鑑定について

鑑定(かんてい)について[1][2]、考えてみたいと思います。

法律用語辞典[3]では、一般には、特別の知識経験を有する者が、その知識経験により知り得る法則又はこれに基づく事実について判断を行うこと、と定義されています。

注2では、あなたのこの事案について私はこの方法で対処することが良いと思うということがいえる、ということが鑑定だと定義されています。

注1では、法律専門家としての法律判断、と定義されています。

行政先例としては、昭和29年1月13日民事甲2554号民事局長回答があります。一部抜粋します。いかなる趣旨内容の書類を作成すべきかを判断することは、司法書士の固有の業務範囲には含まれないと解すべきであるから、これを専門的法律知識に基づいて判断し、その判断に基づいて右の書類を作成する場合であれば、弁護士法72条の違反の問題を生ずる。

判例としては、高松高裁昭和54年6月11日判決があります。一部抜粋します。

司法書士が行う法律的判断作用は、嘱託人の食卓の趣旨内容を正確に法律的に表現し司法(訴訟)の運営に支障を来たさないという限度で、換言すれば法律常識的な知識に基づく聖女的な事項に限って行われるべきもので、それ以上専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法で担任間の法律関係に立ち入る如きは司法書士の業務範囲を超えたものといわなければならない。

以上、いくつか定義を挙げてみました。他にも様々な定義があります。

ここまで整理して1ついえることは、鑑定と呼ばれているものに対して、弁護士法72条に違反してはならないこと、違反しないためには司法書士制度に根拠が必要なことです。

民事信託・家族信託の業務にしぼります。

いくつかの場面を思い出してみます。

・司法書士会などを通さずに、司法書士が司法書士に対してセミナー、相談、信託契約書のチェック、登記申請書のチェック、共同受任という名前の司法書士の監督人を行って〇万円から○○万円をもらうこと。

私が合格当初に研修で入った事務所の先生は恐いけど商業登記では有名らしい方でした。司法書士同士の勉強会も積極的に主催していました。事務所には、司法書士からの質問のFAXが毎日のように来ていました。この先生がお金を貰ったところを見たことがありません。

・電話で、「自分で公証人役場とかいって信託契約書は作った。チェックして欲しい。」と言われた場合。結局は来ませんでした。

・信託中に、受託者を変えようと思っているんですけど、と受益者から相談があった場合。話を聞いてみましたが、信託契約書を示しながら、変えることは出来るし、変えた場合はこうなる、ということは言いました。未だ変更なしです。

・事務所のホームページを読みこんでいただき、ある程度の知識を持って民事信託を利用するつもりで相談に来られる人と、ほとんど分からないけれど遺言との違いを教えて欲しい、と相談に来られる人。相談の内容が大分変ります。後者の方が鑑定に含まれるようなことを訊かれることが多いです。

・宅地建物取引士と経営コンサルタントが民事信託の流れを図に書いて、信託契約書の作成と不動産登記申請を依頼された場合。報酬も勝手に決められていたので断りました。不動産登記申請の仕事を受任していた宅地建物取引士とも関係を切りました。

ここまで書いてきて、私には、鑑定(法律判断)と書類作成(法的整序)の違いを明確に答えることが出来ません。

逆回りで、鑑定と評価され得る場合はどのような場合か考えてみます。

・依頼者から「あの時、先生にこの方が良いと言われたから。」と言われたら場合。

・関係者から、「あの司法書士が勝手にやった。」と言われた場合。

・司法書士から、「あの先生の有料チェックを受けています。あの先生に有料相談をして、回答の通り業務を行っています。」と言われた場合。

民事信託契約書の場合は、公正証書にする(公証人の前で本人が印鑑を押す)のが現在の一般的実務なので、代理している感覚が薄くなるのかもしれません。

評価から考えて、司法書士は主観的には適法だと認識して民事信託支援業務を行っていることを前提とします。

司法書士の認識が適法だと認められるには、どのような事実が必要なのか、少し考えてみます。野口雅人「民事事件における書類作成業務」[4]を参考にします。

・法令・判例の立場を理解した書類を作成する。

・作成した文書のうち、原本があるもの(公正証書)などを預からない。

・依頼者以外の関係者から民事信託に訊かれた場合、依頼者が答えられるような書類を作成する。

・文書の送達、メールの送信は依頼者から行ってもらう。

・成功報酬型の報酬基準を取らない。見積書も積立て型にする。登記申請の代理と、信託契約書などの書類作成については見積書を別にする。

自分自身気を付けたいと思います。


[1] 渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(1)」市民と法123号 2020年6月(株)民事法研究会

[2] 斎木賢二ほか「司法書士法改正と司法書士制度の未来(上)」市民と法122号 2020年4月(株)民事法研究会

[3] 法令用語研究会編『法律用語辞典第4版』2012年(株)有斐閣

[4]『月報司法書士』2017年1月号