(一社)家族信託普及協会からセミナー案内(3,000円)のメールが来ました。
内容の一部です。
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「遺言書が絶対ではなくなった!?」
〜対抗要件主義の影響と家族信託 協会理事 菊永 将浩氏
⇒民法の改正に伴い、「遺言書さえあれば大丈夫」という時代は終わりました。
新たに設けられた「特定財産承継遺言」についての解説と、家族信託とのかかわりについて考えます。
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・「特定財産承継遺言」とは何でしょうか。
民法第1014条[1]に記載があります。遺言書の文言に、相続人に対して、「土地は相続人Aに相続させる。」などの記載が入っている場合です。
・なぜ、遺言書が絶対ではなくなったのでしょうか。遺言を書く人側から考えてみます。遺言は改正前から、自筆証書遺言であれば紛失、公正証書遺言であれば、遺言と違う内容の遺産分割協議が相続人の間で成立するなど、絶対ではありませんでした。
文脈からすると、特定財産承継遺言は、対抗要件主義の影響で絶対ではなくなった、という理解で良いのかなと思います。対抗要件主義とは何でしょうか。対抗要件というのは、既に成立した権利関係、法律関係を他人に対して法律上主張することができるために必要とされる法律要件、とあります。例として、不動産物権の変動における登記、動産物権の変動における引渡し、指名債権譲渡における通知、承諾など、とされています[2]。対抗要件については分かりましたが、対抗要件主義[3]に対する説明は見付けることが出来ませんでした。法律用語ではなく、対抗要件に対する思想のようです。
改正前は、遺言書の文言に、相続人に対して、「土地は相続人Aに相続させる。」などの記載が入っている場合、遺言者が亡くなったと同時に(登記や登録がされていなくても)指定された人に渡るとされていました(最判平成3年4月19日、最二小判平成14年6月10日、最二小判平成5年7月19日)。
それが改正されて、土地の価格が相続人Aの相続分を超える場合、超えた部分については、登記をしないと他の人に主張することが出来ないようになりました。
もしAさんが土地について登記をしなかった場合、相続分を超えた部分については、他の相続人Bさんが登記をすると、BさんがAさんに優先することになります。
おそらく、このような意味で「遺言書が絶対ではなくなった!?」ということなのかと考えました。だから、家族信託なら受益権を遡及取得出来る。という提案をするのかまでは分かりませんでした。
[1] (特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
[2] 法令用語研究会編『法律用語辞典第4版』2012有斐閣P738
[3] 東京司法書士会民法改正対策委員会編『Q&Aでマスターする相続法改正と司法書士実務』P185 平成30年 日本加除出版