登記ができない信託契約書という記事について
以下、私が加工した記事です。
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「登記ができない信託契約書」
登記が難しい信託契約書がある?!あります。
不動産の信託で、せっかく信託契約書を作っても、登記できなかったら困りますよね。今日のポイントを踏まえておくと、司法書士以外の人が信託契約を作るとき役立つと思います。
そうじゃないと、
「この信託、どうやって登記すんの??」
ということになりかねません。
そうゆう信託契約に時々遭遇することがあります。
意識すべきは、不動産登記法97条ですね。1号〜11号まであり、民事信託で特に重要なのは以下。
(信託の登記の登記事項)
第九十七条 信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 委託者、受託者及び受益者の氏名又は名称及び住所
(中略)
八 信託の目的
九 信託財産の管理方法
十 信託の終了の事由
十一 その他の信託の条項
ちなみに第五十九条は、登記の目的や、申請の受付の年月日及び受付番号、登記原因及びその日付、などですから、あまり気にしなくていいです。
良くあるのは、管理方法の定めが分散して書かれていること。97条の9号は「信託財産の管理方法」これを登記しなければなりません。維持保全するとか、売却していいとか、担保に入れていいとか。売却を目的とする信託なのに、売却できる旨を登記しておかないと、大変です。信託して、その後、買い主も見つかり、信託財産を売買する所有権移転登記を申請しても法務局から電話がかかってきて「これ移転登記できるんですか?」ということになりかねません。
つまり、売買がパー。(誰が責任をとるんだ?)ですから、「信託財産の管理方法」の登記は重要です。
ところがです。
信託登記のことを意識しないで作られた信託契約書は、管理方法が、あちこちに分散して書かれていることがあります。
どれが管理方法に関する条項なのか、1条ずつ、じっくりと読み解かなければならなくなります。
司法書士が作った信託契約書なら、自分で登記するから、それはそれでいいでしょう。自分の責任を自分でとるのですから。
でも、信託契約書を作って、信託登記を別の司法書士に頼む場合は、ちょっと大変。人間ですから、ヒューマンエラーがあります。
もちろん司法書士も注意深く登記事項を拾うんでしょうけど、人間ですから。(苦笑)万一、漏れがあると、後で困ってしまいます。
気づいて、後で更正の登記をするにも、委託者が認知症だったりして・・・
内容によっては、委託者の承諾書が必要な場合もありますので。登記って、登記された内容が正しかったかどうかは、チェックする仕組はありませんから(あくまで人間による、確認)注意しなければいけないんですよね。
そのためには、「間違われない信託契約書」「登記しやすい信託契約書」を作ることが重要です。
となると、
八 信託の目的
九 信託財産の管理方法
十 信託の終了の事由
少なくとも、この三つの項目は、それぞれまとめて書いておくといいですね。
こんな契約書は登記が大変
信託財産の管理方法(っぽいこと)があちこちに分散されて書いてある契約書。「これも管理方法なの?」と、信託登記をする司法書士が、一個ずつ判断しなければなりません。信託の目的もしかり。
目的みたいなことがあっちの条項にも、こっちの条項にも書いてあると登記するとき、拾い出さなければいけません。
終了事由もそうですね。一つの条項でまとめて書いておくべきですね。
条件をつけて、「この場合は終了しない」なんて項目が、別の条項に書いてあると、ちょっと大変ですね。
司法書士的に問題なのは11号
不動産登記法97条の十一 その他の信託の条項は何を登記したらいいのか?
しかもこれについて解説した書籍がない!もう、経験を積み重ねるしかないですね。これについては、話すと長くなりますから、また別の機会にしたいと思います。
おすすめ書籍はこちら。
信託登記の実務
信託登記実務研究会 (著) 日本加除出版
信託登記するときはよく読んでいます。
信託登記の申請書の作り方については、ビデオセミナーを作っていますよ。
12,000円
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抹消1件分くらいの金額です。
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というようなことが書いてありました。
「登記ができない信託契約書」と「登記が難しい信託契約書」は、違うのかなと考えます。
「そうゆう信託契約に時々遭遇することがあります。」
時々とは、10件ぐらいでしょうか。
「信託して、その後、買い主も見つかり、信託財産を売買する所有権移転登記を申請しても法務局から電話がかかってきて「これ移転登記できるんですか?」ということになりかねません。」
登記について気付くとしたら、(受益権)売買契約を締結する段階だと思います。
全部事項証明書を取得して信託登記がされている。宅地建物取引士と買主は、手付金支払前か、売買契約前に司法書士に確認することになります。買主が融資を受けるとしたら、金融機関が司法書士にチェックを依頼することになります。
「信託財産の管理方法(っぽいこと)があちこちに分散されて書いてある契約書。「これも管理方法なの?」と、信託登記をする司法書士が、一個ずつ判断しなければなりません。信託の目的もしかり。目的みたいなことがあっちの条項にも、こっちの条項にも書いてあると登記するとき、拾い出さなければいけません。」
ここについては、作成した方にメールで確認を取ることで足ります。商業登記でも、新株予約権の内容の中から、何を登記するのか、しないのか事前に確認を行うことになります。
・信託財産の管理方法については、条項の内容が任意規定である場合に、これと異なる管理・処分の方法の定めが信託行為に存在する場合に、それが登記事項になる[1]、というのが最初の考え方になると思います。ここから出発して注意書きとして法定されている条項も登記するのか、考えていくことになります。
「司法書士的に問題なのは11号 不動産登記法97条の十一 その他の信託の条項は何を登記したらいいのか?しかもこれについて解説した書籍がない!もう、経験を積み重ねるしかないですね。これについては、話すと長くなりますから、また別の機会にしたいと思います。」
その他の信託の条項についても、信託財産の管理方法と考え方は同じです。
渋谷陽一郎『信託目録の理論と実務』平成26年 民事法研究会その他の論文を探せばあります。そこから、不動産登記法97条1項1号から10号までを除いた部分がその他の信託の条項、というのが考える出発点になると思われます。
「12,000円」
経済を回すには良いのかなと思います。開業当初、司法書士会費を1回滞納した私は、本を買って論文を書くことします。本は残るし論文は実務年数と関係ないので、開業当初の時間があるときから取り組んでおけば良かったと思います。
12,000円。収入が安定してきて、初めて登記研究の定期購読を申し込むことが出来た時を思い出しました。ありがとうございます。
[1] 七戸克彦監修『条解不動産登記法』P604 2013年 弘文堂