メールマガジンからの引用です。下線は私です。
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民事信託実務講座のメルマガをお送りいたします。本日の担当は、鳥取の司法書士の谷口毅です。
今回から数回にわたって、信託の終了について考えましょう。
契約書を作成する際には、信託の終了がスムーズにできることがとても大事なのですが、そこまで、意識が向かない方も多いのが実情です。
そもそも、信託の終了まで行きついたケースが、多くはないですからね…
私の事務所でも、信託の終了の手続を手掛けることが徐々に増えてきますが、まだまだ件数が少ないです。
しかし、信託の終了はとても論点が多く、さらに、税務や登記でも実務が固まっていない部分が多いので、みなさん、手探りで行っています。
慣れた方は、みなさん、「よく分からないことが多いけれど、こういう定め方だと、最もリスクが少なく、実務上も安定した形で終了できるはず!」という契約条項の定め方を、その人なりに研究しているのではないでしょうか。
これからしばらく、信託の終了について、様々な論点を書いていこうと思います。
なお、実務も理論も固まっていない以上、私見による部分が多くなってきますので、完全に信用することなく、自分の考え方をもって、批判的に読むようにしていただけるとありがたいです。
信託の終了の続き、その2です。前回の記事はこちらです。
信託の終了 http://www.tsubasa-trust.net/2020/03/blog-post_31.html
信託の終了の際に問題になりそうな例を考えてみます。
例えば、信託の継続中に、受託者が、不動産を売却する契約をしました。
最終の代金決済日は近づいてきましたが、なんと、決済日の前に、信託の終了事由が発生しました。
この場合、受託者は、不動産の売却を継続すべきでしょうか?
それとも、売却を中止して、帰属権利者等に不動産を給付すべきでしょうか?
答えとしては、不動産の売却を継続するべき、ということになりますね。
信託の終了事由が発生しても、信託はすぐに終了するのではなく、清算が結了するまでは存続するとみなされています。
清算受託者は、債権の取立と債務の弁済をしなければなりません。
不動産の売買契約は、既に行ってしまっていますから、清算受託者は、債権債務の整理の一環として、不動産の売却を最後まで進める義務があります。
不動産を売却すると、信託財産に属する不動産は、金銭に形を変えます。
その金銭で、債務を弁済し、残った金銭があれば、帰属権利者等に給付することになります。
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信託の終了の続き、その3です。前回の記事はこちらです。
信託の終了http://www.tsubasa-trust.net/2020/03/blog-post_31.html
信託の終了その2http://www.tsubasa-trust.net/2020/04/blog-post_10.html
以前も一度ブログで取り上げた内容ですが、やはり、今でも間違ってしまう方が多いようなので、再度書こうと思います。
以前のブログはこちら「危険な信託条項の例〜残余財産の帰属〜」http://www.tsubasa-trust.net/2017/09/blog-post_16.html
信託契約の中で、「委託者兼受益者が死亡した時に、信託は終了する。残余財産の帰属は、委託者兼受益者の相続人全員による遺産分割協議で定める。」という条項を見ることがあります。しかし、これは誤りです。
なぜなら、遺産分割協議ができるのは、被相続人の遺産についてです。
信託財産に属する財産の所有権は、受託者が有していますので、委託者兼受益者は所有権を有していません。従って、このような遺産分割協議はできないのです。
この点について、「根拠条文はどこですか?信託法のどこにも書いていませんよ?」という問い合わせをされることがあります。
根拠条文は、民法896条ですね。
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」というところです。
信託財産に属する財産は、委託者兼受益者が所有しているものではないので、「被相続人の財産に属した権利義務」ではないのですね。
従って、このような信託条項を定めたとしても、無効であると考えることができます。
民事信託実務講座のメルマガをお送りいたします。本日の担当は、鳥取の司法書士の谷口毅です。
信託の終了の続き、その4です。前回の記事はこちらです。
信託の終了http://www.tsubasa-trust.net/2020/03/blog-post_31.html
信託の終了その2http://www.tsubasa-trust.net/2020/04/blog-post_10.html
信託の終了その3http://www.tsubasa-trust.net/2020/05/blog-post.html
信託の終了に関するトラブルの例を挙げてみます。
例えば、「委託者兼受益者であるAが死亡した場合に、信託は終了する」と定めていたとしましょう。
帰属権利者として、Aの長男であるBを指定していました。そして、現実にAが亡くなりました。
この時点で、信託は終了し、Bに残余財産を引き継ぐことになります。
ところが、ここで問題が発生しました。
Aの相続人全員で、改めて話し合った結果、「Bではなく、やはり、別の人が財産を取得した方がいいのではないか??」という結論に達したのです。
それでは、最初に決めておいた帰属権利者を、信託の終了後に変更する、ということが、果たして許されるのでしょうか?
結論としては、許されない、ということになりそうです。
では、どう配慮すればいいのか、ということを、これから考えてみます。
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司法書士が民事信託・家族信託について書く記事で、前から気になることがあります。
「意識が向かない方も多いのが実情」、「徐々に増えてきますが、まだまだ件数が少ない」、「とても論点が多く」、「部分が多い」。
これだけではなく、○○と書いている人がいるが誤り、など批評の対象とする人が特定されないことが多いことです。
特定する方を未だ見たことがありません。もし知っていらっしゃる方がいたら教えてください。個人名を出したとしても、実務・理論について自分で考えて実践することなので、その方を傷つけることにはなりません。書籍や論文などを表に出している方なら、実名を出して問題はないと思います。そのような方なら、間違ったことを書いたら、説明してくれるだろうし、その方が間違っていたら書籍や論文の内容を修正してくれると思います。
それが出来なければ、力がない人と考えて間違いないのかなと感じます。
例えば、川嵜一夫司法書士は書籍を出版していますが、実名を出してHPの記事を出していたところ、メールマガジンの解除通知が来ました。解除申出はしていないのに、一方的に解除通知が来ることを考えると、司法書士の力が分かるのかなと思います。川嵜先生が日本司法書士会連合会で役職を持っているは、私と日司連の考えの違いです。
登記申請代理業務、裁判書類等作成業務については出来るのに、民事信託・家族信託については何故なんだろう、と感じます。
「意識が向かない方も多いのが実情」、「徐々に増えてきますが、まだまだ件数が少ない」、「とても論点が多く」、「部分が多い」。
このような表現が出てくると、その人って誰だろう?本当に居るのかな?そんな人が多いって何名ぐらい?徐々に増えていて、まだまだ件数が少ないって多いの?少ないの?とてもってどのくらい?まずは1つについて考えてみた方が良いのでは?と最初から信用性が揺らいできます。記事を書いている方にとって不利益だし、その記事を読む人にとっても、もしかしたら考える優先順位の低いところに時間を割いてしまい、不利益を被るのかなと感じます。
最近知った言葉があります。マウンティングです。民事信託・家族信託をこれから業務としてやっていこうという方に対しては、マウントを取っているなと感じてしまいます。
「不動産の売却を最後まで進める義務」の最後とは、どこまででしょうか。資金決済が終わって、登記申請をして登記完了まで行うと考えます。その後、売却年の確定申告をして、譲渡取得税の支払いなども行うべきでしょうか。私なら、
この事例では、信託事務に関する最終の計算(信託法184条)が残余財産の帰属権利者、残余財産の受益者に承認されて、財産(この例では通帳と届出印)を渡した段階で「最後まで進める義務」を果たしたと考えます。
「委託者兼受益者が死亡した時に、信託は終了する。残余財産の帰属は、委託者兼受益者の相続人全員による遺産分割協議で定める。」という条項を見ることがあります。しかし、これは誤りです。
私はこのような条項を見たことがないのですが、どのくらいの数があるのでしょうか。「遺産分割」の記載を削除すれば、機能する条項だと思います。
Aの相続人全員で、改めて話し合った結果、「Bではなく、やはり、別の人が財産を取得した方がいいのではないか??」という結論に達したのです。
それでは、最初に決めておいた帰属権利者を、信託の終了後に変更する、ということが、果たして許されるのでしょうか?
結論としては、許されない、ということになりそうです。
では、どう配慮すればいいのか、ということを、これから考えてみます。
Aの相続人全員で、と記載されているので、Aの長男であるBも入っていることになります。私なら、次順位の受益者を定める条項に「受益者に指定された者または受益権を原始取得した者が、受益権を放棄した場合には、さらに次の順位の者が受益権を原始取得する。」と記載して、推定相続人の全員を記載しておきます。または、Bが受益権を放棄した場合、Aの相続人全員で協議した者、とします。2年前に書きました[1]。
[1] 「チェック方式の遺言代用信託契約の条項例と作成上の留意点(1)、(2)」市民と法112、113号2008年民事法研究会