『月刊登記情報』2024年2月号(747号)

『月刊登記情報』2024年2月号(747号)

一般社団法人金融財政事情研究会

 法窓一言 

相続登記の申請義務化と土地家屋調査士

土地家屋調査士 鈴木泰介

 相続登記の申請義務化によって所有者不明土地が減少すれば、所有者の探索がスムーズになり、土地家屋調査士業務の効率化が進むだろう、と予想。

祭祀承継者指定の審判と民法第897条による承継登記

司法書士 本橋寛樹

 祭祀承継者指定の審判事件数(家事事件手続法190条、274条)は、年間80件から110件前後ある。

司法統計 家事事件

https://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/list?filter%5Btype%5D=1&filter%5ByYear%5D=&filter%5ByCategory%5D=3&filter%5BmYear%5D=&filter%5BmMonth%5D=&filter%5BmCategory%5D=

 昭和35年5月19日民事甲第1130号民事局長回答「墳墓地の所有権移転の登記について」登記研究152号P34

 登記上、地目が墓地として登記されている土地は、使用者と所有者が異なる場合がある。登記官には、その土地の所有縁が相続人に移転したのか、相続人ではない祭祀承継者に移転したのか明確に審査できない。だから、登記原因は、相続、民法897条による承継、いずれの登記申請でも受理する。

 審判申立書(家事事件手続規則1条、47条、37条、家事事件手続法66条、7条、49条)に添付する戸籍について、家庭裁判所の運用によって、発行後3か月以内であることを求められることがある。相続人多数の場合、ギリギリになる場合や再取得が必要になる可能性がある。

Spokeo

https://www.spokeo.com/people-search?g=name_best9people9search9engine9sites_A3313266936

 相手方の死亡等による事件受継について(家事事件手続法44条、家事事件手続規則29条)。

 審判書送達が困難な場合について、調査会社を利用(民事訴訟法107条1項、家事事件手続法74条)。

利用が進む相続土地国庫帰属制度

法務省民事局民事第二課長 大谷 太

 相談件数が多い地域は大都市部の法務局・・・人口比でみるとどうなのか、少し気になりました。

 承認申請は、2023(令和5)年12月まで、全国で月140件から160件。

 承認申請後の取り下げについて、隣地所有者への通知(相続により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則13条)をきっかけとした土地の引き受けとみられる件がある、との記載があり、申請前に、可能であれば隣地所有者への確認が必要だと感じました。

 標準処理期間8か月は、個人的な感覚では速いと思いました。

定款認証手続の負担軽減のための新たな取組について

法務省民事局総務課公証係

 定款の作成を支援するデジタルツールは、スタートアップ向けに作成された。試験運用として、平日の夜間(午後8時まで)までウェブ会議による面前確認も行っているとのことは、初めて知りました。

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(通達)」の解説⑵

法務省民事局民事第二課補佐官 三枝稔宗、法務省民事局民事第二課補佐官 河瀬貴之、法務省訟務局訟務企画課訟務調査室法務専門官、(前民事局民事第二課法務専門官) 手塚久美子、法務省民事局民事第二課不動産登記第四係長 清水玖美

 所有者不明土地管理人が申請することも想定されている。今後、オンラインによる電子データの提出を認める方向で検討される可能性もある。

商業登記規則逐条解説 第14回

法務省民事局商事課長 土手敏行

商業登記規則(登記記録の復活)

第四十五条 閉鎖した登記記録に更に登記をする必要がある場合には、その登記記録を復活しなければならない。この場合には、登記記録中登記記録区にその旨及びその年月日を記録して登記官の識別番号を記録し、第四十三条の規定による記録を抹消する記号を記録しなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339M50000010023

 閉鎖した登記記録に、更に登記をする必要がある場合についての例。その他、商業登記規則81条など。

1項、2項略

3 第一項の規定により登記記録を閉鎖した後、会社が本店の所在地を管轄する登記所に清算を結了していない旨の申出をしたときは、登記官は、当該登記記録を復活しなければならない。

4 第四十五条後段の規定は、前項の規定により登記記録を復活する場合について準用する。

 会社法472条(休眠会社のみなし解散)による、会社法928条4項が準用する915条1項の規定による登記申請には、登記記録の復活のための申出は必要ない。

 登記簿が、保存期間満了により廃棄されている場合、復活した登記記録には新たに記録を起こす。

 平成30年12月13日付法務省民商第143号民事局商事課長通知「閉鎖登記簿が廃棄されている株式会社の清算人選任に係る登記記録の復活について」

 知り得る事項のみで当該会社の登記記録を復活させる取り扱いを認める。分からない登記事項は、不詳と記録。

(記載の文字)

第48条 申請書その他の登記に関する書面に記載する文字は、字画を明確にしなければならない。

2 前項の書面につき文字の訂正、加入又は削除をしたときは、その旨及びその字数を欄外に記載し、又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、その範囲を明らかにし、かつ、当該字数を記載した部分又は当該記号を付した部分に押印しなければならない。この場合において、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならない。

 令和3・1・29民商第10号「民事局長通達 会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」登記情報718号P55

 法令により申請情報に訂正が必要な場合、訂正印が必要なときを除いて、訂正印の審査をしない。

 押印が不要な申請情報を訂正する場合、差し替えの方法で足りる。

 平成24年3月30日法務省民商第886号法務省民事局長通達「商業登記オンライン申請等事務取扱規程の制定について」登記研究777号P111

 第9条(申請の補正)

 (添付書類の還付)

第四十九条 登記の申請人は、申請書に添付した書類の還付を請求することができる。

2 書類の還付を請求するには、登記の申請書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本をも添付しなければならない。ただし、登記の申請が却下された場合において、書類の還付を請求するには、還付請求書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本を添付し、これを登記所に提出しなければならない。

3 登記官は、書類を還付したときは、その謄本、登記の申請書又は還付請求書に原本還付の旨を記載して押印しなければならない。

4 代理人によって第一項の請求をするには、申請書にその権限を証する書面を添付しなければならない。

5 第九条の四第四項から第六項までの規定は、第一項の規定による添付書類の還付の請求に準用する。

 添付書類の還付請求は、登記申請と同時に行う必要がある。書類の追完時に書類の還付を請求することは認められている。・・・趣旨からすると、追加する書類のみ、と思われます。

 P56、登記申請の添付書類として議事録を提出する場合、その謄本は登記に必要な抄本でも良い。原本は全部。回答は議事録に限定。例として、株式会社の役員変更登記申請の株主総会議事録の記載内容のうち、「第○○議案○○年度決算書類承認の件・・・省略」としても良い。

 要件として、前後の脈略が明瞭であること、文書として一体性が保たれていること。・・・抽象的なので、原則謄本を提出、議案がはっきり分かれていて関連する議案がない場合は抄本としても良いと思いました。

 昭和52年10月14日法務省民四第5546号民事局第四課長回答「商業法人登記申請書に添付すべき議事録の還付手続について」登記研究361号P77 

 商業登記等事務取扱手続準則54条7項。登録免許税を納付後に、登記申請を取り下げた場合において、申請書・添付書面が還付されるのは、登記所から税務署への登録免許税の還付通知をした後。

 同一の申請書によって2以上の申請をした場合、一部の取り下げをしたときには、取り下げた登記申請の申請書・添付書面のみ還付される(平成20年1月11日法務省民二第57号民事局長通達「不動産登記令の一部改正等に伴う登記事務の取扱いについて」登記研究720号P112と同様の取扱い。)。

(商号の登記に用いる符号)

第五十条 商号を登記するには、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものを用いることができる。

2 前項の指定は、告示してしなければならない。

(同一当事者の数個の商号の登記)

第五十一条 同一の当事者から数個の商号の登記の申請があつたときは、各商号について各別の登記記録に登記しなければならない。

営業の種類は異なる必要がある。印鑑の廃止の記録をした印鑑記録の保存期間は2年(商業登記規則34条4項7号)。

(営業又は事業の譲渡の際の免責の登記)

第五十三条 商法(明治三十二年法律第四十八号)第十七条第二項前段の登記は、譲受人の商号の登記記録にしなければならない。

2 会社法第二十二条第二項前段の登記は、譲受人である会社の登記記録にしなければならない。

事業譲渡行われた旨、その年月日が登記される場合がある。

境界紛争の解決手続における土地家屋調査士の役割第3回 民事調停

弁護士 井奥圭介、土地家屋調査士 山脇優子

隣接所有者双方が越境している場合。越境している部分についての土地所有権の交換を行い、分筆する解決例。

 土地を売却したいが、隣接所有者と主張する境界が異なる。買取希望者が複数いるが、隣接所有者が主張する境界だと、売却価額が大幅に下がる場合。隣接所有者による買取り。

法律業務が楽になる心理学の基礎第5回 非行・犯罪の社会的原因

弁護士(認定心理士) 渡部友一郎

Bの友人関係、経歴、非行後の発言、非行の程度を、聴く機会があれば訊いてみるのかなと思いました。

犯罪収益移転防止法の大改正と司法書士の実務⑸

司法書士 末光祐一

法人の実質的支配者判定に関する、株式の種類と議決権への算入の可否について。

法務省 実質的支配者リスト制度Q&A令和3年9月17日

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00119.html

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

(実質的支配者の確認方法等)

第十一条 法第四条第一項に規定する主務省令で定める方法のうち同項第四号に掲げる事項に係るものは、当該顧客等の代表者等から申告を受ける方法とする。

2 法第四条第一項第四号及び令第十二条第三項第三号に規定する主務省令で定める者(以下「実質的支配者」という。)は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者とする。

一 株式会社、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人、資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社その他のその法人の議決権(会社法第三百八条第一項その他これに準ずる同法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み同法第四百二十三条第一項に規定する役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。以下この号において同じ。)に係る議決権を除く。以下この条において同じ。)が当該議決権に係る株式の保有数又は当該株式の総数に対する当該株式の保有数の割合に応じて与えられる法人(定款の定めにより当該法人に該当することとなる法人を除く。以下この条及び第十四条第三項において「資本多数決法人」という。)のうち、その議決権の総数の四分の一を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人(当該資本多数決法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合又は他の自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の二分の一を超える議決権を直接若しくは間接に有している場合を除く。)があるもの 当該自然人

二 資本多数決法人(前号に掲げるものを除く。)のうち、出資、融資、取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人があるもの 当該自然人

三 資本多数決法人以外の法人のうち、次のイ又はロに該当する自然人があるもの 当該自然人

イ 当該法人の事業から生ずる収益又は当該事業に係る財産の総額の四分の一を超える収益の配当又は財産の分配を受ける権利を有していると認められる自然人(当該法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合又は当該法人の事業から生ずる収益若しくは当該事業に係る財産の総額の二分の一を超える収益の配当若しくは財産の分配を受ける権利を有している他の自然人がある場合を除く。)

ロ 出資、融資、取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人

四 前三号に定める者がない法人 当該法人を代表し、その業務を執行する自然人

3 前項第一号の場合において、当該自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の四分の一又は二分の一を超える議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定は、次の各号に掲げる割合を合計した割合により行うものとする。

一 当該自然人が有する当該資本多数決法人の議決権が当該資本多数決法人の議決権の総数に占める割合

二 当該自然人の支配法人(当該自然人がその議決権の総数の二分の一を超える議決権を有する法人をいう。この場合において、当該自然人及びその一若しくは二以上の支配法人又は当該自然人の一若しくは二以上の支配法人が議決権の総数の二分の一を超える議決権を有する他の法人は、当該自然人の支配法人とみなす。)が有する当該資本多数決法人の議決権が当該資本多数決法人の議決権の総数に占める割合

4 国等(令第十四条第四号に掲げるもの及び第十八条第六号から第十号までに掲げるものを除く。)及びその子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)は、第二項の規定の適用については、自然人とみなす。

 2項2号、2項4号の順で判定。実質的支配者に対する確認について、代表者等に対するアンケート回答が記録として認められる。

中小企業とともに歩む企業法務のピントとヒント

第58話 会社のたたみ方①~まず考えておくことは?

司法書士法人鈴木事務所

司法書士 鈴木龍介

奥村聡司法書士『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』2020年、翔泳社、の紹介。

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