民亊信託の税務 研修メモ

追加信託で損益通算が出来る。
→初めて知りました。税務上は出来ると考えて良いのかなと理解しますが、事前に担当の税理士に確認は必要だと感じます。

 

(一社)民亊信託推進センター 研修メモ

講師:辻・本郷税理士法人 鈴木 淳税理士 

 

※信託財産に係る負担(債務)も同時に信託財産とした場合

→負担付贈与に該当する

→委託者に「時価-債務」にて、みなし譲渡課税が生じる

→信託財産が土地建物等の場合には、受益者の受贈額は「相続税評価額-債務」

ではなく、「時価-債務」で計算する

(負担付贈与通達 平元3/29 付 直評5 外、相基通9-11、21 の2-4)

なお、賃貸不動産の贈与時に、預り敷金見合いの現金も同時に贈与する場合

には負担付贈与に該当しない(国税庁 質疑応答事例)ため、賃貸不動産の

信託設定時には、敷金相当の現金も含めることを検討する

みなし譲渡課税(※)(所法67 の3③,59①、所基通67 の3-1)

(法法22②)寄付金or 役員賞与(法法22②,34①,37)一時or 給与所得課税(所基通34-1(5))法人寄付金課税(法法22②,37)受贈益課税(法法22②)

 

相続税法第9 条の2①〈贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利〉

信託(退職年金の支給を目的とする信託その他の信託で政令で定めるものを除く。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいう。以下同じ。)となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

 

・受益者が法人の場合の税 みなし譲渡課税に気を付ける。

相続税法9条

 

「対価は時価で分割払いなら課税されないと考えて宜しいでしょうか。」

 

同族会社の規定 通達

相続税法第9 条〈贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合〉

法第5 条から第8 条まで及び第9 条の2 から同条6 に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

相続税基本通達9-2〈株式又は出資の価額が増加した場合〉

同族会社(法人税法(昭和40 年法律第34 号)第2 条第10 号に規定する同族会社をいう。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。

(1)会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者

(2)時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者

(3)対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債

務の免除、引受け又は弁済をした者

(4)会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該

財産の譲渡をした者

 

所得税法第59 条①〈贈与等の場合の譲渡所得等の特例〉

次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)

又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

 

 

所得税法施行令第169 条〈時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲〉

法第59 条第1 項第2 号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の二分の一に満たない金額とする。

所得税基本通達59-3〈同族会社等に対する低額譲渡〉

山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産を法人に対し時価の2 分の1 以上の対価で譲渡した場合には、法第59 条第1 項第2 号の規定の適用はないが、時価の2 分の1 以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が法第157 条《同族会社等の行為又は計算の否認》の規定に該当する場合には、同条の規定により、税務署長の認めるところによって、当該資産の時価に相当する金額により山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算することができる。(昭50 直資3-11、直所3-19 追加)

 

〈適用不可〉

① 非上場株式に係る納税猶予(相続税・贈与税) ・・・措法70 の7 の5、

70 の7 の6

② 農地に係る納税猶予(相続税・贈与税)・・・措法70 の6

 

信託に関する受益者別(委託者別)調書(同合計表)」(相法59③)

※下記に該当する場合は、提出不要

・自益信託の場合(相規30⑦五イ(4))

・信託財産の価額の合計額が50 万円以下の場合(相規30⑦一)

 

・受益者が個人

  • 不動産所得に損失がある場合

→「信託による不動産所得の損失がある場合、その損失はなかったものとする。」

(措法41 の4 の2)

=当該信託以外の所得と損益通算不可(=翌年以降繰越不可)

 

・受益者が法人

  • 受益者が当該信託に係る債務を弁済する責任の限度が、実質的に信託財産の価額とされている場合→信託財産の帳簿価額を超える部分の金額は、損金不算入。

ただし、損金不算入額は、翌事業年度以後の信託による利益額を限度として、損金算入可。(=翌年以降繰越可)(措法67 の12①,②)

 

・受益者が個人の場合、信託の計算期間も暦年にすることで、受託者からの報告書をそのまま申告に使うことができる。法人の場合も同様に、その法人の事業年度と、信託の計算期間とを合わせることで、効率よく申告作業を行うことができる。

 

・近い将来に大規模修繕が見込まれる場合には、その修繕が資本的支出(いったん資産計上され減価償却)または修繕費(一度に必要経費算入)のいずれに該当するものかを事前に想定し、単年で信託財産での損益が赤字とならないかを確認しておく必要がある。複数物件を一つの信託契約に含めることで、信託による不動産所得の赤字リスクの軽減にもつながる。

 

「登録免許税などを考える建物だけを信託設定するということも考えられる。」

 

相続税基本通達9 の2-4〈信託に関する権利の一部について放棄又は消滅があった場合〉

受益者等の存する信託に関する権利の一部について放棄又は消滅があった場合には、原則として、当該放棄又は消滅後の当該信託の受益者等が、その有する信託に関する権利の割合に応じて、当該放棄又は消滅した信託に関する権利を取得したものとみなされることに留意する。

 

相続税法第13 条①〈債務控除〉

相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)

二 被相続人に係る葬式費用

相続税法第14 条①

前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。

 

(参考)平成19 年6 月22 日廃止

個別通達「土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて(S61.7.9)」

共通1-2<取扱いの原則>

土地信託の信託財産の取得、運用若しくは譲渡又は信託受益権の取得若しくは譲渡については、信託財産に帰属する財産債務はその信託の受益者が自ら有するものとし、信託受益権はその目的となっている信託財産に帰属している財産債務そのものを直接有する権利であるものとして、所得税、法人税、相続税又は贈与税に関する法令の規定を適用する。

 

・債務控除の適用にあたっての論点

(1) 確実と認められる債務か否か

① 委託者の意思に基づく信託契約の組成が行われ、その後も信託契約に基づいた運用がされており、債務は受託者固有のものではなく、受託者としての地位に基づいた信託財産責任負担債務といえるか。

② 第二次受益者や帰属権利者が確実に債務を承継する仕組みとなっているか。受託者が免責的債務引受や新規借り入れを行っており、第二次受益者が連帯保証人にもなっていない場合に、第二次受益者にとって確実な債務といえるのか。

また、仮に信託財産では弁済しきれない借入が存する場合、第二次受益者にとって確実な債務といえるのか。

 

・条文上の解釈に関して

① 条文上、信託終了時における帰属権利者の債務控除の適用について必ずしも明確ではない。

土地信託に関する個別通達が廃止されて、土地以外の資産にも対象が拡充され

相続税法第9 条の2 第6 項が新設されたが、第6 項では、信託終了時の取扱いである第4 項に直接的に触れられていない。

② ①は、信託法第177 条(清算受託者の職務)、同第181 条(債務の弁済前における残余財産の給付の制限)に基づき、信託終了時には債務は弁済されていることを想定しているとも考えられるため、信託行為に同178 条(清算受託者の権限等)第1 項のただし書による「別段の定め」を設けることにより、債権者の同意を得て帰属権利者が債務引受をしていれば実質的に問題はないのではないか。

③ 信託が終了した場合には、清算が結了するまではなお信託は存続するものとみなされており(信託法176)、さらに、帰属権利者は信託の清算中は受益者とみなされる(信託法183⑥)ことから、相続税法第9 条の2 第2 項が適用されるため第6 項の規定には当てはまるのではないか。

④ 当初受益者の死亡を原因とする信託終了ではなく、受益者連続型信託として、

いったん第二次受益者を介してからの信託終了とすれば、当初受益者からの受益者変更の段階で相続税法第9 条の2 第2 項が適用されるため第6 項の規定には当てはまるが、経済的効果としては、死亡を基因とする信託終了と結果的に同じではないか。

 

・複層化信託について

 

複層化信託の設定や受益権の評価にあたっては、上記の相続税法上の定義に該当するかどうかの確認が必要である。

収益受益権を個人が有する複層化された信託が相続税法上の受益者連続型信託に該当するときは、収益受益権は信託財産全部の価額にて、元本受益権はゼロにて評価する。

複層化信託について、信託設定時には財産評価基本通達202 に基づき元本受益者が贈与税の申告をしていたとしても、その信託が税務上の受益者連続型信託に該当していると判断された場合には、将来元本受益者に権利が帰属する段階で100%評価による贈与税(または相続税)が課税される可能性がある点には留意すべきである。

また、税務上の受益者連続型信託に該当しない信託を組成しても、次に、受益権の評価にあたっては以下のような論点も指摘されている。

・将来利益の合理的な評価として推算した価額と現実とが乖離した場合の税務上の問題はどうするか。

・固定資産税や減価償却費などの必要経費が、収益受益権と元本受益権のいずれに帰属させるべきか税務上整理されていない。

 

 

「平成30 事務年度における課税部(部門)の事務運営に当たり特に留意すべき事項について(指示)」平成30 年6 月26 日(抜粋)

Ⅳ 資産課税関係

4 財産評価事務の適正な実施

(2) 財産評価基本通達の適切な運用

財産の評価に当たっては、各財産の価額に影響を及ぼす事項を的確に把握した上で、財産評価基本通達に定めるところにより実態に即した評価を行う。

また、評価方法に疑義のある事案等については、事実確認を確実に行うとともに、財産評価基本通達第5項(評価方法の定めのない財産の評価)及び第6項(この通達の定めにより難い場合の評価)の定めを適用すべきかどうかも含め、財産評価基本通達への当てはめや評価方法等の検討を十分に行い、庁・局・署間の連絡を密にして適切な対応を図る。

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