日本司法書士会連合会
第2部4.変更登記・組織再編編
4-1 期間計算の基礎知識
(1)概説
法定の期間の定めに違反すると
◆ 決議取消しの原因
◆ 手続の無効原因
◆ 会社法や一般法人法に期間の計算方法の規定はない
◆ 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う(民法138条)。
その他、発信主義、到達主義、擬制到達についての確認も必要
(2)会社法の期間の定め方
会社法の期間の定め方については、いろいろな表現がある
1〇日前まで、〇週間前まで、〇月前までのように「~前まで」とするもの
国税徴収法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000147
(公売公告)
第九十五条 税務署長は、差押財産等を公売に付するときは、公売の日の少なくとも十日前までに、次に掲げる事項を公告しなければならない。ただし、公売に付する財産(以下「公売財産」という。)が不相応の保存費を要し、又はその価額を著しく減少するおそれがあると認めるときは、この期間を短縮することができる。―以下略―
20日以内、0週間以内、0月以内のように「~以内」とするもの
民法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
附 則 (令和四年一二月一六日法律第一〇二号) 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
3〇箇月を下ることができない(会社法449条2項等)
4効力発生日から6箇月間(会社法182条の6第2項等)
5定時株主総会の日の〇週間前の日から〇年間(会社法442条1項・2項)
6株主総会の日の2週間前の日(会社法782条2項)
7受領した日から〇週間を経過した日(会社計算規則124条1項1号イ等)
8株券喪失登録日の翌日から起算して1年を経過したとき(会社法225条1項)
9株券喪失登録日の翌日から起算して1年を経過した日(会社法228条1項)
10定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで(会社法440条3項)
※「経過した日」とは、特定の日を指し、「経過したとき」は、「時」ではなく「とき」とされていることから、「経過した場合」という意味であり、「経過した日以後」を意味する
(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」199頁、商事法務、2007年)。
(3)現時点から将来に向けての規定例
現時点から将来に向けては、次のようなものがある
1基準日を定める場合には、基準日から3箇月以内(会社法124条2項)
2議決権の10分の1以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合(会社法304条)
3株主総会の日から3箇月間(会社法310条6項、311条3項)
4選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法336条1項)
5定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社にあっては、2週間)前の日から5年間(会社法442条1項1号)
6吸収合併契約等備置開始日から吸収合併等がその効力発生日後6箇月を経過する日まで(会社法782条1項)
7効力発生日から60日以内(会社法786条1項)
8株主総会等の決議の日から3箇月以内(会社法831条1項)
(4)現時点から遡るものの規定例
現時点から遡るものとしては、次のようなものがある
1 当該基準日の2週間前まで(会社法124条3項)
2 当該行為の効力が生ずる日の1箇月前まで(会社法219条1項)
3 株主総会の日の2週間前まで(会社法299条1項)
4 総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6箇月前から(会社法303条2項)
5 株主総会の日の8週間前まで(会社法303条2項)
6 株主総会の日の3日前まで(会社法313条2項)
7 株主総会の日の2週間前の日(会社法782条2項)
8 効力発生日の20日前まで(会社法785条3項)
9 効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで(会社法116条5項等)
(5)直ちに、速やかに、遅滞なく(期限) 会社法では、遅滞なくが多い。
◆ 「発起人は、第1項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに~」(会社法59条5項。その他会社法条文内に28か所の規定)
「遅滞なく」に比べて、一切の遅滞が許されず、また、「速やかに」に比し急迫の程度が高い(法令用語研究会「有斐閣 法律用語辞典[第5版]」763頁、有斐閣、2020年)。
◆ 「株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかに~」(会社法325条の6 。その他会社法条文内に1か所の規定)
「直ちに」、「遅滞なく」に比し中程度の近接性を求めるもので、「できるだけ」、
「できる限り」などを付けて又はそのままで訓示的な意味で用いられる(法令用語研究会「有斐閣 法律用語辞典[第5版]」664頁、有斐閣、2020年)。
◆ 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない(会社法440条1項。その他会社法条文内に98か所の規定)。
→時間的即時性を強く表す場合に用いられる語であるが、「直ちに」とは異なり、正当な又は合理的な理由による遅滞は許されるものと解されている。(法令用語研究会「有斐閣 法律用語辞典[第5版]」781頁、有斐閣、2020年)。
→「速やかに」は、訓示的な意味で用いるので、遅滞があった場合にも直ちに違法ということにはならないが、「直ちに」と「遅滞なく」は、遅滞があった場合には、違法の問題にまで発展することが多い、といわれる(石毛正純「法制執務詳解≪新版Ⅲ≫」629頁、ぎょうせい、2020年)。
期間の起算点について
◆ 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、初日不算入(民法140条)
2月1日(午前零時を除く)から1箇月間の場合、2月2日から起算する。
◆ ただし、その期間が午前零時から始まるときは、初日参入(民法140条但書)
2月1日(午前零時から)から1箇月間の場合、2月1日から起算する。
◆ 原則として、「通知」や「催告」の起算点は、到達した日(民法97条)
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
◆ 「〇週間前までに~通知を発し~」とするものは、発した日(会社法299条1項等)
→株主総会招集通知、各種会議体の招集通知等(発信主義・到達主義・到達擬制)
・期間の満了点について
◆ 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間はその末日の終了をもって満了する(民法141条)。
→2月1日(午前零時を除く)から1箇月間の場合、3月1日の終了をもって期間が満了する。
◆ 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する(民法142条)。
→2月21日(午前零時を除く)から1箇月間の場合、3月22日の終了をもって期間が満了する。
◆1月2日・3日は「その他の休日」に該当する
東京法務局商業登記研究会編「商業法人登記速報集」330頁、日本法令、1996年
◆12月29日~31日は「その他の休日」に該当しない(最判昭43年1月30日民集22巻1号81頁、最判昭43年9月26日民集22巻9号2013頁、最判昭43年4月26日民集22巻4号1055頁)
◆ 民法142条の「休日」というのはそれほど厳格な意味でなく、すべての一般的な休日を指すものとして解してよい。たとえば土曜日、12月29日~31日、1月2日、3日などもこれに入りうると考えてよいという見解(我妻榮ほか「我妻・有泉コンメンタール民法ー総則・物件・債権ー〔第8版〕」287頁、日本評論社、2022年)
◆ 土曜日は「その他の休日」に該当しない(森・濱田松本法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・8 会社の計算(第2 版)」203頁、中央経済社、2015年)
◆ 土曜日も「休日」に該当するものとして取り扱うのが実務対応としては安全(内田修平「実務問答会社法第21回 組織再編と期間計算」73頁、旬刊商事法務2166号)
◆ 土曜日を休日扱いとする法令手形法第87条及び小切手法第75条の規定による休日を定める政令(昭和58年政令第147号)(12月31日も休日扱い)、民事訴訟法95条3項(1月2日・3日、12月29~31日も休日扱い)
◆ 現時点から遡る期間の計算について、民法142条を類推適用することは適当でない。
1大阪株式懇談会「会社法 実務問答集Ⅱ」(商事法務、2018年)41頁
2内田修平「実務問答会社法第21回 組織再編と期間計算」73頁、旬刊商事法務2166号(逆算による期間計算において、形式的な民法140条以下の適用を否定)
◆ 「効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日まで」とする規定効力発生日の前日が休日である場合に、民法142条が適用されるとする見解と、適用されないとする見解とがある。
→適用されると考えた方が、実務上安全ではないか。
前記文献1は適用される、2は適用されないとする見解
◆ 「効力発生日の20日前までに通知しなければならない」とする規定
通知を発した日と効力発生日を算入せず、その間に20日が存在する必要がある。(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」243頁、商事法務、2021年)
◆ 暦による計算について、週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は暦にしたがって計算する(民法143条1項)。
本年2月1日(午前零時)から1箇月といった場合は、2月28日の終了で満了する。
◆ 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応答する日の前日に満了する(民法143条2項)本年2月1日(午前零時を除く)から1箇月といった場合は、2月2日が起算日となり、最後の月である3月の起算日に応答する3月2日の前日(3月1日)の終了で満了する。
◆ 月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する(民法143条2項但書)。
12月31日起算日の2箇月後の応当日である2月31日は無いため、2月末日となる。
(7)期間計算の仕方の具体例―「日」をもって―
「日」をもって定められている場合の具体例
◆ 請求があった日から5日以内に~(会社法366条3項)
→本年2月1日に請求があったとすると、2月2日から起算して5日間となる、2月6日の終了が満了の時となるため、2月6日までとなる。
◆ 効力発生日から30日以内に~(会社法786条2項)
→本年2月1日が効力発生日だとすると、初日を参入するので(効力発生日の午前零時に効力が生じるため)、2月1日から30日目の日である3月2日の終了が満了の時となるため、3月2日までとなる。
◆ 「20日前の日から~」(会社法785条5項)「20日前までに~」(会社法116条3項)
→「~前の日」は当該日、「~〇日前までに~」は、当該日の前となり、当該日の前日となる。効力発生日が本年2月28日の場合、20日「前の日」は、2月8日、20日「前までに」は、2月7日となる。
(8)期間計算の仕方の具体例~「週」をもって~
「週」をもって定められている場合の具体例
◆ 株主総会の2週間前までに~(会社法299条1項)
通知の発信日と会日を算入せず、その間に2週間以上あるという意味(大判昭和10 年7月15日民集14巻1401頁)。本年2月17日が株主総会の日であれば、2月2日午後12時までには発送を完了させる必要がある。
◆ 定時株主総会の日の1週間前の日から5年間(会社法442条1項)、株主総会の日の2週間前の日(会社法782条2項等)
招集通知の発送日と計算書類等の備置開始日との間に1日の差があるところ(旧商法では平仄がとられていた)、実務的には招集通知の発送日に計算書類等の備置きを開始することが安全という見解もある(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」199頁、商事法務、2007年)。
(8)期間計算の仕方の具体例~「週」をもって~
「週」をもって定められている場合の具体例
◆ 計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日までに、●●に対し●●の内容を通知しなければならない(会社計算規則124条1項等)。
計算書類の受領日が2月1日の場合、4週間目は、3月1日午後12時が満了の時となりますが、経過した日までとあるので、その翌日である3月2日中に通知(到達主義)すればよい。
◆ その請求があった日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には~(会社法366条3項等)
2月1日に請求があった場合、2週間目は、2月15日午後12時が満了の時となる。このような期間の場合も、民法142条の適用はあると考えられる(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」199頁、商事法務、2007年)。
(9)期間計算の仕方の具体例~「月」「年」をもって~
「月」をもって定められている場合の具体例
◆ ただし、●●の期間は、1箇月を下ることができない(会社法449条2項等)。
1箇月を下ることができないとは、1箇月以上の期間があればよいが、1箇月未満では足りないという意味である(江頭憲治郎「株式会社法 第8版」(商事法務、 2021年)730頁、森・濱田松本法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・8会社の計算(第2版)」202頁、中央経済社、2015年)。
「年」をもって定められている場合の具体例
◆ 株券喪失登録の翌日から起算して1年を経過した日に無効となる(会社法228条1項等)。
株券喪失登録日が2月1日の場合、翌日の2月2日から起算して、翌年の2月1日で満了することとなる。株券が無効となり、名義書換の効力が生じるのは、その翌日の2月2日となる。
(10)期間計算の仕方の具体例~その他~
「効力発生日後●箇月を経過するまでの間」としている場合の具体例
◆ 効力発生日後6箇月を経過する日までの間(会社法782条1項等)。
効力発生日の翌日の午前零時が起算点となる。効力発生日が本年2月1日の場合、8月1日の終了に満了する(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」201頁、商事法務、2007年)。
「●年継続して●●しない場合」としている場合の具体例
◆ 5年以上継続して到達しない場合(会社法196条1項等)。
最初の不到達から5年継続して到達しなかった場合を意味する。したがって、招集通知の発送日から2~3日後から5年間の期間を計算することとなる(みずほ信託銀行証券代行部「企業再編手続ガイドブック」201頁、商事法務、2007年)。
(1)登記期間の計算の方法
登記期間の計算は民法の期間に関する規定を適用する
◆ 登記期間の計算は、民法の原則に従う(大正8・12・13法曹会委員会第1科決議(大7)第175号、森本滋=山本克己「会社法コンメンタール20ー雑則(2)」242頁(松井秀征)商事法務、2016年)。
◆ 2週間の末日が日曜日にあたるときは日曜日は登記所の休日であるから、その翌日をもって期間の満了するものと解するのを相当とする(大決大10・9・29民録27・1556)。
◆ 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない(会社法911条1項)。
1設立時取締役の調査終了日
2発起人が定めた日(午前零時から起算する場合かどうか)
→1月1日と定めた場合、1月13日の24時まで。
◆ 前項の規定にかかわらず、第57条第1項の募集をする場合には、前項の登記は、次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならない(会社法911条2項)。
1 創立総会の終結の日
2 第84条の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
3 第97条の創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
4 第100条第1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日から2週間を経過した日
5 第101条第1項の種類創立総会の決議をしたときは、当該決議の日
◆ 持分会社の設立の登記をなすべき期間については、会社法に規定がない(会社法912 条、913条、914条)
定款の作成後、「相当の期間内」になすべきものと解される(森本滋=山本克己「会社法コンメンタール20ー雑則(2)」290頁(今泉邦子)商事法務、2016年)
◆ 会社において第911条第3項各号又は前3条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2 週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない(会社法915条1項)。
1 効力発生日(定款変更の効力発生日を別に定めた場合を含む)の場合は、初日参入(午前零時から起算するため)
2 募集株式発行の払込期日の場合は、払込期日の前日までに出資の履行をした株主の場合は初日参入となり、払込期日の当日に出資の履行をした株主の場合は初日不算入となると考えられる。
◆ 会社法915条1項の規定にかかわらず、第199条第1項第4号の期間を定めた場合における株式の発行による変更の登記は、当該期間の末日現在により、当該末日から2週間以内にすれば足りる(会社法915条2項)。
払込期間の満了点は、当該期間の末日の午後12時となるから、「当該末日から」とあるのは、当該末日の翌日から起算して2週間以内と考えられる。
(1)基準日について
◆ 「期日」は、一般には、一定の日(特定の日)を意味するもので、ある法律行為の効力の発生や消滅等を、一定の日にかからしめる場合等に使用されます(橋本副孝ほか「新版会社法 実務スケジュール」1頁、新日本法規出版、2016年)。
基準日も一定の日であるから、休日の場合に翌日となることはない。
◆ 基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から3箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない(会社法124条2項)。
3月31日を基準日とした剰余金の配当において、6月30日が日曜日となる場合で実際の支払開始が7月1日となる場合、効力発生日は6月30日とし、支払開始日を7月1 日と決議してよいかとの設問に対し、3箇月以内に「会社から交付を受ける」意味に解する場合と「配当決議がなされる」意味に解する場合とで別れるとしつつ、6 月30日までに配当決議を実施していればよいという見解(大阪株式懇談会「会社法実務問答集Ⅰ(上)」147頁(前田雅弘)商事法務、2017年)。
(2)基準日の設定方法
◆ 株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない(会社法124条3項)。
遡って計算するケースとなる(参考:会社法299条1項)。定款に基準日を定めれば基準日公告を行わなくてもよいことから、基準日を定款で定めれば、1日で株式分割を行うことも可能とする見解もあるが(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」187頁、商事法務、2006年)、東京地判平成26年4月17日(アムスク株主総会決議取消請求事件)では、基準日公告に代わる定款の定めについて「当該定款の定めは、基準日の2週間前までに存在することが必要であると解するのが相当である」と判示し、東京高判平成27年3月12日(アムスク株主総会決議取消請求事件控訴審判決)においても同様に解されている。
(1)取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人の任期
◆ 取締役・会計参与の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない(会社法332条1項、334条1項)。
◆ 監査等委員会設置会社の取締役(監査等委員であるものを除く。)についての第1項の規定の適用については、同項中「2年」とあるのは、「1年」とする(会社法332条3 項)。
◆ 監査等委員である取締役の任期については、第1項ただし書の規定は、適用しない(会社法332条4項)。
※ 任期満了の規定(会社法332条7項・334条・336条4項・338条3項・402条8項等)補欠・増員規定については説明省略
(1)取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人の任期
◆ 指名委員会等設置会社の取締役についての会社法322条1項の規定の適用については、同項中「2年」とあるのは、「1年」とする(会社法332条6項)。
◆ 監査役/会計監査人の任期は、選任後4/1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする(会社法336条、338条)。
◆ 執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までとする。ただし、定款によって、その任期を短縮することを妨げない(会社法402条7項)。
任期の起算点である選任時とは、事実行為としての株主総会の選任決議を意味し、選任決議の効力発生時期を遅らせても、それに左右されない(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」286頁、商事法務、2006年)。
(2)任期満了後の後任者の予選が認められる期間
任期満了後の後任者の予選が認められる期間
◆ 一般的には、前任者の任期満了までの期間が比較的短く、予選につき合理的理由があり、かつ、その期間中に新株発行等により株主の権利に著しい変化がないような場合には有効であるとされ、例えば、就任日の1箇月程度前に予選決議をすることは差し支えないとされている(昭和41年1月20日民事甲271号回答、登記研究221号46頁)。
照会事例は2箇月前の予選決議であった。また、上記登記研究221号48頁において、「取締役の予選がされてから、現在の取締役が退任するまでの間に新株発行が予定されている等株主にいちじるしい変動を生ずることが予測される場合とか、期間が6箇月以上にもわたる等相当長期の場合には、取締役を予選することが許されないのではなかろうか」と解説されている。
(2)任期満了後の後任者の予選が認められる期間
任期満了後の後任者の予選が認められる期間
◆ A株式会社を吸収合併存続会社とし、B株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うため、両者は吸収合併契約を締結し、平成19年6月20日に開催されたそれぞれの定時株主総会において当該吸収合併契約の承認を受けた。A社は当該定時株主総会において「X氏(B社の現任取締役のうちの1名)を本件合併の効力発生日(平成20年4月1日)付けでA社の取締役に選任する」旨の選任決議をすることができるか。これが可能な場合、A社における取締役Xの任期は、どの時点から起算することになるか。
このような決議には、通常合理性があるものと解されるため選任可能であり、選任決議時から起算する(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」58頁、金融財政事情研究会、2009年)。なお、このように決議の内容(選任)に条件又は期限を付した場合、その条件又は期限に合理性がある限り有効であると考えられるところ、合理性の判断は、実質的な判断を要し、役員の選任に係る登記申請等の場面において当該選任決議の有効性について争いの生ずる余地があることに留意すべきであると解説されている。
変則事業年度の場合
3月決算の会社が臨時総会で、9月末決算とし当期を18箇月決算とした場合
◆ 2007年1月10日の臨時総会において、上記定款変更決議を行った場合、2006年6月の定時総会で選任された、会計監査人の任期はいつ満了するか。
事業年度の変更の効力が生じた日(定款で特段の経過措置がない限り、2007年1月10日)に会計監査人の任期が終了するため、これを前提として、2007年1月10日の臨時株主総会で新たな会計監査人の選任(再任を含む)が必要となる(相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」56頁、金融財政事情研究会、2009年)。
考え方のポイント
1.会計監査人を選任(重任)した後に事業年度を変更した場合には、選任時からその事業年度の終了までを任せていないことになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときには、当該事業年度の変更の効力が発生した時点で退任する(桜庭倫「東京法務局における商業・法人登記の相談事例の紹介等(上)」11頁、登記研究770号)。
2.みなし再任の規定は定時株主総会となっている(会社法338条2項)。
12月決算の会社が定時総会で、3月末決算とし当期を15箇月決算とした場合
◆ 2020年3月の定時総会において、上記定款変更決議を行った場合、2019年3月の定時総会で選任された、監査等委員である取締役の任期はいつ満了するか。
2020年3月総会の終結の時に任期が満了するため、これを前提として、2020年3月の定時総会において役員等の選任決議の上程が必要となる(渡辺邦広「実務問答会社法第39回 事業年度の末日の変更に伴う変則事業年度と役員等の任期」46頁、旬刊商事法務2221号)。
考え方のポイント
- 変則事業年度を15箇月とする定款附則の定めは有効(会社計算規則59条2項)。
会社計算規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000010013
(各事業年度に係る計算書類)
第五十九条 1項略
2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。3項略
2.設問の場合、2020年1月1日に開始する事業年度は、2020年12月31日ではなく、2021年3月31日に終了することとなる。
3.選任後2年内に終了する事業年度のうち最終のものは、2019年1月1日から同年12月31日までの事業年度となる。
12月決算の会社が定時総会で、3月末決算で当期を15箇月決算とした場合
◆ 前記と同様の条件の場合で、2020年3月総会で新たに選任される会計監査人又は同総会で再任されたものとみなされた会計監査人の任期はいつ満了するか。
当該定款附則において同総会で選任又は再任されたとみなされる会計監査人の任期を本変則事業年度に関する定時総会の終結の時までとする旨の規定が定められれば当該定めは有効と考えられる(渡辺邦広「実務問答会社法第39回 事業年度の末日の変更に伴う変則事業年度と役員等の任期」47頁、旬刊商事法務2221号)。
考え方のポイント
1.変則事業年度を認めないとする帰結は相当でないと考えられる。
2.初年度である変則事業年度についてのみ、株主総会の意思の下に会社計算規則が許容する範囲で1年を超える任期を認めたとしても会社法の趣旨に反しない。
3.株主総会の意思を明確にする観点から、定款附則に、当該株主総会で選任又は再任されたものとみなされる会計監査人の任期を、変則事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする旨の規定を設けておくことが望ましい。
12月決算の会社が定時総会で、3月末決算とし当期を15箇月決算とした場合
◆ 前記と同様の条件の場合で、 2020年3月の定時総会で選任される、監査等委員でない取締役の任期はいつ満了するか。
当該定款附則において同総会で選任される監査等委員でない取締役の任期を本変則事業年度に関する定時総会の終結の時までとする旨の規定が定められれば当該定めは会計監査人の場合と同様に有効と考えられる(渡辺邦広「実務問答会社法第39回事業年度の末日の変更に伴う変則事業年度と役員等の任期」49頁、旬刊商事法務2221号)。
考え方のポイント
1.会計監査人の場合と同様の考え方となる。
2.監査等委員でない取締役の任期が1年とされている趣旨に照らし、株主総会の意思の下に会社計算規則が許容する範囲で1年を超える任期を認めたとしても会社法の趣旨に反しない。
公告・通知
(1)概説(官報掲載までの事務フロー)
事前準備 掲載日程の確認・公告原稿の作成
内容チェック 掲載申込み・校正原稿のチェック
掲載 公告掲載
事前準備 掲載日程の確認・公告原稿の作成
◆ 掲載日を決める(前述のとおり、正確・安全に期間計算を行う)
◆ 掲載予定日から逆算して申込期限を確認
◆ ゲラ拝(校正原稿の確認)は必ず行う(ゲラ拝あり・なしで日程が若干異なる場合もあり)
◆ 会社が原稿を作成する場合は、申込前に司法書士側でチェック
内容チェック 掲載申込み・校正原稿のチェック
◆ 申込手続の実施
◆ 申込みは取次所にて行う(全国どこでも可。取次所を通して申し込む)
→インターネット上から申込みは可能。その後のやり取りは、各取次所。
https://www.gov-book.or.jp/koukoku/
◆ 料金は会社に直接支払ってもらう方がよい
◆ ゲラチェック、修正があれば連絡
◆ 訂正公告については、後述及び松井信憲「商業登記ハンドブック〔第4版〕」246頁、商事法務、2021 年を参照。
◆ 掲載 公告掲載
◆ 掲載紙は掲載日に発送(早ければ翌日到着)
◆ 内容はインターネット版官報で当日確認可(無料)
◆ 登記に使用する場合は、司法書士が掲載紙を預かる
◆ 申込みはFAX、メールいずれか確認
公告の内容、枠or行、登記の添付書面、掲載紙
決算公告、枠、×、号外
合併公告など(決算公告別掲載)※1 行、○、本紙
合併公告など(BS要旨同時掲載)※1 枠、○、号外
株券提供公告※2、行、○、本紙
定款変更等通知公告※3、行、△、本紙
解散公告、行、×、号外(行の場合は、通常本紙、通常より長い。)
※1 合併等組織再編、資本金の額の減少など(いわゆる債権者保護手続)
※2 株式譲渡制限規定の設定など
※3 株券を発行する旨の定めを廃止する場合など(登記の添付書面になるものもある)
法務省HP
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html
9 インターネット版官報は、官報に代わるべき添付書面情報として利用することができます。
枠組公告と行公告
枠組公告 ⇒ 掲載料金 1枠あたり 33,787円(税抜)
申込みから掲載までの所要日数:2週間前後
行公告 ⇒ 掲載料金 1行あたり 3,263円(税抜)
申込みから掲載までの所要日数:1週間程度
本紙と号外
◆ 「行公告=本紙掲載」,「枠組公告=号外掲載」が原則
◆ 解散公告は例外的に「行公告、号外掲載」⇒ 掲載までに時間がかかる(要注意)
Cf.外国会社の日本における代表者の退任公告は本紙掲載
(1)概説(日刊新聞紙掲載までの事務フロー)
事前準備 掲載日程の確認・公告原稿の作成
◆ 掲載日を決めることやスケジュールの確認については、官報の場合と同様
◆ 掲載紙ごとに代理店が存在するため、前もって掲載紙の代理店を検索し、入稿~掲載までのスケジュールを確認する
◆ 日刊新聞紙は平日に休刊日が存在するものもあるため、掲載日について代理店に事前確認する。
◆ 例:日刊工業新聞の場合は、掲載日の8営業日前までに申し込み必要、遅くとも申し込みから2営業日内にゲラ・見積書のご連絡、掲載日の4営業日前(当日17:30)までに最終校了が必要となる。当該掲載紙は郵送される。
内容チェック、掲載申込み・校正原稿のチェック
◆ 申込手続の実施(申込方法・必要書類・支払方法・掲載紙の入手方法の事前確認)
◆ ゲラチェック、修正があれば連絡
掲載 公告掲載
◆ 掲載紙の当日分購入が必要な場合は忘れず購入する(代理店によって取扱い不明)
◆ 登記に使用する場合は、司法書士が掲載紙を預かる又は購入しておく
(1)概説(電子公告調査依頼の事務フロー)
事前準備 公告日程の確認・公告原稿の作成
◆ 公告調査開始日を決めることやスケジュールの確認については、官報/日刊新聞紙の場合と同様
◆ 公告調査会社は5社存在する(2022年12月現在)ため、必要書類、事務フロー、サービスメニュー、費用などから調査会社を検討する
◆ 例:電子公告調査株式会社の場合は、公告調査開始の4営業日前までに申し込みが必要となり、申し込み後、調査会社にて登記情報を取得され、公告内容について精査される。また、公告期間や根拠条文についてアドバイスいただけるとのこと。掲載日の翌日零時から1時間に1回の掲載チェックを実施される
(初日不算入・民法140条)。
内容チェック 調査申込み・調査の事前チェック
◆申込手続の実施(申込方法・必要書類・支払方法・報告書の様式の事前確認) ◆事前チェック、問題があれば連絡
掲載 電子公告掲載/調査開始
◆調査報告について、電磁的記録又は書面で交付を受けるか事前にお客様に確認しておく
◆登記に使用する場合は、司法書士が調査報告を預かる
(1)概説(訂正公告)
◆ 株式の譲渡制限のための株券提供公告において、商号を「クイン商事株式会社」とすべきところ、「タイン商事株式会社」と誤って公告した後、後日訂正公告をなし、訂正公告後1箇月を経過して登記申請があった場合には、これを受理して差し支えない(昭和44年8月15日民四733回答、登記研究262号71頁)。
◆ 株式の譲渡制限に関する規定の設定による変更登記申請書に添付された「公告をしたことを証する書面」により、株券提供期間が1箇月に満たないことが明らかである場合には、改めて1箇月を下らない期間公告をし直さなければ、当該申請は受理できない(昭和41年12月23日民四772号回答、登記研究231号65頁)。
◆ 官報公告に印刷誤りがあった場合において、誤った公告がされてから合理的な期間内(関係者が直ちに訂正の申し入れを行い、官報に正誤表が掲載されるのに必要な期間内)に当該公告が訂正されているときは、原稿誤りの場合とは異なり、当初から正しい公告がされたものとして取り扱って差し支えない(平成14年7月30日民商1831号回答、登記研究658号202頁)。
(2)決算公告
2月27日(月) 定時株主総会/原稿作成 ※1
2月28日(火) 公告申込 ※2
3月16日(木) 決算公告掲載日
1、株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後「遅滞なく」、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない(会社法440条1 項)。
2、電子公告制度が広く利用される以前は、上場会社において、定時株主総会の翌日に決算公告が掲載されるように、※2の公告申込が※1の定時株主総会の前に行われるスケジュールであった。
3、公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。
4、決算公告については、電子公告調査を要しないが(会社法941条)、公告は必要である。
5、決算公告掲載後、連続して各種公告(減資、組織再編等)を入稿する場合にも、各媒体の代理店にスケジュールの事前確認が必要である。
1、 会社法116条1項各号の行為(発行する全部の株式の内容として譲渡制限を設ける場合、ある種類の株式の内容として譲渡制限又は全部取得条項を設ける場合、ある種類株式の内容として会社法322条2項の別段の定めがある場合に株式の併合等により種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合)をしようとする株式会社は、当該行為が効力を生ずる日の20日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければならない。前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる(会社法116条3項・4項)。
2 会社は、組織再編の効力発生日の20日前までに(新設型組織再編においては、株主総会の決議の日から2週間以内に通知が必要であり、買取請求期間は通知・公告から20日間である。なお、株主総会の前に通知も可能。)、株式買取請求の対象となる株式の株主に対し、当該組織再編を行う旨並びに相手方会社・設立会社の商号及び住所等を通知し又は公告しなければならない(会社法785条3項・4項・797条3項・4項・806条3項・4 項・816の6条3項・4項)。
3 決議日と公告掲載の順序は問われないため、決議前に通知・公告を実施することも可能である(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」544頁・663頁、商事法務、2006年、相澤哲=細川充「新会社法の解説(15)組織再編行為〔下〕」39頁、旬刊商事法務1753 号)。
4 吸収型再編については、効力発生日までに株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法750条・752 条・759条・761条・769条・774条の11)。
5 新設型再編については、登記日=効力発生日となるため、事前に効力発生日の特定ができないことから、登記の要件として、株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法922条・924条・925 条)。
6 新設型組織再編手続において、株式買取請求権を行使しようとする株主が株主総会の承認決議における議決権を有する場合、行使された株式買取請求権が適法なものであるか否かは、当該承認決議(承認決議における反対の議決権行使)を待たなければ確定しないことから、新設型組織再編における株式買取請求権の行使期間は、行使期間満了前に承認決議が終了するように(同日でも可)設定する必要がある。したがって、株式買取請求権に係る株主宛の通知・公告も承認決議日の20日前よりも前に行うことができない(「質疑応答7857新設型組織再編行為に係る契約・計画の承認決議の翌日から20日を経過しないで申請された当該新設型組織再編行為にかかる登記の可否」219頁、登記研究715号)。
7 組織再編手続では、消滅株式会社において吸収合併等又は新設合併等により交付を受ける財産に持分等が含まれる場合(会社法783条2項・804条2項)、吸収分割において分割会社が簡易分割の要件を満たす場合(会社法784条2項・805条)、略式合併等における特別支配会社の場合(会社法785条3項かっこ書・797条3項かっこ書)について、取得条項付株式・新株予約権においては、取得手続における一定事項の通知・公告をした場合(会社法170条3項・275条4項)について、株主等への通知・公告が不要となる場合がある。
8 株主に対して通知しなければならないとする規定には、公告をもって通知に代えることができるとしている規定が多くみられるが(会社法116条4項等)、自己株式取得の際の取得事項通知(会社法158条2項)、事業譲渡の際の通知(会社法469条4項)、吸収合併等の際の株主通知(会社法785条4項・797条4項)、株式交付の際の株主通知(会社法816条の6第4項)については、公告によって通知に代えることができる場合が限定されている。
9 振替株式の発行会社(上場会社)では、株主等への通知(会社法116条3項・158条1項・168条2項・169条3項・170条3項・172条2項・179条の4第1項・179条の6第4項・181条1項・195条2項・201条3項・206条の2第1項・240条2項・244条の2第1項・469条3項・776条2項・783条5項・785条3項・797条3項・804条4項・806条3項・816条の6第3 項の通知)について、公告によることが強制されており(社債、株式等の振替に関する法律161条2項)、買取口座の公告も必要となる場合がある(社債、株式等の振替に関する法律155条2項)。
10 具体的な通知の内容を示したうえで、株式買取請求権を行使しうる株主全員から期間短縮や権利放棄の同意を得ることにより、(ⅰ)株式買取請求権の行使期間を短縮し、短縮後の期間に対応した時期に通知・公告を行うことも許されると解すべきとする見解(土手敏行「商業登記実務Q&A(4)」99頁、月刊登記情報554号)、(ⅱ)株式買取請求権を放棄して株主等への通知・公告が不要となると解されるとする見解がある(辰巳郁「実務問答会社法第8回 吸収合併における株主に対する通知・公告の期間短縮・省略と簡易合併・略式合併」43頁、旬刊商事法務2127号)。
11 逆算による期間計算の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇箇月」を置く必要がある(内田修平「実務問答会社法第21回 組織再編と期間計算」76頁、旬刊商事法務2166 号)。
12 電子公告により午前零時から公告を開始する場合には、公告日を「丸1日」として計算に入れることができるため(相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」222頁、金融財政事情研究会、2009年)、公告日から効力発生日の前日の間(両日を含む)で、「丸〇日」、「丸〇箇月」が確保されていれば足りる(内田修平「実務問答会社法第21回組織再編と期間計算」74頁、旬刊商事法務2166号)。
13 機関決定は、組織変更及び吸収型組織再編については効力発生日の前日まで、新設型組織再編及び会社法116条の場合は、登記の前までに実施が必要となる。
14 株式譲渡制限規定の設定に係る株主総会の決議後その効力発生前に、募集株式の募集行為を行い増資の効力が生じた場合には、募集株式の発行による変更登記は受理されるが、株式譲渡制限規定の設定の登記は受理されない(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」246頁、商事法務、2021年)。
15 株式譲渡制限規定の設定に係る株主総会決議後、募集株式の募集決議を行い、株式譲渡制限規定の設定の効力の発生後に増資の効力が生じた場合には、株式譲渡制限に係る事項が通知されていない限り(会社法施行規則41条)、募集株式の発行による変更の登記は受理されない(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」246頁、商事法務、2021年)。
※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。
※2 逆算による期間計算の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇箇月」を置く必要がある。なお、通知は到達主義のため、この時期に通知が到達していることを想定して通知を発することとなる。
※3 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、20日前の日(上記例の場合、2月8日)の調査開始でも問題ない。
(4)株券提出の通知・公告
株券提出に関する通知・公告のスケジュール
◆ 会社法219条(株券の提出に関する公告等)株券発行会社は、次の各号に掲げる行為をする場合には、当該行為の効力が生ずる日(第4号の2に掲げる行為をする場合にあっては、第179条の2第1項第5号に規定する取得日。以下この条において「株券提出日」という。)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の1箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない場合は、この限りでない。
1 株式譲渡制限の定めを設ける定款の変更 全部の株式(種類株式発行会社にあっては、当該事項についての定めを設ける種類の株式)
2 株式の併合 全部の株式(種類株式発行会社にあっては、併合する種類の株式)
3 全部取得条項付種類株式の取得 当該全部取得条項付種類株式
4 取得条項付株式の取得 当該取得条項付株式(想定外事由の場合は効力発生日との関係で要注意)
4の2 対象会社による特別支配株主の株式等売渡請求の承認 売渡株式
5 組織変更 全部の株式
6 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 全部の株式
7 株式交換 全部の株式
8 株式移転 全部の株式
(4)株券提出の通知・公告
※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。
※2 通知は到達主義のため、余裕をもって計画したほうが安全である。
※3 逆算による期間設定の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇箇月」を置く必要がある。
※4 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、1箇月前の日(上記例の場合、2月28 日)の調査開始でも問題ない。
(5)株券廃止の通知・公告
◆ 会社法218条(株券を発行する旨の定款の定めの廃止)株券発行会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、当該定款の変更の効力が生ずる日の2週間前までに、次に掲げる事項を公告し、かつ、株主及び登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。
1 その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
2 定款の変更がその効力を生ずる日
3 前号の日において当該株式会社の株券は無効となる旨
株券発行会社の株式に係る株券は、前項第2号の日に無効となる。
第1項の規定にかかわらず、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとする場合には、同項第2号の日の2 週間前までに、株主及び登録株式質権者に対し、同項第1号及び第2号に掲げる事項を通知すれば足りる。
前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
第1項に規定する場合には、株式の質権者(登録株式質権者を除く。)は、同項第2号の日の前日までに、株券発行会社に対し、第148条各号に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
※なお、必要となる通知や公告を期限前に実施していれば、株主総会決議により直ちに株券廃止の効力を生じさせることも可能と解されている(松井信憲「商業登記ハンドブック[第4版]」262頁、商事法務、2021年)。
※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。
※2 株主総会の招集通知と会社法218条1項の通知を兼ねて実施する例が多いと思われる。
※3 逆算による期間設定の場合は、基本的に「丸〇日」や「丸〇週間」を置く必要がある。
※4 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、2週間前の日(上記例の場合、2月14 日)の調査開始でも問題ない。
債権者異議申述催告・公告のスケジュール
1 資本金・準備金の額の減少手続(会社法449条・627条)、組織再編手続(会社法779 条・799条・781条・789条・810条・816条の8)、持分会社における各種手続(会社法635条・670条)では、それぞれの規定において、債権者が異議を述べることができる場合は、「一定の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、債権者が異議を述べることができる期間は、〇箇月を下ることができない。」としている。
2 定款所定の公告方法を官報以外の公告方法(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告)と定めている場合には、官報に公告することに加え、定款所定の公告方法により公告をした場合(いわゆる「二重公告」を行った場合)には、知れている債権者に対する個別催告を省略することができる。
債権者異議申述催告・公告のスケジュール
3 会社分割を行う場合の分割会社の不法行為債権者に対する個別催告(会社法789条3項、 810条3項)、合名・合資会社が消滅持分会社となる合併・会社分割の手続(会社法793 条2項)、合名・合資会社が株式会社となる組織変更手続き(会社法781条2項)、合同会社の持分払戻額が当該合同会社の純資産額を超える場合(会社法635条3項)では、二重公告をすることで、知れたる債権者に対する個別催告を省略することができない。
4 個別催告は到達主義となるため、期間計算を行う場合には、到達すべき時期を想定しつつスケジュール策定を行う必要がある。
5 二重公告のそれぞれの掲載日又は官報公告掲載日の翌日と電子公告調査開始日とが異なることで、それぞれの異議申述期間が異なることとなっても、2つの公告のすべての期間を異議申述期間としてとらえていれば、債権者にとって不利益はなく問題ないと考えられる(土井万二「債権者保護手続における二重公告について」10頁、月刊登記情報591号)。
6 定款所定の公告方法を官報と定めている会社が二重公告を実施する場合には、公告方法を官報以外に変更する必要があるが、この公告方法変更登記は、債権者保護手続の公告がされるまでに申請すべきとされている(堀恩惠「合併制度の整備に係る商法等の改正に伴う商業・法人登記事務の取扱い〔上〕」26頁、旬刊商事法務1477号、亀井愛子『実務相談室 合併における「知れたる債権者」に対する各別の催告の省略の可否』37 頁、旬刊商事法務1481号)。
7 新設型組織再編については、登記日=効力発生日となるため、事前に効力発生日の特定ができないことから、登記の要件として、株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法922条・924 条・925条)。
8 吸収型組織再編については、効力発生日までに株主総会等の決議、株式等買取請求手続、債権者保護手続がいずれも終了していることが必要となっている(会社法750条・752 条・759条・761条・769条・774条の11)。
9 公告方法を官報としていて決算公告を実施していない会社が、債権者保護手続において決算公告と貸借対照表の要旨を同時公告した場合(損益計算書の公告が必要となる大会社の場合を除く)、現状の登記実務では、催告書に記載する「計算書類に関する事項」は、「年月日付官報(号外第〇号)〇頁」としてよいと判断されているが、公告の内容と催告の内容との間に差異があることは想定されていないため、先になされているものの内容に、後でされるものが合わせなければならないとする有力な説(弥永真生「コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則[第3版]」765頁、商事法務、2021年)もあるため、安全に実施するのであれば、催告書にも貸借対照表の要旨を記載するか、決算公告を債権者保護手続公告より先に実施したうえで、催告書に記載する「計算書類に関する事項」を、「年月日付官報(号外第〇号)〇頁」と記載する方法を検討する必要がある。
10 組織再編の場合には、債権者保護手続にかかる公告と同時に株主等への公告も併せて実施するかどうかについてもあらかじめ確認しておく(電子公告は調査会社と検討)。
11 資本金・資本準備金の額の減少の効力発生日を変更する場合(会社法449条7項)は、株式会社の内部規律に従い、業務執行の決定機関により定めることが可能(株主総会決議も必要とされていない)であり、この場合には、特に変更の公告等を行う必要はない
(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」543頁、商事法務、2006年)。
12 組織変更及び吸収型組織再編手続において、効力発生日を変更するためには、変更前の効力発生日の前日までに、変更後の効力発生日を公告しなければならない(消滅会社等のみの規定だが、存続会社等でも必要とする見解もあり)(会社法780条・781条・790 条)。なお、変更後の効力発生日が変更前の効力発生日の前の日となる場合には、変更後の効力発生日の前日までに公告をする必要がある(森・濱田松本法律事務所編「新・会社法実務問題シリーズ・9組織再編(第3版)」347頁、中央経済社、2022年)。また、株式交付の変更後の効力発生日は、株式交付計画において定めた当初の効力発生日から 3箇月以内の日でなければならず(会社法816条の9第2項)、株式交付の効力発生日や申込みの期日を変更した場合には、株式交付親会社は、直ちに、申込者に対して通知しなければならない(会社法774条の4第5項)。
13 組織再編手続において、債権者保護手続である公告や個別催告を実施した後、効力発生日までの間に、対価、資本金・準備金に関する事項、承継対象債務の変更があった場合に、一定の事項の場合には、それぞれ債権者保護手続をやり直すことが必要となる場合があるとする見解(内田修平「実務問答会社法第27回組織再編の条件等の変更と債権者異議手続」58頁、旬刊商事法務2185号)。
※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。
※2 催告は到達主義のため、郵送の場合は余裕をもって計画したほうが安全である。
※3 掲載日の翌日(3月1日)起算の1箇月の応当日(4月1日)の前日に期間が満了する。
※4 電子公告の場合は、午前0時から調査開始となるため、3月1日の調査開始、3月31日の調査終了として問題ない。
※1 公告申込から公告掲載日までのスケジュールについては、各媒体の代理店に確認が必要である。
※2 登記実務で認められる方法を採用した場合、公告掲載内容を確認してからの催告書送付となる。
※3 催告は到達主義のため、起算日については余裕をもって計画することが望ましい。
※4 催告が2月28日に到達したことを前提とした期間計算である。
(7)電子公告
◆ 会社法における時的な概念である「公告の日」(会社法170条1項2号等)とは、電子公告による公告をする場合にあっては、電子公告の公告期間中のいずれの日をも指すのではなく、電子公告を開始した日を指す(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」216頁、金融財政事情研究会、2009年)。
◆ 会社法940条1項では、会社がすべき公告に係る規定を4つの類型に区分した上、それぞれの類型についての電子公告の公告期間を規定している(詳細は前記文献参照)。
◆ 前記文献における「●日前までの日」、「●週間前までの日」、「異議申立期間の初日までの日」などとしている電子公告期間の初日は、当該期間の初日の午前零時から電子公告による公告を開始する場合にあっては、当該日を含むこととなる(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」216頁、金融財政事情研究会、2009年)。
◆ 株券又は新株予約権証券の提出期間は各行為の効力発生日までであるが(会社法219条 1項・293条1項)、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する場合とともに、登記申請手続との関係上、電子公告による公告は効力発生日の前日まで継続すれば足りると解されている(相澤哲「Q&A会社法の実務論点20講」221頁、金融財政事情研究会、2009 年)。
◆ 電子公告採用会社が公告方法を電子公告以外に変更した場合、計算書類についての電子公告は継続する必要があるが、変更後の公告方法で当該計算書類の公告を行うことにより、それ以後、当該計算書類についての電子公告を行わないことも許容されるとする見解、②吸収合併消滅会社の電子公告について、吸収合併の効力発生後は、電子公告を継続する必要はないとする見解がある(渡辺邦広「実務問答会社法第57回公告方法の変更または吸収合併と計算書類の電子公告」58頁、旬刊商事法務2277号)。
(1)スケジュール案の作成
組織再編スケジュール案の作成における主な検討事項
1 機関決定(簡易又は略式手続の採用可否)
2 株主等通知(株式又は新株予約権の買取請求手続が想定されるか否か)
3 株券提供公告等(現実に株券が発行されているか否か)
4 債権者保護手続(二重公告を実施するか否か)
5 事前備置書類の備置
6 登記申請(吸収型再編と新設型再編)
7 事後備置書類の備置
8 関連するその他法令(許認可、労働法、金商法、独禁法など)及び取引所規則等の要件
9 登記・登録を要する資産等の名義変更の手続及び締結済契約等の見直し
※1 上記2~4の各種手続を行う順序については定めがないため、同時並行も含め自由に設定可能である。
※2 実務上は、各種契約・計画の確定時期を可能な限り遅く設定することが望まれるため、まず希望する効力発生日を確定させ、そこから債権者保護手続の必要期間を逆算して、事前備置書類の備置開始日を調整して機関決定のスケジュールも含め各種日程を定めている。
(2)効力発生日
◆ 効力発生日は、確定日を定める必要があり、一定期間のうちで「存続会社の代表取締役が定めた日」と定めることはできない(相澤哲ほか「論点解説 新・会社法」703頁、商事法務、2006年)。
◆ 当事会社が組織再編の効力発生日だけでなく、効力発生の時間を定めることは、組織再編契約の組織法的な側面に反せず、当事会社間の合意として有効であるという見解(黒田裕「実務問答会社法第42回Ⅰ吸収分割の効力発生時間の指定」87頁、旬刊商事法務
2230号)。
◆ 効力発生日における効力発生時を、承継会社が分割対価を支払ったときと定めることはできないという見解(黒田裕「実務問答会社法第42回Ⅰ吸収分割の効力発生時間の指定」89頁、旬刊商事法務2230号)。
(2)効力発生日
◆ 「吸収合併の効力発生日を●月●日とする。この日までに●●が終了していなければ、吸収合併の効力は生じないこととする」という定めは可能であるが、「吸収合併の効力発生日を3月3日とする。この時刻までに●●が終了していなければ、3月4日とする」という定めはできず、別途効力発生日の変更手続きを要するという見解(森・濱田松本
法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・9組織再編(第3版)」345頁、中央経済社、2022年)
◆ 複数の吸収型組織再編を並行して行う場合、効力発生日を同日としつつも組織再編相互間の先後関係を定めることもできるという見解(森・濱田松本法律事務所「新・会社法実務問題シリーズ・9組織再編(第3版)」345頁、中央経済社、2022年)。なお、株式交付については、効力発生日において譲渡人から給付を受けた株式交付子会社の株式の総数が下限の数以上であることをもって、効力が生じることとなり、他の吸収型再編の効力発生時期(効力発生日の午前零時)と異なる。
5-1 概説
◆ 印紙税法2条では、「別表第1の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。」としており、同法3条では、「別表第1の課税物件の欄に掲げる文書のうち、同法第5条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。」としている。
◆ 印紙税法別表第1には、課税物件表が定められており、1号から20号まで課税物件と定義、課税標準と税率が定められている。課税文書には、不動産の譲渡に関する契約書や請負に関する契約書、合併契約書などが規定されおり、紙でそれらの契約書を作成する場合には、所定の印紙税が課せられることとなり、文書の作成者は、印紙税を納める義務がある。
◆ 電子的に作成された文書(電磁的記録)であって、その文書に課税物件表に掲げられた課税事項が記載(電磁的に記録)されていたとしても、書面としての文書の作成がない限り、印紙税の課税の対象とはならない(佐藤明弘「令和3年7月改訂印紙税実用便覧」214頁、法令出版、2021 年)。
5-1 概説
◆ 印紙税法(印紙による納付等)第8条 課税文書の作成者は、次条から第12条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。
2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。
◆ 印紙税法施行令(印紙を消す方法)第5条 課税文書の作成者は、印紙税法第8条第2項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない(その他、印紙税法基本通達64条・65条も参照)。
◆ いずれも、印紙税法別表第1の課税文書の欄に掲げられていないため、課税対象とならない。ただし、文書の内容に課税文書に該当する文言(例えば第17号)が示されている場合は、課税対象となりえるため注意を要する。
◆ いずれも、印紙税法別表第1第17号の非課税文書である「営業に関しないもの」に該当するため、課税対象とならない(印紙税法基本通達別表第1第17号文書32、国税庁タックスアンサー「会社がその本業以外の行為に関連して作成する受取書」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/22.htm)。なお、金融機関が発行する上記領収証については、課税対象となる。
◆ 株券等は課税文書に該当する(印紙税法別表第1第4号)。
◆ 次に掲げる券面金額(券面金額の記載のない証券で株数又は口数の記載のあるものにあつては、1 株又は1口につき政令で定める金額に当該株数又は口数を乗じて計算した金額)の区分に応じ、1 通につき、次に掲げる税額とする(印紙税法別表第1第4号)。
500万円以下のもの 200円、500万円を超え1000万円以下のもの 1000円、1000万円を超え5000万円以下のもの 2000円、5000万円を超え1億円以下のもの 1万円、1億円を超えるもの 2万円
◆ 印紙税法別表第1第4号の課税標準及び税率の欄に規定する政令で定める金額は、当該株券に係る株式会社が発行する株式の払込金額(株式1株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいい、払込金額がない場合にあっては、当該株式会社の資本金の額及び資本準備金の額の合計額を発行済株式(当該発行する株式を含む。)の総数で除して得た額)(印紙税法施行令24条)。
◆ 印紙税法施行令第24条第1号に規定する「払込金額」とは、次に掲げる株券の区分(一部抜粋)に応じ、それぞれ次に掲げる金額が該当する(印紙税法基本通達第4号文書8)。
(1)・(2)・(4)記載省略
(3) 会社法第199条第1項《募集事項の決定》に規定する募集株式(株式を発行するものに限る。)に係る株券 同項第2号《募集事項の決定》に規定する募集株式の払込金額
◆ 印紙税法施行令第24条第1号に規定する「払込金額がない場合」に該当する株券は、例えば次のもの(一部抜粋)が該当する。(印紙税法基本通達第4号文書9)
(1)株式の併合をしたときに発行する株券、(2)株式の分割をしたときに発行する株券、(3)株式の無償割当てをしたときに発行する株券、(4)~(6)記載省略、 (7)株券の所持を希望していなかった株主の請求により発行する株券、(8)株券喪失登録がされた後に再発行する株券、(9)取得条項付新株予約権の取得と引換えに交付するために発行する株券、(10)持分会社が組織変更して株式会社になる際に発行する株券、(11)合併、吸収分割、新設分割、株式交換又は株式移転に際して発行する株券
◆ 印紙税の課される定款は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社及び相互会社の設立のときに作成される原本に限られる(印紙税法基本通達第6号文書1 )。
◆ 株式会社又は相互会社の定款のうち、公証人法第62条ノ3第3項(定款の認証手続)の規定により公証人の保存するもの以外のものは、非課税である(印紙税法別表第1第6号の非課税物件)。
◆ 公証人の認証を要しない合名会社、合資会社及び合同会社の定款を数通作成した場合についても、そのうちの原本1通のみが課税の対象になり、その他のものは課税されない(国税庁「課税される定款の範囲」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/24/01.htm)。
◆ 組織再編によって設立された株式会社・持分会社の定款に関する論点。
◆ 変更定款に関する課税関係は、印紙税法基本通達第6号文書2を参照。
◆ 合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書は課税文書に該当する(印紙税法別表第1 第5号)。事業譲渡契約書は、課税文書に該当する(印紙税法別表第1第1号)。
◆ 株式交換契約書、株式移転計画書、株式交付計画書、組織変更計画書は課税文書に該当しない(印紙税法別表第1第5号参照)。
◆ 吸収分割契約書に記載されている吸収分割承継会社が吸収分割会社から承継する財産のうちに、例えば不動産に関する事項が含まれている場合であっても、当該吸収分割契約書は第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書又は営業の譲渡に関する契約書)には該当しない(印紙税法基本通達第5号文書3 )。
◆ 印紙税法別表第1第5号文書の効力発生日の変更契約書は、第5号の課税文書に該当する(横田宏
「令和3年6月改訂 印紙税取扱いの手引」424頁、清文社、2021年)。