渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」第1章

渋谷陽一郎「裁判例・懲戒事例に学ぶ民事信託支援業務の執務指針」、2023年1月、民事法研究会第1章

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・刊行に寄せて

東北大学大学院法学研究科 吉永一行教授

市民と法掲載の「執務指針案」を4つに分類。

  • 民事信託支援業務の提供自体に関わる義務

委任契約と請負契約との区分。区分に伴って異なる結果となる、事務と完成物の品質水準・注意水準。

  • 民事信託支援業務の準備・環境整備としての付随的義務。

職員による事務処理など。

  • 説明義務

義務違反により、独自に損害賠償義務(令和3年9月17日東京地方裁判所判決平成31年(ワ)第11035号損害賠償請求事件など。)の根拠となる。

  • 民事信託支援業務にあたる法律専門職が追う社会的使命として位置づけられるべき行為規範

司法書士法、施行規則、行為規範、会則との関係。

・刊行に寄せてー司法書士制度と民事信託支援業務ー

日本司法書士会連合会名誉会長 斎木賢二司法書士

司法書士は―中略―民事信託を開発し―中略―信託組成-。民事信託とは、専門家ではない、一般の市民が、その担い手(受託者)となって行う「本人信託」である。

→民事信託を開発したのが司法書士なのか、本書にも記載がありますが、信託組成とは何なのか、本人信託とは本人訴訟との類似性を強調するために使っているのか、分かりませんでした。

はしがき

自由かつ緻密な論争の存在こそが民事信託支援業務の規律化とさらなる展開のための希望である。

→私も同感です。著者はどうなのでしょうか。

(4)規則31条業務としての信託監督人

 原則として成年後見人は誰でもなれる(市民後見人。家庭裁判所の選任を要するが。)

→本人の親族でない人が、家庭裁判所の成年後見人選任要件を満たすには、実質的には行政の許認可ほどの要件があり、誰でもなれる、とはいえないのではないかと思います。

司法書士が信託監督人として規則31条業務を行う方向性は、平成18年の信託法改正直後から主張されてきた。

→文献、資料などがあれば教えていただきたいと思います。平成18年前後に、私は聴いたり読んだりしたことがありません。

民事信託分野の弊害である「われこそ専門家」症候群や、民事信託を踏み台にしてなり上がってやろうという過剰な自意識を抑えて情報の共有を行いー中略ー

→司法書士各々が事業者である以上、仕方がない面もあると思います。法令に違反しないように気を付けるのは当然として、です。それは著者も御存じです。ただ、批評すると組織から排除するのは、止めて欲しいと考えます。

3 民事信託支援業務の執務指針

そこで、民事信託支援業務の執務指針を策定する場合、単に既存の登記代理、本人訴訟支援、簡裁訴訟支援、債務整理などの他業務類型を想定した会則や指針を流用し、それらに上書きして、形だけの抽象的な指針としてしまうことは避けたい。

→意欲的な都道府県会が策定するのではないでしょうか。沖縄県会に関しては、昨年、本人確認に関する指針について、変更を要望しましたが却下だったので無理だと思います。結果として、先に策定した都道府県会の指針が公表されて、他の都道府県、日本司法書士会連合会に広がっていく流れではないかと予想します。

 ただし、指針を策定することで司法書士の業務がやりやすくなるのか、依頼者・司法書士共に護られることになるのかは、分かりません。策定が目的になるならば、各司法書士が司法書士法の解釈から自身で最低限の指針を作成して、委任契約書に記載した方が良いのかもしれません。

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