あるメールマガジンの記事です。HPで公開するとメールマガジンを解除されるので、固有名詞を出すのは控えます。
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コロナで人との対面が、とても慎重になってきましたよね。
コンビニなどのお店では、保護シールドが普通になってきました。
半年前は考えられなかった光景ですよね。
そんな中でも止まらないのが、「認知症」の進行。
信託や任意後見につながる案件の相談が増えてきていませんか?
最近、僕のところには、はじめて案件を受けたということで、契約書のチェックや共同受任の依頼が増えてきています。
(今回のメルマガは、契約書の解説なので、契約書を作成する人向けです。)
■■ 信託契約書に入れて欲しい条項
いつもチェックするときお願いすることがあります。
特に不動産を信託する場合ですが、次の条項を入れて欲しい。
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(委託者の地位の相続)
第○条 本件信託の委託者の地位は相続により承継せず、委託者の死亡によりその地位は受益者へ移転する。(当初委託者の権利は消滅する。)
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括弧内は家族関係によってはあってもなくてもOK。
■■ なぜこの規定が必要か?
「終了時」に
・登録免許税
・不動産取得税
が高くなる可能性があるからです。
■ 登録免許税
当初委託者の相続人が帰属権利者になる場合です。
本来4/1000ですむものが20/1000になる可能性があります。
(登録免許税法7条)
■ 不動産取得税
こちらも、当初委託者の相続人が帰属権利者になる場合です。
終了時、かからないはずの不動産取得税が課税される可能性があります。
(地方税法73条の7 1項4号ロ)
つまり、1000万の評価の不動産なら、信託の終了時に
登録免許税
4万円 ⇒ 20万円
不動産取得税
非課税 ⇒ 30万円
合計で
4万円 ⇒ 50万円
になってしまいます。まずいですねぇ。
1億の評価の不動産なら
40万円 ⇒ 500万円
たった一行、あるかないかでこの違いですから、これはまずい。
契約書作成者には司法過誤の責任も生じかねません。
■ 根拠
上記二つの法律とも
「信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である」
という部分がキーになっています。
(条文はぜひ読んでみて。)
委託者の地位は、何もしないと相続人に法定相続されることが、その理由です。
(信託法147条の反対解釈)
つまり、契約書で設定した信託は、委託者の地位は相続により承継されます。
と言うことは、「委託者の地位」は、何もなければ、遺産分割の対象になります。
通常、分割協議では、委託者の地位などマニアックのこと(笑)は協議されないでしょう。
そうでなくとも、「残りの財産は○○が相続する」と言うところにかかり、
その際、委託者の地位を相続した人と、(元本の)受益者がちがう人だと、上記の条文の要件に該当しないことになります。
そもそも「委託者の地位」は「財産」なのか?(「残りの財産は・・・」という表現でOKかという問題)
それから「元本の受益者」が何かという問題はありますが、とりあえずここでは、「受益者」と読み変えてください。
ちなみに、信託法には「元本の受益者」についての定義なし。
ま、こんな感じで、いろいろ面倒なことになりそうなんですよ。
■■ 法務局によっては登録免許税が上がるところも
実際、この規定が信託契約書にない場合、
信託終了時の登録免許税が、帰属権利者が当初委託者の相続人にもかかわらず
4/1000にならずに20/1000になる法務局がでています。
九州はその傾向があるようです。
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(委託者の地位の相続)
第○条 本件信託の委託者の地位は相続により承継せず、委託者の死亡によりその地位は受益者へ移転する。(当初委託者の権利は消滅する。)
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ですから、この規定、
・不動産を信託する
・帰属権利者が当初委託者の相続人
であれば、必ず入れるようにしてくださいね。
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司法錯誤などの誤字は措いておきます。私の委託者の地位の条項は書き方が違いますが、六法や民事信託・家族信託に関する書籍には例文が書いてあるので、初めて受任する方でも大丈夫だと感じます。この記事の中での九州には、沖縄県は入っていないことを付言します。
地方税法第七十三条の七 1項4号
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000226#3015