1、善管注意義務の整理
信託が設定された目的(委託者の意図)を達成するために信託事務を行うこと。
受託者が信託事務を行う際に、注意する、気を付ける客観的な水準[1]。
(例)
(1)委託者自身が管理していたアパートの信託で、不動産の知識がない受託者が、信託事務として、当初は管理を第3者へ委託する。
(2)非公開株式の信託で指図権の定めがない場合、後継者である受託者は、株主総会において議決権を行使する際、会社経営者としての注意(責任)をもって行使する。
(3)金銭の信託について、株式投資の経験が豊富な委託者に代わり受託者が信託事務を行う際、株式投資を止めること、又は損失の上限を決めて上限に達したら次受益者に通知し、株式投資を止めること。
2、義務違反
(1)基準時
受託者の行為時[2]
(2)義務違反の効果
損失てん補等(信託法40条、92条、105条、)
損失てん補等の内容
ア 信託財産の現状を回復する(100万円が50万円になったら、50万円足す)
イ 土地を売ってしまって買い戻すことが出来ない、などの場合は、土地の価格相当のお金を信託財産に入れる
【条項例】
(受託者の善管注意義務)
第○条 受託者は、本信託の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって信託事務を処理する。
[1] 道垣内弘人『信託法』2017 有斐閣P168
[2] 村松秀樹ほか『概説 新信託法』きんざいP90