの利用により、案件を処理する前に、提案された数値が適切かどうか、人間の評価者による完全な評価コストをかけずに確認することができる。

→融資側が受け入れるリスクのレベルを算定できる。

住宅ローン期間の途中で、不動産価値がどのように変化しているかを確認するために使用することもできる。

(出典)RICS Automated Valuation Models Roadmap for RICS members and stakeholders June 2021

IAAO Standardization Model

国際評価官協会(International Association of  Assessing Officers、前身:全米評価官協会(National  Association of Assessing Officers)は、評価担当者の基準を確立することを目的に設立された機関であり、政府の査定担

当者や固定資産税の管理に関心のある人たちの専門的な会員

組織である。

IAAO の会員は査定実務と管理の基準を開発し、これらの基準の多くは州や国際的な監督機関によって採用され、一部は法律にも取り入れられている。

IAAOは、北米における資産査定にとどまらず、国際社会への普及などにも尽力している。

(出典: IAAOウェブサイト)

米国Freddie MacのAVMモデル “Home Value Explorer”

Home Value Explorer® (HVE®) :

Freddie Mac の自動評価モデル(AVM)ツールであり、数秒で不動産価値の推定値を生成 (複数のモデルを1つの製品に統合し、低価格で提供)

HVEはフレディマック独自のアルゴリズムを使用しており、リ ピートセールスモデルとヘドニックモデルから返されるモデル推定値をブレンド。

HVEは、約1億件の不動産記録を持つデータベースにより、 全米50州、3100以上の郡を広範囲にカバー

担保評価サイクルを合理化することにより、住宅ローンのプロセスを簡素化(2010年より提供開始)

HVEの用途

以下のような民間金融機関等の融資業務をサポート

• 抵当権、ホームエクイティローン等の引受審査

• ポートフォリオマネジメント等

• 信用リスク管理 よって継続的にテストされているほか、

• 損失軽減

• 住宅ローンの借り換え・変更

高速に評価額を生成するとともに、予測標準偏差

(FSD)に基づき、統計的に解釈しやすい「信頼スコア」 (Confidence Score)を提供。

CoreLogic, Equifax等の民間提供企業 (Distributor)を通じてサービス提供

AVM信頼性の確保

具体的には、サンプル内およびサンプル外のパフォーマンスでの広範なテストを行っているほか、フレディマック内部でも定期的に分析・検査四半期ごとにモデルを再計算し、数値の正確性を継続的に確保

AVMのメリット

AVMは、既存の電子評価処理プラットフォームに組み込むことができ、より低リスクの融資決定をサポートするため、住宅ローン評価において金融機関にとって特に魅力的な存在

AVMは、評価する者が通常の調査の過程で観察できないようなニュアンスや統計的分析を引き出すのに有効である。

時間、費用、(調査等の)リソースを節約し、増え続けるデータの流れを管理し、一定確実なレベルを提供する。

人為的な要素を排除し、不正のリスクを低減

AVMのデメリット

AVM を使用する場合、通常、物件は検査(インスペクション)されず、平均的な条件が用いられることが多いが、これは不正確である可能性が高い。AVMプロバイダーは、市場を正確にモデル化するために、不動産と市場取引価格に関する信頼できる詳細な記述データを大量に必要とする。

AVMの使用に関して、消費者の透明性はほとんどない。

住宅分野では、住宅購入のプロセスが複雑であるため、評価や調査の選択について消費者に情報を提供することが困難。

優れた比較可能なデータの量と質が欠けていると、信頼性の低い評価につながる可能性がある。

使用されている基礎データの出所に関するもの

– データソースは定期的に更新され、提供されるサービスの全期間を通じて利用可能か

– 過去の評価額は、資格のある独立した評価人が提供した販売価格や数値に基づくか

– どのように収集されたか

– セレクション・バイアスがかかっていないか

システムが不正行為の対象となる可能性がある

AI、機械学習、神経言語プログラミングは、AVMの高度化を意味する。これは、人間の入力に依存しないだけでなく、評価を作成するために行われたプロセスと機能の簡単な説明を行うことができない評価結果につながる可能性がある。(ブラックボックス性)

(出典)Royal Institution of Chartered Surveyors (RICS) “Automated Valuation Models Roadmap for RICS members  and stakeholders”, June 2021, 10ページ表を邦訳

AVMのメリット・デメリットから得られる教訓

既存の個別「鑑定評価」とAVMは併存するものであり、AVMは、個別不動産評価の妥当性よりも、ポートフォリオ・パフォーマンスの平均値等が課題になる住宅ローン等の「金融」で有効な存在

特にこれまで適切な担保評価において課題となっている、 ・低額物件・地方の物件等の取引数が多くない物件について、データに基づく価格査定とその標準誤差の分布により、 適切な視座を金融機関や担当者に与える可能性

(参考)Home Equity Conversion Mortgage (HECM) の仕組み

ここまでのまとめ

 欧米では、金融商品として必ずしも主力とは言えないが、低所得者等向けにリバースモーゲージの活用が進む。

 制度上の問題はさることながら、上記の大量評価手法やAVMがほとんど我が国金融機関に根付いていないとすると、担保「査定インフラ」の課題があるのではないか。

 特に、比較的低額物件が多い(金融資産が小さく年収が小さい)と思われるリバースモーゲージについて、AVMの分析能力が上がれば、リバース・モーゲージの担保資産リスクの分析能力も上がるのではないか。

一方で、残念ながら我が国でのAVM認知度は低いと同時に、研究レベルでの論文でも寡少(海外では、International Journal of Strategic Management、Journal of Property Investment & Finance、International Journal of Housing Markets and AnalysisなどでAVM論文が増えている。)

不動産の価格評価をどのように高度化できるのか。CREIでは何をやっているのか。

3.CREIにおける不動産価格分析能力の向上について

背景・目的

○ 不動産へのニーズの多様化に適確に対応した新たな不動産市場の形成や業態の育成・発展に資するよう、産学官の効果的な連携により不動産分野のイノベーションをリードすることが重要。

○ 少子高齢化、AI・IoTなど新技術の進展、グローバル化など、社会経済情勢等の急速な変化に伴い、不動産に対する社会ニーズも多様化。

産学官連携による研究拠点として、東京大学に不動産イノベーション研究センター(CREI)事務局を設置(2020年度~5年間)

連携部局

・ 公共政策学連携研究部

・ 経済学研究科 ・ 工学系研究科

・ 情報理工学系研究科

・ 空間情報科学研究センター ・ 未来ビジョン研究センター

UC Berkley: FISHER CENTER FOR REAL ESTATE & URBAN ECONOMICS 

寄附企業等・共同研究機関・協力機関

○ 寄付企業等

・ 住友不動産株式会社 ・ 東急不動産株式会社 ・ 東京建物株式会社 ・ 野村不動産株式会社

○ 共同研究機関

・(一社)全国住宅産業協会

・(公社) 全国宅地建物取引業協会連合会 不動産総合研究所 ・(公社)全日本不動産協会 全日みらい研究所

・ 三井不動産株式会社 ・ 三菱地所株式会社 ・ 森ビル株式会社

○ 協力機関 ・ 国土交通省

その他、

・ ヤマトホールディングス株式会社 ・ (一社)不動産流通経営協会

・(一社)不動産協会

・(一財)不動産適正取引推進機構(企業・団体名は50音順)

MIT, Oxford等の多くの主要大学で不動産関係の研究センターが不動産関 係の研究を蓄積

(機構⾧) 柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授

(副機構⾧) 浅見泰司 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授

城山英明 東京大学未来ビジョン研究センター 教授

(連絡先)東京大学連携研究機構 不動産イノベーション研究センター(CREI)事務局

https://www.crei.e.u-tokyo.ac.jp/ mail: crei@e.u-tokyo.ac.jp

(1)時空間地球統計(Egotistic)による不動産価格推定モデルの開発<概要>

ヘドニック価格設定モデルの精度向上

 不動産賃貸(住宅)価格は、通常の回帰分析などで精度が保てる一方、個別不動産の影響が強く、都心の「ビッグデータ」が得られる地域でも限界がある  特に取引事例が限られる地方部などでは、取引価格の予測誤差の減少に限界がある

「ある地域Aは隣の地域Bと、近い関係性にある」と言う空間相関を導入し、サンプルが希薄な地域においても精度の高い予測を可能となるモデルを開発  神奈川県横須賀市の新築・中古戸建住宅について、レインズ成約物件データを分析

 時空間の分散・共分散マトリックスを適切に推計することで、サンプル内の予測値、サンプル外の予測値のどちらについても、予測性能が向上

モデル推計に際して生成される空間効果のパラメーターは、実務上有効な指標となりうる

 予測値の確率分布の生成: 金融機関や不動産業者などが(担保)不動産の価格査定を行う際に、平均値としての価格を算出できるほか、単独又は複数不動産を組み合わせて分析できる

 一定の空間における分布の生成: 不動産業者あるいは専門家が感覚的に把握する地位(じぐらい)について、数値的な裏付けが可能になる

 空間における減衰率: (今回の分析対象地域では)600m以内という比較的短い距離で空間的効果が減衰。近傍類似地の範囲を把握し、その重要性を比較できる

【研究成果】 Muto, S. Sugawara, S., Suzuki, M. (2021) “Hedonic Real Estate Price Estimation with the Spatiotemporal Geostatistical Model,” CREI Working Paper (The University of Tokyo), 3.

Gestatesによる空間考慮の考え方

Gestatesの予測性能(暫定的結果)

Gestatesによる点推定分布と空間的価格分布の導出

Gestatesによる「空間的減衰率」の導出

不動産価格に対する空間的な減衰率が計算できる

(2)画像認識のAI技術を用いた都市景観分析

<概要>

不動産の価格形成

  視覚的な景観情報は、大規模かつ定量的な把握が⾧らく困難であった

 ストリートビュー画像と画像認識のAI技術を組み合わせることで、分析を大きく飛躍させる可能性を秘めている

欧米とは異なる日本の都市景観の構成要素を抽出し、不動産価格との関係を分析

東京圏郊外(東京都八王子市)の低層住宅地において、売買された戸建住宅周辺のGoogleストリートビュー画像を収集+セマンティックセグメンテーション 画像から捉えられる視覚情報は、周辺地区全体の景観を表す場合と、街路レベルの景観を表す場合があり、後者は地区の固定効果をコントロールすることで捉えられる

緑・植栽、開放性、建物密度は、街路レベルの不動産価格と正の相関がみられる

日本で一般的な都市景観要素として、電柱の存在は地区レベルで不動産価格と負の相関があるが、住宅地を不連続にする路肩・駐車スペースや農地の存在は、地区レベルでも不動産価格と負の相関をもたない傾向にある 。

【研究成果】 Suzuki, M. Mori, J., Maeda, T. N., Ikeda, J. (2022) “The value of urban landscapes in a suburban city of Tokyo, Japan: A semantic segmentation approach using Google Street View images,” CREI Working Paper (The University of Tokyo), 5.

「セマンティック・セグメンテーション」を活用した価格分析

レインズ成約物件周辺のGoogleストリートビュー画像を、1物件あたり12枚(30度ごと)収集

Cityscapes Datasetを用いて、収集画 像のセマンティックセグメンテーション(画像 内の全画素にラベルやカテゴリを関連付ける ディープラーニングのアルゴリズム)を適用

各景観要素の構成割合(ピクセル数)を もとに、12方向の平均値を指標化

都市景観指標を説明変数としたヘドニック価格分析を行い、取引価格への影響を分析

出典:https://www.cityscapes-dataset.com/

セマンティック・セグメンテーションの例:住宅地

不動産の価格分析能力高度化に向けたCREIにおける取り組みの方向性

 空き家の発生状況の地域的分布予測

 価格分析におけるAI・機械学習の活用

「景観・街路情報の取得」と不動産価格の関係

「大相続時代」の到来を見据えた地域的な空き家及び外部性の発生状況予測(テーマ1との関連)

分析技術の高度化  価格分析における空間情報の活用

都内全域等大サンプルにおける分析技術の確率・高度化

 広告行動など住宅市場における様々な市場不完全性の分析

CREIが「学術的な分析」を不動産ビジネスの「参考にすべき要素」として提供し、

・デジタルや新技術を活用した円滑な不動産の取引

・国民の家計資産の約4割を占める不動産資産の最大活用に資することを目指す

まとめ:今後の展望(リバース・モーゲージ市場のさらなる発展に向けて)

 通常ローンも含めた担保データ分析能力の向上+モデリングの高度化・透明性確保

 リバース60等のリバース・モーゲージ関連データ蓄積

リバースモーゲージ型住宅ローンの 現状と今後の課題

独立行政法人住宅金融支援機構 国際・調査部 調査担当部長 豊島義之

リバースモーゲージ型住宅ローン

【リ・バース60】の概要

【リ・バース60】は、リバースモーゲージ型の“Reverse”と生まれ変わる”Rebirth”の2つの 意味を込めた上で、「60歳以上から利用可能」というメッセージを意識したリバースモーゲー ジ型住宅ローンの愛称

リバースモーゲージ型住宅ローン【リ・バース60】の概要①

リバースモーゲージ型住宅ローン【リ・バース60】の概要②

ノンリコース型とリコース型 金融機関により異なる場合あり。

高齢者の住まいをめぐる状況(ストック)

高齢者の世帯員がいる世帯における持家率は、低下傾向にあるものの依然として8割以上。また、持家を所 有している高齢者の過半は、同一住宅に31年以上居住。

生活環境の変化に応じた住み替えは行われておらず、定期的なリフォームを実施していなければ、不便さ に我慢しつつ生活している可能性。

出典:平成30年度高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果(内閣府) 出典:平成30年住宅土地統計調査(総務省)

高齢者の住まいをめぐる状況(住宅に関する問題)

持家(一戸建て)に居住する高齢者において、住宅に問題を感じている者は64%にのぼり、住宅に対する 古さ、地震や火災に対する防災設備、造りの使いにくさに対して特に問題を感じている。 アメリカと比較しても日本の高齢者は住宅に対して問題を抱えており、特に、上記問題に対する意識差が 大きい。

出典:令和2年度高齢者の生活と意識に関する国際比較(内閣府)

高齢者の住まいをめぐる状況(フロー)

2014年~18年の5年間で65歳以上の者の住宅取得(住宅の建設・購入)は21.3万戸(全世代の13%)あり、 高齢期でも一定の住宅取得ニーズが存在。

ただし、住宅取得者の年収は500~700万円未満の世帯が最多(18%)であり、一定の収入がある世帯に限られる。

出典:平成30年住宅土地統計調査(総務省)

リバースモーゲージの現状

(住宅ローン貸出動向調査結果)

※「住宅ローン貸出動向調査」とは、住宅ローンを取り扱う金融機関を対象に、住宅金融支援 機構が毎年度実施するアンケート調査(2021年度は全301機関を対象とし272機関が回答)。 当調査では、リバースモーゲージ(【リ・バース60】を含む)の取扱に関しても調査を実 施。

リバースモーゲージの現状(貸出実績)①

民間金融機関を対象とした「住宅ローン貸出動向調査」では、リバースモーゲージの貸出実績(年度末残 高)は、1,577億円(回答のあった金融機関の合計金額)。 金融機関ごとの残高の分布は「500万円以下」が最多。次いで「5000万円以下」、「1億円超」。

※上記の残高は、回答のあった金融機関の合計金額であり、必ずしも市場全体の規模を表すものではない。

リバースモーゲージの現状(資金使途)②

リバースモーゲージの資金使途については、【リ・バース60】の取扱金融機関が多いことから住宅関連が多いが、生活資金を対象としている金融機関も約4割存在。

リバースモーゲージの現状(機関保証・貸出姿勢)③

リバースモーゲージの機関保証の利用状況は、「住宅金融支援機構の住宅融資保険(リ・バース60)」が 最多。その他、住宅金融支援機構を除く「外部の保証会社等」が多い。 取扱姿勢については、自然体(現状維持)と回答している金融機関が最多。

リバースモーゲージの現状(取り扱う上での課題)④

リバースモーゲージを取り扱う上での課題は、「高齢者及び相続人への商品説明」が最多。次いで、「長生きリスク(長生きすることにより担保評価額分の融資限度額を超過するリスク)の管理」。

【リ・バース60】の利用状況①

(参考)取扱金融機関80機関(2022年3月現在)

【リ・バース60】の利用状況②

利用者の職業等

資金使途

活用事例①(戸建住宅の建設)

〈戸建住宅の建設〉 2020年度 申請件数:327件 (申請件数全体に占める割合:28.1%)

特徴

✓ 利用エリアは、首都圏が23%、近畿地方が17%、北関東・甲信地方、東海地方それぞれ16%、その他の地 方が28%となっており、全国的に幅広いエリアでの利用。

✓ 60~69歳が半数以上で、定年を迎えられる頃に建設を行っている方の割合が高い。

✓ 100㎡未満の住宅が57%と半数を超えており、60歳以上の世代の生活に適した広さの住宅を選択。

申込みのきっかけ(例)

● 住み慣れた場所でより快適な住環境を得るために、建て替えたい。

● 子供の独立を機に、現在の家族構成に合った 広さの家に建て替えたい。

● 自宅の老朽化や自身の高齢化に伴い、設備の 入れ替えやバリアフリー化を行いたい。

活用事例②(新築マンションの購入)

〈新築マンションの購入〉 2020年度 申請件数:235件 (申請件数全体に占める割合:20.2%)

特徴

✓ 利用エリアは、首都圏が58%、近畿地方が14%、その他の地方が28%となっており、大都市圏での利用が 多い。

✓ 70歳以上が半数以上で、年金受給者の割合は高い。

✓ シニア向け分譲マンションの購入にも利用。

申込みのきっかけ(例)

● 自宅の老朽化や子供の独立を機に、現在の 家族構成に合った広さの家に住み替えたい。

● 利便性の高い街中へ住み替えたい。

● 子世帯との近居のために住み替えたい。

● シニア向け分譲マンションに住み替えたい。

活用事例③(戸建住宅のリフォーム

〈戸建リフォーム〉 2020年度 申請件数:283件 (申請件数全体に占める割合:24.4%)

特徴

✓ 利用エリアは、首都圏が30%、中国地方が16%、東海地方が13%、その他の地方が41% となっており、 全国的に幅広いエリアでの利用。

✓ 70歳以上が半数以上で、年金受給者の割合は高い。

✓ リフォーム工事費は500万円未満が42%、500万円以上1,000万円未満が39%。

✓ 自己資金(※1)の平均は63万円と少なく、自己資金なしの借入者の割合は59%。

✓ 毎月支払額の平均は1.1万円であり、他の資金使途に比べて少ない。

申込みのきっかけ(例)

● 自宅の老朽化や自身の高齢化に伴い、設備の 入れ替えやバリアフリー化を行いたい。

● 住み慣れた場所で、より快適な住環境を得る ためにリフォームをしたい。

● 子供の独立を機に、現在の家族構成に合った 広さの家にリフォームしたい。

地方公共団体との連携した活用事例

【事例1】大和川高規格堤防整備事業

● 大和川高規格堤防の整備に伴い、移転対象住民(地権者)の住宅の取り壊しや再建が必要

・既成市街地において、国土交通省が堤防盛土を施行するため、既存住宅の取り壊しや住宅の再建が必要 ・高規格堤防と一体的に行う、大和川左岸(三宝)土地区画整理事業は、UR都市機構(以下UR)が施行者として実施 ・事業地区内にお住まいの方の約7割が60歳以上の高齢者で、新たな住宅ローンを組む

ことが困難な状態

● 移転者の住宅再建を堺市及びURと連携して支援

・機構が作成したリ・バース60等の紹介チラシをUR及び堺市を通じて地権者に配付

・地権者宅へ訪問するUR及び堺市職員22名に対して勉強会を実施(参考:機構作成チラシ)

【事例2】「川崎市すまい・いかすプロジェクト」における取組(神奈川県川崎市)

・住まいを活かした豊かな高齢期等の実現を目指す「川崎市すまい・いかすプロジェクト」に、川崎市と連携して取組を促進する川崎市すまい・いかすサポーター」として参画し、各種取組を実施。

・「川崎市すまい・いかすプロジェクト」に係る企画段階からの川崎市との打合せにおいて、地域金融機関も含めた取組を提案。

・川崎市の政策への連携、高齢者向け金融商品の充実の観 点から、リ・バース60の取扱いを川崎信用金庫に提案

川崎信用金庫が『かわしんリ・バース60』取扱開始 (令和2年1月20日)

(参考1)一般的な住宅ローン(フラット35)の利用者属性(2020年度)

人生100年時代の家族とリバースモーゲージ: 経済学の視点から

竹田陽介(上智大学経済学部)

「沖縄の家族」

事業承継

冠婚葬祭

医療

介護

私の家族

アウトライン

1. 「人生100年時代」の家族

2. 家族とリバースモーゲージ

3. リバースモーゲージの不人気の要因

4. リバースモーゲージの制度設計

1. 「人生100年時代」の家族

• 年齢に完全に対応したライフ・ステージを前提とする人生シナリオの困難 • 三段階の人生シナリオ: 就学期 就労期 退職期

• 例:多段階の人生シナリオ

ボランティア活動

就学期 就労期 移行期 就労期 就学期 移行期 就労期 退職期

子育て スキルのアップグレード

• 可能な自分(possible selves)へのナッジ(behavioral nudge)

• 無形資産(生産性資産,活力資産,変身資産)の力:個人間の分散が大きくなる

• 人間関係:リスクシェアリングのための家族構成員間の役割のスイッチング

2. 家族とリバースモーゲージ

「家族と経済学」

• 家族と市場の境界:取引費用,リスク・シェアリング

• 家族:ライフサイクルにおいて,教育・就労・結婚・離婚・出産・遺産相続などに関わる集合的な意思決定を行う主体

• 集合的な意思決定:社会的分化(デュルケーム『社会分業論』)を経た現代の家族は,顔の見える家族内での資源・リスクの配分だけではなく,匿名性の担保される市場取引に頼る.

• リスク・シェアリング

• インフォーマル:世代内・世代間の所得移転

• 資産形成における遺産の比重 (Kotlikoff and Summers, JPE:1981)

• フォーマル:金融資産市場

• 意図しない遺産(Abel, AER:1985):長生きのリスク

• リバースモーゲージ:債権の証券化(竹田『土地総合研究』2014年)

• 非伝統的金融政策:中央銀行の「最後の買い手」機能(竹田・矢嶋『非伝統的金融政策の経済分析』2013年)6

3. リバースモーゲージの不人気の要因

• 不人気? 米国(Poterba et al. JEL: 2011)

• 65‐69歳世帯のHome equity/ total wealth: 25.9%, Health and Retirement Study(2008)

• ベビーブーマー世代の離婚歴有り・配偶者死別者の高いHome equity保有額

• その要因: 退職世代の合理的意思決定

• Health and Retirement Study:Coco and Lopes(RES: 2020)

• 利他的遺産動機

• +健康・医療費支出のリスク:住み慣れた住居を止む無く売却する不効用

• +リバースモーゲージの高い手数料・担保維持費

4. リバースモーゲージの制度設計

• 退職世代の合理的意思決定:Coco and Lopes(2020)

• リバースモーゲージ+住居の強制売却に対する保険=退職者もRMの提供者・保険機 関もパレート改善する.

• しかし,「人生100年時代」において,退職期の合理的意思決定だけでは,長 期にわたる家族のリスクシェアリングは達成できないと考えられる.

• 無形資産の個人間の分散が大きくなる

• とりわけ,身体的・精神的健康を含む活力資産

• 処理能力の負荷がもたらす「先送り」「ほったらかし」「トンネリング」を避ける

• 可能な自分へのナッジの活用は可能か?

• 長生きのリスクのシェアリングに供するリバースモーゲージの制度設計とは?

4. リバースモーゲージの制度設計

• 貯蓄に関するナッジの活用例:企業の関わり

  1. Smartプラン:“Save More Tomorrow”, Thaler and Benartzi (JPE:2004)

• 今は貯金できないと感じている人が,給料が増えたら必ず天引き貯金を増やすことに同意する.

• 起こること(昇給)と起こって欲しいこと(貯蓄の増加)を繋げる.

2. 給料日ローン:Bertrand and Morse (JF:2011)

• 潜在的な顧客に示すデータ(利率のみ,あるいは金額も)で二つのグループに分ける.

• 金額費用も見せられたグループの方が,ローンを組む顧客が大幅に少なかった.

• 明確かつ簡潔なまとめは認知能力を効率よく利用できる.

3. 401K(確定拠出年金制度)への加入の初期設定:Carroll et al. (QJE:2009) • 企業は新規採用者に登録用紙を提示する必要がある.

• 初期設定が加入しない(opt-in), 加入する(opt-out)か,意思表示の義務(active)かで異なる.

• Activeのケースでは,opt-inに比べて加入者が28%増加した.

• 先送りする性向が強く,貯蓄への嗜好異質性が大きい時には,Activeが望ましい.

4. リバースモーゲージの制度設計

• リバースモーゲージへの応用:先送り,異質な契約

• 住宅購入時にRMへの加入意思の有無を,企業に対してActive(意思表示の義務)の 形式で行う.

• ESG投資時代の企業の社会的責任(CSR):「長期思考」

• 事業承継, BCP, 防災教育など

• リバースモーゲージの加入意思表示の義務:投資家の態度にも反映される.

国土交通省

【別紙2】住宅のリースバックに関するガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について

https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000174.html

別紙2

住宅のリースバックにガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について

令和4 年 6 月

消費者向けリースバックにガイドブック策定に係る検討会

【委員】

井上博登      弁護士(長島・大野・常松法律事務所)

阿部芳典      (一社)不動産流通経営協会業務流通委員

草間時彦      (公社)全国宅地建物取引業協会連合会常務理事・政策推進委員長

佐藤貴美             弁護士(佐藤貴美法律事務所) 

野津干絵      明治大学政治経済学部教授

早野木の美    (公社)日本消費生活アドバイザー・コシザルタン卜・相談員協会主任研究員

松本修 (公社)不動産保証協会常務理事

((公社)全日本不動産協会神奈川県本部理事)

山本遼 株式会社R 6  5 代表取締役

行武憲史      日本大学経済学部准教授

(敬称略、五十音順)

【事務局】

国土交通省住宅局住宅政策課

国土交通省不動産・建設経済局不動産業課

【日程】

第1 回検討会 令和3 年1 2 月 2 2日

第 2 回検討会 令和4 年1 月2 6日

第3回検討会 令和4 年 3月1 4日

はじめに

  1. .   本検討会開催の背景

近年高齢者世帯を中心に住み替え、老後資金の確保、円滑な相続等を目的としてリースバックを活用した不動産取引が徐々に増加傾向にある。我が国の住宅政策においても、「往生活基本計画

(全国計画)」( 令和3年3月19日閣議決定)にて、「住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」を目標と一つとてして掲げており、ライフスタイㇽに合わせた柔軟な住み替えを可能すると既存住宅流通の活性化するための基本的な施策として「健全なリースバックの普及」が挙げられている。

一方で、リースバックを活用した不動産取引に対する認知度が未だ低いことや、持家の売買契約と賃貸借契約を組み合わせることによる取引の複雑さから、契約内容等に対する消費者の理解が不十分なまま契約が締結されるなどのトラブルが発生している。

こうした状況を踏まえ、消費者がリースバックの活用を検討するに当たって参考となる適切な利用方法や検討時の留意点等をガイドブックとして取りまとめるべく、不動産取引・消費者保護の分野における有識者、不動産業界団体の参加を得て、本検討会の開催を行うこととしたものである。

  • .    議論の進め方

本検討会においては、令和3年12月以降3回の会合を開催し、関係省庁・不動産事業者のオブ

ザーバー参加を得つつ、各委員等による自由かつ率直な意見交換を行った。

  • .   本報 告書の位置づけ

本報告書は、ガイブドック作成に向けて令和3年12月~令和4年3月にかけて3 回開催された検討会における議論の内容をまとめたものである。

なお、本検討会においては、リースバックに関する調査結果等を共有するとともに、関係者が現時 点において認識しているリースバック取引の特徴や想定される活用例・留意点等について思惜のない意見交換を行った。こうした中で、実際の利用例やトラブル事例についての共有が行われたほか、住み替えの円滑化や住宅資産を活用した資金需要への対応についてリースバック以外の取引との比較・ 検討などがなされたところである。

そのため、本報告書では、ガイドブックの容内に加えて、消費者がリースバックの利用を検討するにあたり事前に認識すべき事柄をその背景とともに記載しているほか、消費者が自身の需要に応じて適切な手法を選択する上で検討時に有用と考えられるとされた利用例や留意点についても記載している。

一方で、リースバックは未だ取引事例も多くないため、健全なリースバックの普及に向け、取引の状況を踏まえて、必要な対応が求められると考えられる。行政におかれては、本検討会にて行われた議論を踏まえ、引き続き健全なリースバックリースパックの普及に向けた取組を継続し、時宜にかなった柔軟な住み替え・既存住宅流通の活性化に寄与することに期待をしている。

リースバックガイドフックの作成に際しての検討会での検討内容について

目次

はじめに

第1  章     住宅のリースバックの概要及び利用の検討に際してのポイン卜

  1. .    住宅のリースバックとは     1
  2. .  想定されるリースバックの利用例      2
  3. リースバックの特徴     4

【参考】リバ一スモ一ゲ一ジとは     4

【参考】通常の売却を選んで、契約締結後、決済・引渡し時期を事業者と調整する 5

  • リースバックにおけるトラブル事例とポイシ卜  7

第 2 章 4.    リースバックの検討にあたってのポイン卜の補足及びその他の留意事項等

  1. .  利用する手法の検討について   12

( 1 )適切な手法の選択      12

( 2 )将来にわたる収支計画の検討   13

( 3 )勧誘への対応   13

( 4 )同居家族がいる場合    14

  • .    リースバックの契約条件について    15

( 1 )売却価格について      15

( 2 )賃料について   15

( 3 )契約の相手方の選択    15

( 4 )宅建業者に支払う媒介報酬     16

( 5 )売買契約締結後の解除 要件・手続     16

( 6 )買戻しの要件   17

  • .    賃貸借契約の内容について   18

( 1 )賃貸借契約の種類の確認       18

( 2 )賃料の確認     21

( 3  )設備の修繕や建物の増改築・リフォーム等に関する確認      21

  • .  リースバック契約締結前の留意点      22

( 1 )重要事項の告知 22

( 2 )契約内容についての説明の要請 22

( 3 )契約書の取り交し      23

( 4 )売却代金の受取 23

  • . 契約期間中の留意点について    24

( 1 )賃料支払義務   24

( 2 )善管注意義務   24

6. リースバックの終了       25

( 1 )原状回復に関する対応  25

( 2 )明渡しが遅延した場合  26

(附属資料)  リースバックに関する現状分析について      27

  1. .    消費者アンケー卜について   27
  2. .   事業者アンケー卜について    31





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