高野忠平「現実軽視の過剰な規制が生み出す不動産登記実務の過酷な現実」

市民と法[1]の記事からです。

著者は司法書士歴40年、不動産登記の決済立ち合い年間1000件以上をこなしている方のようです。

・決済立ち合いにおいて、決済場所に着金確認まで司法書士が同席する必要はあるのか。

・オンライン申請した場合で、添付した登記原因証明情報のPDFに内容の誤りがある場合、それが軽微な誤りでも補正を許容しない法務局通達(通達変更により解決。)

2つの問題を提起されています。

 私は2つとも失敗談として経験しました。決済立ち合い場所は事務所から1時間、関係者の集合時間は10時。ここだけみると、余裕を持って決済を行えます。

売主様、遅刻。連絡が繋がらない(映画を観ていたということです。)。連絡が繋がったのが13時。14時に決済場所である金融機関到着。そこから押印、着金手続き(月末で、遅刻したため他の案件の着金手続きが終了するまで入金手続きが出来ず、遅れます。)

私は他の書類の確認を済ませて、12時頃から、15時までに金融機関を出ることが出来なければ、今日の申請は保証できません、ということを不動産仲介業者、金融機関に何度も伝えていました。

金融機関を出たのは15時30分。登記申請を行ったのは、17時20分頃。5分遅れています。16時50分頃から金融機関の職員が3度くらい「間に合いますか?」と電話をかけてきたので「今準備中です。」と対応しました。電話がなかったら間に合っていたかもしれません。

申請後、金融機関と仲介業者(兼買主)に電話で遅れた旨を伝え、登記申請の受付票(受け付けはしたけど、内容の確認は明日以降になります、という内容)を渡しました。

金融機関職員は怒っていました。司法書士を信頼して決済をお願いしているのに、というようなことを言われました。

仲介業者さんが間に入ってくれて、「登記の原因日付は今日で間違いないですか?」と確認されました。「間違いないです。受付の日付は明日になります。」と私は答えました。金融機関、仲介業者の認識は、私の失敗ということのようでした。売主遅刻、連絡が付かない時点で取引を流せば良かったと思いました。

 PDF化した登記原因証明情報に不備があった場合の補正不可については、登記官によって違いがありました。登記官は、新人でない限り決済関係の登記申請であることを知っています。知っていて取下げを命じるのは、何かの信念を持っている方かなと思います。一度取り下げたことがあります。金融機関に始末書を届けに行きました。

記事に戻ります。

「期待される立ち合い業務に応えるためには、場面に応じて目的を遂げる手法を選択実行しなければならない」事態を招かないように「段取り八分仕事二分」を励行することこそが決済立ち合いの要諦(最も大切な所)である。


 この文章の言葉を借りるなら、段取りが職員(補助者)、段取りの確認と仕事が司法書士だと思いました。

本記事で一番びっくりしたのが、決済立会報酬が1万円ないし3万円で、5万円などとても請求できる金額ではないのが実情である、という記載があったことです。私は最低5万円以上の見積書を出すので、こんなにも違うんだなと感じました。

具体的には、「決済立会について決済立会場所に補助者のみを同席させることを許容する。ただし、関係当事者の同意を得たうえで、補助者に主体的・包括的に担当させることなく、司法書士として、通信機器等を活用して決済の状況を把握しつつ、信頼に応える方策を講じなければならない」等の趣旨の規範に改定すべきである。

 著者による不動産取引決済の方法の改定案です。補助者(職員)をロボットに置き換えることも可能な気がします。大きな事務所も大変なんだな、というのが感想でした。職員・有資格者が決済立ち合い場所に司法書士と同席して、司法書士の最終確認が済んだら、職員が登記申請に事務所に戻る、というような事案は良く聞きます。どの程度関与すれば良いのか、ミスがなければ何も言われない、普段から付き合いがある取引先ならミスしてもどうにかなる、ということもあると思いますが、初めて住宅を買う人が、初めて司法書士と会う人が、不快な思いをしない方法が良いのだろうなと感じます。具体的には司法書士が全ての業務をやっている(やっているようにみせることも含めます。)のが、納得のいく線だと考えます。金融機関や仲介業者の視点を外すと、そのような結論に至りました。

[1] 126号、2020年12月P10~民事法研究会