信託フォーラム[1]の記事からです。
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この委託者の地位の移転の問題は、すでに「委託者の地位の承継」の問題として取り上げており、その問題点などについてはご理解いただいていると思っている。しかし、登録免許税という魔物に取りつかれて、今でも委託者の地位者移転に固執している士業も多いので、今回は、「委託者の地位の移転」に絞って考えてみたい。
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登録免許税よりは、信託目録の委託者に関する事項の欄を閉鎖するのか、変更で対応するのかという問題だと思っていました。委託者が亡くなっているのに、信託目録のその他の事項欄でも手当されずに放置されている場合、第三者が観て委託者の地位が分からないことが、公示という面からあまり良くないと思います。
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③(受益者)本信託の当初受益者は、委託者S及びSの配偶者Bである。なお、配偶者Bの受益権の割合は委託者兼受益者Sが民法第760条により負担している婚姻費用の範囲内とする」
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現在、私の場合ですが、ここで出てくる委託者という用語に関しては、信託契約書(案)を公証センターに提出した場合、このように訂正されます。議論の余地はありません。本当は委託者という語を付けて欲しくないのですが、何故なんだろうと感じます。
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法律を駆使した点は敬服するが、地位を取得した者は、権利は行使できないが、受託者から義務(法52条:信託財産が費用等の償還等に不足している場合の措置)の履行は求められそうであり、注意を必要としよう。
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信託法52条については、受益者も義務を負うので、原則として受益権を取得した者に委託者の地位が移転しても、特別な不利益はないのかなと感じます。
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その他
・受益権を取得する者に、委託者の地位を移転する場合、委託者の権利行使を禁止するという条項を入れたとき、委託者の権利行使の禁止を契約当事者でない次の委託者に義務づけられるのか。
私なら、次の条項をいれます。
(受益権)
受益権を原始取得した者は、委託者から移転を受けた権利義務について同意することができる。
(委託者の地位)
委託者は、次の各号の権利義務を受益者に移転する。
(1)信託目的の達成のために追加信託をする権利義務。
(2)受益権の放棄があった場合に、次の順位の受益者または残余財産の帰属権利者がいないとき、新たな受益者を指定することができる権利。
2 委託者は、受益者を変更する権利およびその他の権利を有しない。
3 委託者の地位は、受益権を取得する受益者に順次帰属する。
4 委託者が遺言によって受益者指定権を行使した場合、受託者がそのことを知らずに信託事務を行ったときは、新たに指定された受益者に対して責任を負わない。
・「委託者」には、「当初委託者」と、「地位の移転を受けて委託者になる者」とがいることを前提にして、両者の権利について書き分ける必要があるか。
信託行為時に委託者の権利について定めておけば、書き分ける必要はないと考えます。また、信託行為時に定めない場合は、受益権を取得しようとする人は、同時に委託者の権利について望むような信託の変更が同時になされなければ、受益権を放棄することを受託者と話して、信託の変更を行えば良いと思います。
・登記申請をすべき義務と、信託法上の地位(委託者、受託者、受益者)とは連動するか。
たとえば、母と長男と二男と三男がいて、ほかに母の相続人はいないという状況で、委託者母、受託者長男とする不動産の信託契約(委託者の地位は第2次受益者長男へ移転との条項あり)を締結後、登記申請をする前に母が死亡したという場合、信託を原因とする受託者への所有権移転登記をすべき申請人は、誰か。相続人長男、二男、三男か、新委託者長男か。
登記権利者は受託者長男、登記義務者は母で、代位申請するのは、新委託者(兼第2次受益者)の長男だと考えます(不動産登記法59条7号、99条)。
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[1] Vol.14 2020年10月 日本加除出版P102~