民法・不動産登記法改正と信託の可能性

信託フォーラム[1]の特集から考えてみたいと思います。

司法書士川島真一「民法・不動産登記法改正が司法書士の民事信託支援業務に与える影響」

そして、この相続登記や相続人申告登記について、正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料に処せられる可能性がある。正当な理由がどのような場合に当てはまるのか等、現時点で判明していない点もあるが、少なくともこの法改正は国民が相続登記手続を進める動機付けになるものと考えられる。

正当な理由について

相続が数次にわたって何度も発生して、相続人が数十人を超えるなど極めて多数に上る場合。戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間を要するケース。遺言の有効性、遺産の範囲等が争われているケース(第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日。)

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

不動産登記法 附 則 (令和三年四月二八日法律第二四号)

(不動産登記法の一部改正に伴う経過措置)第五条

4 第二条の規定(附則第一条第二号に掲げる改正規定に限る。)による改正後の不動産登記法(以下「第二号新不動産登記法」という。)第七十三条の二の規定は、同号に掲げる規定の施行の日(以下「第二号施行日」という。)以後に登記の申請がされる所有権の登記の登記事項について適用する。

過料には、遅延損害金が発生するのか。

非訟事件手続法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000051_20200401_429AC0000000045&keyword=%E9%9D%9E%E8%A8%9F%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E6%89%8B%E7%B6%9A%E6%B3%95

(過料の裁判の執行)

第百二十一条 過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

2 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。

3 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第五百七条の規定は、過料の裁判の執行について準用する。

4 過料の裁判の執行があった後に当該裁判(以下この項において「原裁判」という。)に対して前条第三項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料の裁判をしたときは、その金額の限度において当該過料の裁判の執行があったものとみなす。この場合において、原裁判の執行によって得た金額が当該過料の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。

東京裁判所「過料決定についてのQ&A」

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/dai8bu_osirase/hisyokaryo_osirase/karyoketteiQA/index.html

破産法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075_20210301_501AC0000000071&keyword=%E7%A0%B4%E7%94%A3%E6%B3%95

(破産債権に含まれる請求権)

第九十七条 次に掲げる債権(財団債権であるものを除く。)は、破産債権に含まれるものとする。

六 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権(以下「罰金等の請求権」という。)

その他の参考として、破産法253条1項7号。

大阪地方裁判所

債務名義に基づく預貯金債権等の情報取得手続の流れ

https://www.courts.go.jp/osaka/saiban/tetuzuki_minji14/yocyokinnsaiken_zyouhousyutoku_mousitate/index.html

民事執行法第二章強制執行第二節金銭の支払を目的とする債権についての強制執行、同法第四章債務者の財産状況の調査第一節財産開示手続。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=354AC0000000004_20200401_501AC0000000002

結論・・・遅延損害金は付く。

例:東京地方裁判所

債権執行に関する申立ての書式一覧表

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/mousitatesyosiki_saiken/index.html#21seimoku

徴収事務規程第4章強制執行。

https://www.moj.go.jp/content/000110754.pdf

また、改正法では、相続登記の促進を図るうえで登記漏れが生じることを防ぐ目的で、自ら又は自己の被相続人となる者等を登記名義人とする不動産の登記記録を証明する制度(所有不動産記録証明制度)が創設されることになった(改正後不登法119の2)。

改正後不登法119の2(所有不動産記録証明書の交付等)

第百十九条の二 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

民法・不動産登記法部会資料 53

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案のたたき台 (3)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00040.html

システムの構築及び運用に要するコスト等の事情を踏まえた将来的な検討課題ではあるものの、今後、表題部所有者などの所有権の登記名義人に準ずる者を対象とすることも考えられることから、この点については、将来的なシステム整備の状況等の事情を踏まえた対応が可能となるように、省令で定めることとしている。

・日本全国の土地建物について、可能か。・・・分かりませんでした。

改正法施行後はこれら自治体の税務関係の資料に加えて、不動産登記記録に立脚した所有不動産記録証明書も活用されていくであろう。そしてこの実務は民事信託支援業務として信託組成に着手するにあたり、委託者となる依頼者が所有している不動産を特定していくための手段として活用されていくものと考える。

 今までも委託者が所有している、債務者や設定者になっている、関係している不動産については把握するようにしていたので、実務が軽くなるという意味の文章でしょうか。委託者が相続人である不動産があるかもしれない、という調べ方はあるのかもしれないなと思いました。

一方、この相続登記申請の義務化と民事信託との関連性を考えると、生前対策として判断能力がある元気なうちに自己の所有する不動産を信託し、その不動産の所有権を次世代の受託者に移転すれば相続登記の申請義務を免れることになる。

 委託者兼受益者に関しては、記事記載の通り、結果として相続登記の申請義務を免れることになるのだろうなと思いました。受託者が亡くなった場合、所有不動産記録証明制度の対象となるのか、分かりませんでした。

そして、民事信託を取り組めば相続登記申請義務から免れるとしても、信託不動産は登記をしなければ当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗できず(信託法14)、かつ受託者の分別管理義務の観点から信託の登記をする義務が定められている(信託法34)ところから、受託者の責任として信託登記の義務を免れることができないことはいうまでもない。

私は最近、登記申請が効力要件かと勘違いしていましたが、記事記載の通り対抗要件、受託者の義務でした。

相続土地国庫制度を利用しないならば、所有者が判断能力のある元気なうちに土地について民事信託を取組むという選択肢も入るだろうが、信託をはじめ生前贈与や死因贈与等を相続人に対して行った場合、その処分を受けた相続人はその土地について相続土地国庫帰属制度が利用できなくなる点は注意したい。

死因贈与について。

第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日

https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120405206X00620210323&spkNum=3&single

非訟事件手続法(令和三年法律第二十四号による改正)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000051_20230427_503AC0000000024

(所在等不明共有者の持分の取得)

第八十七条 所在等不明共有者の持分の取得の裁判(民法第二百六十二条の二第一項(同条第五項において準用する場合を含む。次項第一号において同じ。)の規定による所在等不明共有者の持分の取得の裁判をいう。以下この条において同じ。)に係る事件は、当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第二号、第三号及び第五号の期間が経過した後でなければ、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることができない。この場合において、第二号、第三号及び第五号の期間は、いずれも三箇月を下ってはならない。

一 所在等不明共有者(民法第二百六十二条の二第一項に規定する所在等不明共有者をいう。以下この条において同じ。)の持分について所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあったこと。

二 裁判所が所在等不明共有者の持分の取得の裁判をすることについて異議があるときは、所在等不明共有者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

三 民法第二百六十二条の二第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)の異議の届出は、一定の期間内にすべきこと。

四 前二号の届出がないときは、所在等不明共有者の持分の取得の裁判がされること。

五 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをするときは一定の期間内にその申立てをすべきこと。

3 裁判所は、前項の規定による公告をしたときは、遅滞なく、登記簿上その氏名又は名称が判明している共有者に対し、同項各号(第二号を除く。)の規定により公告した事項を通知しなければならない。この通知は、通知を受ける者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りる。

4 裁判所は、第二項第三号の異議の届出が同号の期間を経過した後にされたときは、当該届出を却下しなければならない。

5 裁判所は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするには、申立人に対して、一定の期間内に、所在等不明共有者のために、裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。

6 裁判所は、前項の規定による決定をした後所在等不明共有者の持分の取得の裁判をするまでの間に、事情の変更により同項の規定による決定で定めた額を不当と認めるに至ったときは、同項の規定により供託すべき金銭の額を変更しなければならない。

7 前二項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

8 裁判所は、申立人が第五項の規定による決定に従わないときは、その申立人の申立てを却下しなければならない。

9 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、確定しなければその効力を生じない。

10 所在等不明共有者の持分の取得の裁判は、所在等不明共有者に告知することを要しない。

11 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを受けた裁判所が第二項の規定による公告をした場合において、その申立てがあった所在等不明共有者の持分について申立人以外の共有者が同項第五号の期間が経過した後に所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てをしたときは、裁判所は、当該申立人以外の共有者による所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てを却下しなければならない。

 供託という制度が、決済手段として色々な場面で使えないかなと思います。使いやすさもありますが、キャッシュカードで振込みをする感覚で、相手がお金を受け取らない・受取れない場合などが日常生活でもちょこちょことあるので、軽い制度にならないかなと感じます。

弁護士平井信二・中祖康智「民法・不動産登記法改正が「財産管理」の実務に与える影響」

民法(令和三年法律第二十四号による改正)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089_20230427_503AC0000000024

(共有物の使用)

第二百四十九条

3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

建物の区分所有等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=337AC0000000069

(区分所有者の権利義務等)

第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

民法(共有物の管理)第二百五十二条

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

民法(共有物の変更)

第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

建物の区分所有等に関する法律(共用部分の変更)

第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

民法(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

民法(準共有)

第二百六十四条 この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

民法(所有者不明土地管理人の権限)第二百六十四条の三

2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

三菱UFJ信託銀行リテール受託業務部 上級相続コンサルタント MUFG相続研究所主任研究員 弁護士 鈴木義弘「令和3年民法・不動産登記法等改正の信託銀行業務への影響について」

民法附 則 (令和三年四月二八日法律第二四号)

(遺産の分割に関する経過措置)

第三条 新民法第九百四条の三及び第九百八条第二項から第五項までの規定は、施行日前に相続が開始した遺産の分割についても、適用する。この場合において、新民法第九百四条の三第一号中「相続開始の時から十年を経過する前」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時まで」と、同条第二号中「十年の期間」とあるのは「十年の期間(相続開始の時から始まる十年の期間の満了後に民法等の一部を改正する法律の施行の時から始まる五年の期間が満了する場合にあっては、同法の施行の時から始まる五年の期間)」と、新民法第九百八条第二項ただし書、第三項ただし書、第四項ただし書及び第五項ただし書中「相続開始の時から十年」とあるのは「相続開始の時から十年を経過する時又は民法等の一部を改正する法律の施行の時から五年を経過する時のいずれか遅い時」とする。

具体的相続分・・・相続開始後に相続人間で特別受益や寄与分を考慮した相続分。

遺産整理業務・・・信託銀行等は、遺言信託業務のほか、相続が発生して手続きにお悩みの相続人や遺族の方からの依頼により遺産相続手続きを代行する業務も行っており、これを「遺産整理業務」といいます。

 とかく煩雑で面倒な遺産の整理を、信託銀行等は迅速・確実に処理するために必要な知識と豊かな経験をもっていますので、ご多忙な方や財産管理に不慣れな方、相続財産が複雑な構成となっていることでお悩みの方は、遺産整理業務の利用をご検討されてはいかがでしょう。遺産整理業務の主な内容は、次のとおりです。

①相続人全員から遺産分割手続等の代行に関する委任を受けます。

主な委任事項は、相続遺贈財産の調査および相続財産目録の作成、納税資金計画立案および納付の代行(注)、相続債務の履行計画の立案および履行手続き、遺産分割協議書による遺産分割手続の実行、相続財産運用計画の立案等です。

(注)相続税申告書の作成、相続税の申告手続などの税務代理に関する事項は、別途相続人から税理士に委任することになります。

②受任者は、遺産分割手続について、次の事項を行うことができます。

不動産の相続手続き等、預貯金・信託・有価証券の名義変更、解約、換金、受領等の一切の処分、貸金庫の開扉、内容物の収受、貸金庫契約の解除ならびに保護預り契約の解約、保管物の収受等、その他遺産分割に関する一切の手続きなど。

信託協会

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/045/data04_01-4.pdf

共有物変更許可決定(民法第二百五十二条の二)にて、預金の払戻しが可能か。・・・可能だと考えますが、払戻し後の処理については、金融機関による供託が現実的かなと思います。

 民法906条の2の適用は、適用した結果が良い方向にいくのか、分かりませんでした。限定的に払戻しされた現金について準共有とする考え方は、払戻しが可能かについての答えになっているのかについて、分かりませんでした。代償財産にて調整する考え方は、現実的だと思いますが、預金の払戻しが可能になる根拠となるのか、分かりませんでした。


[1] Vol.16,10月2021年日本加除出版p13~