2022年12月10日
一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問
神﨑満治郎
Ⅰはじめに
1 司法書士を取り巻く現在の環境
- デジタル化の推進とメタバース及びアバター(9月23に東京大学にメタ
バース工学部誕生、沖縄からもオンラインで受講可能。)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/meta-school
- 原則転勤なし、メタバース事業の展開を目指すNTTグループ
地域共創推進に向けた「TENGUN Ogijimaプロジェクト」発足
~IOWNで実現されるフォトリアルな「男木島」メタバースによる、関係人口創出・拡大をめざした共同検討を開始~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/11/15/221115b.html
(3)日本の1人当たり名目GDPが、2027年韓国と逆転し、2028年に台湾と逆転する理由は。行政手続きのデジタル化の遅れ
(4)河野大臣の就任とオンライン申請の推進
(5)電子署名制度の活用は、司法書士の新しい未来を拓く(法務省の登記化
の歴史を顧みて)
(6)AIの活用と司法書士業務(AIの研究・活用は、司法書士の新しい未来を拓く)
(7)高齢化の進展と司法書士業務(高齢化社会においては、司法書士は最高の職業)
(8)人権デューデリジェンスと司法書士業務
(9)地球温暖化対策(ESG・TCFD情報の開示)
(10)その他(令和5年7月1日は、商業登記倶楽部創設30周年)
2 何故、今、法人登記か
法人登記の申請代理権は、司法書士に許容されているが、どのように考えるか。
3 法人登記の件数
法務省のホームページに登録されている令和3年の「登記統計」。
一般社団法人47.687件
一般財団法人16.484件
宗教法人10.851件
農業協同組合6.755件
水産業協同組合2.780件
中小企業等協同組合27.384件
その他の法人183.006件
合計294.947件
なお、不動産登記は12.563.060件、商業登記1.283.196件、法人登記全体の件数は、不動産登記や商業登記に比べ圧倒的に少ない。
法人登記を考える
1 民法33条、36条の意義
2 法人の設立根拠法
(1)商業登記の場合、会社は、会社法、個人商人(自然人たる商人)の場合は、商法。
(2)法人登記の場合、各種法人は、一般法人法等187の法律。
3 各種法人の登記手続法令
(1)会社と個人商人は、商業登記法。
(2)各種法人は15の法律と4つの政令。
(3)商業登記法は制定されているのに、法人登記法は制定されていない。
4 商業登記と法人登記の差異
商業登記は、商人、4種類の会社(根拠法は会社法。)と自然人たる商人(個人商人。根拠法は商法。)に関する登記であり、登記手続に関する法律として商業登記法が制定されている。法人登記は、会社以外の各種法人に関する登記であり、各種法人の種類は254種類、設立根拠法は187。登記手続について法人登記法は制定されていない。
5 主務官庁とモデル定款例の位置づけ
原則として、地方自治法245条の4第1項に基づく「技術的助言」又は245条の9に基づく法定受託事務を処理するための「よるべき基準」として、主務官庁等が示したもの。
地方自治法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067
第二条1項9号
9 この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。
一 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)
二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)
(技術的な助言及び勧告並びに資料の提出の要求)
第二百四十五条の四 各大臣(内閣府設置法第四条第三項若しくはデジタル庁設置法第四条第二項に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣又は国家行政組織法第五条第一項に規定する各省大臣をいう。以下本章、次章及び第十四章において同じ。)又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関は、その担任する事務に関し、普通地方公共団体に対し、普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をし、又は当該助言若しくは勧告をするため若しくは普通地方公共団体の事務の適正な処理に関する情報を提供するため必要な資料の提出を求めることができる。
2 各大臣は、その担任する事務に関し、都道府県知事その他の都道府県の執行機関に対し、前項の規定による市町村に対する助言若しくは勧告又は資料の提出の求めに関し、必要な指示をすることができる。
3 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、各大臣又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関に対し、その担任する事務の管理及び執行について技術的な助言若しくは勧告又は必要な情報の提供を求めることができる。
(処理基準)
第二百四十五条の九条1項 各大臣は、その所管する法律又はこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理について、都道府県が当該法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる。
・モデル定款に沿った定款で設立登記申請を行い、その後の定款変更で法人に合った変更を行う方が、許可官庁内部の決済手続き等の面でベター。
Ⅲ法人登記の学び方を考える
1 まず、各種法人の設立根拠法を把握し、理解する。
2 次に、254種類の各種法人を登記の手続法令に従って分類すると、次のようになる。そこで、各種法人の登記手続法令を把握する。
(1)法人設立の根拠法に規定されている法人(37)
一般社団法人、一般財団法人、宗教法人等37種類の法人
(2)組合等登記令に規定されている法人(87)
医療法人、社会福祉法人、学校法人、管理組合法人、農業協同組合、司法書士会、司法書士法人等87種類の法人
組合等登記令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029
(設立の登記)
第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
・代表権を有する者のみ
別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)
・資産の総額など
・医療法人の資産の総額の登記申請、役員変更の登記申請。社団型の場合の社員総会、理事会。理事長が任期中に死亡した場合の、理事が登記されていないので、登記からは分からない。社員総会で選任され、就任承諾し、理事会開催日において理事を辞任していないこと、解任されていないこと。誰が理事として理事会を開催し、医師免許を所持している理事長を選定したのかを証する情報。
登記申請における添付情報として、理事長の就任承諾書に加えて、理事の就任承諾書を求める法務局がある。
理事長重任の登記申請において、医師免許証の写しが要求される理由・・・年間何名か医師免許がなくなる人がいるので、確認。
医療法第四十六条の五、第四十六条の六、第四十六条の六の二など。
・任期について、
医療法第四十六条の五9 役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。
医療法附則 (平成一八年六月二一日法律第八四号)
(役員の任期に関する経過措置)
第十一条 この法律の施行の際現に医療法人の役員である者の任期は、新医療法第四十六条の二第三項の規定にかかわらず、この法律の施行の際におけるその者の役員としての残任期間と同一の期間とする。
組合等登記令(変更の登記の申請)
第十七条 第二条第二項各号に掲げる事項の変更の登記の申請書には、その事項の変更を証する書面を添付しなければならない。ただし、代表権を有する者の氏、名又は住所の変更の登記については、この限りでない。
・登記研究の質疑応答の位置付け
法務局民事局商事課長の決裁を取っている。先例と同じ位置付け。今も?
(3)独立行政法人等登記令に規定されている法人(127)
1 独立行政法人通則法2条1項に規定する独立行政法人(87種類の法人)
独立行政法人通則法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000103
(定義)
第二条 この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるもの(以下この条において「公共上の事務等」という。)を効果的かつ効率的に行わせるため、中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。
2国立大学法人及び大学共同利用機関法人(2種類の法人)
3独立行政法人等登記令別表の名称の欄に掲げる38種類の法人
独立行政法人等登記令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000028
別表(第一条、第二条、第六条関係)
(4) 弁講士会登記令に規定されている法人(2)
(5) 労働組合法施行令に登記手続が規定されている法人(1)
・定款の保管の確認。監督官庁はどこですか。定款がない場合、監督官庁に保管されているので、もらってくることを依頼。
Ⅳ法人登記の登記申請構造を考える
1 登記事項
(1) 法律に規定
一般法人法、弁護士法等
(2)政令に規定
組合等登記令、独立行政法人等登記令。労働組合法施行令
2 申請人
(1) 法律に規定
一般法人法、弁護士法等
(2)政令に規定
組合等登記令、独立行政法人等登記令。労働組合法施行令
3添付書類
(1) 法律に規定
(2)政令に規定
組合等登記令、独立行政法人等登記令。弁護士会登記令、労働組合法施行令
(3)添付書面としての「登記事項の変更を証する書面」(組登令17条1項)をどう解釈するか
各種法人の書面決議制度
1 コロナ禍と書面決議制度活用の推進
2 書面決議制度とバーチャルオンリー総会
・会社法298条1項一号 株主総会の日時及び場所との関係
・書面決議と書面による議決権行使の違い
会社法第三百十九条と第三百十一条
・書面による議決権行使は、株主20名くらいが限界?
・バーチャルオンリー総会
産業競争力強化法第六十六条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000098
金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社(以下この条において「上場会社」という。)は、株主総会(種類株主総会を含む。以下この項及び次項において同じ。)を場所の定めのない株主総会(種類株主総会にあっては、場所の定めのない種類株主総会。以下この項及び次項において同じ。)とすることが株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、経済産業省令・法務省令で定めるところにより、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合には、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨を定款で定めることができる。
3書面決議の要件
(1) 法律に規定の要否
会社法(取締役会の決議の省略)
第三百七十条 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
・取締役会開催前に定められた、決議の目的である事項のみ。
・学校法人
文部科学省 学校法人のガバナンス改革に関するQ&A(令和4年5月版)
1 目的
2 基本的な考え方について
3 学校法人における意思決定について
4 理事・理事会について
5 評議員・評議員会について
6 監事について
7 会計監査について
8 内部統制システムの整備について
9 その他
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/mext_00001.html
(2)定款に定めの要否
近時における法人登記関係改正の動き
1社会福祉連携推進法人制度の新設(令和4年4月1日施行)
令和4年3月1日民商第75号商事課長通知
監督官庁のない一般社団法人が、所轄庁の認定を受ける。
社会福祉法
(社会福祉連携推進法人の認定)
第百二十五条 次に掲げる業務(以下この章において「社会福祉連携推進業務」という。)を行おうとする一般社団法人は、第百二十七条各号に掲げる基準に適合する一般社団法人であることについての所轄庁の認定を受けることができる。
一 地域福祉の推進に係る取組を社員が共同して行うための支援
二 災害が発生した場合における社員(社会福祉事業を経営する者に限る。次号、第五号及び第六号において同じ。)が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保するための支援
三 社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有を図るための支援
四 資金の貸付けその他の社員(社会福祉法人に限る。)が社会福祉事業に係る業務を行うのに必要な資金を調達するための支援として厚生労働省令で定めるもの
五 社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修
六 社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給
2特許業務法人から弁理士法人へ(令和4年4月1日施行)
令和4年2月22日民商第68号商事課長通知
弁理士法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000049
附 則 (令和三年五月二一日法律第四二号)
7条11項 特例特許業務法人が施行日から起算して一年を経過する日までに前項の名称の変更をしないときは、当該特例特許業務法人は、その日が経過した時に解散したものとみなす。
3電子提供制度の創設及び従たる事務所の所在地における登記の廃止
令和4年8月3日民商第378号通達
会社法325条の2から325条の7,466条、911条3項12号の2、商業登記規則1条2項、別表第五章合区など。社債、株式等の振替に関する法律(電子提供措置に関する会社法の特例)第百五十九条の二。
4労働者協同組合制度の新設(令和4年10月1日施行)
令和4年9月21日民商第493号商事課長通知
5弁護士・外国法事務弁護士共同法人(令和4年11月1日施行)
令和4年10月13日民商第460号商事課長通知
近時における商業登記関係改正の動き
1令和4年8月3日民商第378号通達
(1)電子提供制度の創設
(2)支店所在地における登記の廃止
令和4年8月25日民商第411号通達
会社法附則(令和四年八月三日法務省令第三四号)
(施行期日)
1 この省令は、会社法の一部を改正する法律附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日(令和四年九月一日)から施行する。
(商業登記規則等の一部改正に伴う経過措置)
2 登記官は、この省令の施行の際現にされている会社の支店の所在地における登記の登記記録を閉鎖しなければならない。
3 登記官は、前項の規定により登記記録を閉鎖するときは、登記記録にこの省令の規定により閉鎖した旨を記録しなければならない。
4 前二項の規定は、会社を除くその他の法人であってこの省令の施行の際現に登記されているものの支店又は従たる事務所の所在地における登記について準用する。
5 第二項及び第三項の規定は、この省令の施行の際現に登記されている投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第二条第二項に規定する投資事業有限責任組合又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第二条に規定する有限責任事業組合の従たる事務所の所在地における登記について準用する。
その他
・公益重視会社形態の創設
公益法人インフォメーション
新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議
https://www.koeki-info.go.jp/regulation/koueki_meeting.html
・労働者協同組合
令和4年9月21日法務省民商第439号通知
労働者協同組合法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=502AC1000000078
厚生労働省 労働者協同組合の概要資料